(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079365
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】固形粉末化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20230601BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20230601BHJP
A61Q 1/08 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q1/12
A61Q1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192807
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】595048544
【氏名又は名称】ちふれホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 眞央
(72)【発明者】
【氏名】水上(菅沼) 由季
(72)【発明者】
【氏名】木藤(菅井) はるみ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC662
4C083AD022
4C083AD072
4C083AD152
4C083AD242
4C083AD492
4C083BB21
4C083CC12
4C083DD17
4C083DD21
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、とれが良好でありつつも、肌に与える透明感が優れた固形粉末化粧料を提供することにある。
【解決手段】
上記目的は、(A)球状シリカと、(B)白色パール顔料と、(C)干渉色が紫色であるパール顔料とを含む、固形粉末化粧料などにより解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)球状シリカと、
(B)白色パール顔料と、
(C)干渉色が紫色であるパール顔料と
を含む、固形粉末化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)は、粒径が1μm~18μmである、請求項1に記載の固形粉末化粧料。
【請求項3】
前記成分(B)は粒径が0.5μm~100μmであり、及び/又は前記成分(C)は粒径が0.5μm~100μmである、請求項1~2のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項4】
前記成分(A)の含有量は、0.1質量%~7質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項5】
前記成分(B)及び前記成分(C)の含有量の合計は、0.2質量%~10質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【請求項6】
前記成分(B)及び前記成分(C)の含有量の比率は、6:0.5~0.5:6である、請求項1~5のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色顔料を含有する固形粉末化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
固形粉末化粧料は、粉体成分を主成分とし、これに油性成分を添加混合して粉砕し、次いで圧縮成型法、湿式充填法などの成型手段により固形に成型した化粧料である。固形粉末化粧料は、ファンデーション、アイシャドウ、白粉、頬紅などのメーキャップ化粧品やボディパウダーなどのボディケア化粧品などとして使用される。
【0003】
固形粉末化粧料は、スポンジ、パフ、チップ、ブラシなどの塗布具を用いて容器からこすりとった後に肌へ塗布し、又は直接的に肌へ塗布するように使用される。そこで、固形粉末化粧料は、塗布具及び肌への良好な移行性(とれ)が求められる。固形粉末化粧料のとれが悪いと、塗布具等に十分な量の化粧料が付着せず、使用性が著しく損なわれる。
【0004】
また、特にファンデーションなどのベースメイクに用いられる固形粉末化粧料は、肌へ塗布した際に、不自然で人工的な仕上がりにならないように、透明感が求められる。透明感に優れた固形粉末化粧料は、肌へ塗布した際に、くすみを飛ばすこと、肌を明るく見せること、隠ぺい感が強すぎないこと(程良いカバー力を発揮すること)、肌になじむこと、のっぺりしないことなどを通じて、肌を明るく自然な仕上がりにすることができる。
【0005】
仕上がりの良い固形粉末化粧料として、球状シリカ及びパール顔料を含む固形粉末化粧料が知られている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-152208号公報
【特許文献2】特開2016-124846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、比較的とれが悪く、ケーキングしやすい固形粉末化粧料について、とれを改善することについて検討した。そして、特許文献1及び2に記載の固形粉末化粧料のように、球状シリカを用いれば、とれが良好になり、さらに肌の上で滑らかな伸びを実現できることがわかった。
【0008】
球状シリカは非常に硬い原料成分であり、キシみ感が強いものの、球状であることにより転がり感が得られ、固形粉末化粧料のとれを良好にし、使用感を滑らかにすることができると考えられる。
【0009】
しかし、球状シリカには光を乱反射させるソフトフォーカス効果があることから、球状シリカを含む固形粉末化粧料は肌の透明感が損なわれ、不自然な仕上がりになる傾向がある。そして、本発明者らが調べたところによれば、特許文献1及び2に記載の固形粉末化粧料は、肌の透明感について満足できるものではなかった。
