(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079343
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】光学情報読取装置
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
G06K7/10 376
G06K7/10 380
G06K7/10 416
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192767
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田近 太一
(72)【発明者】
【氏名】坂田 亮
(57)【要約】
【課題】筐体を小型化しながら、拡散照明による広範囲の照明を可能にし、しかも、拡散照明では読取が困難なワークであっても読取可能にして様々なワークへの対応範囲を拡大させる。
【解決手段】固定式の光学情報読取装置1Aは、第1の照明グループ4aの前方に設けられる透光板52と、第2の照明グループ4bの前方に設けられ、透光板52よりも面積の大きい拡散板51と、第1の照明グループ4aからの光を透光板52を介してコードに照射しカメラで取得したコード画像と、第2の照明グループ4bからの光を拡散板51を介してコードに照射しカメラで取得したコード画像とをデコードするデコード手段と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、コードが付与されたワークを撮影し、コードを含むコード画像を取得するカメラと、
前記筐体内の前記カメラの周囲に設けられ、外部に照明を照射するための発光素子を有し、複数のグループをなす照明部と、
前記筐体の第1の面に設けられ、第1の照明グループの前方に位置付けられる透光板と、
前記筐体の第1の面に設けられるとともに第2の照明グループの前方に位置付けられ、前記透光板よりも面積の大きい拡散板と、
前記第1の照明グループからの光を前記透光板を介して前記コードに照射し前記カメラで取得したコード画像と、前記第2の照明グループからの光を前記拡散板を介して前記コードに照射し前記カメラで取得したコード画像とをデコードするデコード手段と、
を備えている固定式の光学情報読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学情報読取装置において、
前記カメラの光軸から前記第2の照明グループの光軸までの正面視における距離は、前記カメラの光軸から前記第1の照明グループの光軸までの正面視における距離よりも長く設定されている光学情報読取装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学情報読取装置において、
前記第1の照明グループと前記第2の照明グループとは、前記発光素子の数、前記発光素子の色、前記発光素子の1つあたりの照明強度及び前記発光素子のサイズのうち、少なくとも1つが異なっている光学情報読取装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記第1の照明グループの光は前記第2の照明グループの光よりも照度が大きく設定され、または、前記第1の照明グループから前記透光板を介して照射される光は、前記第2の照明グループから前記拡散板を介して照射される光よりも照度が大きく設定されている光学情報読取装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
正面視において、前記カメラは前記筐体の中心からオフセットして配置され、
前記拡散板は、前記第1の面における前記カメラがオフセットしていない側に設けられている光学情報読取装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光学情報読取装置において、
前記カメラがオフセットしている側には、前記カメラの視野を示す光を照射するエイマーが設けられている光学情報読取装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記照明部、前記拡散板、前記透光板は、正面視において上下及び左右のいずれか一方に非対称であり、上下及び左右のいずれか他方には対称である光学情報読取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光学情報読取装置において、
前記筐体は、正面視において上下方向または左右方向に長軸を有し、
前記照明部、前記拡散板、前記透光板は、前記長軸を対称の中心とした線対称である光学情報読取装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記照明部は、第3の照明グループを有し、
前記第3の照明グループの前方に偏光板を備えている光学情報読取装置。
【請求項10】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、コードが付与されたワークを撮影し、コードを含むコード画像を取得するカメラと、
前記筐体内の前記カメラの周囲に設けられ、外部に照明を照射するための発光素子を有し、複数のグループをなす照明部と、
前記筐体の第1の面に設けられ、第3の照明グループの前方に位置付けられる偏光板と、
前記筐体の第1の面に設けられるとともに第2の照明グループの前方に位置付けられ、前記偏光板よりも面積の大きい拡散板と、
前記第3の照明グループからの光を前記偏光板を介して前記コードに照射し前記カメラで取得したコード画像と、前記第2の照明グループからの光を前記拡散板を介して前記コードに照射し前記カメラで取得したコード画像とをデコードするデコード手段と、
を備えている固定式の光学情報読取装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光学情報読取装置において、
前記第3の照明グループの発光素子は、前記第2の照明グループの発光素子と異なる発光素子である光学情報読取装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記偏光板は、正面視において前記カメラを挟んで前記拡散板の反対側に設けられる光学情報読取装置。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記カメラの光軸から前記第2の照明グループの光軸の中心までの正面視における距離は、前記カメラの光軸から前記第3の照明グループの光軸の中心までの正面視における距離よりも長く設定されている光学情報読取装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記第2の照明グループの前記発光素子を点灯させているときには他の照明グループの前記発光素子を点灯させないように、前記照明部を制御する照明制御部を備えている光学情報読取装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記筐体、前記カメラ、前記照明部、透光板、前拡散板及び前記デコード手段を有し、直接光、拡散光、偏光光を切り替えてコードに照射可能に構成された光学情報読取装置本体と、
前記カメラが前記コード画像を取得した時に前記照明部が直接光、拡散光、偏光光のいずれかを照射したかを示す照明情報と前記コード画像とを関連づけて表示可能な表示器とを備えている光学情報読取装置。
