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特開2023-7932風況予測システム、風況予測方法、および風況予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007932
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】風況予測システム、風況予測方法、および風況予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
G01W1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111083
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】白 志仁
(72)【発明者】
【氏名】谷山 賀浩
(57)【要約】
【課題】気象の予測精度を向上させることが可能な風況予測システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る風況予測システムは、少なくとも評価対象エリアの気圧と気温の少なくとも1つおよび風速を含む気象データと、評価対象エリアの風況を実測した風況実測データと、が外部から入力されるデータ入力装置と、データ入力装置と通信可能に接続される風況推定装置と、を備える。風況推定装置は、評価対象エリアの風況を解析した風況解析データを格納する記憶部と、気象データおよび風況実測データに基づいて、評価対象エリア内の少なくとも1つ以上の風況予測地点における風速、風向、および鉛直方向の風速分布をそれぞれ推定した予測データを出力する風況予測部と、風況解析データおよび予測データを用いて、評価対象エリアの風速分布を計算する風況評価部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも評価対象エリアの気圧と気温の少なくとも1つおよび風速を含む気象データと、前記評価対象エリアの風況を実測した風況実測データと、が外部から入力されるデータ入力装置と、
前記データ入力装置と通信可能に接続される風況推定装置と、を備え、
前記風況推定装置は、
前記評価対象エリアの風況を解析した風況解析データを格納する記憶部と、
前記気象データおよび前記風況実測データに基づいて、前記評価対象エリア内の少なくとも1つ以上の風況予測地点における風速、風向、および鉛直方向の風速分布をそれぞれ推定した予測データを出力する風況予測部と、
前記風況解析データおよび前記予測データを用いて、前記評価対象エリアの風速分布を計算する風況評価部と、
を備える、風況予測システム。
【請求項2】
前記風況予測部は、
前記風況予測地点における特定高度の風速を推定した風速予測データを出力する風速予測部と、
前記風況予測地点における前記特定高度の風向を推定した風向予測データを出力する風向予測部と、
前記風況予測地点における前記鉛直方向の風速分布を推定した風速プロファイル予測データを出力する風速プロファイル予測部と、
を有する、請求項1に記載の風況予測システム。
【請求項3】
前記風速予測部は、前記気象データを入力データとし、前記風況実測データを教師データとするニューラルネットワークを用いて、前記風速予測データを作成する、請求項2に記載の風況予測システム。
【請求項4】
前記風向予測部は、前記気象データを入力データとし、前記風況実測データを教師データとするニューラルネットワークを用いて、前記風向予測データを作成する、請求項2に記載の風況予測システム。
【請求項5】
前記風速プロファイル予測部は、前記気象データを入力データとし、前記風況実測データを教師データとするニューラルネットワークを用いて、前記風速プロファイル予測データを作成する、請求項2に記載の風況予測システム。
【請求項6】
前記風況評価部は、前記風向予測データおよび前記風速プロファイル予測データに基づいて、前記記憶部から前記風況解析データの一部を読み出し、読み出した前記風況解析データの一部および前記風速予測データを用いて、前記風速分布を計算する、請求項2から5のいずれか1項に記載の風況予測システム。
【請求項7】
前記風況推定装置は、前記風況評価部で高度別に計算された複数の前記風速分布のうち、選択された高度の風速分布を表示する表示部をさらに有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の風況予測システム。
【請求項8】
少なくとも評価対象エリアの気圧と気温の少なくとも1つおよび風速を含む気象データと、前記評価対象エリアの風況を実測した風況実測データと、を取得し、
前記評価対象エリアの風況を解析した風況解析データを記憶し、
前記気象データおよび前記風況実測データに基づいて、前記評価対象エリア内の少なくとも1つ以上の風況予測地点における風速、風向、および鉛直方向の風速分布をそれぞれ推定した予測データを出力し、
前記風況解析データおよび前記予測データを用いて、前記評価対象エリアの風速分布を計算する、
風況予測方法。
【請求項9】
少なくとも評価対象エリアの気圧と気温の少なくとも1つおよび風速を含む気象データと、前記評価対象エリアの風況を実測した風況実測データと、を取得し、
前記評価対象エリアの風況を解析した風況解析データを記憶し、
前記気象データおよび前記風況実測データに基づいて、前記評価対象エリア内の少なくとも1つ以上の風況予測地点における風速、風向、および鉛直方向の風速分布をそれぞれ推定した予測データを出力し、