【0010】
そこで、本発明は、とれが良好でありつつも、肌へ塗布した際の透明感が優れた固形粉末化粧料を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、数千種類はあるとされている数多くの化粧料成分について種々検討して、とれを良くするために球状シリカを含みつつも、肌に塗布した際の透明感に優れた固形粉末化粧料を得るために試行錯誤を繰り返した。そして、その中で、パール顔料に着眼するに至った。
【0012】
本発明者らは、干渉色が様々な色調のパール顔料について検討を進めた結果、各パール顔料は、肌へ透明感を与えるものもあれば、そうではないものもあることがわかった。また、透明感を与えるものであっても、球状シリカによる逸失した透明感を補うほどのものはなかった。
【0013】
そこで、本発明者らは、さらに鋭意研究開発に励んだ結果、遂に、球状シリカと、白色パール顔料及び干渉色が紫色であるパール顔料とを組み合わせて配合することにより、とれが良好であり、かつ肌に塗布した際の透明感が優れた固形粉末化粧料を得ることに成功した。すなわち、本発明者らは、本発明の課題を解決するものとして、球状シリカと、白色パール顔料と、干渉色が紫色であるパール顔料とを組み合わせて含む、固形粉末化粧料を創作することに成功した。本発明は、これらの知見及び成功例に基づき完成された発明である。
【0014】
したがって、本発明によれば、以下に示す各態様の固形粉末化粧料が提供される。
[1](A)球状シリカと、
(B)白色パール顔料と、
(C)干渉色が紫色であるパール顔料と
を含む、固形粉末化粧料。
[2]前記成分(A)は、粒径が1μm~18μmである、[1]に記載の固形粉末化粧料。
[3]前記成分(B)は粒径が0.5μm~100μmであり、及び/又は前記成分(C)は粒径が0.5μm~100μmである、[1]~[2]のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
[4]前記成分(A)の含有量は、0.1質量%~7質量%である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
[5]前記成分(B)及び前記成分(C)の含有量の合計は、0.2質量%~10質量%である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
[6]前記成分(B)及び前記成分(C)の含有量の比率は、6:0.5~0.5:6である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の固形粉末化粧料。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様の固形粉末化粧料によれば、スポンジなどで擦り取る際のとれを良好にすることができ、さらに肌へ塗布した際に程良いツヤ感により肌を明るくして、透明感のある自然な仕上がりを実現することができる。結果として、本発明の一態様の固形粉末化粧料によれば、固形粉末化粧料を利用する者にとって非常に優れた使用感が期待できる。
【0016】
本発明の一態様の固形粉末化粧料は、とれ及び透明感が良好であり、さらに伸びが良く、毛穴及び小じわを目立たなくするようなカバー力及び仕上がりの持続性を実現することができる。このように、本発明の一態様の固形粉末化粧料は、使いやすく、持続性のある自然な仕上がりにより、肌を美しく彩るためのファンデーション、アイシャドウ、白粉、頬紅などのメーキャップ化粧品として好適に利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一態様である固形粉末化粧料の詳細について説明するが、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0018】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、化粧品分野における当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている理論や推測は、本発明者らのこれまでの知見や経験によってなされたものであることから、本発明の技術的範囲はこのような理論や推測のみによって拘泥されるものではない。
【0019】
「及び/又は」は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含有量」は、濃度と同義であり、固形粉末化粧料の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、各成分の含有量の総量は、100%を越えることはない。本明細書では、別段の定めがない限り、含有量の単位は「質量%(wt%)」を意味する。なお、成分の含有量は、市販品を用いる場合は、市販品に含まれる成分の量であることが好ましいが、市販品自体の量であってもよい。
数値範囲の「~」は、本明細書において、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。「超過」及び「未満」は、その前の数値を含まない、下限及び上限をそれぞれ意味し、例えば、「1超過」は1より大きい数値であり、「100未満」は100より小さい数値を意味する。
数値に関しての「約」は、記載された数値の±20%の範囲を含むことを意味する。例えば、約10質量%は、8質量%~12質量%となる。
「含む」は、含まれるものとして明示されている要素以外の要素を付加できることを意味する(「少なくとも含む」と同義である)が、「からなる」及び「から本質的になる」を包含する。すなわち、「含む」は、明示されている要素及び任意の1種若しくは2種以上の要素を含み、明示されている要素からなり、又は明示されている要素から本質的になることを意味し得る。要素としては、成分、工程、条件、パラメーターなどの制限事項などが挙げられる。