【請求項16】
請求項15に記載の光学情報読取装置において、
前記照明部のうち、運用時にどの照明グループを用いるかを設定可能である光学情報読取装置。
【請求項17】
請求項9から13のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記拡散板、前記偏光板、透光板の少なくともいずれか一つは、前記筐体に対して着脱可能に取り付けられる光学情報読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークに付与されたコードを読み取る固定式の光学情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学情報読取装置には、手で把持して使用される手持ち式のものと、工場のライン等に設置され、固定された状態で使用される固定式のものとがある。固定式の光学情報読取装置については、例えば特許文献1、2に開示されている。特許文献1の光学情報読取装置は、偏光フィルタを介して照明光をワークに照射する第1照明部と、偏光フィルタを介さずに照明光をワークに照射する第2照明部とを備えている。また、特許文献2の光学情報読取装置は、照明部から出射してワークの表面で鏡面反射した光を拡散反射させる拡散反射部材を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-33787号公報
【特許文献2】特開2016-218588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コードを撮影する時、ワークにおけるコードが付与されている面が鏡面であると、コード画像のコントラストが低くなり、コードの読取が困難になる場合がある。そこで、このような鏡面のワークを撮影する際には拡散照明を使用し、当該コードの背景となる部分に拡散照明を照射することで、高いコントラストのコード画像を取得することが可能になる。
【0005】
ところが、拡散照明を使用して高いコントラストのコード画像を取得するためには、少なくとも、コードの縦寸法の2倍、及び横寸法の2倍の領域、即ち、コードの4倍の面積に拡散光を照射する必要がある。一方、光学情報読取装置の筐体は、例えば工場のライン等への設置性を考慮すると、できるだけ小さくしたいという要求がある。よって、筐体の小型化と、広範囲を照射可能な拡散照明との両立が困難であった。
【0006】
また、拡散照明は光を拡散させる分、光量不足のためにコード画像のコントラストが低くなり、コードの読取が困難になる場合があるので、拡散照明のみを搭載したのでは読取の対応範囲が狭まってしまう。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、筐体を小型化しながら、拡散照明による広範囲の照明を可能にし、しかも、拡散照明では読取が困難なワークであっても強力な照明によって読取可能にして様々なワークへの対応範囲を拡大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、固定式の光学情報読取装置を前提とすることができる。光学情報読取装置は、筐体と、筐体に設けられ、コードが付与されたワークを撮影し、コードを含むコード画像を取得するカメラと、筐体内のカメラの周囲に設けられ、外部に照明を照射するための発光素子を有し、複数のグループをなす照明部と、筐体の第1の面に設けられ、第1の照明グループの前方に位置付けられる透光板と、筐体の第1の面に設けられるとともに第2の照明グループの前方に位置付けられ、透光板よりも面積の大きい拡散板と、第1の照明グループからの光を透光板を介してコードに照射しカメラで取得したコード画像と、第2の照明グループからの光を拡散板を介してコードに照射しカメラで取得したコード画像とをデコードするデコード手段と、を備えている。
【0009】
この構成によれば、第2の照明グループからの光は拡散板によって拡散されてからコードに照射される。拡散板は、第1の照明グループからの光が透過する透光板に比べて大きいので、拡散光を広範囲に照射すること、即ち、例えばコードの4倍の面積に拡散光を照射することが可能になる。これにより、ワークの表面が鏡面の場合であっても、カメラによって高いコントラストのコード画像が取得される。
【0010】
一方、第1の照明グループからの光は透光板を通過してからコードに照射される。透光板を通過した場合の光量は、拡散板を通過する場合に比べて多くすることが可能なので、拡散照明では読取が困難なワークであっても光量を十分に確保して読取が可能になり、様々なコードの読取の対応範囲が拡大する。尚、透光板や拡散板は、筐体に対して着脱可能に取り付けることができる。
【0011】
他の形態では、カメラの光軸の中心と第2の照明グループの光軸の中心との距離を、カメラの光軸の中心と第1の照明グループの光軸の中心との距離よりも長くすることで、第2の照明グループの前方に設けられる拡散板を大きくすることができる。
【0012】
他の態様では、第1の照明グループを構成する発光素子と、第2の照明グループを構成する発光素子とを比べた時、数、色、照明強度、サイズの少なくとも1つが異なっているので、より多彩な照明が可能になり、読取の対応範囲がさらに拡大する。
【0013】
他の態様に係る照明部は、第3の照明グループを有しており、この第3の照明グループの前方に偏光板を備えているので、偏光光を照射することも可能になる。偏光板は、筐体に対して着脱可能に取り付けることができる。
【0014】
他の態様では、直接光、拡散光、偏光光を切り替えてコードに照射した状態でコードを含むコード画像を取得することができる。この場合、光学情報読取装置がコード画像を取得した時に直接光、拡散光、偏光光のいずれかを照射したかを示す照明情報と当該コード画像とを関連づけて表示器に表示できるので、ユーザは照明情報を容易に確認できる。
【0015】
他の態様では、筐体の第1の面に設けられ、第3の照明グループの前方に位置付けられる偏光板と、筐体の第1の面に設けられるとともに第2の照明グループの前方に位置付けられ、偏光板よりも面積の大きい拡散板と、第3の照明グループからの光を偏光板を介してコードに照射しカメラで取得したコード画像と、第2の照明グループからの光を拡散板を介してコードに照射し前記カメラで取得したコード画像とをデコードするデコード手段と、を備えた構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、筐体を小型化しながら、拡散照明による広範囲の照射を可能にし、しかも、拡散照明では読取が困難なワークであっても読取可能にして対応範囲を拡大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】光学情報読取装置の運用時を説明する図である。
【
図4】光学情報読取装置をコネクタ側から見た斜視図である。
【
図5】光学情報読取装置を背面側から見た斜視図である。
【
図6】コネクタを回転させた状態を示す斜視図である。
【
図7】光学情報読取装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図10】拡散照明によるコード画像の撮影を模式的に示す図である。
【
図11】コネクタ回転機構を備えていない光学情報読取装置の正面図である。
【
図12】コネクタ回転機構を備えていない光学情報読取装置をコネクタ側から見た斜視図である。
【
