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特開2023-79339光学情報読取装置及び光学情報読取方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079339
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】光学情報読取装置及び光学情報読取方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/14 20060101AFI20230601BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
G06K7/14 060
G06K7/10 372
G06K7/14 017
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192763
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 紘司
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 知己
(72)【発明者】
【氏名】西澤 有翼
(57)【要約】
【課題】コードの読み取り成功率を向上させる。
【解決手段】光学情報読取装置は、コードを含むコード画像を取得するカメラと、読取対象のコードに関する照合元データを予め記憶する記憶部と、コード画像から文字列データを読み取り、読み取った文字列データを読取結果として出力する第1デコード処理と、コード画像に所定の画像処理を行うことにより照合先データを生成し、生成した照合先データを記憶部に記憶された照合元データと照合し、照合に成功した場合に、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する第2デコード処理とを実行可能なプロセッサとを備えている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに付与されたコードを撮影して取得されたコード画像から文字列データを読み取る光学情報読取装置において、
コードが付与されたワークを撮影し、コードを含むコード画像を取得するカメラと、
読取対象のコードに関する照合元データを予め記憶する記憶部と、
前記カメラにより取得されたコード画像から文字列データを読み取り、読み取った文字列データを読取結果として出力する第1デコード処理と、前記カメラにより取得されたコード画像に所定の画像処理を行うことにより照合先データを生成し、生成した照合先データを前記記憶部に記憶された照合元データと照合し、照合に成功した場合に、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する第2デコード処理とを実行可能なプロセッサと、を備える光学情報読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学情報読取装置において、
前記記憶部は、前記第1デコード処理により得られた読取結果に基づいて生成され、前記コードを構成する各セルが0か1かを示す配列データを照合元データとして記憶し、
前記プロセッサは、前記カメラにより取得されたコード画像に所定の画像処理を行うことにより前記照合元の配列データと照合することが可能な照合先の配列データを生成し、生成した照合先の配列データを前記照合元の前記配列データと照合することにより前記第2デコード処理を実行する光学情報読取装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学情報読取装置において、
前記プロセッサは、前記第2デコード処理において、前記照合先データを前記照合元データと照合し、所定の閾値以上の照合一致度が得られた場合に照合成功とし、
前記閾値は、前記第1デコード処理による誤り訂正処理によっても読取が不可能な二次元コードを、前記第2デコード処理により読取を可能とするように設定されている光学情報読取装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記記憶部は、異なるコードに関する複数の照合元データを予め記憶し、
前記プロセッサは、前記照合先データを、前記記憶部に記憶された複数の照合元データとを順次照合し、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する光学情報読取装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
別の光学情報読取装置に読み取られた読取結果を取得するための取得部を更に備え、
前記記憶部は、前記取得部により取得された新たな読取結果を照合元データとして記憶する光学情報読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光学情報読取装置において、
前記取得部は、前記別の光学情報読取装置によって読み取られた読取結果を自動的に順次取得し、
前記記憶部は、前記取得部により順次取得された読取結果を新たな照合元データとして記憶する光学情報読取装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の光学情報読取装置において、
複数の光学情報読取装置が同一ネットワーク内に存在する場合に、照合元データ取得先の光学情報読取装置を特定するIPアドレスを指定することにより、当該指定されたIPアドレスで特定される光学情報読取装置の読取結果を前記取得部が自動的に取得し、照合元データとして記憶する光学情報読取装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記プロセッサは、前記第1デコード処理により読み取られた読取結果を新たな照合元データとして前記記憶部に記憶させる光学情報読取装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記プロセッサは、前記カメラにより取得されたコード画像に対して、前記第1デコード処理による誤り訂正を実行し、当該第1デコード処理による誤り訂正に失敗した場合に、前記第2デコード処理を実行する光学情報読取装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記プロセッサは、前記第1デコード処理による読み取りに成功したか、前記第2デコード処理による読み取りに成功したかを示す識別信号を出力する光学情報読取装置。
【請求項11】
第1光学情報読取装置と、当該第1光学情報読取装置とネットワークを介して接続された第2光学情報読取装置とを備え、各光学情報読取装置がコードを含むコード画像から文字列データを読み取る光学情報読取システムにおいて、
前記第1光学情報読取装置は、
カメラにより取得されたコード画像から文字列データを読み取り、読み取った文字列データを読取結果として出力する第1プロセッサを備え、
前記第2光学情報読取装置は、
前記第1光学情報読取装置から出力された読取結果に対応する照合元データを取得する取得部と、
前記取得部により取得された読取結果を照合元データとして予め記憶する記憶部と、
カメラにより取得されたコード画像に所定の画像処理を行うことにより照合先データを生成し、生成した照合先データを前記記憶部に記憶された照合元データと照合し、照合に成功した場合に、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する第2プロセッサと、を備える光学情報読取システム。
