(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079360
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】磁気検出器
(51)【国際特許分類】
G01R 33/04 20060101AFI20230601BHJP
H10N 50/00 20230101ALI20230601BHJP
【FI】
G01R33/04
H01L43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192799
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松岡 貴弘
【テーマコード(参考)】
2G017
5F092
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AC09
2G017AD43
2G017AD46
2G017AD47
2G017AD48
2G017BA03
2G017BA08
2G017BA10
2G017BA13
5F092AA01
5F092AA15
5F092AB01
5F092AC01
5F092BD03
5F092BD04
5F092EA01
5F092EA08
(57)【要約】
【課題】非磁性基板上の磁性薄膜の反磁界を低減し、小型で検出感度の高い磁気検出器を提供する。
【解決手段】非磁性基板1上に配置される線分状の磁性薄膜10と、磁性薄膜10と異なる層に配置され、磁性薄膜10を励磁する励磁用薄膜コイル20と、磁性薄膜10と異なる層に配置され、被測定磁界によって磁性薄膜10内に現れる磁束変化を検出する検出用薄膜コイル21とを備え、励磁用薄膜コイル20に通電する高周波電流によって磁性薄膜10に励磁磁界を印加し、磁性薄膜10に印加される被測定磁界量を高周波電流と同期した電気信号として検出用薄膜コイル21で検出することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板上に配置される線分状の磁性薄膜と、
前記磁性薄膜と異なる層に配置され、前記磁性薄膜を励磁する励磁用薄膜コイルと、
前記磁性薄膜と異なる層に配置され、被測定磁界によって前記磁性薄膜内に現れる磁束変化を検出する検出用薄膜コイルと
を備え、
前記励磁用薄膜コイルに通電する高周波電流によって前記磁性薄膜に励磁磁界を印加し、
前記磁性薄膜に印加される被測定磁界量を前記高周波電流と同期した電気信号として前記検出用薄膜コイルで検出することを特徴とする磁気検出器。
【請求項2】
前記励磁用薄膜コイルの中心と前記磁性薄膜の長手方向の端部とが、前記非磁性基板の面内方向で一致する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気検出器。
【請求項3】
前記検出用薄膜コイルの中心と前記磁性薄膜の長手方向の端部とが、前記非磁性基板の面内方向で一致する位置に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気検出器。
【請求項4】
前記励磁用薄膜コイルと前記検出用薄膜コイルとが同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気検出器。
【請求項5】
前記励磁用薄膜コイルは、その中心が前記磁性薄膜の一端部側となるように渦巻状に形成された第1薄膜コイルと、その中心が前記磁性薄膜の他端部側となるように前記第1薄膜コイルと逆巻きの渦巻状に形成された第2薄膜コイルとで形成され、
前記検出用薄膜コイルは、その中心が前記磁性薄膜の前記一端部側となるように渦巻状に形成された第3薄膜コイルと、その中心が前記磁性薄膜の前記他端部側となるように前記第3薄膜コイルと逆巻きの渦巻状に形成された第4薄膜コイルとで形成され、
前記前記非磁性基板上に、前記励磁用薄膜コイルと前記検出用薄膜コイルと前記磁性薄膜とが、それぞれが異なる層として積層して設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気検出器。
【請求項6】
