IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079357
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/007 20120101AFI20230601BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20230601BHJP
   D01F 6/06 20060101ALI20230601BHJP
   D06N 3/00 20060101ALN20230601BHJP
【FI】
D04H3/007
D04H3/16
D01F6/06 A
D06N3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192796
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山中 博文
(72)【発明者】
【氏名】森岡 英樹
(72)【発明者】
【氏名】勝田 大士
(72)【発明者】
【氏名】梶原 健太郎
【テーマコード(参考)】
4F055
4L035
4L047
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055AA03
4F055AA18
4F055AA21
4F055AA27
4F055BA12
4F055CA18
4F055DA08
4F055EA07
4F055EA24
4F055EA30
4L035AA05
4L035BB31
4L035DD13
4L035EE20
4L035FF05
4L035LA02
4L047AA14
4L047AB03
4L047AB07
4L047AB08
4L047BA08
4L047CA12
4L047CA19
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】環境負荷を低減しながら、天然皮革に匹敵する風合いを備え、滑らかな触感とグリップ性に優れた銀付調人工皮革基材用の不織布を提供する。
【解決手段】プロピレン単位以外のα-オレフィン単位を1モル%~30モル%含有するプロピレン系樹脂繊維からなる不織布であって、該不織布の少なくとも一方の面の表面粗さが0.5μm~20μm、目付が201g/m~1,000g/m、連通孔径指数が50μm~300μmであることを特徴とする不織布。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単位以外のα-オレフィン単位を1モル%~30モル%含有するプロピレン系樹脂繊維からなる不織布であって、該不織布の少なくとも一方の面の表面粗さが0.5μm~20μm、目付が201g/m~1,000g/m、連通孔径指数が50μm~300μmであることを特徴とする不織布。
【請求項2】
平均繊維径が0.1μm~9μmであることを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記少なくとも一方の面におけるスキューネスが-3.00~0.00であることを特徴とする請求項1または2に記載の不織布。
【請求項4】
α-オレフィン単位がエチレン単位であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀付調人工皮革基材に好適な不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀付調人工皮革は、安価で手入れが容易でありながら、天然皮革のような外観を表現できることから、主に高級感を付加する目的で、家具や自動車内装、衣料など、広い分野で使用されている。従来から、銀付調人工皮革は、極細繊維不織布に高分子弾性体を一体化させたものを基材とし、その基材上に湿式法や乾式法などで、樹脂層を付与することによって、銀面層を形成して製造される。しかし、基材上に樹脂層をのせるため、天然皮革に匹敵するような一体感のある材料を得ることは容易ではない。
さらに近年、環境配慮志向の高まりから、銀付調人工皮革においても、製造プロセスでの溶剤使用量を減らす動きもあり、溶剤を使用しないプロセスで銀面層を形成する人工皮革が求められている。
【0003】
銀付調人工皮革において、銀面層と基材との一体感を向上させる提案がいくつかなされているが、例えば、特許文献1のように、ポリウレタンの極細繊維からなるウェブ層とナイロンの極細繊維からなるウェブ層を交互積層したニードルパンチ不織布をポリウレタンの水系エマルジョンに含浸・乾燥して、ポリウレタン樹脂を含有した不織布を作製し、加熱エンボスロールにより、最表層のポリウレタン繊維を溶融薄膜化する技術や、特許文献2のように、極細繊維のウェブを製造して、銀面層形成の制御性を高める手法が提案されている。
【0004】
一方、極細繊維不織布を製造する主な方法として、溶融ポリマーを押出し、熱風を吹き付けることで、極細繊維化するメルトブロー法が挙げられる。弾性を有するポリマーからなるメルトブロー不織布の提案もなされており、バリア性や意匠性等の機能を付与する目的で、構成繊維を熱などにより、融着させる加工が行われている。例えば、特許文献3では、ポリエステル系エラストマーをメルトブロー法で紡糸した後、加熱した金属ローラーで圧着することで、繊維同士を融着させて、摩耗時の毛羽立ちを抑制している。また、特許文献4では、ポリウレタン樹脂をメルトブロー法で紡糸して、束状に融着した繊維からなるポリウレタン弾性不織布を作製し、伸長時の埃バリア性を高めている。
【0005】
また、ソファーやカーシート、スポーツ用ボールなどの用途においては、銀付調人工皮革により、高級感が付加されるものの、一般には平滑な銀面層のため、滑りやすく、着座が不安定になる問題がある。この課題に対して、例えば、特許文献5では、人工皮革の表面に凹凸をつけることで、グリップ性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-2481号公報
【特許文献2】特開2010-229603号公報
【特許文献3】特開平11-12910号公報
【特許文献4】特開2003-129363号公報
【特許文献5】特開2010-24555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるような技術によれば、従来の人工皮革よりもある程度一体感を向上させることができる。しかしながら、不織布を構成する極細繊維は、海島複合繊維の海成分であるポリスチレンを溶剤で除去しており、依然として、製造プロセスにおいて、溶剤が使用されており、環境負荷が高いことに加えて、通気性を確保するには、含浸させるポリウレタン樹脂の量とポリウレタン繊維の溶融薄膜化の程度をバランスよく調整する必要があり、製造上の制御が難しい。
【0008】
また、特許文献2に開示されるような技術によれば、ある程度、不織布製造のプロセスは簡略化されているものの、依然として、海島複合繊維から極細繊維を発生させるために、海成分の溶出工程が必要であり、溶出した海成分回収や廃液処理のために、多くのエネルギーが必要である。
【0009】
一方、特許文献3や4に開示されるような技術によれば、溶剤や熱水による溶出工程を経ることなく、極細繊維不織布を製造することができるものの、これらの技術を銀付調人工皮革基材などの用途に応用する検討は未だなされていない。
【0010】
さらに、特許文献5に開示されるような技術によれば、人工皮革の表面に凹凸をつけることで、銀付調人工皮革特有の銀面層の滑らかさが損なわれる傾向にあり、滑らかな触感とグリップ性を両立する銀付調人工皮革が求められている。
【0011】
そこで、本発明の課題は、製造工程における溶剤や樹脂の使用量を削減し、環境負荷を低減しながら、天然皮革に匹敵する風合いを備え、滑らかな触感とグリップ性に優れた銀付調人工皮革基材用の不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明の不織布は次の構成を有する。すなわち、