「とれ」が良好である固形粉末化粧料とは、後述する実施例に記載の「とれ評価」を実施して、「○」(合格)と評価された固形粉末化粧料をいう。
「透明感」が良好である固形粉末化粧料とは、後述する実施例に記載の「透明感評価」を実施して、「○」(合格)と評価された固形粉末化粧料をいう。
【0020】
整数値の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数とは一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
【0021】
本発明の一態様の固形粉末化粧料は、球状シリカ(成分(A))と、白色パール顔料(成分(B))と、干渉色が紫色であるパール顔料(成分(C))とを含む。本発明の一態様の固形粉末化粧料は、成分(A)の球状シリカによりとれが良好となり、成分(B)及び(C)の2種類のパール顔料により透明感が良好となることから、非常に優れたメーキャップ化粧品として利用され得る。
【0022】
成分(A)の球状シリカは、通常知られているとおりの、コロイド状無水ケイ酸の球状粉体である。球状シリカのローリング効果により摩擦が低減されるために、固形粉末化粧料は伸び性が高まり、塗布具への移行性(とれ)及び塗り心地(使用感)が良好になる。成分(A)は、良好なローリング効果を発現するために、真球状シリカであることが好ましい。
【0023】
一方、球状シリカは、不定形のシリカと比べて、規則正しく整列しやすいために、ソフトフォーカス効果が大きくなる。これにより、肌のシワやシミを効果的に隠すことができるが、光沢度が下がり、マット感が生じて、肌の透明感が損なわれる傾向にある。多孔質性の球状シリカは、油脂吸着機能を有する。これは球状シリカの表面にある細孔に皮脂及び臭気成分などの油脂を吸着することにより発揮される。成分(A)は無孔質性の球状シリカであってもよいが、油脂吸着機能を期待するのであれば多孔質性の球状シリカであることが好ましい。
【0024】
成分(A)について、平均粒子径、比表面積、細孔容積、細孔直径などの物性は特に限定されない。ただし、成分(A)の平均粒子径が大き過ぎると、ソフトフォーカス効果が過大になり、肌の透明感を損なう可能性がある。そこで、成分(A)の平均粒子径は、例えば、ソフトフォーカス効果が過大にならないためには、0.5μm以上20μm未満であることが好ましく、1μm~18μmであることがより好ましく、3μm~12μmであることがさらに好ましい。平均粒子径は、個数平均粒子径であり、球状シリカの粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、無作為に選び出した100個以上の粒子の粒子径を測定し、測定値を平均した値である。
【0025】
成分(A)の比表面積、細孔容積及び細孔直径は、ある程度の吸油性及び形状安定性が実現できるような数値であることが好ましい。例えば、比表面積は好ましくは100m2/g~1,000m2/gであり、より好ましくは500m2/g~800m2/gであり、さらに好ましくは約700m2/gであり;細孔容積は好ましくは0.5ml/g~10ml/gであり、より好ましくは1ml/g~5ml/gであり;及び、細孔直径は好ましくは30nm未満であり、より好ましくは20nm以上30nm未満である。比表面積、細孔容積及び細孔直径は、窒素吸脱着法又は水銀圧入法により測定される。
【0026】
成分(A)は、常法に従って製造されたものであっても、市販されているものであっても、どちらでもよい。成分(A)の製造方法は特に限定されないが、例えば、特許第4193626号に記載の方法などが挙げられる。成分(A)の市販品は、例えば、「サンスフェア(登録商標) H-32」、「サンスフェア(登録商標) H-52」、「サンスフェア(登録商標) H-122」(AGCエスアイテック社製)、「コスメシリカ CQ10」(富士シリシア化学社製)、「SILICA MICRO BEAD P-1500」、「SATINIER M5」(日揮触媒化成社製)、「ゴッドボール(登録商標) D-25C」(鈴木油脂工業社製)などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。成分(A)が市販品である場合は、成分(A)の物性は製造者又は販売者の公称値であってもよい。
【0027】
成分(A)の含有量は、固形粉末化粧料のとれが良好になる量であれば特に限定されない。ただし、成分(A)の含有量が大きい場合は固形粉末化粧料のとれが過剰になり、さらに成分(A)の含有量が過剰である場合は固形粉末化粧料の強度が劣り、成型性が損なわれる傾向にある。そこで、成分(A)の含有量は、固形粉末化粧料の成型性に問題が生じない量であることが好ましい。例えば、成分(A)の含有量は、固形粉末化粧料の全量に対して、0.05質量%以上8質量%未満であることが好ましく、0.1質量%~7質量%であることがより好ましく、0.3質量%~5質量%であることがさらに好ましい。なお、成分(A)の含有量が8質量%以上であると、固形粉末化粧料の成型性が著しく悪化する傾向にあり、好ましくない。
【0028】
成分(B)及び成分(C)のパール顔料は、それぞれ白色光沢や紫色の干渉色を有する。成分(A)の球状シリカを含むことにより、固形粉末化粧料は、球状シリカのソフトフォーカス効果のために、肌に塗布した際に、隠蔽感が強まること、肌になじまないこと、のっぺりすることなどが生じて、透明感が損なわれ、不自然な仕上がりになる傾向にある。しかし、成分(A)の球状シリカとともに、成分(B)及び(C)の2種類のパール顔料を含むことにより、固形粉末化粧料は、良好なとれを維持しつつ、肌に塗布した際に生じる上記事象が緩和及び/又は抑制されて、透明感が良好になり、自然な仕上がりになる。
