(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079264
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】衝撃吸収構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/15 20060101AFI20230601BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B62D21/15 C
B62D25/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192642
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】西田 和隆
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA13
3D203BA02
3D203CA23
3D203CA29
3D203CA34
3D203CA37
(57)【要約】
【課題】復帰作業が容易な衝撃吸収構造を提供する。
【解決手段】衝撃吸収構造5は、車両のキャブの下方に備えられるキャブヒンジ31と、キャブヒンジ31とフレーム2を繋ぐキャブヒンジブラケット32と、キャブヒンジブラケット32の車両前方側に取り付けられる衝撃吸収部材4と、を備える。衝撃吸収部材4は、車両の前方にかけて先細りであり、かつ、車両の前方にかけて小さくなる複数の空洞部42を備える。また、衝撃吸収部材4の前方側先端はフレーム2より前に突出している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャブの下方に備えられるキャブヒンジと、
前記キャブヒンジとフレームを繋ぐキャブヒンジブラケットと、
前記キャブヒンジブラケットの前記車両前方側に取り付けられる衝撃吸収部材と、を備え、
前記衝撃吸収部材は、前記車両の前方にかけて先細りであり、かつ、前記車両の前方にかけて小さくなる複数の空洞部を備え、
前記衝撃吸収部材の前方側先端が前記フレームより前に突出している、
ことを特徴とする衝撃吸収構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両は、衝突時において、乗員の安全性の確保のため運転室の空間確保とドアの開閉ができることが望ましい。例えば、特許文献1に、車両の衝突時に、フレームで車体への衝撃を緩和する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように車両のサイドフレームで車体への衝撃を吸収する構造の場合、衝突によってサイドフレームが損傷するとサイドフレーム全体の交換が必要となり、車両の復帰作業が大掛かりなものとなってしまう。
【0005】
一方、トラック等では、車両の前方にキャブを支持するキャブヒンジのブラケットであるキャブヒンジブラケットが備えられる。
【0006】
そこで、本発明は、復帰作業が容易な衝撃吸収構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
本適用例に係る衝撃吸収構造は、車両のキャブの下方に備えられるキャブヒンジと、
前記キャブヒンジとフレームを繋ぐキャブヒンジブラケットと、前記キャブヒンジブラケットの前記車両前方側に取り付けられる衝撃吸収部材と、を備え、前記衝撃吸収部材は、前記車両の前方にかけて先細りであり、かつ、前記車両の前方にかけて小さくなる複数の空洞部を備え、前記衝撃吸収部材の前方側先端が前記フレームより前に突出している、ことを特徴とする。
【0009】
このように構成された衝撃吸収構造は、キャブヒンジブラケット付近に衝撃吸収部材を設け、車両の衝突時の衝撃を吸収させることが可能であるため、サイドフレームより復帰作業が容易なキャブヒンジのキャブヒンジブラケットを用いた衝撃吸収構造を提供することができる。また、衝撃吸収部材が車両の前方にかけて先細りとなることで、徐々に衝撃を吸収でき、車両に急激な衝撃が伝わることを緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の車両のキャブヒンジ機構の平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の車両のキャブヒンジ機構の正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の車両のキャブヒンジ機構の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0012】
図1、
図2及び
図3は、それぞれ本発明の一実施形態のキャブヒンジ機構1の平面図、正面図及び左側面図(車両の左側面図)である。キャブヒンジ機構1は、トラック等の車両の車体(全体の図示は省略)に設けられる。なお、
図1の右側をキャブヒンジ機構1を有する車両の前、その反対側を車両の後ろとし、
図2の上側を車両の左、その反対側を車両の右とする。また、
図2の左側を車両の上、その反対側を車両の下とする。
【0013】
キャブヒンジ機構1は、フレーム2と、キャブヒンジ部材3と、衝撃吸収部材4とを備える。フレーム2は、サイドレール21、フロントクロスメンバ22及び図示しない他のクロスメンバを有して、
図1の平面視において略梯子状に形成される。
【0014】
サイドレール21は、車体の前後方向に沿って左右に設けられる。左右のサイドレール21は、断面視略U字状(コ字状)に形成されて開口側がフレーム2の内側を向いて対向するように配置される。