プロピレン単位以外のα-オレフィン単位を1モル%~30モル%含有するプロピレン系樹脂繊維からなる不織布であって、該不織布の少なくとも一方の面が、表面粗さが0.5μm~20μmの平滑面であり、目付が201g/m~1,000g/m、連通孔径指数が50μm~300μmであることを特徴とする不織布、である。
【0013】
本発明の不織布は平均繊維径が0.1μm~9μmであることが好ましい。
【0014】
本発明の不織布は前記少なくとも一方の面におけるスキューネスが-3.00~0.00であることが好ましい。
【0015】
本発明の不織布はα-オレフィン単位がエチレン単位であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、天然皮革に匹敵する風合いを備え、滑らかな触感とグリップ性に優れる銀付調人工皮革基材用の不織布を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を望ましい実施形態とともに詳述する。
【0018】
本発明の不織布は、プロピレン単位以外のα-オレフィン単位を1モル%~30モル%含有するプロピレン系樹脂繊維からなる不織布であって、該不織布の少なくとも一方の面が、表面粗さが0.5μm~20μm、目付が201g/m~2,000g/m、連通孔径指数が50μm~300μmである。以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
【0019】
本発明の不織布において、プロピレン系樹脂は、プロピレン単位以外のα-オレフィン単位を1モル%~30モル%含有していることが重要である。ここで、α-オレフィンとは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなど、二重結合がα位にある炭化水素のことをいう。
【0020】
プロピレン単位以外のα-オレフィン単位を1モル%以上としなければ、天然皮革のような適度な柔軟性と弾力を持った風合いとならない。一方、プロピレン単位以外のα-オレフィン単位を30モル%以下としなければ、過剰に柔軟化して、不織布の取り扱い性が悪くなる。不織布の形態安定性を高める観点から、α-オレフィン単位を25モル%以下とすることが好ましく、20モル%以下とすることがより好ましい。
【0021】
本発明の不織布において用いるプロピレン系樹脂としてプロピレンとα-オレフィンとの共重合体を用いる場合、共重合成分であるα-オレフィンはエチレンであることが好ましい。α-オレフィンがエチレンであることで、不織布の強度が向上する。
【0022】
なお、本発明において、プロピレン単位以外のα-オレフィン単位のモル分率(モル%)は、以下のとおり求めたものを指す。
【0023】
まず、不織布から採取した約50mgのプロピレン系樹脂繊維に1mLのオルトジクロロベンゼン/ベンゼン-d6の混合溶媒(オルトジクロロベンゼンとベンゼン-d6の容積比=9:1)を加え、135℃に加温する。次いで、得られた溶液について13C-NMR測定を行い、プロピレンではないα-オレフィン単位に起因するピークの面積とそれ以外の繰り返し単位に起因するピークの面積をNMRスペクトルから算出する。プロピレンではないα-オレフィン単位とそれ以外の繰り返し単位のピーク面積比よりプロピレンでないα-オレフィン単位のモル分率を算出し、小数点第1位を四捨五入する。
【0024】
本発明の不織布は、少なくとも一方の面が、表面粗さが0.5μm~20μmであることが重要である(以下、表面粗さが0.5μm~20μmの少なくとも一方の面を「平滑面」ということがある)。なお、ここで言う表面粗さとは、ISO 25178-2:2012「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状-第2部:用語、定義及び表面性状パラメータ」に基づいて測定された算術平均高さSaを指す。本発明における不織布の表面粗さ(μm)は、以下のとおり求める。
【0025】
3D顕微鏡(例えば、株式会社キーエンス製「VR-3050」など)を使用し、倍率12倍で画像全体に不織布が写るようにして不織布表面の高さ像を撮影し、画像の各ピクセル(x,y)における基準面からの高さの絶対値|T(x,y)|を算出する。すべてのピクセルの|T(x,y)|について算術平均を求め、小数第2位を四捨五入する。
【0026】
なお、天然皮革の銀面に相当する平滑性の高い表面を形成し、その表面の平滑性を高める観点から、平滑面の表面粗さの上限は、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。一方、表面粗さを小さくしていくと、グリップ性が落ちるため、グリップ性を高める観点から、平滑面の表面粗さの下限は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。
【0027】
本発明の不織布は、目付が201g/m以上1,000g/m以下であることが重要である。不織布の目付を係る範囲としなければ、天然皮革のような、適度な柔軟性と弾力が得られない。不織布の目付を好ましくは220g/m以上、より好ましくは240g/m以上とすることで、弾力感がさらに向上する。また、目付を好ましくは700g/m以下、より好ましくは500g/m以下とすることで、柔軟性にさらに優れる不織布となる。
【0028】
なお、本発明における不織布の目付(g/m)は、JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に基づき求めるものである。
【0029】
不織布から20cm×25cmの試験片を切り出し、不織布の幅1m当たり3枚採取して標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、測定した値の単純な算術平均から1m当たりの質量(g/m)を算出し、小数点第1位を四捨五入する。
【0030】
本発明の不織布は、連通孔径指数が50μm~300μmであることが重要である。ここでいう、連通孔径指数とは、通気度測定から以下の式より求めた、不織布中の連通孔の大きさと連通孔の数を掛け合わせた数値に相当し、不織布中の孔径に関する指標値である。なお、通気度測定は、JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の「8.26.1 通気性 A法(フラジール形法)」に基づき求めるものである。不織布の異なる5か所から20cm×20cmの試験片を1枚ずつ切り出し、フラジール形通気性試験機に取り付けて、125Paの圧力損失となるように、吸い込みファンと空気孔を調整し、試験片を通過する空気量(cm/cm・秒)を測定する。5回の試験結果の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入する。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、D:連通孔径指数(μm)、L:厚さ(mm)、Q:通気度(cm/cm・秒)、ΔP:通気度測定時の圧力損失(Pa)を表す。
【0033】
連通孔径指数を50μm以上としなければ、靴などの履物に使用した際に、通気性が十分確保されずに、蒸れを軽減することができず、また、適度な弾力感が得られない。不織布の弾力感をさらに向上させる観点で、連通孔径指数は、80μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
【0034】
一方、連通孔径指数を300μm以下としなければ、不織布に適度な柔軟性を付与することができない。不織布により優れた柔軟性を付与する観点から、連通孔径指数は、250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0035】
本発明の不織布において、平均繊維径が0.1~9μmであることが好ましい。平均繊維径を上記好ましい範囲とすると、不織布の形態が安定し、取り扱い性が良好となる一方、不織布の柔軟性が損なわれることなく、天然皮革のような良好な感触を達成することができる。不織布の柔軟性を高める観点から、平均繊維径の上限は、より好ましくは5.0μm以下である。一方、不織布の形態安定性を担保する観点から、平均繊維径の下限は0.5μm以上であることが好ましい。