【0029】
しかも、驚くべきことに、成分(B)の白色パール顔料及び(C)の干渉色が紫色であるパール顔料を含むことにより、いずれか単独、又は特許文献2に記載されている干渉色がオレンジ色であるパール顔料及び干渉色が紫色であるパール顔料の2種類を用いる場合よりも、優れた透明感を達成でき、より自然な仕上がりを実現できる。成分(B)及び(C)の色調は、例えば、黒色の人工皮革などの黒地の基体に塗布して目視で確認すること、測色機を用いて色調を測定することなどにより確認することができる。成分(B)の色調は、真珠光沢のような乳白色から、金属光沢のような明るい灰色を帯びる銀白色(シルバーホワイト)、銀色(シルバー)のものを含む。成分(C)の色調は、特許文献2に記載の[干渉色の測定]を参照して確認してもよい。また、成分(C)の色調は、オストワルト表色系で示される色相の略号1Pから3Pまでの紫に相当するものであっても良い。なお、本明細書では、白色パール顔料はシルバーパールともよび、干渉色が紫色であるパール顔料は、紫色パール顔料又は紫干渉パールともよぶ。また、干渉色の違いにより、それぞれの色ごとに干渉パールとよぶ場合がある。
【0030】
パール顔料としては、魚鱗箔などの天然のパール顔料;オキシ塩化ビスマスなどの合成パール顔料;雲母、マイカ、酸化アルミニウム、タルク、アルミニウム末、ホウケイ酸などの基材を、酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、酸化ジルコニウム、アルミナなどの金属酸化物で被覆して得られる金属酸化物被覆パール顔料などが挙げられる。成分(B)及び(C)は、それぞれ白色光沢や紫色の干渉色を有するものであれば、上記したものの1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせでもよいが、紫外線に強く、製造及び入手が容易であることから、金属酸化物被覆パール顔料であることが好ましく、基材としての雲母、マイカ、又はタルクに、酸化チタン及び任意に酸化スズを金属酸化物として被覆した金属酸化物被覆パール顔料であることが好ましい。色調の豊富さや呈色の鮮やかさなどから、基剤としてマイカを用いたものが更に好ましい。
【0031】
パール顔料の粒子径などの物性は特に限定されず、種々の物性のものを使用することができる。ただし、パール顔料の粒子径が大き過ぎると、パール顔料の粒感が強くなり、パール特有の光りによる輝度が高くなる傾向にある。そこで、成分(B)の白色パール顔料の粒子径は、例えば、体積累積基準(D10~D90)で0.5μm~100μmの範囲にあることが好ましく、1μm~60μmの範囲にあることがより好ましく、9μm~45μmであることがさらに好ましい。同様に、成分(C)の紫色パール顔料の粒子径は、例えば、体積累積基準(D10~D90)で0.5μm~100μmの範囲にあることが好ましく、1μm~60μmの範囲にあることがより好ましく、9μm~45μmであることがさらに好ましい。パール顔料の粒子径は、「マスターサイザー2000」(Malvern Panalytical社製)などの粒度分布測定装置を用いて測定される。
【0032】
パール顔料は、表面を改質することを目的とした表面処理がなされているものであってもよい。表面処理としては、例えば、メチコン、トリエトキシカプリリルシラン、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー、メチコン/ハイドロゲンジメチコン/ジメチコン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどを用いた表面疎水化処理;ステアリン酸マグネシウム、水添レシチンなどを用いた天然処理;ラウロイルリシン、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、リシン、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウムなどを用いたアミノ酸処理などが挙げられ、分散性及び肌への付着性を考慮すれば表面疎水化処理であることが好ましく、メチコン又はトリエトキシカプリリルシランを用いた表面疎水化処理であることがより好ましい。
【0033】
成分(B)及び成分(C)は、常法に従って製造されたものであっても、市販されているものであっても、どちらでもよい。成分(B)の市販品としては、例えば、「Cosmetica Super White N-8000S」「Cosmetica Super White N-8000S-2S」、「Cosmetica Super White N-8000D」、「Cosmetica Natural Super White N-8001S」、「Cosmetica Super Fine White N-8003D」(CQV社製)、「Timiron Halo White」、「Timiron Super Silver Fine」、「Timiron Starluster MP-115」(Merck社製)、「FLAMENCO Pearl 110C」、「FLAMENCO Satina 120T」(BASF社製)、「TWINCLE PEARL 200」、「SILSEEM Misty Pearl Silver」(日本光研工業社製)、「DK PEARL SILVER2」(大東化成工業社製) などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。