前記風況解析データおよび前記予測データを用いて、前記評価対象エリアの風速分布を計算する、
処理をコンピュータに実行させるための風況予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、風況予測システム、風況予測方法、および風況予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風況等の気象データを用いて気象を予測するシステムが知られている。このシステムで計算された予測データは、気象の影響を受ける様々な場面で使用することができる。例えば鉄道や道路等の交通機関の状況を判断する場面で、予測データを使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6326550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように予測データは、例えば交通機関の状況を判断するといった重要な場面で使用されるため、高い予測精度が要求される。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、気象の予測精度を向上させることが可能な風況予測システム、風況予測方法、および風況予測プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る風況予測システムは、少なくとも評価対象エリアの気圧と気温の少なくとも1つおよび風速を含む気象データと、評価対象エリアの風況を実測した風況実測データと、が外部から入力されるデータ入力装置と、データ入力装置と通信可能に接続される風況推定装置と、を備える。風況推定装置は、評価対象エリアの風況を解析した風況解析データを格納する記憶部と、気象データおよび風況実測データに基づいて、評価対象エリア内の少なくとも1つ以上の風況予測地点における風速、風向、および鉛直方向の風速分布をそれぞれ推定した予測データを出力する風況予測部と、風況解析データおよび予測データを用いて、評価対象エリアの風速分布を計算する風況評価部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、気象の予測精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る風況予測システムの概略的な構成を示すブロック図である。
図2】風況予測システムによる風況予測動作の手順を示すフローチャートである。
図3】風況解析データベースの一部を示す図である。
図4】風況解析データベースの他の一部を示す図である。
図5】風速予測データの作成方法を説明するための図である。
図6】風向予測データの作成方法を説明するための図である
図7】風速プロファイル予測データの作成方法を説明するための図である。
図8】表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0010】
図1は、一実施形態に係る風況予測システムの概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す風況予測システム1は、データ入力装置100および風況推定装置200を備える。データ入力装置100および風況推定装置200は、通信ネットワーク300を介して互いに接続される。
【0011】
まず、データ入力装置100の構成を説明する。データ入力装置100には、気象データ110および風況実測データ120が外部から入力される。以下、各データについて説明する。
【0012】
気象データ110は、例えば、風況を推定する評価対象エリア内外の南北方向の風速成分、東西方向の風速成分、気圧、および気温を少なくとも含むデータ群である。このデータ群のうち、気温データには、例えば、地表から10m~数千m(上空)の標高において異なる複数の高度の気温が示されている。なお、評価対象エリアには、例えば、鉄道沿線や道路等が該当する。
【0013】
気象データ110として、例えば、気象庁予測データ、気象予報GPV(Grid Point Value)データ、天気予報SCWサイト(Super C Weather)データ、ERA-5などの気象再解析データ、および数値気象モデルなどのWRF(Weather Research and Forecasting)解析結果のデータの少なくとも1つが入力される。気象庁予測データは、気象庁が予測したデータである。気象予報GPVデータは、地図上に予め設定された格子点におけるスーパーコンピュータで計算した過去、未来の気象予測データである。ERA-5データは、ヨーロッパ中期予報センタが気象予測に用いるデータである。WRFは、風速および風向といった風況を予測するための予測モデルである。
【0014】
風況実測データ120として、例えば、気象庁観測データ、鉄道沿線風況実測データ、および局所風況実測データの少なくとも1つが入力される。気象庁観測データは、気象庁が風況、温度、湿度、気圧などの気象情報を実測したデータである。鉄道沿線風況実測データは、鉄道会社が、鉄道沿線の複数の地点で風況を実測したデータである。局所風況実測データは、鉄道沿線において鉄道沿線風況実測データが測定されない地点の風況を実測したデータである。局所風況実測データは、例えばLiDAR(Light Detection And Ranging)によって計測した風況データである。LiDARは、レーザー光を大気中に放射して大気からの散乱光を受信、そのドップラー周波数から風速と風向を観測する計測器である。
【0015】