【請求項12】
ワークに付与されたコードを撮影して取得されたコード画像から文字列データを読み取る光学情報読取方法において、
カメラにより取得したコード画像から文字列データを読み取り、読み取った文字列データを読取結果として出力する第1デコード処理ステップと、
読取対象のコードに関する照合元データを予め記憶する記憶ステップと、
カメラにより取得したコード画像に所定の画像処理を行うことにより照合先データを生成し、生成した照合先データを前記記憶ステップで記憶した照合元データと照合し、照合に成功した場合に、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する第2デコード処理ステップと、を備える光学情報読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークに付与されたコードを読み取る光学読取装置及び光学情報読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光学情報読取装置は、ワークに付与されたバーコードや二次元コード等のコードをカメラによって撮像し、取得された画像に含まれるコードを画像処理によって切り出して二値化し、デコード処理して情報を読み取ることができるように構成されている。
【0003】
この種の光学読取装置は、例えば各種物品の製造工場や物流現場等に導入されており、物品のトレーサビリティ等に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-136860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、物品の製造工程は複数工程からなる場合が多く、例えば、ある部品に付与されているコードを前工程で光学情報読取装置により読み取った後、その部品に付与されている同じコードを後工程で光学情報読取装置により読み取り、前工程及び後工程で読み取った情報を工程管理に利用するケースがある。
【0006】
しかしながら、前工程から後工程に移行する間にコードが傷ついたり、汚れたりして、前工程では安定して読み取ることができたものの、後工程では読み取りに失敗してしまうことが考えられる。また、後工程の光学情報読取装置の設置条件が悪いために、コードの一部が欠損した画像が取得されて読み取りに失敗してしまうことも考えられる。
【0007】
後工程で正しいコードが付与されているにも関わらず読み取りに失敗してしまうと、工場の稼働率の低下や歩留まりの低下などにより、コスト面で悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
上述した場合以外にも、コード画像の状態が良好でない場合があり、そのような場合においても、コードの読み取り成功率を向上させたいという要求がある。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、コードの読み取り成功率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、ワークに付与されたコードを撮影して取得されたコード画像から文字列データを読み取る光学情報読取装置を前提とすることができる。光学情報読取装置は、コードが付与されたワークを撮影し、コードを含むコード画像を取得するカメラと、読取対象のコードに関する照合元データを予め記憶する記憶部と、プロセッサとを備えている。プロセッサは、前記カメラにより取得されたコード画像から文字列データを読み取り、読み取った文字列データを読取結果として出力する第1デコード処理と、前記カメラにより取得されたコード画像に所定の画像処理を行うことにより照合先データを生成し、生成した照合先データを前記記憶部に記憶された照合元データと照合し、照合に成功した場合に、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する第2デコード処理とを実行することができる。
【0011】
この構成によれば、例えば製造工程や組立工程の前工程のようにコード画像の状態が良好な場合には、第1デコード処理でコードの読取を成功させることが可能になる。一方、後工程のようにコード画像の状態が良好でない場合には、第2デコード処理において、カメラで取得されたコード画像に所定の画像処理を行って生成された照合先データを、記憶部に予め記憶されている照合元データと照合する。その照合に成功した場合には、照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力することができるので、コード画像の状態が良好でない場合であっても、コードの読取成功率を向上させることができる。
【0012】
他の態様では、第1デコード処理により得られた読取結果に基づいて、コードを構成する各セルが0か1かを示す配列データを照合元データとして生成することができる。この場合、記憶部は、配列データを照合元データとして記憶することができる。プロセッサは、コード画像に所定の画像処理を行うことにより前記照合元の配列データと照合することが可能な照合先の配列データを生成し、生成した照合先の配列データを前記照合元の前記配列データと照合することが可能になる。
【0013】
他の態様では、前記プロセッサは、前記第2デコード処理において、前記照合先データを前記照合元データと照合し、所定の閾値以上の照合一致度が得られた場合に照合成功とすることができる。前記閾値は、前記第1デコード処理による誤り訂正処理によっても読取が不可能な二次元コードを、前記第2デコード処理により読取が可能となるように設定されており、例えばコードのシンボルサイズ、セル数、誤り訂正レベル等に基づいて算出することができる。この閾値は、ユーザによって任意に変更可能にすることもできる。照合データとしては、誤り訂正データを使うことができる。例えば、照合データに含まれるデータには誤り訂正データの方が、読取対象の文字列データよりも多く含まれていてもよい。
【0014】
他の態様に係る記憶部は、異なるコードに関する複数の照合元データを予め記憶することができる。前記プロセッサは、前記照合先データを、前記記憶部に記憶された複数の照合元データと順次照合し、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力することも可能である。照合順としては、例えば前回照合に成功した順とすることができる。照合に成功した照合元データは照合成功時に消去してもよい。照合成功時に消去しない場合は、例えば新たな照合元データを取得したら、古いものから順に消去してもよいし、照合で使われる頻度の少ないデータから順に消去してもよい。
【0015】
他の態様では、別の光学情報読取装置に読み取られた読取結果を取得するための取得部を更に備えていてもよい。この場合、記憶部は、前記取得部により取得された読取結果に基づく新たな照合元データを記憶するものとすることができる。つまり、2台以上の光学情報読取装置を使用した光学情報読取システムを構築することができる。
【0016】
他の態様では、複数の光学情報読取装置が同一ネットワーク内に存在する場合に、照合データ取得先の光学情報読取装置を特定するIPアドレスを指定することにより、当該指定されたIPアドレスで特定される光学情報読取装置の読取情報を自動的に取得し、照合元データとして記憶することもできる。すなわち、光学情報読取装置が別の光学情報読取装置に対して読取情報の有無について定期的に問い合わせを行い、読取情報があれば当該読取情報の取得を行うことができる。問い合わせを受けた側の光学情報読取装置は読取情報を既に提供しているかどうかを判定し、未提供の場合は提供する一方、提供済の場合は提供しないように制御することもできる。また、一度提供したデータを消去してもよいが、再度提供する可能性もあるため、消去しないようにすることもできる。
