(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079323
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
E02F 3/345 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
E02F3/345
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192739
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100086184
【弁理士】
【氏名又は名称】安原 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】横浜 雅透
(72)【発明者】
【氏名】天間 修一
(57)【要約】
【課題】
ハンドル部の上下操作量を抑制しながらも作業面を大きく回動させることができる作業機を提供する。
【解決手段】
機枠11の一端側に設けて作業者が把持するハンドル21と、機枠11の一端側に設けられハンドル21を上下方向に旋回可能にする第1支点部25と、機枠11の他端側に位置させて設けた作業部31と、機枠11の他端側で作業部31を上下方向に旋回可能にする第2支点部26と、ハンドル21と作業部31とを連結し、ハンドル21の第1支点部25周りの旋回運動を第2支点部26周りの作業部の旋回運動に連動させる連結部51と、を備えたことを特徴とする作業機A。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機枠の一端側に設けて作業者が把持するハンドルと、
前記機枠の一端側に設けて前記ハンドルを上下方向に旋回可能にする第1支点部と、
前記機枠の他端側に位置させて設けた作業部と、
前記機枠の他端側で前記作業部を上下方向に旋回可能にする第2支点部と、
前記ハンドルと前記作業部とを連結し、前記ハンドルの前記第1支点部周りの旋回運動を前記第2支点部周りの前記作業部の旋回運動に連動させる連結部と、
を備えたことを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記作業部は、前記作業部の前端部に設けるとともに、物体が移動できる面である移動面を設けたスクレーパと、を備え、
前記移動面は、前記第2支点部によって前方斜め上方に向けた位置から後方斜め上方に向けた位置まで回動可能に設ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記連動による前記作業部の旋回角度は前記ハンドルの旋回角度より大きく設ける、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記機枠には、ダンプガイドを設け、
前記作業部には、ガイドピンを設け、
前記作業部には、物体を押したり物体を掬い上げたりすることが可能なバケット部を設け、
前記ガイドピンは前記作業部の上昇に伴って上昇して前記ダンプガイドとの接触により、前記バケット部は、進行方向前記ガイドピンと前記ダンプガイドが接触した側へ傾くとともに、前記ガイドピンと前記ダンプガイドが接触した側に揺動する、
ことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は作業機に関する。詳細には、走行路面上の物体を掻き集める作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行路面上の物体を掻き集める装置として特許文献1が開示されている。特許文献1の装置は、フレーム前方にスクレーパと、フレーム後方にハンドルを設け、フレーム中央部にモータープーリードラムを設けている。モータープーリードラムが回転駆動することにより、スクレーパが走行路面上を移動し物体を掻き集めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業面であるスクレーパの前面を前方に向けた状態から上方に向けた状態に切り替える場合、作業者はハンドルを大きく下方に下げなければならず、作業者にとって負担となる。
また、ハンドルとスクレーパの位置関係によっては、下方に押し下げたハンドルが路面に衝突して、これ以上押し下げることができない状況が発生する。すると、ハンドルの上下動に連動するスクレーパも上方に回動することができないので、スクレーパの面を上方に向けることができない課題が生じる。
【0005】