次に、風況推定装置200の構成を説明する。風況推定装置200は、通信部210と、記憶部220と、制御部230と、表示部240と、を有する。以下、風況推定装置200の各部について説明する。
【0016】
通信部210は、通信ネットワーク300を介してデータ入力装置100と通信するときに通信インターフェースとして機能する。
【0017】
記憶部220には、風況解析データベース221が格納されている。風況解析データベース221については後述する。
【0018】
制御部230は、データ取得部231と、風況解析部232と、風況予測部233と、風況評価部234と、を有する。本実施形態では、風況予測部233は、風速予測部235と、風向予測部236と、風速プロファイル予測部237と、を有する。以下、制御部230の各部について説明する。
【0019】
データ取得部231は、データ入力装置100から通信部210を介して気象データ110および風況実測データ120を取得する。データ取得部231は、取得したデータを風況解析部232または風況予測部233へ出力する。
【0020】
風況解析部232は、気象データ110に基づく種々の気象条件で数値流体シミュレーションすることによって、評価対象エリアの風況、例えば風速および風向などを計算する。風況解析部232の解析結果は、風況解析データベース221に格納される。
【0021】
風速予測部235は、データ取得部231で取得された気象データ110に基づいて、評価対象エリア内の少なくとも1つ以上の風況予測地点における特定高度の風速を推定する。風速予測部235は、風速推定値を時系列に対応付けて示す風速予測データを風況評価部234へ出力する。
【0022】
風向予測部236は、データ取得部231で取得された気象データ110に基づいて、評価対象エリア内の少なくとも1つ以上の風況予測地点における特定高度の風向を推定する。風向予測部236は、風向推定値を時系列に対応付けて示す風向予測データを風況評価部234へ出力する。
【0023】
風速プロファイル予測部237は、データ取得部231で取得された気象データ110に基づいて、評価対象エリア内の少なくとも1つ以上の風況予測地点における鉛直方向の風速分布を推定する。風速プロファイル予測部237は、各高度の風速推定値を時系列に対応付けて示す風速プロファイル予測データを風況評価部234へ出力する。
【0024】
風況評価部234は、風況予測部233で作成された予測データ(風速予測データ、風向予測データ、風速プロファイル予測データ)、および記憶部220に格納された風況解析データベース221を用いて、評価対象エリアの特定高度および特定時刻における風速分布を計算する。
【0025】
表示部240は、風況評価部234で算出された上記風速分布を表示する。表示部240は、例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスを有する。
【0026】
以下、図2を参照して、上述した風況予測システム1の解析動作について説明する。図2は、風況予測システム1による風況予測動作の手順を示すフローチャートである。
【0027】
図2に示すように、まず、風況予測動作に必要な気象データ110および風況実測データ120が、外部機関からデータ入力装置100に入力される(ステップS1)。
【0028】
次に、風況推定装置200の風況解析部232が、評価対象エリアの風況解析を行う(ステップS2)。ここで、風況解析部232による風況解析の一例について説明する。風況解析部232は、まず、気象データ110を広域解析モデルに入力して広域エリアの風況解析を行う。広域解析モデルには、評価対象エリアよりも広域なエリアの地形モデルが示されている。
【0029】
次に、風況解析部232は、広域エリアの風況解析の結果を局所解析モデルに入力して、広域エリアを分割した各局所エリアの風況解析を行う。局所解析モデルには、各局所エリアの地形モデルにビル等の建物データが加えられている。評価対象エリアは、1つの局所エリアまたは複数の局所エリア内に存在する。各局所エリアの解析結果が、風況解析データベース221に格納される。
【0030】
なお、本実施形態では、風況解析データを高精度に作成するために、風況解析部232は、広域から局所へと段階的に領域を狭くする、いわゆるネスティングによる風況解析を行っている。しかし、データ精度が確保できるのであれば、局所風況解析で評価対象エリアの風況解析データを作成してもよい。この場合広域風況解析が不要になるため、風況解析に要する時間を短縮することができる。
【0031】
図3は、風況解析データベース221の一部を示す図である。図3では、評価対象エリア内のある地点Pにおける風速プロファイルが16方位の風向ごとに示されている。評価対象エリア内では、風向が同じであっても、気温や気圧、予測地点を中心とした気圧配置等の気象条件に応じて風速プロファイルが異なる場合がある。そのため、風況解析データベース221には、種々の気象条件に対応させて複数の風速プロファイルが1つの風向に対して作成されている。なお、風況解析データベース221には、1つの地点Pのデータだけでなく、複数の地点のデータが格納されれていてもよい。また、本実施形態では、風向は、22.5度刻みの16方位に分割されている。しかし、風向は、32方位に分割されていてもよいし、特定の方位のみさらに分割されていてもよい。さらに、評価対象エリアおよびその周辺の地形形状や過去の気象情報を考慮して、風向の分解能を定義してもよい。
【0032】
次に、風況解析部232は、評価対象エリアの風速分布を計算するための換算係数を計算する。この換算係数も風況解析データベース221に格納される。換算係数は、例えば、ある地点Pとの距離を計算することによって設定することができる。
