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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079346
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】光学情報読取装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/14 20060101AFI20230601BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20230601BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230601BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
G06K7/14 060
G06K7/10 372
G06K7/14 017
G06T7/00 350C
G06T5/00 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192770
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江渕 文人
(72)【発明者】
【氏名】西澤 有翼
【テーマコード(参考)】
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
5B057AA02
5B057BA02
5B057CA02
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB02
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CC01
5B057CD10
5B057CE02
5B057CE05
5B057CE06
5B057CG01
5B057DA17
5B057DB02
5B057DB05
5B057DB09
5B057DC40
5L096AA03
5L096AA06
5L096BA03
5L096BA18
5L096CA02
5L096CA22
5L096DA01
5L096EA03
5L096EA05
5L096EA06
5L096EA07
5L096FA32
5L096GA55
5L096HA11
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】ニューラルネットワークによる修復後の画像でデコードする場合に、実際の画像を反映したマッチングレベルが得られるようにする。
【解決手段】ニューラルネットワークに読取画像を入力して修復した修復画像をデコードする。修復前の読取画像を用いて、デコードのし易さを示すマッチングレベルを算出する。
【選択図】図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに付与されたコードを読み取る光学情報読取装置であって、
コードが付与されたワークを撮影し、コードを含む読取画像を生成するカメラと、
前記カメラにより生成された読取画像に対応する理想画像を推定するためのニューラルネットワークの構造及びパラメータを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された構造及びパラメータで構成されたニューラルネットワークに前記カメラにより生成された読取画像を入力し、前記読取画像を修復した修復画像を生成する推論処理を実行し、当該修復画像をデコードするデコード部と、
前記推論処理が適用される前の読取画像を用いて、前記デコード部によるデコードのし易さを示すマッチングレベルを算出するマッチングレベル算出部と、を備える光学情報読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学情報読取装置において、
前記デコード部は、前記読取画像をデコードする第1デコード部と、前記修復画像をデコードする第2デコード部とを含む光学情報読取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学情報読取装置において、
前記第1デコード部による前記読取画像のデコードと、前記第2デコード部による前記修復画像のデコードとは並列に実行する光学情報読取装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光学情報読取装置において、
前記マッチングレベル算出部は、前記第1デコード部の第1マッチングレベルと、前記第2デコード部の第2マッチングレベルとを個別に算出する光学情報読取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光学情報読取装置において、
前記マッチングレベル算出部は、第1マッチングレベルと第2マッチングレベルの平均を算出し、
前記マッチングレベル算出部により算出された第1マッチングレベルと第2マッチングレベルの平均を用いて前記カメラの撮像条件を設定するチューニング実行部を備えている光学情報読取装置。
【請求項6】
請求項4に記載の光学情報読取装置において、
第1マッチングレベルを用いて前記カメラの撮像条件を設定するチューニング実行部を備えている光学情報読取装置。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
前記第1デコード部によるデコードと、前記第2デコード部によるデコードとのうち、どちらのデコードが成功したかを通知する光学情報読取装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
運用時に、前記推論処理が適用される前の読取画像と、前記読取画像を修復した修復画像とを表示可能な表示部を備えている光学情報読取装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の光学情報読取装置において、
運用時に、前記マッチングレベル算出部が、前記推論処理が適用される前の読取画像を用いて算出したマッチングレベルを表示可能な表示部を備えている光学情報読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークに付与されたコードを読み取る光学読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光学情報読取装置は、ワークに付与されたバーコードや二次元コード等のコードをカメラによって撮像し、取得された画像に含まれるコードを画像処理によって切り出して二値化し、デコード処理して情報を読み取ることができるように構成されている。この種の光学情報読取装置は、例えば物品の流通経路を製造段階から消費段階あるいは廃棄段階まで追跡可能にする、いわゆるトレーサビリティを目的として利用されている。
【0003】
特許文献1には、FAX送信やコピー等の繰り返しによって劣化した読取画像を学習済みのニューラルネットワークに入力して修復し、修復後の画像をデコードする画像処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-46751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工場や倉庫における物品のトレーサビリティを目的とした場合、光学情報読取装置の設置条件や設置条件は様々であり、デコードが成功したとしても、成功したコードのデコードのし易さを示す読取余裕度(マッチングレベルともいう)がどの程度であるかを把握しておくことは重要である。マッチングレベルを把握しておくことは、デコード成功率をより一層高めるための条件設定に役立ち、ひいては安定した運用に繋がるからである。
【0006】
ところが、特許文献1のように、劣化した読取画像をニューラルネットワークに入力して修復すると、実際の画像とは異なる綺麗な画像に修復されるため、修復後の画像に基づいてマッチングレベルを算出すると、実際の画像の品質を正しく評価できなくなる。すなわち、どの程度の余裕を持ってデコードに成功しているかをマッチングレベルに基づいて判断できなくなるため、画像のコントラストが一定以上低下すると、急激に読取性能が低下してしまう。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みれたものであり、その目的とするところは、ニューラルネットワークによる修復後の画像でデコードする場合に、実際の画像を反映したマッチングレベルが得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る光学情報読取装置は、カメラにより生成された読取画像に対応する理想画像を推定するためのニューラルネットワークの構造及びパラメータを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された構造及びパラメータで構成されたニューラルネットワークに前記カメラにより生成された読取画像を入力し、前記読取画像を修復した修復画像を生成する推論処理を実行し、当該修復画像をデコードするデコード部と、前記推論処理が適用される前の読取画像を用いて、前記デコード部によるデコードのし易さを示すマッチングレベルを算出するマッチングレベル算出部と、を備えている。
【0009】
この構成によれば、カメラにより生成された読取画像をニューラルネットワークに入力することによって修復された修復画像をデコード部がデコードするので、劣化した読取画像であっても読取成功率を高めることができる。一方、マッチングレベル算出部は、修復前の読取画像を用いてマッチングレベルを算出するので、実際の画像の状態を反映したマッチングレベルが得られる。そして、得られたマッチングレベルを用いてチューニング実行部が撮像条件を設定することが可能になるので、実際の現場の状況に適した条件設定が行える。
【0010】
他の形態では、読取画像をデコードする第1デコード部と、修復画像をデコードする第2デコード部とを備えた構成とすることができ、この場合、読取画像のデコードと、修復画像のデコードとを並列に実行することで処理を高速化できる。
【0011】
他の形態では、第1デコード部の第1マッチングレベルと、第2デコード部の第2マッチングレベルとを個別に算出し、第1マッチングレベルと第2マッチングレベルの平均を算出し、算出したマッチングレベルを用いてチューニング実行部が撮像条件を設定することができる。第1マッチングレベルと第2マッチングレベルの平均は、重み付け平均であってもよい。
【0012】
他の形態では、チューニング実行部は、第1マッチングレベルを用いて前記撮像条件を設定することもできる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、読取画像をニューラルネットワークに入力して修復した修復画像をデコードする場合に、修復前の読取画像を用いてマッチングレベルを算出するようにしたので、実際の画像を反映したマッチングレベルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】光学情報読取装置の運用時を説明する図である。
図2】光学情報読取装置のブロック図である。
図3】光学情報読取装置の正面図である。
図4】光学情報読取装置をコネクタ側から見た斜視図である。
図5】光学情報読取装置を背面側から見た斜視図である。
図6】プロセッサによって構成される各部を説明する図である。
図7】ニューラルネットワークの概念図である。
図8】ニューラルネットワークの学習時の基本手順の一例を示すフローチャートである。
図9】不良画像と理想画像のペアを示し、(A)は不良画像、(B)は理想画像の例である。
図10】画像変換に用いられる畳み込みニューラルネットワークの概念図である。
図11】光学情報読取装置の設定時に行われるチューニング工程の手順の一例を示すフローチャートである。
図12】縮小率及び拡大率決定前のデコード処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13】縮小率及び拡大率決定後のデコード処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14】(A)はカメラで生成された読取画像の例を示し、(B)は画像処理フィルタ実行後の画像の例を示す図である。
図15】(A)は縮小処理後の画像の例を示し、(B)はコード領域抽出後の画像の例を示す図である。
図16】ニューラルネットワークによる読取画像の修復例を示す図である。
図17】運用時の処理の一例を示す図である。
図18】第1デコード部及び第2デコード部によるデコード処理のタイムチャートである。
図19】デコード部によるデコード処理のタイムチャートである。
図20】第1デコード処理及び第2デコード処理の一例を示すフローチャートである。
図21】各処理の画像例を示す図である。
図22】複数のニューラルネットワークを用いてコードの白黒反転に対応する場合について説明する図である。
図23】1つのニューラルネットワークを用いてコードの白黒反転に対応する場合について説明する図である。
図24】コントラストとマッチングレベルの関係を示すグラフである。
図25】マッチングレベルの算出処理の一例を示すフローチャートである。
図26】表示部に表示されるユーザインターフェースの例を示す図である。
図27】AIチップ付き撮像素子を用いた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る光学情報読取装置1の運用時を模式的に示す図である。この例では、複数のワークWが搬送用ベルトコンベアBの上面に載置された状態で図1における矢印Yの方向へ搬送されており、そのワークWから上方へ離れた所に、実施形態に係る光学情報読取装置1が設置されている。光学情報読取装置1は、ワークWに付されているコードを撮影し、撮影された画像に含まれるコードをデコード処理して情報を読み取ることができるように構成されたコードリーダである。図1に示す例では、光学情報読取装置1が定置式の場合である。この定置式の光学情報読取装置1の運用時には、光学情報読取装置1が動かないようにブラケット等(図示せず)に固定して使用する。尚、定置式の光学情報読取装置1をロボット(図示せず)が把持した状態で使用してもよい。また、静止状態にあるワークWのコードを光学情報読取装置1によって読み取るようにしてもよい。定置式の光学情報読取装置1の運用時とは、搬送用ベルトコンベアBによって搬送されるワークWのコードを順に読み取る動作を行っている時である。