成分(C)の市販品としては、例えば、「Cosmetica Super Violet N-5601S」「Cosmetica Super Violet N-5601S-2S」、「Cosmetica Daisy Violet N-5603S」、「Cosmetica Fine Violet N-5601D」(CQV社製)、「FLAMENCO VIOLET 520C」、「FLAMENCO SPARKLE VIOLET 520J」、「FLAMENCO SATIN VIOLET 560M」(BASF社製)、「Timilon Super Violet」、「Timilon Splendid Violet」(Merck社製)、「TWINCLE PEARL VXC-SO」(日本光研工業社製)、「DK PEARL-IF VIOLET」(大東化成工業社製)、「KTZ INTERFINE VIOLET」(KOBO社製)などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。成分(B)及び成分(C)が市販品である場合は、成分(B)及び成分(C)の物性及び色調は製造者又は販売者の公称値及び色調であってもよい。
【0034】
成分(B)及び成分(C)の含有量は、成分(A)による固形粉末化粧料の透明感の劣化が改善される量であれば特に限定されない。ただし、成分(B)及び(C)の含有量が過大になると、パール輝度が目立ち、ギラつく不自然な仕上がりになる傾向にある。そこで、成分(B)及び成分(C)の含有量は、パール輝度が目立ちすぎない程度の量であることが好ましい。例えば、成分(B)及び成分(C)の含有量は、固形粉末化粧料の全量に対して、それぞれ独立して、0.1質量%~8質量%であることが好ましく、0.3質量%~5質量%であることがより好ましく、0.5質量%~4質量%であることがさらに好ましい。また、成分(B)及び成分(C)の含有量の総量は、固形粉末化粧料の全量に対して、0.2質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~8質量%であることがより好ましく、0.8質量%~6質量%であることがさらに好ましく、1質量%~5質量%であることがなおさらに好ましい。
【0035】
成分(B)及び成分(C)の含有量の比率は特に限定されず、成分(B)の含有量が成分(C)の含有量より大きくてもよく、成分(C)の含有量が成分(B)の含有量より大きくてもよい。後述する実施例の記載を鑑みれば、成分(B)及び成分(C)の含有量の比率(成分(B)の含有量:成分(C)の含有量)は、6:0.5~0.5:6であることが好ましく、4:1~1:4であることがより好ましく、2:1~1:2であることがさらに好ましい。
【0036】
成分(A)と成分(B)及び成分(C)とは、密接に関連して、本発明の一態様の固形粉末化粧料におけるとれ及び透明感に影響を与え得る。例えば、成分(A)に代えて不定形のシリカを用いた場合、成分(B)及び成分(C)の存在下であっても透明感のある仕上がりにはならない。すなわち、本発明の一態様の固形粉末化粧料は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を組み合わせて含むことに特徴があり、これらの成分の含有量の関係性については特に限定されない。ただし、後述する実施例を鑑みれば、成分(A)の含有量に対する成分(B)及び(C)の総含有量の割合([成分(B)+成分(C)の総含有量]/[成分(A)の含有量])は、0.1~30であることが好ましく、0.2~20であることが好ましく、0.3~18であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の一態様の固形粉末化粧料は、成分(A)の含有量、成分(B)の含有量、成分(C)の含有量、成分(B)及び成分(C)の総含有量、成分(B)と成分(C)との含有比率、並びに成分(A)に対する成分(B)及び(C)の総含有量の割合からなる群から選ばれる2種、3種、4種、5種又は6種の量及び割合が、それぞれ上記した範囲内のものであることが好ましい。ただし、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の含有量は、その他の成分の含有量により変動し得る。
【0038】
本発明の一態様の固形粉末化粧料は、本発明の課題を解決し得る限り、成分(A)~(C)に加えて、その他の成分を含有してもよい。
【0039】
その他の成分は特に限定されず、例えば、通常の固形粉末化粧料に用いられる成分などが挙げられ、より具体的には基剤、着色顔料、感触改良剤、防腐剤、油剤、表面処理剤、保湿剤、清涼剤、キレート剤、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、美白剤、ビタミン類、その他各種薬効成分、粉体、香料などが挙げられる。その他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定し得る。その他の成分のいくつかについて以下に列挙するが、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
【0040】
基剤としては、例えば、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト及びこれらの表面処理物などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。基剤の含有量は、30質量%~70質量%であることが好ましい。
【0041】
着色顔料は、無機の着色顔料、有機の着色顔料、これらを組み合わせたもののいずれであってもよい。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体;カーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素などが挙げられる。着色顔料は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて、所望の色味を発現するように使用できる。着色顔料の含有量は、5質量%~20質量%であることが好ましい。
