(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007947
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】液相ペプチド製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/02 20060101AFI20230112BHJP
C07K 1/06 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C07K1/02
C07K1/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111125
(22)【出願日】2021-07-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年6月8日「Molecules 2021, 26(12), 3497」(https://doi.org/10.3390/molecules26123497)にて公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】517349083
【氏名又は名称】ペプチスター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 圭崇
(72)【発明者】
【氏名】矢野 真也
(72)【発明者】
【氏名】森 利裕
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045BA10
4H045FA20
4H045FA30
4H045FA41
4H045FA57
(57)【要約】
【課題】液相ペプチド合成用担体を用いるペプチド製造法において、アミノ酸活性エステルを液相処理により除去を可能とする液相ペプチド製造法を提供すること。
【解決手段】次の工程a~dを含むことを特徴とする液相ペプチド製造方法。
a.有機溶媒を含む溶媒中で、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとを縮合させる工程、
b.縮合反応後の反応液に、アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれるアミノ酸活性エステルスカベンジャーを添加する工程、
c.反応液中の前記アミノ保護基でアミノ基が保護された化合物のアミノ保護基を脱離する工程、
d.反応液に水溶液を添加した後、分液して、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、前記アミノ保護基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体を含有する有機溶媒層を得る工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程a~dを含むことを特徴とする液相ペプチド製造方法。
a.有機溶媒を含む溶媒中で、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとを縮合させる工程、
b.縮合反応後の反応液に、アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれるアミノ酸活性エステルスカベンジャーを添加する工程、
c.反応液中の前記アミノ保護基でアミノ基が保護された化合物のアミノ保護基を脱離する工程、
d.反応液に水溶液を添加した後、分液して、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、前記アミノ保護基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体を含有する有機溶媒層を得る工程。
【請求項2】
前記アミノ酸活性エステルスカベンジャーが、次の一般式(1)で表されるアミノスルホン酸類及びアミノ硫酸類、
【化1】
(R
1は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X
1は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(2)で表されるアミノホスホン酸類及びアミノリン酸類、並びに
【化2】
(R
2は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X
2は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(3)で表されるアミノアルコール類から選ばれる化合物である請求項1記載の液相ペプチド製造方法。
【化3】
(nは0~20の整数を示し、R
3、R
4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を示す)
【請求項3】
前記アミノ酸活性エステルスカベンジャーが、次の一般式(1a)で表されるアミノスルホン酸類、
【化4】
(R
1は炭素数1~10の2価の有機基を示す)
一般式(2)で表されるアミノホスホン酸類及びアミノリン酸類、並びに
【化5】
(R
2は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X
2は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(3)で表されるアミノアルコール類から選ばれる化合物である請求項1記載の液相ペプチド製造方法。
【化6】
(nは0~20の整数を示し、R
3、R
4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を示す)
【請求項4】
前記アミノ保護基が、Fmоc基、Bоc基、Cbz基及びAc基から選ばれる保護基である請求項1~3のいずれか1項に記載の液相ペプチド製造方法。
【請求項5】
前記液相ペプチド合成用担体が、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドに直接またはリンカーを介して結合して、それらを有機溶媒に溶解性で水に不溶性にする化合物である請求項1~4のいずれか1項に記載の液相ペプチド製造方法。
【請求項6】
前記液相ペプチド合成用担体が、下記式(I):
【化7】
[式中、
環Aはヘテロ原子を含んでいてもよく、多環性でもよいC4~18の芳香環を示し;
R
11は、水素原子であるか、又は環Aがベンゼン環でRbが下記式(a)で表される基である場合には、R
14と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか、又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよく;
p個のXは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR
17-(R
17は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示し;
p個のR
12は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
q個のR
13は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は酸素原子を介してシリル基若しくは脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
p、qは、それぞれ0~3の整数かつp+qが1以上4以下を示し;
環Aは、p個のXR
12に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
Raは、水素原子、又はハロゲン原子により置換されていてもよい芳香族環を示し;
Rbは、水素原子、又は式(a):
【化8】
(式中、*は結合位置を示し;
r、sは、それぞれ0~3の整数かつr+sが4以下を示し;
r個のZは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR
18-(R
18は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示し;
r個のR
15は、独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
s個のR
16は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
R
14は、水素原子を示すか、R
11と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか,又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよく;
環Bは、r個のZR
15に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示し;
Yは、ヒドロキシ基、NHR
19(R
19は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物である請求項1~5のいずれか1項に記載の液相ペプチド製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液相におけるペプチド製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドの製造技術には、固相ペプチド合成法と液相ペプチド合成法とがあるが、医薬品等として用いられるペプチドを製造するには、大量生産に向いている液相ペプチド合成法が広く採用されている。そして、最近、保護アミノ酸や保護ペプチドの有機溶媒への溶解性を大きく向上させる化合物である液相ペプチド合成用担体(Tag)が報告されている(特許文献1~14)。
【0003】
液相ペプチド合成では、アミノ酸残基の欠落を防ぐために過剰のアミノ酸及び縮合剤を使用することから、ペプチド伸長反応においてアミノ酸縮合反応時にアミノ酸活性エステルが残存し、残存したアミノ酸活性エステルが次のアミノ酸伸長反応時においても反応してしまい、望まない「ダブルヒット体」が生成し、目的物の収率や純度が低下することが問題となっている。
【0004】
このアミノ酸活性エステルの除去手段として、アルカリ水でアミノ酸活性エステルを加水分解する方法(特許文献15)、縮合反応時に炭素数1~14のアルキルアミン、芳香族アミン、ヒドロキルアミンを添加してクエンチした後、副生物を固液分離する方法(特許文献16)が報告されている。また、縮合反応後の反応液に2価の水溶性アミンを添加し、脱保護工程後の反応液に酸を添加して中和し、さらに酸性水溶液を添加して洗浄することにより、アミノ酸活性エステルとジベンゾフルベン(DBF)の双方を除去する方法(特許文献17)が報告されている。なお、DBFは、アミノ基の保護基であるFmoc基を脱保護する際に生じる副生成物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5113118号公報
【特許文献2】特許第5929756号公報
【特許文献3】特許第6092513号公報
【特許文献4】特許第5768712号公報
【特許文献5】特許第5803674号公報
【特許文献6】特許第6116782号公報
【特許文献7】特許第6201076号公報
【特許文献8】特許第6283774号公報
【特許文献9】特許第6283775号公報
【特許文献10】特許第6322350号公報
【特許文献11】特許第6393857号公報
【特許文献12】特許第6531235号公報
【特許文献13】国際公開第2020/175472号
【特許文献14】国際公開第2020/175473号
【特許文献15】国際公開第2007/099656号
【特許文献16】国際公開第2016/140232号
【特許文献17】特許第6703668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献15、16に記載のアミノ酸活性エステルの除去方法では、固液分離手段が必要であり、ワンポット合成には適用できない。また、特許文献17記載の方法においては、酸性条件下での分液が必要であることから、アミノ酸活性エステルと生成物であるペプチドとの分液不良が起こりやすいという問題があった。
本発明の課題は、液相ペプチド合成用担体を用いるペプチド製造法において、アミノ酸活性エステルを液相処理により除去することを可能とする液相ペプチド製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、有機溶媒を含む溶媒中で、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとを縮合させた後に、縮合せずに残存するアミノ酸活性エステルのスカベンジャーとして、アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれる化合物を用いることにより、系内を酸性条件とすることなく、アミノ酸活性エステルの除去が可能となることを見出し、従来法における固液分離や分液不良という問題点を解決し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の発明[1]~[6]を提供するものである。
[1]次の工程a~dを含むことを特徴とする液相ペプチド製造方法。
a.有機溶媒を含む溶媒中で、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとを縮合させる工程、
