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特開2023-79378仕訳確認方法、仕訳確認プログラム、及び仕訳確認システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079378
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】仕訳確認方法、仕訳確認プログラム、及び仕訳確認システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/12 20230101AFI20230601BHJP
【FI】
G06Q40/00 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192824
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】712005584
【氏名又は名称】株式会社Donuts
(74)【代理人】
【識別番号】230116539
【弁護士】
【氏名又は名称】恩田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】西村 啓成
(72)【発明者】
【氏名】阿部 隆幸
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB64
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非専門家による仕訳管理を支援する仕訳確認方法、仕訳確認プログラム及び仕訳確認システムを提供する。
【解決手段】事業者識別情報取得部と、入力受付部と、分析部と、コメント付記部と、を有する仕分確認システムにおいて、仕訳確認方法は、事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得する事業者識別情報取得ステップと、事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付ける入力受付ステップと、所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析する分析ステップと、一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じたコメントを付記するコメント付記ステップとを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得する事業者識別情報取得ステップと、
事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付ける入力受付ステップと、
所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析する分析ステップと、
一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じたコメントを付記するコメント付記ステップと、
をコンピュータにて実行する仕訳確認方法。
【請求項2】
付記したコメントを事業者識別情報及び当該コメント対象となる仕訳とともに履歴として取得する履歴取得ステップをさらに有し、
コメント付記ステップは、
履歴取得ステップにて取得した履歴を用いてコメントを付記する履歴利用サブステップをさらに有する請求項1に記載の仕訳確認方法。
【請求項3】
分析ステップは、
履歴取得ステップにて異なる事業者識別情報と紐づいて取得される履歴をも用いて仕訳データを分析する横断的履歴利用サブステップを有する請求項2に記載の仕訳確認方法。
【請求項4】
コメント付記ステップによるコメント付記以後に当該コメントの対象となった仕訳に対する修正履歴に関する記録を取得する修正履歴取得ステップをさらに有し、
分析ステップは、
前記修正履歴をも用いて仕訳データを分析する修正履歴利用分析サブステップをさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載の仕訳確認方法。
【請求項5】
コメント付記ステップは、
一又は複数の質問を伴うコメントを付記する質問付コメント付記サブステップを有し、
当該コメントに対する回答を受け付ける回答受付ステップと、
分析ステップは、
前記受け付けた回答に従い再度の分析を行う重点分析サブステップと、
をさらに有する請求項1から4のいずれか一に記載の仕訳確認方法。
【請求項6】
所定タイミングで分析ステップを実行させるための分析タイミング制御ステップをさらに有する請求項1から5のいずれか一に記載の仕訳確認方法。
【請求項7】
事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得する事業者識別情報取得ステップと、
事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付ける入力受付ステップと、
所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析する分析ステップと、
一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じたコメントを付記するコメント付記ステップと、
をコンピュータにて実行するための仕訳確認プログラム。
【請求項8】
事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得する事業者識別情報取得部と、
事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付ける入力受付部と、
所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析する分析部と、
一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じたコメントを付記するコメント付記部と、
を有する仕訳確認システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非専門家による仕訳管理を支援するための確認方法あるいは、非専門家による仕訳処理結果を専門家が支援するための確認方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
日々の取引についての経理処理を行う際、担当者には仕訳に関する一定の専門知識が要求される。担当者が自身で学習することはもちろん、税理士や外部専門家に、実際に行った仕訳処理に対する助言や指導を依頼することもある。ただ、専門家への依頼には費用的なコストがかかるほか、自身で学習する場合にも、結局学習結果の確認等に何らかの目標や参考とすべき情報の存在が必要となり、一定の負担は避けられない。そのため、仕訳処理を好適に行うための支援を、技術的手段を用いて実現しようとする流れが従来から認められる。
【0003】
例えば特許文献1には、取引ごとの明細データを取得後、記載内容に含まれるキーワード等を参照して特定の勘定科目を選択して仕訳を行う技術が開示されている。また、特許文献2には、証憑データを取得後、記載内容に含まれる商品グループに対応して採用されることの多い勘定科目を推奨科目として提示する技術が開示されている。これらの技術はいずれも、仕訳担当者による日々の業務における仕訳処理の煩雑さや難易さを解消するために提供されることとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-182787号
