IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウシオ電機株式会社の特許一覧

特開2023-79396放電ランプ、及び当該放電ランプに使用される電極
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079396
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】放電ランプ、及び当該放電ランプに使用される電極
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/073 20060101AFI20230601BHJP
   H01J 61/86 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H01J61/073 B
H01J61/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192857
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池 喜匡
【テーマコード(参考)】
5C015
【Fターム(参考)】
5C015JJ04
5C015JJ05
5C015JJ08
(57)【要約】
【課題】放電ランプの高出力化及び長寿命化を図る。
【解決手段】放電ランプの少なくとも一つの電極は、前記電極の内部に密閉空間を有する本体と、前記密閉空間内に充填され、前記本体を構成する材料よりも融点の低い伝熱体と、前記密閉空間内に配置され、前記伝熱体の対流を規制するとともに、前記伝熱体の融点よりも表面の融点が高い、規制体と、を備え、前記規制体は、前記伝熱体よりも密度が大きい、第一規制体と、前記伝熱体よりも密度が小さい、第二規制体と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に対向配置される一対の電極を有する放電ランプにおいて、前記一対の電極のうち、少なくとも一つの電極は、
内部に密閉空間を有する本体と、
前記密閉空間内に位置し、前記本体を構成する材料よりも融点の低い伝熱体と、
前記密閉空間内に位置し、前記伝熱体の融点よりも高い融点を示す表面を有し、前記伝熱体の対流を規制する規制体と、を備え、
前記規制体は、
前記伝熱体よりも密度が大きい第一規制体と、
前記伝熱体よりも密度が小さい第二規制体と、を含む
ことを特徴とする、放電ランプ。
【請求項2】
前記第一規制体の形状は、前記第二規制体の形状と異なることを特徴とする、請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記第二規制体は、一方向に延在する棒状であることを特徴とする、請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記第二規制体の、前記一方向に直交する断面での形状が、円形、三角形または台形を呈することを特徴とする、請求項3に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記第一規制体及び前記第二規制体は、それぞれ、前記軸方向に沿う中心軸から径方向外側へ延在するブレードを複数枚備え、前記第一規制体の前記ブレードの枚数は、前記第二規制体の前記ブレードの枚数より多いことを特徴とする、請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記第二規制体は、主にチタン又はセラミックスを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項7】
前記第一規制体の前記軸方向の長さをL1(mm)とし、
前記第二規制体が前記伝熱体に接する前記軸方向の長さをD2(mm)とし、
前記第一規制体と前記第二規制体との前記軸方向における間隔をH2(mm)とするとき、以下の(1)式を満たす
0 < H2/(L1+D2) ≦ 2 …(1)
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項8】
前記第二規制体が前記伝熱体に接する前記軸方向の長さをD2(mm)とするとき、以下の(2)式を満たす
D2 ≧ 1.5 …(2)
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項9】
放電ランプに使用される電極であって、前記電極は、
内部に密閉空間を有する本体と、
前記密閉空間内にあり、前記本体を構成する材料よりも融点の低い伝熱体と、
前記密閉空間内にあり、前記伝熱体の融点よりも高い融点を示す表面を有し、前記伝熱体の対流を規制する規制体と、を備え、
前記規制体は、
前記伝熱体よりも密度が大きい第一規制体と、
前記伝熱体よりも密度が小さい第二規制体と、を含む
ことを特徴とする、電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプ、及び当該放電ランプに使用される電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子、液晶表示素子又はプリント基板の製造工程に用いられる露光装置には、光源として放電ランプが用いられている。この放電ランプは、発光管内に陽極及び陰極が軸方向に対向配置されると共に、当該発光管内に水銀等の発光物質が封入される。
【0003】