【0017】
また、各ワークWの外面にはコードが付されている。コードには、バーコード及び二次元コードの両方が含まれる。二次元コードとしては、たとえば、QRコード(登録商標)、マイクロQRコード、データマトリクス(Data matrix;Data code)、ベリコード(Veri code)、アズテックコード(Aztec code)、PDF417、マキシコード(Maxi code)などがある。二次元コードにはスタック型とマトリクス型があるが、本発明はいずれの二次元コードに対しても適用できる。コードは、ワークWに直接印刷あるいは刻印することによって付してもよいし、ラベルに印刷した後にワークWに貼付することによって付してもよく、その手段、方法は問わない。
【0018】
(読取開始トリガ信号)
光学情報読取装置1は、設定装置100及びプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)101にそれぞれ信号線100a、101aによって有線接続されているが、これに限らず、光学情報読取装置1、設定装置100及びPLC101に通信モジュールを内蔵し、光学情報読取装置1と、設定装置100及びPLC101とを無線接続するようにしてもよい。PLC101は、搬送用ベルトコンベアB及び光学情報読取装置1をシーケンス制御するための制御装置であり、汎用のPLCを利用することができる。設定装置100は、汎用あるいは専用の電子計算機や携帯型端末等を利用することができる。
【0019】
また、光学情報読取装置1は、その運用時において、PLC101から信号線101aを介して、コード読取の開始タイミングを規定する読取開始トリガ信号を受信する。そして、光学情報読取装置1は、この読取開始トリガ信号に基づいてコードの撮像やデコードを行う。その後、デコードした結果は、信号線101aを介してPLC101へ送信される。このように、光学情報読取装置1の運用時には、光学情報読取装置1とPLC101等の外部制御装置との間で、信号線101aを介して読取開始トリガ信号の入力とデコード結果の出力が繰り返し行われる。なお、読取開始トリガ信号の入力やデコード結果の出力は、上述したように、光学情報読取装置1とPLC101との間の信号線101aを介して行ってもよいし、それ以外の図示しない信号線を介して行ってもよい。例えば、ワークWの到着を検知するためのセンサと光学情報読取装置1とを直接的に接続し、そのセンサから光学情報読取装置1へ読取開始トリガ信号を入力するようにしてもよい。
【0020】
(光学情報読取装置の構成)
図2図5に示すように、光学情報読取装置1は、筐体2と、照明部4及びカメラ5と、プロセッサ20とを備えている。照明部4は、ワークWを照明する部分であり、また、カメラ5は、コードが付与されたワークWを照明部4によって照明された状態で撮影し、コードを含む読取画像を取得する部分である。
【0021】
この実施形態の説明では、図3図5に示すように光学情報読取装置1の上下、左右、前後をそれぞれ定義するが、これは説明の便宜を図るためだけであり、光学情報読取装置1の使用時における向きを限定するものではない。すなわち、図1に示すように、光学情報読取装置1の前面(正面)が下に向き、後面(背面)が上に向くように設置して使用すること、光学情報読取装置1の前面が上に向くように設置して使用すること、あるいは光学情報読取装置1の前面が傾斜した状態となるように設置して使用すること等が可能である。また、光学情報読取装置1の左右方向は幅方向と呼ぶこともできる。
【0022】
筐体2は、上下方向に長い略矩形箱状をなしており、前面2a、後面2b、左側面2c、右側面2d、上面2e、下面2fを少なくとも有している。カメラ5は筐体2内に設けられている。図2に示すように、カメラ5は、照明部4によって照明されているコードを撮像する撮像素子5aと、レンズ等を有する光学系5bと、AFモジュール(オートフォーカスモジュール)5cとを備えている。光学系5bには、ワークWのコードが付与された部分から反射した光が入射するようになっている。撮像素子5aは、光学系5bを通して得られたコードの画像を電気信号に変換するCCD(charge-coupled device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等の受光素子からなるイメージセンサである。撮像素子5aはプロセッサ20に接続されていて、撮像素子5aによって変換された電気信号は、プロセッサ20に入力される。また、AFモジュール5cは、光学系5bを構成するレンズのうち、合焦用レンズの位置や屈折率を変更することによってピント合わせを行う機構である。AFモジュール5cもプロセッサ20に接続され、プロセッサ20により制御される。
【0023】
図2に示すように、照明部4は、複数の第1発光素子4aと、複数の第2発光素子4bと、複数の第3発光素子4cとを有している。各発光素子4a、4b、4cは、例えば発光ダイオード等で構成されている。複数の第1発光素子4aにより第1のグループが構成され、複数の第2発光素子4bにより第2のグループが構成され、複数の第3発光素子4cにより第3のグループが構成される。
【0024】
図3及び図4に示すように、筐体2の前面2aには、第1発光素子4aの前方に配置される透光板50と、第2発光素子4bの前方に配置される拡散板51と、第3発光素子4cの前方に配置される偏光板52とが設けられている。透光板50は、例えば無色透明であり、偏光効果及び拡散効果を有していない板である。拡散板51は、その表面等に細かなシボを形成した透光性を有する板であり、入射した光を拡散させて出射する。偏光板52は、偏光効果を有する板である。
【0025】
光学情報読取装置1は、発光ダイオード等の発光体で構成されたエイマー10を備えている。このエイマー10は、光学情報読取装置1の前方へ向けて光を照射することによってカメラ5の視野や照明部4の光軸の位置を示すためのものである。ユーザは、エイマー10から照射される光(エイマー光)を参照して光学情報読取装置1を設置することもできる。
【0026】
この実施形態では、透光板50、拡散板51及び偏光板52が筐体2の前面2aに固定されている例について説明したが、これに限らず、透光板50、拡散板51及び偏光板52の少なくともいずれか一つは、筐体2に対して着脱可能に取り付けられていてもよい。図示しないが、例えば、透光板50、拡散板51及び偏光板52の少なくともいずれか1つと、枠体とを一体化したアタッチメントとしておき、枠体を筐体2の前面2aに対して、例えば爪嵌合構造やネジ等による締結固定構造を用いて取り付けることもできる。この場合、透光板50、拡散板51及び偏光板52の少なくともいずれか一つを必要に応じて取り付けたり、取り外したりすることができる。アタッチメントは、拡散板51のみを有していてもよいし、偏光板52のみを有していてもよいし、拡散板51及び偏光板52を有していてもよい。
【0027】
図2に示すように、照明部4は照明駆動部4dを有している。すなわち、第1発光素子4a、第2発光素子4b及び第3発光素子4cは、照明駆動部4dに接続されており、当該照明駆動部4dよって制御される。照明駆動部4dは、プロセッサ20の一部で構成されていてもよい。
【0028】
照明駆動部4dは、第2発光素子4bの発光素子を点灯させているときには他の照明発光素子4a、4cの発光素子を点灯させないように照明部4を制御すること、第1発光素子4aの発光素子を点灯させているときには他の照明発光素子4b、4cの発光素子を点灯させないように照明部4を制御すること、第3発光素子4cの発光素子を点灯させているときには他の照明発光素子4a、4bの発光素子を点灯させないように照明部4を制御することが可能になっている。つまり、照明駆動部4dは、直接光(透光板50を透過した光)、拡散光、偏光光を切り替えてコードに照射可能に構成されている。また、拡散光が不要なワークWの場合には、直接光に切り替えることで、大光量でコードを照射して高コントラストの読取画像を取得できる。また、必要に応じて偏光光に切り替えることでも高コントラストの読取画像を取得できる。よって、読取可能なワークWの範囲が拡大する。
【0029】
(本体表示部)
図5に示すように、筐体2の上面2eには本体表示部6が設けられている。本体表示部6は、たとえば有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等からなるものである。図2に示すように、本体表示部6は、プロセッサ20に接続されている。本体表示部6には、例えばカメラ5で撮影された読取画像、読取画像をデコードした結果である文字列、読み取り成功率、マッチングレベル等を表示させることができる。
【0030】
読み取り成功率とは、複数回読み取り処理を実行したときの平均読み取り成功率である。マッチングレベルとは、デコードが成功したコードの読み取りのしやすさを示す読取余裕度である。これはデコード時に発生した誤り訂正の数等から求めることができ、たとえば数値で表すことができる。誤り訂正が少なければ少ないほどマッチングレベル(読取余裕度)が高くなり、一方、誤り訂正が多ければ多いほどマッチングレベルが低くなる。マッチングレベルは、後述するマッチングレベル算出部20n(図6で示す)で算出される。
【0031】
(操作ボタン)
筐体2の上面2eには、光学情報読取装置1の設定時等に使用するセレクトボタン11及びエンターボタン12とが設けられている。セレクトボタン11及びエンターボタン12はプロセッサ20に接続されていて、プロセッサ20はセレクトボタン11及びエンターボタン12の操作状態を検出可能になっている。セレクトボタン11は、本体表示部6に表示された複数の選択肢の中から1つを選択する際に操作するボタンである。エンターボタン12は、セレクトボタン11で選択した結果を確定する際に操作するボタンである。
【0032】
(インジケータ)
筐体2の上面2eには、インジケータ9も設けられている。インジケータ9は、プロセッサ20に接続されていて、たとえば発光ダイオード等の発光体で構成することができる。光学情報読取装置1の作動状態をインジケータ9の点灯状態によって外部に報知することができる。例えば、光学情報読取装置1がコード画像の読取に成功した場合にはインジケータ9が緑色に点灯する一方、光学情報読取装置1がコード画像の読取に失敗した場合にはインジケータ9が赤色に点灯する等、制御可能になっている。
【0033】
(コネクタ)
筐体2の下部には、回転コネクタ60が設けられている。回転コネクタ60は、筐体2の本体部分に対して図5に示す中心線L3周りに回動可能に取り付けられている。回転コネクタ60には、光学情報読取装置1に電力を供給するための電力配線が接続される電源コネクタ7と、設定装置100及びPLC130に接続されるEthernetコネクタ8とが設けられている。尚、Ethernet規格は一例であり、Ethernet規格以外の規格の信号線を利用することもできる。
【0034】
(プロセッサの具体的な構成)
図2に示すように、プロセッサ20は、CPUコア21と、DSPコア22と、AIチップ23とを備えている。CPUコア21、DSPコア22及びAIチップ23は、いわゆるSystem-on-a-chip(SoC,SOC)であり、1つの基板上に実装されている。尚、DSPコア22やAIチップ23は、SoCでなくてもよく、その場合は同じ基板上に実装されない形態となるが、その場合も本発明の範囲に含まれる。
【0035】
CPUコア21、DSPコア22及びAIチップ23には、高速なRAM41が接続されており、CPUコア21、DSPコア22及びAIチップ23のいずれもRAM41にアクセス可能となっている。また、プロセッサ20には、ROM40が接続されており、CPUコア21、DSPコア22及びAIチップ23のいずれもROM40にアクセス可能となっている。
【0036】
CPUコア21は、汎用プロセッサであり、例えばAF制御、照明制御、カメラ制御、読取画像に対するデコード等を実行する部分である。DSPコア22は、例えば読取画像に対して各種フィルタ処理等を実行する部分である。AIチップ23は、ニューラルネットワークによる読取画像の修復の試行専用の集積回路であり、ニューラルネットワークによる処理に必要な積和演算を超高速に実行することに特化したものである。
【0037】
図6に示すように、プロセッサ20により、AF制御部20a、撮像制御部20b、フィルタ処理部20c、チューニング実行部20d、デコード部20f、抽出部20g、縮小部20h、拡大部20i、画像修復部20j及びマッチングレベル算出部20nが構成される。AF制御部20a、撮像制御部20b、フィルタ処理部20c、チューニング実行部20d、デコード部20f、抽出部20g、縮小部20h、拡大部20i及びマッチングレベル算出部20nは、CPUコア21またはDSPコア22の演算処理によって構成される部分である。一方、画像修復部20jは、AIチップ23によって構成される部分である。
【0038】
(AF制御部の構成)
AF制御部20aは、図2に示すAFモジュール5cを制御するユニットであり、従来から周知のコントラストAFや位相差AFによって光学系5bのピント合わせを行うことができるように構成されている。
【0039】
(撮像制御部の構成)
撮像制御部20bは、カメラ5のゲインを調整したり、照明部4の光量を制御したり、撮像素子5aの露光時間(シャッタースピード)を制御するユニットである。ここで、カメラ5のゲインとは、撮像素子5aから出力された画像の明るさをデジタル画像処理によって増幅する際の増幅率(倍率とも呼ばれる)のことである。照明部4の光量については、第1発光素子4a、第2発光素子4b及び第3発光素子4aを別々に制御して変更することができる。ゲイン、照明部4の光量及び露光時間は、カメラ5の撮像条件である。
【0040】
(フィルタ処理部の構成)
フィルタ処理部20cは、読取画像に対して画像処理フィルタを実行する部分である。フィルタ処理部20cは、カメラ5により生成された画像に含まれるノイズを除去するノイズ除去フィルタや、コントラストを補正するコントラスト補正フィルタ、平均化フィルタ等を実行する。フィルタ処理部20cが実行する画像処理フィルタは、ノイズ除去フィルタ、コントラスト補正フィルタ、平均化フィルタに限られるものではなく、他の画像処理フィルタを含んでいてもよい。
【0041】
