(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079400
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】洗浄槽及び洗浄システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230601BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20230601BHJP
B08B 3/10 20060101ALI20230601BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H01L21/304 642F
B08B3/04 Z
B08B3/10 Z
B08B5/02 A
H01L21/304 642A
H01L21/304 642E
H01L21/304 648F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192866
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】512284033
【氏名又は名称】株式会社ダルトン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】松下 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】向井 義雄
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
5F157
【Fターム(参考)】
3B116AA01
3B116AA46
3B116AB03
3B116AB44
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5F157AB03
5F157AB13
5F157AB34
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5F157AC13
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5F157DC86
(57)【要約】
【課題】洗浄効率の高い渦をできるだけ簡素な構成で発生できる洗浄槽、及び該洗浄槽を備えた洗浄システムを提供する。
【解決手段】洗浄槽12は、円筒状の胴部22と、胴部22の下部に形成された円錐状又は紡錘状の底部24と、胴部22内に配置された、少なくとも1つのワーク34を支持する支持体32と、胴部22の側面に形成され、支持体32より下方に配置され、かつワーク34を洗浄するための洗浄液を胴部22内に供給するように構成された入口ポート26と、入口ポート26に設けられ、胴部22の中心軸42回りに旋回する洗浄液の旋回流を発生させるように構成された噴流ノズル28と、底部24に形成され、洗浄液を排出するように構成された出口ポート30と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部と、
前記胴部の下部に形成された円錐状又は紡錘状の底部と、
前記胴部内に配置された、少なくとも1つの洗浄対象物を支持する支持体と、
前記胴部の側面に形成され、前記支持体より下方に配置され、かつ前記洗浄対象物を洗浄するための洗浄液を前記胴部内に供給するように構成された入口ポートと、
前記入口ポートに設けられ、前記胴部の中心軸回りに旋回する洗浄液の旋回流を発生させるように構成された噴流ノズルと、
前記底部に形成され、前記洗浄液を排出するように構成された出口ポートと、
を有する洗浄槽。
【請求項2】
前記支持体と前記出口ポートとの間に配置された超音波発振子をさらに有する、請求項1に記載の洗浄槽。
【請求項3】
前記噴流ノズルは、前記洗浄槽の高さに関して前記支持体の下端と前記超音波発振子の上面との間に配置される、請求項2に記載の洗浄槽。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄槽と、
前記洗浄槽の前記出口ポート及び前記入口ポートに流体的に接続されたサイクロン式フィルタと、
を有する洗浄システム。
【請求項5】
前記洗浄槽から前記洗浄液を抜き出し、抜き出した前記洗浄液を前記サイクロン式フィルタに通して前記洗浄槽に戻すように構成された1つのポンプを有する、請求項4に記載の洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハやガラス基板等のワークを洗浄するための洗浄槽、及び該洗浄槽を含む洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体ウェハやガラス基板の製造工程では、ウェハに付着した研磨材や破片を除去するための洗浄が行われる。この洗浄は多くの場合、洗浄液が入れられた槽内に洗浄対象物を浸漬させることで行われるが、その際、洗浄を効率的に行うために、槽内に洗浄液の渦を発生させる技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、洗浄槽内に配置されたノズルからマイクロバルブを含む洗浄液を供給して、渦巻き状の流れを発生する技術が記載されている。また特許文献2には、壁面が螺旋形状を呈する貯留槽を使用することで、処理液の渦巻きを発生させる技術が記載されている。さらに特許文献3には、処理槽に複数のノズルを設け、槽内に生じる渦の大きさを調整できるようにする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-201069号公報