斯かる放電ランプにおいては、点灯時に電極にかかる熱的負荷が高いことから、電極の過熱等に起因する電極材料の蒸発が生じることがある。この蒸発物が発光管の内壁に付着すると、放電ランプが、いわゆる「黒化」を引き起こし、発光管の光透過率が低下するという問題が生じる。
【0004】
この問題を解決するため、電極、特に陽極の内部に密閉空間を設け、密閉空間内に伝熱体を封入した構造を持つ放電ランプが提案されている。伝熱体は、ランプ点灯状態では溶融しており、陽極全体の温度分布によって密閉空間内で対流する。この伝熱体の対流が、陽極の先端(陰極に最も近い端)の熱を後端(陰極から最も遠い端)に伝達することで、陽極先端の温度が下がり、電極材料の蒸発量が抑制される。
【0005】
特許文献1及び特許文献2には、伝熱体の周方向の対流を規制する規制体を、密閉空間内に設けることが記載されている。規制体を密閉空間内に設けることにより、伝熱体の周方向の対流に起因する電極先端の穴開きを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-028168号公報
【特許文献2】特開2017-016761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昨今、放電ランプのさらなる高出力化及び長寿命化が、市場より求められている。放電ランプを高出力化すると電極にかかる熱的負荷が増大するため、増大する熱的負荷に長時間耐える電極が求められる。本発明の課題は、高出力化及び長寿命化を図った放電ランプと、当該放電ランプに使用される電極とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、放電ランプを高出力で使用した場合の電極の熱的負荷を調査するため、放射温度計を使用して点灯時の電極表面の温度分布を測定した。測定の結果、電極先端の温度が高い放電ランプと、電極表面の温度変動幅が大きい放電ランプがあることに気付いた。温度変動とは、短時間(例えば、1分間)の中で温度が変動することを指す。電極先端の温度が高い状態、又は、電極表面の温度変動幅が大きな状態が長時間続くと、高温クリープ変形によって電極先端に穴が開き、伝熱体が漏出するに至る。そうすると、電極の排熱性が失われて、放電ランプが短寿命になる。
【0009】
詳細は後述するが、本発明者の鋭意研究の結果、電極先端の温度変動幅の拡大は、伝熱体の対流が乱流化することにより生じることが分かった。伝熱体の乱流を抑えるには、密閉空間内に設けた規制体の設計を見直すとよい。特に、規制体を大きくすると、効果的に乱流を抑制できる。しかしながら、規制体を大きくすると、密閉空間に占める規制体の容積が増加し、伝熱体の容量が低下する。伝熱体の容量が低下すると、熱伝達効率が低下し、伝熱体によって電極先端の温度を低下させる機能が損なわれてしまう。そこで、規制体の容積の増加を抑制しつつ、伝熱体の乱流を抑制する、規制体の好適な設計を検討し、以下の放電ランプを案出した。
【0010】
本発明の放電ランプは、軸方向に対向配置される一対の電極を内部に有する放電ランプであり、前記一対の電極のうち少なくとも一つの電極は、
内部に密閉空間を有する本体と、
前記密閉空間内に位置し、前記本体を構成する材料よりも融点の低い伝熱体と、
前記密閉空間内に位置し、前記伝熱体の融点よりも高い融点を示す表面を有し、前記伝熱体の対流を規制する規制体と、を備え、
前記規制体は、
前記伝熱体よりも密度が大きい第一規制体と、
前記伝熱体よりも密度が小さい第二規制体と、を含む。
【0011】
伝熱体の対流は、伝熱体の底部付近に位置する第一規制体と、伝熱体の界面付近に位置する第二規制体とにより規制される。これらの規制体の対流制御により、伝熱体の乱流化を抑制できる。伝熱体の乱流化を抑制すると、電極内表面の温度変動幅が小さくなる。さらに、第一規制体と第二規制体とに分割された規制体の容積の合計は、分割されていない場合の規制体が占有する容積に比べて小さいため、伝熱体の容量を確保できる。よって、熱伝達効率が低下しにくく、電極先端の温度を低い状態で維持できる。その結果、高温クリープ変形による電極先端の穴開き及び電極材料の蒸発による発光管の黒化が抑制され、放電ランプの高出力化及び長寿命化が可能となる。
【0012】
前記第一規制体の形状は、前記第二規制体の形状と異なっても構わない。
【0013】
前記第二規制体は、一方向に延在する棒状であっても構わない。
【0014】
前記第二規制体の、前記一方向に直交する断面での形状が、円形、三角形または台形を呈しても構わない。
【0015】
前記第一規制体及び前記第二規制体は、それぞれ、前記軸方向に沿う中心軸から径方向外側へ延在するブレードを複数枚備え、前記第一規制体の前記ブレードの枚数は、前記第二規制体の前記ブレードの枚数より多くても構わない。
【0016】
前記第二規制体は、主にチタン又はセラミックスを含んでも構わない。
【0017】
前記第一規制体の前記軸方向の長さをL1(mm)とし、
前記第二規制体が前記伝熱体に接する前記軸方向の長さをD2(mm)とし、
前記第一規制体と前記第二規制体との前記軸方向における間隔をH2(mm)とするとき、以下の(1)式を満たしても構わない。
0 < H2/(L1+D2) ≦ 2 …(1)
【0018】
前記第二規制体が前記伝熱体に接する前記軸方向の長さをD2(mm)とするとき、以下の(2)式を満たしても構わない。
D2 ≧ 1.5 …(2)
【0019】
本発明の放電ランプに使用される電極は、