【0042】
感触改良剤としては、例えば、シリカ、メタクリル酸メチルクロスポリマー、ナイロン-6、ナイロン-11、ナイロン-12、ポリメチルシルセスキオキサン、窒化ホウ素、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlなどの粉体;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛などの金属石鹸などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。感触改良剤の含有量は、0質量%~30質量%であることが好ましい。
【0043】
防腐剤としては、例えば、プロピルパラベン、メチルパラベンなどのパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。防腐剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0044】
油剤としては、例えば、油性エモリエント成分、サンスクリーン成分、ラスティング成分、表面処理成分などが挙げられ、具体的にはイソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、トリエチルヘキサノイン、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、ジメチコン、シクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン、スクワラン、ミネラルオイル、水添ポリ(C6-12オレフィン)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ポリグリセリルー2、オリーブ果実油、ホホバ種子油、ラベンダー油、月見草油、アボガド油、ツバキ種子油、マカデミア種子油などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。油剤の含有量は、5質量%~15質量%であることが好ましい。
【0045】
表面処理剤としては、例えば、ジメチコン、メチコン、トリエトキシカプリリルシラン、ミネラルオイル、セバシン酸イソステアリル、(ジメチコン/メチコン)コポリマーなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。表面処理剤の含有量は、0質量%~5質量%であることが好ましい。
【0046】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロールなどのビタミンE及びその誘導体、チオタウリン、メマツヨイグサ抽出液、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0047】
本発明の一態様の固形粉末化粧料は、成分(A)と成分(B)及び成分(C)とを組み合わせて含むことにより、とれが良好であり、かつ透明感が良好であることに特徴がある。このような特徴により、本発明の一態様の固形粉末化粧料は、塗布具にとれやすく、肌へ塗布した際に伸びが良く、さらに塗布後の肌は明るく自然な仕上がりになる。本発明の一態様の固形粉末化粧料は、その他の物性について特に限定されないが、例えば、成型性を保つためには、硬度は20g以上であることが好ましく、25g~55gであることがより好ましい。固形粉末化粧料の硬度は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0048】
本発明の一態様の固形粉末化粧料の非限定的な具体的態様は、固形粉末化粧料の全量に対して、成分(A)を0.3質量%~5質量%、成分(B)を0.5質量%~4質量%及び成分(C)を0.5質量%~4質量%で含み、成分(B)及び成分(C)の含有量の総量は0.5質量%~8質量%であり、成分(B)及び成分(C)の含有量の比率は4:1~1:4であり、かつ成分(A)に対する成分(B)及び(C)の総含有量の割合は0.3~18である、とれ及び透明感が良好である固形粉末化粧料である。
【0049】
本発明の一態様の固形粉末化粧料の非限定的な別の具体的態様は、固形粉末化粧料の全量に対して、成分(A)を0.3質量%~1質量%、成分(B)を1質量%~3質量%及び成分(C)を1質量%~3質量%で含み、成分(B)及び成分(C)の含有量の総量は1質量%~6質量%であり、成分(B)及び成分(C)の含有量の比率は2:1~1:2であり、かつ成分(A)に対する成分(B)及び(C)の総含有量の割合は5~10である、とれ及び透明感が良好である固形粉末化粧料である。
【0050】
本発明の一態様の固形粉末化粧料の製造方法は特に限定されず、例えば、後述する実施例に記載の方法などが挙げられる。すなわち、成分(A)及び基剤などの固形粉体成分を含むA相をミキサーなどを用いて均一に混合分散して調製し、次いでA相に成分(B)及び成分(C)を含むB相を加えて混合し、次いで油剤などの液体成分を含むC相を加えて混合し、次いで得られた混合物を常法に従って粉砕及び圧縮成形などすることにより、本発明の一態様の固形粉末化粧料が得られ得る。
【0051】
本発明の一態様の固形粉末化粧料は、その使用態様や剤形については特に限定されず、例えば、メーキャップ化粧品などが挙げられ、より具体的にはファンデーション、アイシャドウ、白粉、頬紅などのメーキャップ化粧品などが挙げられる。
【0052】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例0053】
[例1.単色のパール顔料を含む固形粉末化粧料の評価]
(1-1)被験固形粉末化粧料の調製