【0036】
なお、本発明の不織布における平均繊維径(μm)は、以下のとおり求めたものを指す。
【0037】
不織布から2cm×2cmの範囲を切り出し、走査型電子顕微鏡を用いて不織布を構成する繊維の断面の顕微鏡観察を行い、構成繊維100本の直径を測定し、それらの算術平均を求め、小数点第2位を四捨五入する。
【0038】
本発明の不織布は、前記した表面粗さが0.5μm~20μmの平滑面において、そのスキューネスが-3.00~0.00の範囲にあることが好ましい。ここでいうスキューネスとは、ISO 25178-2:2012「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状-第2部:用語、定義及び表面性状パラメータ」に基づいて測定されたスキューネス(Ssk)を指す。本発明における不織布の平滑面におけるスキューネスは、以下のとおり求める。
【0039】
3D顕微鏡(例えば、株式会社キーエンス製「VR-3050」など)を使用し、倍率12倍で画像全体に不織布が写るようにして不織布表面の高さ像を撮影し、3D顕微鏡に搭載されているソフトウェアにより、画像の各ピクセル(x,y)における基準面からの高さT(x,y)を算出し、すべてのピクセルにおける高さT(x,y)から、以下の式より、二乗平均平方根高さ(Sq)を算出した。
【0040】
【数2】
【0041】
ここで、Sq:二乗平均平方根高さ、A:総ピクセルを表す。
【0042】
次いで、3D顕微鏡に搭載されているソフトウェアにて、以下の式から、スキューネス(Ssk)を算出し、小数点第4位を四捨五入した。
【0043】
【数3】
【0044】
ここで、Ssk:スキューネス、A:総ピクセル数を表す。
【0045】
スキューネスは、表面の高さ分布の対称性を表しており、表面において、基準面から高い部分を山、低い部分を谷とすると、Ssk=0の場合、高さ分布が上下に対称であり、SsK>0の場合、山が多い表面となる。Ssk<0の場合は、谷が多い表面となり、一般に、突起部の少ない表面となる。本発明の不織布において、平滑面のスキューネスが係る範囲にあることで、ざらつきの少ない、滑らかな触感につながる。
【0046】
平滑性を高める観点から、スキューネスの上限は、-0.05以下であることが、より好ましい。一方、平滑面のグリップ性を向上させる観点から、スキューネスの下限は、-2.00以上であることがより好ましい。
【0047】
本発明の不織布は、メルトブロー法、スパンボンド法、エレクトロスピニング法、湿式抄紙法などの方法で得られる。中でも、複雑な工程を必要とせず、柔軟性に優れる不織布が容易に得られるため、メルトブロー法にて得られるメルトブロー不織布であることが好ましい。
【0048】
不織布に天然皮革のような感触を与える手段としては、不織布を構成する繊維の平均繊維径を小さくすることで柔軟性を向上させる方法などが挙げられる。不織布を構成する繊維の平均繊維径を小さくする方法としては、例えば、メルトブロー法によって製造することが挙げられ、通常、吐出量を低減させたり、噴射する熱風の流量を増大させたりすることで繊維の細径化が図られる。
【0049】
本発明の不織布は、極細化を進める観点から、メルトフローレート(MFR)が50g/10分以上2,500g/10分以下であることが好ましい。不織布のメルトフローレートを好ましくは50g/10分以上、より好ましくは150g/10分以上とすることで、不織布を構成する繊維の細径化が容易となる。一方、不織布のメルトフローレートを好ましくは2,500g/10分以下、より好ましくは2,300g/10分以下とすることで、不織布の強度を向上させることができる。
【0050】
なお、本発明におけるメルトフローレート(g/10分)は、JIS K 7210-1:2014「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方-第1部:標準的試験方法」の「8 A法:質量測定法」に基づいて、温度230℃、荷重2.16kg、測定時間10分の条件下で測定した値を指す。
【0051】
次に、本発明の不織布を製造する好ましい態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
本発明の不織布の製造方法は、メルトブロー法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング法などの公知の製造法から選ぶことができる。中でも、複雑な工程を必要とせず、極細繊維からなる不織布、好ましくは、平均繊維径が0.1μm~9.0μmの不織布を容易に紡糸・製造できる点で、メルトブロー法を用いることが好ましい。
【0053】
メルトブロー法は、所定の孔径を有するメルトブロー用口金から原料を吐出させることで糸条を形成し、その吐出部に対して一定の角度から熱風を噴射することで糸条を細径化し、細径化した糸条を捕集部に堆積させることで不織布を形成する方法である。また、目付や厚さを制御するために、複数の吐出部を設けたり、不織布上に不空数回糸条を堆積させたりするなどして、不織布層を積層することやライン速度を調整することが可能である。
【0054】
使用する原料は、事前混練、ドライブレンド、もしくは別々に計量しながら押出機に投入してもよい。例えば、溶融粘度の異なる2種類の、プロピレンの単独共重合体を別々に計量して押出機に投入する方法などが挙げられる。
【0055】
本発明における口金は、複数の吐出孔を有することが好ましい。吐出孔の形状としては丸形、三角形、四角形、Y字形などを使用することができる。中でも、丸形の吐出孔は紡糸工程における工程安定性に優れるため、好ましい。丸形の吐出孔の場合、その直径は0.1mm~1.0mmであることが好ましい。吐出孔の直径を好ましくは0.1mm以上とすることで孔詰まりが生じにくくなり、生産性が向上する。また、吐出孔の直径を好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.7mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下とすることで、口金内部での樹脂の分配性が向上し、均一な不織布を製造することができる。
【0056】
本発明における紡糸温度は、原料である樹脂の融解温度より30℃高い温度以上から原料である樹脂の融点より140℃高い温度以下の範囲であることが好ましい。すなわち、プロピレン系樹脂を使用する場合、おおよそ190℃~300℃が好ましい範囲と言える。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、溶融した樹脂の粘度が低下し、不織布を構成する繊維が細径化しやすくなる。
【0057】
本発明における口金から捕集部までの距離は、10cm~100cmであることが好ましい。口金から捕集部までの距離を好ましくは10cm以上、より好ましくは15cm以上、さらに好ましくは20cm以上とすることで、紡糸工程における工程安定性が向上する。また、好ましくは100cm以下、より好ましくは80cm以下、さらに好ましくは60cm以下とすることで、不織布の強度が向上する。
【0058】
本発明における不織布は、加熱圧着により、銀面様の構造を形成する。加熱圧着には、加熱した平板プレートで挟み込む熱プレス法や、加熱ロールを押し当てて、連続的に銀面様の構造を形成する手法などが挙げられるが、加熱圧着が可能な方法であれば、これらに限定されるものではない。なお、加熱圧着は、不織布の両面あるいは片面のみのいずれに対して行ってもよい。
【0059】
また、加熱温度は、不織布の軟化点温度以上とし、不織布の構成繊維が均一に軟化させることで、平滑性の高い融着面が得られる。ただし、融点以上の温度や不織布全体が融着してしまい、不織布特有の柔軟性が失われてしまう。
本発明の不織布の原料に用いられる樹脂には、本発明の目的とする滑らかな触感やグリップ性を損なわない範囲であれば、意匠性や耐久性を高めるなどの観点から、酸化チタン、シリカ、酸化バリウム、炭酸カルシウムなどの無機物、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【実施例0060】