【0017】
他の態様に係るプロセッサは、コード画像に対して、第1デコード処理による誤り訂正を実行し、当該第1デコード処理による誤り訂正に失敗した場合に、第2デコード処理を実行することも可能である。すなわち、第1デコード処理では、例えば、撮像、コード領域抽出、セル位置特定、各セルが0か1かを示す配列データの取得、誤り訂正という順で処理を進めることができる。ここで、コード領域抽出、セル位置特定に失敗した場合は、そもそも照合用の0か1かを示す配列データの取得もできないので、第2デコード処理に進んでも第2デコード処理は実行できない。一方、各セルが0か1かを示す配列データの取得、あるいは、誤り訂正に失敗した場合には、照合用の0か1かを示す配列データが取得できている可能性があるので、第2デコード処理に進んで照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力することで読み取り成功率を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、コード画像から文字列データを読み取り、読み取った文字列データを読取結果として出力する第1デコード処理と、コード画像に所定の画像処理を行うことにより照合先データを生成し、生成した照合先データを予め記憶している照合元データと照合し、照合に成功した場合に、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する第2デコード処理とを実行することができるので、コードの読み取り成功率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】光学的情報読取システムの運用時を説明する図である。
図2】光学的情報読取装置のブロック図である。
図3】2次元コード、照合データ領域、誤り訂正データ領域の例を示す図である。
図4】照合元の配列データを記憶する処理の例を示すフローチャートである。
図5】誤り訂正に失敗した場合の処理の例を示すフローチャートである。
図6】元の2次元コード、通常のデコード処理で読取成功する2次元コードの画像、通常のデコード処理で読取失敗する2次元コードの画像を示す図である。
図7】照合元の配列データの記憶と、誤り訂正に失敗した場合の処理とを実行する例を示すフローチャートである。
図8A】複数の光学情報読取装置をネットワークに接続して使用する形態を示す図である。
図8B】複数の光学情報読取装置で複数段の通信を実行する形態を示す図である。
図9】IPアドレス指定用ユーザインターフェース画面の例を示す図である。
図10】設定装置のブロック図である。
図11】手持ち式の光学的情報読取装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る光学情報読取装置1A、1B、1Cの運用時、並びに、それら光学情報読取装置1A、1B、1C及び設定装置100を備えた光学情報読取システムSの運用時を模式的に示す図である。光学情報読取システムSを構成する光学情報読取装置1A、1B、1Cの数は特に限定されるものではなく、1台であってもよいし、任意の複数台であってもよい。図1に示す例では、第1光学情報読取装置1A、第2光学情報読取装置1B、第3光学情報読取装置1Cの3台の光学情報読取装置を備えている。
【0022】
設定装置100は、汎用あるいは専用の電子計算機や携帯型端末等を利用することができ、図10にも示すが、液晶ディスプレイ等からなる表示部101、キーボード102、マウス103、通信部104、制御部105及び記憶部106を備えている。キーボード102及びマウス103は、設定装置100をユーザが操作するための操作機器である。キーボード102及びマウス103を操作することで、任意の数字等の入力が可能になるとともに、各種設定等を行うことができる。通信部104は、ネットワークNに接続され、第1~第3光学情報読取装置1A~1Cと相互に通信可能に構成されている。
【0023】
また、図1に示す例では、複数のワークWが搬送用ベルトコンベアBの上面に載置された状態で図1における矢印Yの方向へ搬送されている。ワークWは、例えば荷物、商品、各種部品、電気製品、電子機器等の物品であり、ベルトコンベアBの送り方向について最上流ではワークWに対して第1工程が行われ、中間部では同ワークWに対して第2工程が行われ、最下流では同ワークWに対して第3工程が行われるようになっている。各工程では、例えば印刷、貼付、部品等の取付作業、各種加工、塗装、調整等が行われる。
【0024】
第1工程でベルトコンベアB上に置かれているワークWから上方へ離れた所に、第1光学情報読取装置1Aが設置されている。第1光学情報読取装置1Aは、ワークWに付与されているコードを撮影し、撮影により取得されたコード画像に含まれるコードをデコード処理して各種情報(文字列データ)を読み取ることができるように構成されたコードリーダである。また、第2工程でベルトコンベアB上に置かれているワークWから上方へ離れた所に、第2光学情報読取装置1Bが設置され、さらに、第3工程でベルトコンベアB上に置かれているワークWから上方へ離れた所に、第3光学情報読取装置1Cが設置されている。
【0025】
図1に示す例では、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cが定置式の場合である。この定置式の第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cの運用時には、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cが動かないようにブラケット等(図示せず)に固定して使用する。尚、定置式の第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cをロボット(図示せず)が把持した状態で使用してもよい。また、静止状態にあるワークWのコードを第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cによって読み取るようにしてもよい。定置式の第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cの運用時とは、搬送用ベルトコンベアBによって搬送されるワークWのコードを順に読み取る動作を行っている時である。
【0026】
第1~第3工程を同一のベルトコンベアB上で行ってもよいし、一部の工程を別のベルトコンベア(図示せず)上で行ってもよいし、全ての工程を異なるベルトコンベア上で行ってもよい。ベルトコンベアB以外の搬送装置(図示せず)でワークWを搬送してもよい。第1~第3工程は同一工場内で行ってもよいし、異なる工場内で行ってもよい。工程の数は3つに限られるものではない。
【0027】
各ワークWの外面の一部には上方から撮像可能な位置にコードが付与されている。コードには、バーコード及び二次元コードの両方が含まれる。二次元コードとしては、たとえば、QRコード(登録商標)、マイクロQRコード、データマトリクス(Data matrix;Data code)、ベリコード(Veri code)、アズテックコード(Aztec code)、PDF417、マキシコード(Maxi code)などがある。二次元コードにはスタック型とマトリクス型があるが、本実施形態はいずれの二次元コードに対しても適用できる。コードは、ワークWに直接印刷あるいは刻印することによって付与してもよいし、ラベルに印刷した後にワークWに貼付することによって付与してもよく、その手段、方法は問わない。