フィルタ処理部20cは、後述する画像修復前の読取画像に対して画像処理フィルタを実行するように構成されている。また、フィルタ処理部20cは、後述する拡大、縮小前の読取画像に対して画像処理フィルタを実行するように構成されている。尚、フィルタ処理部20cは、画像修復後の読取画像に対して画像処理フィルタを実行するように構成されていてもよいし、拡大、縮小後の読取画像に対して画像処理フィルタを実行するように構成されていてもよい。
【0042】
(チューニング実行部の構成)
図6に示すチューニング実行部20dは、カメラ5の撮像条件を変化させて、撮像及びデコードを繰り返し、各条件にてマッチングレベル算出部20nで算出されたマッチングレベルを用いて、最適な撮像条件を決定するチューニング処理を実行する。また、チューニング実行部20dは、同様にして、読取対象のコードの大きさを設定することもできる。
【0043】
具体的には、チューニング実行部20dは、光学情報読取装置1の設定時に、カメラ5のゲイン、照明部4の光量及び露光時間等の撮像条件や、フィルタ処理部20cにおける画像処理条件を変更してデコードに適した条件となるように各種条件(チューニングパラメータ)を設定する部分である。フィルタ処理部20cにおける画像処理条件とは、画像処理フィルタの係数(フィルタの強弱)や、複数の画像処理フィルタがある場合に画像処理フィルタの切替、種類の異なる画像処理フィルタの組み合わせ等である。搬送時のワークWに対する外光の影響や、コードが付されている面の色及び材質等によって適切な撮像条件及び画像処理条件は異なる。よって、チューニング実行部20dは、より適切な撮像条件及び画像処理条件を探索して、AF制御部20a、撮像制御部20b、フィルタ処理部20cによる処理を設定する。
【0044】
チューニング実行部20dは、カメラ5により生成された読取画像に含まれるコードのサイズを取得可能に構成されている。コードのサイズを取得する場合、始めに、チューニング実行部20dは、コードらしさを示す特徴量に基づいてコードを探索する。次いで、チューニング実行部20dは、探索したコードのPPC、コード種、コードサイズ等を取得する。PPC、コード種、コードサイズ等は、コードパラメータまたはコード条件に含まれるものであり、従って、チューニング実行部20dは、探索したコードのコードパラメータまたはコード条件を取得可能に構成されている。
【0045】
二次元コードは、複数の白色のモジュールと黒色のモジュールとがランダムに配列されることによって構成されている。例えば、QRコードのモデル2ではモジュール数は21×21~177×177まである。光学情報読取装置1により、事前に読み取り対象のコードを読み取ることで、モジュール数やPPCを限定し、コードの大きさ(ピクセルサイズ)をモジュール数×PPCに限定して運用する。
【0046】
コードを構成するモジュールのうち、1つのモジュールに着目した時、そのモジュールがいくつのピクセル(画素)で構成されているかを示すコードパラメータがPPCである。チューニング実行部20dは、1つのモジュールを特定した後、1つのモジュールを構成している画素数をカウントすることで、PPCを取得できる。
【0047】
コード種は、例えばQRコード、データマトリクスコード、ベリコードといったコードの種類のことである。各コードには特徴があるので、チューニング実行部20dは、例えばファインダパターンの有無等によってコード種を判別することが可能である。
【0048】
また、コードサイズは、コードの縦または横方向に並ぶモジュールの数とPPCとによって算出できる。チューニング実行部20dは、コードの縦または横方向に並ぶモジュールの数を算出するとともに、PPCを算出し、縦または横方向に並ぶモジュールの数とPPCとを積算することによってコードサイズを取得できる。
【0049】
(デコード部の構成)
デコード部20fは、第1発光素子4aからの光を透光板50を介してコードに照射しカメラ5で取得した読取画像と、第2発光素子4bからの光を拡散板51を介してコードに照射しカメラ5で取得した読取画像と、第3発光素子4cからの光を偏光板52を介してコードに照射しカメラ5で取得した読取画像とをデコードする。
【0050】
デコード部20fは、白黒の二値化されたデータをデコードする部分である。デコードには、符号化されたデータの対照関係を示すテーブルを使用することができる。さらに、デコード部20fは、デコードした結果が正しいか否かを所定のチェック方式に従ってチェックする。データに誤りが発見された場合にはエラー訂正機能を使用して正しいデータを演算する。エラー訂正機能はコードの種類によって異なる。
【0051】
この実施形態では、デコード部20fは、後述する画像修復後の読取画像(修復画像)に含まれるコードをデコードするが、画像修復前の読取画像に含まれるコードをデコードすることもできる。デコード部20fは、コードをデコードして得られたデコード結果を図2に示す記憶部30のデコード結果記憶部30bに書き込むように構成されている。
【0052】
(抽出部の構成)
抽出部20gは、カメラ5により生成された読取画像の中からコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出する部分である。コード候補領域は、コードらしさを示す特徴量に基づいて抽出することができ、この場合、コードらしさを示す特徴量はコードを特定するための情報となる。例えば、抽出部20gは、読取画像を取得し、取得した読取画像に対して、コードらしさを示す特徴量に基づいてコードを探索することができる。具体的には、取得した読取画像の中に、コードらしさを示す特徴量を所定以上持った部分が存在するか否かを探索し、その結果、コードらしさを示す特徴量を持った部分を探索することができれば、その部分を含む領域をコード候補領域として抽出する。コード候補領域には、コード以外の領域が含まれていてもよいが、少なくともコードである可能性が所定以上高い部分を含んでいる。尚、コード候補領域は、あくまでもコードが存在する可能性が高い領域であることから、結果的にコードが含まれない領域の場合もあり得る。
【0053】
(記憶部の構成)
図2に示す記憶部30は、例えばSSD(ソリッドステートドライブ)等のような読み書き可能な記憶装置で構成することができるが、以下に示す各記憶部30a、30b、30c、30dは、上記記憶装置ではなく、ROM40に設けられていてもよい。すなわち、本実施形態では、画像データ記憶部30aと、デコード結果記憶部30bと、パラメータセット記憶部30cと、ニューラルネットワーク記憶部30dとがROM40に含まれている形態も対象である。画像データ記憶部30aは、カメラ5で生成された読取画像を記憶する部分である。デコード結果記憶部30bは、デコード部20fで実行されたコードのデコード結果を記憶する部分である。パラメータセット記憶部30cは、チューニング実行部20dが実行したチューニングの結果、設定された各種条件やユーザが設定した各種条件を記憶する部分である。ニューラルネットワーク記憶部30dは、後述する学習済みのニューラルネットワークの構造及びパラメータを記憶する部分である。
【0054】
(ニューラルネットワークを利用した画像修復)
光学情報読取装置1は、カメラ5で取得した読取画像を、ニューラルネットワークを利用して修復する画像修復機能を有している。本実施形態では、光学情報読取装置1で機械学習を行うのではなく、既に学習が終わったニューラルネットワークの構造及びパラメータを光学情報読取装置1が予め保持しておき、その保持している構造及びパラメータで構成されたニューラルネットワークを利用して画像修復を行うように構成されている。
【0055】
ニューラルネットワークは、図7に示すように、入力データ(本例では画像データ)が入力される入力層と、出力データを出力する出力層と、入力層及び出力層の間に設けられる中間層とを有している。中間層は例えば複数設けることができ、これにより、多層構造のニューラルネットワークとすることができる。
【0056】
(ニューラルネットワークの学習)
始めに、図8に示すフローチャートに基づいてニューラルネットワークの学習時の基本手順について説明する。ニューラルネットワークの学習は、光学情報読取装置1以外の学習用として用意したコンピュータを用いて行うことができるが、学習用以外の汎用コンピュータを用いて行ってもよい。また、ニューラルネットワークの学習方法は従来から周知の方法を用いてもよい。
【0057】
スタート後のステップSA1では予め準備している不良画像のデータを読み込む。不良画像は、コードの読み取りに不適切な部分を有する画像であり、図9のFIG.9Aに示すような画像を例示することができる。不適切な部分とは、例えば汚れた部分や着色された部分等である。その後、ステップSA2に進み、予め準備している理想画像のデータを読み込む。理想画像は、コードの読み取りに適切な画像であり、図9のFIG.9Bに示すような画像を例示することができる。不良画像と理想画像とはペアとしておき、このようなペアを複数準備しておく。
【0058】
ステップSA2では、損失関数を計算し、不良画像と理想画像との差分を求める。ステップSA3では、ステップSA2で求めた差分を反映させてニューラルネットワークのパラメータを更新する。
【0059】
ステップSA4では機械学習の完了条件を満たすか否かを判定する。機械学習の完了条件とは、ステップSA2で求めた差分に基づいて設定することができ、例えば差分が所定以下であれば、機械学習の完了条件を満たすと判定できる。ステップSA4でYESと判定されて機械学習の完了条件を満たしている場合には機械学習を終了する。一方、ステップSA4でNOと判定されて機械学習の完了条件を満たしていない場合にはステップSA1に戻り、別の不良画像を読み込んだ後、ステップSA2に進んで当該別の不良画像とペアになっている別の理想画像を読み込む。
【0060】
このようにして、複数の不良画像と、当該複数の不良画像にそれぞれ対応する複数の理想画像とを機械学習させることにより、学習済みのニューラルネットワークを予め生成することができる。学習済みのニューラルネットワークの構造及びパラメータを光学情報読取装置1が保持しておくことで、光学情報読取装置1内で学習済みのニューラルネットワークを構築することができる。すなわち、機械学習を行う際には、膨大な数の不良画像と理想画像とをニューラルネットワークに入力することになるので、その際の演算能力としては極めて高いものが要求される。光学情報読取装置1内でそのような高い演算能力を確保するのは、装置の小型軽量化の要求を満たすことができなくなるおそれがあり、困難である。本例のように、光学情報読取装置1外で機械学習を行い、その結果得られたニューラルネットワークの構造及びパラメータを光学情報読取装置1で保持しておけば、光学情報読取装置1の小型軽量化を実現しながら、ニューラルネットワークによる画像修復が可能になる。
【0061】
図10は、上述のようにして構成された畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)の概念図である。「Convolution」では、入力された画像の特徴の抽出を行う。この層は、画像処理フィルタのような畳み込み演算で構成される。フィルタの重みをカーネルと呼び、カーネルに合わせた特徴量の抽出を行う。畳み込み層は一般的に複数の異なるカーネルを持ち、カーネル数に応じてマップ数(D)が増えていく。カーネルサイズは、例えば3×3、5×5などを取ることができる。
【0062】
「pooling」では、縮小処理を行って各カーネルの反応をまとめる。「Deconvolution」では、逆畳み込みフィルタにより、特徴値から画像を再構成する。「Unpooling」では、拡大処理を行って反応値を先鋭化する。
【0063】
学習済みのニューラルネットワークの構造及びパラメータは、図2に示す記憶部30のニューラルネットワーク記憶部30dに記憶される。ニューラルネットワークの構造とは、入力層と出力層との間に設けられる中間層の数(D)や、画像処理フィルタの数等である。ニューラルネットワークのパラメータは、図7に示すフローチャートのステップSA3で設定されたパラメータである。
【0064】
また、ニューラルネットワーク記憶部30dには、層の数または画像処理フィルタの数が異なる複数のニューラルネットワークの構造及びパラメータを記憶することが可能になっている。具体的には、白地に黒いセルを有するコードを修復するための第1ニューラルネットワークと、黒地に白いセルを有するコードを修復するための第2ニューラルネットワークとの両方をニューラルネットワーク記憶部30dに記憶させておくことができる。
【0065】
白地に黒いセルを有するコードは白地に黒印字されたコードである。第1ニューラルネットワークの学習時には、白地に黒いセルを有するコードを撮像した不良画像と理想画像のペアを使用する。
【0066】
また、黒地に白いセルを有するコードは黒地に白印字されたコードである。第2ニューラルネットワークの学習時には、黒地に白いセルを有するコードを撮像した不良画像と理想画像のペアを使用する。
【0067】
尚、ニューラルネットワーク記憶部30dには、第1ニューラルネットワークと第2ニューラルネットワークとのいずれか一方の構造及びパラメータを記憶していてもよい。
【0068】
また、複数のニューラルネットワークの構造及びパラメータと、コード条件とを関連付けた状態でニューラルネットワーク記憶部30dに記憶することができる。例えば、あるニューラルネットワークを構成するための当該ニューラルネットワークの構造及びパラメータと、そのニューラルネットワークに対応するコード条件とを関連付ける。関連付けを行う際、ニューラルネットワークの層の数またはフィルタの数は、第1のコード条件、特に第1のPPCによって最適な数を事前に特定しておくことができるものなので、この関係が保たれるように関連付けておく。同様に、別のニューラルネットワークの構造及びパラメータと、第1のコード条件とは異なる第2のコード条件とを関連付ける。
【0069】
複数のニューラルネットワークの構造及びパラメータをニューラルネットワーク記憶部30dに記憶している場合には、光学情報読取装置1の設定時に、次のようにチューニング実行部20dが動作する構成とすることも可能である。すなわち、チューニング実行部20dは、カメラ5により生成された読取画像に含まれるコード条件を設定する際、設定したコード条件に関連付けられたニューラルネットワークの構造及びパラメータをニューラルネットワーク記憶部30dから読み出して運用時に使用するニューラルネットワークとして特定する。例えば、チューニング実行部20dが読取画像に含まれるコード条件をして第1のコード条件を設定した場合には、第1のコード条件と関連付けられたニューラルネットワークの構造及びパラメータをニューラルネットワーク記憶部30dから読み出す。そして、ニューラルネットワークの構造及びパラメータを光学情報読取装置1の運用時に使用するニューラルネットワークとして特定する。これにより、コード条件に最適なニューラルネットワークの構造及びパラメータで読取画像の修復を試行できるので、読み取り精度を高めることができる。