前記電極の内部に密閉空間を有する本体と、
前記密閉空間内に充填され、前記本体を構成する材料よりも融点の低い伝熱体と、
前記密閉空間内に配置され、前記伝熱体の対流を規制するとともに、前記伝熱体の融点よりも表面の融点が高い、規制体と、を備え、
前記規制体は、
前記伝熱体よりも密度が大きい、第一規制体と、
前記伝熱体よりも密度が小さい、第二規制体と、を含む。
【発明の効果】
【0020】
高出力化及び長寿命化を図った放電ランプと、当該放電ランプに使用される電極とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】放電ランプの一実施形態の概要を示す図である。
図2図1の放電ランプにおける陽極の拡大断面図である。
図3】密閉空間の内部を示す斜視図である。
図4A図2のA-A矢視断面図である。
図4B図2のB-B矢視断面図である。
図5A】二つの規制体を有する密閉空間で、伝熱体が対流する様子を示す図である。
図5B】一つの規制体を有する密閉空間で、伝熱体が対流する様子を示す図である。
図6】伝熱体占有率と、温度変動幅の最大値との関係を示すグラフである。
図7A】第一規制体の上面図である。
図7B】第一規制体の側面図である。
図8A】第二規制体の上面図である。
図8B】第二規制体の側面図である。
図9】伝熱体の加熱溶融後に冷却された陽極の断面図である。
図10】陽極の切断位置を示す図である。
図11A】第二規制体の第一変形例の上面図である。
図11B】第二規制体の第一変形例の側面図である。
図12A】第二規制体の第二変形例の上面図である。
図12B】第二規制体の第二変形例の側面図である。
図13A】第二規制体の第三変形例の上面図である。
図13B】第二規制体の第三変形例の側面図である。
図14】第一規制体の第一変形例である。
図15】第一規制体の第二変形例である。
図16】第一規制体の第三変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
放電ランプの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。なお、以下の、グラフを除く各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致しておらず、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0023】
以下において、グラフを除く各図面は、XYZ座標系を参照しながら説明される。本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。以下に述べる実施形態では、-Z方向は重力方向を表す。
【0024】
[放電ランプの概要]
図1を参照しながら、放電ランプの一実施形態の概要を説明する。放電ランプ100は、発光管1と、発光管1の内部で中心軸Z1の延在方向に対向配置される陽極2及び陰極3と、陽極2及び陰極3をそれぞれ支持するリード棒4と、を備えるショートアーク型放電ランプである。本実施形態では、陽極2が陰極3の上方(+Z方向)に位置するように放電ランプ100を配置して、放電ランプ100を点灯させる。
【0025】
ショートアーク型放電ランプとは、陽極2の先端と陰極3の先端とが40mm以下の間隔(熱膨張をしていない常温時の値)を空けて配置されるものをいう。斯かる放電ランプの例として、半導体素子、液晶表示素子又はプリント基板等の製造工程で使用される露光装置において使用される、定格電力が2kW~35kWの放電ランプがある。なお、本実施形態の放電ランプ100は、陽極2の先端と陰極3の先端とが6mmの間隔を空けて配置される。
【0026】
発光管1、陽極2、陰極3及びリード棒4は、いずれも中心軸Z1を中心とするように配置される。陽極2が、陰極3の上方(+Z方向)に配置される。中心軸Z1の延在方向における発光管1の両端には、封止管11が設けられる。封止管11には、リード棒4に電気的に接続される口金12が取り付けられる。
【0027】
発光管1はガラス管から形成される。発光管1は、中心軸Z1の両端からそれぞれ中央に向かうにつれて、ガラス管の内径が大きくなる領域を有する。内径が大きくなるこの領域は、球体又は楕円体の形状を呈しても構わない。ガラス管には、例えば石英ガラスが使用できる。内径が大きくなる領域は、発光空間として機能する。発光空間には、水銀等の発光物質が封入される。
【0028】
[陽極の概要]
図2を参照しながら、陽極2の概要を説明する。図2は、図1の放電ランプにおける陽極2の拡大断面図である。陽極2は、中心軸Z1を中心とする回転体形状を呈する。図2では、中心軸Z1を通る平面における陽極2の断面を示している。図2において、対向する陰極3に近い陽極2の先端13が下側(-Z側)に示され、リード棒4(図2では不図示)が接続される後端14が上側(+Z側)に示されている。なお、図2で示される規制体(10,20)は、その断面形状ではなく、その側面形状によって示されている。
【0029】
陽極2は、陽極2の本体5と、伝熱体9と、伝熱体9の対流を規制する規制体(10,20)と、を有する。本体5は、容器5aと蓋5bを含む。蓋5bは、容器5aから取り外すことができないように装着される。蓋5bを容器5aに装着すると、本体5の内部に密閉空間6が形成される。放電ランプ100の点灯時に本体5が溶融し難いように、本体5は、高融点材料で構成される。本実施形態において、本体5(容器5aと蓋5b)は、主にタングステンを含む材料から構成される。