【0028】
第1工程は最上流の工程であることから、コードが汚れたり、損傷する可能性が低いが、第2工程ではワークWの搬送中や各種作業によってコードが汚れたり、損傷する可能性がある。第3工程では、第2工程を経ていることから、コードが汚れたり、損傷する可能性がより一層高まる。例えば図1の最下段に示すように、第1光学情報読取装置1Aで撮像された第1コード画像に含まれるコードは汚れや損傷がないものであるが、第2光学情報読取装置1Bで撮像された第2コード画像に含まれるコードは汚れや損傷を有している場合がある。第3光学情報読取装置1Cで撮像された第3コード画像に含まれるコードは、第2コード画像に含まれるコードに比べて汚れや損傷がひどくなっている場合がある。また、実際の運用時には、第2光学情報読取装置1Bや第3光学情報読取装置1Cの設置状態が悪く、得られた第2コード画像や第3コード画像が不鮮明であったり、一部が欠けている場合も考えられる。本実施形態では、上述したようなデコード処理が困難な場合であっても、読取成功率を向上させることができるものである。以下、その構成について順に説明する。
【0029】
(読取開始トリガ信号)
第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cは、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)130に信号線130aによって有線接続されているが、これに限らず、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1C、及びPLC130に通信モジュールを内蔵し、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cと、PLC130とを無線接続するようにしてもよい。PLC130は、搬送用ベルトコンベアB及び第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cをシーケンス制御するための制御装置であり、汎用のPLCを利用することができる。
【0030】
第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cは、その運用時において、PLC130から信号線130aを介して、コード読取の開始タイミングを規定する読取開始トリガ信号をそれぞれ受信する。そして、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cは、この読取開始トリガ信号に基づいてコード画像の取得及びデコード処理を行う。その後、読取結果は、信号線130aを介してPLC130へ送信される。このように、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cの運用時には、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1CとPLC130等の外部制御装置との間で、信号線130aを介して読取開始トリガ信号の入力とデコード結果の出力が繰り返し行われる。なお、読取開始トリガ信号の入力や読取結果の出力は、上述したように、光学情報読取装置1とPLC130との間の信号線130aを介して行ってもよいし、それ以外の図示しない信号線を介して行ってもよい。例えば、ワークWの到着を検知するためのセンサと第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cとを直接的に接続し、そのセンサから第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cへ読取開始トリガ信号を入力するようにしてもよい。
【0031】
(光学情報読取装置の構成)
図2は、光学情報読取システムSの構成を示すブロック図である。第2光学情報読取装置1B及び第3光学情報読取装置1Cは、第1光学情報読取装置1Aと同様に構成されているので、以下の例では、第1光学情報読取装置1Aについて詳細に説明する。第1光学情報読取装置1Aは、読取開始トリガ信号が入力されたことを検出すると、ワークWに付与されたコードを自動的に撮影して取得されたコード画像から文字列データを読み取るように構成されている。具体的には、第1光学情報読取装置1Aは、照明部2、カメラ3、操作ボタン4、Webサーバ5、プロセッサ6、記憶部7等を備えている。照明部2は、撮像対象のワークWを照明する部分であり、例えば発光ダイオード等の発光体で構成されている。
【0032】
カメラ3は、コードが付与されたワークWを撮影し、コードを含むコード画像を取得するものである。カメラ3の光軸方向は、照明部2による光の照射方向と略一致している。カメラ3は、図示しないが、照明部2によって照明されているコードからの反射光を受光するレンズ、レンズから出射した光を受光する受光素子、AFモジュール(オートフォーカスモジュール)等を備えている。撮像素子は、光学系を通して受光された光の強度を電気信号に変換するCCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等の受光素子からなるイメージセンサである。カメラ3はプロセッサ6に接続されていて、カメラ3から出力される電気信号は、プロセッサ6に入力される。また、AFモジュールは、光学系を構成するレンズのうち、合焦用レンズの位置や屈折率を変更することによってピント合わせを行う機構である。
【0033】
操作ボタン4は、例えばセレクトボタンやエンターボタン等を含んでいる。操作ボタン4はプロセッサ6に接続されていて、プロセッサ6は操作ボタン4の操作状態を検出可能になっている。操作ボタン4の操作により、設定装置100を用いることなく、第1光学情報読取装置1Aの各種設定を行うことができる。
【0034】
Webサーバ5は、設定装置100や他の光学情報読取装置1B、1C等と通信を行う部分である。具体的には、Webサーバ5は、クライアントソフトウェア(設定装置100等で動作するソフトウェア)とHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)やHTTPS等のプロトコルによる通信を行う部分であり、Webブラウザからの要求に応じて設定装置100や他の光学情報読取装置1B、1C等へデータを送信する機能を有している。ハードウェアまたはソフトウェア、あるいはそれら両方の組み合わせによってWebサーバ5を第1光学情報読取装置1Aに構築することができる。Webサーバ5は、インターネット等のネットワークNに接続され、設定装置100や他の光学情報読取装置1B、1C等と相互に通信可能になっている。
【0035】
プロセッサ6は、撮像制御部6a、前処理部6b、抽出部6c、デコード部6d及び取得部6eを有している。撮像制御部6a、前処理部6b、抽出部6c、デコード部6d及び取得部6eは、ハードウェアまたはソフトウェア、あるいはそれら両方の組み合わせによって構成されている。プロセッサ6は、例えばCPUコア、DSPコア等を備えた構成とすることができ、これらコアを複数備えていてもよい。このプロセッサ6には、記憶部7が接続されている。この図では記憶部7を1つのブロックで示しているが、記憶部7には、例えばRAM、ROM、ハードディスク、SSD(ソリッドステートドライブ)等が含まれており、それらのうち一部は外部に設けることもできる。記憶部7は、各種データを一時的または長期間記憶しておくことや、動作プログラム等を長期間記憶し、保持しておくことができるようになっている。例えばカメラ3で取得されたコード画像は、プロセッサ6から記憶部7に出力され、画像データ記憶部7aに記憶させておくことができる。