図13】コネクタ回転機構を備えていない光学情報読取装置を背面側から見た斜視図である。
【
図14】チューニング実行部によるチューニングの手順の一例を示すフローチャートである。
【
図15】第1ユーザーインターフェース画面の一例を示す図である。
【
図16】第2ユーザーインターフェース画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る光学情報読取装置1A、1B、1Cの運用時、並びに、それら光学情報読取装置1A、1B、1C及び設定装置100を備えた光学情報読取システムSの運用時を模式的に示す図である。光学情報読取システムSを構成する光学情報読取装置1A、1B、1Cの数は特に限定されるものではなく、1台であってもよいし、任意の複数台であってもよい。
図1に示す例では、第1光学情報読取装置1A、第2光学情報読取装置1B、第3光学情報読取装置1Cの3台の光学情報読取装置を備えている。
【0020】
設定装置100は、汎用あるいは専用の電子計算機や携帯型端末等を利用することができ、液晶ディスプレイ等からなる表示器101、キーボード102、マウス103、通信部104、制御部105及び記憶部106を備えている。キーボード102及びマウス103は、設定装置100をユーザが操作するための操作機器である。キーボード102及びマウス103を操作することで、任意の数字等の入力が可能になるとともに、各種設定等を行うことができる。通信部104は、ネットワークNに接続され、第1~第3光学情報読取装置1A~1Cと相互に通信可能に構成されている。記憶部106には、光学情報読取システムSの動作プログラム、撮像条件、読取条件、コード画像、読取結果等が記憶される。
【0021】
図1に示す例では、複数のワークWが搬送用ベルトコンベアBの上面に載置された状態で
図1における矢印Yの方向へ搬送されている。ワークWは、例えば荷物、商品、各種部品、電気製品、電子機器等の物品であり、ベルトコンベアBの送り方向について最上流ではワークWに対して第1工程が行われ、中間部では同ワークWに対して第2工程が行われ、最下流では同ワークWに対して第3工程が行われるようになっている。各工程では、例えば印刷、貼付、部品等の取付作業、各種加工、塗装、調整等が行われる。
【0022】
第1工程でベルトコンベアB上に置かれているワークWから上方へ離れた所に、第1光学情報読取装置1Aが設置されている。第1光学情報読取装置1Aは、ワークWに付与されているコードを撮影し、撮影により取得されたコード画像に含まれるコードをデコード処理して各種情報(文字列データ)を読み取ることができるように構成されたコードリーダである。また、第2工程でベルトコンベアB上に置かれているワークWから上方へ離れた所に、第2光学情報読取装置1Bが設置され、さらに、第3工程でベルトコンベアB上に置かれているワークWから上方へ離れた所に、第3光学情報読取装置1Cが設置されている。
【0023】
図1に示す例では、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cが定置式(固定式)の場合である。この定置式の第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cの運用時には、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cが動かないようにブラケット等(図示せず)に固定して使用する。尚、定置式の第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cをロボット(図示せず)が把持した状態で使用してもよい。また、静止状態にあるワークWのコードを第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cによって読み取るようにしてもよい。定置式の第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cの運用時とは、搬送用ベルトコンベアBによって搬送されるワークWのコードを順に読み取る動作を行っている時である。
【0024】
第1~第3工程を同一のベルトコンベアB上で行ってもよいし、一部の工程を別のベルトコンベア(図示せず)上で行ってもよいし、全ての工程を異なるベルトコンベア上で行ってもよい。ベルトコンベアB以外の搬送装置(図示せず)でワークWを搬送してもよい。第1~第3工程は同一工場内で行ってもよいし、異なる工場内で行ってもよい。工程の数は3つに限られるものではなく、1つの工程のみであってもよい。また、上記工程は、ワークWを単に搬送する搬送工程であってもよい。
【0025】
各ワークWの外面の一部には上方から撮像可能な位置にコードが付与されている。コードには、バーコード及び二次元コードの両方が含まれる。二次元コードとしては、たとえば、QRコード(登録商標)、マイクロQRコード、データマトリクス(Data matrix;Data code)、ベリコード(Veri code)、アズテックコード(Aztec code)、PDF417、マキシコード(Maxi code)などがある。二次元コードにはスタック型とマトリクス型があるが、本実施形態はいずれの二次元コードに対しても適用できる。コードは、ワークWに直接印刷あるいは刻印することによって付与してもよいし、ラベルに印刷した後にワークWに貼付することによって付与してもよく、その手段、方法は問わない。
【0026】
(読取開始トリガ信号)
第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cは、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)130に信号線130aによって有線接続されているが、これに限らず、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1C、及びPLC130に通信モジュールを内蔵し、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cと、PLC130とを無線接続するようにしてもよい。PLC130は、搬送用ベルトコンベアB及び第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cをシーケンス制御するための制御装置であり、汎用のPLCを利用することができる。
【0027】
第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cは、その運用時において、PLC130から信号線130aを介して、コード読取の開始タイミングを規定する読取開始トリガ信号をそれぞれ受信する。そして、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cは、この読取開始トリガ信号に基づいてコード画像の取得及びデコード処理を行う。その後、読取結果は、信号線130aを介してPLC130へ送信される。このように、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cの運用時には、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1CとPLC130等の外部制御装置との間で、信号線130aを介して読取開始トリガ信号の入力とデコード結果の出力が繰り返し行われる。なお、読取開始トリガ信号の入力や読取結果の出力は、上述したように、光学情報読取装置1とPLC130との間の信号線130aを介して行ってもよいし、それ以外の図示しない信号線を介して行ってもよい。例えば、ワークWの到着を検知するためのセンサと第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cとを直接的に接続し、そのセンサから第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cへ読取開始トリガ信号を入力するようにしてもよい。