本発明は上記課題に着眼してなされたものであり、ハンドル部の上下操作量を抑制しながらも作業面を大きく回動させることができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、
機枠の一端側に設けて作業者が把持するハンドルと、
前記機枠の一端側に設けて前記ハンドルを上下方向に旋回可能にする第1支点部と、
前記機枠の他端側に位置させて設けた作業部と、
前記機枠の他端側で前記作業部を上下方向に旋回可能にする第2支点部と、
前記ハンドルと前記作業部とを連結し、前記ハンドルの前記第1支点部周りの旋回運動を前記第2支点部周りの前記作業部の旋回運動に連動させる連結部と、
を備えたことを特徴とする作業機、
に係る。
【0007】
この発明は、更に、
前記作業部は、前記作業部の前端部に設けるとともに、物体が移動できる面である移動面を設けたスクレーパと、を備え、
前記移動面は、前記第2支点部によって前方斜め上方に向けた位置から後方斜め上方に向けた位置まで回動可能に設ける、
ことを特徴とする作業機、
に係る。
【0008】
この発明は、更に、
前記連動による前記作業部の旋回角度は前記ハンドルの旋回角度より大きく設ける、
ことを特徴とする作業機、
に係る。
【0009】
この発明は、更に、
前記機枠には、ダンプガイドを設け、
前記作業部には、ガイドピンを設け、
前記作業部には、物体を押したり物体を掬い上げたりすることが可能なバケット部を設け、
前記ガイドピンは前記作業部の上昇に伴って上昇して前記ダンプガイドとの接触により、前記バケット部は、進行方向前記ガイドピンと前記ダンプガイドが接触した側へ傾くとともに、前記ガイドピンと前記ダンプガイドが接触した側に揺動する、
ことを特徴とする作業機、
に係る。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ハンドル部の上下操作量を抑制しながらも作業面を大きく回動させることができる作業機を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施例に係る作業機の側面図である。
【
図2】この発明の実施例に係る作業機の平面図である。図中右側が前進方向である。
【
図3】この発明の実施例に係る作業機の正面図である。
【
図4】この発明の実施例に係る作業機の側面図である。ガイドピンがダンプガイドに接触した瞬間の作業部の上昇状態をあらわす。図中右側が前進方向である。
【
図5】この発明の実施例に係る作業機の側面図である。作業部上昇状態であって、ガイドピンがダンプガイドに接触した状態で、更に作業部を上昇させ、作業部が進行方向右方に揺動して、作業部の進行方向右端部が下方向に傾動した状態をあらわす。図中右側が進行方向である。
【
図6】この発明の実施例に係る作業機の正面図である。作業部上昇状態であって、ガイドピンがダンプガイドに接触した状態で、更に作業部を上昇させ、作業部が進行方向右方に揺動して、作業部の進行方向右端部が下方向に傾動した状態をあらわす。ハンドルと連結部は図示を省略してある。
【
図7】この発明の実施例に係る作業機の平面図である。作業部上昇状態であって、ガイドピンがダンプガイドに接触した状態で、更に作業部を上昇させ、作業部が進行方向右方に揺動して、作業部の進行方向右端部が下方向に傾動した状態をあらわす。ハンドルと連結部は図示を省略してある。
【
図8】この発明の実施例に係る作業機の説明図である。リンク部の背面を基準にした時の、作業部の背面図である。作業部上昇に伴って、ガイドピンがダンプガイドに接触した瞬間をあらわす。機枠の一部は省略してある。図中奥が進行方向である。
【
図9】この発明の実施例に係る作業機の説明図である。リンク部の背面を基準にした時の、作業部の背面図である。作業部上昇に伴って、バケット部が中央位置から側方位置に至る途中の状態を示す。ガイドピンはダンプガイドに接触しながら側方に移動している。機枠の一部は省略している。図中奥が進行方向である。
【
図10】この発明の実施例に係る作業機の説明図である。リンク部の背面を基準にした時の、作業部の背面図である。作業部上昇に伴って、作業部が進行方向右方に揺動し、作業部の進行方向右端部が下方向に傾動した状態を示す。機枠の一部は省略している。図中奥が進行方向である。
【
図11】この発明の実施例に係る作業機の側面図である。図中右側が進行方向である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施例に係る作業機Aについて図面にしたがって説明する。
11は、機枠である。機枠11は、