【特許文献2】特開2014-235484号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの従来技術ではいずれも、過去の類似すると思われる取引を踏まえた参考情報として勘定科目が提示されるに過ぎない。しかしながら、かかる技術においては、特定の勘定科目が正解であるかのように設定されたり、推奨という位置づけのもと表示されたりするため、知識が十分でない担当者が利用すると、提示内容を盲信してしまい、誤った仕訳処理を見過ごすことになり、担当者の知識や経験の定着の阻害要因となっていた。
【0006】
また、そのような誤った仕訳処理がなされることで、当該処理結果を踏まえた会計データを提出された税理士や公認会計士などが、仕訳処理の訂正や担当者への指導のため多くの時間を割かざるを得ない事態が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような課題を解決すべく、本発明は、事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得する事業者識別情報取得ステップと、事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付ける入力受付ステップと、所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析する分析ステップと、一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じたコメントを付記するコメント付記ステップと、をコンピュータにて実行する仕訳確認方法などを提案する。
【0008】
また上記発明に関連して、付記したコメントを事業者識別情報及び当該コメント対象となる仕訳とともに履歴として取得する履歴取得ステップをさらに有し、コメント付記ステップは、履歴取得ステップにて取得した履歴を用いてコメントを付記する履歴利用サブステップをさらに有する仕訳確認方法なども提案する。
【0009】
また上記発明に関連して、分析ステップは、履歴取得ステップにて異なる事業者識別情報と紐づいて取得される履歴をも用いて仕訳データを分析する横断的履歴利用サブステップを有する仕訳確認方法なども提案する。
【0010】
また上記各発明に関連して、コメント付記ステップによるコメント付記以後に当該コメントの対象となった仕訳に対する修正履歴に関する記録を取得する修正履歴取得ステップをさらに有し、分析ステップは、前記修正履歴をも用いて仕訳データを分析する修正履歴利用分析サブステップをさらに有する仕訳確認方法なども提案する。
【0011】
また上記各発明に関連して、コメント付記ステップは、一又は複数の質問を伴うコメントを付記する質問付コメント付記サブステップを有し、当該コメントに対する回答を受け付ける回答受付ステップを有するとともに、分析ステップにおいて前記受け付けた回答に従い再度の分析を行う重点分析ステップと、をさらに有する仕訳確認方法なども提案する。
【0012】
また、上記各発明に関連して、所定タイミングで分析ステップを実行させるための分析タイミング制御ステップをさらに有する仕訳確認方法なども提案する。
【0013】
さらに、上記各方法に関連したプログラムやシステムなどに関する発明も提案する。
【発明の効果】
【0014】
主に以上のような構成をとる本発明によって、仕訳処理に対する知見が十分でない担当者においても、自身の行った仕訳処理に対する客観的な評価を踏まえ、時宜にあった訂正の機会を得ることができ、ひいては自身の体験に基づいた知見を得ることができるようになる。
【0015】
さらには、当該事業者を担当する税理士や公認会計士等の士業者による訂正処理や担当者の指導といった煩雑な手間を解消することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のシステムの概略図
図2】実施形態1のシステムの機能ブロックの一例を示す図
図3】本発明を用いて分析する仕訳データの一例を示す図
図4図3の仕訳データの分析を行う際の表示の一例を示す図
図5図3の仕訳データの分析結果に応じて付記されたコメントの表示の一例を示す図
図6】実施形態1のシステムの機能的な各構成をまとめて一のハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図
図7】実施形態1のシステムにおける処理の流れの一例を示す図
図8】実施形態2のシステムの機能ブロックの一例を示す図
図9】実施形態2のシステムにおける処理の流れの一例を示す図
図10】実施形態3のシステムの機能ブロックの一例を示す図
図11】実施形態3のシステムにおける処理の流れの一例を示す図
図12】実施形態4のシステムの機能ブロックの一例を示す図
図13】実施形態4のシステムにおける処理の流れの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず図1を示す。図1は本発明の概要を示す図である。同図に示されているように、本発 明は、仕訳処理を行うための機能を利用可能に提供する一又は複数のサービスサーバ0121、0122と、当該機能を利用して仕訳処理を行う事業者の端末である事業者端末0111、0112、0113との間で行われるネットワークを介した情報の送受信を通じて実現されうる。
【0018】
なお、さきに述べたとおり、本発明は一又は複数のサービスサーバ0121、0122により実現されうる。複数のサービスサーバを用いる場合の具体例を上げると、事業者端末から仕訳情報を取得したり、後記サーバ0122からコメント付記された仕訳処理の分析結果の情報を取得し、事業者端末に出力するサーバであるセンターサーバ0121や、取得した仕訳情報を分析し、コメントを付記したり、上記分析の精度を向上させるための種々の処理を行うためのサーバである分析サーバ0122などを用いたりする他、それらの処理結果を格納しておくためのデータベースサーバなどを相互にネットワークを介して接続することで用いることが考えられる。
【0019】
さらに各サーバの管理権限のあり方についても、個々のサーバがAPI連携等の形式により相互に接続されることが可能であり、他の事業者が管理・提供するサーバが有する機能を適宜活用することも可能である。それらのサーバの協働により、多様な業態の事業者からの多様な需要に応えうる負荷耐性を確保することが可能になるのみならず、それぞれのサーバがネットワークを介して接続可能に構成されることにより、多様な地理的拠点を設けつつ、効率性の高いサービス提供を可能とする。
【0020】
次に、利用者端末については、その種別を特に限定することはなく、例えば、パソコン0111やタブレット0112、スマートフォン0113などが考えられ、その他スマートグラスやスマートウォッチ、スマートペンなどが考えられる。
【0021】
なお、ここまでは図1を用いて、サービスサーバが事業者端末とは別個に構成され、ネットワークを介しクラウドコンピューティングの形式にて提供されているケースを想定した説明を行ったが、本発明はかかる使用形態に限られるものではない。すなわち、本発明の機能を実行可能なプログラムを事業者端末にインストールすることにより、本発明において提供可能な機能の全部又は一部の処理を事業者端末において実行する、いわゆるオンプレミス型の形態にて提供されてももちろんよい。また、ここで述べたようなプログラムが格納された記録媒体を用いることによっても実現可能である。
【0022】
以下、本発明の各実施形態について図面とともに説明する。まず実施形態と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。まず、実施形態1は主に請求項1、6、7、8などに対応する。実施形態2は主に請求項2、3などに対応する。実施形態3は主に請求項4などに対応する。実施形態4は主に請求項5などに対応する。