【0033】
図4は、風況解析データベース221の他の一部を示す図である。図4では、評価対象エリアを格子状に分割したブロックごとに、地点Pとの距離に応じた換算係数k10~kmnが計算されている。
【0034】
上述した風況解析部232による風況解析が終了すると、続いて、風況予測部233が風況を推定する(ステップS3)。ステップS3では、風速予測部235が風速予測データを作成し、風向予測部236が風向予測データを作成し、風速プロファイル予測部237が風速プロファイル予測データを作成する。ここで、図5図7を参照して、各予測データの作成方法を説明する。
【0035】
図5は、風速予測データの作成方法を説明するための図である。本実施形態では、風速予測部235は、データ取得部231で取得された気象データ110に基づいて、評価対象エリア内の風況予測地点P1における特定高度の風速予測データを作成する。この気象データ110には、例えば、風況予測地点P1の周辺の参照地点A、B、C、Dにおける南北方向の風速成分、東西方向の風速成分、気圧、気温が含まれている。参照地点A、B、C、Dは、評価対象エリア内に位置していてもよいし、評価対象エリア外に位置していてもよい。また、参照地点の数は、4つに限定されず、少なくとも1つ以上であればよい。
【0036】
評価対象エリアでは、任意の2地点間に気圧の差や気温の差が生じると、その差が大気移動の駆動力になり、その結果、南北方向および東西方向の風速成分が変化する場合がある。そのため、図5に示すように、気圧や気温を含んだ気象データ110を用いて求めた風速推定値E11(点線参照)は、これらを含まない従来の気象データ110を用いて求めた風速推定値E10(破線参照)よりも風速実測値M1(実線参照)との誤差が小さくなる。これにより、風速の予測精度を向上させることが可能となる。なお、気象データ110は、気圧と気温の両方を含む必要はなく、いずれか一方を含んでいればよい。気象データ110が気圧と気温の少なくとも1つを含んでいれば、風速の予測精度は、気圧も気温も含まない気象データに基づく従来の予測精度よりも高くなるからである。
【0037】
また、本実施形態では、風速予測部235は、参照地点A、B、C、Dの気象データ110をニューラルネットワークNN1に入力して、風況予測地点P1における特定高度の風速推定値E11を計算する。このニューラルネットワークNN1は、風況予測地点P1の特定高度において過去に実測された風況実測データ120を教師データとして学習している。ニューラルネットワークNN1を用いることによって、風速の予測精度をさらに向上させることが可能となる。
【0038】
なお、風速予測部235は、ニューラルネットワークNN1の代わりに風況実測データ120に基づいて作成した回帰式を用いて、風速推定値E11を計算してもよい。この場合、風速予測部235の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0039】
図6は、風向予測データの作成方法を説明するための図である。本実施形態では、風向予測部236は、データ取得部231で取得された気象データ110に基づいて、評価対象エリア内の風況予測地点P2における特定高度の風向予測データを作成する。この気象データ110には、例えば、参照地点A、B、C、Dにおける南北方向の風速成分、東西方向の風速成分、気圧、気温が含まれている。
【0040】
上述したように、評価対象エリアでは、任意の2地点間に気圧の差や気温の差が生じると、南北方向および東西方向の風速成分が変化する場合がある。これらの風速成分の変化は、風向に影響し得る。そのため、図6に示すように、気圧や気温を含んだ気象データ110を用いて求めた風向推定値E21(点線参照)は、これらを含まない従来の気象データ110を用いて求めた風向推定値E20(破線参照)よりも風向実測値M2(実線参照)との誤差が小さくなる。これにより、風向の予測精度を向上させることが可能となる。なお、気象データ110は、気圧と気温の両方を含む必要はなく、いずれか一方を含んでいればよい。気象データ110が気圧と気温の少なくとも1つを含んでいれば、風向の予測精度は、気圧も気温も含まない気象データに基づく従来の予測精度よりも高くなるからである。
【0041】
また、本実施形態では、風向予測部236は、参照地点A、B、C、Dの気象データ110をニューラルネットワークNN2に入力して、風況予測地点P2における特定高度の風向推定値E21を計算する。このニューラルネットワークNN2は、風況予測地点P2の特定高度において過去に実測された風況実測データ120を教師データとして学習している。ニューラルネットワークNN2を用いることによって、風速の予測精度をさらに向上させることが可能となる。
【0042】
なお、風向予測部236は、ニューラルネットワークNN2の代わりに風況実測データ120に基づいて作成した回帰式を用いて、風向推定値E21を計算してもよい。この場合、風向予測部236の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0043】
図7は、風速プロファイル予測データの作成方法を説明するための図である。本実施形態では、風速プロファイル予測部237は、データ取得部231で取得された気象データ110に基づいて、評価対象エリア内の風況予測地点P2における風速プロファイル予測データを作成する。この気象データ110には、例えば、参照地点A、B、C、Dにおける南北方向の風速成分、東西方向の風速成分、気圧、地表から10mの高さの気温、および上空の気温が含まれている。