図2、
図7に図示するように平面視において環状に形成する。12は、走行部である。走行部12は、機枠11の中央部に配置する。
作業機Aは、走行部12によって、走行面B上を移動可能である。この発明の実施例では、走行車輪を配置した形式からなるが、履帯を配置した形式でも走行が可能である。
【0013】
走行部12は動力の有無を問わない。走行部12が動力を有さない場合は、機枠11を前後方向に押すことで、走行部12である走行車輪又は履帯が走行面Bを転動し、作業機Aが前後に移動ができる。
走行部12である走行車輪が動力によって回転駆動する場合は、走行車輪の中心部あるいは走行車輪とは別の場所にモータを配置し、このモータが発生させる回転動力を走行車輪に伝動することによって自走移動させることが可能である。
走行部12である履帯が動力によって回転駆動する場合は、履帯の内周側の前後いずれか一方にモータ等の回転動力を受けて回転駆動する駆動輪と、前後いずれか他方に従動輪を配置することによって、駆動力を受けた履帯が周回駆動し、作業機Aを自走移動可能にさせる。
【0014】
21は、ハンドルである。ハンドル21は、機枠11の後方側である一端側に設けて作業者が把持する。
ハンドル21の下端は機枠11に連結し、下端から上方に向けて設け、上端部は作業者が把持する把持部22を設ける。
【0015】
作業者が、把持部22を把持して機枠11を前後に押すことで、走行部12が走行面Bを転動し、機枠11を含む作業機Aが前後に移動できる。
自走可能な形式で構成した場合、把持部22は、駆動源の回転をオン及びオフを操作するアクセルレバー23と、駆動源の回転方向及び回転速度の度合いを調整可能なシフトレバー24を有してもよい。アクセルレバー23とシフトレバー24を操作するのみで作業機Aは自走することができる。
【0016】
25は、第1支点部である。第1支点部25は、機枠11の一端側である作業者側に設け、ハンドル21を進行方向に対する左右を軸にして上下方向に旋回可能にする。
ハンドル21の下端と機枠11との連結は、第1支点部25によっておこなう。第1支点部25によって、ハンドル21の上端側は前後あるいは上下に揺動可能に設けている。
【0017】
26は、第2支点部である。第2支点部は、機枠11他端部である前部位置に設ける。
機枠11前部である他端側に位置する第2支点部26(支点部)によって、作業機A前方に位置する作業部31は、進行方向に対する左右を軸にして上下旋回が可能である。
作業部31は、第2支点部26に連結し、アーム部32とバケット部33を連結するリンク部を有している。
【0018】
31は、作業部である。作業部31は、機枠11の前方側である他端側に位置させて設ける。
作業部31は、第2支点部26から接続順に、アーム部32、リンク部41、バケット部33を有する。アーム部32は、側面視L字状からなる。アーム部32は、第2支点部26周りに上下方向に旋回自在である。
【0019】
アーム部32の一端側である前端部には、第1リンク連結部44を設ける。アーム部32の前方に位置するバケット部33の後部には、第2リンク連結部45を設ける。
作業部31は、アーム部32と、アーム部32の一端側である前端部に配置するバケット部33とで構成する。バケット部33は、
図1に図示するように、物体Wを押したり物体Wを掬い上げたりすることが可能である。さらに、アーム部32とバケット部33は後述するリンク部41で連結する。
【0020】
51は、連結部である。連結部51は、この発明の実施例では、ロッド部材からなる。連結部51により、アーム部32とハンドル21を連結し、アーム部32の第2支点部26近傍に位置する他端側と、ハンドル21の中間部とを連結し、ハンドル21と作業部31とを連結する。
連結部51で、アーム部32とハンドル21を連結することで、第2支点部26周りに上下旋回するアーム部32と、第1支点部25周りに旋回するハンドル21を連動させる。連結部51は、ハンドル21の第1支点部25周りの旋回運動を第2支点部26周りの作業部31の旋回運動に連動させる。
連結部51によってハンドル21と作業部31の揺動が連動する。実施例でのハンドル21と作業部31が連動する揺動方向、それぞれが同じ方向になるように連動させる。つまり、ハンドル21の上端部を後方側の下方に倒すと作業部31は上昇し、前にハンドル21の上端部を前方側の上方に起こすと作業部31は下降する。
【0021】
52は、ダンプガイドである。ダンプガイド52は、棒状部材からなる。ダンプガイド52は、機枠11の前端部に、進行方向左右水平に向けて固定する。