次に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例および比較例については、下記の評価を行った。
【0061】
(1)目付
JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に基づいて測定を行った。不織布から20cm×25cmの試験片を切り出し、不織布の幅1m当たり3枚採取して標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、測定した値の単純な算術平均から1m当たりの質量(g/m)を算出し、小数点第1位を四捨五入した。
【0062】
(2)厚さ
不織布の厚さは、株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK 型式H」(測定子形状10mmφ、目量0.01mm、測定力1.8N以下)を用い、mm単位で測定した。測定は1サンプルにつき無作為の5ヶ所で行い、その平均値の小数点第3位を四捨五入した。
【0063】
(3)連通孔径指数
通気度をJIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の「8.26.1通気性A法(フラジール形法)」に基づいて測定した。不織布の異なる5か所から20cm×20cmの試験片を1枚ずつ切り出し、TEXTEST社製のフラジール形通気性試験機「FX3340」に取り付けて、125Paの圧力となるように、吸い込みファンと空気孔を調整し、試験片を通過する空気量(cm/cm・秒)を測定した。得られた5回の試験結果の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入した。
不織布の通気度と厚さから以下の式により算出した値を連通孔径指数として評価した。
【0064】
【数4】
【0065】
ここで、D:連通孔径指数(μm)、L:厚さ(mm)、Q:通気度(cm/cm・秒)、ΔP:通気度測定時の圧力損失(Pa)を表す。
【0066】
(4)プロピレン単位、エチレン単位のモル分率
不織布から採取した約50mgのプロピレン系樹脂繊維に1mLのオルトジクロロベンゼン/ベンゼン-d6の混合溶媒(オルトジクロロベンゼンとベンゼン-d6の容積比=9:1)を加え、得られた溶液について、Bruker社製の13C-NMR「DRX-500」を使用し、以下の条件にて、測定を行った。
・観測核:13C核
・観測周波数:125.8MHz
・パルス幅:5.0μs(45°pulse)
・パルス待ち時間:5.0秒
・積算回数:25,000回以上
・測定温度:135℃
・測定方法:single 13C pulse with inverse gated H decoupling
プロピレンではないα-オレフィン単位に起因するピークの面積とそれ以外の繰り返し単位に起因するピークの面積をNMRスペクトルから算出し、プロピレンではないα-オレフィン単位とそれ以外の繰り返し単位のピーク面積比よりプロピレンでないα-オレフィン単位のモル分率を算出し、小数点第1位を四捨五入した。
【0067】
(5)平均繊維径
不織布から2cm×2cmの範囲を切り出し、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡「S-5500」を使用して、不織布を構成する繊維の断面の顕微鏡観察を行い、構成繊維100本の直径を測定し、それらの算術平均を求め、小数第2位を四捨五入した。
【0068】
(6)表面粗さ(Sa)およびスキューネス(Ssk)
株式会社キーエンス製の3D顕微鏡「VR-3050」を使用し、ISO 25178-2:2012「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状-第2部:用語、定義及び表面性状パラメータ」に基づいて、表面粗さとして、算術平均高さSaおよびスキューネスSskを測定した。
【0069】
算術平均高さSaは、倍率12倍で画像全体に不織布が写るようにして不織布表面の高さ像を撮影し、画像の各ピクセル(x,y)における基準面からの高さの絶対値|T(x,y)|を算出する。すべてのピクセルの|T(x,y)|について算術平均を求め、小数点第2位を四捨五入した。
【0070】
なお、表面粗さは、不織布の2方向の表面それぞれについて、測定し、算術平均高さSaの値が小さい方の面を平滑面とし、その値を平滑面の表面粗さとして採用した。
【0071】
また、不織布の平滑面におけるスキューネスSskは以下の方法で算出した。3D顕微鏡に搭載されているソフトウェアにより、画像の各ピクセル(x,y)における基準面からの高さT(x,y)を算出し、すべてのピクセルにおける高さT(x,y)から、以下の式より、二乗平均平方根高さ(Sq)を算出した。
【0072】
【数5】
【0073】
ここで、Sq:二乗平均平方根高さ、A:総ピクセルを表す。
【0074】
次いで、3D顕微鏡に搭載されているソフトウェアにて、以下の式から、スキューネス(Ssk)を算出し、小数点第4位を四捨五入した。
【0075】
【数6】
【0076】
ここで、Ssk:スキューネス、A:総ピクセル数を表す。
【0077】
(7)動摩擦係数
カトーテック株式会社製の摩擦感テスター「KES-SE」を使用し、KES法による標準試験で、不織布の平滑面において、10mm×30mmの範囲を、ピアノ線が巻かれた端子に25gの荷重をかけて速さ1mm/秒で滑らせたときの動摩擦係数(MIU)と動摩擦係数の変動(MMD)を測定した。不織布のMD方向とCD方向についてそれぞれ3箇所、合計6箇所測定し、その算術平均を求め、MIUについては、小数点第3位を四捨五入し、MMDについては、小数点第5位を四捨五入した。
【0078】
なお、MIUの値が大きいほど、滑りにくいことを表し、MIUは、グリップ性の指標となる。また、MMDの値が小さいほど、ざらつき感が少ないことを意味しており、MMDは平滑性の指標となる。
【0079】
(8)剛軟度
JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」に基づいて、株式会社東洋精機製作所製のガーレー式剛軟度試験機(No.67-26026-5)を用いて剛軟度(mg)を測定した。
【0080】
(9)風合い評価(弾力感)
健康状態の良好な成人男性と成人女性各5名ずつ、計10名を評価者として、不織布の平滑面に指を押し当てたときの触感を、官能評価によって、以下の4段階で評価し、最も多かった評価結果を弾力感とした
優:弾力に優れた触感を有する
良:弾力を良好に感じ取られる触感を有する
可:弾力を十分に感じ取られる触感を有する
不可:弾力に乏しい触感を有する。
【0081】
[プロピレン系樹脂]
実施例1~29および比較例1~8において、プロピレン系樹脂の原料として使用した樹脂は以下の通りである。
【0082】
・高結晶性プロピレン樹脂(表1~5において「PP」と表記):株式会社プライムポリマー製“S10CL”(商品名)
・プロピレン-エチレン共重合体1(表1~5において「PEP1」と表記):エクソンモービル社製“Vistamaxx”(登録商標)6202(エチレン含有率20モル%)
・プロピレン-エチレン共重合体2(表1において「PEP2」と表記):エチレン含有率25モル%
・プロピレン-エチレン共重合体3(表1において「PEP3」と表記):エチレン含有率30モル%
・プロピレン-エチレン共重合体4(表1において「PEP4」と表記):エチレン含有率40モル%
[実施例1]
高結晶性プロピレン樹脂(表1において「樹脂1」と表記)とプロピレン-エチレン共重合体1(表1において「樹脂2」と表記)の2種類の樹脂を、高結晶性プロピレン:プロピレン-エチレン共重合体1=30:70の質量比でドライブレンドして、ブレンドチップを得た。このブレンドチップを押出機に投入して溶融・混練しながらギアポンプへ供給し、ギアポンプで計量したプロピレン系樹脂を、直径0.4mmの吐出孔が一直線上に配置された口金に供給し、メルトブロー法により、単孔吐出量0.1g/分、口金温度280℃、熱風圧0.16MPaの条件で紡糸し、吐出孔から20cm下方に設けたコンベアで糸条を捕集して巻き取り機でロール状に巻き取ることで、不織布を得た。