【0030】
本実施形態の場合、密閉空間6内には、伝熱体9及び規制体(10,20)の他に、ガス空間8を有する。ガス空間8は、例えば、空気、又は不活性ガス(例えば、アルゴン)で満たされる。本実施形態の密閉空間6の中心軸は、陽極2の中心軸Z1と同じである。本実施形態の陽極2における、密閉空間6の内壁15の形状は、底面が小さく上面が大きくなるように配置された円錐台と、当該円錐台に接して配置された円柱とから構成される形状である。
【0031】
伝熱体9は、放電ランプ100を点灯させた高温時に液体として存在する。伝熱体9は、放電ランプ100の消灯時に固体として存在する。そのため、伝熱体9の融点は、本体5を構成する材料の融点よりも低い。放電ランプ100の点灯によって伝熱体9が溶融することにより、密閉空間6の中で伝熱体9が対流し、陽極2の先端13付近の熱を、陽極2の後端14へ伝達する。後端14に伝達された熱は、リード棒4(図2では不図示)に伝達されるとともに、放射により電極表面から電極外部へ放出される。これにより、陽極2の先端13の温度が低下する。
【0032】
伝熱体9を構成する材料は、熱伝導性材料から構成される。伝熱体9を構成する材料は、本体5を構成する材料よりも高い熱伝導率を有する材料であるとよい。本実施形態では、伝熱体9を構成する材料として、主に銀を含む材料が使用される。伝熱体9を構成する材料として、主に金を含む材料が使用されても構わない。
【0033】
[規制体の概要]
図2に加えて、図3図4A及び図4Bを参照しながら、規制体(10,20)の概要を説明する。図3は、密閉空間6の内部を示す斜視図である。図3では、規制体(10,20)のみが実線で描かれている。図4Aは、図2の線分A-Aにおける矢視断面図である。図4Bは、図2の線分B-Bにおける矢視断面図である。なお、図4A及び図4Bでは、本体5のみが斜線でハッチングされて示されている。
【0034】
図2及び図3に示されるように、本実施形態では、規制体(10,20)は、第一規制体10と第二規制体20とから構成されている。第一規制体10と第二規制体20は、Z方向に沿って並んで配置される。
【0035】
第一規制体10の密度は、伝熱体9の密度よりも大きい。第二規制体20の密度は、伝熱体9の密度よりも小さい。そのため、放電ランプ100の点灯によって伝熱体9が溶融するとき、第一規制体10は伝熱体9に沈み、第二規制体20は伝熱体9に浮く。よって、第二規制体20は、第一規制体10の+Z方向に位置する。
【0036】
図4Aに示されるように、第一規制体10の中心軸がZ2として示される。中心軸Z2は、Z方向(軸方向)に沿う方向に延在する。中心軸Z2が、密閉空間6の中心軸と重なると好ましい。しかしながら、第一規制体10が伝熱体9の対流に押されて傾き、中心軸Z2は、密閉空間6の中心軸と重ならないことがある。
【0037】
本実施形態において、第一規制体10は4枚のブレード10bを備える。各ブレード10bは、それぞれ、Z方向に沿う中心軸Z2から径方向外側へ延在する。図2図3及び図4Aでは、4枚のブレード10bのうち、2枚のブレード10bは、中心軸Z2から±X方向へ延在する様子が示されている。4枚のブレード10bのうち、残り2枚のブレード10bは、中心軸Z2から±Y方向へ延在する様子が示されている。第一規制体10を+Z方向から見たとき、第一規制体10は十字形である。第一規制体10の外側面の大部分と密閉空間6を構成する内壁15とは、通常、隙間G1を有する(図4A参照)。
【0038】
本実施形態において、第二規制体20は一方向(図4Bでは、Y方向)に長い棒状である。伝熱体9が溶融しているとき、第二規制体20の長手方向は、ガス空間8と伝熱体9の界面9sに沿う。第二規制体20の界面9sより上の部分は、ガス空間8に接する。第二規制体20の界面9sより下の部分は、伝熱体9に接する。第二規制体20の長手方向に対向する端部(E1,E2)と、密閉空間6を構成する内壁15との間には、通常、隙間G2を有する(図4B参照)。
【0039】
[二つの規制体による作用]
図5A及び図5Bを参照しながら、二つの規制体(10,20)による作用を説明する。図5A及び図5Bは、それぞれ、密閉空間6の内部を示した斜視図であり、伝熱体9の対流シミュレーションの結果を単純化して示す。図5Aは、それぞれ上述した形状を有する二つの規制体(10,20)を備える。図5Bは、上述した第一規制体10の形状を有する規制体30のみを備えている。放電ランプ100の点灯時、伝熱体9は溶融して対流を始める。図5A及び図5Bの密閉空間6内に示される矢印は、伝熱体9が対流する方向を示す。
【0040】
図5Bについて説明する。規制体30が溶融した伝熱体9に沈んでいる。規制体30の上面から伝熱体9とガス空間8の界面9sまでは離れており、規制体30の上に多量の伝熱体9が存在する。図5Bでは、規制体30によって規制された伝熱体9の二つの流れを、「fb」と付した矢印で示している。規制体30によって規制された伝熱体9は、界面9sに向かって上昇する流れを形成する。伝熱体9の流れが界面9s付近に到達すると、界面9sに沿って、径方向外側へ拡がる。このとき、伝熱体9の二つの流れfbが互いに衝突する領域cfが生じる。領域cfでは、二つの流れfbの衝突により乱流が発生する。乱流が発生すると、伝熱体9による熱の移動が不安定となり、陽極2の温度変動幅が大きくなる。
【0041】