ダンプガイド52は、第2支点部26の近傍に位置させ、作業部31が接地状態において、ガイドピン61より上方に位置させている。ガイドピン61はバケット部33の上部に設け、後方に向けて突出させた部材である。ガイドピン61の詳細については後述する。ダンプガイド52は、機枠11の左右いずれか一方側に突出させ、ガイドピン61の後方側端部よりも側方に突出させている。この発明の実施例の場合は、
図2、
図3、
図6乃至
図10に図示するように進行方向右側に突出させている。
【0022】
41は、リンク部である。44は、第1リンク連結部である。45は、第2リンク連結部である。
リンク部41は、第1リンク42及び第2リンク43の二つのリンク片で構成する。実施例では、進行方向右側に第1リンク42、進行方向左側に第2リンク43をそれぞれ並べて配置する。リンク部41は、アーム部32と、バケット部33との間に設けることによって、バケット部33をアーム部32に対して進行方向に対する左右方向に揺動及び傾動を自在にさせることができる。
第1リンク42は、両端は作業部31に取り付けている。
【0023】
第1リンク連結部44は、アーム部32の前端に設ける。第1リンク連結部44は、
図8乃至
図10等に図示するように進行方向左右に並べて、第1リンク42と第2リンク43を設け、それぞれの上部を第1リンク連結部44に左右方向に揺動時自在に連結する。
第2リンク連結部45は、アーム部32の前方に位置するバケット部の後部かつ第1リンク連結部44の下方に設ける。第2リンク連結部45は、
図8乃至
図10等に図示するように、第1リンク連結部44に対して左右揺動自在にされた第1リンク42と第2リンク43の、それぞれの下部を連結する
リンク部41は、左右一対に設けたアーム部32の前端に架け渡した第1リンク連結部44に連結されている。
【0024】
アーム部32は、第2支点部26を支点に上下方向に回動する。第1リンク42の上端部は第1リンク連結部44に連結され、第1リンク42は第1リンク連結部44に垂れ下げている。
第2リンク43も同様、第2リンク43の上端部は第1リンク連結部44に連結され、第2リンク43は第1リンク連結部44に垂れ下げている。
第1リンク42及び第2リンク43の下端部はバケット部33の後方下部に位置する第2リンク連結部45に進行方向左右に揺動自在に連結する。バケット部33は、バケット部33の下部がリンク部41によって、吊り下げた状態であり、バケット部33がアーム部32に対して進行方向に対して左右方向に揺動自在及び傾斜自在な状態に構成する。
リンク部41によってバケット部33は、アーム部32に対して進行方向に対して左右方向に揺動自在に支持される。
【0025】
リンク部41は、アーム部32とバケット部33を連結し、バケット部33を進行方向左右に揺動自在にするとともにバケット部33を進行方向に対して
図9乃至
図10に図示するように傾斜させることができる。第1リンク42及び第2リンクは、
図8に図示するように、上方から下方に至るにしたがって互いに近づくように傾斜して配置させる。
リンク部41は、2つのリンクである第1リンク42、第2リンク43のそれぞれの上端部を、アーム部32の先端部に位置した第1リンク連結部44に前後軸を支点にして連結し、下端側が左右方向に回動自在に設ける。第1リンク42、第2リンク43の下端部のそれぞれは、バケット部33の後部下端部に位置した第2リンク連結部45に、上端側と平行な前後軸を支点にして連結させる。バケット部33は、アーム部32先端からバケット部33の下端側を吊り下げる格好で、アーム部32と連結させている。
【0026】
リンク部41は四節リンクを形成してアーム部32とバケット部33を連結している。アーム部32側のリンク片の上端部同士の距離と、バケット部33側のリンク片の下端部同士の距離を比較すると、前者の距離を大きく設けている。このリンク部41の構成によって、バケット部33を進行方向左右に揺動自在にするとともに、バケット部33が左右いずれか側方に揺動するほどに、バケット部33の左右端部が進行方向に対して上下方向に傾斜させる度合いを増加させることができる。実施例では、バケット部33が進行方向右側に揺動させるにしたがって、バケット部33の右端部が左端部に対して下方に下がるように、バケット部が大きく傾斜するように構成している。
【0027】
63は、規制ピンである。規制ピン63は、棒状の部材であり、バケット部33の上部中央から後方に向けて位置させ、バケット部33と一体的に固定されている。