【0070】
ニューラルネットワークの学習にあたっては、コードを構成するモジュールのピクセル分解能が特定範囲内である不良画像及び理想画像を機械学習させることもできる。モジュールのピクセル分解能は、例えばコードを構成する1つのモジュールのピクセル数(PPC)で表すことができ、PPCが特定範囲内にある不良画像及び理想画像のみでニューラルネットワークの機械学習を行ってもよい。
【0071】
上記特定範囲は、読取画像の修復効果の高いピクセル分解能を含み、かつ、読取画像の修復効果が殆ど向上しないピクセル分解能を除外する範囲であり、複数のモジュールで構成されたコードを含む画像の修復を前提として設定することができる。これにより、コードを含む画像の修復に特化したニューラルネットワーク構造として処理速度を向上させることができる。
【0072】
上記ピクセル数の特定範囲としては、例えば4PPC以上6PPC以下とすることができるが、4PPC未満であってもよいし、6PPCよりも多くてもよい。また、例えば特定範囲を4PPC以上6PPC以下に限定して機械学習することで、学習に用いる画像から余分なスケールの変動を排除することができ、学習済みニューラルネットワーク構造の適正化を図ることもできる。
【0073】
(修復の試行)
図6に示すように、光学情報読取装置1のプロセッサ20には、AIチップ23によって構成される画像修復部20jが設けられている。画像修復部20jは、記憶部30のニューラルネットワーク記憶部30dに記憶されたニューラルネットワークの構造及びパラメータを読み出し、読み出したニューラルネットワークの構造及びパラメータで光学情報読取装置1内にニューラルネットワークを構成する。光学情報読取装置1内に構成されたニューラルネットワークは、図8のフローチャートに示す手順で学習した学習済みニューラルネットワークと同じものである。
【0074】
画像修復部20jは、カメラ5により生成された読取画像をニューラルネットワークに入力することにより、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶されたニューラルネットワークの構造及びパラメータに従って読取画像の修復を試行する。そして、修復された読取画像に対してデコード部20fがデコード処理を実行する。
【0075】
フィルタ処理部20cは、カメラ5により生成された読取画像を画像修復部20jがニューラルネットワークに入力する前に、読取画像に対して画像処理フィルタを実行するように構成されている。これにより、ニューラルネットワークによる修復を試行する前に適切な画像処理を実行しておくことができ、その結果、読取画像の修復がより的確なものになる。
【0076】
デコード部20fでデコード処理する全ての読取画像に対して画像修復部20jが画像修復を試行してもよいし、デコード部20fでデコード処理する一部の読取画像に対してのみ画像修復部20jが画像修復を試行してもよい。例えば、デコード部20fは、修復を試行する前の読取画像に対してデコード処理を実行し、デコードが成功したか否かを判定する。デコードに成功した場合には、修復が不要な読取画像であったということであり、そのまま結果を出力する。一方、デコードに失敗した場合には、画像修復部20jが読取画像の修復を試行し、修復された読取画像に対してデコード部20fがデコード処理を実行する。
【0077】
(部分画像の入力)
画像修復部20jがニューラルネットワークに入力する画像は、カメラ5により生成された読取画像の全部であってもよいが、入力する画像のサイズが大きければ大きいほどニューラルネットワークによる演算量が増大し、プロセッサ20の演算負荷が重くなり、ひいては処理速度の低下を招くおそれがある。具体的には、図10に示すようなFCN(Fully Convolutional Network)型のニューラルネットワークでは、構造が等しいと仮定した場合、演算量は入力画像サイズに比例した量となり、入力画像サイズはコードの大きさの二乗に比例するため、演算量もコードの大きさの二乗に比例することになる。
【0078】
一方、カメラ5により生成された読取画像の全体にコードが存在しているケースは皆無といってよく、通常の運用時には読取画像の一部の領域にのみコードが存在しており、その領域のみニューラルネットワークによる修復を行うことができれば、読み取り精度を高めることができる。
【0079】
そこで、画像修復部20jがニューラルネットワークに入力する画像は、カメラ5により生成された読取画像の一部、即ちコードを含んだ部分画像とすることができる。具体的には、画像修復部20jは、抽出部20gが抽出したコード候補領域に対応する部分画像を、カメラ5により生成された読取画像から切り出す。画像修復部20jは切り出した部分画像をニューラルネットワークに入力することにより、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶された構造及びパラメータに従って部分画像の修復を試行する。そして、修復された部分画像に対してデコード部20fがデコード処理を実行する。
【0080】
上述したように読取画像の全体にコードが存在しているケースは殆ど無いので、コード候補領域に対応する部分画像のサイズは、読取画像のサイズよりも小さくなる。これにより、ニューラルネットワークに入力する画像のサイズが小さくなるので、プロセッサ20の演算負荷が軽くなり、ひいては処理速度の高速化が実現される。また、部分画像は、コードが存在する可能性が高い領域に対応しているので、読み取りに必要な情報、即ちコードの全体を含んだ画像とすることが可能である。このコードの全体を含んだ画像をニューラルネットワークに入力するので、読み取り精度の低下は抑制される。
【0081】
画像修復部20jは、チューニング実行部20dで取得したコードサイズに基づいて部分画像のニューラルネットワークへの入力サイズを決定することができる。上述したように、チューニング実行部20dはコードサイズを取得することができる。画像修復部20jは、ニューラルネットワークへ入力する部分画像の入力サイズを、チューニング実行部20dで取得したコードサイズよりも所定量だけ大きくする。
【0082】
すなわち、部分画像をニューラルネットワークへ入力することで演算負荷を軽くすることができる反面、例えばコードが回転していたり、コードの位置が精密に検出できなかった場合には、部分画像中のコードの一部が欠けてしまい、デコード処理に失敗する可能性もある。本実施形態では、ニューラルネットワークへの入力サイズがチューニング実行部20dで取得したコードサイズと同じではなく、コードサイズよりも所定量だけ大きいので、部分画像中でコードの一部が欠けるのを抑制できる。尚、コードサイズよりも所定量だけ大きくしていることで、ニューラルネットワークへの入力サイズに上限を持たせることができ、よって、演算負荷が重くならないようにすることができる。「所定量」とは、例えばニューラルネットワークへ入力される部分画像の横(または縦)の長さが、チューニング実行部20dで取得したコードの横(または縦)の長さの1.5倍以上、または2.0倍以上、または3.0倍以上であってもよい。
【0083】
画像修復部20jがニューラルネットワークへ入力する部分画像の入力サイズを決定する際、チューニング実行部20dで取得したコードを構成する1つのモジュールのピクセル数と当該コードの縦または横方向に並ぶモジュール数とに基づいて決定することができる。
【0084】
また、チューニング実行部20dでは上述したようにコード条件を設定することができる。画像修復部20jは、チューニング実行部20dで設定されたコード条件に基づいて、ニューラルネットワークに入力する読取画像のサイズを設定することもできる。例えば、チューニング実行部20dで設定されたコード条件のうち、コードサイズを画像修復部20jが取得すると、取得したコードサイズよりも所定量だけ大きなサイズの部分画像をニューラルネットワークに入力する。コードサイズが大きければニューラルネットワークに入力する部分画像のサイズが大きくなる一方、コードサイズが小さければニューラルネットワークに入力する部分画像のサイズが小さくなる。つまり、ニューラルネットワークに入力する部分画像のサイズをコード条件に応じて変えることができる。
【0085】
(縮小・拡大機能)
ここで、図10に示すような畳み込みニューラルネットワークにおいてコードの特徴を十分に捉え、デコードに適した画像に修復するためには、一定量のモジュール数をカバーする範囲で特徴量を抽出する必要がある。例えば、ニューラルネットワークから得られる1つの特徴値が6×6モジュールの範囲から抽出される値であるとし、1つのモジュールが20ピクセルで撮影された画像の場合、120×120ピクセルの範囲から集約された特徴値を算出するようにニューラルネットワークを設計しなければならない。つまり、カバーしたいピクセル範囲が広ければ広い程、ニューラルネットワークの階層を深くしなければならず、例えば上述した120×120ピクセルの範囲から特徴値を集約しようとすると、6回の畳み込み層が必要となる。
【0086】
しかし、コードは白色のモジュールと黒色のモジュールとがランダムに配列されることによって構成されているため、広範囲でのピクセル値の関係は希薄であり、カバーするピクセル範囲を一定以上に広げても修復効果は殆ど向上しない。このような特徴を、本明細書では狭範囲特徴と呼ぶ。
【0087】
また、コードに含まれるファインダパターンなど決まったモジュールパターンの配置やコード全体として四角形状であることは広範囲特徴になり得るが、モジュールと背景とを大まかに分離するだけであれば、広範囲特徴を用いることなく、狭範囲特徴のみを用いても十分に修復可能である。尚、広範囲特徴とは、広範囲に渡って決まった形状を持つ特徴と定義することができる。
【0088】
そこで、図8に示すニューラルネットワークの学習の際、コードのPPCが特定範囲にある画像を用いることができる。これにより、コードを含む画像の修復に特化したニューラルネットワーク構造として処理速度を向上させることができる反面、PPCが特定範囲外にある読取画像に対する修復効果は低下する懸念がある。尚、ニューラルネットワークの学習の際、コードのPPCが特定範囲外にある画像を用いてもよい。
【0089】
本実施形態の光学情報読取装置1では、読取画像のPPCが特定範囲に入るようにするために、読取画像の縮小・拡大機能を備えている。図6に示すように、プロセッサ20には、縮小部20h及び拡大部20iが構成されている。縮小部20hは、カメラ5により生成された読取画像の中のコードを構成するモジュールのピクセル分解能が上述した特定範囲内となるように縮小した読取画像を生成する部分であり、また、拡大部20iは、カメラ5により生成された読取画像の中のコードを構成するモジュールのピクセル分解能が上述した特定範囲内となるように拡大した読取画像を生成する部分である。
【0090】
縮小部20h及び拡大部20iは、例えばカメラ5により生成された読取画像におけるコードのPPCが特定範囲(4PPC以上6PPC以下)外にあるか否かを判定し、特定範囲内である場合には、縮小または拡大を非実行にする一方、特定範囲外である場合には、縮小または拡大を実行する。縮小または拡大を実行することで、画像修復部20jがニューラルネットワークへ入力する部分画像におけるコードのPPCが特定範囲内に入る。
【0091】
画像修復部20jは、特定範囲内となるように拡大または縮小した読取画像を、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶された構造及びパラメータで構成されたニューラルネットワークに入力することにより、その構造及びパラメータに従って読取画像の修復を試行する。そして、修復された読取画像に対してデコード部20fがデコード処理を実行する。
【0092】
抽出部20gは、拡大部20iにより拡大した読取画像または縮小部20hにより縮小した読取画像に対してコードを探索し、探索されたコードを含む領域をコードが存在する可能性が高いコード候補領域として抽出するように構成してもよい。この場合、画像修復部20jは、抽出部20gが抽出したコード候補領域に対応する部分画像を、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶された構造及びパラメータで構成されたニューラルネットワークに入力することにより、その構造及びパラメータに従って読取画像の修復を試行する。
【0093】
光学情報読取装置1の設定時には、チューニング実行部20dが、拡大率を変えた複数の読取画像(拡大画像)を生成すること、及び縮小率を変えた複数の読取画像(縮小画像)を生成することができる。チューニング実行部20dは、生成した複数の読取画像(拡大画像または縮小画像)をニューラルネットワークに入力して各読取画像の修復を試行し、修復された各読取画像に対してデコード処理を実行し、コードの読み取りのしやすさを示す読取余裕度を求める。チューニング実行部20dは、求めた読取余裕度が所定よりも高い読取画像の拡大率または縮小率を、運用時に使用する拡大率または縮小率として特定する。チューニング実行部20dが拡大率または縮小率を特定した場合、光学情報読取装置1の運用時には、縮小部20h及び拡大部20iは、チューニング実行部20dが特定した拡大率または縮小率で読取画像を拡大または縮小する。
【0094】
すなわち、例えば特定範囲にある程度の広さがある場合、その特定範囲内であっても拡大率や縮小率を変えると、読取余裕度が変化することが考えられる。チューニング実行部20dが求めた読取余裕度が所定よりも高くなるように、運用時における読取画像の拡大率または縮小率を特定することができるので、処理速度及び読み取り精度が向上する。
【0095】
チューニング実行部20dは、各読取画像の読取余裕度を求めた後、求めた複数の読取余裕度のうち、最も高い読取余裕度の読取画像の拡大率または縮小率を、運用時に使用する拡大率または縮小率として特定することができる。これにより、処理速度及び読み取り精度を更に向上させることができる。