前記磁性薄膜は、下側磁性薄膜と上側磁性薄膜で構成されており、前記下側磁性薄膜と前記上側磁性薄膜の間の層に、前記励磁用薄膜コイルと前記検出用薄膜コイルとが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の磁気検出器。
【請求項7】
前記磁性薄膜は前記非磁性基板の一方面上に設けられ、前記励磁用薄膜コイルと前記検出用薄膜コイルのうちの一方が前記一方面上に設けられ、前記励磁用薄膜コイルと前記検出用薄膜コイルのうちの他方が前記一方面と対向する前記非磁性基板の他方面上に設けられたことを特徴とする請求項5に記載の磁気検出器。
【請求項8】
前記励磁用薄膜コイルと前記検出用薄膜コイルとは同一のコイルであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の磁気検出器。
【請求項9】
前記検出用薄膜コイルの一端部は基準電位に接続され、
前記検出用薄膜コイルの他端部は、前記磁性薄膜に印加される前記被測定磁界をキャンセルする負帰還信号を印加する負帰還ドライバと帯域制限部とに接続されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の磁気検出器。
【請求項10】
複数の前記磁性薄膜が所定の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の磁気検出器。
【請求項11】
前記磁性薄膜に印加される前記被測定磁界をキャンセルする前記負帰還信号を生成する負帰還コイルがその周囲に巻回されていることを特徴とする請求項9に記載の磁気検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非磁性体基板上に形成された磁性薄膜を用いた磁気検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
磁界量を検出する素子として、平行フラックスゲート型磁気検出器が知られている。平行フラックスゲート型磁気検出器は、検出感度が高く、方位センサや電流が発生させる磁界強度を測定する用途などで用いられている。
【0003】
平行フラックスゲート型磁気検出器は、磁性体コアに励磁コイルと検出コイルが巻回されている。励磁コイルに高周波電流を通電すると、磁性体コアに励磁磁界が印加される。この励磁磁界により磁性体コアは飽和して、高周波電流の周期に同期して磁化方向の反転を繰り返すことになる。
【0004】
このとき、被測定磁界が磁性体コアに印加されると、励磁磁界に被測定磁界が加算されるため、飽和点のずれが発生する。このときの変化量を検出コイルで電気信号に変換して信号処理をすると、被測定磁界の大きさを得ることができる。
【0005】
特許文献1には、この平行フラックスゲート型磁気検出器を薄膜で実現する方法が記されている。特許文献1では、薄膜で形成される磁性体コアの面直方向に、磁性体の周囲に巻回された励磁コイルで励磁磁界を印加する。励磁コイルと同様に磁性体の周囲に巻回された検出コイルで、磁性体に印加される検出磁界量を電気信号に変換をする。このとき、磁気検出器の磁界検出方向も面直方向になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、薄膜により薄く形成された磁性体コアに対して面直に励磁磁界を印加するため、厚さ方向の反磁界は非常に大きくなる。平行フラックスゲート型磁気検出器は、磁性体コアを飽和させて駆動する必要があるが、磁性体コアの反磁界が非常に大きくなるため、飽和させることが困難になる。また、磁性体コアの反磁界と、検出感度も低下することになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記を鑑み、本発明の磁気検出器は、
非磁性基板上に配置される線分状の磁性薄膜と、
前記磁性薄膜と異なる層に配置され、前記磁性薄膜を励磁する励磁用薄膜コイルと、
前記磁性薄膜と異なる層に配置され、被測定磁界によって前記磁性薄膜内に現れる磁束変化を検出する検出用薄膜コイルと
を備え、
前記励磁用薄膜コイルに通電する高周波電流によって前記磁性薄膜に励磁磁界を印加し、