【0083】
次いで、得られた不織布ロールを裁断して、10枚の不織布を積層して、熱プレス機で温度140℃、1.96kPaの圧力で30秒間プレスし、不織布の片面を融着一体化させ、融着面を形成した。
【0084】
得られた不織布は、エチレンのモル分率が、15%であり、表面粗さが4.2μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.50、目付254g/mで、厚さは0.51mmであった。通気度は、0.375cm/(cm・秒)であり、算出した連通孔径指数は184μm、平均繊維径は、3.0μmであった。
【0085】
この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.47とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0146であり、平滑性にも優れたものであった。さらに、剛軟度は、131mgと柔軟性と形態安定性にも優れ、風合い評価の結果から、弾力に優れたものであった。
【0086】
評価結果を表1に示す。
【0087】
[実施例2~4]
高結晶性プロピレン樹脂(表1において「樹脂1」の欄に記載)とプロピレン-エチレン共重合体1(表1において「樹脂2」の欄に記載)の2種類の樹脂の質量比を、高結晶性プロピレン:プロピレン-エチレン共重合体1=95:5(実施例2)、85:15(実施例3)、77:23(実施例4)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により不織布を得た。
【0088】
得られた不織布の評価結果を表1に併せて示す。
【0089】
実施例2の不織布は、エチレンのモル分率が1%であり、表面粗さが3.5μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.63であった。また、目付は251g/m、連通孔径指数は189μm、平均繊維径は3.3μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.40とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0129であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は468mgと十分な柔軟性と優れた形態安定性を有し、風合い評価において、弾力を十分に感じ取れるものであった。
【0090】
実施例3の不織布は、エチレンのモル分率が3%であり、表面粗さが3.7μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.58であった。また、目付は250g/m、連通孔径指数は189μm、平均繊維径は3.2μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.42とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0136であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は383mgと良好な柔軟性と優れた形態安定性を有し、風合い評価において、弾力を良好に感じ取れるものであった。
【0091】
実施例4の不織布は、エチレンのモル分率が5%であり、表面粗さが3.8μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.57であった。また、目付は253g/m、連通孔径指数は181μm、平均繊維径は3.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.43とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0137であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は256mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0092】
[実施例5~7]
プロピレン系樹脂を、プロピレン-エチレン共重合体1(表1において「樹脂2」の欄に記載)のみ(実施例5)、プロピレン-エチレン共重合体2(表1において「樹脂2」の欄に記載)のみ(実施例6)、プロピレン-エチレン共重合体3(表1において「樹脂2」の欄に記載)のみ(実施例7)としたこと以外は、実施例1と同様の方法により不織布を得た。
【0093】
得られた不織布の評価結果を表1に併せて示す。
【0094】
実施例5の不織布は、エチレンのモル分率が20%であり、表面粗さが4.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.52であった。また、目付は253g/m、連通孔径指数は183μm、平均繊維径は3.1μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.45とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0143であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は108mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0095】
実施例6の不織布は、エチレンのモル分率が25%であり、表面粗さが3.8μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.55であった。また、目付は256g/m、連通孔径指数は184μm、平均繊維径は3.1μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.43とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0140であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は84mgと優れた柔軟性と良好な形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0096】
実施例7の不織布は、エチレンのモル分率が30%であり、表面粗さが4.1μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.53であった。また、目付は251g/m、連通孔径指数は186μm、平均繊維径は3.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.46とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0142であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は63mgと優れた柔軟性と十分な形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0097】
[比較例1]
プロピレン系樹脂として、高結晶性プロピレン樹脂(表1において「樹脂1」の欄に記載)のみを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により不織布を得た。
【0098】
得られた不織布の評価結果を表1に併せて示す。
【0099】
比較例1の不織布は、表面粗さが3.5μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.65であった。また、目付は252g/m、連通孔径指数は183μm、平均繊維径は3.3μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.40とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0127であり、平滑性にも優れたものであった。しかし、平滑面において構成繊維同士が密着して、樹脂状に融着しており、剛軟度は506mgと柔軟性に乏しく、風合い評価においても、弾力に乏しいものであった。