図5Aについて説明する。図5Aでは、第一規制体10によって規制された伝熱体9の二つの流れを、「fa」と付した矢印で示している。第一規制体10によって規制された伝熱体9は、界面9sに向かって上昇する流れを形成する。伝熱体9の流れが界面9s付近に到達すると、界面9sに沿って、径方向外側へ拡がる。しかしながら、伝熱体9の二つの流れfbの間に第二規制体20が存在するため、二つの流れfbが互いに衝突しにくい。よって、図5Bで示したような領域cfにおける乱流の発生が抑制される。
【0042】
上述の対流シミュレーションに使用した条件は、以下のとおりである。
<放電ランプ100>
図1に示される形状を呈する。
発光管1の材料:石英ガラス
陽極2と陰極3との間隔:6mm
発光管1内の封入物:水銀2.0mg/cc、アルゴン100kPa
定格電流:200A
定格電力:12kW
<電極の概要>
陽極2内に密閉空間6を有する。
図2に示される形状を呈する。
密閉空間6の容積:17cm
伝熱体9の材料:銀
ガス空間8の封入ガス:アルゴン100kPa
本体5の材料:主にタングステンを含む材料
<第一規制体10及び規制体30>
規制体の材料:主にタングステンを含む材料
<第二規制体20>
規制体の材料:主にチタンを含む材料
【0043】
図6は、規制体(10,20)に対する伝熱体占有率と、温度変動幅の最大値TXとの関係を示すグラフである。このグラフは、伝熱体9の対流シミュレーションを行うことにより得られた。対流シミュレーションの条件は、上述した条件と同じである。
【0044】
伝熱体占有率について説明する。はじめに、図3に示すように、以下のパラメータが設定される。
第一規制体10のZ方向の長さ:L1(mm)
第二規制体20の底面から界面9sまでの距離:D2(mm)
第一規制体10の上面から第二規制体20の下面までの距離:H2(mm)
【0045】
長さL1と距離D2の合計は、伝熱体中の、Z方向における第一規制体10と第二規制体20の合計長さを意味する。距離H2は、伝熱体中の、Z方向における規制体(10,20)が存在しない長さを意味する。これらの長さの比、すなわち、H2/(L1+D2)は、Z方向における規制体の存在領域と伝熱体の存在領域の比と見なすことができる。そして、Z方向における規制体の存在領域と伝熱体の存在領域の比は、簡易的に、規制体(10,20)に対する伝熱体占有率を近似する。よって、本明細書では、H2/(L1+D2)から求められる値を、規制体(10,20)に対する伝熱体占有率であると定義する。
【0046】
温度変動幅の最大値TXについて説明する。温度変動幅とは、放電ランプ点灯時の、電極内表面(密閉空間6の内壁15)の任意の場所での、所定時間(例えば、1分間)における、最大温度と最小温度の差で表される。温度変動幅の大きい状態が長く続くと、高温クリープ変形によって電極先端に近い電極内表面に凹むような変形が生じて、電極先端に穴が開き、伝熱体9が漏出するに至る。そうすると、電極の排熱性が失われてしまうため、電極が過熱状態となり、急速に放電ランプの劣化が進行する。温度変動幅は、電極内表面の場所によって異なる値を示す。なお、温度変動幅を実測する場合、電極内表面の温度を直接測定することは困難であるため、代替として電極外表面を放射温度計等により測定することで、電極内表面の温度を推定するとよい。
【0047】
温度変動幅の最大値TX(単位は℃、以下、「最大値TX」ということがある。)は、電極内表面の場所によって異なる温度変動幅の最大値を示す。最大値TXを抑制すると、陽極2に掛かる熱的負荷を小さくして、高温クリープ変形による電極先端の穴開き等の破損を抑制できる。最大値TXは小さければ小さいほど好ましい。目安として、最大値TXが13℃以下であると好ましい。
【0048】
図6は、H2/(L1+D2)で近似される伝熱体占有率と最大値TXとの関係を表している。三角のマークでプロットされた点は、第一規制体10に対応する規制体30があり、第二規制体20がない参考形態(図5B参照)による。曲線C1は、三角のマークでプロットされた点の近似曲線である。円のマークでプロットされた点は、二つの規制体(10,20)を備える本実施形態(図5A参照)による。曲線C2は、円のマークでプロットされた点の近似曲線である。なお、第二規制体20のない参考形態のとき、距離D2は0(mm)であるため、伝熱体占有率を近似する値は、実質的に、H2/(L1+0)、すなわち、H2/L1となる。
【0049】
図6から、伝熱体占有率が同じ場合であっても、実施形態(曲線C2)の最大値TXが、参考形態(曲線C1)の最大値TXより小さい。これより、伝熱体9の容量に変化が無くても、一つの規制体を二つの規制体とすることで、最大値TXを小さくできることを表している。
【0050】
上述したように、最大値TXが13℃以下であると好ましい。図6より、C2曲線の最大値TXが13℃以下となるときの、H2/(L1+D2)は、(1)式を満たす。

0 < H2/(L1+D2) ≦ 2 …(1)
【0051】
逆にいうと、(1)式を満たすとき、温度変動幅の最大値TXが13℃以下となる。なお、(1)式は、上記シミュレーション条件及び規制体(10,20)の形状を前提としているが、他のシミュレーション条件及び異なる規制体(10,20)の形状であったとしても、(1)式は成立する。
【0052】