前記磁性薄膜に印加される被測定磁界量を前記高周波電流と同期した電気信号として前記検出用薄膜コイルで検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非磁性基板上の磁性薄膜の反磁界を低減でき、小型で検出感度の高い磁気検出器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】励磁コイルと検出コイルが同一平面上にある場合の磁気検出器
【
図2】磁気検出器を駆動、信号処理する回路構成の一例
【
図4】磁気検出器を駆動、信号処理、負帰還制御する回路構成の一例
【
図5】磁性薄膜の上に第一のコイルと第二のコイルが配置される場合の磁気検出器
【
図6】非磁性基板の一面に第一のコイルがあり、その裏面に磁性薄膜と第二のコイルがある磁気検出器
【発明を実施するための形態】
【0011】
「第1実施形態」
以下、本発明の第1実施形態に係る磁気検出器の構成について説明する。
【0012】
図1を参照しながら、励磁コイルと検出コイルが同一平面上にある場合の磁気検出器の構成例について説明する。
【0013】
図1(a)は、磁気検出器の一例を示す斜視図であり、
図1(b)はその分解斜視図である。
図1(c)、(d)は、他の態様に係る形態の分解斜視図を示している。
【0014】
本実施形態に係る磁気検出器100は、磁性体としての磁性薄膜10に印加される被測定磁界量を電気信号に変換する平行フラックスゲート型の磁気検出器である。
【0015】
磁気検出器100は、非磁性基板1上に磁性薄膜10が配置されて、磁性薄膜10の上に絶縁層を介して励磁コイル20と検出コイル21とが同一平面上に配置される。
【0016】
ここで、説明のために、磁性薄膜10の長手方向をX方向、磁性薄膜が配置される面内でX方向と直交する方向をY方向、X方向とY方向とに直交する方向をZ方向と定義して説明を進める。磁気検出器100としての感磁方向は、磁性薄膜10の長手方向となる。
【0017】
(非磁性基板について)
非磁性基板1は、セラミックやガラスなどの非磁性材料からなる。
【0018】
(磁性薄膜について)
磁性薄膜10は、本実施形態においてはFeやCoなどが含有される高透磁率材料の軟磁性体からなるが、これに限られず他の軟磁性材料も適用可能である。
【0019】
磁性薄膜10は、スパッタリング法や蒸着法などで非磁性基板1上に成膜されて、イオンミリング法などで任意の形状に成形される。この方法であれば、多数の磁性薄膜を一度に作成することが可能となる。
【0020】
磁性薄膜10は、線分状に少なくとも1本以上配置される。磁性薄膜10を複数配置することで、検出磁界を感磁する体積が増えるため、検出感度を向上させる効果が得られる。なお、磁性薄膜10を複数本配置する場合であっても、後述するように、励磁コイル20や検出コイル21の中心に複数の磁性薄膜10のうちの一つの端部が位置し、その磁性薄膜に並ぶようにして他の磁性薄膜10が配置されるようにすることが好ましい。
【0021】
平行フラックスゲート型磁気検出器を駆動するには、磁性薄膜10を飽和させる必要がある。そのため、磁性薄膜10は、反磁界が小さくなる形状にすると、励磁磁界を発生させるエネルギー量を低減させることができ、磁気検出器100としての駆動電流を小さくすることができる。なお、磁性薄膜10を飽和させるように駆動する必要があるが、一般に、磁束が出入りする端部付近は飽和し切らない。本発明においても同様であり、磁性薄膜10の大部分(中央部分)が磁気飽和していれば十分であり、その状態を以て磁性薄膜10が飽和しているとみなすことができる。
【0022】
磁性薄膜10を薄く細長くすることで、磁性薄膜10の反磁界を小さくすることができる。磁性薄膜10の厚さは3μm以下、幅は20μm以下にするとより好適である。また、磁性薄膜の長手方向は、より長くするとさらに好適であり、本実施形態においては15μmとしている。
【0023】
なお、磁性薄膜10を楕円形状にするとX方向端部の磁極が分散するため、より反磁界を低減させることができより好適である(
図1(d))。
【0024】
なお、磁性薄膜10をY方向にずらして平行に複数本配置すると、磁性薄膜10の体積を増やすことができて、検出感度をさらに向上させることができる。本実施形態においては
図1の各図に示すように、Y方向の中央部付近に3本を等間隔に配置している。
【0025】
(励磁コイルと検出コイルについて)
励磁コイル20(励磁用薄膜コイル)と検出コイル21(検出用薄膜コイル)は、磁性薄膜10上に絶縁層を介して同一平面上に配置される。