b.縮合反応後の反応液に、アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれるアミノ酸活性エステルスカベンジャーを添加する工程、
c.反応液中の前記アミノ保護基でアミノ基が保護された化合物のアミノ保護基を脱離する工程、
d.反応液に水溶液を添加した後、分液して、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、前記アミノ保護基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体を含有する有機溶媒層を得る工程。
[2]前記アミノ酸活性エステルスカベンジャーが、次の一般式(1)で表されるアミノスルホン酸類及びアミノ硫酸類、
【0009】
【0010】
(R1は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X1は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(2)で表されるアミノホスホン酸類及びアミノリン酸類、並びに
【0011】
【0012】
(R2は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X2は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(3)で表されるアミノアルコール類から選ばれる化合物である[1]記載の液相ペプチド製造方法。
【0013】
【0014】
(nは0~20の整数を示し、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を示す)
[3]前記アミノ酸活性エステルスカベンジャーが、次の一般式(1a)で表されるアミノスルホン酸類、
【0015】
【0016】
(R1は炭素数1~10の2価の有機基を示す)
一般式(2)で表されるアミノホスホン酸類及びアミノリン酸類、並びに
【0017】
【0018】
(R2は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X2は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(3)で表されるアミノアルコール類から選ばれる化合物である[1]記載の液相ペプチド製造方法。
【0019】
【0020】
(nは0~20の整数を示し、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を示す)
[4]前記アミノ保護基が、Fmоc基、Bоc基、Cbz基及びAc基から選ばれる保護基である[1]~[3]記載の液相ペプチド製造方法。
[5]前記液相ペプチド合成用担体が、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドに直接又はリンカーを介して結合して、それらを有機溶媒に溶解性で水に不溶性にする化合物である[1]~[4]のいずれかに記載の液相ペプチド製造方法。
[6]前記液相ペプチド合成用担体が、下記式(I):
【0021】
【0022】
[式中、
環Aはヘテロ原子を含んでいてもよく、多環性でもよいC4~18の芳香環を示し;
R11は、水素原子であるか、又は環Aがベンゼン環でRbが下記式(a)で表される基である場合には、R14と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか、又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよく;
p個のXは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR17-(R17は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示し;
p個のR12は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
q個のR13は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は酸素原子を介してシリル基若しくは脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
p、qは、それぞれ0~3の整数かつp+qが1以上4以下を示し;
環Aは、p個のXR12に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
Raは、水素原子、又はハロゲン原子により置換されていてもよい芳香族環を示し;
Rbは、水素原子、又は式(a):
【0023】
【0024】
(式中、*は結合位置を示し;
r、sは、それぞれ0~3の整数かつr+sが4以下を示し;
r個のZは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR18-(R18は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示し;
r個のR15は、独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
s個のR16は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
R14は、水素原子を示すか、R11と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか,又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよく;
環Bは、r個のZR15に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示し;
Yは、ヒドロキシ基、NHR19(R19は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物である[1]~[4]のいずれかに記載の液相ペプチド製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、有機溶媒を含む溶媒中で、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとを縮合させた後に、残存するアミノ酸活性エステルのスカベンジャーとして、アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれる化合物を用いれば、系内を酸性条件とすることなく、アミノ酸活性エステルの除去が可能となることを見出し、従来法における固液分離や分液不良という問題点を解消した。
これにより、ペプチドの液相製造をワンポットで効率よく行うことが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のペプチド製造法は、有機溶媒を含む溶媒中で、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとを縮合させる、液相ペプチド製造法である。
【0027】
用いられる液相ペプチド合成用担体は、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドを保護して、当該保護されたアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドを有機溶媒に可溶化する担体である。
このような液相ペプチド合成用担体としては、例えば前記特許文献1-14に記載の化合物が挙げられる。好ましい液相ペプチド合成用担体としては、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【0029】
[式中、
環Aはヘテロ原子を含んでいてもよく、多環性でもよいC4~18の芳香環を示し;
R11は、水素原子であるか、又は環Aがベンゼン環でRbが下記式(a)で表される基である場合には、R14と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか、又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよく;
p個のXは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR17-(R17は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示し;
p個のR12は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
q個のR13は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は酸素原子を介してシリル基若しくは脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
p、qは、それぞれ0~3の整数かつp+qが1以上4以下を示し;
環Aは、p個のXR12に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよく;
Raは、水素原子、又はハロゲン原子により置換されていてもよい芳香族環を示し;
Rbは、水素原子、又は式(a):
【0030】
【0031】
(式中、*は結合位置を示し;
r、sは、それぞれ0~3の整数かつr+sが4以下を示し;
r個のZは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR18-(R18は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示し;
r個のR15は、独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
s個のR16は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
R14は、水素原子を示すか、R11と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか,又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよく;
環Bは、r個のZR15に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。)で表される基を示し;
Yは、ヒドロキシ基、NHR19(R19は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)又はハロゲン原子を示す。]
【0032】
式(I)中の環Aは、ヘテロ原子を含んでいてもよく、単環性でも、多環性でもよいC4~18の芳香環を示す。当該芳香環としては、C6~18の芳香族炭化水素環、及びC4~10の芳香族複素環が挙げられる。
具体的なC6~18の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、テトラセン環、インダン環、インデン環、フルオレン環、ビフェニル環などが挙げられる。このうち、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、フルオレン環がより好ましい。
C4~10の芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1~3個を含む5員環~10員環の芳香族複素環が好ましく、具体的には、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環などが挙げられる。このうち、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1~3個を含む5員環~8員環の芳香族複素環が好ましく、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環がより好ましい。
【0033】
R11は、水素原子を示すか、又は環Aがベンゼン環でRbが前記式(a)で表される基である場合には、R14と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか、又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよい。R11とR14が一緒になって形成してもよい環としては、フルオレン環又はキサンテン環が好ましい。
【0034】
p個のXは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR17-(R17は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示す。
ここで、R17としては、水素原子、C1~10のアルキル基又はC7~20のアラルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖又は分岐鎖のC1~10のアルキル基が挙げられる。
アラルキル基としては、C7~16アラルキル基、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基などが挙げられる。
【0035】
p個のR12は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示す。