【0096】
また、縮小部20h及び拡大部20iで読取画像を縮小及び拡大できることを利用して、パラメータセットの種類を増やすこともできる。縮小部20hによる縮小率が異なる複数のパラメータセットと、拡大部20iによる拡大率が異なる複数のパラメータセットを生成し、これらパラメータセットを記憶部30のパラメータセット記憶部30cに記憶させることができる。例えば、縮小部20hによる縮小率が1/2、1/4、1/8のように複数設定可能な場合、縮小率が1/2のパラメータセット、縮小率が1/4のパラメータセット、縮小率が1/8のパラメータセットをパラメータセット記憶部30cに記憶させることができる。また、拡大部20iによる拡大率が2倍、4倍、8倍のように複数設定可能な場合、拡大率が2倍のパラメータセット、拡大率が4倍のパラメータセット、拡大率が8倍のパラメータセットをパラメータセット記憶部30cに記憶させることができる。そして、パラメータセット記憶部30cに記憶された複数のパラメータセットの中から任意の一のパラメータセットを適用することができる。
【0097】
(画像修復フィルタ)
画像修復部20jは、ニューラルネットワークを利用して読取画像の修復を試行する画像修復フィルタを実行する部分であってもよい。画像修復フィルタは、読取画像を、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶された構造及びパラメータで構成されたニューラルネットワークに入力することにより、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶された構造及びパラメータに従って読取画像の修復を試行するフィルタであり、上述した画像修復と同じ機能を発揮する。
【0098】
画像修復フィルタを実行可能にする場合、画像修復フィルタを設定するための設定部20e(図6に示す)を設けることができる。設定部20eは、ユーザによる画像修復フィルタの設定を受付可能に構成されている。設定部20eは、例えば光学情報読取装置1の設定時に、「画像修復フィルタの適用」と「画像修復フィルタの非適用」との一方をユーザが選択可能なユーザインターフェースを生成して表示部6に表示させ、ユーザによる選択を受け付けるように構成することができる。したがって、画像修復部20jは、設定部20eにより設定された画像修復フィルタを読取画像に適用することで、当該読取画像に対して修復を試行する。
【0099】
設定部20eは、チューニング実行部20dに含まれていてもよいし、チューニング実行部20dとは別に構成されていてもよい。設定部20eがチューニング実行部20dに含まれている場合、チューニング時に画像修復フィルタに関するパラメータを設定することが可能になる。画像修復フィルタに関するパラメータとしては、「画像修復フィルタの適用」と「画像修復フィルタの非適用」とを含むことができる。「画像修復フィルタの適用」とは、画像修復フィルタを実行可能に設定することであり、「画像修復フィルタの非適用」とは、画像修復フィルタを設定しないことである。
【0100】
画像修復フィルタに関するパラメータは、画像修復フィルタに関する情報でもあり、この場合、画像修復フィルタの設定に関する情報を含むパラメータセットをパラメータセット記憶部30cに記憶することができる。画像修復フィルタに関するパラメータは、「画像修復フィルタの適用」と「画像修復フィルタの非適用」とがあるので、パラメータセット記憶部30cに記憶されるパラメータセットには、画像修復フィルタを実行可能に設定する第1のパラメータセットと、画像修復フィルタを設定しない第2のパラメータセットと含まれる。光学情報読取装置1の運用時には、第1のパラメータセットと、第2のパラメータセットとの中から選択された一方のパラメータセットが適用される。第1のパラメータセットが適用された場合には、画像修復フィルタによって画像修復が実行された読取画像に対してデコード部20fによるデコード処理が実行される一方、第2のパラメータセットが適用された場合には、画像修復が実行されない読取画像に対してデコード部20fによるデコード処理が実行される。
【0101】
パラメータセット記憶部30cに記憶されるパラメータセットには、カメラ5により生成された読取画像に含まれるコード条件を設定する項目も含まれる。コード条件を設定する項目では、チューニング実行部20dが取得したPPC、コード種、コードサイズ等が設定される。例えば、1つのパラメータセットには、コード条件を設定する項目としてのPPC、コード種、コードサイズと、撮像条件としてのカメラ5のゲイン、照明部4の光量、露光時間と、フィルタ処理部20cが適用する画像処理フィルタの項目としての画像処理フィルタ種類、当該画像処理フィルタのパラメータと、画像修復フィルタの適用項目とを含むことができる。これら各項目は、チューニング実行部20dが設定した値等をそのまま用いてもよいし、ユーザが任意に変更することもできる。
【0102】
(チューニング工程の手順の一例)
光学情報読取装置1の設定時にチューニング実行部20dによって行われるチューニング工程の手順の一例について、図11に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。図11に示すフローチャートのスタート後のステップSB1では、チューニング実行部20dが照明部4及びカメラ5を制御してカメラ5に読取画像を生成させ、チューニング実行部20dが読取画像を取得する。このとき、デコード処理前に実行される画像処理フィルタの有無や種類、ニューラルネットワークによる画像修復を適用するためのデコード処理パラメータは任意のパラメータに設定されている。次いでステップSB2に進み、取得した読取画像に対してチューニング実行部20dがデコード部20fにデコード処理を実行させる。
【0103】
デコード処理後、ステップSB3に進み、ステップSB2のデコード処理が成功したか否かをチューニング実行部20dが判定する。ステップSB3でNOと判定されてステップSB2のデコード処理が失敗した場合、即ちコードの読み取りができなかった場合には、ステップSB4に進み、デコード処理パラメータを別のパラメータに変更した後、ステップSB2で再度デコード処理を実行する。全てのデコード処理パラメータでデコード処理を失敗した場合にはこのフローを終了してユーザに報知する。
【0104】
一方、ステップSB3でYESと判定されてステップSB2のデコード処理が成功した場合には、ステップSB5に進み、チューニング実行部20dがコードパラメータ(PPC、コード種、コードサイズ等)を決定する。チューニング実行部20dがコードパラメータを決定すると、コードパラメータと関連付けられてニューラルネットワーク記憶部30dに記憶されているニューラルネットワークの構造及びパラメータも決定される(ステップSB6)。ステップSB6では、ニューラルネットワーク記憶部30dから読み出した構造及びパラメータでニューラルネットワークを構成する。
【0105】
ステップSB7では、画像修復部20jが、ステップSB6で構成されたニューラルネットワークに読取画像を入力することにより、読取画像の修復を試行し、前記修復された読取画像に対してデコード部20fがデコード処理を実行する。その後、ステップSB8に進み、チューニング実行部20dがステップSB7のデコード処理結果に基づいて読取余裕度を評価し、一旦記憶しておく。
【0106】
ステップSB9では、全てのデコード処理パラメータでデコード処理の実行が完了したか否かを判定する。ステップSB9でNOと判定されて、全てのデコード処理パラメータでデコード処理の実行が完了していない場合にはステップSB10に進み、デコード処理パラメータを別のパラメータに変更した後、ステップSB7に進む。
【0107】
一方、ステップSB9でYESと判定されて全てのデコード処理パラメータでデコード処理の実行が完了するとステップSB11に進む。ステップSB11では、チューニング実行部20dが、全てのデコード処理パラメータの中から読取余裕度が最も高いデコード処理パラメータを選択し、その選択したデコード処理パラメータを運用時に適用するパラメータとして決定する。尚、チューニング工程では、撮像条件等も適切な条件に設定される。
【0108】
(縮小率及び拡大率決定前のデコード処理手順)
次に、縮小率及び拡大率決定前のデコード処理手順の一例について、図12に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。図12に示すフローチャートで特定される処理は、図11に示すフローチャートのステップSB2で実行することができる。
【0109】
図12に示すフローチャートのスタート後のステップSC1では、チューニング実行部20dが、複数の画像処理フィルタの中から任意の画像処理フィルタを選択する。この画像処理フィルタは、フィルタ処理部20cで実行されるフィルタである。その後、ステップSC2では、ステップSC1で選択した画像処理フィルタを読取画像に対してフィルタ処理部20cが実行する。
【0110】
次いで、ステップSC3に進み、画像ピラミッドを作成する。画像ピラミッドは、元の読取画像、元の読取画像を1/2に縮小した画像、元の読取画像を1/4に縮小した画像、元の読取画像を1/8に縮小した画像、…で構成されている。読取画像の縮小は、縮小部20hで実行される。また、画像ピラミッドは、元の読取画像、元の読取画像を2倍に拡大した画像、元の読取画像を4倍に拡大した画像、元の読取画像を8倍に拡大した画像、…で構成することもできる。読取画像の拡大は、拡大部20iで実行される。尚、縮小した画像と、拡大した画像とのうち、一方を省略してもよい。
【0111】
画像ピラミッドを作成した後、ステップSC4に進み、画像ピラミッドを構成する複数の読取画像の中から任意の読取画像を選択する。この選択された画像の中には、縮小及び拡大されていない元の読取画像が含まれる場合もある。ステップSC5では、抽出部20gが、ステップSC4で選択した読取画像の中からコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出する。その後、ステップSC6に進み、画像修復部20jが、ステップSC5で抽出されたコード候補領域に対応する部分画像をニューラルネットワークに入力して読取画像の修復を試行する。ニューラルネットワークに入力する部分画像のサイズは、上述したコード条件によって決定する。
【0112】
読取画像の修復後、ステップSC7に進み、コードの輪郭やコードを構成しているモジュールの位置決め処理を実行する。位置決め処理後、ステップSC8に進み、コードを構成している各モジュールが白であるか、黒であるかを判別する。白黒の判別後、ステップSC9に進み、修復された読取画像に対してデコード部20fがデコード処理を実行する。デコード処理では、例えばモジュールの0-1マトリックスから文字列を復元する手法を採用することができる。
【0113】
その後、ステップSC10に進み、ステップSC9のデコード処理が成功したか否かをチューニング実行部20dが判定する。ステップSC10でNOと判定されてステップSC9のデコード処理が失敗した場合には、ステップSC11に進み、画像ピラミッドを構成している全ての読取画像が選択されたか否かを判定する。ステップSC11でNOと判定されて画像ピラミッドを構成している全ての読取画像が選択されていない場合にはステップSC4に進み、画像ピラミッドを構成している別の縮小された読取画像または別の拡大された読取画像を選択し、ステップSC5に進む。
【0114】
一方、ステップSC11でYESと判定されて画像ピラミッドを構成している全ての読取画像が選択された場合にはこのフローを終了し、デコードが成功した条件を記憶しておく。
【0115】
(縮小率及び拡大率決定後のデコード処理手順)
次に、縮小率及び拡大率決定後のデコード処理手順の一例について、図13に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。図13に示すフローチャートで特定される処理は、図11に示すフローチャートのステップSB7及び光学情報読取装置1の運用時に実行することができる。
【0116】
図13に示すフローチャートのスタート後のステップSD1では、図12に示すフローチャートのステップSC1で選択した画像処理フィルタを読取画像に対してフィルタ処理部20cが実行する。このとき、図14のFIG.14Aに示すような読取画像に対してフィルタ処理部20cが平均化フィルタを実行した場合には、図14のFIG.14Bに示すような画像処理フィルタ実行後の画像が得られる。
【0117】
その後、ステップSD2に進み、必要に応じて読取画像の縮小・拡大処理を実行する。具体的には、画像処理フィルタ実行後の読取画像におけるコードのPPCが特定範囲内である場合には、縮小または拡大を非実行にする一方、特定範囲外である場合には、縮小または拡大を実行し、PPCが特定範囲内に入るようにする。図15のFIG.15Aに、縮小処理後の読取画像の例を示している。
【0118】
次いで、ステップSD3では、抽出部20gが、ステップSD2で縮小または拡大された読取画像の中からコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出する。図15のFIG.15Aに、コード候補領域抽出画像の例を示している。尚、ステップSD2で縮小または拡大されていない場合には、ステップSD3で元の読取画像に対して抽出処理が実行されることになる。
【0119】
その後、ステップSD4に進み、画像修復部20jが、ステップSD3で抽出されたコード候補領域に対応する部分画像をニューラルネットワークに入力して読取画像の修復を試行する。図16に修復前の読取画像と修復後の読取画像の例を示している。読取画像の修復後、ステップSD5~SD7を経てこのフローが終了する。ステップSD5~SD7は、図12に示すフローチャートのステップSC7~SC9と同じである。
【0120】
(運用時の処理の例)
図17は、光学情報読取装置1の運用時における処理の手順の一例を説明する図である。プロセッサ20により、前処理部200と、後処理部201と、第1デコード部202と、第2デコード部203とが構成されている。第1デコード部202及び第2デコード部203は、デコード部20fに含まれるものであり、デコード処理を並列に実行可能になっている。前処理部200は、カメラ5により生成された読取画像に対してノイズ除去フィルタ、コントラスト補正フィルタ、平均化フィルタ等を実行する部分である。
【0121】