【0028】
(光学情報読取装置の構成)
第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cは同じものである。以下、第1光学情報読取装置1Aの構成について説明する。
図2は、第1光学情報読取装置1Aのブロック図であり、また
図3~6は第1光学情報読取装置1Aの外観を示す図である。第1光学情報読取装置1Aは、筐体2と、照明部4及びカメラ5と、プロセッサ20とを備えている。照明部4は、ワークWを照明する部分であり、また、カメラ5は、コードが付与されたワークWを照明部4によって照明された状態で撮影し、コードを含むコード画像を取得する部分である。プロセッサ20のデコード部22は、カメラ5で取得されたコード画像をデコードするデコード手段の一例である。
【0029】
この実施形態の説明では、
図3~
図6に示すように光学情報読取装置1の上下、左右、前後をそれぞれ定義するが、これは説明の便宜を図るためだけであり、光学情報読取装置1の使用時における向きを限定するものではない。すなわち、
図1に示すように、光学情報読取装置1Aの前面(正面)が下に向き、後面(背面)が上に向くように設置して使用すること、光学情報読取装置1Aの前面が上に向くように設置して使用すること、あるいは光学情報読取装置1Aの前面が傾斜した状態となるように設置して使用すること等が可能である。また、光学情報読取装置1Aの左右方向は幅方向と呼ぶこともできる。
【0030】
図3~
図6に示すように、筐体2は、上下方向に長い略矩形箱状をなしており、前面2a、後面2b、左側面2c、右側面2d、上面2e、下面2fを少なくとも有している。
図3に示す正面視において、筐体2の前面2aの左右方向中央部を上下方向に延びる直線である第1仮想線L1と、筐体2の前面2aの上下方向中央部を左右方向に延びる直線である第2仮想線L2とを想定した時、第1仮想線L1と第2仮想線L2との交点は、筐体2の前面2aの中心Cとなる。第1仮想線L1と第2仮想線L2とは直交する。
【0031】
図7にも示しているカメラ5は筐体2内に設けられている。
図2に示すように、カメラ5は、照明部4によって照明されているコードを撮像する撮像素子5aと、レンズ等を有する光学系5bと、AFモジュール(オートフォーカスモジュール)5cとを備えている。光学系5bには、ワークWのコードが付与された部分から反射した光が入射するようになっている。撮像素子5aは、光学系5bを通して得られたコードの画像を電気信号に変換するCCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等の受光素子からなるイメージセンサである。撮像素子5aはプロセッサ20に接続されていて、撮像素子5aによって変換された電気信号は、プロセッサ20に入力される。また、AFモジュール5cは、光学系5bを構成するレンズのうち、合焦用レンズの位置や屈折率を変更することによってピント合わせを行う機構である。AFモジュール5cもプロセッサ20に接続され、プロセッサ20により制御される。
【0032】
カメラ5は筐体2内に収容された状態で、当該筐体2に対して固定されている。カメラ5の光学系5bは、筐体2の前面2aに形成された撮影窓2g(
図3等に示す)から外部を臨むように配設されている。光学系5bの光軸X1は筐体2の前後方向に延びている。正面視において、カメラ5は筐体2の中心Cからオフセットして配置されている。すなわち、光学系5bの光軸X1は、筐体2の中心Cから上方へ距離D1だけ離れている。この位置に光学系5bが位置付けられるように、カメラ5の筐体2内での取り付け位置が設定されている。
【0033】
図3及び
図7に示すように、照明部4は、筐体2内のカメラ5の周囲に設けられ、外部に照明を照射するための発光ダイオード等からなる発光素子を有し、複数のグループをなしている。
図7にも示すように、この実施形態の照明部4は、2つの発光素子で構成された第1グループ(第1の照明グループ)4aと、2を超える複数の発光素子で構成された第2グループ(第2の照明グループ)4bと、2つの発光素子で構成された第3グループ(第3の照明グループ)4cと有している。詳細は後述するが、第1グループ4aは非偏光かつ非拡散照明であり、第2グループ4bは非偏光かつ拡散照明であり、第3グループ4cは非拡散かつ偏光照明である。尚、照明部4は、偏光照明のグループと、拡散照明のグループとで構成されていてもよく、この形態も本発明に含まれるものである。
【0034】
上述したように、第1グループ4aと第2グループ4bとは、発光素子の数が異なっており、具体的には、拡散照明である第2グループ4bの方が非拡散照明の第1グループ4aに比べて発光素子の数が多くなるように、発光素子の数が設定されている。これにより、拡散照明を広範囲に照射することが可能になる。尚、発光素子の数は一例であり、第1グループ4aや第3グループ4cは3以上の発光素子で構成されていてもよい。
【0035】
第1グループ4aの発光素子の1つあたりの照明強度と、第2グループ4bの発光素子の1つあたりの照明強度とが異なる構成とすることもできる。具体的には、第2グループ4bの方が第1グループ4aに比べて発光素子の1つあたりの照明強度が高くなるように、発光素子を選定、または発光素子の制御を行う。また、第1グループ4aの各発光素子のサイズと、第2グループ4bの各発光素子のサイズとが異なる構成とすることもできる。具体的には、第1グループ4aの方が第2グループ4bに比べて各発光素子のサイズが大きくなるように、発光素子を選定する。また、第1グループ4aの発光素子の色と、第2グループ4bの発光素子の色とが異なる構成とすることもできる。例えば、第1グループ4aの発光素子の色は赤色とし、第2グループ4bの発光素子の色は青色とすることができるが、これに限られるものではない。また、第3グループ4cの発光素子は、第2グループ4bの発光素子と異なる発光素子である。第3グループ4cの発光素子の色は、第1グループ4aの発光素子の色と同じであり、具体的には赤色とすることができる。また、第1グループ4aの発光素子と、第3グループ4cの発光素子とは同じにすることもできる。
【0036】
図7に示すように、第1~第3グループ4a、4b、4cを構成する複数の発光素子は、同一の基板4dに実装されている。すなわち、この基板4dは、筐体2内で上下方向及び左右方向に延びている。カメラ5の光学系5bは、筐体2の中心Cから上方にオフセットした部分を貫通するように配設されている。第2グループ4bを構成する複数の発光素子は、基板4d上においてカメラ5の下方に配設されている。第2グループ4bを構成する発光素子が配設されている領域は、第1グループ4aを構成する発光素子が配設されている領域よりも広くなっている。
図3に示すように、第2グループ4bの光軸X2は、当該第2グループ4bを構成する発光素子が配設されている領域の中央部に位置する。
【0037】