q個のR13は、それぞれ独立して水素原子であるか、又は酸素原子を介してシリル基若しくは脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示す。
p、qは、それぞれ0~3の整数かつp+qが1以上4以下を示す。
【0036】
本明細書において、脂肪族炭化水素基を有する有機基とは、その分子構造中に脂肪族炭化水素基を有する一価の有機基である。当該脂肪族炭化水素基を有する有機基中の脂肪族炭化水素基の部位は、特に限定されず、末端に存在してもよく、それ以外の部位に存在してもよい。
当該有機基中に存在する脂肪族炭化水素基とは、直鎖、分岐状若しくは環状の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、有機溶媒溶解性の点から、C5以上の脂肪族炭化水素基が好ましく、C5~30の脂肪族炭化水素基がより好ましく、C8~30の脂肪族炭化水素基がさらに好ましい。当該脂肪族炭化水素基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられるが、特にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。さらに、C5~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~8のシクロアルキル基、C5~30の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が好ましく、C5~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3~8のシクロアルキル基がより好ましく、C5~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がさらに好ましく、C8~30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がよりさらに好ましい。
【0037】
アルキル基の具体例としては、炭素数1~30のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、アラキル基、べへニル基、テトラコサニル基、ヘキサコサニル基、イソステアリル基などの一価の基、それらから誘導される二価の基、各種ステロイド基から水酸基などを除外した基が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、1-プロぺニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、オレイル基などの一価の基、それらから誘導される二価の基が挙げられる。
アルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基、1-プロピニル基などが挙げられる。
【0038】
上記の脂肪族炭化水素基には、酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基が置換していてもよい。
脂肪族炭化水素基に酸素原子を介して置換し得るシリル基としては、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選ばれる3個が置換したシリル基が好ましい。従って、前記脂肪族炭化水素基には、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基から選ばれる3個が置換したシリルオキシ基が置換していてもよい。ここで、置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
好ましい酸素原子を介して置換するシリル基としては、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が3個置換したシリルオキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が3個置換したシリルオキシ基である。シリルオキシ基に置換する3個のアルキル基又はアリール基は、同一でも異なっていてもよい。なお、当該シリルオキシ基は、前記脂肪族炭化水素基に1~3個置換しているのが好ましい。
【0039】
脂肪族炭化水素基に酸素原子を介して置換し得る脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニルオキシ基、炭素数3~6のシクロアルキルオキシ基などの一価の基、それらから誘導される二価の基などが挙げられる。
【0040】
p、qは、それぞれ0~3の整数かつp+qが1以上4以下を示す。ここで、pは、1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
【0041】
環Aは、p個のXR12に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
【0042】
Raは、水素原子、又はハロゲン原子により置換されていてもよい芳香族環を示す。
ここで、芳香族環としては、C6~18の芳香族炭化水素環、及びC4~10の芳香族複素環が挙げられる。
具体的なC6~18の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、テトラセン環、インダン環、インデン環、フルオレン環、ビフェニル環などが挙げられる。このうち、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、フルオレン環がより好ましい。
C4~10の芳香族複素環としては、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1~3個を含む5員環~10員環の複素環が好ましく、具体的には、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環などが挙げられる。このうち、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1~3個を含む5員環~8員環の複素環が好ましく、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ピラゾール環、インダゾール環がより好ましい。
Raの芳香族環には、1~3個のハロゲン原子が置換していてもよい。
【0043】
Rbは、水素原子、又は前記式(a)で表される基を示す。
式(a)中のr、sは、それぞれ0~3の整数かつr+sが0~4を示す。
rは、0~4が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
【0044】
r個のZは、それぞれ独立して-O-、-S-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-又は-NR18-(R18は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)を示す。
ここで、R18としては、水素原子、C1~10のアルキル基又はC7~20のアラルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、C7~16アラルキル基、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基などが挙げられる。
【0045】
r個のR15は、独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示し;
s個のR16は、それぞれ独立して酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基を示す。
R15及びR16で表される酸素原子を介してシリル基又は脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を有する有機基は、前記のR12及びR13と同じものが挙げられ、前記のR12及びR13と同じものが好ましい。
【0046】
R14は、水素原子を示すか、R11と一緒になって単結合を示して、環A及び環Bと共にフルオレン環を形成するか,又は酸素原子を介して環A及び環Bと共にキサンテン環を形成してもよい。
【0047】
環Bは、r個のZR15に加えて、さらにハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基、及びハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などが挙げられる。ハロゲン原子で置換されていてもよいC1-6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基などが挙げられる。
【0048】
Yは、ヒドロキシ基、NHR19(R19は水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)又はハロゲン原子を示す。
ここで、R19としては、水素原子、C1~10のアルキル基又はC7~20のアラルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
アラルキル基としては、C7~16アラルキル基、例えば、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基などが挙げられる。
【0049】
本発明の製造法に用いられる原料の一つである、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸又は液相ペプチド合成用担体が結合したペプチドとは、アミノ酸又はペプチドの反応性基の一つが前記の液相ペプチド合成用担体と結合しており、少なくとも一つのアミノ基が反応性の状態であるアミノ酸又はペプチドをいう。好ましくは、アミノ酸又はペプチドのカルボキシル基が前記の液相ペプチド合成用担体と結合し、一方、アミノ基は保護されておらず反応性であるものである。液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸アミドとは、アミノ酸アミドの少なくとも一つのアミド基が前記の液相ペプチド合成用担体と結合しており、少なくとも一つのアミノ基は保護されておらず反応性であるアミノ酸アミドをいう。
なお、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドが、水酸基、アミノ基、グアニジル基、カルボキシル基、チオール基、インドール基、イミダゾール基等の反応性に富む官能基を有する場合、これらの官能基にペプチド合成で用いられる一般的な保護基が導入されていてもよく、反応終了後に、必要に応じて保護基を脱離、除去することで目的化合物を得ることができる。その場合の水酸基の保護基としてはtBu基、Trt基、Bz基、アセチル基、シリル基等が挙げられ、アミノ基の保護基としては、Boc基、Fmoc基、Cbz基、Trt基、Mmt基、ivDde基等が挙げられ、グアニジル基の保護基としては、Pbf基、Pmc基、ニトロ基等が挙げられ、カルボキシル基の保護基としてはtBu基、メチル基、エチル基、Bz基等が挙げられ、チオール基の保護基としては、Trt基、Acm基、tBu基、S-tBu基等が挙げられ、インドール基の保護基としては、Boc基等が挙げられ、イミダゾール基の保護基としては、Boc基、Bom基、Bum基、Trt基等を挙げることができる。
【0050】
前記の液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドは、液相ペプチド合成用担体をTHF等の有機溶媒に溶解し、例えばBoc保護アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミド及び縮合剤、例えば、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)を添加して縮合を行い、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドのカルボキシル基に液相ペプチド合成用担体が結合した中間体であるN-Boc-液相合成用担体保護アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドを製造できる。
【0051】
また、液相ペプチド合成用担体は、前記アミノ酸又はぺプチドのカルボキシル基にリンカーを介して結合させることもできる。
ここでいうリンカーとは、リンカーの一方が、前記アミノ酸又はペプチドのカルボキシル基と結合し、他方が液相ペプチド合成用担体と結合する2つの反応基をもつ有機基である。好ましいリンカーは、分子量が約2000以下(好ましくは約1500以下、より好ましくは約1000以下)の有機基であって、反応基として、同じでも異なってもよく、アミノ基、カルボキシル基、及びハロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも2つの基を分子内にもつ化合物である。リンカーとして、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
【0052】
【0053】
【化12】
(式中、Yは1~6、好ましくは1~4の整数である)。
【0054】
【化13】
(式中、Xはハロゲン原子、好ましくは塩素又は臭素である)。
【0055】
【化14】
(式中、Zは2~40、好ましくは2~35、より好ましくは、2~28の整数である)。
(上記リンカーの構造式は、側鎖官能基等に結合する前の状態かつ液相ペプチド合成用担体と結合する前の状態を示す)。