ところで、第二規制体20の底面から界面9sまでの距離D2は、第二規制体20の沈降深さであると言い換えることができる。本発明者は、距離D2が小さくなると(すなわち、第二規制体20の沈降深さが浅くなると)、第二規制体20による対流規制効果が影響を受けると考えた。そこで、対流シミュレーションにより、距離D2の値を変化させて、それぞれの場合の温度変動幅の最大値TXを求めた。
【0053】
以下の表1は、当該対流シミュレーションの結果を示している。なお、伝熱体占有率の指標となるH2/(L1+D2)=2.0と設定した。
【表1】
【0054】
表1より、温度変動幅の最大値TXが13℃以下となるようにするためには、第二規制体20の底面から界面9sまでの距離D2、すなわち、沈降深さを1.5mm以上に設定すればよいことが判明した。距離D2は、第二規制体20の形状、大きさ(容積)又は密度(材質等)の設計により調整できる。
【0055】
ところで、伝熱体9の量に注目する。図5Aでは、図5Bに比べて、伝熱体9の量が、第二規制体20が伝熱体9に浸かる容積分だけ減少する。伝熱体9の量が減少すると、伝熱体9による熱伝達効率が低下する。しかしながら、上記シミュレーションの結果、図5Bの場合の陽極先端の平均温度は、3060℃であったのに対し、図5Aの場合の陽極先端の平均温度は3063℃であった。つまり、第二規制体20を配置することによる、陽極先端の温度低下幅は、僅かに3℃のみであり、伝熱体9の量の減少による熱伝達効率の低下は、限定的であることが判明した。これより、図6で示した第二規制体20を配置することによる、伝熱体9の量の減少による熱伝達効率の低下のデメリットよりも、最大値TXを引き下げるというメリットの方が大きいことが判明した。
【0056】
[規制体の詳細]
図7A図7B図8A及び図8Bを参照しながら、規制体(10,20)の寸法及び形状の詳細を説明する。図7Aは第一規制体10の上面図であり、第一規制体10を-Z方向に見ている。図7Bは第一規制体10の側面図であり、第一規制体10を+X方向に見ている。図8Aは第二規制体20の上面図であり、第二規制体20を-Z方向に見ている。図8Bは第二規制体20の側面図であり、第二規制体20を+Y方向に見ている。
【0057】
第一規制体10を構成する4枚のブレード10bは、対流する伝熱体9の衝突、又は、伝熱体9の熱膨張による応力に耐えるように設計されている。例えば、ブレード10bの厚みT1(図7A参照)は、例えば、2mm以上であるとよく、3mm以上であると好ましい。ブレード10bの高さ(Z方向の長さ)L1は(図7B参照)、3mm以上であるとよく、好ましくは、6mm以上であるとよい。ブレード10bの径方向の長さB1は、密閉空間6の内径D6(図3参照)の40%以上であるとよく、45%以上であると好ましい。規制体のX方向又はY方向の長さB2(図7B参照)は、密閉空間6の内径D6(図3参照)の80%以上であるとよく、90%以上であると好ましい。長さB1及び長さB2は、隙間G1を設けられる程度に、密閉空間6の内径D6(図3参照)よりも小さくするとよい。
【0058】
本実施形態において、第二規制体20は、Y方向に長い棒状である(図8A参照)。第二規制体20のY方向における長さB3は、例えば密閉空間6の内径D6(図3参照)の80%以上であるとよく、90%以上であると好ましい。第二規制体20のZ方向の中心軸はZ3の位置にある。第二規制体20の幅は一様ではなく、+Y方向の端部E1における幅W1は、-Y方向の端部E2における幅W2よりも大きい。端部E1から端部E2に向かうにつれて幅が漸減する。第二規制体が、一方の端部E1から他方の端部E2に向かうにつれて、幅が漸減するような棒状であるため、伝熱体9の対流が安定化する。幅W1は、3mm以上、6mm以下であると好ましい。
【0059】
第二規制体20は、長手方向であるY方向を軸に、第二規制体20が回転して転倒するリスクがある。第二規制体20が転倒すると、伝熱体9の乱流を発生させる。第二規制体20の転倒リスクを低下させることは、乱流の発生を抑制することにつながる。第二規制体20は、長手方向(Y方向)に直交するXZ平面に平行な断面において、等脚台形の形状を呈する(図8B参照)。当該断面において、第二規制体20の上底V1のX方向における幅は、下底V2のX方向における幅より小さい。これにより、第二規制体20の重心が下底V2側に偏り、溶融した伝熱体9の中で第二規制体20が転倒するリスクを低下できる。角度θ1は、30度以上60度以下であると好ましい。第二規制体20のZ方向の長さ(高さ)L2は、3mm以上であるとよく、6mm以上であると好ましい。なお、第二規制体20は、XZ平面に平行な断面において三角形を呈しても構わない。
【0060】
上記シミュレーションでは、第一規制体10を、主にタングステンを含む材料から構成され、第二規制体20を、主にチタンを含む材料から構成されるとしたが、この材料の組み合わせに限らない。第二規制体20の材料として、酸化アルミニウムや酸化マグネシウムなどのセラミックスを使用してもよい。
【0061】
放電ランプ100の点灯時に規制体(10,20)が溶融しないように、規制体(10,20)を構成する材料の融点は、伝熱体9を構成する材料の融点よりも高いことが好ましい。また、規制体(10,20)が、本体5を構成する材料又は伝熱体9を構成する材料と反応して変質しないように、規制体(10,20)を構成する材料は、本体5を構成する材料及び伝熱体9を構成する材料との反応性が十分低い材料であることが好ましい。しかしながら、第二規制体20の基材を、本体5を構成する材料又は伝熱体9を構成する材料と反応し得る材料で構成し(例えば、伝熱体9が銀の場合、クロムやジルコニウム等)、基材の周り本体5を構成する材料及び伝熱体9を構成する材料との反応性が十分低い材料(例えば、チタン)が取り囲むように形成してもよい。基材の周りにチタン等を取り囲むように形成する方法は、例えば、蒸着法による形成や各種めっき法による形成が考えられる。
