IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイドーの特許一覧

<>
  • 特開-昇降収納装置 図1
  • 特開-昇降収納装置 図2
  • 特開-昇降収納装置 図3
  • 特開-昇降収納装置 図4
  • 特開-昇降収納装置 図5
  • 特開-昇降収納装置 図6
  • 特開-昇降収納装置 図7
  • 特開-昇降収納装置 図8
  • 特開-昇降収納装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079317
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】昇降収納装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 51/00 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
A47B51/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192729
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390013321
【氏名又は名称】株式会社ダイドー
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】山田 和義
(57)【要約】
【課題】物品収納棚を前方及び下方へ、スムーズに大きく引き出しできる昇降収納装置を提供する。
【解決手段】固定部1にレール5,5を設け、このレール5,5にスライド基台6を前後動自在に設け、かつ、物品収納棚10を、平行リンク機構Zを介して、上記スライド基台6に設け、さらに、扉20を扉開閉用押上杆18によって、連動して開閉させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方開口状箱型固定部(1)の左右側壁内面(4)(4)に配設されたレール(5)(5)に沿って、前後往復動自在に設けられたスライド基台(6)と、
収納物を載置するための物品収納棚(10)と、
該物品収納棚(10)を常時水平姿勢を保つように、該物品収納棚(10)に、先端側が枢着されると共に、基端側が上記スライド基台(6)に枢着された平行リンク機構(Z)と、
該平行リンク機構(Z)の揺動と連動して、上記スライド基台(6)を前後往復動させる連動リンク機構(8)と、
上記箱型固定部(1)の前方開口部(1P)の上辺に開閉自在に枢着保持された扉(20)と、
該扉(20)の裏面に上端(18A)が連結されると共に、下端(18B)が、平行リンク機構(Z)の作動を検出する扉開閉用押上杆(18)と、
を具備し、
上記物品収納棚(10)を、手前に引出す外力(F22)が人の手で付加されると、上記物品収納棚(10)が前方へ水平移動しつつ下方へ揺動し、同時に上記扉(20)が上記押上杆(18)によって上方へ開いてゆくように、
構成されていることを特徴とする昇降収納装置。
【請求項2】
上記扉開閉用押上杆(18)の上端には、水平軸心(L25)廻りに回転自在な回転輪(25)が付設され、
上記扉(20)の裏面には、上記回転輪(25)が一側方(S1 )から差込まれて保持される受け具(26)が固着されている請求項1記載の昇降収納装置。
【請求項3】
上記受け具(26)は、回転輪(25)が差込まれる上記一側方(S1 )において、扉裏面近く及び遠くの各位置に、回転軸離脱防止用小幅突起片部(32)(33)が突設されている請求項2記載の昇降収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台所用昇降吊り棚等として各種の構造のものが広く用いられているが、キャビネットの前面開口部に、扉が付設されている場合に、扉の開閉と、物品収納部(棚)の昇降作動とを、手動にて別々に行わねばならない不便さがあった。
そこで、扉の裏面と物品収納部(棚)とを連動機構を介して連結し、物品収納部(棚)の引き出しに伴って、自動的に扉を開く技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記特許文献1にて提案されている発明では、(a)物品収納棚及び扉に特別な加工や複雑な部品追加を要する点、(b)物品収納部(棚)を上昇させるために必要な外力が、扉の重量分だけ増加して、重くなる欠点、(c)扉のみを開くことが難しい場合がある点、(d)物品収納部(棚)を上昇させてキャビネットへ収納する際に扉が強制的に閉じて手が挟み込まれる虞がある欠点、(e)物品収納部(棚)の前後方向寸法が極めて小さく、物品の収納できる容積が少ない欠点、等の多くの欠点が残されていた。