【0026】
励磁コイル20と検出コイル21は、渦巻き状の平面コイルで、銅や金などの非磁性の導電体からなる材料で形成される。これらのコイルは、スパッタリング法や蒸着法などの成膜した後に、イオンミリング法などで任意の形状に成型された薄膜コイルであるとよい。
【0027】
励磁コイル20の中心部と磁性薄膜10の長手方向の一端部は、X方向とY方向の位置(面内方向の位置)が略一致することが好ましく、磁性薄膜10の長手方向の他端部は、検出コイル21の中心部と略一致することが好ましい(
図1(a)、(b))が、他端部は検出コイル21の中心部より先に延びてもよい(
図1(c))。なお、励磁コイル20の中心についても磁性薄膜10の一端部と一致せずに、先に延びるように配置しても良いが、検出コイル21の中心と磁性薄膜10の他端部との距離よりも離れない程度にすることが好ましい。
【0028】
励磁コイル20と検出コイル21は、駆動部や検出部などと電気的に接続をするための電極をそれぞれ備える。具体的には、励磁コイル20への励磁電流(駆動電流)の入力のために電極51、52を備え、検出コイル21からの出力を取り出すために電極53、54を備えている。
【0029】
なお、励磁コイル20で検出コイル21の機能を兼ねてもよい。すなわち、
図2の検出コイル21に対し、帯域制限部との間に駆動部からの駆動電流が印加されるように構成し、帯域制限部にハイパスフィルタを設けることで、後述するように駆動電流としての高周波電流の2倍の周波数で現れる被測定磁界に起因する出力波形(磁束変化)を取り出すことができる。
【0030】
(磁気検出器の駆動と信号処理について)
図2に、磁気検出器100を駆動、信号処理するための回路ブロック図を記す。
図2の回路ブロック図は、アナログ回路やデジタル回路で構成されてもよく、それらの混在した回路で構成されてもよい。
【0031】
励磁コイル20には、駆動部から高周波電流が通電される。この高周波電流の波形は正弦波や三角波が好適であり、矩形波であってもよい。
【0032】
高周波電流の周波数は、数百kHzから20MHz程度の帯域であることが好ましい。
【0033】
励磁コイル20に通電される高周波電流により、励磁コイル20からは励磁磁界が発生する。励磁磁界の発生方向と磁性薄膜10の長手方向(X方向)は直交する方向であるが、透磁率の高い磁性薄膜内部に励磁磁界が通過しやすく、その長手方向に向けて磁界が通過することになる。この励磁磁界により、磁性薄膜は長手方向にプラスマイナス交互に飽和することになる。
【0034】
励磁コイル20と磁性薄膜10は、前述のとおり絶縁層を介して配置される。絶縁層は、数μmと非常に薄いため、励磁コイル20と磁性薄膜10との距離を近接させることができ、励磁コイル20から発生する励磁磁界を、非常に効率よく磁性薄膜10に印加させることができる。
【0035】
その長手方向にプラスマイナス交互に飽和された状態にある磁性薄膜10に対し、長手方向に被測定磁界が印加されると、磁性薄膜10に磁気バイアスがかかることで現れる磁束変化に対応し、検出コイル21から駆動信号の2倍の周波数で被測定磁界量に応じた振幅の信号を得ることができる。この動作について
図3を用いて詳述する。
【0036】
図3は本実施形態の構成である磁気検出器100に対し、ある強度の被測定磁界を磁性薄膜10にバイアスした状態における検出信号を表している。
図3のaで示す励磁信号(励磁電流)と概ね同期したタイミングで出力された2つの検出信号が
図3のbとcにて示されている。bは被測定磁界がない状態における磁性薄膜10からの出力信号であり、cは被測定磁界が印加された状態における磁性薄膜10からの検出信号である。bとcの差分をdに示しており、励磁信号の2倍の周波数で検出部からの検出信号が現れている。
【0037】
磁気検出器100の磁界検出方向(感磁方向)は、磁性薄膜10の長手方向である。このように、平行フラックスゲート方式では、磁界検出方向と磁性薄膜10内の励磁磁界方向は平行の関係になる。
【0038】
検出コイル21の一端は基準電位に接続され、他端は、帯域制限部に接続される(
図2)。帯域制限部から検出部側に流れる信号は、検出コイル21で検出される検出信号が通過できる帯域に設定される。
【0039】