【0056】
もう一方の原料である、アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドとは、アミノ酸又はペプチドのアミノ基がアミノ保護基で保護されており、一方、カルボキシル基は保護されておらず反応性であるアミノ酸又はペプチドを意味する。アミノ酸又はペプチドが1以上のアミノ基を有する場合は、少なくとも一つのアミノ基がアミノ保護基で保護されていれば良い。
アミノ保護基としては、Fmоc基、Bоc基、Cbz基、Ac基などが挙げられ、このうち塩基性条件で脱保護できるFmоc基がより好ましい。
なお、アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドが、水酸基、アミノ基、グアニジル基、カルボキシル基、チオール基、インドール基、イミダゾール基等の反応性に富む官能基を有する場合、これらの官能基にペプチド合成で用いられる一般的な保護基が導入されていてもよく、反応終了後の任意の時点で、必要に応じて保護基を除去することで目的化合物を得ることができる。
水酸基の保護基としてはtBu基、Trt基、Bz基、アセチル基、シリル基等が挙げられ、アミノ基の保護基としては、Boc基、Fmoc基、Cbz基、Trt基、Mmt基、ivDde基等が挙げられ、グアニジル基の保護基としては、Pbf基、Pmc基、ニトロ基等が挙げられ、カルボキシル基の保護基としてはtBu基、メチル基、エチル基、Bz基等が挙げられ、チオール基の保護基としては、Trt基、Acm基、tBu基、S-tBu基等が挙げられ、インドール基の保護基としては、Boc基等が挙げられ、イミダゾール基の保護基としては、Boc基、Bom基、Bum基、Trt基等を挙げることができる。
【0057】
アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチドは、例えば、アミノ保護基でアミノ基を保護したいアミノ酸又はペプチドに、例えばTHFなどの溶媒中でクロロギ酸9-フルオレニルメチルエステルを縮合剤の存在下に反応させることにより、製造することができる。
【0058】
本発明の工程aは前記の原料を縮合させる工程であり、工程aに用いられる反応溶媒は有機溶媒を含む溶媒である。本発明で用いる前記の液相ペプチド合成用担体でアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドを保護すれば、当該液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドは、有機溶媒に溶解するようになるため、液相ペプチド合成が可能となる。
そのような有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、シクロヘキサン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、2-メチルTHF、4-メチルテトラヒドロピラン(4-メチルTHP)、酢酸イソプロピル、クロロホルム、ジクロロメタン、N-メチルピロリドンを挙げることができ、好ましくは、THF、DMF、シクロヘキサン、CPME,MTBE、2-メチルTHF、4-メチルTHP、酢酸イソプロピル、N-メチルピロリドンである。さらに、上記溶媒の2種以上の混合溶媒でもよい。
【0059】
縮合反応は、前記有機溶媒を含む溶媒中で、前記液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミド(以下、液相ペプチド合成用担体結合ペプチドと略する)と、前記アミノ保護基でアミノ基が保護されたアミノ酸又はペプチド(以下、アミノ基保護アミノ酸と略する)と、縮合剤とを混合することにより行うことができる。
【0060】
液相ペプチド合成用担体結合ペプチドに対する、アミノ基保護アミノ酸の使用量は、液相ペプチド合成用担体結合ペプチドに対して、通常1.01~4当量、好ましくは1.03~3当量、より好ましくは1.05~2当量、さらに好ましくは1.1~1.5当量である。本発明のペプチド製造法では、未反応のアミノ酸の活性エステルをその後に添加するスカベンジャーで捕捉して不活性化することができる。そのため、過剰のアミノ基保護アミノ酸を用いても、残存の問題が生じない。
【0061】
縮合剤としては、ペプチド合成において一般的に用いられる縮合剤を、本発明においても用いることができる、例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホニウムクロリド(DMT-MM)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU(6-Cl))、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TCTU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を挙げることができる。好ましくは、DMT-MM、HBTU、HATU、又はCOMUである。縮合剤の使用量は、液相ペプチド合成用担体結合ペプチドに対して、好ましくは1~4当量、より好ましくは1~2当量、さらに好ましくは1.05~1.3当量である。
【0062】
縮合工程において、反応を促進し、ラセミ化などの副反応を抑制するために、好ましくは、活性化剤が添加される。ここで活性化剤とは、縮合剤との共存化で、アミノ酸を、対応する活性エステル、対称酸無水物などに導いて、ペプチド結合(アミド結合)を形成させやすくする試薬である。活性化剤としては、ペプチド合成において一般的に用いられる活性化剤を用いることができる。例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-1H-1,2,3-トリアゾールカルボン酸エチル(HOCt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、3-ヒドロキシ-4-ケトベンゾトリアジン(HOOBt)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(HOSu)、N-ヒドロキシフタルイミド(HOPht)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONb)、ペンタフルオロフェノール、シアノ(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(Oxyma)等を挙げることができる。好ましくは、HOBt、HOOBt、HOCt、HOAt、HONb、HOSu、Oxymaである。活性化剤の使用量は、液相ペプチド合成用担体結合ペプチドに対して、好ましくは1~4当量、より好ましくは1~2当量、さらに好ましくは1.05~1.3当量である。
【0063】
前記溶媒の使用量は、液相ぺプチド合成用担体結合ペプチド等を溶解した濃度が、好ましくは0.1mM~1Mとなる量であり、より好ましくは1mM~0.5Mとなる量である。
反応温度は、ペプチド合成において一般的に用いられる温度、例えば、-20~40℃が好ましく、より好ましくは0~30℃である。反応時間(1サイクルの時間)は、通常0.5~30時間である。
【0064】
工程bは、縮合反応後の反応液に、アミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれるアミノ酸活性エステルスカベンジャーを添加する工程である。
この工程は、縮合反応で副生するアミノ酸活性エステルをスカベンジする工程であり、当該スカベンジャーとしてアミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれる化合物を用いることを特徴とする。これらの化合物をスカベンジャーとして用いることにより、系内を酸性条件とすることなく、アミノ酸活性エステルを捕捉、除去できる。
【0065】
当該アミノ酸活性エステルスカベンジャーとしては、次の一般式(1)で表されるアミノスルホン酸類及びアミノ硫酸類;
【0066】
【0067】
(R1は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X1は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(2)で表されるアミノホスホン酸類及びアミノリン酸類;
【0068】
【0069】
(R2は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X2は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(3)で表されるアミノアルコール類が好ましい。
【0070】
【0071】
(nは0~20の整数を示し、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を示す)
【0072】
一般式(1)中のR1及び一般式(2)のR2は、独立して、炭素数1~10の2価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
このうち、これらの化合物の溶解性の点から、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、炭素数6~8のアリーレン基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖又は分岐際のアルキレン基がさらに好ましく、炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基がよりさらに好ましく、炭素数1~3の直鎖アルキレン基がさらに好ましく、炭素数1又は2の直鎖アルキレン基が最も好ましい。
一般式(1)において、X1が単結合の場合はアミノスルホン酸類であり、X1が酸素原子の場合はアミノ硫酸類である。
一般式(2)において、X2が単結合の場合はアミノホスホン酸類であり、X2が酸素原子の場合はアミノリン酸類である。
【0073】
一般式(3)中のnは、0~20の整数を示す。このうちnは、0又は2~20が好ましく、0又は2~6がより好ましく、0又は2~4がさらに好ましい。一般式(3)中のR3、R4は、水素原子またはヒドロキシルメチル基が好ましい。
【0074】
工程bにおける本発明のスカベンジャーの添加量は、理論上残存する活性アミノ酸エステル1当量に対して、好ましくは1~10当量、より好ましくは1~6当量、さらに好ましくは1~4当量である。本発明のスカベンジャーの添加量が少なすぎると、アミノ酸活性エステルのスカベンジ(捕捉)が不充分となり、残存したアミノ酸活性エステルと工程dで生成したアミノ基が反応するダブルヒットが起こり、純度、収率を低下させる。一方、多すぎると、同時に脱アミノ保護基反応が進行し、残存しているアミノ酸活性エステルが、アミノ保護基の脱離により再生したアミノ基と反応するダブルヒットが起こり、純度、収率を低下させる。
【0075】
また、工程bの別の態様として、以下を挙げることができる。
工程bの別の態様は、縮合反応後の反応液に、アミノスルホン酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれるアミノ酸活性エステルスカベンジャーを添加する工程である。
この工程は、縮合反応で副生するアミノ酸活性エステルをスカベンジする工程であり、当該スカベンジャーとしてアミノスルホン酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類から選ばれる化合物を用いることを特徴とする。これらの化合物をスカベンジャーとして用いることにより、系内を酸性条件とすることなく、アミノ酸活性エステルが除去でき、固液分離や分液不良を解消した。
【0076】
当該アミノ酸活性エステルスカベンジャーとしては、次の一般式(1a)で表されるアミノスルホン酸類;
【0077】
【0078】
(R1は炭素数1~10の2価の有機基を示す)
一般式(2)で表されるアミノホスホン酸類及びアミノリン酸類;
【0079】
【0080】
(R2は炭素数1~10の2価の有機基を示し、X2は単結合又は酸素原子を示す)
一般式(3)で表されるアミノアルコール類が好ましい。
【0081】
【0082】
(nは0~20の整数を示し、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシメチル基を示す)
【0083】
一般式(1a)中のR1及び一般式(2)のR2は、独立して、炭素数1~10の2価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
このうち、これらの化合物の溶解性の点から、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、炭素数6~8のアリーレン基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖又は分岐際のアルキレン基がさらに好ましく、炭素数1~5の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基がよりさらに好ましく、炭素数1~3の直鎖アルキレン基がさらに好ましく、炭素数1又は2の直鎖アルキレン基が最も好ましい。
一般式(1a)の化合物はアミノスルホン酸類である。
一般式(2)において、X2が単結合の場合はアミノホスホン酸類であり、X2が酸素原子の場合はアミノリン酸類である。
【0084】