バケット部33は、規制ピン63を、作業部31が下方に旋回した状態においてバケット部33からガイド板64に向かって設ける。規制ピン63は、ガイド板64間に位置することによってバケット部33の進行方向左右に揺動を規制し、作業部31が上方に旋回した状態においてガイド板64による規制から解放させる。
【0028】
64は、ガイド板である。ガイド板64は、2枚の板からなり、機枠11の端部に固定させ、互いに対向させて設ける。
ガイド板64は、規制ピン63を進行方向左右両側から挟むように、互いに対向させて一対設ける。この発明の実施例におけるガイド板64は、
図6、
図8乃至
図10に図示するように、前端に規制ピン63のガイド用部材65である丸棒を沿わせている。
規制ピン63は一対のガイド板64間に位置することで、バケット部33の左右揺動及び左右端部の上下傾動を阻止することが可能である。この揺動及び傾動の阻止は、バケット部33の上昇に伴って、規制ピン63がガイド板64の上方に移動して、一対のガイド板64間に位置しなくなると解除される。
【0029】
バケット部33は、
図1以下に図示するように、作業部31のアーム部32の端部に位置して設ける。バケット部33は、物体Wを押したり物体Wを掬い上げたりすることが可能である。
バケット部33の側面視は、
図4、
図11に図示するように、板状部材の上下に対する中央部前面を凹部状に湾曲させた湾曲面を有する形状からなる。バケット部33の進行方向に対する左右側面は開放されている。
バケット部33は、ガイドピン61の近傍に規制ピン63を後方に向けて突出させている。規制ピン63は、バケット部33と一体的に固定されている。
【0030】
34は、スクレーパである。スクレーパ34は、
図1以下に図示するように、作業部31の前端部であるバケット部33の先端下部に設ける。スクレーパ34の表面には、物体Wが移動できる面である移動面を設ける。移動面は、第2支点部26によって前方斜め上方に向けた位置から後方斜め上方に向けた位置まで回動可能に設ける。
スクレーパ34は、作業部31を下降させた時に走行面Bに接地させ、スクレーパ34の前端が走行する走行面Bと走行面B上に存在する物体Wの間に位置させることができる。
【0031】
61は、ガイドピンである。ガイドピン61は、
図8乃至
図10他に図示するように作業部31のバケット部33の上部に固定させて設ける。また、実施例でのガイドピン61は、バケット部33の上部から後方に向けて突出させていて、進行方向に対する左右対称に二股状に1対設けている。
ガイドピン61は、作業部31を上昇させることで、ダンプガイド52に対して相対的に上昇し、やがて一方のガイドピン61がダンプガイド52に接触する。この時、作業部31の上昇途中までガイド板64間に位置した規制ピン63は、ガイド板64より上方に位置することとなり、バケット部33の左右揺動及び左右端部の上下傾動の阻止状態が解除される。
図4及び
図8に示すように、作業部31に固定されたガイドピン61は作業部31の上昇に伴って上昇して、一定の上昇位置に達すると、機枠11に固定されたダンプガイド52に接触する。ガイドピン61とダンプガイド52との接触後さらに作業部31を上昇させると、ガイドピン61とダンプガイド52との接触の継続により、
図5、
図6、
図7、
図9、
図10に図示するようにダンプガイド52が接触した側のバケット部33は上昇を阻止される。この発明の実施例では、進行方向右側の作業部31のうちのバケット部33が上昇を阻止される。
【0032】
ガイドピン61とダンプガイド52が接触しない側では、
図5、
図6、
図7、
図9、
図10に図示するように、進行方向左側のバケット部33は上昇を阻止されてはいない。そのため、ガイドピン61とダンプガイド52が接触した状態で作業部31を上昇させると、
図5、
図6、
図7、
図9、
図10に図示するように、リンク部41によって支持されたバケット部33は、進行方向ガイドピン61とダンプガイド52が接触した側である進行方向右側端部が下方へ傾くとともに、ガイドピン61とダンプガイド52が接触した側進行方向右側に揺動を開始する。ガイドピン61とダンプガイド52が接触した状態での作業部31の昇降途中は、ガイドピン61とダンプガイド52は接触を継続しながら、ガイドピン61がダンプガイド52に対して進行方向に対する左右幅方向に移動する。
【0033】
図8乃至
図10に図示する62は、ブラケットである。ブラケット62は側面視において、第1リンク連結部44の上方から後方を覆うようにバケット部上部に形成し、第1リンク連結部44及びリンク部41上部を保護する。
