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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079334
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20230601BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
F28D20/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192753
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】西村 晃一
(72)【発明者】
【氏名】市場 元康
(72)【発明者】
【氏名】安部 航
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045DA02
3L045EA01
3L045HA02
3L045HA07
3L045JA12
3L045JA15
3L045KA14
3L045LA06
3L045LA10
3L045LA11
3L045LA12
3L045LA15
3L045MA04
3L045NA01
3L045NA03
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
3L045PA05
(57)【要約】
【課題】本開示は、蓄冷材を備えた冷蔵庫において、蓄冷運転時により速く蓄冷することを目的とする。
【解決手段】本開示における冷蔵庫は、圧縮機と、凝縮器と、減圧手段と、蒸発器とを環状に接続した冷却システムと、内部に蒸発器を備えた貯蔵室と、蒸発器で生成した冷気を貯蔵室内に循環させる冷却ファンと、蒸発器と熱的に接触した蓄冷材と、蒸発器の温度を検知する温度検知手段と、を備え、温度検知手段で検知した蒸発器の温度を、蓄冷材の凝固温度以下となるように、制御する
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、凝縮器と、減圧手段と、蒸発器とを環状に接続した冷却システムと、
内部に前記蒸発器を備えた貯蔵室と、前記蒸発器で生成した冷気を前記貯蔵室内に循環させる冷却ファンと、
前記蒸発器と熱的に接触した蓄冷材と、
前記蒸発器の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段で検知した前記蒸発器の温度を、前記蓄冷材の凝固温度以下となるように制御する制御手段と、を備えた冷蔵庫。
【請求項2】
デマンド信号を受信する受信部を備え、
前記受信部がデマンド信号を受信した際に、前記制御手段は前記蒸発器の温度を、前記蓄冷材の凝固点以下となるように制御する請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記圧縮機は、能力可変な圧縮機であり、
前記温度検知手段により前記蒸発器の温度が前記蓄冷材の凝固点以上となったことを検知した時に、前記制御手段によって前記圧縮機の能力を増加させることを特徴とした請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記冷却ファンは、能力可変な冷却ファンであり、
前記温度検知手段により前記蒸発器の温度が前記蓄冷材の凝固点以上となったことを検知した時に、前記制御手段によって前記冷却ファンの能力を低下させることを特徴とした請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記減圧手段は、減圧量可変な減圧手段であり、
前記温度検知手段により前記蒸発器の温度が前記蓄冷材の凝固点以上となったことを検知した時に、前記制御手段によって前記減圧手段の減圧量を増加させることを特徴とした請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は蓄冷材を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貯蔵室の内壁面に蓄冷材を設け、貯蔵室内の温度が目標設定温度に保たれるように運転する通常運転と、貯蔵室内の温度が通常運転における目標設定温度よりも低く、かつ、蓄冷材の凝固点よりも低い蓄冷時設定温度に保たれるようにする蓄冷運転とを選択的に実行する冷蔵庫を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-242064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、蓄冷材を用いた冷蔵庫において、蓄冷速度を向上させることにより、省エネ性の高い冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における冷蔵庫は、圧縮機と、凝縮器と、減圧手段と、蒸発器とを環状に接続した冷却システムと、内部に蒸発器を備えた貯蔵室と、蒸発器で生成した冷気を貯蔵室内に循環させる冷却ファンと、蒸発器と熱的に接触した蓄冷材と、蒸発器の温度を検知する温度検知手段と、温度検知手段で検知した蒸発器の温度を、蓄冷材の凝固温度以下となるように制御する制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示における冷蔵庫は、制御手段により、蒸発器の温度を、蓄冷材の凝固温度以下とすることにより、庫内負荷の増加により庫内温度が上昇しても、蒸発器の温度が上昇することはなく、効率よく蓄冷することができる。