【特許文献2】特開2003-282512号公報
【特許文献3】特開2009-239061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
効率的な洗浄のために洗浄槽内に渦を発生させる場合、どのような形状、大きさの渦を槽内のどの位置に発生させるかが重要である。一方、洗浄槽を含むシステムは安価であることが好ましく、例えば渦を発生させるためのノズルやこれに付随する手段は、できるだけ少数でかつ単純な構造であることが望まれる。また、洗浄槽が直方体形状であると、洗浄対象物から分離された汚れ等が洗浄槽の角部に堆積してしまい、清掃に手間がかかる。
【0006】
そこで本発明は、洗浄効率の高い渦をできるだけ簡素な構成で発生できる洗浄槽、及び該洗浄槽を備えた洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、円筒状の胴部と、前記胴部の下部に形成された円錐状又は紡錘状の底部と、前記胴部内に配置された、少なくとも1つの洗浄対象物を支持する支持体と、前記胴部の側面に形成され、前記支持体より下方に配置され、かつ前記洗浄対象物を洗浄するための洗浄液を前記胴部内に供給するように構成された入口ポートと、前記入口ポートに設けられ、前記胴部の中心軸回りに旋回する洗浄液の旋回流を発生させるように構成された噴流ノズルと、前記底部に形成され、前記洗浄液を排出するように構成された出口ポートと、を有する洗浄槽である。
【0008】
本開示の他の態様は、上記一態様に係る洗浄槽と、前記洗浄槽の前記出口ポート及び前記入口ポートに流体的に接続されたサイクロン式フィルタと、を有する洗浄システムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、洗浄槽の入口ポートを、洗浄槽内で洗浄対象物を支持する支持体よりも下方に配置することで、槽内全体に亘って旋回流を生じさせ、洗浄対象物から分離した異物等を効率的に排出することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る洗浄システムの概略構成図である。
【
図2】
図1の洗浄システムに含まれる洗浄槽の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、好適な実施形態に係る洗浄システムの概略構成図である。洗浄システム10は、略円筒形状の洗浄槽12と、サイクロン式フィルタ14と、ポンプ16と、ドレンタンク18とを含む。ポンプ16は、洗浄槽12内の洗浄液を抜き出してフィルタ14に供給し、さらにフィルタ14によって濾過された洗浄液を洗浄槽12内に戻すように構成されている。またドレンタンク18は、フィルタ14によって洗浄液から分離されたスラッジ20等を回収し、ドレンとして排出するように構成されている。
【0012】
図2は、洗浄槽12の概略構成図である。洗浄槽12は、円筒状の胴部22と、胴部22の下部に形成された円錐状又は紡錘状の底部24と、胴部22の側面に形成され、洗浄液を供給するように構成された入口ポート26と、入口ポート26に取り付けられた噴流ノズル28(後述する
図3、4を参照)と、底部24に形成され、洗浄液を排出するように構成された出口ポート30とを有する。必須ではないが、洗浄液の効率的な排出という観点から、出口ポート30は底部24の中央に形成されることが好ましい。
【0013】
胴部22内の上側には、支持体32が配置され、支持体32には少なくとも1つ(通常は複数)の洗浄対象物(ワーク)34が支持される。ワーク34は例えば、直径が100mm~200mm(4インチ~8インチ)の円盤状の半導体ウェハであり、単結晶インゴットを内周切断機やワイヤーソーで切断したアズカット・ウェハのように、汚れが多く付着している状態である。図示例では、ワーク34は鉛直方向に立てた状態で支持体32に整列配置されるが、支持体32は、洗浄効率等を考慮して、ワーク34を異なる向きに支持するように構成されてもよい。
【0014】
必須ではないが、洗浄槽12内の下側には、洗浄効率をさらに高めるために超音波発振子36を配置してもよい。超音波発振子36としては例えば、いわゆる投げ込み式超音波装置として周知のものが使用可能であり、多くの場合、超音波発振面として平坦な上面38を有する。超音波発振子36の使用により、ワーク34に強固に付着した異物等も除去することができるようになる。
【0015】
次に、洗浄槽12の洗浄作用について説明する。ここでは、液面40で示される水準まで(例えば100リットルの)洗浄液(アルカリ液又は水等)が入れられており、ワーク34の全体が洗浄液に浸漬しているものとする。
【0016】
上述のポンプ16(
図1)を作動させることで、入口ポート26に取り付けられた噴流ノズル28から洗浄液が洗浄槽12内に供給される。ここで
図3に示すように、噴流ノズル28は、上方から見て略円形の洗浄槽12の胴部22の接線方向に平行な方向に洗浄液を、所定の流速で吐出するように配置・構成されている。よってノズル28から吐出された洗浄液は、洗浄槽12の胴部22の内壁に案内されて、洗浄槽12(胴部22)の中心軸42回りに旋回する旋回流44を形成し、これに伴って参照符号46(
図2)に示すような旋回流がノズル28の上方においても生じ、これによりワーク34が好適に洗浄される。
【0017】
より具体的には、