バケット部33の上部に形成したブラケット62にガイドピン61及び規制ピン63を設ける。ガイドピン61は棒状の部材からなり、後端側を後方やや左右側方に向けて突出させている。この発明の実施例の場合、ガイドピン61は、後方やや左側方と、後方やや右側方の二股状に突出させている。ガイドピン61は、バケット部33に一体となって固定されているため、作業部31の昇降に伴い昇降する。
ガイドピン61は、バケット部33に設け、作業部31が上方に旋回したときにダンプガイド52に接触することによってバケット部33を強制的に傾斜させる。
【0034】
ガイドピン61とダンプガイド52の位置関係について説明する。
図1、
図11において、l1は、第2支点部26から、ガイドピン61先端までの距離である。同
図1、
図11において、l2は、第2支点部26から、ダンプガイド52までの距離である。
側面視における第2支点部26を基準にした場合、
図1以下に図示するように第2支点部26からダンプガイド52の距離l2は、第2支点部26からガイドピン61の後端までの距離l1よりも、長く設けている。すなわち、第2支点部26を支点に上下旋回する作業部31と一体になったガイドピン61の後端部の旋回半径は、ダンプガイド52より第2支点部26側に位置している。これは、第2支点部26を支点に作業部31が上下旋回すると、やがてガイドピン61の後端部がダンプガイド52に接触することを意味する。
【0035】
ガイドピン61は、作業部31を上昇させることで、
図9、
図10に図示するように、ダンプガイド52に接触し、さらに作業部31を上昇させることでバケット部を進行方向右側へ傾けることができる。
バケット部33の揺動後又は傾動後に、作業部31の上昇を途中で止めても、ダンプガイド52がガイドピン61の上部に位置して、ガイドピン61の上昇を規制しているので、バケット部33が元の位置に復帰することを防ぐことができる。
【0036】
図8に図示するoは、瞬間中心である。瞬間中心oは、作業部31であるバケット部33の傾きを形成する回転中心である。バケット部33が第1リンク42と第2リンク43によって揺動したときに、第1リンク42と第2リンク43とで形成される仮想の中心である瞬間中心oを軸として、バケット部33は回転する。
図8では、ガイドピン61がダンプガイド52に接触した瞬間であり、瞬間中心o周りでのバケット部33の傾動動作は開始されていない。
【0037】
図8に図示するように、瞬間中心oは、第1リンク連結部44と第2リンク連結部45を第1リンク42及び第2リンク43で結んだ仮想直線の交点である。バケット部33の傾きの回転中心である瞬間中心は、バケット部33の傾斜位置及び揺動位置によって、バケット部33との相対位置を変化させる。
作業部31上昇時のバケット部33の揺動又は傾動のきっかけを、ガイドピン61とダンプガイド52との接触で発生させる。その後は、第1リンク42と第2リンク43で形成するリンク機構で揺動又は傾動の動きを生み出す。バケット部33の傾きは、第1リンク42と第2リンク43で形成される仮想点である回転中心を瞬間中心oにして回転する。
図8に図示する瞬間中心oは、バケット部33の進行方向に対する左右中央部の下方に位置している。
そして、さらに作業部31を上昇させると瞬間中心oは、
図9に示すように、バケット部33に対して、相対的な進行方向に対する右側方且つ上方に移動しながら、第2リンク連結部に近づいていく。作業部31を上昇中のバケット部33は、第1リンク42と第2リンク43によって、側方に揺動するとともに、移動する瞬間中心oを軸にして傾動動作をする。
図9に示すように、バケット部33の側部に位置する瞬間中心oによって、バケット部33は大きく左右方向に傾動させることができる。
【0038】
図8に図示の状態からさらに作業部31を上昇させることで、第2リンク連結部45が
図9に図示する状態に持ち上がる。
図9の状態からさらに作業部31を上昇させると、第2リンク連結部45が、
図10に図示するように、
図8及び
図9に図示する状態と比較して、第1リンク連結部44に対してさらに持ち上がり、バケット部33が側方に揺動する。また、バケット部は、移動する瞬間中心oを軸にして傾動動作をする。
図10における瞬間中心oは
図9と比較して、バケット部33に対して、バケット部33の相対的な中央部よりやや右側方且つ第2リンク連結部45の上方部に移動する。
図10に示すように、バケット部33のやや中央部に位置する瞬間中心oによって、上昇最後部のバケット部33は、あたかも、その場でひっくり返るような動作を行うことができる。これによって、バケット部33は、バケット部33上から物体Wを振り落とすような作用を物体Wに与えることができる。