第1デコード部202は、カメラ5により生成された読取画像に対するデコード処理を実行する部分であり、この第1デコード部202によるデコード処理を第1デコード処理ともいう。プロセッサ20が複数のコア(N個のコア)を有している場合、そのうちのコア0~コアiによって第1デコード部202が構成される。1つのコアで第1デコード部202が構成されていてもよい。
【0122】
また、第2デコード部203は、画像修復部20jが生成した修復画像に対するデコード処理を実行する部分であり、この第2デコード部203によるデコード処理を第2デコード処理ともいう。プロセッサ20がN個のコアを有している場合、そのうちのコアi+1~コアN-1によって第2デコード部203が構成される。1つのコアで第2デコード部203が構成されていてもよい。
【0123】
図18にも示すように、コア0~コアiによって第1デコード部202が構成されている場合、コア0~コアiの各々がカメラ5により生成された読取画像の中からコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出した後、コードの輪郭やコードを構成しているモジュールの位置決め処理を実行し、その後、コードを構成している各モジュールが白であるか、黒であるかを判別し、デコード処理を実行する。処理結果は後処理部201に出力される。
【0124】
一方、コアi+1~コアN-1によって第2デコード部203が構成されている場合、コアi+1~コアN-1の各々が、読取画像からコードが存在する可能性が高いコード候補領域を修復用コード領域として抽出するとともに、画像修復部20jに対し、推論処理を実行するようトリガ信号を送出する。この図18では、2つのコアによって1つのタスクを実行するように記載しているが、任意の1つ以上のコアによって1つのタスクを実行すればよい。
【0125】
具体的には、第2デコード部203を構成しているコアN-2及びコアN-1が修復用コード候補領域を抽出すると、トリガ信号(トリガ1)を画像修復部20jに出力し、画像修復部20jに対して推論処理を実行させる。画像修復部20jは、コアN-2及びコアN-1から送出されたトリガ信号(トリガ1)を受信すると、コアN-2及びコアN-1が抽出した修復用コード候補領域に対応する部分画像をニューラルネットワークに入力し、当該部分画像を修復した修復画像を生成する推論処理を実行する(画像修復1)。画像修復1で生成した修復画像は、コアN-2及びコアN-1へ送られる。コアN-2及びコアN-1は、画像修復1で生成した修復画像に基づいてコードの各セル位置を示すグリッド位置を決定し、決定したグリッド位置に基づいて当該修復画像のデコード処理を実行する。
【0126】
一方、第2デコード部203を構成しているコアi+1及びコアi+2が修復用コード候補領域を抽出すると、トリガ信号(トリガ2)を画像修復部20jに出力し、画像修復部20jに対して推論処理を実行させる。画像修復部20jは、コアi+1及びコアi+2から送出されたトリガ信号(トリガ2)を受信すると、コアi+1及びコアi+2が抽出した修復用コード候補領域に対応する部分画像をニューラルネットワークに入力し、当該部分画像を修復した修復画像を生成する推論処理を実行する(画像修復2)。画像修復2で生成した修復画像は、コアi+1及びコアi+2へ送られる。コアi+1及びコアi+2は、画像修復2で生成した修復画像に基づいてコードの各セル位置を示すグリッド位置を決定し、決定したグリッド位置に基づいて当該修復画像のデコード処理を実行する。
【0127】
以下、同様にして、コアN-2及びコアN-1から送出されたトリガ信号(トリガ3)により画像修復3が実行され、コアi+1及びコアi+2から送出されたトリガ信号(トリガ4)により画像修復4が実行され、コアN-2及びコアN-1から送出されたトリガ信号(トリガ5)により画像修復5が実行され、コアi+1及びコアi+2から送出されたトリガ信号(トリガ6)により画像修復6が実行され、コアN-2及びコアN-1から送出されたトリガ信号(トリガ7)により画像修復7が実行される。
【0128】
このタイムチャートに示すように、画像修復部20jによる推論処理と第1デコード部202による第1デコード処理とは並列的に実行される。例えば、第1デコード部202がコード領域抽出、グリッド位置決め、デコード処理を継続して行う間、画像修復部20jによる推論処理が1回または複数回実行される。また、第1デコード部202がコード領域抽出、グリッド位置決め、デコード処理を継続して行う間、第2デコード部203による修復用コード領域の抽出、トリガ信号の出力、グリッド位置決め、第2デコード処理が実行される。このように、画像修復部20jは、修復用コード候補領域に対応する部分画像の修復に特化すればよいので、推論処理速度を高速化できる。
【0129】
第2デコード部が第2デコード処理を実行している期間の少なくとも一部は、画像修復部20jによる推論処理が実行されない休止期間を有している。すなわち、図18に示すように、画像修復部20jの画像修復1の終了後、第2デコード部203が第2デコード処理を開始するのであるが、画像修復部20jが次の画像修復2を開始するまでの間に、所定の期間が設けられており、この所定の期間は、画像修復部20jが画像修復を行わない休止期間とされている。この休止期間は画像修復部20jが推論処理を行わない期間であり、休止期間を設けることにより、画像修復部20jの負荷を低減して、AIチップ23の発熱を抑制できる。なお、グリッド位置決めの処理時間は、処理対象の修復画像によって長い場合や短い場合が存在する。図18では各コアの処理が交互に実行される例を記載しているが、グリッド位置決めの処理時間によっては、各コアの処理は必ずしも交互に実行されない。すなわち、処理が空いているコアから順にトリガ発出や、グリッド位置決めを実行してもよい。
【0130】
上述したように、設定部20eは、「画像修復フィルタの適用」と「画像修復フィルタの非適用」との一方をユーザが選択可能に構成されている。画像修復フィルタを適用するということは、画像修復を行うということであり、また、画像修復フィルタを非適用にするということは、画像修復を行わないということなので、設定部20eは、第2デコード部203が第2デコード処理を実行するか否かを設定する部分にも相当する。この設定はユーザによって実行されるので、設定部20eはユーザによる操作を受け付けることができるように構成されている。画像修復フィルタの適用、非適用という設定形態に限定されるものではなく、例えば推論処理(修復処理)の適用、非適用、AIによる処理の適用、非適用といった設定形態であってもよい。ユーザによる操作は、例えばユーザインターフェース画面に表示したボタン等の操作を挙げることができる。
【0131】
光学情報読取装置1では、上記チューニング処理行ってから運用される。例えばワークWがラベルのような場合では、コードが鮮明に印字されているので、チューニング処理により適切な条件設定がなされれば、高い読み取り率を実現できる。しかし、金属や樹脂などのワークWにおいては、チューニング処理時の最適な条件が設定されるものの、微弱な外乱光による読取画像の変化などが原因で読み取りにくい状態になったり、そもそも光学設計とアルゴリズム設計上、超低コントラストで読み取れないケースが発生してしまうことがある。
【0132】
本例の画像修復部20jが実行する画像修復アルゴリズムを、画像修復しないでデコード処理する場合と並列に実施することで、従来の読み取り性能を維持しながら金属や樹脂などのワークWに対しての読み取り性能を向上させ、読み取り安定性を高めることができる。また、従来の光学設計とアルゴリズムでは読めないワークWに対しても、画像修復アルゴリズムを適用することにより読み取りが可能になる。
【0133】
具体例を示すと、ある工場で箱に付されたシール上に印字されたコードを読み取る工程で、光学情報読取装置1の設置条件に制約がなく、最適な設置が可能な場合においては、従来の読み取り性能でも安定した運用が可能であることから、画像修復フィルタを非適用にしてタクトを優先することができる。
【0134】
また、ある工場において、金属にはっきりと印字されたコードを読み取る工程があり、読み取り設定時のチューニング処理においては最適な条件が決定されるものの、実際に運用してみると、金属表面の傷、読み取り位置・角度のばらつき、周囲環境の明るさ変化などで読み取りが不安定になるケースがある。このようなケースでは、画像修復フィルタを適用して、画質改善することで、上記のような条件のばらつきに強くなり、読み取り性能が向上する。
【0135】
また、一部のワークでは、従来のアルゴリズムでの読み取りが不可能であるが、そのようなケースでは画像修復フィルタを適用することで、読み取りができるようになるケースがある。例えば、コードの損傷が著しかったり、コントラストが明確でない場合でも、画像修復フィルタを適用することによって、コントラストや傷を修復し、読み取りが可能になる。
【0136】
画像修復フィルタを適用した場合に実行される第2デコード処理は、修復画像に対してデコード処理を実行するため、通常の読取画像のデコード処理を実行する第1デコード処理に比べて処理にかかる時間が長い場合が多い。したがって、第1デコード部202は、第2デコード部203による第2デコード処理にかかる時間よりも短い時間で第1デコード処理を実行可能である。本例では、このことを前提とし、デコード処理の制限時間である、デコードタイムアウト時間を設定部20eが変更可能になっている。
【0137】
具体的には、設定部20eは、第2デコード処理を実行すると設定されている場合は、第2デコード処理の実行に必要な時間よりも長いデコードタイムアウト時間を設定可能に構成されるとともに、第2デコード処理を実行しないと設定されている場合は、第2デコード処理の実行に必要な時間よりも短いデコードタイムアウト時間を設定可能に構成されている。これにより、運用時には、第2デコード処理を実行する場合、一般的な第2デコード処理の実行に必要な時間よりも長いデコードタイムアウト時間を設定することができるので、修復画像に対するデコード処理を確実に実行できる。一方、第2デコード処理を実行しないと設定されている場合は、一般に第2デコード処理よりも短い時間でデコード処理が可能な第1デコード処理のみを実行することになるので、第1デコード処理に対応した短いデコードタイムアウト時間を設定できる。このようにデコードタイムアウト時間を変更することで、第1デコード処理及び第2デコード処理のそれぞれに対応したデコードタイムアウト時間にすることができる。
【0138】
また、図18では、第1デコード部202と第2デコード部203とを別にしているが、図19に示すように、第1デコード部202と第2デコード部203とをまとめてデコード部20fとしてもよい。デコード部20fは、カメラ5により生成された読取画像に対する第1デコード処理と並列に、修復画像に対する第2デコード処理を実行する。このようにデコード処理を実行する部分は、ハードウエア上で任意に分けることもできるし、統合することもできる。以下、デコード処理を実行する部分を1つに統合した例で説明するが、これに限らず、複数に分けた場合にも同様に適用できる。
【0139】
デコード部20fは、設定部20eにより第2デコード処理を実行しないと設定されている場合には、第2デコード処理に使われる処理のリソースを第1デコード処理に振り分け、第2デコード処理を実行すると設定されている場合に比べ、第1デコード処理を高速化するように構成されている。処理のリソースとは、例えばメモリの使用領域や、マルチコアCPUを構成しているコア等である。具体的には、第2デコード処理を実行しないと設定されている場合には、第2デコード処理を実行すると設定されている場合に比べて、第1デコード処理を受け持つコアの数を多くする。また、第2デコード処理を実行しないと設定されている場合には、第2デコード処理を実行すると設定されている場合に比べて、第1デコード処理で使用するメモリの領域を拡大する。コアの数を多くすることと、メモリの領域を拡大することとは、併用してもよいし、いずれか一方のみ実行してもよい。これにより、マルチコアCPUの性能を最大限に引き出して第1デコード処理を高速化できる。
【0140】
デコード部20fは、画像修復に先立ち、読取画像からコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出する。すなわち、ニューラルネットワークを用いた画像修復時に当該ニューラルネットワークに入力する画像が大きいと演算時間が長時間化してしまうという問題がある。また、処理の高速化の観点からは、デコードの試行回数もできるだけ少なくしたい。これらのことに対し、本例では、コード候補領域を多少時間がかかっても確実に抽出可能にするために、ラインサーチベースではなく、ヒートマップベースのサーチ手法を採用している。例えば、デコード部20fは、コードの特徴量を定量化し、特徴量の大きさを各画素値に割り当てたヒートマップを生成し、当該ヒートマップ上で、コードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出する。具体例としては、ヒートマップにおいて相対的に熱く(特徴量が大きく)示されている領域で2次元コードの特徴部分(例:ファインダパターン等)を取得する方法がある。特徴部分が複数取得された場合には、優先づけをして抽出し、RAM41や記憶部30等に記憶させておくことができる。
【0141】
デコード部20fがコード候補領域を抽出した後、抽出したコード候補領域に対応する部分画像を画像修復部20jに出力する。画像修復部20jは、デコード部20fが抽出したコード候補領域に対応する部分画像をニューラルネットワークに入力し、当該部分画像を修復した修復画像を生成する推論処理を実行する。これにより、演算時間を短縮できる。
【0142】
また、デコード部20fは、上述したチューニング処理により設定された読取対象のコードを包含できるサイズで、かつ読取画像の中でコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出し、当該抽出された画像を、予め定められたサイズとなるように縮小又は拡大してからニューラルネットワークに入力し、当該ニューラルネットワークで修復した修復画像をデコードするように構成されていてもよい。抽出された画像を予め定められたサイズの画像に拡大・縮小してニューラルネットワークに入力することで、ニューラルネットワークに入力されるコード画像のPPCを所定の範囲内に収めることができ、ニューラルネットワークによる画像修復効果を安定的に引き出すことができる。また、読取対象のコードサイズは様々であることが考えられるが、最終的にニューラルネットワークに入力されるコードのサイズを固定できるので、処理の高速性とデコードのし易さのバランスを一定以上に保つことができる。