また、第1グループ4aを構成する2つの発光素子は、基板4d上においてカメラ5の左側及び右側にそれぞれ配設されている。第1グループ4aの光軸X3は、第1グループ4aを構成する2つの発光素子の間に位置しており、この実施形態では、第1グループ4aの左側の発光素子とカメラ5との距離と、第1グループ4aの右側の発光素子とカメラ5との距離とが等しいので、第1グループ4aの左側の発光素子と右側の発光素子との中央部に位置することになる。
【0038】
また、第3グループ4cを構成する2つの発光素子は、基板4d上においてカメラ5の上方で左側及び右側にそれぞれ配設されている。第3グループ4cの光軸X4は、第3グループ4cを構成する2つの発光素子の間に位置している。また、第3グループ4cを構成する2つの発光素子の間隔は、第1グループ4aを構成する2つの発光素子の間隔よりも狭く設定されている。
【0039】
カメラ5の光軸X1から第2グループ4bの光軸X2までの正面視における距離は、カメラ5の光軸X1から第3グループ4cの光軸X4までの正面視における距離よりも長く設定されている。すなわち、カメラ5の光軸X1を挟んで、直接照明(または偏光照明)と拡散照明とが配置されていることで、光軸X4を筐体2の前面2aの中心Cに対してオフセットさせ、これにより、拡散照明の面積を大きくすることができる。この実施例では、偏光照明と拡散照明が上記の形態となっている。
【0040】
カメラ5の光軸X1から第3グループ4cの光軸X4の中心までの正面視における距離は、カメラ5の光軸X1から第1グループ4aの光軸X3の中心までの正面視における距離よりも長く設定されている。また、カメラ5の光軸X1から第2グループ4bの光軸X2までの正面視における距離は、カメラ5の光軸X1から第3グループ4cの光軸X4までの正面視における距離よりも長く設定されている。
【0041】
光学情報読取装置1Aは、発光ダイオード等の発光体で構成されたエイマー10を備えている。このエイマー10は、光学情報読取装置1Aの前方へ向けて光を照射することによってカメラ5の視野や照明部4の光軸の位置を示すためのものである。ユーザは、エイマー10から照射される光を参照して光学情報読取装置1Aを設置することもできる。エイマー10は、カメラ5の光軸X1よりも上方、即ち筐体2の中心Cよりもカメラ5がオフセットしている側に設けられている。また、照明部4の第3グループ4cを構成している2つの発光素子の間にエイマー10が配置されており、これら2つの発光素子の間からエイマー光が照射されるようになっている。
【0042】
筐体2の前面2aには、偏光板50、拡散板51及び透光板52が設けられている。すなわち、
図8に筐体2の前面2aのみ抜き出して示しているように、筐体2の前面2aには、照明部4の第3グループ4cを構成する発光素子の前方に第1投光窓2hが形成されている。第3グループ4cを構成する発光素子がカメラ5を左右方向に挟むように配置されていることから、2つの第1投光窓2hが撮影窓2gを左右方向に挟むように形成される。各第1投光窓2hの大きさは、撮影窓2gの大きさよりも小さく設定されている。
【0043】
さらに、照明部4の第2グループ4bの前方に第2投光窓2iが形成されるとともに、第1グループ4aの前方に第3投光窓2jが形成されている。第2投光窓2iは、第2グループ4bを構成する発光素子が配設されている領域に対応するように大型の窓となっており、前面2aの総面積のうち、例えば1/2以上、2/5以上の範囲を占めている。一方、第3投光窓2jは、第1グループ4aを構成する2つの発光素子が配設されている領域に対応するように、第2投光窓2iよりも小型の窓となっており、第2投光窓2iの1/2以下、または1/3以下の大きさとなっている。第1グループ4aを構成する2つの発光素子が左右方向に離れていることから、第3投光窓2jは左右方向に長い形状となっている。また、第1グループ4aを構成する2つの発光素子の間にエイマー10が配設されていることから、このエイマー10から照射されたエイマー光は、第3投光窓2jを通過して外部へ照射されることになる。また、2つの第1投光窓2hを合わせた面積よりも、第2投光窓2iの面積の方が大きく設定されている。
【0044】
偏光板50は、2つの第1投光窓2hから外部を臨むようにそれぞれ設けられており、第3グループ4cの前方に配置される。
図8において偏光板50が設けられている範囲を左斜め下へ向かう斜線で示している。偏光板50は、偏光効果を有している。
【0045】
拡散板51は、第2投光窓2iから外部を臨むようにそれぞれ設けられており、第2グループ4bの前方に配置される。
図8において拡散板51が設けられている範囲を右斜め下へ向かう斜線で示している。拡散板51は、第2グループ4bから入射した光を拡散させて出射させるように構成されており、例えば拡散板51の表面等に細かなシボを形成した透光性を有する板である。この拡散板51は偏光効果を有していない。第2投光窓2jの面積が第3投光窓2jよりも大きいので、拡散板51の面積が透光板52の面積よりも大きくなっている。拡散板51は、筐体2の前面2aにおけるカメラ5がオフセットしていない側、即ち、筐体2の中心Cよりも下側に設けられている。この実施形態では、拡散板51の上部が筐体2の中心Cに達しているが、拡散板51の大部分は中心Cよりも下側に設けられている。
【0046】
第1グループ4aの光は第2グループ4bの光よりも照度が大きく設定されている。また、第1グループ4aから透光板52を介して照射される光は、第2グループ4bから拡散板51を介して照射される光よりも照度が大きく設定されている。これにより、非拡散の強力な光をワークWに照射することができる。
【0047】
透光板52は、第3投光窓2jから外部を臨むようにそれぞれ設けられており、第1グループ4aの前方に配置される。
図8において透光板52が設けられている範囲をクロスハッチングで示している。このように、透光板52は、正面視においてカメラ5を挟んで拡散板51の反対側に設けられる。
【0048】
照明部4、透光板52、拡散板51は、筐体2の正面視において上下方向及び左右方向のいずれか一方に非対称であり、上下方向及び左右方向のいずれか他方には対称である。具体的には、
図3に示すように、筐体2は上下方向に長い形状であるため、正面視において上下方向に長軸を有している。長軸は、第1仮想線L1となり、短軸は、第2仮想線L2となる。この場合、照明部4、透光板52、拡散板51は、第1仮想線L1を対称の中心とした線対称(左右方向に対称)である。例えば照明部4の第1グループ4aを構成する2つの発光素子は、正面視で第1仮想線L1と距離が等しく、かつ、上下方向の位置も同じである。同様に、照明部4の第3グループ4cを構成する2つの発光素子も、正面視で第1仮想線L1と距離が等しく、かつ、上下方向の位置も同じである。また、照明部4の第2グループ4bを構成する複数の発光素子は、正面視で第1仮想線L1よりも左側に配置されるものと、第1仮想線L1よりも右側に配置されるものとが同じ数で、上下方向の位置も同じである。
【0049】
一方、筐体2の前面2aの中心Cよりも上に第1グループ4aと第3グループ4cとが配置され、中心Cよりも下に主に第2グループ4bが配置されているので、第2仮想線L2については非対称(上下方向には非対称)である。
【0050】
尚、筐体2の形状としては、長軸が左右方向に延びる一方、短軸が上下方向に延びる形状であってもよい。この場合、照明部4、透光板52、拡散板51は、短軸を対称の中心とした線対称であり、長軸については非対称になる。