一般式(3)中のnは、0~20の整数を示す。このうちnは、0又は2~20が好ましく、0又は2~6がより好ましく、0又は2~4がさらに好ましい。一般式(3)中のR3、R4は、水素原子またはヒドロキシルメチル基が好ましい。
【0085】
工程bにおける本発明のスカベンジャーの添加量は、理論上残存する活性アミノ酸エステル1当量に対して、好ましくは1~10当量、より好ましくは1~6当量、さらに好ましくは1~4当量である。本発明のスカベンジャーの添加量が少なすぎると、アミノ酸活性エステルのスカベンジ(捕捉)が不充分となり、残存したアミノ酸活性エステルと工程cで生成したアミノ基が反応するダブルヒットが起こり、純度、収率を低下させる。一方、多すぎると、同時に脱アミノ保護基反応が進行し、残存しているアミノ酸活性エステルが、アミノ保護基の脱離により再生したアミノ基と反応するダブルヒットが起こり、純度、収率を低下させる。
【0086】
工程cは、反応液中の前記アミノ保護基でアミノ基が保護された化合物のアミノ保護基を脱離する工程である。
当該アミノ保護基の脱離工程は、アミノ保護基の種類により相違する。例えば、アミノ保護基がFmoc基の場合は反応液を塩基性条件とすればよい。アミノ保護基がBoc基の場合は反応液を酸性条件とすればよい。アミノ保護基がCbz基の場合は接触還元すればよい。アミノ保護基がAc基の場合は、強酸又は強塩基条件で脱保護すればよい。このうち、ワンポット液相合成とするには、アミノ保護基をFmoc基とするのがより好ましい。
【0087】
アミノ保護基がFmoc基の場合のアミノ保護基の脱離工程について説明する。
Fmoc脱離工程は、反応液を塩基性にできればよいが、アミン化合物、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]-オクタン(DABCO)、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン類;1-メチルピペラジン、4-アミノピペリジン、ジエチレントリアミン、トリアミノエチルアミン、1-エチルピペラジン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、ピぺリジン、ピペラジンなどの1級又は2級のアミノ基を少なくとも1つ持つ2価以上の水溶性アミン類を用いることができる。好ましくは、DBU、ピぺリジン、1-メチルピペラジン、4-アミノピペリジン、ジエチレントリアミンであり、より好ましくは、DBU、ピぺリジン、1-メチルピペラジンである。さらに好ましくはDBUである。
工程cにおいて添加するアミン化合物の当量は、系に存在するFmoc基の量に対して、1~30当量、好ましくは4~20当量、より好ましくは4~10当量である。
【0088】
また、前記アミン化合物に加えて、脱Fmoc反応により生じるDBF(ジベンゾフルベン)のトラッピング剤を添加するのが好ましい。ここで用いられるDBFのトラッピング剤としては、メルカプト化合物が挙げられる。用いることができるメルカプト化合物としては、メルカプト基を有し、DBFと反応した化合物が水溶性を示すものであれば特に限定されないが、例えばメルカプト脂肪酸又はそのアルカリ金属塩、下記の一般式(4)又は(5)
【0089】
【0090】
(式中、L1及びL2は、それぞれ2価の有機基を示し、Mは水素原子又はアルカリ金属を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0091】
メルカプト脂肪酸又はそのアルカリ金属塩としては、メルカプトC1~20脂肪酸又はそのアルカリ金属塩が好ましく、メルカプトC1~6脂肪酸又はそのアルカリ金属塩がより好ましい。
一般式(4)又は(5)中L1及びL2は、それぞれ2価の有機基を示す。当該2価の有機基としては、炭素数1~10の2価の有機基が好ましく、より好ましくは、メルカプト基を有していてもよい炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、メルカプト基を有していてもよい炭素数6~10のアリーレン基、メルカプト基を有していてもよい炭素数4~9のヘテロアリーレン基が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、メルカプトトリメチレン基、メルカプトプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、インドール基、ベンズイミダゾール基、キノリル基、イソキノリン基などが挙げられる。
Mは水素原子又はアルカリ金属を示す。具体的には、水素原子、ナトリウム、カリウムが挙げられる。
具体的には、メルカプトメタンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタンスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム、1,3-ジメルカプトプロパンスルホン酸、2-メルカプトベンズイミダゾール-5-スルホン酸ナトリウム、メルカプトメタンホスホン酸ナトリウム、メルカプトエタンホスホン酸、3-メルカプトプロパンホスホン酸ナトリウム、1,3-ジメルカプトプロパンホスホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0092】
メルカプト化合物の添加量は、理論上副生するDBFの量に対して1~30当量が好ましく、1~10当量がより好ましく、1~5当量がさらに好ましい。
前記アミン化合物とメルカプト化合物は、同時に添加してもよく、メルカプト化合物、次いでアミン化合物の順に添加してもよく、塩基を加えFmoc基を除去したのちにメルカプト化合物を加えてもよい。
Fmoc脱離工程は、-20~40℃の温度で、5分~5時間行えばよい。
【0093】
工程dは、反応液に水溶液を添加した後、分液して、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、前記アミノ保護基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体を含有する有機溶媒層を得る工程である。
工程cの反応液に水溶液を添加した後、水層と有機溶媒層を分液する。
水層には、アミノ保護基が脱離したアミノ酸又はペプチドと活性エステルスカベンジャーとの縮合体と、DBF-トラッピング剤付加体が含まれる。すなわち、アミノ保護基が脱離したアミノ酸又はペプチドと活性エステルスカベンジャーとの縮合体は、工程dの水溶液の添加だけで、容易に水層に抽出される。
一方、有機溶媒層には、液相ペプチド合成用担体が結合したアミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドと、前記アミノ保護基が脱離したアミノ酸又はペプチドとの縮合体が含まれる。
ここで、用いられる水溶液としては、水、又は中性付近のpHを有する水溶液が挙げられる。具体的には、水、塩化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、リン酸水素二ナトリウム水溶液、リン酸三ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、リン酸水素二カリウム水溶液、リン酸三カリウム水溶液等が挙げられる。
【0094】
このように、本発明の工程a~dによれば、単に水溶液を添加して分液するだけで、酸性水溶液を使用する必要がないので、アミノ酸活性エステルと生成物であるペプチドとの分液不良が起こることがない。また、固液分離を必要としないので、ペプチドの液相製造において、単離操作を行うことなく、次工程のペプチド伸長反応を行えるためワンポット合成が可能になる。前記した一連の工程は、マイクロフロー技術を用いて実施しても良い。マイクロフロー技術を用いたペプチド合成技術については、例えばNature Communications 7, Article number:13491(2016)に記載がある。また、得られた有機溶媒層は、さらに任意のアミノ酸との縮合反応に利用できる。
【実施例0095】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
なお、液相ペプチド合成用担体として、以下に示す化合物を使用した。
・TIPS2-OH(C11)型ベンジル化合物(積水メディカル社製)(以下、B-STagと記すことがある)。但し、TIPSは、トリイソプロピルシリル基を示す。
【0096】
【0097】
・TIPS2-OH(C11)型ジフェニルメタン化合物(積水メディカル社製)(以下、D-STagと記すことがある)。但し、TIPSは、トリイソプロピルシリル基を示す。
【0098】
【0099】
Fmoc-NH-(D-STag)は、上記D-STagのアミノ基がFmoc基で保護された化合物である。
・TIPS2-OH(C11)型キサンテン化合物(積水メディカル社製)(以下、X-STagと記すことがある)。但し、TIPSは、トリイソプロピルシリル基を示す。
【0100】
【0101】
Fmoc-NH-(X-STag)は、上記X-STagのアミノ基がFmoc基で保護された化合物である。
また、以下の実施例では、B-STagがFmoc保護tBu保護グルタミン酸(Fmoc-Glu(OtBu)-OH)と結合した化合物を、Fmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)と表記し、下記の構造を示すものとする。Fmoc-Glu(OtBu)-OHに限らず、他のアミノ酸と結合した場合も、これに準ずる表記とする。
【0102】
【0103】
また、D-STagがFmoc保護tBu保護スレオニン(Fmoc-Thr(tBu)-OH)と結合した化合物を、Fmoc-Thr(tBu)-NH-(D-STag)と表記し、これは下記の構造を示すものとする。スレオニンに限らず、他のアミノ酸と結合した場合も、これに準ずる表記とする。
【0104】
【0105】
また、X-STagがFmoc保護フェニルアラニン(Fmoc-Phe-OH)と結合した化合物をFmoc-Phe-NH-(X-STag)と表記し、これは下記の構造を示すものとする。フェニルアラニンに限らず、他のアミノ酸と結合した場合も、これに準ずる表記とする。
【0106】
【0107】
実施例1
アミノ酸活性エステルとスカベンジャーの縮合物の、水洗浄による除去率に関する検討
スカベンジャーとして、タウリン(実施例1-1)、2-AEHS(硫酸水素2-アミノエチル:2-アミノエチル硫酸)(実施例1-2)又はAEAE(2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール)(比較例1)のいずれかを使用し、以下の検討を実施した。なお、タウリンは0.6Mの水溶液として、2-AEHSは0.25MのDMSO溶液として添加した。
CPME 7mL、DMF 3mLの混合溶液に、Fmoc-Cys(Trt)-OH 0.88g(1.5mmol)、COMU 0.64g(1.5mmol)、Oxyma 0.64g(4.5mmol)、DIPEA 1.55g(12.0mmol)を加え、室温で30分撹拌した。スカベンジャーを1.8mmol添加し、室温で15分攪拌した後、本液をHPLCにて分析し、アミノ酸活性エステルとスカベンジャーの縮合物の量を検証した。続いて、DBU 0.69g(4.5mmol)を加え、30分撹拌し、本液をHPLCにて分析した後に(分析(1))、1N塩酸4.5mLを加え、分液した。得られた有機層をHPLCにて分析し(分析(2))、アミノ酸活性エステルとスカベンジャーの縮合物の水層への除去率、すなわち洗浄性を検証した。結果を表1に示した。
【0108】
HPLC分析条件
カラム:MonoBisカラム 3.2×150mm 低圧タイプ、メソポア径11mm、ODS・エンドキャップ(株式会社京都モノテック、製品番号32150L11ODS)
移動相A:0.1%ギ酸含有5%イソプロパノール―5%イソプロピルエーテル水溶液
移動相B:0.1%ギ酸含有85%イソプロパノール―5%イソプロピルエーテル水溶液
流速:1.0mL/min
カラム温度:60℃
検出波長:215nm
グラジエント条件:5%B(0分)→5%B(1分)→100%B(11分)→100%B(16分)→5%B(17分)→5%B(20分)
【0109】
【0110】
アミノ酸活性エステルとスカベンジャーの縮合物の除去率は、分析(1)におけるアミノ酸活性エステルとスカベンジャーの縮合物のHPLCピーク面積Aと、分析(2)におけるアミノ酸活性エステルとスカベンジャーの縮合物のHPLCピーク面積Bより算出した。
除去率={(A-B)/A}×100(%)
除去率が高いほど、Fmoc-Cys(Trt)-OHの活性エステルとスカベンジャーの縮合物が水層に除去されやすく、有用なスカベンジャーであると言える。
【0111】
表1より、スカベンジャーとして実施例1-1のタウリン、実施例1-2の2-AEHSを用いた場合は、Fmoc-Cys(Trt)-OHの活性エステルとスカベンジャーの縮合体を全て水層に除去することができた。これは、比較例1のAEAEを用いた場合の34%と比較すると極めて良好な結果であった。なお、AEAEは2価の水溶性アミンであり、2価の水溶性アミンは特許文献17でスカベンジャーとして有用とされている化合物である。
【0112】
実施例2
X-STagに対して3.0当量のFmoc保護フェニルアラニン(Fmoc-Phe-OH)を添加し、3段階に分けてペプチド鎖を伸長する反応において、スカベンジャーを使用しなかった場合(比較例2)、スカベンジャーとしてタウリンを使用した場合(実施例2)のH―Phe―Phe-Phe-NH2の合成結果を比較した。なお、タウリンは0.6Mの水溶液として添加した。