【0023】
なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、技術常識に従って特許請求の範囲の各請求項に記載の技術的思想を有し、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施し得る。
【0024】
<<実施形態1>>
<概要>
図2は、本実施形態の仕訳確認システムの機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「仕訳確認システム」0200は、「事業者識別情報取得部」0201と、「入力受付部」0202と、「分析部」0203と、「コメント付記部」0204と、を有する。
【0025】
なお、以下で詳しく説明する仕訳確認システムは、その機能の一又は複数の機能を複数の装置にて実現するようにも構成され得るものであって、その機能ブロックは、いずれもハードウェア又はソフトウェアとして実現され得る。コンピュータを用いるものを例にすれば、CPUやメインメモリ、GPU、TPU、画像メモリ、バス、二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ)、キーボードやマイク、タッチパネル、タッチパネルをタッチするための電子ペンなどの各種入力デバイス、スピーカ、ディスプレイその他各種出力デバイス、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインタフェース、通信用インタフェース、それらのハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他のアプリケーションプログラムなどが挙げられる。
【0026】
そしてメインメモリ上に展開したプログラムに従った演算処理によって、入力デバイスやその他インタフェースなどから入力されメモリやハードウェア上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、前記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が作成されたりする。ここで、上記プログラムは、モジュール化された複数のプログラムとして実現されてもよいし、2以上のプログラムをクラウドコンピューティングその他の方法により組み合わせて一のプログラムとして実現されても良い。
【0027】
<機能的構成>
「事業者識別情報取得部」0201は、事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得するように構成されている。事業者端末を通じて事業者識別情報の入力を受け付けて取得する構成のほか、Cookie情報その他事業者によるウェブブラウザを通じたウェブサイトの閲覧や利用を通じて取得した情報を介して取得する構成も考えられる。
【0028】
情報の入力元である事業者端末の識別情報や当該事業者端末を通じて入力される事業者名称、法人番号、法人所在地などのように、一の事業者を特定するための情報のほか、業種や業態、事業規模、資本金、従業員数、売上、記帳データ、事業者のうち特定の事業所、部署、担当者その他事業者の特定にとどまらず、当該事業者を他の事業者と識別するために資すると考えられる情報であれば、それらの情報は種別の限定なく事業者識別情報として取得の対象とすることが可能である。また、これらの種々の情報を紐づけて一の事業者を識別するために記号や文字などのテキストにて設定されるIDもまた事業者識別情報に含まれる。
【0029】
事業者識別情報を取得することで当該取得元となる事業者や当該事業者の過去の仕訳処理内容を把握することができるようになる。すなわち、事業者識別情報の入力を受け付けると、当該事業者識別情報と紐づけられる過去の仕訳処理に関する情報を取得可能となり、新たな仕訳処理を行う際に、当該事業者による仕訳処理の連続性を確保することができる。
【0030】
「入力受付部」0202は、事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付けるように構成されている。事業者識別情報を用いて本発明を利用するためのシステムにログインを受け付け、当該ログインされたのちに仕訳データの入力を受け付ける方法がまず考えられる。ユーザから直接個々の仕訳に係るデータの入力を受け付けてもよいし、他のシステムを通じて生成された仕訳データをオンライン又は当該仕訳データのアップロードなどの形式によって取得することで入力を受け付ける方法であってもよい。
【0031】
ここで図3を示す。同図は本実施形態の仕訳確認システムにおいて入力を受け付けた仕訳データの一例を示す図である。同図においては仕訳日記帳の形式にて仕訳データが生成されており、2021年の所定期間中のとある事業者における取引が仕訳の形式により記録されている。すなわち、日付や貸方科目と当該科目に対応する金額、借方科目と当該科目に対応する金額、そしてそれらの取引に関する摘要(税区分などを含む)が適宜記録されている。同図に示されているように、あらかじめ他のシステムを通じて生成された仕訳データを取得するような構成であれば、フォーマットの違いのような形式面に起因する分析エラー等の発生を抑止することが可能である。
【0032】
「分析部」0203は、所定ルールに従い受け付けた仕訳データを分析するように構成されている。ここでの分析処理は、法令や通達等に基づいて定められたルールや、特定の業種や業態の取引慣習に基づいて定められたルールなどの所定のルールに従って行われ、これらのルールは、分析処理をする際に、オンライン又はオフラインにて読みだされる。すなわち、「所定ルール」とは、外部サーバにて保持されるものであってもよい。
【0033】
ちなみに、所定ルールが外部サーバにて保持される場合の分析部の処理の一例について詳述する。この場合には、入力受付部にて仕訳データの入力を受け付ける前に、あらかじめ所定ルールを取得する構成であっても、仕訳データの入力後に取得する構成であってもよい。
【0034】
なお、所定ルールに従い仕訳データを分析する一例について説明する。ここでは例えば、一又は複数の勘定科目につきそれぞれ一又は複数のチェック項目を対応させる仕訳データを用いることが考えられる。一の勘定科目に対してチェックすべき事項が複数ある場合もあれば、複数の勘定科目にまたがってチェックすべき一の事項がある場合もあり、所定ルールを上記のような構成とすることにより、それらを漏らすことなくチェック可能とすることができる。
【0035】
また、分析部において用いられる所定ルールは、複数存在してもよく、それらの複数のルールのなかからユーザの任意の選択による一又は複数のルールを用いて分析処理を行うことが考えられる。具体的には、「最新の法令等に準拠したルール」と「近々の自社取引慣習ルール」という2つのルールを選択し、それらのルールを組み合わせて分析処理を行う、といった具合である。
【0036】
なお、複数の所定ルールを用いて分析処理を行う場合には、当該用いられるそれぞれの所定ルールの内容によっては、分析処理結果に齟齬が生じる場合も考えられる。そのような場合には、後記コメント付記部における処理において、分析処理結果に齟齬が生じた事実や当該齟齬の内容をコメントで付記するような構成が考えられる。
【0037】