そのため、蓄冷速度を向上させることができ、省エネ性の高い冷蔵庫とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1における冷蔵庫の断面図
図2】実施の形態1における冷蔵庫の冷却システム図
図3】実施の形態1における冷蔵庫の冷蔵蒸発器の斜視図
図4】実施の形態1における冷蔵庫の蓄放冷運転時のフローチャート
図5】実施の形態1における冷蔵庫の通常冷却運転時のフローチャート
図6】実施の形態1における冷蔵庫の各部の温度を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
冷蔵庫業界では、冷却サイクルによって生成した冷熱を、そのまま冷蔵庫内を冷却するために利用するだけでなく、蓄冷材を用いて冷熱を蓄え、冷却サイクルが運転していない時に冷蔵庫内を冷却するために利用するものも提案されていた。
【0009】
例えば、庫内に樹脂容器に充填した潜熱蓄冷材を収納し、通常冷却時は、蓄冷材は冷熱を蓄えた状態(蓄冷)で、停電などにより庫内温度が上昇した時に、蓄えた冷熱により庫内の温度上昇を抑制する(放冷)冷蔵庫である。
【0010】
また、電力会社などでは、電力の需要と供給のバランスを取るため、需要側の電力を制限するよう調整する、デマンドレスポンスも採用されているが、デマンドレスポンス要請を受けて蓄冷し、デマンドレスポンスで指定された需要側の電力を抑制する時刻に放冷することにより対応可能である。
【0011】
しかしながら、特許文献1においては、蓄冷材が貯蔵室の壁面に設けられているため、蒸発器の温度が直接蓄冷材に伝わらない。さらに、庫内負荷の上昇などにより、蒸発器温度が蓄冷材の凝固温度以上に上昇した際には、蓄冷材が凝固せず、蓄冷に時間を要する。この結果、デマンド信号を受信しても、蓄冷が完了するまでに時間がかかり、蓄冷効果を十分得ることが難しかった。
【0012】
発明者らは、蒸発器と蓄冷材が熱的に接触していないことにより、蒸発器が冷却されても蓄冷材を冷却するまでに時間的なラグが生じ、さらに蒸発器温度により蓄冷の効率も変化すると考え、この課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0013】
そこで、本開示は、蒸発器と蓄冷材を熱的に接触させ、さらに蒸発器の温度を常に蓄冷材の凝固温度より低く保つことにより、蓄冷材の蓄冷効率を向上させ、蓄冷速度の速い冷蔵庫を提供する。
【0014】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0015】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0016】
(実施の形態1)
以下、図1図6を用いて、実施の形態1を説明する。
【0017】
[1-1、構成]
図1及び図2において、冷蔵庫1は、仕切り2により上下に仕切られた断熱箱体3から構成されており、仕切り2より上方を、室内を約4℃の冷蔵温度帯に維持した冷蔵室4、仕切り2より下方を、室内を約-18℃の冷凍温度帯に維持した冷凍室5とし、前面が断熱扉6、7によって開閉自在に閉塞されている。
【0018】
冷蔵室4と冷凍室5の背面には、例えばイソブタンなどを冷媒とした、圧縮機8、凝縮器9、三方弁10、減圧手段である冷蔵キャピラリ12、冷凍キャピラリ13、逆止弁14と接続して冷却システム11を構成する冷蔵蒸発器15及び冷凍蒸発器16と、冷蔵蒸発器15で生成した冷気を冷蔵室4内に循環させる冷蔵ファン17と、冷凍蒸発器16で生成した冷気を冷凍室5内に循環させる冷凍ファン18と、を備えている。
【0019】
冷蔵室4と冷凍室5内部には、それぞれの貯蔵室内の温度を測定する冷蔵室センサ19と冷凍室センサ20とを、備えている。
【0020】
冷蔵蒸発器15は、冷蔵蒸発器15の温度を検知する蒸発器温度検知手段21と、冷蔵蒸発器15と熱的に接触した蓄冷材22と、を備えている。
【0021】
冷蔵蒸発器15と蓄冷材22の具体構成について図3を用いて説明する。
【0022】