【0051】
この実施形態では、偏光板50、拡散板51及び透光板52が筐体2の前面2aに固定されている例について説明したが、これに限らず、偏光板50、拡散板51及び透光板52の少なくともいずれか一つは、筐体2に対して着脱可能に取り付けられていてもよい。図示しないが、例えば、偏光板50、拡散板51及び透光板52の少なくともいずれか1つと、枠体とを一体化したアタッチメントとしておき、枠体を筐体2の前面2aに対して、例えば爪嵌合構造やネジ等による締結固定構造を用いて取り付けることもできる。この場合、偏光板50、拡散板51及び透光板52の少なくともいずれか一つを必要に応じて取り付けたり、取り外したりすることができる。アタッチメントは、拡散板51のみを有していてもよいし、偏光板50のみを有していてもよいし、拡散板51及び偏光板50を有していてもよい。
【0052】
透光板52をカメラ5の側方ではなく上方に設けることにより、カメラ5から離すことができる。これにより、正反射光がカメラ5に入射し難くなり、良好なコード画像を取得できる。また、透光板52を上方に設けることにより、透光板52と拡散板51とを離すことができる。これにより、コードの背面に拡散照明を映し込む照明を実現し易くなる。
【0053】
(拡散板の成形)
図9A及び
図9Bは、拡散板ユニット51Aを示すものである。拡散板ユニット51Aは、拡散板51と、第1レンズ56及び第2レンズ57と、エイマー用レンズ58とを一体成形することによって得られるものである。第1レンズ56は、第3グループ4cの2つの発光素子と、偏光板50との間に配置される。また、第2レンズ57は、第1グループ4aの2つの発光素子と、透光板52との間に配置される。発光素子の前方にレンズ56、57を配置することで、大きな光量を広範囲に確保できる。エイマー用レンズ58は、エイマー10の前方に配置されている。拡散板51と、レンズ56、57、58を一体成形しているので、部品点数を削減でき、構造を簡素化できる。尚、拡散板51と、レンズ56、57、58とは別部品で構成されていてもよい。
【0054】
また、発光素子にはワイヤボンディングや光源上の模様があるため、1灯の発光素子の光をレンズで集光して投影したときには投影面に光量ムラが発生することがある。本実施形態では、この光量ムラを回避するため、発光素子とレンズの組を複数搭載し、かつ、発光素子の光軸中心にお互いに同じ向きにならないように実装している。これにより、全体として光量ムラを低減している。
【0055】
(照明制御部)
図2に示すように、第1グループ4a、第2グループ4b及び第3グループ4cは、プロセッサ20に接続されており、当該プロセッサ20よって構成される照明制御部21で制御される。照明制御部21は、第2グループ4bの発光素子を点灯させているときには他の照明グループ4a、4cの発光素子を点灯させないように照明部4を制御すること、第1グループ4aの発光素子を点灯させているときには他の照明グループ4b、4cの発光素子を点灯させないように照明部4を制御すること、第3グループ4cの発光素子を点灯させているときには他の照明グループ4a、4bの発光素子を点灯させないように照明部4を制御することが可能になっている。つまり、照明制御部21は、直接光(透光板52を透過した光)、拡散光、偏光光を切り替えてコードに照射可能に構成されている。
【0056】
ここで、
図10に示す模式図に基づいて拡散照明によるコード画像の撮影について説明する。照明部4の第2グループ4bから拡散照明を照射し、コードが付与されたワークWに当てる際、コードの背面に拡散照明を映し込むことで、高いコントラストのコード画像を取得することが可能になる。コードの背面に拡散照明を映し込むためには、例えば10mm角のコードを撮影対象とした時、20mm角の拡散照明が必要になる。つまり、コードの面積の4倍の面積の領域に拡散照明を照射する必要がある。本実施形態では、拡散板51が透光板52及び偏光板50よりも大きく、筐体2の前面2aの広範囲に設けられているので、コードの背面に拡散照明を映し込むのに必要な広範囲に拡散照明を照射できる。
【0057】
また、拡散光が不要なワークWの場合には、直接光に切り替えることで、大光量でコードを照射して高コントラストのコード画像を取得できる。また、必要に応じて偏光光に切り替えることでも高コントラストのコード画像を取得できる。よって、読取可能なワークWの範囲が拡大する。
【0058】
(デコード処理)
プロセッサ20によりデコード部22が構成されている。デコード部22は、第1グループ4aからの光を透光板52を介してコードに照射しカメラ5で取得したコード画像と、第2グループ4bからの光を拡散板51を介してコードに照射しカメラ5で取得したコード画像と、第3グループ4cからの光を偏光板50を介してコードに照射しカメラ5で取得したコード画像とをデコードする部分である。コード画像は、
図2に示す記憶部30の画像データ記憶部30aに記憶されている。
【0059】
デコード部22は、上記コード画像をデコードする前に各種画像処理フィルタ等の画像処理を行う。その後、デコード時には、従来から周知のテーブルを使用することができる。さらに、デコード部22は、デコードした結果が正しいか否かを所定のチェック方式に従ってチェックする。データに誤りが発見された場合にはエラー訂正機能を使用して正しいデータを演算する。エラー訂正機能はコードの種類によって異なる。デコード部22は、コードをデコードして得られたデコード結果を記憶部30のデコード結果記憶部30bに記憶させる。
【0060】
(本体表示部)
図5に示すように、筐体2の上面2eには本体表示部6が設けられている。本体表示部6は、たとえば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等からなるものである。
図2に示すように、本体表示部6は、プロセッサ20に接続されている。本体表示部6には、例えばカメラ5で撮影されたコード画像、コード画像をデコードした結果である文字列、読み取り成功率、マッチングレベル等を表示させることができる。読み取り成功率とは、複数回読み取り処理を実行したときの平均読み取り成功率である。マッチングレベルとは、デコードが成功したコードの読み取りのしやすさを示す読取余裕度である。これはデコード時に発生した誤り訂正の数等から求めることができ、たとえば数値で表すことができる。誤り訂正が少なければ少ないほどマッチングレベル(読取余裕度)が高くなり、一方、誤り訂正が多ければ多いほどマッチングレベルが低くなる。
【0061】
(操作ボタン)
筐体2の上面2eには、光学情報読取装置1Aの設定時等に使用するセレクトボタン11及びエンターボタン12とが設けられている。セレクトボタン11及びエンターボタン12はプロセッサ20に接続されていて、プロセッサ20はセレクトボタン11及びエンターボタン12の操作状態を検出可能になっている。セレクトボタン11は、本体表示部6に表示された複数の選択肢の中から1つを選択する際に操作するボタンである。エンターボタン12は、セレクトボタン11で選択した結果を確定する際に操作するボタンである。
【0062】
(インジケータ)
筐体2の上面2eには、インジケータ9も設けられている。インジケータ9は、プロセッサ20に接続されていて、たとえば発光ダイオード等の発光体で構成することができる。光学情報読取装置1Aの作動状態をインジケータ9の点灯状態によって外部に報知することができる。