また、あらかじめそれらの複数の所定ルール相互の関係として、分析処理結果に齟齬が生じた場合にどちらの処理結果を優先的に分析処理結果として取り扱うかのルールを設定することも考えられる。例えば、ユーザの任意に作成された所定ルールと、法令に準拠したルールとを用いた分析処理の結果に齟齬が生じた場合には、法令に準拠したルールを用いた分析処理結果を優先的に取り扱う、といった具合である。具体的には、所定ルールごとに優先度を示す情報を紐づけて保持しておき、当該優先度を示す情報を用いて分析処理を行うことが考えられる。当該構成により、多面的な観点での分析処理が可能になるのみならず、矛盾するようなルールを用いたとしても、当該矛盾が顕在化しないよう、あるいは顕在化しても矛盾の事実自体も把握可能とすることができるので、仕訳処理を行った担当者の勘違いによる仕訳処理も容易に把握可能とすることができる。
【0038】
なお、既に述べているように、所定ルールは、特定の事業者識別情報と紐づけて保持され、当該事業者識別情報に対応した所定ルールである個別ルールに従い分析が行われる個別分析手段を備えていてもよい。事業者ごとに当該事業所において特殊な取引が行われ、当該取引の仕訳処理も極めて特異な処理が必要とされるような場合には、事業者ごとに特化した個別ルールを用いて分析処理をすることが好ましい。当該構成をとることにより、他社で仕訳処理をした経験のあるような担当者が、転職先で仕訳処理をすることとなったような場合でも、当該転職先独特の仕訳処理を容易に理解可能とすることができる。
【0039】
ちなみに、個別ルールは当該事業者によって臨機応変に加除修正が行われてもよいし、当該事業者以外の識別情報を有するユーザであって、当該事業者と業務上の関連を有することを意味する識別情報である関係者識別情報を有するユーザによってのみ加除修正が行われるような構成も考えられる。関係者識別情報は、例えば税理士や公認会計士などの外部専門家を識別する情報として機能し得る。
【0040】
以下では、個別ルールの内容として考えられるいくつかの事項を例に挙げ、分析部の処理の一例を説明する。なお、以下で説明する個別ルールの内容は、本発明における個別ルールの必須の要素でなければ、当該個別ルールの内容の当否とは関係ない。
【0041】
まず個別ルールの内容として、貸方と借方に入力されるべき勘定科目を設定しておき、入力受付部にて受け付けた仕訳データの貸方と借方の入力内容が当該設定と適合するかを判断する。例えば、経費科目はその性質上借方に入力されるべき勘定科目であって、個別ルールにおいても当該内容が設定される。そして、入力された仕訳データにおいて経費科目が借方に設定されている場合には、当該設定及び当該設定に基づいて入力された仕訳データを誤りであると分析する、といった処理が行われる。
【0042】
次に個別ルールの内容として、所定金額を超える支出に対し、当該超過の事実や当該超過に係る勘定科目に応じた留意事項や次にとるべき対応を設定しておき、仕訳データに該当する支出の有無やその内容を判断する。例えば、仕訳データに取得価額が10万円以上の備品を取得した旨の入力があった場合、当該備品が減価償却資産か否か、減価償却資産である場合に減価償却処理に関する仕訳データの入力もあわせてなされているか否かを判断するようなことが考えられる。
【0043】
また、仕訳処理の正否に関する内容のほか、適否に関する内容が含まれていてもよい。例えば、勘定科目ごとに目安となる金額を設定しておき、仕訳データの該当する仕訳内容において当該金額を超過する内容が含まれていないかどうかを判断するようなことが考えられる。より具体的に言えば、仕訳データにおいて多額の交際費や福利交際費が支出されていることがうかがえる場合には、当該支出の適否をも判断可能とすることが考えられる。
【0044】
その他個別ルールの内容としては、非課税又は不課税であるべき取引(社会保険料や支払利息、香典、海外旅費など)が課税仕入などの取引として処理されている場合や、契約内容に応じて勘定科目が変わってくる場合(役職員に関する生命保険料の支払など)、業種業態により特殊その他非日常的な取引(機械装置や車両運搬具に関する取引など)に対する仕訳処理の留意点などが考えられる。
【0045】
また、個々の仕訳処理の内容それ自体に関するルールにとどまらず、個々の仕訳処理と他の情報との整合性に関するルールもまた個別ルールの内容として分析部において用いられる場合があってもよい。例えば、所定時点(個々の取引が生じた時点の場合もあれば、月末あるいは期末などの期間の末日時点の場合があってよい)にて現預金勘定の残高がマイナスになっていないかを判断するようなことが考えられる。
【0046】
また、未払金や売掛金、預り金などの勘定科目に関し、取引と取引との間の期間が所定期間(例えば30日、60日など)を超えていないかを判断するようなことも考えられる。当該判断が個別ルールの内容として行われることにより、あらかじめ一定期間内に処理がなされるべき取引に対する仕訳処理の誤りや実際の取引自体の遺脱などのミスを早期に発見することが可能になる。
【0047】
ここで図4を示す。同図は、図3を用いて説明した仕訳データを分析するためにユーザが必要とする処理の一例を示す図である。同図に示されているように、仕訳データを分析する際には、所定の動作を通じて「仕訳チェックを開始します。」などのように仕訳データの分析を行う旨のメッセージを表示させるとともに、当該分析に用いる個別ルールの選択や指定を受け付けたりするような構成が考えられる。同図においては、「貸借逆仕訳のチェック」「資産計上(10万円超)の判定確認」「摘要文字列と勘定科目/税区分の関係チェック」「非日常取引の洗い出し」「その他のチェック」などのタイトルが並んでおり、それらのタイトルに関連付けられた内容の個別ルールのうち「資産計上(10万円超)の判定確認」に関する個別ルールを用いた分析を行うべき旨の入力を受け付けようとしている様子が示されている。当該構成を採用することにより、事業者における会計担当者や、外部の専門業者は、当該事業者において特に分析が必要ないしミス等が懸念される事項に関しピンポイントで効率よく分析を行うことが可能となる。
【0048】
なお分析部に関連し、所定タイミングで分析部における分析処理を行うように制御するための分析タイミング制御部が構成されてもよい。具体的には、隔週や隔月の所定の日時を所定タイミングとして定期的な分析処理を行う方法が考えられるほか、所定時間仕訳データの入力を受け付けなくなったタイミングで分析処理を行うような方法、所定情報量の仕訳データの入力を受け付けたタイミングで分析処理を行うような方法などが考えられる。
【0049】
これらの分析タイミング制御の仕方は、ユーザが任意に設定することができ、分析処理結果は、当該分析処理タイミングに応じて記録されることが望ましい。当該構成をとることによって、定期的な分析結果の把握ないし管理を行い、ユーザの仕訳処理能力の向上にもつなげることが可能となる。
【0050】
「コメント付記部」0204は、一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じたコメントを付記するように構成されている。ここでのコメントの内容は適宜設定可能であるが、付記されたコメントは、ユーザに対し視認可能に表示出力される。表示出力の構成としては、一の仕訳データに対し対となるように表示させることが望ましい。当該構成を採用することにより、仕訳データのどの部分に対し、どのような分析が行われているのかの把握が容易となり、その修正や、次回以降の仕訳処理に活かすことが可能となる。
【0051】
なお、ここでのコメントとして、過去の仕訳処理における分析結果を踏まえたコメントを出力するような構成があってもよい。具体的には、「○○月●●日の仕訳処理と同じミスです。」「○○月△△日の仕訳処理と内容が重複していますがよろしいですか。」などのように、過去の仕訳処理の分析結果を踏まえた分析結果についてのコメントがあれば、ユーザにとっては、より具体的な対応をとるイメージをもって分析結果を理解することができる。