そこで、本出願人等は、図8図9に示したような昇降収納装置を、かつて、提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-286131号公報
【特許文献2】特許第5467776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この図8図9に示す昇降装置は、前記欠点を解消できる優れた発明であるが、次のような問題点が残されていることが、判った。
即ち、(a)物品収納棚51を十分に手前方向位置まで引出せない点、(b)扉52を上方へ揺動して開放(矢印M参照)させるために極めて複雑なリンク機構53を付加せねばならない点、(c)前方開口状箱型固定部54の底板55には、平行リンク機構の下方リンク材56との干渉を避けるために大きな切欠凹所57を形成せねばならない点、(d)物品収納棚51を前方へ移動させる際に扉52が直ちに開かずに扉52の下端内面に物品収納棚51が衝突する虞れがあり緩衝パッキン58を付設する必要がある点。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、前方開口状箱型固定部の左右側壁内面に配設されたレールに沿って、前後往復動自在に設けられたスライド基台と;収納物を載置するための物品収納棚と;該物品収納棚を常時水平姿勢を保つように、該物品収納棚に、先端側が枢着されると共に、基端側が上記スライド基台に枢着された平行リンク機構と;該平行リンク機構の揺動と連動して、上記スライド基台を前後往復動させる連動リンク機構と;上記箱型固定部の前方開口部の上辺に開閉自在に枢着保持された扉と;該扉の裏面に上端が連結されると共に、下端が、平行リンク機構の作動を検出する扉開閉用押上杆と;を具備し;上記物品収納棚を、手前に引出す外力が人の手で付加されると、上記物品収納棚が前方へ水平移動しつつ下方へ揺動し、同時に上記扉が上記押上杆によって上方へ開いてゆくように;構成されている。
【0007】
また、上記扉開閉用押上杆の上端には、水平軸心廻りに回転自在な回転輪が付設され;上記扉の裏面には、上記回転輪が一側方から差込まれて保持される受け具が固着されている。
また、上記受け具は、回転輪が差込まれる上記一側方において、扉裏面近く及び遠くの各位置に、回転軸離脱防止用小幅突起片部が突設されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、物品収納棚は、十分に下方に、しかも、十分に手前まで、スムーズに移動可能であり、(人の手による)物品の収納及び取出しを、容易かつ迅速に行い得る。また、扉と押上杆とは、簡単な構成部品によって連結可能である。
前方開口状箱型固定部の底板に対して、平行リンク機構が(十分手前方向に移動しているので)干渉せずに済み、この底板に切欠凹所を形成する必要がなくなる。また、物品収納棚が前方へ移動を開始した際に、扉の裏面に干渉しないように、簡単に調整することが可能である
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】物品収納棚の収納状態であって、かつ、扉の閉状態を示す本発明の実施の一形態の断面側面図である。
図2】物品収納棚の引出途中状態を示す断面側面図である。
図3】物品収納棚の引出(降下)完了状態を示す断面側面図である。
図4図3のIV-IV断面拡大図である。
図5】受け具の一例を示す図であって、(A)は下方の一方向から見た斜視図、(B)は180°回転した下方の他方向から見た斜視図である。
図6図4のVI-VI断面図である。
図7】側面図である。
図8】従来例の収納状態を示した断面側面図である。
図9】従来例の引出完了状態を示した断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1図3に於て、本発明の実施の一形態を示し、1は、前方開口状の箱型の固定部であり、図示省略の壁に、固着される。
図1図3では、箱型固定部1の下方部位には、水平状区画壁2をもって、各種の物を入れる収容空間部3が形成されている場合を、例示する。
【0011】
箱型固定部1は、キャビネットと呼ばれる場合もある。この箱型固定部1の左右側壁内面4,4には、(区画壁2の近傍上方部位に、)レール5,5が固設されている。しかも、レール5は、前後水平方向に固設される。
【0012】
なお、(図示省略するが)箱型固定部1の形状としては、下部の収容空間部3が無い構造とすることも自由である。