【0039】
実施例の場合、作業部31を上昇させて最上位に達すると、
図10に図示するように、第1リンク42の長手方向が第2リンク連結部45の底面部より相対的な下方に達するまで回動する。
ただし、リンク部41で揺動したときのバケット部33の傾斜角度を大きくとり、物体Wが滑り落ちればよく、必ずしも第1リンク42が第2リンク連結部45に対して、逆方向まで回動するとは限らない。
【0040】
作業状態時の第1リンク42と第2リンク43同士の相対距離である上部距離に対して、下部距離が小さくなるように設けていることによって、作業部31を上昇させることで、
図8に図示する様態から、
図9に図示する状態を経て、
図10に図示するように、逆方向に折れ曲がるもしくは、逆方向に近くなるまで折れ曲がる、ようにリンク部41を形成する。
このように構成することで、バケット部33が左右方向に揺動する末端に位置するにつれて、バケット部33の傾斜角度を増加させることができ、バケット部33上にある物体Wを機体側方側に効率よく排出させることができる。
【0041】
リンク部41の構成によって、バケット部33の揺動末端に位置するにつれて、バケット部33の傾斜速度を増加させることができる。バケット部33が側方に揺動し、揺動末端部に位置したバケット部33上にある物体Wを、
図5、
図6に図示するように、機体側方側に勢いをつけて振り落とすように排出させることができる。
【0042】
ガイドピン61とダンプガイド52の作用について説明する。
バケット部33の前端側を走行面Bに接地させて前進することで、
図1に図示するように、土砂等の物体Wをバケット部33にかき集める。その後、アーム部32を、第2支点部26を軸にして上方に旋回させると、リンク部41とバケット部33も同時に上昇旋回する。バケット部33は、規制ピン63によってガイド板64で進行方向に対する左右方向への移動を規制されているので、アーム部32に対して進行方向左右に揺動及び傾動することがない。したがって、走行面Bあるいは機枠11に対し、バケット部33のスクレーパ34先端が走行面Bと平行的に上昇する。
【0043】
さらにアーム部32の上方旋回を継続すると、ブレード部に固定されたガイドピン61の後端部とダンプガイド52が接触する。この発明の実施例では、一方である右側のガイドピン61と、ダンプガイド52の右側が接触する。
さらにアーム部32を上昇側に旋回させると、側面視でガイド板64の上端から規制ピン63が出現し、ガイド板64と規制ピン63によるバケット部33の左右揺動及び傾動阻止状態が解除される。
【0044】
さらにアーム部32を上昇側に旋回させると、
図9、
図10に順次図示するように、ダンプガイド52によってガイドピン61が係合しているので、ガイドピン61後端部の上昇が規制される。また、ガイドピン61が固定されるバケット部33は、リンク部41によって左右揺動、且つ、上下傾動が可能にされている。したがって、ダンプガイド52がガイドピン61後端部を強制的に押さえつけることで、リンク部41によって支持されるバケット部33は、左右方向に揺動及び左右端部が上下方向に揺動を開始する。
図示するこの発明の実施例でのバケット部33は、機枠11に対して進行方向右側にオフセットするとともに、バケット部33の左側端部より右側端部が下方に下がるように傾斜する。
【0045】
したがって、バケット部33上にある掻き集められた物体Wは、
図5、
図6、
図7に図示するように、傾斜したバケット部33の傾斜に従って滑り落ちる。また、物体Wが滑り落ちる側の、バケット部33の左右いずれかの端部は、進行方向左右いずれか側方にオフセットしているので、機体11の進行方向を塞ぐことがない位置に排出することができる。図示でのバケット部33は、進行方向右側にオフセットし、バケット部33右側端部が下方に下がるように設けたが、ダンプガイド52の突出向きを反対側である左側に設け、他方である左側のガイドピン61をダンプガイド52に接触させることで、例示とは逆の左側にオフセットさせ、左側端部を下方に傾斜させることができる。
物体Wの排出が終了後、アーム部32を下降させると、上記の作業部の上昇手順と逆の工程を辿って、バケット部33の揺動及び傾動を元の位置に復帰させつつ下降させることができる。
【0046】
この発明の実施例では、作業者が把持部22を押し下げるだけの動作によって、バケット部33に積載された物体Wを持ち上げるとともに、側方の遠い位置に物体Wを排出させることが可能となる。
【0047】