【0113】
1)H―Phe-NH-(X-STag)の合成
X-STag 0.44g(0.5mmol)をCPME 7mL、DMF 3mLに溶解し、Fmoc-Phe―OH 0.58g(1.5mmol)、COMU 0.64(1.5mmol)、Oxyma 0.21g(1.5mmol)、DIPEA 0.26g(2.0mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。X-STagが生成物のFmoc-Phe-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、スカベンジャーを添加する場合は2.0mmol分を加え、室温で15分撹拌した。Fmoc-Phe-OHの活性エステルがスカベンジャーと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム0.54g(3.0mmol)(1.2mol/LとなるようDMSOに溶解)を添加し、DBU 0.88g(5.8mmol)を加え、30分撹拌した。Fmoc-Phe-NH-(X-STag)が生成物のH-Phe-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1N 塩酸3.4mLを滴下し、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に50%リン酸水素二カリウム水溶液6.7mL、DMSO 0.18mL、DMF 0.18mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Phe-OHの活性エステルがスカベンジャーと縮合した化合物がないことを確認し、有機層を濃縮したのち、残渣にCPME 7mLを加え、H―Phe―NH―(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0114】
2)同様に、H―Phe―Phe-NH―(X-STag)、H―Phe―Phe―Phe-NH―(X-STag)の合成を実施した。得られたH―Phe―Phe―Phe-NH―(X-STag)のCPME溶液を減圧下で濃縮し、得られた固体を室温で減圧乾燥し、H―Phe―Phe―Phe-NH―(X-STag)を得た。
【0115】
3)H―Phe―Phe―Phe-NH2の合成
各条件で得られたH―Phe―Phe―Phe-NH―(X-STag)に、トリフルオロ酢酸、水、トリイソプロピルシラン、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオールの92.5/2.5/2.5/2.5混合液を、H―Phe―Phe―Phe-NH―(X-STag)の濃度が50mMとなるよう添加し、室温で1時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、H―Phe―Phe―Phe-NH―(X-STag)の90%(v/w)のMTBEをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物を、H―Phe―Phe―Phe-NH―(X-STag)に対して68.4%(v/w)のMTBEで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H―Phe―Phe―Phe-NH2を得た。
得られたH―Phe―Phe―Phe-NH2の純度をHPLCで測定した。結果を表2に示した。HPLC分析条件は、実施例1と同一である。
【0116】
【0117】
スカベンジャーを使用しなかった比較例2の場合、目的物であるH―Phe―Phe―Phe-NH2の純度は62.8%であり、ダブルヒット体であるH―Phe―Phe―Phe-Phe-NH2や、トリプルヒット体であるH―Phe―Phe―Phe―Phe-Phe-NH2の混入が確認された。一方、スカベンジャーとしてタウリンを使用した場合(実施例2)、目的物の純度は88.5%と、比較例2よりも高くなった。上記成績から、タウリンがアミノ酸活性エステルのスカベンジャーとして有用であることが示された。
【0118】
実施例3
H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
1)H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
B-STag 2.40g(3.0mmol)をCPME6mL、THF9mLに溶解し、Fmoc-Glu(OtBu)-OH 3.21g(7.5mmol)、WSCI・HCl 1.44g(7.5mmol)、4-ジメチルアミノピリジン36.8mg(0.3mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。B-STagが生成物のFmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.94g(7.5mmol)、DMSO 38mLを加え、室温で30分撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.42g(8.6mmol)を添加し、DBU5.1mL(34mmol)を加え、20分撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液75mLを滴下し、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水17mL、5%炭酸ナトリウム水溶液6mL、DMF 1.2mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Glu(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物がないことを確認し、有機層を濃縮したのち、残渣にCPME27mL加え、H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0119】
2)H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にDMF7mL、Fmoc-Cys(Trt)-OH 2.38g(4.1mmol)、COMU 1.67g(3.9mmol)、DIEPA 2.1mLを加え、室温で2時間撹拌した。H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 16mLを加え、室温で2時間撹拌した。Fmoc-Cys(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.19g(3.9mmol)を添加し、DBU2.7mL(18mmol)を加え、20分撹拌した。Fmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Cys(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物がないことを確認し、H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0120】
3)H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME2mL、DMF7mL、Fmoc-Asn(Trt)-OH 2.43g(4.1mmol)、COMU 1.67g(3.9mmol)、DIEPA 2.1mLを加え、室温で2時間撹拌した。H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 16mLを加え、室温で40分撹拌した。Fmoc-Asn(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.19g(3.9mmol)を添加し、DBU2.7mL(18mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを滴下し、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Asn(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物がないことを確認し、H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0121】
4)H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME2mL、DMF7mL、Fmoc-Ala-OH一水和物 1.33g(4.1mmol)、COMU 1.67g(3.9mmol)、DIEPA 2.1mLを加え、室温で1時間半撹拌した。H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 16mLを加え、室温で30分撹拌した。Fmoc-Ala-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.19g(3.9mmol)、DMF 1.3mLを添加し、DBU2.7mL(18mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下した後、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Ala-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物がないことを確認し、H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0122】
5)H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME2mL、DMF7mL、Fmoc-Asp(OtBu)-OH 1.67g(4.1mmol)、COMU 1.67g(3.9mmol)、DIEPA 2.1mLを加え、室温で1時間撹拌した。H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、タウリン0.55g(3.9mmol)、DMSO 16mLを加え、室温で30分撹拌した。Fmoc-Asp(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム1.19g(3.9mmol)、DMF 1.3mLを添加し、DBU2.7mL(18mmol)を加え、40分撹拌した。Fmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液9.6mLを滴下した後、5%炭酸ナトリウム水溶液60mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水38mL、5%炭酸ナトリウム水溶液13mL、DMF 2.7mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Ala-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたタウリンと縮合した化合物がないことを確認し、H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣にMeCN 40mLを加え析出した固体をろ取し、得られた固体を30℃で減圧乾燥した。H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag) 4.58gを得た。
【0123】
6)H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)962mg(0.50mmol)にトリフルオロ酢酸9.5mL、水0.29mL、トリイソプロピルシラン0.29mL、ジチオトレイトール865mg、アニソール0.58mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、ジイソプロピルエーテル72mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をジイソプロピルエーテル10mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OH 275mgを得た。得られたH-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの純度は90.5%であった。
【0124】
実施例4
H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の合成
1)H-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
Fmoc-NH-(D-STag) 1.09g(1.0mmol)をCPME9mL、DMF2mLに溶解し、0℃に冷却した後、DIEPA 0.32mL(1.9mmol)、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.30g(1.8mmol)を添加し、DBU0.67mL(4.5mmol)を滴下した。0℃で1時間撹拌し、Fmoc-NH-(D-STag)が生成物のNH2-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液2.4mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液10mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水25mL、5%炭酸ナトリウム水溶液8mL、DMF 1.8mLを加え、分液し、NH2-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