表1に示した処方に従い、以下の手順により、各固形粉末化粧料を調製した。なお、表中の数値は、質量%(wt%)を表わす。
【0054】
表中のA相の成分を、均一になるようにミキサー(「LAB.MIXER LM-110T」;韓一電機株式会社製)を用いて混合分散した。混合分散したA相にB相の成分を加えて、ミキサーを用いて混合した。得られたA相とB相との混合物にC相の成分を加えて、ミキサーを用いてさらに混合分散した。
【0055】
得られた混合粉体を粉砕機(「小型粉砕機 ラボミル LM-05型」;ダルトン社製)を用いて粉砕した。得られた粉砕物を、樹脂皿にはかりとり、プレス機(「ラボ用ミニプレス機」;三信精機社製)を使用して9.5MPaの圧力で圧縮成型することにより、被験固形粉末化粧料を得た。
【0056】
(1-2)とれ評価
被験固形粉末化粧料の表面をスポンジにて同程度の力で5回こすり、とれ量を計測した。計測結果が、0.04g未満である場合は「×」(不合格)とし、0.04g以上である場合は「○」(合格)とした。
【0057】
(1-3)官能評価
化粧品の官能評価について訓練を受けたパネラー2名を対象として、被験固形粉末化粧料をスポンジを用いて皮膚(前腕)へ塗布した後、未塗布部と塗布部とを比較した際の肌印象を目視で確認することにより、「透明感」(透き通るような、くすみのない澄んだ印象を与えること)、「血色感」(適度に赤味を帯びて、健康的な印象を与えること)、「ツヤ感」(表面がなめらかで適度な光沢を帯びる印象を与えること)、「トーンアップ」(肌の色味を明るくし、均一に整った印象を与えること)及び「カバー力」(シミ・くすみなどの肌の色ムラを隠すこと)を評価項目として、2名が感じた場合は「2点」、いずれか1名が感じた場合は「1点」、いずれか1名が微かに感じた場合は「0.5点」、いずれも感じなかった場合は「0点」として点数をつけた。
【0058】
(1-4)評価結果
とれ評価及び官能評価の結果を表1に示す。
【0059】
紫干渉パール及び青干渉パールを含む参考例5及び6の被験固形粉末化粧料は、未塗布部に比べて塗布部で透明感を感じられた。しかし、これらのうち、青干渉パールを含む参考例6の被験固形粉末化粧料は、血色感が全く感じられず、むしろ未塗布部よりもやや不自然な(健康的ではない)肌印象を与えた。また、紫干渉パールを含む参考例5の被験固形粉末化粧料は、塗布部に透明感を与え、自然な肌印象を与えたが、透明感の程度は小さいよう(従来知られたものと変わらないか低い程度)に感じた。なお、参考例5及び6の被験固形粉末化粧料は他の被験固形粉末化粧料よりもシリカ量が少なかったものの、色調による効果有無は変わらなかった。
【0060】
一方、シルバーパール、オレンジ干渉パール、ゴールド干渉パール及び赤干渉パールを含む参考例1~4の被験固形粉末化粧料は透明感を全く又はほとんど感じられなかった。ただし、透明感以外の項目では、ゴールド干渉パール及び赤干渉パールをそれぞれ含む参考例3~4の被験固形粉末化粧料が優れていた。
【0061】
また、シルバーパールを含む参考例1の被験固形粉末化粧料は、パール由来の銀白色による塗布部の白浮き感の肌印象を与えるとともに、パールのギラつきが強く感じられることにより、肌なじみが悪く不自然な印象になる傾向があった。さらに、ゴールド干渉パールを含む参考例3の被験固形粉末化粧料は、肌なじみは良いが、黄色くくすむ印象を与えた。
【0062】
以上のとおり、いずれかのパール顔料を単独で配合する被験固形粉末化粧料は、十分な透明感を与えるものではなかった。
【0063】
【0064】
なお、表1~6中における*1~*18の市販品名は以下のとおりである:
*1 サンスフェア(登録商標) H-122(AGCエスアイテック社製)
*2 サンスフェア(登録商標) H-32(AGCエスアイテック社製)
*3 サンスフェア(登録商標) H―52(AGCエスアイテック社製)
*4 サンスフェア(登録商標) H-201(AGCエスアイテック社製)
*5 サンラブリー(登録商標) C(AGCエスアイテック社製)
*6 Cosmetica Super White N-8000S(CQV社製)
*7 Cosmetica Super Violet N-5601S(CQV社製)
*8 Cosmetica Super White N-8000S-2S(CQV社製)
*9 Cosmetica Super Violet N-5601S-2S(CQV社製)
*10 Timiron Halo White(Merck社製)
*11 KTZ INTERFINE VIOLET-11S2(KOBO社製)
*12 OTS-2 DK PEARL SILVER2(大東化成工業社製)
*13 DK PEARL-IF VIOLET(大東化成工業社製)
*14 Cosmetica Super Blue N-5801S(CQV社製)
*15 FLAMENCO Silk Orange 330(BASF社製)
*16 Timiron Super Gold(Merck社製)
*17 Timiron Super Red(Merck社製)
*18 SILSEEM Misty Pearl Silver(タルク基剤:日本光研工業社製)
【0065】
[例2.とれ及び透明感の優れた固形粉末化粧料の評価]
(2-1)被験固形粉末化粧料の調製
例1と同様にして、表2~4に示した処方に従い、各固形粉末化粧料を調製した。なお、表中の数値は、質量%(wt%)を表わす。
【0066】
(2-2)硬度測定
被験固形粉末化粧料について、ゴム硬度計(「アスカーゴム硬度計AL型」;高分子計器社製)を用いて計測し、測定点を5個として平均値を算出した。
【0067】
(2-3)とれ評価
上記(1-2)と同様にして、とれ評価を実施した。
【0068】
(2-4)透明感評価