【0052】
なおこのとき、表示出力されるコメントに、当該コメント内に記載された過去の分析結果や、当該過去に分析された仕訳データへのリンクなどを生成してともに表示出力するような構成があってもよい。当該構成を採用すれば、より一層仕訳処理の一貫性についての理解をしやすくすることができる。
【0053】
ここで図5を示す。同図は、図3及び4を用いて説明した仕訳データを分析した結果を出力する一例を示す図であって、点線部分で覆われた領域0501内にコメント付記部の処理結果をして付記されたコメントが表示出力されている様子を確認することができる。すなわち、2021年4月30日と同年5月31日におこなわれた取引に関する仕訳処理については「OK」とのコメントが付記されており、当該各取引の仕訳処理に特段の問題がなかったことを視認可能なっている。一方それ以外の取引の仕訳処理については、いずれも短いコメントとともに「詳細」とのコメントが付記されていることが確認できる。例えば、2021年6月30日に行われた現金による売上計上に関する仕訳処理に関しては、「貸借逆仕訳」との表記がなされ、その下の「詳細」と付記されたコメントをクリックすると、例えば、リンク先において「売上を計上する場合、『売上高』科目は借方に、『現金』等の科目は貸方に入力する必要があります」などのように、「貸借逆仕訳」と付記されたコメントを補足する付記コメントを表示するような構成が採用されうる。
【0054】
このように、既存の仕訳データと付記されるコメントとを同一画面で表示出力可能なように構成することで、これを見たユーザに対し、コメントの趣旨や当該コメントにおいて言及される取引の関連性を把握容易にすることができる。この場合のコメントについては、仕訳データの表示とは異なる表示態様(例えば色やフォントの大きさ、点滅などの視覚的効果など)にて表示可能とすることが好ましく、そうすることで、ユーザに当該仕訳処理の当否の把握をしやすくすることができる。
【0055】
ただ、これらの構成を採用することで表示構成上コメントの内容が複雑になると、却って視認性を損なうことから、具体的なコメントはリンク機能を用いることなどにより、別途表示させるなどの方法でユーザに把握可能とすることが好ましい。いずれにしても、このような構成を採用することで、ユーザに対し、仕訳処理の内容に対する分析結果をより視認しやすく把握させることが可能となる。
【0056】
ちなみに、ここまで説明した仕訳データについては、コメント付記やその後の修正などを経て、別途の仕訳データとして編集されたのち、外部に出力することができる。そしてその出力に際しては、所定のフォーマットを選択し当該フォーマットに適合した仕訳データとして出力されることが可能である。通常仕訳データは、各種のソフトウェアを用いて作成、編集、管理される場合が多く、それらはそれぞれ異なるフォーマットにて仕訳データを管理している。上記構成を採用すれば、それらの異なるフォーマットを採用するソフトウェアに適合した仕訳データのチェックを行うことができ、ユーザの便宜に資することができる。
【0057】
<具体的な構成>
ここで図6を示す。同図は本実施形態の仕訳確認システムの機能的な各構成をまとめて一のハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図である。各装置はいずれも、それぞれ各種演算処理を実行するための「CPU」0601と、「記憶装置(記憶媒体)」0602と、「メインメモリ」0603と、「入力インタフェース」0604、「出力インタフェース」0605、「ネットワークインタフェース」0606と、を備え、入出力インタフェースを介して、例えば「タッチパネル」0607、「ディスプレイ」0608などの外部周辺装置と情報の送受信を行う。
【0058】
また、本実施形態の仕訳確認システムは、ネットワークインタフェースを介して複数の「事業者端末」0680や「専門家端末」0690などの外部装置と情報の送受信を行いうる。このネットワークインタフェースの具体的な態様は有線、無線を問わず、また通信の方法も、両端末間で直接、間接なされるかを問わない。よって特定の外部装置ないし同装置の利用者と紐づけられた第三者の管理するサーバとの間で情報の送受信を行ういわゆるクラウドコンピューティングの形式を採用することも可能である。
【0059】
記憶装置には以下で説明するような各種プログラムが格納されており、CPUはこれら各種プログラムをメインメモリのワーク領域内に読み出して展開、実行する。なお、これらの構成は、「システムバス」0699などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う(以上の構成の基本的な構成は、以下で説明する他の装置のいずれについても同様である。
【0060】
(事業者識別情報取得部の具体的な構成)
事業者識別情報取得部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、具体的には、CPUが記憶装置から「事業者識別情報取得プログラム」0610をメインメモリに読み出して実行し、事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得し、当該事業者識別情報をその他の情報と紐付け可能な形態にてメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0061】
(入力受付部の具体的な構成)
入力受付部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、具体的には、CPUが記憶装置から「入力受付プログラム」0620をメインメモリに読み出して実行し、事業者識別情報取得プログラムの実行により得られた事業者識別情報のうち所定の情報を読みだしたうえ、当該事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付け、その結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0062】
(分析部の具体的な構成)
分析部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、具体的には、CPUが記憶装置から「分析プログラム」0630をメインメモリに読み出して実行し、所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析したうえ、当該分析結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。なおここで用いる所定ルールとは、外部又は内部のハードウェアに格納された、仕訳データの当否を判定するための一又は複数のルールであり、その格納先は特に問わない。
【0063】
ちなみに、本実施形態の仕訳確認システムにおいて分析タイミング制御部をさらに有する構成の場合、CPUが記憶装置から「分析プログラム」をメインメモリに読み出して実行する際に、これに先立ち「分析タイミング制御プログラム」を実行し、予め設定された所定のタイミングで分析プログラムを実行するような制御処理を行う。
【0064】
(コメント付記部の具体的な構成)
コメント付記部は、コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、具体的には、CPUが記憶装置から「コメント付記プログラム」0640をメインメモリに読み出して実行し、一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じたコメントを付記したうえその処理結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0065】