このNH2-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.6mL、DMF2mL、Fmoc-Thr(tBu)-OH 0.55g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で70分撹拌した。NH2-(D-STag)が生成物のFmoc-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタノール(AEEE)62μL(0.5mmol)を加え、室温で30分撹拌した。Fmoc-Thr(tBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、70分撹拌した。Fmoc-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水25mL、5%炭酸ナトリウム水溶液8mL、DMF 1.8mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Thr(tBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物がないことを確認し、H-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0125】
2)H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
上記のH-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.7mL、DMF2mL、Fmoc-Arg(Pbf)-OH 0.88g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のFmoc-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、AEEE62μL(0.5mmol)を加え、室温で30分撹拌した。Fmoc-Arg(Pbf)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、50分撹拌した。Fmoc-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを滴下した後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Arg(Pbf)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物がないことを確認し、H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0126】
3)H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
上記のH-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Glu(OtBu)-OH 0.58g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のFmoc-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、AEEE62μL(0.5mmol)を加え、室温で40分撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを滴下した後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Glu(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物がないことを確認し、H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0127】
4)H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
上記のH-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Trp(Boc)-OH 0.71g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で70分撹拌した。H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のFmoc-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、AEEE62μL(0.5mmol)を加え、室温で40分撹拌した。Fmoc-Trp(Boc)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DMF 0.4mL、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Trp(Boc)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物がないことを確認し、H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0128】
5)H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)の合成
上記のH-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Gln(Trt)-OH 0.82g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のFmoc-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、AEEE62μL(0.5mmol)を加え、室温で40分撹拌した。Fmoc-Gln(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 3.0mLを添加し、DMF 0.4mL、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)が生成物のH-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Gln(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物がないことを確認し、H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣にMeCN 24mL、IPA18mL、CPME6mL、水12mLを加え、析出した固体をろ取し、得られた固体を30℃で減圧乾燥した。H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag) 1.84gを得た。
【0129】
6)H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の合成
H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(D-STag)1.14g(0.50mmol)にトリフルオロ酢酸9.5mL、水0.25mL、トリイソプロピルシラン0.25mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、MTBE70mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をMTBE10mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2 227mgを得た。得られたH-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の純度は77.2%であった。
【0130】
実施例5
H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
1)H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
B-STag 0.79g(1.0mmol)をCPME2mL、THF3mLに溶解し、Fmoc-Glu(OtBu)-OH 1.06g(2.5mmol)、WSCI・HCl 0.48g(2.5mmol)、4-ジメチルアミノピリジン12.2mg(0.1mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。B-STagが生成物のFmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール150μL(2.5mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.74g(4.5mmol)、DMSO 4.5mLを添加し、DBU1.7mL(11.3mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液6mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液19mLを加えた後、室温まで昇温し分液した。得られた有機層に20%食塩水20mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Glu(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物がないことを確認し、有機層を濃縮したのち、残渣にCPME9mL加え、H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0131】
2)H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にDMF2mL、Fmoc-Cys(Trt)-OH 0.79g(1.4mmol)、COMU 0.57g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mLを加え、室温で1時間撹拌した。H-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.4mmol)を加え、室温で1時間半撹拌した。Fmoc-Cys(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(1.3mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、25分撹拌した。Fmoc-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Cys(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物がないことを確認し、H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0132】
3)H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Asn(Trt)-OH 0.81g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mLを加え、室温で55分撹拌した。H-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.4mmol)を加え、室温で25分撹拌した。Fmoc-Asn(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、75分撹拌した。Fmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Asn(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物がないことを確認し、H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0133】
4)H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Ala-OH・一水和物 0.47g(1.5mmol)、COMU 0.64g(1.5mmol)、DIEPA 0.78mL(4.5mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール89μL(1.5mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。Fmoc-Ala-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.5mmol)、DMSO 2.5mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Ala-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物がないことを確認し、H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0134】