図3に示すように、本開示の冷蔵蒸発器15は、後述する冷媒の入口部となる入口ヘッダ23と、出口部となる出口ヘッダ24と、入口ヘッダ23内部空間と出口ヘッダ24内部空間を連通する、内部に後述する冷媒が流れる複数の流路を備え、蛇行型に折れ曲がった扁平管25と、波上のフィン26と蓄冷材22を蛇行した扁平管25の直管部の間に交互に密着させた構成となっている。蓄冷材22は、例えば、凝固温度が-5℃の高吸水性樹脂を、樹脂ケース内に充填した構成となっている。
【0023】
冷凍蒸発器16は、フィンチューブ型熱交換器となっている(詳細は図示せず)。
【0024】
また、断熱箱体3外部の背面上部には、デマンド信号を受信する受信部27と、冷蔵庫の運転を制御する制御部28と、を備えている。
【0025】
[1-2、動作]
以上のように構成された冷蔵庫1について、以下その動作を説明する。
【0026】
図1から図6に基づいて、冷蔵庫1の動作を説明する。
【0027】
冷却運転を開始すると、冷蔵室センサ19、冷凍室センサ20の検知した温度に基づいて、制御部28によって三方弁10の冷媒の流れを冷蔵キャピラリ12、冷凍キャピラリ13、どちらにも連通しない全閉に切り替えることにより、冷蔵室4の冷却と冷凍室5の冷却を以下のように切り替える。
【0028】
冷凍室5冷却時、圧縮機8により圧縮された高温高圧のガス冷媒は、凝縮器9で冷却され、低温高圧の液冷媒となる。この液冷媒は、三方弁10により、冷凍キャピラリ13を流れ、低温低圧の気液二層冷媒となって冷凍蒸発器16へと流れる。
【0029】
冷凍蒸発器16へと流れた冷媒は、冷凍室5内の空気と熱交換することで蒸発し、蒸発気化熱により冷気を生成し、低温低圧のガス冷媒となり、逆止弁14を流れた後に、再び圧縮機8へと吸い込まれる。
【0030】
この時生成した冷気は、冷凍ファン18により、冷凍室5内を循環し、冷凍室5を冷却し、冷凍室センサ20がある一定の温度以下になると冷凍室5の冷却運転は終了する。
【0031】
次に、冷蔵室4冷却時、圧縮機8により圧縮された高温高圧のガス冷媒は、凝縮器9で冷却され、低温高圧の液冷媒となる。この液冷媒は、三方弁10により、冷蔵キャピラリ12を流れ、低温低圧の気液二層冷媒となって冷蔵蒸発器15へと流れる。
【0032】
冷蔵蒸発器15へと流れた冷媒は、冷蔵室4内の空気と熱交換することで蒸発し、蒸発気化熱により冷気を生成し、低温低圧のガス冷媒となり、再び圧縮機8へと吸い込まれる。
【0033】
この時生成した冷気は、冷蔵ファン17により、冷蔵室4内を循環し、冷蔵室4を冷却し、冷蔵室センサ19がある一定の温度以下になると、冷蔵室4の冷却運転は終了する。
【0034】
次に、受信部がデマンド信号を受信した時の動作について説明する。
【0035】
以下、詳細な運転について、図4及び図5を用いて説明する。
【0036】
冷蔵庫運転を開始すると、まずステップS1で、制御部28が、受信部27によりデマンド信号を受信したかどうかを判断し、受信した場合はステップS2へと移行して蓄放冷運転を開始し、受信していない場合はステップS10へと移行して通常冷却運転を開始する。
【0037】
[通常冷却運転]
通常冷却運転時、まずステップS11で、制御部28が、冷凍室センサ20により、冷凍室5内の温度がTf1より高いかどうかを比較し、低い場合はステップS11の処理を繰り返し、高い場合はステップS12へと移行する。
【0038】
ステップS12では冷蔵室冷却運転を開始し、制御部28により、圧縮機8を運転、三方弁10を冷蔵キャピラリ12側へ開、冷凍ファン18を停止、冷蔵ファン17を運転し、ステップS13へと移行する。
【0039】
ステップS13では、制御部28で冷蔵室センサ19により、冷蔵室4内の温度がTr2より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS13の処理を繰り返し、低い場合はステップS14へと移行する。
【0040】
ステップS14では冷凍室冷却運転を開始し、制御部28により、圧縮機8を引き続き運転、三方弁10を冷凍キャピラリ13側へ、冷凍ファン18を運転、冷蔵ファン17を停止し、ステップS15へと移行する。
【0041】
ステップS15では、制御部28が、冷蔵室センサ19により、冷蔵室4内の温度がTr1より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS12へと移行し、低い場合はステップS16へと移行する。
【0042】
ステップS16では、制御部28が、冷凍室センサ20により、冷凍室5内の温度がTf2より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS16の処理を繰り返し、低い場合はステップS17へと移行する。
【0043】
ステップS17では、圧縮機、冷蔵ファン17、冷凍ファン18を停止し、冷却運転を停止するとともに、STARTへと戻る。
【0044】
以上の動作により、冷蔵室4、冷凍室5を一定の温度範囲に維持する。
【0045】
[蓄放冷運転]