【0143】
以下、第1デコード処理及び第2デコード処理のフローチャートについて、図20に基づいて詳細に説明する。スタート後のステップSE1では、プロセッサ20がカメラ5に読取画像を生成させ、読取画像を取得する。ステップSE1で取得された読取画像は、デコード部20fに入力される。ステップSE2では、ステップSE1で取得された読取画像に対して画像修復を施すことなく、第1デコード処理を実行する。第1デコード処理が成功すれば、ステップSE4に進んで終了処理、即ちデコード結果の出力処理を実行する。ステップSE2で第1デコード処理が失敗すれば、ステップSE2に戻り、第1デコード処理を再度実行する。所定のデコードタイムアウト時間が経過すると、当該読取画像に対する第1デコード処理を中止する。
【0144】
一方、ステップSE1からステップSE5に進むルートでは、デコード部20fが読取画像から修復用コード領域を抽出する。具体的には、チューニング処理により設定された読取対象のコードを包含できるサイズで、かつ読取画像の中でコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出する。このとき、修復用コード領域が複数抽出された場合には、候補領域R1、R2、…として一時的に保存しておく。抽出された修復用コード領域の一例を図20に示す。その後、ステップSE6に進み、kの値を1にしておく。
【0145】
ステップSE7では、候補領域Rkに対応する部分画像に対してリサイズ処理を実行する。リサイズ処理は、ステップSE5で抽出された修復用コード領域に対応する部分画像を、予め定められたサイズとなるように縮小又は拡大する処理である。このリサイズ処理により、後述するニューラルネットワークに入力する画像の大きさを予め所定の大きさにしておくことができる。図21に示す例では、ニューラルネットワークに入力する部分画像の大きさが256ピクセル×256ピクセルである場合について示しているが、部分画像の大きさはこれに限られるものではなく、処理速度等を勘案して任意の大きさにリサイズすることができる。
【0146】
ステップSE8では、白黒反転設定が「両方」になっているか否かを判定する。すなわち、画像修復は、数学的には写像を行っているだけであり、白から黒、黒から白、黒から黒、白から白の写像を単一のニューラルネットワークで実現することは難易度が高い場合がある。そのため、白地に黒印字された画像となるようにプロパティに基づいて白黒反転処理を実行する。ニューラルネットワークの学習のさせ方によっては、黒地に白印字された画像であってもよい。白黒反転処理の一例を図21に示す。白黒反転処理の詳細については後述する。
【0147】
ステップSE8でYESと判定されて白黒反転設定が「両方」になっている場合にはステップSE9に進み、リサイズ処理後の画像を画像修復部20jに入力して画像修復を実行する。その後、ステップSE10に進み、デコード部20fが修復後の画像に対して第2デコード処理を実行する。ステップSE10で第2デコード処理が成功すれば、ステップSE4に進んで終了処理を実行する。ステップSE10で第2デコード処理が失敗すれば、ステップSE11に進み、リサイズ処理後の画像を白黒反転処理する。その後、ステップSE11で白黒反転処理後の画像を画像修復部20jに入力して画像修復を実行する(図21参照)。次いで、ステップSE13に進み、デコード部20fが修復後の画像に対して第2デコード処理を実行する。ステップSE13で第2デコード処理が成功すれば、ステップSE4に進んで終了処理を実行する。ステップSE13で第2デコード処理が失敗すれば、ステップSE14に進む。ステップSE14では、ステップSE5で抽出した候補領域がまだあるか否かを判定し、候補領域がない場合にはステップSE4に進んで終了処理を実行する。
【0148】
一方、ステップSE8でNOと判定されて白黒反転設定が「両方」になっていない場合にはステップSE15に進み、白黒反転設定が「OFF」になっているか否かを判定する。ステップSE15でNOと判定されて白黒反転設定が「OFF」になっていない場合には、ステップSE16に進んでリサイズ処理後の画像を白黒反転する処理する。その後、ステップSE17で白黒反転処理後の画像を画像修復部20jに入力して画像修復を実行する。次いで、ステップSE18に進み、デコード部20fが修復後の画像に対して第2デコード処理を実行する。ステップSE18で第2デコード処理が成功すれば、ステップSE4に進んで終了処理を実行する。ステップSE18で第2デコード処理が失敗すれば、ステップSE14に進む。ステップSE14で候補領域がまだあるか否かを判定し、候補領域がない場合にはステップSE4に進んで終了処理を実行する。
【0149】
ステップSE14で候補領域がまだあると判定された場合には、ステップSE19に進み、kの値に1を加えてステップSE7に進む。ステップSE7では、前回のフローからkの値が1つ増えているので、次の候補領域Rkに対応する部分画像に対して同様にリサイズ処理を実行する。ステップSE8以降は上述したとおりである。つまり、第1デコード処理または第2デコード処理の一方でデコードが成功すれば、成功した時点でデコード結果を出力して他の候補領域に対するデコード処理は行わず、次のワークWを撮像した読取画像を取得し、同様な処理を実行する。
【0150】
図21に示す後処理部201は、リサイズ処理後に画像修復していない部分画像と、リサイズ処理後に画像修復部20jが画像修復した部分画像とを合成する処理を実行する。すなわち、ニューラルネットワークを用いた画像修復では、修復前のコードが人間の目視で確認できるのに、画像修復がうまくいかないことや、画像修復するとセルが丸くなることが起こり得る。これらのことに対して、画像修復していない部分画像と、画像修復した部分画像とを適切な割合で重ね合わせると、その後のデコード処理が容易になる場合がある。画像修復していない部分画像と、画像修復した部分画像とを重ね合わせる割合は、所定の固定値であってもよいし、固定値以外であってもよく、例えば画像修復部20jによるの修復の安定度に基づいて、読み取り時に動的に、あるいは事前評価(チューニング)で最適化して決定してもよい。例えば事前評価において、その割合をユーザがスケールバー等で調整可能にし、合成後の画像をユーザに提示しながら調整が行えるようにしてもよい。
【0151】
(バンク切り替え機能)
本実施形態では、例えばカメラ5の撮像条件を構成するパラメータ及びデコード部20fにおける処理条件等を構成するパラメータがセットになったパラメータセットを上記パラメータセット記憶部30cに記憶することができるように構成されている。パラメータセットは、バンクと呼ぶことができる。バンクは複数設けられており、それぞれに異なるパラメータが記憶されている。例えば、パラメータセット記憶部30cには、チューニング実行部20dにより設定された第1の撮像条件及びコード条件と、第2の撮像条件及びコード条件とを含む複数の撮像条件及びコード条件とがそれぞれ別のパラメータセットとして記憶されている。
【0152】
この光学情報読取装置1では、パラメータセット記憶部35cに記憶されている複数のパラメータセットのうち、第1の撮像条件及びコード条件を含む一のパラメータセットから、第2の撮像条件及びコード条件を含む他のパラメータセットへ切り替えることや、その反対の切り替えができるように構成されている。パラメータセットの切替は、プロセッサ20が行うことや、ユーザが行うこともできるし、PLC101等の外部制御装置からの切替信号によって行うように構成することもできる。パラメータセットの切替をユーザが行う場合には、例えばユーザインターフェースに組み込まれているパラメータセット切替部を操作すればよい。パラメータセット切替部を「有効」にすることで、そのバンクのパラメータセットが光学情報読取装置1の運用時に使用され、また、パラメータセット切替部を「無効」にすることで、そのバンクのパラメータセットが光学情報読取装置1の運用時に使用されないようになる。つまり、パラメータセット切替部は、一のパラメータセットから他のパラメータセットに切り替えるためのものである。
【0153】
本例のデコード部20fは、一のパラメータセットを使用して運用している時に、修復画像に対する第2デコード処理に失敗すると、他のパラメータセットに切り替えてから、別の条件で撮像された読取画像に対して画像修復、第2デコード処理を実行する。例えば、デコード部20fが第2デコード処理に失敗したことを検出すると、現在しているパラメータセット以外のパラメータセットに切り替えた後、画像修復、第2デコード処理を実行し、このパラメータセットでも第2デコード処理に失敗したことを検出すると、これまで使用していない他のパラメータセットに切り替えた後、画像修復、第2デコード処理を実行する。パラメータセットを切り替えると、カメラ5の撮像条件だけなく、読取対象のコードサイズも変更される場合があり、この場合にはコードが存在する可能性が高いコード候補領域を抽出する際のサイズも変わることになる。その結果、ニューラルネットワークに入力する画像の縮小率又は拡大率も変わり、画像修復の結果も変わることになる。
【0154】
(白地に黒印字されたコード、黒地に白印字されたコードの読取対応)
例えば、工場や倉庫における物品のトレーサビリティを目的として光学読取装置1を使用する場合、ワークWの色が白であるとは限らず、黒または黒に近い暗い色の場合がある。ワークWの色が黒等であれば、それに印字するコードの色は白または白に近い明るい色とされる。また、光の当たり方によっても、白と黒の関係が入れ替わって見えることがある。つまり、白地に黒印字されたコードと、黒地に白印字されたコードとが混在する現場があるが、本実施形態の光学読取装置1はそのいずれにも対応可能に構成されている。
【0155】
以下、図22及び図23に基づいて具体的に説明する。図22は、白地に黒印字のコードで学習した第1ニューラルネットワークと、黒地に白印字のコードで学習した第2ニューラルネットワークとを用いてコードの白黒反転に対応する場合について説明する図である。FIG.22Aは、読取画像(左端の画像)を、第1ニューラルネットワークと、第2ニューラルネットワークとにそれぞれ入力し、第1ニューラルネットワーク及び第2ニューラルネットワークからデコード結果を出力させる方式を示しており、この方式を並行実施方式と呼ぶ。読取画像は、白地に黒印字のコードを撮像した画像なので、第1ニューラルネットワークによる修復画像ではデコード処理に成功するが、第2ニューラルネットワークによる修復画像ではデコード処理に失敗する。
【0156】
つまり、FIG.22Aに示す例では、ニューラルネットワーク記憶部30dは、第1ニューラルネットワークと第2ニューラルネットワークとを記憶している。また、デコード部20fは、読取画像を第1ニューラルネットワーク及び第2ニューラルネットワークの両方に入力し、その結果、生成された修復画像をデコードする。
【0157】
FIG.22Bは、読取画像(左端の画像)を、まず、第2ニューラルネットワークのみに入力し、修復画像のデコード処理を試みる。デコード処理に失敗した場合のみ、読取画像を、第1ニューラルネットワークに入力して修復画像を生成する。この方式は、失敗後に別ネットワークを使用する方式である。
【0158】
つまり、FIG.22Bに示す例では、ニューラルネットワーク記憶部30dは、第1ニューラルネットワークと第2ニューラルネットワークとを記憶しているが、デコード部20fは、読取画像を第2ニューラルネットワークのみに入力した後、第2ニューラルネットワークに入力して生成された修復画像のデコードに失敗した場合にのみ、読取画像を第1ニューラルネットワークに入力して修復画像を生成し、第1ニューラルネットワークで生成された修復画像をデコードする。
【0159】
FIG.22Cは、ユーザによる設定に基づいて、読取画像を入力するニューラルネットワークを選択する方式である。すなわち、図6に示す設定部20eは、第1ニューラルネットワークと第2ニューラルネットワークとのうち、どちらのニューラルネットワークに読取画像を入力するかの選択を受け付ける部分である。例えば光学情報読取装置1の設定時に、「第1ニューラルネットワーク」と「第2ニューラルネットワーク」との一方をユーザが選択可能なユーザインターフェースを生成して表示部6や設定装置100の表示器100b等に表示させ、ユーザによる選択を受け付けるように構成することができる。
【0160】
選択方式としては、上述したようにニューラルネットワークの種別を直接選択する方式であってもよいし、入力する読取画像を選択する方式であってもよい。入力する読取画像を選択する方式の場合、「読取画像が白地に黒印字のコードを撮像した画像」と、「読取画像が黒地に白印字のコードを撮像した画像」との一方をユーザが選択可能なユーザインターフェースを生成して表示部6や設定装置100の表示器100b等に表示させ、ユーザによる選択を受け付けるように構成することができる。「読取画像が白地に黒印字のコードを撮像した画像」の選択は、「第1ニューラルネットワーク」の選択に対応し、「読取画像が黒地に白印字のコードを撮像した画像」の選択は、「第2ニューラルネットワーク」の選択に対応する。
【0161】
ユーザによる選択結果は、プロセッサ20で受信される。プロセッサ20には、デコード部20fの一部を構成するネットワーク選択モジュール20kが設けられている。ネットワーク選択モジュール20kは、「第1ニューラルネットワーク」が選択されていれば、読取画像を第1ニューラルネットワークに入力し、第2ニューラルネットワークには入力しない。一方、ネットワーク選択モジュール20kは、「第2ニューラルネットワーク」が選択されていれば、読取画像を第2ニューラルネットワークに入力し、第1ニューラルネットワークには入力しない。
【0162】
FIG.22Cの左側に示すケースは、読取画像が白地に黒印字のコードを撮像した画像であると設定されている場合である。この場合、ネットワーク選択モジュール20kが第1ニューラルネットワークを選択する。そして、デコード部20fは、読取画像(左端の画像)を第1ニューラルネットワークに入力して修復画像を生成し、当該第1ニューラルネットワークで生成された修復画像をデコードする。一方、FIG.22Cの右側に示すケースは、読取画像が黒地に白印字のコードを撮像した画像であると設定されている場合である。この場合、ネットワーク選択モジュール20kが第2ニューラルネットワークを選択する。そして、デコード部20fは、読取画像(左端の画像)を第2ニューラルネットワークに入力し、当該第2ニューラルネットワークで生成された修復画像をデコードする。