<処理の流れ>
図7は、本実施形態の仕訳確認システムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS0701では、事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得する(事業者識別情報取得ステップ)。その後ステップS0702では、事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付け(入力受付ステップ)、その後もステップS0703において処理を終了すべきと判断されるまで、所定範囲における仕訳データの入力を受け付ける。
【0066】
ステップS0703で仕訳データの入力が終了したと判断されると、ステップS0704では、所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析する(分析ステップ)。そしてステップS0705では、一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じたコメントを付記する(コメント付記ステップ)。
【0067】
なおここでは、いったん一定範囲の仕訳データの入力が完了したのちにまとめて複数の仕訳データを分析し、その結果に応じたコメントを付記する構成について説明した。ただしそれ以外にも例えば、仕訳データの入力の都度、当該入力を受け付けた仕訳データを分析してもよいし、当該分析結果に応じたコメントを付記しても良い。また、仕訳データの入力の都度、当該入力を受け付けた仕訳データを分析しつつ、分析結果に応じたコメントの付記は、複数の仕訳ごとにまとめて行っても良い。すなわち、仕訳データが複数の仕分けにより構成されうる場合、入力受付ステップ、分析ステップ、コメント付記ステップの処理の順番は、柔軟に変更可能である。
【0068】
<効果>
以上の構成を採用する仕訳確認システムを利用することにより、事業者における仕訳処理に対する知見が十分でない担当者においても、自身の行った仕訳処理に対する客観的な評価を踏まえ、時宜にあった訂正の機会を得ることができ、ひいては自身の体験に基づいた知見を得ることができるようになるだけでなく、当該事業者を担当する税理士や公認会計士等の士業者による訂正処理や担当者の指導といった煩雑な手間を解消することができるようになる。。
【0069】
<<実施形態2>>
<概要>
本実施形態の仕訳確認システムは、基本的には実施形態1に記載の仕訳確認システムの技術的特徴と同様であるが、付記したコメントを事業者識別情報及び当該コメント対象となる仕訳とともに履歴として取得するとともに、取得した履歴を用いてコメントを付記する点において更なる特徴を有している。
【0070】
<機能的構成>
図8は、本実施形態の仕訳確認システムの機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「仕訳確認システム」0800は、「事業者識別情報取得部」0801と、「入力受付部」0802と、「分析部」0803と、「コメント付記部」0804と、「履歴取得部」0805と、を有し、コメント付記部は「履歴利用手段」0814を有する。基本的な構成は、実施形態1の図2を用いて説明した仕訳確認システムと共通するため、以下では相違点である「履歴取得部」0805と、「履歴利用手段」0814の機能について説明する。
【0071】
「履歴取得部」0805は、付記したコメントを事業者識別情報及び当該コメント対象となる仕訳データとともに履歴として取得するように構成される。ここでいう「履歴」には、仕訳データを構成する各取引の内容や、当該取引に対する分析結果としての正否や適否、当該分析結果に対するコメント付記の有無や当該付記されたコメントの内容などが考えられ、それらの情報それぞれに、当該情報の内容に応じたタグを付与するなどした場合には、当該タグもまたここでいう履歴に含まれる。そして当該仕訳データを識別可能なIDである分析結果IDなどを付与するなどしたうえ、当該分析結果IDを用いて管理することが考えられる。
【0072】
「履歴利用手段」0814は、コメント付記部において、履歴取得部にて取得した履歴を用いてコメントを付記するするように構成される。ここでいう「履歴を用いて」とは様々な処理が考えられるが、例えば、過去の取引に関する分析結果につき所定の関係に立つと判断されるタグが付与された情報を読み出し、当該読みだした情報を、仕訳処理の分析結果に対するコメントと共に付記するような構成が考えられる。その場合には、過去の取引の日時や当該取引に関し分析処理を行った日時、その際の仕訳処理を行った担当者の情報などを共に付記する構成があってもよい。これらの構成を採用することで、過去の類似する性質をもつ取引に関する仕訳処理との異同や、過去の分析を通じて指摘された事項が、今般の仕訳処理において解消されているか、再度誤った処理がなされていないか、などといった比較が容易に視認可能となる。
【0073】
なおここで、本実施形態の仕訳確認システムの分析部に関し、履歴取得部にて異なる事業者識別情報と紐づいて取得される履歴をも用いて仕訳データを分析する横断的履歴利用手段を有するような構成も考えられる。例えば、同種同業態であったり、企業規模や取引形態、地域が近接していたりする事業者が行った仕訳データの分析結果がここで用いられる「履歴」に含まれうる。これらの情報をも用いて仕訳データを分析することができれば、自社が行っている仕訳処理が、他社に比べて特異であって是正すべきであるといった情報を把握することが可能になったり、他社もよく間違えがちなポイントを把握し、事業者内部における担当者教育の要素とすることなどが可能となる。
【0074】
なお、横断的履歴利用手段を用いる場合については、当該異なる事業者識別情報と紐づいて取得される履歴は、あくまで仕訳データの分析に用いられるのであって、その後のコメント付記の処理には用いられないことが望ましい。他事業者へ自社の仕訳処理データが開示されることにもなりかねず、拒否反応を示される懸念が強いのみならず、倫理的法的観点からも疑義があるためである。
【0075】
<具体的な構成>
本実施形態の仕訳確認システムを構成する各装置のハードウェア構成は、基本的には、図6を用いて説明した実施形態1の仕訳確認システムにおけるハードウェア構成と同様である。そこで以下については、これまで説明していない「履歴取得部」や「履歴利用手段」、「横断的履歴利用手段」の具体的な処理について説明する。
【0076】
(履歴取得部の具体的な構成)
履歴取得部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「履歴取得プログラム」をメインメモリに読み出して実行し、コメント付記プログラムの実行により生成された付記コメントを事業者識別情報及び当該コメント対象となる仕訳と紐付けて履歴として取得し、メインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0077】
(履歴利用手段の具体的な構成)
履歴利用手段は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、コメント付記プログラムの実行に際し、CPUが記憶装置から「履歴利用サブプログラム」をメインメモリに読み出して実行し、履歴取得プログラムの実行により取得された履歴を読み出し、当該読みだした履歴を用いてコメントを付記する処理を行い、その結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0078】
(横断的履歴利用手段の具体的な構成)