蓄放冷運転時、まずステップS2で蓄冷冷凍運転を開始し、制御部28により、圧縮機8を運転、三方弁10を冷凍キャピラリ13側へ、冷凍ファン18を運転、冷蔵ファン17を停止し、ステップS3へと移行する。
【0046】
ステップS3では、制御部28が、冷凍室センサ20により、冷凍室5内の温度がTf2より低い温度であるTf3より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS3の処理を繰り返し、低い場合はステップS4へと移行する。
【0047】
ステップS4では、蓄冷冷蔵運転を開始し、制御部28により、圧縮機8を引き続き運転、三方弁10を冷蔵キャピラリ12側へ、冷凍ファン18を停止、冷蔵ファン17を運転し、ステップS5へと移行する。
【0048】
ステップS5では、制御部28が、蒸発器温度検知手段21により、冷蔵蒸発器15の温度が蓄冷材の凝固温度であるTcより低い温度からTcを超えないかどうかを比較し、超える場合(冷蔵室4の熱負荷が大きい場合)はS6へと移行し、圧縮機8の回転数を増加させることにより、冷蔵蒸発器15の温度を低下させ、ステップS5へと移行し、超えない場合はステップS7へと移行する。
【0049】
ステップS7では、制御部28が、冷蔵室センサ19により、冷蔵室4内の温度がTr2より低いかどうかを比較し、高い場合はステップS7の処理を繰り返し、低い場合はステップS8へと移行する。
【0050】
ステップS8では、放冷運転を開始し、圧縮機8を停止、冷凍ファン18を運転、冷蔵ファン17を運転し、ステップS9へと移行する。
【0051】
ステップS9では、制御部28が、冷凍室センサ20により、冷凍室5内の温度がTf1より高いかどうかを比較し、低い場合はステップS10の処理を繰り返し、高い場合はステップS10へと移行し通常冷却を開始する。
【0052】
以上の説明における、蓄冷運転、放冷運転をした時の、圧縮機8、三方弁10、冷蔵ファン17、冷凍ファン18の動作と、冷蔵室センサ19、冷凍室センサ20、蒸発器温度検知手段21、蓄冷材22の温度変化の一例を、図6に基づいて説明する。
【0053】
ここで、冷蔵室センサ19と冷蔵室4、冷凍室センサ20と冷凍室5、蒸発器温度検知手段21と冷蔵蒸発器15の温度はほぼ同等と考えてよい。
【0054】
まず蓄冷運転について、時刻t1からt3の温度変化に基づいて説明する。
【0055】
時刻t1において、電力会社からのデマンド信号を受信部27が受信した時に(S1がYES)、制御部28により、圧縮機8を回転数R1で運転し、三方弁10を冷凍キャピラリ13側に開とし、冷蔵ファン17を停止し、冷凍ファン18を運転する。これにより、冷凍室5へと冷気が供給され、冷凍室5の温度が低下する。
【0056】
次に時刻t2において、冷凍室センサ20の温度が通常冷却時の下限温度であるTf2より低いTf3に到達したことを検知し(S3がYES)、制御部28により、三方弁10を冷蔵キャピラリ12側に開とし、冷蔵ファン17を運転し、冷凍ファン18を停止する。これにより、冷蔵室4へと冷気が供給され、冷蔵室4の温度が低下する。
【0057】
この時、冷蔵室4内の食品の入れ替えなどにより断熱扉6が開閉され、熱負荷が増加していると、冷蔵室4内の空気温度が高く、冷蔵蒸発器15の温度も高くなってしまう。さらに、t3において、冷蔵蒸発器15の温度が蓄冷材22の凝固温度Tcより高くなると(S5がNO)、蓄冷材22が凝固せず、蓄冷の効果が小さくなってしまうため、制御部28により、圧縮機8の回転数をR2に増加させる。圧縮機8の回転数が増加すると、冷却システム11の冷却能力が高くなるため冷蔵蒸発器15の温度が低下する。これにより、蒸発器温度検知手段21の検知する温度がTcより低くなり、蓄冷材22を凝固させることができ、蓄冷の効果を向上させることができる。
【0058】
次に、放冷運転について、時刻t4からt5の温度変化に基づいて説明する。
【0059】
時刻t4において、冷蔵室センサ19の温度が下限値であるTr2に到達したことを検知し(S7がYES)、制御部28により、圧縮機8を停止し、三方弁10を閉とし、冷蔵ファン17を運転し、冷凍ファン18を運転する。これにより、冷蔵室4は蓄冷材22の放冷作用により、圧縮機8を運転することなく冷却することができる。
【0060】
この時、冷凍室5は、通常の温度である-18℃より低い温度となっており、放冷運転中に温度がTf1を超えることなく放冷運転を継続することができる。
【0061】
さらに、時刻t5において、冷凍室センサ20の温度が上限値であるTf1を超えると、放冷運転を終了し、通常冷却へと移行する(S10)。
【0062】
尚、本実施の形態において、冷蔵蒸発器15の温度を低下させる手段としては、圧縮機8を能力可変とし、圧縮機8の能力を増加させるとして説明したが、例えば冷蔵ファン17を能力可変とし、冷蔵ファン17の能力を低下させたり、冷蔵キャピラリ12を絞り量可変な膨張弁とし、膨張弁の絞り量を増加させることで代用しても同様の効果が得られる。