【0036】
撮像制御部6aは、カメラ3のゲインを調整したり、照明部2の光量や照明タイミング等を制御したり、カメラ3の露光時間(シャッタースピード)を制御するユニットである。ここで、カメラ3のゲインとは、撮像素子から出力された画像の明るさをデジタル画像処理によって増幅する際の増幅率(倍率とも呼ばれる)のことである。照明部2の光量については、任意に変更することができる。上記ゲイン、照明部2の光量、露光時間は、カメラ3の撮像条件である。また、撮像制御部6aは、従来から周知のコントラストAF(オートフォーカス)や位相差AFによってカメラ3の光学系のピント合わせを行うように構成されている。
【0037】
前処理部6bは、カメラ3が取得したコード画像に対して画像処理フィルタを実行する部分である。前処理部6bは、コード画像に含まれるノイズを除去するノイズ除去フィルタや、コントラストを補正するコントラスト補正フィルタ、平均化フィルタ等を実行する。前処理部6bが実行する画像処理フィルタは、ノイズ除去フィルタ、コントラスト補正フィルタ、平均化フィルタに限られるものではなく、他の画像処理フィルタを含んでいてもよい。画像処理フィルタは必要に応じて実行すればよい。
【0038】
抽出部6cは、カメラ3で取得されたコード画像の中からコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出する部分である。コード候補領域は、コードらしさを示す特徴量に基づいて抽出することができ、この場合、コードらしさを示す特徴量はコードを特定するための情報となる。例えば、抽出部6cは、コード画像の中に、コードらしさを示す特徴量を所定以上持った部分が存在するか否かを探索し、その結果、コードらしさを示す特徴量を持った部分を探索することができれば、その部分を含む領域をコード候補領域として抽出する。コード候補領域には、コード以外の領域が含まれていてもよいが、少なくともコードである可能性が所定以上高い部分を含んでいる。尚、コード候補領域は、あくまでもコードが存在する可能性が高い領域であることから、結果的にコードが含まれない領域の場合もあり得る。また、1つのコード画像の中に複数のコード候補領域が抽出される場合もあり、その場合には、コードらしさを示す特徴量が高い順に優先順位を付けておくことができる。また、抽出部6cは、コード候補領域の姿勢も求める。
【0039】
デコード部6dは、抽出部6cが抽出したコード候補領域に含まれる白黒の二値化された配列データをデコードする部分である。すなわち、図3に2次元コード(Datamatrixコード)の例を示すように、2次元コードは白セルと黒セルが格子配列になっており、デコード部6dは、白を0、黒を1とした2値の配列データとして認識し、符号化されたデータの対照関係を示すテーブルを使用してデコードし、文字列データを生成する。配列データには、セル位置を示す座標データも含まれる。2次元コードには符号化する内容に関わらず固定パターンになるセルがあり、この例では2次元コードにおける4辺のセル全部が固定パターンである。この4辺のセルを全て除いた領域が、図3の下側において左へ向けて下降傾斜する斜線で示した領域であり、照合データ領域となる。
【0040】
デコード部6dは、配列データに誤りが発見された場合にコードに含まれる誤り訂正データを使用したエラー訂正機能により正しい配列データに訂正する。エラー訂正機能はコードの種類によって異なるが、図3に示す例では、右へ向けて下降傾斜する斜線で示した領域が、誤り訂正データを含む領域(誤り訂正データ領域)である。
【0041】
詳細は後述するが、デコード部6dは、カメラ3により取得されたコード画像から配列データを取得し、配列データから文字列データを読み取り、読み取った文字列データを読取結果として出力する第1デコード処理と、第1デコード処理とは異なる第2デコード処理とを実行可能に構成されている。デコード部6dは、第1デコード処理でコードをデコードして得られた読取結果を記憶部7のデコード結果記憶部7bに記憶させる。デコード結果記憶部7bに記憶する情報としては、読取対象のコードに関する照合元データが含まれており、具体的には、第1デコード処理により得られた読取結果に基づいて生成され、コードを構成する各セルが0か1かを示す配列データを照合元データとしてデコード結果記憶部7bに記憶する。ワークWが搬送される現場では、異なるコードが付された異なるワークWが順次搬送されてくるので、デコード部6dは、第1デコード処理で複数の異なるコードを順次デコードし、異なるコードに関する複数の照合元データをそれぞれ生成する。この場合、デコード結果記憶部7bには、異なるコードに関する複数の照合元データが予め記憶される。また、第1デコード処理で複数の異なるコードを順次デコードする場合、第1デコード処理により読み取られた読取結果を新たな照合元データとしてデコード結果記憶部7bに順次記憶する。
【0042】
以下、第1光学情報読取装置1Aによる読取処理の具体例について図4に示すフローチャートに基づいて説明する。図4に示すフローチャートは、読取開始トリガ信号を受信すると開始される処理の流れを示しており、本発明に係る光学情報読取方法を説明するものである。
【0043】
スタート後のステップSA1では、カメラ3がベルトコンベアB上のワークWを撮影し、コードを含むコード画像を取得する。コード画像には、必要に応じて前処理部6bが画像処理フィルタを実行する。その後、ステップSA2では、抽出部6cがコード画像の中からコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出する。コード候補領域を抽出した後、ステップSA3に進む。ステップSA3では、デコード部6dが、コード候補領域内でコードの白セル位置及び黒セル位置を決定する。その後、ステップSA4では、デコード部6dが、白を0、黒を1とした2値の配列データを取得する。次いで、ステップSA5では、デコード部6dは、ステップSA4で取得した配列データに誤りを発見した場合、コードに含まれる誤り訂正データを使用して誤り訂正処理を実行して、正しい配列データに訂正する。
【0044】
ステップSA5で必要に応じて誤り訂正処理を実行した後、ステップSA6では、デコード部6dが、符号化されたデータの対照関係を示すテーブルを使用して配列データをデコード(復号処理)する。ステップSA6でデコードに成功した場合には、ステップSA7に進み、読取結果を出力し、当該コード候補領域内のコードの読取処理を終了する。さらに、ステップSA6でデコードに成功した場合には、ステップSA6で読取に成功した配列データ(01の組み合わせからなる01データ)をステップSA8で取得し、デコード結果記憶部7bに記憶する。ここでは、1つのコード候補領域に対して1つの配列データが関連付けられて記憶される。尚、ステップSA3~SA6でそれぞれ失敗した場合には、ステップSA2に戻り、別のコード候補領域に対して同様な処理を繰り返す。全てのコード候補領域に対して失敗した場合には、読取失敗したことを出力して処理を終了する。
【0045】