【0015】
フロントクロスメンバ22は、フレーム2の前側において、左右のサイドレール21と略垂直に接続される。フロントクロスメンバ22も断面視略U字状(コ字状)に形成されて側面視における開口側がフレーム2の後側を向くように配置される(
図3参照)。
【0016】
キャブヒンジ機構1は、キャブヒンジ部材3と衝撃吸収部材4とにより形成される衝撃吸収構造5を備える。キャブヒンジ部材3は、キャブヒンジ31と、キャブヒンジブラケット32とを有して、フレーム2に対して固定される。キャブヒンジ部材3は、フレーム2の左右において略対称構造となるように配置されている。
【0017】
キャブヒンジ31は、図示しない車両のキャブの下方に備えられる。キャブヒンジ31は、軸受部311と、軸受部311に対して回動可能に支持された軸部材312とを有する。軸受部311及び軸部材312は、左右方向に軸心Aを有する。
【0018】
キャブヒンジ31の軸受部311の下方には、キャブヒンジブラケット32が設けられる。キャブヒンジブラケット32は、平板状に形成されてサイドレール21の上面と略面当接して固定される第一固定部321を有する。また、キャブヒンジブラケット32は、平板状に形成されてフロントクロスメンバ22の前面と略面当接して固定される第二固定部322を有する。従って、キャブヒンジブラケット32は、キャブヒンジ31とフレーム2を繋ぐ接続部として機能する。
【0019】
一方、キャブヒンジ31の軸部材312には、キャブマウント33が接続されている。キャブマウント33は、図示しないキャブの下面のキャブフレームの前端部を支持し、軸部材312の左右に一対設けられる。キャブマウント33は、キャブヒンジ31によってフレーム2に対して軸心A周りに所定の回動角度の範囲で前方に傾動することができる。
【0020】
衝撃吸収部材4は、キャブヒンジブラケット32の車両前方側に取り付けられる。衝撃吸収部材4は、例えば、鍛造により作製されて高靱性特性を有する。衝撃吸収部材4は、キャブヒンジブラケット32に形成された螺子用孔(不図示)を介して、フロントクロスメンバ22に対して螺子固定される。即ち、キャブヒンジブラケット32の第二固定部322は、衝撃吸収部材4と共に共締めによって固定される。フレーム2及びキャブヒンジブラケット32対して固定された衝撃吸収部材4の前方側先端4aは、フレーム2より前に突出している。
【0021】
衝撃吸収部材4は、車両の前方にかけて先細り(先窄まり)であり、略円錐台状に構成される。衝撃吸収部材4は、フレーム2側に位置する大径の基端部に螺子部材Sを配置可能な切欠部41を有する。切欠部41の底部には、前後方向に螺子用孔が形成される(不図示)。螺子用孔411が形成された切欠部41は、衝撃吸収部材4の軸線B周りに複数(本実施形態では4か所)に設けられる。
【0022】
また、衝撃吸収部材4は、左右方向に貫通した貫通孔である空洞部42を備える。空洞部42は、断面視において上下に長尺な略楕円状に形成される。空洞部42は、前方にかけて小さくなるように車両の前後方向に複数配置される。
【0023】
また、
図3に示すように、フレーム2の前方には、フロントバンパ6が配置される。フロントバンパ6は、衝撃吸収部材4に対してやや離間してフレーム2に対して接続される。
【0024】
以上のように本実施形態の衝撃吸収構造5は、車両のキャブの下方に備えられるキャブヒンジ31と、キャブヒンジ31とフレーム2を繋ぐキャブヒンジブラケット32と、キャブヒンジブラケット32の車両前方側に取り付けられる衝撃吸収部材4と、を備える。また、衝撃吸収部材4は、車両の前方にかけて先細り(窄まり)であり、かつ、車両の前方にかけて小さくなる複数の空洞部42を備える。また、衝撃吸収構造5は、衝撃吸収部材4の前方側先端がフレーム2より前に突出しているように構成される。
【0025】
このような構成とすることで、車両が正面側から後方に(
図3のP方向に)衝撃を受けた場合、フロントバンパ6を介してフレーム2よりも先に衝撃吸収部材4に負荷が加わる。衝撃を受けた衝撃吸収部材4は、後方へ衝撃を吸収しながら圧縮変形する。比較的軽微な衝突の場合は、フレーム2自体の交換や修理をしなくても変形した衝撃吸収部材4のみ交換すればよい。このため、修理コストの増加を抑制し、少ない工数で車両の復帰が容易な衝撃吸収構造5を構成することができる。
【0026】
また、衝撃吸収部材4が車両の前方にかけて先細りとなることで、徐々に衝撃を吸収でき、車両に急激な衝撃が伝わることを緩和できる。
【0027】
以上で本発明に係る車両の変速装置の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0028】
例えば、本実施形態の空洞部42は、左右方向に貫通した貫通孔として説明したが、空洞部42は、左右方向以外の方向(例えば、上下方向)に貫通した貫通孔としてもよい。また、空洞部42は、衝撃吸収部材4内に密閉配置された中空部として構成としてもよい。
【0029】
また、衝撃吸収部材4は、円錐台状に限らず、角錐台等のその他の錐台状、又は錐体状等のその他の先細り形状としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 キャブヒンジ機構
2 フレーム
3 キャブヒンジ部材
4 衝撃吸収部材
4a 前方側先端
5 衝撃吸収構造
6 フロントバンパ
21 サイドレール
22 フロントクロスメンバ
31 キャブヒンジ
32 キャブヒンジブラケット
33 キャブマウント
41 切欠部
42 空洞部
311 軸受部
312 軸部材
321 第一固定部
322 第二固定部
411 螺子用孔
A 軸心
B 軸線