図4に示すように、ワーク34に付着したウェハの破片、砥粒、油分、インゴッド接着用ボンドのカス等の異物50が旋回流44、46によって胴部22内全体に発生する渦流によってワーク34から分離され、遠心力によって胴部22の内周壁側に移動させられる。そして異物50は、胴部22の内壁近傍を旋回しながらその自重によって徐々に沈降していくので、ワーク34に再付着しない。洗浄槽12は、単結晶インゴットを内周切断機(単数切断)やワイヤーソー(複数切断)で成形したアズカット・ウェハのような、汚れが多く付着しているワークの洗浄に特に適している。
【0018】
また
図2及び
図3に示すように、方向44に沿った洗浄液の流れに伴って、超音波発振子36の上面38に平行な旋回流48が生じ、旋回流48によって上面38に異物50等が堆積することが防止される。よって超音波発振子36は、常時その性能を好適に発揮できる良好な状態に保たれる。
【0019】
超音波発振子36の上面38と同じ高さまで沈降した異物50等は、下降流52によって超音波発振子36の下方に沈降する。そして
図5に示すように、旋回流44と出口ポート30からの洗浄液の排出とによって生じる旋回流54によって、異物50は超音波発振子36の下方に吸引される。上述のように洗浄槽12の底部24は円錐又は紡錘形状となっており、出口ポート30は底部24の中央(すなわち最下部)に設けられているので、異物50等は底部24に沈殿・堆積せず、円錐又は紡錘内の強力な旋回流54によって確実に出口ポート30から排出される。また洗浄槽12の内壁や底部に異物が殆ど沈殿・堆積しないことにより、洗浄槽内の清掃の頻度や手間を低減することができる。
【0020】
本実施形態では、ワーク34(を支持する支持体32)より下方に入口ポート26(噴流ノズル28)を配置することにより、中心軸42回りに旋回する渦流が槽内全体に亘って生じ、異物50等を効率的に排出し、サイクロン式フィルタ14(
図1を参照)によってスラッジ20として回収することができる。例えばノズルを上方に配置した場合、洗浄槽の下方に向かうにつれて渦流が徐々に弱くなるので、槽の下方において沈降中の異物を遠心力で槽の外周側に移動させることが困難になるが、本実施形態のようにノズル28が下方にあれば、噴流の周辺の液を誘導して渦流をより効率的に生成することができる(アスピレータ効果)ので、沈降している異物50を効率的に外周側に移動させることができる。また超音波発振子36を設置している場合は、その上に付着又は堆積すること等も効率的に抑制することができる。さらに、ノズルが上方にあると洗浄液が洗浄液上部において飛散する場合があるが、ノズルを下方に配置すれば洗浄液の飛沫は生じない。
【0021】
一般的に、円錐又は紡錘形状の底部を有する槽内で旋回流を発生させると、流れの中心に旋回芯が生じる。超音波発振子36を設置する場合、配置条件等によっては、この旋回芯は超音波を減衰させる等、ワークの洗浄効果に悪影響を与えることがあるが、本実施形態では出口ポート30と支持体32との間に超音波発振子36を配置しているので、ワークの洗浄効果に悪影響を与え得る旋回芯は発生しない。
【0022】
また
図2に示すように、入口ポート26(噴流ノズル28)を、洗浄槽12の高さに関して支持体32(の下端)と超音波発振子36(の上面38)との間に配置することにより、ワーク34を洗浄する旋回流46と、超音波発振子36の上面38を洗浄する旋回流48との双方を、1つの入口ポート26を設けるだけで効率的に生成することができる。なおノズル28の高さは、支持体32や超音波発振子36の寸法や形状に応じて適宜設定可能であるが、例えば、液面40で示される液量(ここでは100リットル)の約1/2に相当する仮想液面56又はその近傍に設定されることが好ましい。このようにすれば、例えば洗浄液を交換する際に、古い洗浄液を洗浄槽12から約半分(ここでは約50リットル)だけ排出し、残りの約半分の洗浄液を噴流ノズル28で循環させることで、より強い渦流を生成させ、超音波発振子36の上面38をより効率的に洗浄することができる。
【0023】
なお入口ポート26(噴流ノズル28)は複数設けてもよいが、上述のような旋回流44を生じさせるためには、噴流ノズルは1つあれば足りる。よって本実施形態によれば、より簡素な構成でありながら効率的な洗浄が可能な洗浄槽12が提供される。また本実施形態では超音波発振子36を設置した例を説明したが、超音波発振子36を使用しない場合でも、ワーク洗浄効果の高い旋回流を得ることができる等の効果が得られる。
【0024】
再び
図1を参照し、洗浄システム10は、洗浄槽12からの洗浄液の抜き出しと、抜き出した洗浄液のサイクロンフィルタ14への供給とを、1つのポンプ16で行うことができ、このような1ポンプシステムとすることでシステム全体の低コスト化が図れる。また一般的に、サイクロン式フィルタは半導体の洗浄工程では使用されないが、本実施形態ではサイクロン式フィルタ14を利用することで、異物50等がスラッジ20として除去された清浄な洗浄液を、フィルタ14からの吐出流を利用して洗浄槽12内に戻すことができるので、少ない部品点数で効率的な洗浄システムを構築することができる。但し、サイクロンフィルタ14の出口と洗浄槽12の入口ポート26との間に、ろ材を交換するタイプのフィルタ(図示せず)を設けてもよい。一般に、ろ材交換式のフィルタでは、目詰まり等が生じればろ材を交換する必要があるが、本実施形態ではサイクロン式フィルタ14で比較的大きな異物は除去できるので、ろ材の交換頻度を大きく低減することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 洗浄システム
12 洗浄槽
14 サイクロン式フィルタ
16 ポンプ
18 ドレンタンク
20 スラッジ
22 胴部
24 底部
26 入口ポート
28 噴流ノズル
30 出口ポート
32 支持体
34 ワーク
36 超音波発振子
50 異物