【0062】
第一規制体10の製造方法について、4枚のブレード10bを、Z2軸を中心に90度間隔をなすように配置して、接合しても構わない。第一規制体10は、X方向に延在する平板とY方向に延在する平板とをZ1軸で交差させて、接合しても構わない。第一規制体10を一体成型で製造しても構わない。なお、一直線に延在する2つのブレード10bが一枚の平板から構成されている場合であっても、一枚の平板は、中心から径方向外側に延在する、異なる2つのブレードによって構成されるとして数える。他の規制体の例についても同様である。
【0063】
[製造された陽極から各部材の寸法を求める方法]
製造された陽極2から各部材又は各部分の寸法を求める方法について述べる。以下に述べる方法は、放電ランプの製造後に、使用又は試験のために点灯された放電ランプ内の陽極2の寸法設計値を求める際に、特に適している。なぜなら、点灯に使用された陽極2では、界面9sが平坦に形成されておらず、界面9sのZ方向における位置が定まりにくいためである。界面9sのZ方向における位置は、第二規制体20の底面から界面9sまでの距離D2を算出するために使用される。
【0064】
一度点灯に使用された陽極2の界面9sが平坦に形成されない主な理由を説明する。図9は、伝熱体9の加熱溶融後に冷却された陽極2の断面図である。なお、図9では、界面9sの形状を読み取りやすくするために、第二規制体20が破線で示されている。放電ランプ100の製造後、使用又は試験のために点灯された放電ランプ100の陽極2について、伝熱体9は、少なくとも一度、加熱されて溶融している。消灯に伴い陽極2が冷却される際、陽極2の表面から陽極2の内部に向かって温度が低下していく。その結果、凝固に伴う熱収縮のタイミングが、陽極2の表面と陽極2の内部との間で異なるため、図9に示すように、伝熱体9とガス空間8の界面9sが中心軸Z1付近で凹むことがある。
【0065】
製造された陽極2から寸法設計値を求めるには、以下の手順に従う。
(手順1)陽極2を放電ランプ100から取り出し、陽極2の外径D1を計測する。密閉空間6の比較的上方のガス空間8(伝熱体9が含まれていない部分)を横切る位置(図10の線分P-P)で、容器5aをXY平面に沿って切断する。切断により、陽極2は、伝熱体9、規制体(10,20)を含む第一電極部分p1と、蓋5bを含む第二電極部分p2とに分割される(図10参照)。
【0066】
(手順2)第一電極部分p1の重量aを測定する。また、切断面から伝熱体9を微小量採取し、成分の分析と密度ρを推定する。成分の分析には、例えば、蛍光X線装置等を使用しても構わない。
【0067】
(手順3)第一電極部分p1を、陽極2が溶解せず、伝熱体9が溶解する液体に浸漬し、第一電極部分p1から、伝熱体9を溶解し規制体(10,20)を取り外す。斯かる液体として、例えば、硝酸が使用される。硝酸は、伝熱体9として使用される銀を溶解し、陽極2の本体5及び規制体(10,20)を溶解させにくい。そして、第一電極部分p1から、伝熱体9を除き、規制体(10,20)を含む重量bを測定する。これにより、伝熱体9の体積VMは、(3)式により求められる。
VM = (a-b)/ρ …(3)
【0068】
(手順4)第二規制体のZ方向の長さL2を計測する。また、第二規制体20を伝熱体9に近い密度の金属の溶融物に浮かべて、沈降深さである、第二規制体20の底面から界面9sまでの距離D2を計測する。
【0069】
(手順5)陽極2の密閉空間6に、手順3で求めた伝熱体9の体積VMと同じ体積の液体(例えば、水)を入れて、当該液体に規制体(10,20)を沈める。そして、第一規制体10の上部から液体の液面までの距離H3を計測する。第一規制体10と第二規制体20とのZ方向における間隔H2は、(4)式を使用して求められる。
H2 = H3-L2 …(4)
【0070】
[第二規制体の変形例]
図11A及び図11Bは第二規制体の第一変形例である。図11Aは第二規制体25の上面図であり、第二規制体25を-Z方向に見ている。図11Bは第二規制体25の側面図であり、第二規制体25を+Y方向に見ている。第二規制体25は、Y方向に長い棒状であり、かつ、二つの円錐台の底面同士が接するような形状を呈する。長手方向(Y方向)の位置C5は、Z方向に延在する中心軸Z3を通る。位置C5における径W3は、長手方向の端部(E1,E2)位置の径W4より大きい。そして、位置C5から位置E1(又はE2)に向かって、径が漸減する。斯かる第二規制体25は、第二規制体25の向きが、伝熱体9の対流の方向に一致していないとき、中心軸Z3の周りの第二規制体25の僅かな回転で、第二規制体25の向きを、伝熱体9対流の方向に一致させることができる。また、径方向外側に向かって径が漸減するため、伝熱体9の対流が安定化する。また、第二規制体25のように、側面又は断面が円を呈する場合、第二規制体25が転倒しないため、第二規制体25の転倒による乱流を引き起こさない。また、本変形例の形状に加工することは容易であり、加工コストが低い。
【0071】