本発明に係る実施例の説明では、作業者による操作での、作業部31への物体Wの積載と、作業部31からの排出をした。しかし、本発明は、作業者が操作するハンドル21がなくても実施可能である。アーム部32に直接、あるいは、これに連結する連結部51やハンドル21に、シリンダやモータ等の駆動源を接続してアーム部32を上下動させるだけで、バケット部33の左右揺動と上下傾動をさせることができる。すなわち、少なくともバケット部33の上下動を駆動源で補助することで、物体Wの排出に係る機構を構成できるので、作業機Aの構成として簡易なものとできる。
【0048】
スクレーパ34およびバケット部33の作用について説明する。
図1に図示するように、スクレーパ34の前進によって物体Wを走行面Bから剥がすとともに、相対移動してくる走行面Bから剥がした物体Wより前方にある物体Wによって、走行面Bから剥がした物体Wをスクレーパ34上面に押し出す。このようにして、土砂等の物体Wをバケット部33の上面部に移動させ、物体Wを掬うことができる。
【0049】
第1支点部25と連結部51が連結されるハンドル21中間部と、第2支点部26とアーム部32の他端側との、それぞれの距離は前者が大きくなるように設けている。これにより、ハンドル21が揺動した場合に、ハンドル21の旋回角度に対して、作業部31の旋回角度を大きくすることができる。
すなわち、作業者が、把持部22を把持して、ハンドル21を短い距離を押し下げることによって、作業部31が大きく旋回上昇することが可能になっている。この発明の実施例の場合、ハンドル21上端部の把持部22を作業者が押し下げることによって、作業部31が上方に旋回する。上方に旋回した作業部31は、走行面Bより上方に位置させることができる。
【0050】
この発明を適用させた実施例である作業機Aを用いた作業の説明をする。
作業者がハンドル21の把持部22を把持してハンドル21を持ち上げると作業部31が降下する。走行面Bにスクレーパ34の先端が接触すると、作業部31の降下は止まるとともに、ハンドル21の上方側及び前方側への回動も規制される。
【0051】
作業者が把持部22を把持して前進すると、作業機Aが前進する。ハンドル21は、スクレーパ34と走行面Bの接触によって前方側への回動も規制されているので、作業者が把持部22を把持して作業機Aを前進させる限り、スクレーパ34と走行面Bの接触状態を維持して前進する。
【0052】
スクレーパ34と走行面Bが接触状態で前進すると、
図1に図示するように、スクレーパ34先端部は走行面Bとこの上方に位置する物体Wとの間に入り込み、物体Wを走行面Bから剥がすことができる。さらに、作業機Aの前進を継続させると、相対的に前方から相対移動してくる物体Wに押されることよって、物体Wはスクレーパ34上面に移動する。さらに続けると、物体Wはバケット部33の湾曲面上に移動し、載置されることとなる。
【0053】
バケット部33の湾曲面上に任意量が載置された後、作業者は前進を停止し、把持部22を押し下げると、作業部31が第2支点部26を支点にして上方に旋回する。作業部31は、ハンドル21の第1支点部25周りの旋回角度量に対して、上方に大きな旋回角度量を以って旋回するので、作業者が把持部22を以って大きく動作しなくても、物体Wを走行面Bより上方に掬い上げることができる。
【0054】
(付記)
前記機枠には、ダンプガイドを設け、
前記作業部には、ガイドピンを設け、
前記作業部には、物体を押したり物体を掬い上げたりすることが可能なバケット部を設け、
前記ガイドピンは前記作業部の上昇に伴って上昇して前記ダンプガイドに接触し、さらに前記作業部を上昇させると、前記ガイドピンと、前記ガイドピンと前記ダンプガイドとの接触により、前記ダンプガイドが接触した側の前記作業部のうちの前記バケット部は上昇を阻止され、前記ガイドピンと前記ダンプガイドが接触しない側の前記バケット部は上昇を阻止されてはいないため、前記ガイドピンと前記ダンプガイドが接触した状態で前記作業部を上昇させると、前記リンク部によって支持された前記バケット部は、進行方向前記ガイドピンと前記ダンプガイドが接触した側へ傾くとともに、前記ガイドピンと前記ダンプガイドが接触した側に揺動する、
ことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の作業機。
【符号の説明】
【0055】
11 機枠
21 ハンドル
25 第1支点部
26 第2支点部
31 作業部
33 バケット部
34 スクレーパ
41 リンク部
51 連結部
52 ダンプガイド
61 ガイドピン
A 作業機
W 物体