本実施形態においては、検出コイル21と並列に共振用のコンデンサC1を配置している。検出コイル21と共振用のコンデンサC1で共振をとることで、検出信号をより効率良く取り出すことができる。
【0040】
帯域制限部は、抵抗器とコンデンサを用いたバンドパスフィルタ(BPF)やハイパスフィルタ(HPF)からなる。
【0041】
帯域制限部を通過した検出信号は、検出部で整形された後、増幅部に入力されて所定の電位に増幅される。この増幅された信号は、被測定磁界量に応じた出力信号となる。
【0042】
さらに、磁性薄膜10に印加される被測定磁界をキャンセルする負帰還制御をしてもよい。負帰還制御をすることで、磁界検出の直線性や温度安定性、検出範囲を広範囲化などの効果を得ることができる。
【0043】
図4(a)は、検出コイルと負帰還コイルを1つのコイルで実施する構成図を示す。検出部を経て負帰還ドライバとしての増幅部から出力される負帰還信号は、抵抗器Rを経て帯域制限部と検出コイルの接点に入力される。このとき、負帰還信号は帯域制限部を検出部側に通過できない帯域に制限される。負帰還信号の電流量を、抵抗器Rを介して検出することで、被測定磁界量を検出することができる。
【0044】
磁性薄膜10の周囲に負帰還コイル24をさらに巻回してもよい(
図4(b))。負帰還コイル24は、ソレノイド状で磁気検出器100の周囲に巻回されてもよく、薄膜の渦巻き状で検出コイル21などの並行に配置されてもよい。この場合は、検出部を経て負帰還ドライバとしての増幅部から出力される負帰還信号が抵抗器Rを経て、負帰還コイル24の一端に接続される。負帰還コイル24の他端は基準電位に接続される。
【0045】
なお、抵抗器Rは、負帰還コイル24と基準電位の間に接続されてもよく(不図示)、このときは負帰還ドライバとしての増幅部と負帰還コイル24の一端は直接接続される。負帰還信号の電流量を、抵抗器Rを介して検出することで、被測定磁界量を検出することができる。
【0046】
これまで、本実施形態においては、磁性薄膜10が3本あるものを例として説明してきたが、磁性薄膜10の本数はこの限りではなく、また、励磁コイル20および検出コイル21のタン数も図示の限りでなくてもよいのは明らかである。
【0047】
「第2実施形態」
次に
図5を参照しながら、第2実施形態について説明する。本実施形態においては2つの磁性薄膜の間に励磁コイルと検出コイルが配置される構成となっている点が第1実施形態の構成と異なり、共通する構成については同じ符号を用いるとともに説明を省略する。
【0048】
図5(a)に示す磁気検出器100は、非磁性基板1の一面に下側磁性薄膜11、下側コイル22、上側コイル23、上側磁性薄膜12の順でそれぞれ絶縁層を介して積層配置される。
【0049】
なお、この構成に限らず、非磁性基板上に磁性薄膜と下側コイルと同等のものを配置したものを2つ用意して、コイル面同士が接するように貼り合わせる構成としてもよい。
【0050】
また、非磁性基板上に下側磁性薄膜、下側コイル、上側コイルを配置して、他の非磁性基板上に上側磁性薄膜を配置して、これらを貼り合わせる構成としてもよい。貼り合わせは接着剤やはんだなどの手段で実現できる。
【0051】
(下側コイルと上側コイルについて)
下側コイル22は励磁コイルと検出コイルの何れか一方であり、上側コイル23は他方である。
【0052】
下側コイル22と上側コイル23はそれぞれ、同一平面上で互いに逆巻きの第一下側コイル221、第一上側コイル231と、第二下側コイル222、第二上側コイル232からなり、それぞれの第一コイルと第二コイルは電気的に接続されている。
【0053】
下側コイル22と上側コイル23は、銅や金などの非磁性の導電体からなる材料で形成される。これらのコイルは、スパッタリング法や蒸着法などにより成膜した後に、イオンミリング法などで任意の形状に成型されるとよい。
【0054】
下側コイル22と上側コイル23がそれぞれ備える第一コイル同士の中心と第二コイル同士の中心はそれぞれ面内方向で略一致しており、さらに下側磁性薄膜11と上側磁性薄膜12の長手方向の端部ともそれぞれ略一致している。
【0055】
下側コイル22と上側コイル23は、駆動部や検出部などと電気的に接続するための電極61、63と電極62、64をそれぞれ備える。
【0056】