【0063】
(コネクタ)
筐体2の下部には、回転コネクタ60が設けられている。回転コネクタ60は、筐体2の本体部分に対して
図5に示す中心線L3周りに回動可能に取り付けられている。回転コネクタ60には、光学情報読取装置1Aに電力を供給するための電力配線が接続される電源コネクタ7と、設定装置100及びPLC130に接続されるEthernetコネクタ8とが設けられている。尚、Ethernet規格は一例であり、Ethernet規格以外の規格の信号線を利用することもできる。
【0064】
回転コネクタ60を回転させることで、
図3~
図5に示すように電源コネクタ7及びEthernetコネクタ8が筐体2の下方へ突出する姿勢と、
図6に示すように電源コネクタ7及びEthernetコネクタ8が筐体2の後方へ突出する姿勢とに切り替えることが可能になっている。光学情報読取装置1Aの設置場所に応じて、回転コネクタ60を回転させて所望の方向に電源コネクタ7及びEthernetコネクタ8を突出させることができる。
【0065】
(コネクタ回転機構の非搭載機種)
上記実施形態では、回転コネクタ60を搭載しているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば
図11~
図13に示すように、回転コネクタ60を搭載していない場合にも適用することができる。
図11~
図13に示す例では、電源コネクタ7及びEthernetコネクタ8が筐体2の下面2fから下方へ突出しており、その突出方向は固定されている。
【0066】
(通信部32の構成)
光学情報読取装置1Aは通信部32を有している。通信部32は、設定装置100及びPLC130と通信を行う部分である。通信部32は、Webサーバ機能を有していてもよいし、設定装置100及びPLC130と接続されるI/O部、RS232C等のシリアル通信部、無線LANや有線LAN等のネットワーク通信部を有していてもよい。
【0067】
(表示器を備えた構成)
図1に示す例では、設定装置100が表示器101を備えているが、表示器101は第1光学情報読取装置1Aの一部であってもよい。この場合、筐体2、照明部4、カメラ5、透光板52、拡散板51及びプロセッサ20を有する光学情報読取装置本体と、表示器101とを備えた光学情報読取装置とすることができる。
【0068】
(チューニング)
図2に示すプロセッサ20によりチューニング実行部23が構成されている。チューニング実行部23は、AFモジュール5cを作動させてピント合わせを行った後、カメラ5の撮影条件及びデコード処理のデコード条件等を変化させて、コードの撮影及びデコード処理を繰り返し、各撮影条件及びデコード条件にて算出されたコードの読み取りのしやすさ(デコードの余裕度)を示すマッチングレベルに基づいて、最適な撮影条件及びデコード条件を決定するチューニング処理を実行する。例えば、チューニング実行部23は、光学情報読取装置1Aの設定時に、カメラ5のゲイン、照明部4の光量、照明切替(直接光、拡散光、偏光光の切替)、露光時間等の撮影条件や、画像処理条件を変更してデコードに適した条件となるように各種条件(チューニングパラメータ)を設定する部分である。画像処理条件とは、デコード前のコード画像に対する画像処理フィルタの係数(フィルタの強弱)や、複数の画像処理フィルタがある場合に画像処理フィルタの切替、種類の異なる画像処理フィルタの組み合わせ等である。搬送時のワークWに対する外光の影響や、コードが付されている面の色及び材質等によって適切な撮影条件及び画像処理条件は異なる。よって、チューニング実行部23は、より適切な撮影条件及び画像処理条件を探索して、上記条件を設定する。
【0069】
具体的には、
図14のフローチャートに示すように、スタート後のステップSB1では、チューニング実行部23が照明部4及びカメラ5を制御してカメラ5にコード画像を生成させ、チューニング実行部23がコード画像を取得する。このとき、デコード処理前に実行される画像処理フィルタの有無や種類、照明条件、撮影条件等に関するデコード処理パラメータは任意のパラメータに設定されている。次いでステップSB2に進み、取得したコード画像に対してチューニング実行部23がデコード部22にデコード処理を実行させる。
【0070】
デコード処理後、ステップSB3に進み、ステップSB2のデコード処理が成功したか否かをチューニング実行部23が判定する。ステップSB3でNOと判定されてステップSB2のデコード処理が失敗した場合、即ちコードの読み取りができなかった場合には、ステップSB4に進み、デコード処理パラメータを別のパラメータに変更した後、ステップSB2で再度デコード処理を実行する。全てのデコード処理パラメータでデコード処理を失敗した場合にはこのフローを終了してユーザに報知する。
【0071】
一方、ステップSB3でYESと判定されてステップSB2のデコード処理が成功した場合には、ステップSB5に進み、チューニング実行部23が上記デコード処理結果に基づいて読取余裕度を評価し、一旦記憶しておく。
【0072】
ステップSB6では、全てのデコード処理パラメータでデコード処理の実行が完了したか否かを判定する。ステップSB6でNOと判定されて、全てのデコード処理パラメータでデコード処理の実行が完了していない場合にはステップSB7に進み、デコード処理パラメータを別のパラメータに変更してデコード処理する。
【0073】
一方、ステップSB7でYESと判定されて全てのデコード処理パラメータでデコード処理の実行が完了するとステップSB8に進む。ステップSB8では、チューニング実行部23が、全てのデコード処理パラメータの中から読取余裕度が最も高いデコード処理パラメータを選択し、その選択したデコード処理パラメータを運用時に適用するパラメータとして決定する。
【0074】
チューニング工程では、照明条件も適切な条件に設定される。つまり、光学情報読取装置1Aの運用時に、照明部4の第1~第3グループ4a、4b、4cのうち、どの照明グループを用いるかを設定することが可能になっている。どの照明グループを用いるかについては、上述したチューニングによって設定してもよいし、ユーザが選択した照明グループとなるように設定してもよい。例えば、第1~第3グループ4a、4b、4cの選択が可能なユーザーインターフェースを生成して表示器101に表示させ、ユーザがキーボード102やマウス103を操作して所望の照明グループを選択すれば、その選択結果が運用時に反映されるようにすることができる。
【0075】
チューニング実行部23が実行したチューニングの結果、設定された各種条件やユーザが設定した各種条件を構成するパラメータがセットになったものがパラメータセットである。このパラメータセットは、コード画像をデコードするときに適用される読取条件でもある。パラメータセットは、バンクと呼ぶこともでき、この実施形態では、パラメータセットを複数通り記憶することができる。コード画像をデコードするときに適用された読取条件と、読取データとは関連付けられてパラメータセット記憶部30cに記憶される。
【0076】
この光学情報読取装置1Aでは、パラメータセット記憶部30cに記憶されている複数のパラメータセットのうち、一のパラメータセットから他のパラメータセットに切り替えることができるように構成されている。パラメータセットの切替は、ユーザが行うこともできるし、PLC130等の外部制御装置からの切替信号によって行うように構成することもできる。パラメータセットの切替をユーザが行う場合には設定装置100や、操作ボタン11、12を操作すればよい。選択されたパラメータセットが光学情報読取装置1Aの運用時に使用され、また、選択されなかったパラメータセットが光学情報読取装置1Aの運用時に使用されないようになる。つまり、一のパラメータセットから他のパラメータセットに切り替えることが可能になっている。