【0163】
図23は、ニューラルネットワーク記憶部30dが第1ニューラルネットワークと第2ニューラルネットワークのいずれか一方を記憶しており、一方のニューラルネットワークのみを用いてコードの白黒反転に対応する場合について説明する図である。FIG.23Aでは、デコード部20fが読取画像(左端の画像)を白黒反転処理することにより、白黒反転画像を生成する場合について示している。白黒反転処理しない画像と、白黒反転処理した画像とをそれぞれ第1ニューラルネットワークに入力する。読取画像は、黒地に白印字のコードを撮像した画像なので、第1ニューラルネットワークによる修復画像ではデコード処理に失敗するが、白黒反転処理した後の画像を第1ニューラルネットワークで修復して修復画像を生成することで、デコード処理に成功する。つまり、デコード部20fは、読取画像の白黒関係を、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶されているニューラルネットワークで修復できる白黒関係と一致させるように、当該読取画像の白黒関係を反転させる白黒反転処理を実行してから、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶されているニューラルネットワークに入力する。
【0164】
FIG.23Bの上に示す例では、読取画像(左端の画像)が黒地に白印字されたコードの画像であるため、第1ニューラルネットワークに入力すると、デコード処理に失敗する。その後、白黒反転処理した画像を生成して第1ニューラルネットワークに入力すると、デコード処理に成功する。
【0165】
FIG.23Bの下に示す例では、読取画像(左端の画像)が白地に黒印字されたコードの画像であるため、第2ニューラルネットワークに入力すると、デコード処理に失敗する。その後、白黒反転処理した画像を生成して第2ニューラルネットワークに入力すると、デコード処理に成功する。
【0166】
すなわち、デコード部20fは、白黒反転処理を実行しない読取画像を、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶されているニューラルネットワークに入力して生成された修復画像のデコードに失敗した場合にのみ、白黒反転処理を実行した読取画像を、ニューラルネットワーク記憶部30dに記憶されているニューラルネットワークに入力するように構成されている。
【0167】
FIG.23Cは、ユーザによる設定に基づいて、白黒反転処理を実行するか、非実行とするかを決定する方式である。すなわち、図6に示す設定部20eは、白黒反転処理するか否かの選択を受け付ける部分である。例えば光学情報読取装置1の設定時に、「白黒反転処理実行」と「白黒反転処理非実行」との一方をユーザが選択可能なユーザインターフェースを生成して表示部6や設定装置100の表示器100b等に表示させ、ユーザによる選択を受け付けるように構成することができる。
【0168】
選択方式としては、上述したように白黒反転処理の実行、非実行を直接選択する方式であってもよいし、入力する読取画像を選択する方式であってもよい。入力する読取画像を選択する方式の場合、「読取画像が白地に黒印字のコードを撮像した画像」と、「読取画像が黒地に白印字のコードを撮像した画像」との一方をユーザが選択可能なユーザインターフェースを生成して表示部6や設定装置100の表示器100b等に表示させ、ユーザによる選択を受け付けるように構成することができる。第1ニューラルネットワークのみを記憶している場合に、「読取画像が白地に黒印字のコードを撮像した画像」が選択されると、「白黒反転処理非実行」とし、第1ニューラルネットワークのみを記憶している場合に、「読取画像が黒地に白印字のコードを撮像した画像」が選択されると、「白黒反転処理実行」とする。また、第2ニューラルネットワークのみを記憶している場合に、「読取画像が白地に黒印字のコードを撮像した画像」が選択されると、「白黒反転処理実行」とし、第2ニューラルネットワークのみを記憶している場合に、「読取画像が黒地に白印字のコードを撮像した画像」が選択されると、「白黒反転処理非実行」とする。
【0169】
ユーザによる選択結果は、プロセッサ20で受信される。プロセッサ20には、デコード部20fの一部を構成する白黒反転処理モジュール20lが構成されている。白黒反転処理モジュール20lは、「白黒反転処理実行」が選択されていれば、読取画像に白黒反転処理を実行する一方、「白黒反転処理非実行」が選択されていれば、読取画像に白黒反転処理を実行しない。
【0170】
FIG.23Cの上側に示すケースは、第1ニューラルネットワークのみを記憶していて、読取画像が白地に黒印字のコードを撮像した画像であると設定されている場合である。この場合、白黒反転処理モジュール20lが白黒反転処理を実行することなく、そのまま第1ニューラルネットワークに入力する。一方、FIG.23Cの下側に示すケースは、第1ニューラルネットワークのみを記憶していて、読取画像が黒地に白印字のコードを撮像した画像であると設定されている場合である。この場合、白黒反転処理モジュールが白黒反転処理を実行する。そして、白黒反転処理した画像を第1ニューラルネットワークに入力する。
【0171】
(コントラストとマッチングレベルの関係)
マッチングレベル算出部20nで算出されるマッチングレベルは、例えばチューニング時のスコアとして使用したり、運用時の印字品質/読み取り性能の管理に使用される。例えば、マッチングレベルは0~100の正の整数値で定義されており、50以上では読み取り率テストを実施した場合に読み取り率100%になるように設計することができる。また、マッチングレベル0は読み取れない場合、マッチングレベル1は読み取れる場合の最低値である。
【0172】
図24は、コントラストとマッチングレベルの関係を示すグラフであり、実線は画像修復部20jにより画像修復された画像(修復画像)のコントラストとマッチングレベルの関係を示し、また、破線は画像修復部20jにより画像修復していない画像(読取画像)のコントラストとマッチングレベルの関係を示している。このグラフから明らかなように、修復画像のマッチングレベルは読取画像のマッチングレベルよりも全体的に高くなっているが、ある一定以上画質が悪化すると、マッチングレベルが急激に低下してしまう。
【0173】
(マッチングレベルの算出処理)
マッチングレベルはアルゴリズムごとに設定されており、一般的には1コード種につき、1つのアルゴリズムである。しかしながら、本実施形態では、画像修復機能の搭載により、1つのコード種で2つのアルゴリズム(画像修復するアルゴリズムと、画像修復しないアルゴリズム)が実行される。この2つのアルゴリズムのうち、デコード処理が早く成功した方の結果が出力されるため、仮に、2つのアルゴリズムで交互にデコード処理に成功するケースにおいてはマッチングレベルの値が不安定になるおそれがある。また、画像修復を実行することで読み取りやすい画像になるため、従来と類似したマッチングレベルの算出方法ではマッチングレベルが既存のものと比較して高くなりやすい。これらのことに対し、本実施形態では、2つのアルゴリズムのマッチングレベルの重みづけ和をとり、マッチングレベルの値を調整するようにした。以下、具体例について、図25に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0174】
スタート後のステップSF1では読取画像をプロセッサ20に入力する。ステップSF2では、画像修復することなく、第1デコード部202が第1デコード処理を実行する。ステップSF3では、第1デコード処理による第1マッチングレベルA(MLA)を算出する。つまり、マッチングレベル算出部20nは、推論処理が適用される前の読取画像を用いて、第1デコード部202によるデコードのし易さを示すマッチングレベルを算出する。
【0175】
一方、ステップSF4では、読取画像を画像修復部20jに入力して画像修復処理を実行する。その後、ステップSF5に進み、修復画像に対して第2デコード部203が第2デコード処理を実行する。ステップSF6では、第2デコード処理による第2マッチングレベルB(MLB)を算出する。つまり、マッチングレベル算出部20nは、第1デコード部202の第1マッチングレベルMLAと、第2デコード部203の第2マッチングレベルMLBとを個別に算出する。尚、ステップSF2でデコードに成功しなかった場合にはMLA=0となり、またステップSF5でデコードに成功しなかった場合にはMLB=0となる。
【0176】
ステップSF7では、例えば平均化関数等を用いてMLAとMLBの値を調整する。具体的には、マッチングレベル算出部20nが、第1マッチングレベルMLAと第2マッチングレベルMLBの平均を算出する。第1マッチングレベルMLAと第2マッチングレベルMLBの平均を算出した場合、チューニング実行部20dは、第1マッチングレベルMLAと第2マッチングレベルMLBの平均を用いてチューニグ処理を実行し、撮像条件を設定する。尚、チューニング実行部20dは、第1マッチングレベルMLAを用いてチューニグ処理を実行し、撮像条件を設定してもよい。また、ステップSF2、SF5のどちらでデコードに成功しても、MLAの値に重みを付ける処理を行う。
【0177】
(ユーザインターフェースの例)
図26は、運用時に設定装置100の表示部101に表示されるユーザインターフェース300の例を示す図である。設定装置100は、ユーザインターフェース300を生成し、表示部101に表示させる。ユーザインターフェース300には、カメラ5で現在撮像されている画像(ライブビュー画像)が表示される第1画像表示領域301と、読取画像が表示される第2画像表示領域302と、画像修復部20jにより修復された修復画像が表示される第3表示領域303とが設けられている。これにより、読取画像と修復画像とを比較可能な形態でユーザに提示できる。また、デコード処理が実行される画像、またはデコード処理が実行された後の画像がどのような画像であるかをユーザが把握できる。
【0178】
また、ユーザインターフェース300は、第1デコード部202によるデコードと、第2デコード部203によるデコードとのうち、どちらのデコードが成功したかを通知可能に構成されている。具体的には、第2画像表示領域302に表示されている読取画像を用いた第1デコード部202によるデコードの成否情報を表示する第1成否情報表示領域304と、第3画像表示領域303に表示されている修復画像を用いた第2デコード部203によるデコードの成否情報を表示する第2成否情報表示領域305とがユーザインターフェース300に設けられている。成否情報の表示形態としては、例えば「成功」及び「失敗」といった文字、これに対応する意味を持った文字、記号等を挙げることができ、どのような形態であってもよい。
【0179】
ユーザインターフェース300には、運用時に、マッチングレベル算出部20nが算出したマッチングレベルを表示するマッチングレベル表示領域306が設けられている。マッチングレベル算出部20nがマッチングレベルを算出する都度、マッチングレベル表示領域306に表示されるマッチングレベルが更新される。
【0180】
(AIチップ付き撮像素子の例)
図27は、AIチップ付き撮像素子5aを用いた例を示す図であり、各図に示すようにカメラ5の撮像素子5aを構成することができる。FIG.27Aは、撮像素子5aに画像修復を実行するAIチップを設けてパッケージ化した場合を示す図であり、読取画像を画像修復した後に、プロセッサ20に出力する。また、FIG.27Bは、撮像素子5aに、修復用コード領域の抽出と、画像修復とを実行するAIチップを設けてパッケージ化した場合を示す図であり、読取画像の中から修復用コード領域を抽出した後、当該領域に対応する部分画像を画像修復した後に、プロセッサ20に出力する。また、FIG.27Cは、撮像素子5aに、修復用コード領域の抽出を実行するAIチップを設けてパッケージ化した場合を示す図であり、読取画像の中から修復用コード領域を抽出した後、当該領域に対応する部分画像をプロセッサ20に出力する。
【0181】
また、FIG.27Aに示す例において、撮像素子5aで取得した読取画像をプロセッサ20に出力するとともに、AIチップによって画像修復を実行し、修復画像をプロセッサ20に出力してもよい。FIG.27B,FIG.27Cに示す例についても同様である。
【0182】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、カメラ5により生成された読取画像をニューラルネットワークに入力することによって修復された修復画像をデコード部20fがデコードするので、劣化した読取画像であっても読取成功率を高めることができる。一方、マッチングレベル算出部20nは、修復前の読取画像を用いてマッチングレベルを算出するので、実際の画像の状態を反映したマッチングレベルが得られる。そして、得られたマッチングレベルを用いてチューニング実行部20dが撮像条件を設定するので、実際の現場の状況に適した条件設定が行える。
【0183】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0184】
以上説明したように、本発明に係る光学情報読取装置は、例えばワークに付与されたコードを読み取る場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0185】
1 光学情報読取装置
4 照明部
5 カメラ
20d チューニング実行部
20f デコード部
20n マッチングレベル算出部
30d ニューラルネットワーク記憶部
202 第1デコード部
203 第2デコード部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図11
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図16
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図22
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図26
図27