【0100】
[比較例2]
プロピレン系樹脂を、プロピレン-エチレン共重合体4(表1において「樹脂2」の欄に記載)のみとしたこと以外は、実施例1と同様の方法により不織布を得た。
【0101】
得られた不織布の評価結果を表1に併せて示す。
【0102】
比較例2の不織布は、エチレンのモル分率が40%であり、表面粗さが4.2μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.51であった。また、目付は255g/m、連通孔径指数は186μm、平均繊維径は3.2μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.47とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0145であり、平滑性にも優れたものであった。また、風合い評価において、弾力にも優れていたが、剛軟度が42mgと形態安定性に乏しく、取り扱いが困難なものであった。
【0103】
【表1】
【0104】
[実施例8~13、比較例3および4]
熱プレス機での加工条件について、温度80℃、0.98kPa(実施例8)、温度100℃、0.98kPa(実施例9)、温度120℃、0.98kPa(実施例10)、温度140℃、4.90kPa(実施例11)、温度140℃、3.92kPa(実施例12)、温度140℃、2.94kPa(実施例13)、温度140℃、19.6kPa(比較例3)、温度70℃、0.98kPa(比較例4)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により不織布を得た。
【0105】
得られた不織布の評価結果を表2に併せて示す。
【0106】
実施例8の不織布は、表面粗さが20.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.65であった。また、目付は253g/m、連通孔径指数は192μm、平均繊維径は3.2μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.83とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0483と、平滑性は十分であった。また、剛軟度は101mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0107】
実施例9の不織布は、表面粗さが15.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.61であった。また、目付は252g/m、連通孔径指数は191μm、平均繊維径は3.2μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.79とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0347と、平滑性は良好であった。また、剛軟度は107mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった
実施例10の不織布は、表面粗さが10.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.62であった。また、目付は256g/m、連通孔径指数は188μm、平均繊維径は3.3μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.76とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0198であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は116mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0108】
実施例11の不織布は、表面粗さが0.5μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.53であった。また、目付は251g/m、連通孔径指数は164μm、平均繊維径は3.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.16と十分なグリップ性を有し、動摩擦係数の変動が0.0057と、平滑性に優れたものであった。また、剛軟度は187mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0109】
実施例12の不織布は、表面粗さが1.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.51であった。また、目付は253g/m、連通孔径指数は168μm、平均繊維径は3.1μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.22と良好なグリップ性を有し、動摩擦係数の変動が0.0096と、平滑性に優れたものであった。また、剛軟度は170mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0110】
実施例13の不織布は、表面粗さが2.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.56であった。また、目付は251g/m、連通孔径指数は176μm、平均繊維径は3.1μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.34とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0096であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は152mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0111】
比較例3の不織布は、表面粗さが0.4μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.53であった。また、目付は250g/m、連通孔径指数は164μm、平均繊維径は3.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数の変動が0.0048と、平滑性に優れるものであったが、動摩擦係数が0.11とグリップ性に乏しいものであった。
【0112】
比較例4の不織布は、表面粗さが24.0μmの面を有し、その面におけるスキューネスは-0.53であった。また、目付は257g/m、連通孔径指数は198μm、平均繊維径は3.3μmであった。この不織布の面は、動摩擦係数が0.84とグリップ性に優れていたが、摩擦係数の変動が0.0546と、平滑性に乏しいものであった。
【0113】
【表2】
【0114】
[実施例14~19、比較例5および6]
不織布の積層枚数を、40枚(実施例14)、28枚(実施例15)、20枚(実施例16)、8枚(実施例17)、9枚(実施例18)、10枚(実施例19)、48枚(比較例5)、5枚(比較例6)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により不織布を得た。
【0115】
得られた不織布の評価結果を表3に併せて示す。
【0116】
実施例14の不織布は、表面粗さが4.2μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.50であった。また、目付は1,000g/m、連通孔径指数は180μm、平均繊維径は3.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.47とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0146であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は522mgと十分な柔軟性と優れた形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0117】