ここで、下側コイル22を励磁コイルとしたときの励磁磁界の分布について
図5(b)を用いて説明する。
図5(b)は説明を簡略化するために、非磁性基板を省略し、下側磁性薄膜と上側磁性薄膜を1本とする。
【0057】
図5(b)に記す方向に電流を通電すると、第一コイルからは下側磁性薄膜に向かう磁界が発生して、第二コイルからは上側磁性薄膜に向かう磁界が発生する。それぞれのコイルで発生する磁界は、下側磁性薄膜と上側磁性薄膜を磁路の一部として
図5(b)において反時計回りの磁界が流れる磁路が形成される。このとき、第一コイルと第二コイルからみる磁気抵抗は小さくなり、小さな励磁のエネルギーで磁性薄膜を飽和させることが可能になるため、励磁電流を小さくすることができる。
【0058】
なお、励磁電流は高周波電流であり、
図5(b)と逆向きの電流をコイルに流すと、磁界の流れも逆向きになる。
【0059】
第二のコイル23が励磁コイルとなる場合も同様の効果が得られる。
【0060】
なお、下側磁性薄膜11と上側磁性薄膜12の一方を設けずに、片方の磁性薄膜のみによって磁路を形成しても良い。
【0061】
「第3実施形態」
次に
図6を参照して、磁性薄膜と表面コイルが配置される非磁性基板の裏面に裏面コイルが配置される構成について説明をする。なお、配置される場所以外は第2実施形態で説明した下側コイル22に裏面コイルが対応し、第二のコイル23に表面コイルが対応しているため、以下の説明においては同じ符号を用いて裏面コイル22、表面コイル23として説明する。
【0062】
非磁性基板1の表面(一方面)上に磁性薄膜10が配置され、磁性薄膜10の上に絶縁層を介して表面コイル23が配置される。さらに、非磁性基板1の磁性薄膜10が配置された表面と対向する裏面(他方面)上に裏面コイル22が配置される。
【0063】
表面コイル23、裏面コイル22は、銅や金などの非磁性の導電体からなる材料で形成される。これらのコイルは、スパッタリング法や蒸着法などにより成膜した後に、イオンミリング法などで任意の形状に成型されるとよい。
【0064】
裏面コイル22は、磁性薄膜10が配置される非磁性基板1とは別個体の非磁性基板上に配置されたものを貼り合わせてもよい。貼り合わせは接着剤やはんだなどの手段で実現できる。
【0065】
裏面コイル22と表面コイル23の何れか一方が励磁コイルで、他方が検出コイルであるが、表面コイル23が検出コイルであれば磁性薄膜との距離が近いため、検出感度を向上させることができて好適である。
【0066】
裏面コイル22と表面コイル23は、駆動部や検出部などと電気的に接続するための電極71、73と電極72、74をそれぞれ備える。
【0067】
以上説明した各実施形態の構成をとることで、一辺数mm程度で磁性薄膜の反磁界を低減できて、小型な磁気検出器を実現できる。
【0068】
本発明は上記各実施形態に限らず、種々の変更が可能である。例えば、
図1において説明した磁気検出器100において、励磁コイル20と検出コイル21とのうちの一方のみを設け、他方の機能を兼用させるようにしても良い。この場合、上述したように、1つの平面コイルに対し駆動部と帯域制限部とを設け、帯域制限部にハイパスフィルタを設けることで、駆動電流としての高周波電流の2倍の周波数で現れる被測定磁界に起因する出力波形を取り出すことができる。
【0069】
また、励磁コイルおよび検出コイルを、一様に渦巻状をなした薄膜コイルで構成する例について説明したが、磁性薄膜の上の層に配置される薄膜コイルであって、磁性薄膜に対し磁界を印加して飽和可能に構成されていれば良く、概ね渦巻状に形成された薄膜コイルであることが好ましいに過ぎない。
【0070】
また、
図1に示すように、一つの渦巻状薄膜コイルで励磁コイルと検出コイルを構成する際に、それらを同一平面上(同層上)に配置する構成について説明したが、これに限られず、励磁コイルと検出コイルを異なる平面上に配置しても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 非磁性基板
10 磁性薄膜
11 下側磁性薄膜
12 上側磁性薄膜
20 励磁コイル
21 検出コイル
22 下側コイル
221 第一下側コイル
222 第二下側コイル
23 上側コイル
231 第一上側コイル
232 第二下側コイル