【0044】
評価対象エリアでは、任意の2地点間に気圧の差や気温の差が生じると、南北方向および東西方向の風速成分が変化する場合がある。さらに、地表面近くと上空との間における気温差が、夏季と冬季では異なる。そのため、これらの風速成分の変化や気温差は、風速プロファイルに影響し得る。そのため、図7に示すように、気圧や気温を含んだ気象データ110を用いて求めた風速プロファイル推定値E31(四角印参照)は、これらを含まない従来の気象データ110を用いて求めた風向プロファイル推定値E30(三角印参照)よりも風速プロファイル実測値M3(丸印参照)との誤差が小さくなる。これにより、風速プロファイルの予測精度を向上させることが可能となる。なお、気象データ110は、気圧と気温の両方を含む必要はなく、いずれか一方を含んでいればよい。気象データ110が気圧と気温の少なくとも1つを含んでいれば、風速プロファイルの予測精度は、気圧も気温も含まない気象データに基づく従来の予測精度よりも高くなるからである。
【0045】
また、本実施形態では、風速プロファイル予測部237は、参照地点A、B、C、Dの気象データ110をニューラルネットワークNN3に入力して、風況予測地点P2における特定高度の風速プロファイル推定値E31を計算する。このニューラルネットワークNN3は、風況予測地点P2の複数の高度において過去に実測された風況実測データ120を教師データとして学習している。ニューラルネットワークNN3を用いることによって、風速プロファイルの予測精度をさらに向上させることが可能となる。
【0046】
なお、風速プロファイル予測部237は、ニューラルネットワークNN3の代わりに風況実測データ120に基づいて作成した回帰式を用いて、風速プロファイル推定値E31を計算してもよい。この場合、風速プロファイル予測部237の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0047】
上述した風速予測データ、風向予測データ、および風速プロファイル予測データの作成に関し、ニューラルネットワークと回帰式の組み合わせは任意である。全ての予測データがニューラルネットワークまたは回帰式を用いて作成されてもよいし、いずれかの予測データがニューラルネットワークを用いて作成され、残りの予測データが回帰式を用いて作成されてもよい。
【0048】
上述した風況予測部233による風況推定が終了すると、続いて、風況評価部234が、風速面分布を計算する(ステップS4)。以下、ステップS4の動作について説明する。
【0049】
風況評価部234は、まず、風況解析データベース221から風向予測部236で予測された風向に対応する複数の風速プロファイルを抽出する。続いて、風況評価部234は、風況解析データベース221の複数の風速プロファイルから、風速プロファイル予測部237で推定された風速プロファイルとの相関性が最も高いものを特定する。
【0050】
続いて、風況評価部234は、風況解析データベース221において、特定した風速プロファイルと対応付けられた換算係数を読み出す。続いて、風況評価部234は、風速予測部235で推定された風速と、換算係数とを乗算する。これにより、評価対象エリアの風速面分布が算出される。
【0051】
最後に、図8に示すように、表示部240が、風況評価部234によって計算された風速面分布を画像表示する(ステップS5)。図8は、表示部240の表示画像の一例を示す図である。
【0052】
図8に示す表示画像には、ある高度における評価対象エリアRの風速分布および風向Wが示されている。本実施形態では、風速の大小が、色の濃淡で表示されている。しかし、風速の表示形態は、これに限定されない。例えば、風速は、その大きさに応じて異なる色で表示されてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、表示部240は、特定高度の風速分布を表示しているが、表示機能はこれに限定されない。例えば、表示部240は、複数の高度の中から、ユーザの操作によって選択された高度の風速分布を表示してもよい。この場合、ユーザは、高度別に風速分布を確認することができる。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、気象データには、風速成分だけでなく気温および気圧の少なくとも1つが含まれている。そのため、気温差や気圧差によって発生し得る気象変化も考慮した風況予測が行われる。よって、風況予測の精度を向上させることが可能となる。
【0055】
さらに、本実施形態では、上記気象データをニューラルネットワークに入力して風況を予測している。このニューラルネットワークは、風況予測地点で過去に実測された風況実測データを教師データとして学習している。よって、風況予測の精度をより一層向上させることが可能となる。
【0056】
以上、実施形態を幾つか説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規なシステムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明したシステムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0057】
100:データ入力装置
200:風況推定装置
220:記憶部
233:風況予測部
234:風況評価部
235:風速予測部
236:風向予測部
237:風速プロファイル予測部
240:表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8