図12A及び図12Bは第二規制体の第二変形例である。図12Aは第二規制体26の上面図であり、第二規制体26を-Z方向に見ている。図12Bは第二規制体26の側面図であり、第二規制体26を+Y方向に見ている。第二規制体26は、Y方向に長い棒状であり、かつ、端部E1及び端部E2が円形を呈する円錐台形状である。第二規制体20の径は一様ではなく、+Y方向の端部E1における径W1は、-Y方向の端部E2における径W2よりも大きい。端部E1から端部E2に向かうにつれて径が漸減する。第二規制体が、一方の端部E1から他方の端部E2に向かうにつれて、幅が漸減する棒状であるため、伝熱体9の対流が安定化する。また、本変形例の形状に加工することは容易であり、加工コストが低い。
【0072】
図13A及び図13Bは第二規制体の第三変形例である。図13Aは第二規制体27の上面図であり、第二規制体27を-Z方向に見ている。図13Bは第二規制体27の線分F-Fにおける断面図であり、第二規制体27を-Y方向に見ている。図13Aに示されるように、第二規制体27はY字形状である。図13Bに示されるように、線分F-Fにおける第二規制体27の断面は、Z方向を長手方向とする矩形である。第二規制体27の有する3つのブレード(27a,27b)は、いずれも、Z方向に延在する接線C6に接する。接線C6は、Y方向長さ及びX方向長さの中心軸Z3からずれた位置にある。よって、3つのブレード(27a,27b)のうち、一つのブレード27bが、他の二つのブレード27aよりも長い。一つの長いブレード27bに沿って伝熱体9の対流が形成されやすいため、安定化しやすい。また、第二規制体27はY字形状を有するため、第二規制体27が伝熱体9の対流の方向にひとたび一致した後は、第二規制体27の転倒等による乱流化の要素が小さいため、第二規制体27の姿勢が変化しにくく、これにより、対流が安定化しやすい。
【0073】
図示して説明しないが、第四変形例として、第二規制体20は、第一規制体10のように、十字形状を呈していてもよい。第二規制体20のブレードの枚数は、第一規制体10のブレードの枚数よりも少ない方が、伝熱体9の対流が安定しやすい。
【0074】
図14は第一規制体の第一変形例である。図14は、第一規制体17の上面図であり、第一規制体17を-Z方向に見ている。図14に示されるように、第一規制体17は、T字形状を有する。第一規制体17の有する3つのブレード(17a,17b)は、いずれも、Z方向に延在する接線C6で接する。接線C6は、中心軸Z3からずれた位置にあってもよいし、中心軸Z3と重なってもよい。T字形状の第一規制体17は、十字形状の第一規制体10に比べてブレードの枚数が少ないため、規制体の容積が小さく、伝熱体9の量を増やすことができる。なお、第一規制体17は、2つのブレード17aが一直線上に並んでいるため、2つのブレード17aは一枚の板から構成されても構わない。
【0075】
図15は第一規制体の第二変形例である。図15は、第一規制体18の上面図であり、第一規制体18を-Z方向に見ている。第一規制体18は、3枚のブレード18bを有する。3枚のブレードは、いずれも、Z方向に延在する接線C6に接する。接線C6は、中心軸Z3と重なっている。第一規制体18は、十字形状の第一規制体10に比べてブレードの枚数が少ないため、規制体の容積が小さく、伝熱体9の量を増やすことができる。また、各ブレード18bが、互いに等角度(120°)をなすため、第一規制体18が傾きにくく、安定した姿勢を保ちやすい。第一規制体18の安定は、対流の安定化につながる。
【0076】
図16は第一規制体の第三変形例である。図16は、第一規制体19の側面図であり、第一規制体19を+X方向に見ている。第一規制体19は4枚のブレード19aを有する。各ブレード19aの外側面19tはテーパ形状を呈する。ゆえに、ブレード19aの上面(+Z側の面)の径方向長さは、下面(―Z側の面)の径方向長さより小さい。
【0077】
以上で、実施形態及びその変形例を説明した。本発明は上述した実施形態及びその変形例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上述の実施形態及び変形例に、種々の改良又は変更を施したり、各変形例を組み合わせたりすることができる。
【0078】
上記では、規制体は、第一規制体10と第二規制体20とから構成されていたが、3つ以上の規制体から構成されていても構わない。
【0079】
上記では、陽極2が、密閉空間6を有する本体5と、密閉空間6内に規制体(10,20)と、密閉空間6内に伝熱体9とを有する例について述べた。陰極3が、密閉空間を有する本体と、密閉空間内に複数の規制体と、伝熱体とを有していても構わない。放電ランプ100は、陰極3が陽極2より上方に位置するように配置しても構わない。
【符号の説明】
【0080】
1 :発光管
2 :陽極
3 :陰極
4 :リード棒
5 :本体
5a :容器
5b :蓋
6 :密閉空間
8 :ガス空間
9 :伝熱体
9s :(伝熱体とガス空間の)界面
10,17,18,19:第一規制体
10b,17a,17b,18b,19a:(第一規制体の)ブレード
11 :封止管
12 :口金
13 :(電極の)先端
14 :(電極の)後端
15 :(本体の)内壁
19t :(ブレードの)外側面
20,25,26,27 :第二規制体
27a,27b :(第二規制体の)ブレード
30 :(第二規制体がない場合の)第一規制体
100 :放電ランプ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16