実施例15の不織布は、表面粗さが4.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.52であった。また、目付は700g/m、連通孔径指数は181μm、平均繊維径は3.2μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.45とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0143であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は413mgと良好な柔軟性と優れた形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0118】
実施例16の不織布は、表面粗さが4.1μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.51であった。また、目付は500g/m、連通孔径指数は182μm、平均繊維径は3.1μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.46とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0145であり、平滑性にも優れたものであった。さらに、剛軟度は248mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0119】
実施例17の不織布は、表面粗さが3.9μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.54であった。また、目付は205g/m、連通孔径指数は188μm、平均繊維径は3.1μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.44とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0141であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は108mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力を十分に感じ取れるものであった。
【0120】
実施例18の不織布は、表面粗さが4.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.52であった。また、目付は220g/m、連通孔径指数は187μm、平均繊維径は3.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.45とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0143であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は115mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力を良好に感じ取れるものであった。
【0121】
実施例19の不織布は、表面粗さが4.2μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.51であった。また、目付は240g/m、連通孔径指数は185μm、平均繊維径は3.2μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.47とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0145であり、平滑性にも優れたものであった。さらに、剛軟度は123mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れたものであった。
【0122】
比較例5の不織布は、表面粗さが4.1μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.53であった。また、目付は1,200g/m、連通孔径指数は178μm、平均繊維径は3.1μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.46とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0142であり、平滑性にも優れたものであった。しかし、剛軟度は760mgと柔軟性に乏しいものであった。
【0123】
比較例6の不織布は、表面粗さが4.2μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.50であった。また、目付は126g/m、連通孔径指数は192μm、平均繊維径は3.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.47とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0146であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は58mgと優れた柔軟性と十分な形態安定性を有していたが、風合い評価において、弾力に乏しいものであった。
【0124】
【表3】
【0125】
[実施例20~22、比較例7]
メルトブロー工程における条件として、口金温度を300℃、熱風圧を0.32MPaとし、ポリマーの単孔吐出量を0.02g/分(実施例20)、0.03g/分(実施例21)、0.05g/分(実施例22)、0.01g/分(比較例7)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により不織布を得た。
【0126】
得られた不織布の評価結果を表4に併せて示す。
【0127】
実施例20の不織布は、表面粗さが4.1μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.53であった。また、目付は250g/m、連通孔径指数は60μm、平均繊維径は0.4μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.46とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0142であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は52mgと優れたな柔軟性と十分な形態安定性を有し、風合い評価において、弾力を十分に感じ取れるものであった。
【0128】
実施例21の不織布は、表面粗さが4.2μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.51であった。また、目付は252g/m、連通孔径指数は80μm、平均繊維径は0.5μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.47とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0145であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は55mgと優れた柔軟性と十分な形態安定性を有し、風合い評価において、弾力を良好に感じ取れるものであった。
【0129】