第1光学情報読取装置1Aは、次の読取開始トリガ信号を受信すると、上述した処理を繰り返し、別のコードの読取が成功すると、その読取結果が新たな照合元データとしてデコード結果記憶部7bに記憶される。このようにして、実運用上は、複数の異なるコードの照合元データをデコード結果記憶部7bに記憶することができる。デコード結果記憶部7bに記憶可能な照合元データの個数は特に限定されるものではないが、例えば100個程度に設定しておくことができる。デコード結果記憶部7bに記憶可能な照合元データの数が上限に達すると、最も古い照合元データから順に削除し、新しい照合元データを記憶してもよいし、後述する図5、6に示すフローチャート中の照合処理で使用される頻度が最も低い照合元データから順に削除し、新しい照合元データを記憶してもよい。
【0046】
次に、図5に示すフローチャートに基づいて誤り訂正に失敗した場合の処理について説明する。図5に示すフローチャートは、図4に示すフローチャートによる処理が少なくとも1回終了した後に、読取開始トリガ信号を受信すると開始される。スタート後のステップSB1~SB5は図4に示すフローチャートのステップSA1~SA5と同じである。
【0047】
ステップSA6では、第1デコード処理が行われる場合と、第2デコード処理が行われる場合とがある。例えば図1に示す第1工程のワークWを撮影して取得された第1コード画像の場合は、コードに汚れや損傷が殆どないので、通常のデコード処理と同様に、図5に示すフローチャートに示すステップSB6において第1デコード処理を実行することで、読取に成功し、ステップSB7で正しい読取結果を出力できる。
【0048】
また、例えば図1に示す第2工程のワークWを撮影して取得された第2コード画像の場合は、コードに汚れや損傷があるが、その程度が低いので、図5に示すフローチャートに示すステップSB5で誤り訂正処理が成功する。誤り訂正処理が成功すれば、ステップSB6では、通常のデコード処理に相当する第1デコード処理を実行することで、殆ど問題無く読取に成功し、ステップSB7で正しい読取結果を出力できる。また、図6に示す通常のデコード処理で読取可能な2次元コードの画像では、一部が不鮮明であるが、その程度が低いため、図5に示すフローチャートに示すステップSB5で誤り訂正処理が成功する。
【0049】
一方、例えば図3に示す第3工程のワークWを撮影して取得された第3コード画像の場合は、コードの汚れや損傷の程度が高いので、図5に示すフローチャートに示すステップSB4で配列データの取得までは成功するものの、ステップSB5の誤り訂正処理に失敗することがある。また、図6に示す通常のデコード処理で読取不可の2次元コードの画像では、不鮮明な部分が多いので、配列データの取得までは成功するものの、誤り訂正処理に失敗する。
【0050】
ステップSB5の誤り訂正処理に失敗した場合には、ステップSB8に進み、照合処理を実行する。すなわち、プロセッサ6は、カメラ3により取得されたコード画像に所定の画像処理を行うことにより照合先データを生成し、生成した照合先データをデコード結果記憶部7bに既に記憶されている照合元データと照合し、照合に成功した場合に、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する第2デコード処理を実行する。所定の画像処理とは、例えば前処理部6bが実行する画像処理フィルタ等である。なお、図5の例では、ステップSB8の照合処理で照合に成功した配列データをステップSB6にてデコードすることによって取得された文字列データを読取結果として出力する例を示したが、照合処理に成功した場合は、ステップSB6のデコード処理は必ずしも必要ではない。例えば、照合元データに対応する文字列データが予め関連付けて記憶されていれば、照合に成功した配列データを改めてデコードする必要はなく、照合処理に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力すればよい。すなわち、本明細書において、照合に成功した照合元データに対応する文字列データ、とは、予め照合元データと対応させて記憶された文字列データであってもよいし、照合処理に成功した照合元データを改めてデコードすることによって得られた文字列データであってもよく、それら両方を含んでいる。
【0051】
以下、照合処理について詳述する。まず、ステップSB8では、デコード部6dが、ステップSB5で誤り訂正に失敗した配列データを取得する。誤り訂正に失敗した配列データは、カメラ3により取得されたコード画像に所定の画像処理を行った後、ステップSB2~4を経て生成された照合先データである。この照合先データは、デコード結果記憶部7bに記憶されている照合元の配列データと照合することが可能な照合先の配列データである。また、ステップSB8では、デコード部6dが、デコード結果記憶部7bにアクセスする。そして、デコード部6dは、ステップSB5で誤り訂正に失敗した配列データを、デコード結果記憶部7bに既に記憶されている照合元の配列データと照合する。
【0052】
デコード部6dは、第2デコード処理において、照合先データを、デコード結果記憶部7bに記憶されている照合元データと照合し、所定の閾値以上の照合一致度が得られた場合に照合成功と判定する。照合処理の際には、図3に示す照合データ領域の配列データを使用することができる。ステップSB5で誤り訂正に失敗した配列データと、デコード結果記憶部7bに記憶されている照合元データとを照合するとき、それらデータの一致度合いを照合一致度として以下のように定義することが可能である。
【0053】
照合一致度=照合一致数/全データ数×100
照合一致度の算出はデコード部6dが実行する。上記閾値は、第1デコード処理による誤り訂正処理によっても読取が不可能な二次元コードを、第2デコード処理により読取を可能とするように設定されている。つまり、第1デコード処理による誤り訂正処理によっても読取が不可能な二次元コードは、図1に示す第3コード画像のようにコードが汚れていたり、損傷している場合が多いので、この場合に、照合処理を実行することで、読取成功率を向上させることができる。上記閾値未満の照合一致度の場合は、照合失敗と判定する。
【0054】
照合一致度の閾値は、第1光学情報読取装置1Aのユーザが任意の値に設定することもできる。この場合、照合一致度の閾値を設定可能なユーザインターフェースを設定装置100が有する表示部101に表示させ、キーボード102やマウス103の操作によって入力された数値を第1光学情報読取装置1Aが取得し、照合一致度の閾値として設定する。
【0055】
照合一致度の閾値は、例えばコードのシンボルサイズ、セル数、誤り訂正レベル等に基づいて第1光学情報読取装置1Aが算出し、設定することができる。コードのシンボルサイズごとに照合一致度の閾値を予め用意しておき、コードのシンボルサイズを検出した後、検出されたコードのシンボルサイズに対応する照合一致度の閾値を第1光学情報読取装置1Aが自動的に設定する。特に、コードのシンボルサイズが大きくなればなるほど、照合先の配列データと誤って一致してしまう確率が減るため、シンボルサイズが大きければ大きいほど、照合一致度の閾値を小さくする。
【0056】
照合先の配列データは、複数記憶させておくことができるが、複数記憶されている場合には、単純に照合一致度が閾値以上であり、かつ、照合先の配列データのうち、他の配列データとの照合一致度が低い状態のときにのみ照合成功とみなすように判定することもできる。これにより、照合結果の正確性がより一層高まる。
【0057】
また、照合処理の際、図3に示す照合データ領域の配列データを使用する例以外にも、誤り訂正データ領域のみを照合対象データとして使用することも可能である。すなわち、通常の現場では使用される2次元コードの復号後のデータは似たようなデータ(例えば、ABCD0001、ABCD0002、ABCD0003などの連番データ)になることが多く、このような場合にデータ全体で照合一致度を算出すると、データの一致度が高いため、複数の照合元データ同士で照合一致度に差が出にくくなることがある。一方、誤り訂正データは復号後のデータ自体が似通っていても大きく変わるので、誤り訂正データのみを照合対象データとして利用することで、照合結果の正確性がより一層高まる。