6は、上記レール5に沿って、前後往復動自在に設けられたスライド基台である。このスライド基台6は複数個の回転子7によって上記レール5に沿って前後方向に往復動する(図1図3では、回転子7は一個のみが見えている)。
【0013】
10は、各種の収納物品を載置(収納)することができる物品収納棚である。そして、この物品収納棚10を、常時、水平姿勢を保ちつつ、上下揺動させるために、平行リンク機構Zが配設される。
つまり、図1図3に示すように、この平行リンク機構Zは、先端側が物品収納棚10に枢着されると共に、基端側がスライド基台6に枢着されている。
【0014】
さらに、具体的に説明すれば、基端が一軸心O11廻りに揺動可能にスライド基台6に枢着されると共に、先端が一軸心O21廻りに揺動可能に物品収納棚10に枢着された第1リンク11と、基端が一軸心O12廻りに揺動可能にスライド基台6に枢着されると共に、先端が一軸心O22廻りに揺動可能に物品収納棚10に枢着された第2リンク12とを、平行リンク機構Zが具備している。
【0015】
なお、13は、物品収納棚10の左右側板10Aに対して、軸心O11,O12のピン(軸)が確実・強固に取着させるための補強帯板材である。図1図3に於て、一点鎖線L1 ,L2 は、相互に平行を保ちつつ、第1リンク11と第2リンク12が揺動することを示している。
【0016】
次に、8は、上記平行リンク機構Zの揺動と連動して、スライド基台6を、前後往復動させる連動リンク機構である。この連動リンク機構8は、後端が固定部1の後壁1Bの近傍位置に、一軸心O8 廻りに上下揺動する後リンク8Aと、第2リンク部材12に一体に連結された突片14に、一軸心O14廻りに揺動可能に枢結された前リンク8Bと、上記後リンク8Aと前リンク8Bを枢結ピン8Cと、から成り、側面視が倒立V字形状として開脚・閉脚作動する。
【0017】
倒立V字形状をもって開脚・閉脚する連動リンク機構8は、平行リンク機構Zが、図1から図2に、さらに図3と、順次、前方へ揺動しつつ、物品収納棚10を前方下方向へ揺動させるに伴って、しだいに開脚しつつ、スライド基台6を前方へ移動させる。これによって、物品収納棚10の下端縁の後方端部(後方角部)10Yが、区画壁2の前端縁2Aに衝突することを、回避しつつ、図3に示す如く、物品収納棚10は、十分に下方位置まで揺動させることが、可能である。
【0018】
なお、図1図3に示した実施形態の収容空間部3が無い場合には、上述の区画壁2は、固定部1の底壁となる。従って、その底壁の前端縁に衝突することを、回避しつつ、物品収納棚10は、その底壁よりも十分に下方位置まで、揺動させることができる。
【0019】
そして、箱型固定部1の前方開口部1Pの上辺(上端縁)15に、枢着具16によって、扉20が、開閉自在として、枢着保持されている。なお、枢着具16としては、揺動自在に枢着するのみならず、微小寸法だけ前後移動可能な(公知の)スライド式枢着具が、望ましい。
【0020】
また、18は、扉開閉用押上杆であって、扉20の裏面に、上端18Aが連結される。また、扉開閉用押上杆18の下端18Bは、平行リンク機構Zの作動を、検知するように、突片14に枢結されている。
【0021】
そして、物品収納棚10の取っ手22を手で持って、手前に引出す外力F22を付与すれば、
物品収納棚10が、図1から図2のように、前方へ移動しつつ、続いて、図2から図3のように、下方へ移動し、同時に扉20が、前記押上杆18によって、上方へ開いてゆくように、構成される。
【0022】
次に、押上杆18の上端には、図2図3、及び、図4図6に示す如く、水平軸心L25廻りに回転自在として、プラスチック製等の回転輪25が、付設されている。
【0023】
また、図4図7に示すように、扉20の裏面には、プラスチック製等の受け具26が、固着される。この受け具26は、ボルト又はネジ等を挿通する2個の孔27,27を有する取付片部28と、回転輪25を回転可能に収納・保持する収納空間29を有する保持部30とを、一体に有する。
しかも、回転輪25は、受け具26の一側方(矢印S1 参照)からのみ差込自在である。つまり、回転輪25は、一側方S1 から収納空間29内に差込まれて、保持される。
【0024】
図5(A)のように、一側面は大きく開口状であり、図5(B)のように他側面は、大半部分が、閉鎖壁部31にて閉じられている。
具体例では、収納空間29は、競技場トラックを短軸にて切断した半トラック型であり、この半トラック型の収納空間29の横寸法W29は、回転輪25の外径寸法Dより、僅かに大きく設定されている。
【0025】
しかし、図4図7に於ける収納空間29の上下方向寸法Hは、回転輪25の外径寸法Dよりも十分に大きく、図6に示すように(上下方向の)十分な遊び代ΔHがある。
【0026】