実施例22の不織布は、表面粗さが4.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.51であった。また、目付は250g/m、連通孔径指数は100μm、平均繊維径は1.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.45とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0145であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は72mgと優れた柔軟性と十分な形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れるものであった。
【0130】
比較例7の不織布は、表面粗さが3.9μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.52であった。また、目付は250g/m、連通孔径指数は49μm、平均繊維径は0.3μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.44とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0143であり、平滑性にも優れたものであった。しかし、剛軟度は36mgと形態安定性に乏しく、取り扱いが困難なものであり、風合い評価において、弾力にも乏しいものであった。
[実施例23~25、比較例8]
メルトブロー工程における条件として、ポリマーの単孔吐出量を0.2g/分(実施例23)、0.3g/分(実施例24)、0.7g/分(実施例25)、0.8g/分(比較例8)に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により不織布を得た。
【0131】
得られた不織布の評価結果を表4に併せて示す。
【0132】
実施例23の不織布は、表面粗さが4.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.52であった。また、目付は250g/m、連通孔径指数は200μm、平均繊維径は4.3μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.45とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0143であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は211mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れるものであった。
【0133】
実施例24の不織布は、表面粗さが4.1μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.52であった。また、目付は251g/m、連通孔径指数は250μm、平均繊維径は5.2μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.46とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0143であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は253mgと良好な柔軟性と優れた形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れるものであった。
【0134】
実施例25の不織布は、表面粗さが4.2μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.53であった。また、目付は252g/m、連通孔径指数は300μm、平均繊維径は8.7μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.47とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0142であり、平滑性にも優れたものであった。また、剛軟度は508mgと十分な柔軟性と優れた形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れるものであった。
【0135】
比較例8の不織布は、表面粗さが4.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.51であった。また、目付は251g/m、連通孔径指数は320μm、平均繊維径は9.4μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.45とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0145であり、平滑性にも優れたものであった。しかし、剛軟度は716mgと柔軟性に乏しいものであった。
【0136】
【表4】
【0137】
[実施例26~29]
熱プレス機で使用するプレートを、表面のスキューネスが-3.00(実施例26)、-2.00(実施例27)、-0.05(実施例28)、0.00(実施例29)のプレートに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により不織布を得た。
【0138】
得られた不織布の評価結果を表5に併せて示す。
【0139】
実施例26の不織布は、表面粗さが4.1μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-3.00であった。また、目付は254g/m、連通孔径指数は184μm、平均繊維径は3.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.23と十分なグリップ性を有し、動摩擦係数の変動が0.0036であり、平滑性に優れたものであった。また、剛軟度は133mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れるものであった。
【0140】
実施例27の不織布は、表面粗さが4.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-2.00であった。また、目付は250g/m、連通孔径指数は185μm、平均繊維径は3.0μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.29と良好なグリップ性を有し、動摩擦係数の変動が0.0064であり、平滑性に優れたものであった。また、剛軟度は136mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れるものであった。
【0141】
実施例28の不織布は、表面粗さが4.0μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは-0.05であった。また、目付は250g/m、連通孔径指数は184μm、平均繊維径は3.1μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.55とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0247と、平滑性は良好であった。また、剛軟度は130mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れるものであった。
【0142】
実施例29の不織布は、表面粗さが4.2μmの平滑面を有し、その平滑面におけるスキューネスは0.00であった。また、目付は250g/m、連通孔径指数は183μm、平均繊維径は3.2μmであった。この不織布の平滑面は、動摩擦係数が0.63とグリップ性に優れ、動摩擦係数の変動が0.0371と、平滑性は十分であった。また、剛軟度は132mgと優れた柔軟性と形態安定性を有し、風合い評価において、弾力に優れるものであった。
【0143】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の不織布は、良好な風合いを有し、滑らかな触感とグリップ性に優れることから、特に、人工皮革、家具、自動車内装材、手袋等に好適に用いることができる。