【0058】
また、誤り訂正データが持っている上記のような特性を考慮し、誤り訂正データとそれ以外のデータでそれぞれ別々に照合度を算出し、各々別々の閾値によって照合成功可否を判断してもよい。この場合、誤り訂正データから算出された照合度に基づいて照合成功可否を判断するための第1閾値と、誤り訂正データ以外のデータから算出された照合度に基づいて照合成功可否を判断するための第2閾値とを例えば記憶部7等に予め記憶させておけばよい。
【0059】
ステップSB8で照合に成功した場合には、ステップSB6においてデコード部6dが、当該照合に成功した照合元データに対応する配列データをデコード結果記憶部7bから取得する。そして、デコード部6dは、デコード結果記憶部7bから取得した配列データをデコードする。デコード結果記憶部7bに記憶されている配列データは既に読み取りに成功したデータであるため、ステップSB6では読み取りに成功し、ステップSB7でその読取結果を出力する。読取結果の出力の際、照合元の配列データを使用することなく、読み取りに成功したか、照合元の配列データを使用することで読み取りに成功したかを識別可能な識別信号を、読取結果と共に外部へ出力してもよい。つまり、識別信号は、第1デコード処理による読み取りに成功したか、第2デコード処理による読み取りに成功したかを示す信号である。この識別信号には、例えば文字列、出力端子からの電気的な信号、ブザーの音色や発光体の色による通知も含まれる。照合処理に成功した場合、照合に成功した照合元データを除き、後の照合処理に使われないようにすることもできる。
【0060】
ステップSB8の照合処理に失敗した場合には、ステップSB2に戻り、別のコード候補領域に対して同様な処理を繰り返す。全てのコード候補領域に対して失敗した場合には、読取失敗したことを出力して処理を終了する。
【0061】
図7のフローチャートは、照合元の配列データの記憶と、誤り訂正に失敗した場合の処理とを実行する例を示すフローチャートである。ステップSC1~SC8は、図5に示すフローチャートのステップSB1~SB8と同様である。ステップSC9では、図4に示すステップSA8と同様に、読取に成功した配列データを取得し、デコード結果記憶部7bに記憶する。ステップSC1~SC7は、カメラ3により取得したコード画像から文字列データを読み取り、読み取った文字列データを読取結果として出力する第1デコード処理ステップである。また、ステップSC9は、読取対象のコードに関する照合元データを予め記憶する記憶ステップである。さらに、ステップSC1~SC5、SC8は、カメラ3により取得したコード画像に所定の画像処理を行うことにより照合先データを生成し、生成した照合先データをデコード結果記憶部7bに記憶された照合元データと照合し、照合に成功した場合に、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する第2デコード処理ステップである。
【0062】
上述した例では、カメラ3により取得されたコード画像に対して、第1デコード処理を実行し、当該第1デコード処理による読み取りに失敗した場合に、第2デコード処理を実行する例であり、誤り訂正処理に失敗した後に、照合処理を実行する流れとなっている。本実施形態は、これに限られるものではなく、誤り訂正処理と、照合処理とを並列して実行してもよい。例えば、配列データに対して誤り訂正処理を実行しながら、その配列データを用いて照合処理を実行し、これら処理のうち、先に完了したものに対してデコードして文字列データを生成する。プロセッサ6が複数のコアを備えているマルチコアタイプの場合、一のコアで誤り訂正処理を実行し、他のコアで照合処理を実行することで、処理速度を高速化できる。
【0063】
また、上述した例では、第1光学情報読取装置1Aが、照合元データの取得及び記憶と、照合先データを照合元データと照合する照合処理との両方を実行するように構成されているが、第1~第3光学情報読取装置1A~1Cの任意の一の光学情報読取装置が照合元データの取得及び記憶を実行し、他の光学情報読取装置が照合処理を実行するように構成されていてもよい。この場合、以下のようにして、一の光学情報読取装置の照合元データを他の光学情報読取装置で共有する。
【0064】
(照合元データの同期制御)
図8Aは、4台の光学情報読取装置1A~1DをネットワークN(図2等に示す)に接続した場合を示しており、光学情報読取装置1Aが保有する照合元データを、他の光学情報読取装置1B~1Dで共有する。具体的には、図2に示す取得部6eは、第1光学情報読取装置1Aだけでなく、他の光学情報読取装置1B~1Dにも設けられている。取得部6eは、ネットワークNに対して通信可能に接続された別の光学情報読取装置で読み取られた配列データを取得するための部分である。取得部6eで取得された新たな配列データは、デコード結果記憶部7bに記憶される。
【0065】
取得部6eは、別の光学情報読取装置によって読み取られた読取結果を自動的に順次取得するように構成されている。例えば、取得部6eは、所定の時間が経過する都度、別の光学情報読取装置で記憶されている照合元データが更新されていないか、当該別の光学情報読取装置に対して問い合わせ処理を実行する。別の光学情報読取装置で記憶されている照合元データが、前回の問い合わせ時から更新されていれば、差分の照合元データだけ取得部6eが取得し、光学情報読取装置1Aのデコード結果記憶部7bに順次記憶する。更新されていなければ、そのまま待ち、次の問い合わせ処理を実行する。
【0066】
4台の光学情報読取装置1A~1Dは、例えばTCP/IPネットワークに接続されており、相互に通信可能になっている。光学情報読取装置1Aをサーバとし、光学情報読取装置1B~1Dをクライアントとしており、4台の光学情報読取装置1A~1Dが同一ネットワーク内に存在している。この場合、サーバとなる光学情報読取装置1Aを特定するためのIPアドレスを1つだけ指定する。
【0067】
光学情報読取装置1AのIPアドレスを指定する際には、ユーザがIPアドレスの指定操作を行う。この指定開始操作を設定装置100の制御部105が検出すると、設定装置100の制御部105は、図9に示すようなIPアドレス指定用ユーザインターフェース画面200を生成し、設定装置100の表示部101に表示させる。IPアドレス指定用ユーザインターフェース画面200には、リンクマスタIPアドレス入力領域201が設けられている。このリンクマスタIPアドレス入力領域201には、ユーザがキーボード102またはマウス103を使用してサーバとなる光学情報読取装置1AのIPアドレスを入力する。入力されたIPアドレスは、設定装置100の記憶部106に記憶される。また、IPアドレス指定用ユーザインターフェース画面200には、同一ネットワークNに接続されている通信可能な全ての光学情報読取装置1A~1Dが表示されるリーダ表示領域202も設けられている。リーダ表示領域202には、光学情報読取装置1A~1Dと、これらのIPアドレスと、型式等が表示される。
【0068】
指定されたIPアドレスで特定される光学情報読取装置1Aに記憶される配列データをクライアントとなる光学情報読取装置1B~1Dの取得部6eが自動的に取得する。光学情報読取装置1B~1Dは、取得部6eが取得した配列データを照合元データとして各々のデコード結果記憶部7bに記憶する。
【0069】