【0063】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、冷蔵庫1は、冷蔵室4と、冷凍室5と、圧縮機8と、凝縮器9と、三方弁10と、冷蔵キャピラリ12と、冷凍キャピラリ13と、冷蔵蒸発器15と、冷凍蒸発器16と、冷蔵ファン17と、冷凍ファン18と、蓄冷材22と、蒸発器温度検知手段21と、制御部28と、を備える。圧縮機8、凝縮器9、三方弁10、冷蔵キャピラリ12、冷凍キャピラリ13、冷蔵蒸発器15、冷凍蒸発器16は、環状に接続され、冷却システム11を構成する。冷蔵ファン17、冷凍ファン18は、それぞれ冷蔵蒸発器15及び冷凍蒸発器16で生成された冷気を冷蔵室4及び冷凍室5内に循環させる。蓄冷材22は、冷蔵蒸発器15と熱的に接触する。蒸発器温度検知手段21は、冷蔵蒸発器15の温度を検知する。制御部28は、冷蔵蒸発器15の温度が蓄冷材22の凝固温度Tcより高くならないように冷却システム11を制御する。
【0064】
これにより、蓄冷材22を蓄冷する際に、蓄冷速度を向上させることができる。そのため、蓄冷運転の時間を短縮することができ、効率の良い蓄放冷運転を行うことができる。
【0065】
本実施の形態のように、冷蔵庫1は、デマンド信号を受信する受信部27を備えるようにしてもよい。
【0066】
これにより、電力会社のデマンド信号を受信した際に、速やかに蓄冷を行うことができる。そのため、確実にデマンドレスポンスに対応できる冷蔵庫とすることができる。
【0067】
また、本実施の形態のように、冷蔵庫1は、圧縮機8を能力可変な圧縮機とし、蒸発器温度検知手段21の検知する温度が蓄冷材22の凝固温度Tcより高くなった時に、圧縮機8の能力を増加させ、冷蔵蒸発器15の温度を低下させることができる。
【0068】
これにより、蓄冷材22を蓄冷する際に、蓄冷速度を向上させることができる。そのため、蓄冷運転の時間を短縮することができ、効率の良い蓄放冷運転を行うことができる。
【0069】
また、本実施の形態において、冷蔵蒸発器15の温度を低下させる手段として、能力可変な圧縮機8の能力を増加させることとして説明したが、冷蔵ファン17を能力可変な冷却ファンとし、蒸発器温度検知手段21の検知する温度が蓄冷材22の凝固温度Tcより高くなった時に、冷蔵ファン17の能力を低下させ、冷蔵蒸発器15の温度を低下させる構成としてもよい。
【0070】
これにより、蓄冷材22を蓄冷する際に、蓄冷速度を向上させることができる。そのため、蓄冷運転の時間を短縮することができ、効率の良い蓄放冷運転を行うことができる。
【0071】
また、冷蔵キャピラリ12を、絞り量可変な膨張弁とし、蒸発器温度検知手段21の検知する温度が蓄冷材22の凝固温度Tcより高くなった時に、絞り量を増加させ、冷蔵蒸発器15の温度を低下させる構成としてもよい。
【0072】
これにより、蓄冷材22を蓄冷する際に、蓄冷速度を向上させることができる。そのため、蓄冷運転の時間を短縮することができ、効率の良い蓄放冷運転を行うことができる。
【0073】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の事例として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。
【0074】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0075】
実施の形態1では、蓄冷材22を、冷蔵蒸発器15と熱的に接触させ、蓄冷した冷気を冷蔵室4の冷却のみに使用する構成として説明した。蓄冷材は、追加で凝固温度がTf1以下のものを使用して、冷凍室5内に設け、冷凍蒸発器16と熱的に接触させ、蓄冷した冷気を冷凍室5の冷却に使用することで、冷凍室5の蓄冷量を増加させることができるので、より蓄冷効果を向上させることができる。
【0076】
実施の形態1では、蓄冷運転時に、冷蔵室4内の温度は通常冷却時と同じとして説明した。冷蔵室4内の温度は、蓄冷運転時にTr2より低い温度に下げることにより、より大きな蓄冷効果を得ることができる。
【0077】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、蒸発器と熱的に接触した蓄冷材を用いて蓄放冷する冷蔵庫において、より速く蓄冷材を凝固させることができるので、家庭用および業務用など様々な種類および大きさの冷蔵庫に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 冷蔵庫
4 冷蔵室
5 冷凍室
8 圧縮機
9 凝縮器
11 冷却システム
15 冷蔵蒸発器
16 冷凍蒸発器
17 冷蔵ファン
18 冷凍ファン
21 蒸発器温度検知手段
22 蓄冷材
27 受信部
28 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6