なお、横断的履歴利用手段を備える構成を採用する場合、横断的履歴利用手段は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、分析プログラムの実行に際し、CPUが記憶装置から「横断的履歴利用サブプログラム」をメインメモリに読み出して実行し、履歴取得プログラムの実行により取得した事業者識別情報と異なる事業者識別情報と紐づいて取得される履歴をも用いて仕訳データの分析処理を実行する。
【0079】
<処理の流れ>
図9は、本実施形態の仕訳確認システムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS0901では、事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得する(事業者識別情報取得ステップ)。その後ステップS0902では、事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付け(入力受付ステップ)、その後もステップS0903において処理を終了すべきと判断されるまで、所定範囲における仕訳データの入力を受け付ける。
【0080】
ステップS0903で仕訳データの入力が終了したと判断されると、ステップS0904では、所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析する(分析ステップ)。そしその後は、ステップS0915にて、以前に履歴取得ステップにて取得した履歴が存在するかどうかを判断し、そのような履歴がある場合には、ステップS0925として、当該履歴を用いてコメントを付記する処理を行う(履歴利用サブステップ)。履歴がない場合には、ステップS0905にて、分析の結果にのみ応じたコメントを付記する(コメント付記ステップ)。そしてその後ステップS0906にて、付記したコメントを事業者識別情報及び当該コメント対象となる仕訳とともに履歴として取得する(履歴取得ステップ)。
【0081】
なおここでは図示しないが、ステップS0915及びステップS0925の処理に代えて又はこれに加えて、履歴取得ステップにて分析対象と紐付けられた事業者識別情報と異なる事業者識別情報が存在するかどうかを判断し、そのような事業者識別情報があると判断されれば、当該事業者識別情報と紐づいて取得される履歴をも用いて仕訳データを分析したうえでコメントを付記する(横断的履歴利用サブステップ)場合があってもよい。
【0082】
<効果>
本実施形態の仕訳確認システムを用いることにより、実施形態1の仕訳確認システムを用いる場合に比べ、競合他社やターゲットとなるような他事業者の仕訳実務を参考にしながら仕訳確認をすすめることが可能になる。
【0083】
<<実施形態3>>
<概要>
本実施形態の仕訳確認システムは、基本的には実施形態1や2に記載の仕訳確認システムの技術的特徴と同様であるが、コメント付記以後に当該コメントの対象となった仕訳に対する修正履歴に関する記録を取得し、前記修正履歴をも用いて仕訳データを分析する点において更なる特徴を有している。
【0084】
<機能的構成>
図10は、本実施形態の仕訳確認システムの機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「仕訳確認システム」1000は、「事業者識別情報取得部」1001と、「入力受付部」1002と、「分析部」1003と、「コメント付記部」1004と、「修正履歴取得部」1005と、を有し、分析部は「修正履歴利用分析手段」1013を有する。基本的な構成は、実施形態1の図2を用いて説明した仕訳確認システムと共通するため、以下では相違点である「修正履歴取得部」1005と、「修正履歴利用分析手段」1013の機能について説明する。
【0085】
「修正履歴取得部」1005は、コメント付記部によるコメント付記以後に当該コメントの対象となった仕訳に対する修正履歴に関する記録を取得するように構成されている。付記されたコメントのなかには、図5を用いて説明したように、仕訳処理の誤りを指摘する内容も含まれ得るのであって、そのような指摘に対しては、仕訳処理の修正が必要となる。そのため、仕訳処理修正の原因や修正の内容、修正担当者のID、修正にかけた時間などの情報を修正履歴として記録することが考えられる。
【0086】
「修正履歴利用分析手段」1013は、分析部にて、前記修正履歴をも用いて仕訳データを分析するように構成されている。修正履歴を用いた分析の具体的な内容としては、例えば、前回付記コメントにて指摘された事項が解消されているか否か、再度仕訳処理に誤りがある場合には、なぜ当初のコメント付記の内容が活かされなかったのかなどを分析処理することが考えられる。また、修正担当者のIDといった情報を修正履歴として取得した場合には、当該修正処理の結果を通じて、当該修正担当者の仕訳処理に関するのスキルや評定に関する判定処理をも行うことが考えられる。当該構成を採用することにより、担当者のスキル向上や担当業務に対し取り組む姿勢などの評価をも可能にできる。
【0087】
<具体的な構成>
本実施形態の仕訳確認システムを構成する各装置のハードウェア構成は、基本的には、図6を用いて説明した実施形態1の仕訳確認システムにおけるハードウェア構成と同様である。そこで以下については、これまで説明していない「修正履歴取得部」、「修正履歴利用分析手段」の具体的な処理について説明する。
【0088】
(修正履歴取得部の具体的な構成)
修正履歴取得部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「修正履歴取得プログラム」をメインメモリに読み出して実行し、コメント付記プログラムの実行以後に当該プログラムの実行によりコメントの対象となった仕訳に対する修正履歴に関する記録を取得し、メインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0089】
(修正履歴利用分析手段の具体的な構成)
修正履歴利用分析手段は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、分析プログラムの実行に際し、CPUが記憶装置から「修正履歴利用分析サブプログラム」をメインメモリに読み出して実行し、前記修正履歴プログラムの実行により得られた修正履歴に関する記録をも用いて仕訳データを分析する処理を行う。
【0090】
<処理の流れ>
図11は、本実施形態の仕訳確認システムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは、以下のステップからなる。最初にステップS1101では、事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得する(事業者識別情報取得ステップ)。その後ステップS1102では、事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付け(入力受付ステップ)、その後もステップS1103において処理を終了すべきと判断されるまで、所定範囲における仕訳データの入力を受け付ける。
【0091】
ステップS1103で仕訳データの入力が終了したと判断されると、所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析する(分析ステップ)。なお分析ステップにおいてはまず、ステップS1114にて、以前に修正履歴取得ステップにて取得した修正履歴が存在するかどうかを判断し、そのような修正履歴がある場合には、ステップS1124にて、当該修正履歴をも用いて仕訳データを分析する処理を行う(修正履歴利用分析サブステップ)。修正履歴が存在しない場合には、ステップS1104として、所定ルールにのみ従い、受け付けた仕訳データを分析する(分析ステップ)。