以上の動作を、第1光学情報読取装置1A及び第2光学情報読取装置1Bを備えた光学情報読取システムSで実行する場合を想定する。この場合、第1光学情報読取装置1Aのプロセッサ6は、カメラ3により取得されたコード画像から読取結果を出力する第1プロセッサである。この第1光学情報読取装置1Aのデコード結果記憶部7bに照合元データを記憶させておく。
【0070】
一方、第2光学情報読取装置1Bの取得部6eは、第1光学情報読取装置1Aから出力された読取結果に対応する照合元データを取得し、照合元データの共有化を図る。第2光学情報読取装置1Bのデコード結果記憶部7bは、取得部6eで取得した照合元データを記憶する。第2光学情報読取装置1Bのプロセッサ6は第2プロセッサであり、カメラ3により取得されたコード画像に所定の画像処理を行うことにより照合先データを生成し、生成した照合先データをデコード結果記憶部7bに記憶された照合元データと照合し、照合に成功した場合に、当該照合に成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力する。
【0071】
図8Bは、複数の光学情報読取装置1A~1Jを用いて複数段の通信を実行可能にする場合について説明する。図8Bに示す形態を実行する場合には、図7に示すフローチャートの処理を実行することが前提となる。すなわち、図7に示すフローチャートの処理を実行する場合、中段の光学情報読取装置1B~1Dがサーバ兼クライアントになるので、中段の光学情報読取装置1B~1Dの取得部6eは、最下段の光学情報読取装置1E~1Jで記憶している照合元データだけでなく、最上段の光学情報読取装置1Aで記憶している照合元データも取得することができる。よって、中段の光学情報読取装置1B~1Dのデコード結果記憶部7bには、光学情報読取装置1A、1E~1Jで取得した照合元データを記憶し、照合処理に利用できる。
【0072】
(光学情報読取装置の使用形態)
光学情報読取装置の使用形態は複数想定される。まず、図1に示すように、工場内に複数の工程が存在する場合に、複数の光学情報読取装置1A~1Cを備えた光学情報読取システムSを使用することができる。例えば、第1工程でコードを印字し、第1工程で取得した第1コード画像については第1光学情報読取装置1Aで読み取りに成功したとする。第2工程、第3工程を経ると、作業の中で、ワークW自体が加工処理において加工されて印字状態が変わるケースがある。ワークWが例えば自動車部品など、コードを金属に直接印字するケースでは、焼入れ、防錆油の塗布、冷却や洗浄のための液体がコード部分に残ったりすることがあり、また梱包材のフィルムがコードにかかったりすることもある。また、作業ミスでコードに傷がついてしまうケース、環境要因で第2光学情報読取装置1B、第3光学情報読取装置1Cの取り付け条件が異なるケースなどがあり、読み取りが徐々に難しくなっていくケースがある。
【0073】
このようなケースでは、読取が不安定な第3工程よりも前の第1工程または第2工程で、照合元データを記憶しておき、第3工程で第3光学情報読取装置1Cが照合処理を実行する。これにより、第3光学情報読取装置1Cによる読み取り成功率を高めることができる。
【0074】
また、1台の光学情報読取装置1Aを使用して複数の読み取りを実行することもできる。例えば1つの場所に光学情報読取装置1Aを設置し、順次搬送されてくるワークWに付与されたコードを光学情報読取装置1Aで読み取る際に、光学情報読取装置1Aが照合処理を実行することで、読み取り成功率を高めることができる。
【0075】
また、例えば、その日に処理する商品番号が10種類しかないとか、組立工程で使用するパーツの種類が20種類しかないなどのように、予め限定された種類のコードしか読む必要がないことが分かっている場合には、そのコードに関する照合元データを光学情報読取装置1Aのデコード結果記憶部7bに記憶しておき、誤り訂正に失敗した場合に照合処理を実行する。これにより、コードが汚れていたり、損傷している場合であっても、読み取り成功率を高めることができる。
【0076】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る光学情報読取システムSによれば、例えば図1に示すように、製造工程や組立工程における第3工程のようにコード画像の状態が良好でない場合には、カメラ3で取得されたコード画像に所定の画像処理を行って生成された照合先データを、デコード結果記憶部7bに予め記憶されている照合元データと照合する照合処理を実行する。その照合処置において照合に成功した場合には、成功した照合元データに対応する文字列データを読取結果として出力することができるので、コード画像の状態が良好でない場合であっても、コードの読取成功率を向上させることができる。
【0077】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0078】
例えば、図11に示すように、手持ち式の光学的情報読取装置1000に本発明を適用することもできる。手持ち式の光学的情報読取装置1000のハウジング1001は、上下方向に長い形状とされている。尚、光学的情報読取装置1000の使用時の向きは図示した向きに限定されるものではなく、様々な向きで使用可能であるが、説明の便宜上、光学的情報読取装置1000の上下方向を特定している。
【0079】
ハウジング1001の下側部分は、運用時にユーザが把持するための把持部1002である。把持部1002は、一般的な成人が片手で握るようにして持つことが可能な部分であり、形状や大きさは自由に設定できる。この把持部1002を持つことで、光学的情報読取装置1000を携帯して移動することができる。つまり、この光学的情報読取装置1000は、携帯型端末装置であり、例えばハンディターミナルと呼ぶこともできるものである。
【0080】
定置式の光学的情報読取装置1と同様に、手持ち式のハウジング1001に、照明部、カメラ、プロセッサ、記憶部等(図示せず)が収容されている。ユーザが光学的情報読取装置1000の先端(上端)をワークWに向けてトリガーキー1003を押下すれば、光学的情報読取装置1000の先端からエイマー光が照射される。ユーザは、ワークWの表面で反射されるエイマー光を目視しながら光学的情報読取装置1000の向きを調整し、エイマー光を読取対象のコードに合わせれば、コードの撮像、読取が自動的に行われる。
【0081】
手持ち式の光学的情報読取装置1000の使用例として、例えば物流倉庫内におけるピッキング作業に手持ち式の光学的情報読取装置1000を用いる例がある。例えば、受注した商品を物流倉庫から発送する場合、商品倉庫内の商品棚から必要な商品がピッキングされる。このピッキング作業は、コードが記載された受注伝票を持ったユーザが、商品棚まで移動した後、受注伝票のコードと、商品又は商品棚に付されたコードとを照合しながら行われる。この場合、受注伝票のコードと、商品又は商品棚に付されたコードとを交互に手持ち式の光学的情報読取装置1000で読み取る。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本開示は、例えば各種ワークに付与されたコードを読み取る場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1A 第1光学情報読取装置
1B 第2光学情報読取装置
3 カメラ
6 プロセッサ
6e 取得部
7 記憶部
N ネットワーク
S 光学情報読取システム
図1
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図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11