化粧品の官能評価について訓練を受けたパネラー5名を対象として、被験固形粉末化粧料をスポンジを用いて皮膚(前腕)へ塗布した際の肌印象を目視で確認することにより、「透明感」を5段階で評価した。透明感は、くすみを飛ばすこと、肌を明るく見せること、隠ぺい感が強すぎないこと(程良いカバー力を発揮すること)、肌になじむこと、のっぺりしないことが確認できた場合は「5点」と採点し、黄色又は赤色にくすむこと、肌が暗くみえること、隠蔽感が強すぎること、肌になじまないこと、のっぺりすることが確認できた場合は、それらの数及び程度に応じて「1点」から「4点」と採点した。採点結果から、パネラー間の平均点及び標準偏差を求めた。透明感の評価について、パネラーの評点の平均が3.0以下のものを「×」(不合格)とし、3.0よりも大きいものを「○」(合格)と評価した。
【0069】
(2-5)総合評価
とれ及び透明感の評価結果より、とれ評価が0.04g以上であり、かつ透明感評価が3.0よりも大きいものを「○」(合格)と評価し、少なくともいずれか一方の基準を満たさないものを「×」(不合格)と評価した。
【0070】
(2-6)評価結果
硬度測定、とれ評価、透明感評価及び総合評価の結果を表2~4に示す。
【0071】
表2が示すとおり、球状シリカ、シルバーパール及び紫干渉パールを含む被験固形粉末化粧料は、C相である油剤の種類や含有量を変えたとしても、とれ及び透明感がいずれも優れたものであった(実施例1~3)。それに対して、球状シリカを含まない被験固形粉末化粧料はとれが劣っていた(比較例1)。また、球状シリカの有無にかかわらず、シルバーパール及び紫干渉パールを含まない被験固形粉末化粧料は、総じて透明感が劣っていた(比較例1~3)。
【0072】
表3が示すとおり、シルバーパール及び紫干渉パールについて、含有比率、総含有量、表面処理、粒径などの条件を変えても、得られる被験固形粉末化粧料は総じて、とれ及び透明感が優れたものであった(実施例4~9)。それに対して、紫干渉パールを含むものの、シルバーパールを含まない被験固形粉末化粧料は、いずれも透明感が劣っていた(比較例4、参考例5及び7)。
【0073】
なお、特許文献2と同様に、紫干渉パール及びオレンジ干渉パールを含む比較例4の被験固形粉末化粧料について、透明感が劣っているという評価結果は、以下のとおりに推察される。すなわち、パール顔料の混合による表現色は加法混色に基づいており、異なる干渉色のパール顔料を混合していくと最終的には白くなる。そして、反射光スペクトルにおいて、短波長領域かつ長波長領域で反射率の大きい紫色と、中波長領域から長波長領域にかけて反射率の大きいオレンジ色とを組み合わせた場合は、結果として各波長の反射率の大小を補いあってブロードスペクトルのようになってしまうことで、透明感に与える影響が小さくなると考えられる。
【0074】
表4が示すとおり、球状シリカの含有量及び粒径が変わっても、得られた被験固形粉末化粧料はとれ及び透明感が優れていた(実施例10~16)。それに対して、シルバーパール及び紫干渉パールを含むものであっても、球状シリカを含まない被験固形粉末化粧料はとれが劣っていた(比較例5)。また、球状シリカに代えて、お椀状のPMMAや不定形のシリカを含む被験固形粉末化粧料は、透明感が劣っていた(比較例6~7)。さらに、粒径が20μm以上である球状シリカを含む被験固形粉末化粧料は透明感が損なわれる傾向にあり、球状シリカの含有量が8.00質量%以上である被験固形粉末化粧料は成型できないものであった(比較例8~9)。ただし、シルバーパール及び紫干渉パールは、総含有量が増加することに比例して、透明感評価が向上する傾向にあった(実施例1、8及び9)。これにより、比較例9のように、球状シリカの含有量が大きい場合であっても、シルバーパール及び紫干渉パールの総含有量を増加することにより、透明感を改善できる可能性がある。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
以上の結果から、球状シリカ、シルバーパール及び紫干渉パールを含む固形粉末化粧料は、とれ及び透明感が優れた固形粉末化粧料であることがわかった。表1の参考例1~6の結果では、紫干渉パールを用いた場合は透明感が得られる傾向にあったが、シルバーパールを用いた場合にはこのような傾向は得られなかった。それにもかかわらず、紫干渉パールとシルバーパールとを組み合わせることにより、紫干渉パールを単独で用いた場合よりも格別に優れた透明感を得ることができた。このような紫干渉パール及びシルバーパールの組合せによる効果は、シルバーパールを用いた場合には透明感が得られなかったことを考慮すれば、相加的ではなく、相乗的な効果であることがわかった。
【0079】
また、球状シリカ、シルバーパール及び紫干渉パールを含む固形粉末化粧料は伸びが良く、毛穴及び小じわを目立たなくするようなカバー力及び仕上がりの持続性を実現することができる固形粉末化粧料であることがわかった。
【0080】
[例3.処方例]
以下に本発明の一態様として、総合評価が「○」である蓋然性のある固形粉末化粧料の処方例を挙げるが、本発明の技術的範囲はこれらの処方例に限定されない。
【0081】
(処方例1)パウダーファンデーション
例1と同様にして、表5に示す処方により、成分を混合、粉砕及び成型することにより、固形粉末化粧料としてパウダーファンデーションを得た。
【0082】
【0083】
(処方例2)チーク(頬紅)
例1と同様にして、表6に示す処方により、成分を混合、粉砕及び成型することにより、固形粉末化粧料としてチークを得た。
【0084】
本発明の一態様の固形粉末化粧料は、とれ及び透明感が良好であることから、ファンデーション、アイシャドウ、白粉、頬紅などのメーキャップ化粧品として好適に利用することができるものである。使用者は、本発明の一態様の固形粉末化粧料を使用することにより、日常的に快適に、美しく魅力的に装うことができ、メイクによるポジティブな心理効果が得られ、さらに外的刺激から皮膚を守ることが期待できる。