そして、受け具26は、回転輪25が(やり送り状として)差込まれる一側方S1 においては、扉20の裏面近く及び遠くの各位置───即ち、図4の上位置・下位置───に、小幅突起片部32,33が突設されている。
この一側方S1 側の上下の小幅突起片部32,33は、図4図7から明らかなように、回転輪25が収納空間29から外側方へ、離脱するのを防止する機能を発揮する。
【0027】
しかも、図2の状態に於て、(図示省略するが)扉20と、押上杆18とを、分離した状態下で、スライド基台6及び平行リンク機構Z等の主要部材を、箱型固定部1内にセット(取付)を完了できる。そのような主要部材を箱型固定部1内にセット完了の後に、(図4からも明らかに理解できるように、)回転輪25付の押上杆18の上端18Aを、僅かに傾斜姿勢で収納空間29内へ差込めば、図4の如く、回転輪25を収納でき、連結・接続を容易に行い得ると共に、小幅突起片部32,33によって、離脱しないように、維持可能である。
要するに、前記主要部材の箱型固定部1内へのセット(設置)作業が、著しく容易に行い得る利点がある。
【0028】
本発明は、以上詳述したように、前方開口状箱型固定部1の左右側壁内面4,4に配設されたレール5,5に沿って、前後往復動自在に設けられたスライド基台6と;収納物を載置するための物品収納棚10と;該物品収納棚10を常時水平姿勢を保つように、該物品収納棚10に、先端側が枢着されると共に、基端側が上記スライド基台6に枢着された平行リンク機構Zと;該平行リンク機構Zの揺動と連動して、上記スライド基台6を前後往復動させる連動リンク機構8と;上記箱型固定部1の前方開口部1Pの上辺に開閉自在に枢着保持された扉20と;該扉20の裏面に上端18Aが連結されると共に、下端18Bが、平行リンク機構Zの作動を検出する扉開閉用押上杆18と;を具備し;上記物品収納棚10を、手前に引出す外力F22が人の手で付加されると、上記物品収納棚10が前方へ水平移動しつつ下方へ揺動し、同時に上記扉20が上記押上杆18によって上方へ開いてゆくように;構成されているので、物品収納棚10を収納位置から前方及び下方へ、連続的に、かつ、スムーズに大きく引き出すことができ、収納物を低い位置で容易に出し入れできる。しかも、前面にあった扉20は、物品収納棚10を人の手で、引き出せば、スムーズに連動して開いてゆく。このように、人の手で物品収納棚10を手前へ引くというワンアクションによって、物品収納棚10の前方及び下方への移動、さらには、扉20の開放作動がスムーズに連動して行うことができる。
しかも、扉20は簡素な部材にて、スムーズに開くことができる。かつ、押上杆18の上端18Aと下端18Bの取付位置の設定の変更により、扉20が開き始めるタイミングとその速度を、物品収納棚10の前方移動のタイミングとその速度に対して、僅かに早くかつ大きく設定することが容易である。従って、扉20の下端裏面が、物品収納棚10の前端に、衝突することを防止できる。従って、従来の緩衝パッキン58(図8参照)を省略できる。また、従来例(図8図9)のような切欠凹所57の加工が不要となる。
【0029】
また、本発明は、上記扉開閉用押上杆18の上端には、水平軸心L25廻りに回転自在な回転輪25が付設され;上記扉20の裏面には、上記回転輪25が一側方S1 から差込まれて保持される受け具26が固着されているので、扉20の裏面と扉開閉用押上杆18とを非連結状態のままで、扉20を大きく上方へ開放して、箱型固定部1の内部に、スライド基台6、平行リンク機構Z等の「主要部材」を、セット(設定)し、その後に、回転輪25を、受け具26の一側方S1 から差込んで扉開閉用押上杆18を、取付ける作業手順となり、上記「主要部材」の設置作業が著しく容易となり、作業能率が改善される。
【0030】
また、上記受け具26は、回転輪25が差込まれる上記一側方S1 において、扉裏面近く及び遠くの各位置に、回転軸離脱防止用小幅突起片部32,33が突設されているので、前述の「主要部材」を箱型固定部1の内部に設置した後に、扉開閉用押上杆18の上端を一側方S1 からスムーズに差込みできる。しかも、一旦、差込んだ後は、不意に離脱せずに、扉20の開閉作動は確実かつスムーズに行われる。
【符号の説明】
【0031】
1 固定部
1P 前方開口部
4 側壁内面
5 レール
6 スライド基台
8 連動リンク機構
10 物品収納棚
18 押上杆
18A 上端
18B 下端
20 扉
25 回転輪
26 受け具
32 小幅突起片部
33 小幅突起片部
22 外力
25 水平軸心
1 一側方
Z 平行リンク機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9