【0077】
(表示器)
表示器101には、様々なユーザーインターフェース画面を表示させることができる。ユーザーインターフェース画面は、例えば設定装置100の制御部105で生成することができる。
【0078】
図15は、表示器101に表示される第1ユーザーインターフェース画面300の一例を示している。第1ユーザーインターフェース画面300は、複数の光学情報読取装置1A、1B、1C(図中ではそれぞれ簡略化してリーダ1A、1B、1Cとする)から同一の読取データを持つレコードを抽出し、コード画像や読取時間、各種条件等を表示するための画面である。第1ユーザーインターフェース画面300のヘッダー部301には、フィルタ/検索の条件設定が可能になっており、フィルタ設定領域301a、検索設定領域301b、リーダ選択領域301c、期間指定領域301dが設けられている。フィルタ設定領域301aでは、多数のレコードの中から第1ユーザーインターフェース画面300に表示する対象(表示対象)を選別する際の条件が設定され、例えば「すべてを表示」、「エラーのみ表示」等の条件設定が可能である。エラーとは、読取不可または読取失敗であったレコードである。検索設定領域301bでは、表示対象のレコードの中から指定した読取データを持つレコードを検索する条件設定が可能である。期間指定領域301dでは、表示対象を抽出する期間の指定が可能である。
【0079】
リーダ選択領域301cでは、ヘッダー部301の下に表示する光学情報読取装置を複数の光学情報読取装置1A、1B、1Cの中から選択する。例えば、同一のネットワークN上に存在する第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cを探索し、探索された光学情報読取装置のIPアドレスを取得する。そして、ユーザがリーダ選択領域301cを操作して第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cの選択操作を行うと、その選択操作を制御部105が検出し、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cを選択する。
【0080】
第1ユーザーインターフェース画面300のヘッダー部301の下には、リーダ表示領域302と、読取データの一覧を表示するレコード表示領域303とが設けられている。リーダ表示領域302には、選択された光学情報読取装置の情報が表示される。本例では、第1~第3光学情報読取装置1A、1B、1Cが表示されているが、1つのみが選択された場合には1つのみ表示することも可能である。リーダ表示領域302には、光学情報読取装置の情報として、光学情報読取装置を特定するための名称、型式、光学情報読取装置の外観を示すイラストや写真等が表示される第1領域302aが設けられており、制御部105が、選択された光学情報読取装置の情報を第1領域302aに表示させる。光学情報読取装置の外観から型式等を判別することが可能になるので、どの型式の光学情報読取装置がどの工程に設置されているかが簡単に分かる。
【0081】
また、リーダ表示領域302には、光学情報読取装置で撮影されたコード画像が表示される第2領域302bが設けられている。また、リーダ表示領域302には、光学情報読取装置でデコードした際のマッチングレベル(MLV)と、デコード時間(時間)とを表示する第3領域302cも設けられている。
【0082】
リーダ表示領域302の下方には、読取距離表示領域304、設置角度表示領域305、バンク情報表示領域306、照明情報表示領域307、適用した画像処理フィルタを表示するフィルタ表示領域308等が設けられている。
【0083】
読取距離表示領域304には、光学情報読取装置とワークとの距離(読取距離)が表示される。設置角度表示領域305には、光学情報読取装置の設置角度(チルト角、ピッチ角等)が表示される。バンク情報表示領域306には、カメラ5がコード画像を取得した時に適用され、かつ読取に成功したバンクの番号(パラメータセットの番号)が表示される。照明情報表示領域307には、カメラ5がコード画像を取得した時に照明部4が直接光、拡散光、偏光光のいずれかを照射したかを示す照明情報が表示される。照明情報は、パラメータセットに含まれている情報である。この照明情報表示領域307に表示された照明情報と、コード画像とは関連づけられている。この図では、第1光学情報読取装置1Aで取得されたコード画像は、直接光で撮影された画像であり、第2光学情報読取装置1Bで取得されたコード画像は、拡散光で撮影された画像であり、第3光学情報読取装置1Cで取得されたコード画像は、偏光光で撮影された画像であることが分かる。
【0084】
図16は、第2ユーザーインターフェース画面320の一例を示している。この第2ユーザーインターフェース画面320には、コード画像表示領域321と、偏光光を照射して取得されたコード画像を表示する第1領域322と、直接光を照射して取得されたコード画像を表示する第2領域323と、拡散光を照射して取得されたコード画像を表示する第3領域324とが設けられている。第2ユーザーインターフェース画面320には、偏光光を照射して取得されたコード画像、直接光を照射して取得されたコード画像及び拡散光を照射して取得されたコード画像を比較可能に表示することができるので、ユーザはどの照明が適しているかを実際の画像を見ながら判定できる。
【0085】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、照明部4が第1グループ4a及び第2グループ4bを有しており、第1グループ4aの前方には透光板52が設けられ、第2グループ4bの前方には拡散板51が設けられている。したがって、第2グループ4bからの光は拡散板51によって拡散されてからコードに照射されることになる。拡散板51は、第1グループ4aからの光が透過する透光板52に比べて大きいので、拡散光51を広範囲に照射すること、即ち、例えばコードの4倍の面積に拡散光を照射することが可能になる。これにより、ワークWの表面が鏡面の場合であっても、カメラ5によって高いコントラストのコード画像が取得される。その結果、読取成功率を高めることができる。
【0086】
一方、第1グループ4aからの光は透光板52を通過してからコードに照射される。透光板52を通過した場合の光量は、拡散板51を通過する場合に比べて多くなるので、拡散照明では読取が困難なワークであっても光量を十分に確保して読取が可能になり、読取可能なコードの対応範囲が拡大する。
【0087】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本発明に係る光学情報読取装置は、例えば二次元コード等のコードを読み取る場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1A 第1光学情報読取装置
2 筐体
2a 前面(第1の面)
4 照明部
4a 第1グループ
4b 第2グループ
4c 第3グループ
5 カメラ
21 照明制御部
22 デコード部
50 偏光板
51 拡散板
52 透光板
101 表示器