【0092】
そしてステップS1105では、一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じたコメントを付記する(コメント付記ステップ)とともに、その後ステップS1106では、当該コメント付記の対象となった仕訳に対する修正履歴に関する記録を取得する(修正履歴取得ステップ)。
【0093】
<効果>
本実施形態の仕訳確認システムを用いることにより、実施形態1や2の仕訳確認システムを用いる場合に比べて、自身の過去の実績をも踏まえて学習を行うことが可能となり、より理解度を深めた上で仕訳確認を進めることができる。
【0094】
<<実施形態4>>
<概要>
本実施形態の仕訳確認システムは、基本的には実施形態1から3に記載の仕訳確認システムの技術的特徴と同様であるが、コメント付記の際には一又は複数の質問を伴うコメントを付記し、当該コメントに対する回答を受け付け、前記受け付けた回答に従い再度の分析を行う点を更なる特徴として備えている。
【0095】
<機能的構成>
図12は、本実施形態の仕訳確認システムの機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「仕訳確認システム」1200は、「事業者識別情報取得部」1201と、「入力受付部」1202と、「分析部」1203と、「コメント付記部」1204と、「回答受付部」1205と、有し、コメント付記部は「質問付コメント付記手段」1214を、分析部は「重点分析手段」1213とをそれぞれ有する。基本的な構成は、実施形態1の図2を用いて説明した仕訳確認システムと共通するため、以下では相違点である「質問付コメント付記手段」1214、「回答受付部」1205、「重点分析手段」1213の機能について説明する。
【0096】
「質問付コメント付記手段」1214は、コメント付記部において、一又は複数の質問を伴うコメントを付記するように構成されている。ここでいう質問を伴うコメントについては、誤った仕訳処理がなされると判断した場合に、「なぜこのような仕訳をしようを思ったのですか?」といった意図を確認するための内容であることが考えられる。また、他にも、「この仕訳処理をするにあたり、以下の選択肢のうち、選択に迷った仕訳処理はありましたか?」などのように、間違えやすい他の複数の仕訳処理のなかからの選択を受けつけるような多肢選択型の内容であることも考えられる。
【0097】
「回答受付部」1205は、質問付きコメント付記手段により付記されたコメントに対する回答を受け付けるように構成されている。ここでの回答受付の態様は、上述した質問の内容及び態様に応じて種々の構成が考えられ、適宜設計が可能である。なお、回答受付部では、回答内容を受け付けることはもちろん、当該回答にかかった時間や、選択に迷ったような場合の回答経緯に関する情報をも回答として取得するように構成されてもよい。当該構成を採用することで、回答者がどのような点で悩み、仕訳処理を誤ったのかという根本的な要因の分析に資することができるようになる。
【0098】
「重点分析手段」1213は、分析部において、回答受付部にて受け付けた回答に従い再度の分析を行うように構成されている。ここでいう再度の分析とは、上記回答者の回答に応じて誤った仕訳処理がなされた原因ないし遠因を分析処理することが考えられる。回答結果については、いずれも一定の性質と関連付けられたタグを付与するなどして、他の仕訳処理や回答と比較や検索処理することを可能とし、当該比較などの処理を通じて分析が行われることが考えられる。ただもちろん、回答内容を自然言語処理するなどして解析し、上記誤った仕訳処理がなされた原因などを分析処理する方法ももちろんあってよい。いずれにしても、それらの分析がなされることで、一方的かつ形式的なコメント付記処理にとどまらず、回答者ひいては仕訳処理担当者の具体的な疑問点や認識に直接対応したコメント付記を実現可能にすることができるようになる。
【0099】
<具体的な構成>
本実施形態の仕訳確認システムを構成する各装置のハードウェア構成は、基本的には、図6を用いて説明した実施形態1の仕訳確認システムにおけるハードウェア構成と同様である。そこで以下については、これまで説明していない「質問付コメント付記手段」、「回答受付部」、「重点分析部」の具体的な処理について説明する。
【0100】
(質問付コメント付記手段の具体的な構成)
質問付コメント付記手段は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、コメント付記プログラムの実行に際し、CPUが記憶装置から「質問付コメント付記サブプログラム」をメインメモリに読み出して実行し、一又は複数の質問を伴うコメントを付記し、その処理結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0101】
(回答受付部の具体的な構成)
回答受付部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「回答受付プログラム」をメインメモリに読み出して実行し、質問付コメント付記サブプログラムの実行により出力した質問コメントに対する回答を受け付け、当該受け付けた内容をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0102】
(重点分析部の具体的な構成)
重点分析手段は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、分析プログラムの実行に際し、CPUが記憶装置から「重点分析サブプログラム」をメインメモリに読み出して実行し、前記回答受付プログラムの実行により得られた回答を読み出して、当該内容を用いて再度の分析処理を実行する。
【0103】
<処理の流れ>
図13は、本実施形態の仕訳確認システムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS1301では、事業者を識別するための情報である事業者識別情報を取得する(事業者識別情報取得ステップ)。その後ステップS1302では、事業者識別情報と紐づけて仕訳データの入力を受け付け(入力受付ステップ)、その後もステップS1303において処理を終了すべきと判断されるまで、所定範囲における仕訳データの入力を受け付ける。
【0104】
ステップS1303で仕訳データの入力が終了したと判断されると、ステップS1304では、所定ルールに従い、受け付けた仕訳データを分析する(分析ステップ)。そしてステップS1305では、一又は複数の仕訳に対し、分析の結果に応じ、一又は複数の質問を伴うコメントを付記する(質問付コメント付記サブステップ)。その後ステップS1306として、当該質問を伴うコメントに対する回答の有無を判断し(回答受付ステップ)、回答を受け付けたとの判断結果である場合には、前記受け付けた回答に従い、再度ステップS1304の分析ステップを実行する(重点分析サブステップ)。回答がない場合には、その後の処理を行わない。
【0105】
<効果>
本実施形態の仕訳確認システムを用いることにより、実施形態1から3の仕訳確認システムを用いる場合に比べて、入力の意図を踏まえたコメントを受け取ることができ、より実効性のあるコメントを受け取りつつ仕訳確認を進めることができる。
【符号の説明】
【0106】
0200・・・仕訳確認システム、0201・・・事業者識別情報取得部、0202・・・入力受付部、0203・・・分析部、0204・・・コメント付記部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13