5)H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Asp(OtBu)-OH 0.56g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.4mmol)を加え、室温で70分撹拌した。Fmoc-Asp(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、75分撹拌した。Fmoc-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)が生成物のH-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)に対し5%以下になったことを確認後、水 3.2mLを滴下したのち、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Asp(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物がないことを確認し、H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣にMeCN 40mLを加え析出した固体をろ取し、得られた固体を30℃で減圧乾燥した。H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag) 1.56gを得た。
【0135】
6)H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの合成
H-Asp(OtBu)-Ala-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Glu(OtBu)-O-(B-STag)962mg(0.50mmol)にトリフルオロ酢酸7.5mL、水0.21mL、トリイソプロピルシラン0.21mL、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール0.42mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、MTBE60mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をMTBE10mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OH 275mgを得た。得られたH-Asp-Ala―Asn-Cys-Glu-OHの純度は78.4%であった。
【0136】
実施例6
H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の合成
1)H-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
Fmoc-NH-(X-STag) 1.10g(1.0mmol)をCPME9mL、DMF2mLに溶解し、0℃に冷却した後、DIEPA 0.33mL(1.9mmol)、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.30g(1.8mmol)を添加し、DBU0.67mL(4.5mmol)を滴下した。0℃で1時間撹拌し、Fmoc-NH-(X-STag)が生成物のNH2-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液4.8mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液10mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水25mL、5%炭酸ナトリウム水溶液8mL、DMF 1.8mLを加え、分液し、NH2-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
このNH2-(X-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.6mL、DMF2mL、Fmoc-Thr(tBu)-OH 0.54g(1.4mmol)、COMU 0.57g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で70分撹拌した。NH2-(X-STag)が生成物のFmoc-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、アミノメタンホスホン酸0.11g(1.0mmol)、DMSO 2.4mLを加え、室温で20分撹拌した。Fmoc-Thr(tBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたアミノメタンホスホン酸と縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)を添加し、DBU0.91mL(6.1mmol)を加え、70分撹拌した。Fmoc-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水25mL、5%炭酸ナトリウム水溶液8mL、DMF 1.8mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Thr(tBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたアミノメタンホスホン酸と縮合した化合物がないことを確認し、H-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0137】
2)H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
上記のH-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.7mL、DMF2mL、Fmoc-Arg(Pbf)-OH 0.88g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のFmoc-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.4mmol)を加え、室温で30分撹拌した。Fmoc-Arg(Pbf)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、50分撹拌した。Fmoc-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを滴下した後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Arg(Pbf)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物がないことを確認し、H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0138】
3)H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
上記のH-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Glu(OtBu)-OH 0.57g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のFmoc-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.0mmol)を加え、室温で40分撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEEEと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mL、DMF0.4mLを添加し、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを滴下した後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Glu(OtBu)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物がないことを確認し、H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0139】
4)H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
上記のH-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Trp(Boc)-OH 0.71g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で70分撹拌した。H-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のFmoc-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.0mmol)を加え、室温で40分撹拌した。Fmoc-Trp(Boc)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 2.4mLを添加し、DMF 0.4mL、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Trp(Boc)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物がないことを確認し、H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0140】
5)H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)の合成
上記のH-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液に、CPME0.5mL、DMF2mL、Fmoc-Gln(Trt)-OH 0.83g(1.4mmol)、COMU 0.56g(1.3mmol)、DIEPA 0.71mL(4.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。H-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のFmoc-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、2-アミノエタノール81μL(1.0mmol)を加え、室温で40分撹拌した。Fmoc-Gln(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.40g(2.4mmol)、DMSO 3.0mLを添加し、DMF 0.4mL、DBU 0.91mL(6.1mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)が生成物のH-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)に対し5%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液3.2mLを滴下し、5%炭酸ナトリウム水溶液13mLを加えた後、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水13mL、5%炭酸ナトリウム水溶液4mL、DMF 0.9mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Gln(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いた2-アミノエタノールと縮合した化合物がないことを確認し、H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣にMeCN 25mL、MeOH15mLを加え、析出した固体をろ取し、得られた固体を30℃で減圧乾燥した。H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag) 1.26gを得た。
【0141】
6)H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の合成
H-Gln(Trt)-Trp(Boc)-Glu(OtBu)-Arg(Pbf)-Thr(tBu)-NH-(X-STag)1.15g(0.50mmol)にトリフルオロ酢酸9.5mL、水0.25mL、トリイソプロピルシラン0.25mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、MTBE70mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をMTBE10mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2 358mgを得た。得られたH-Gln-Trp-Glu-Arg-Thr-NH2の純度は78.1%であった。
【0142】
実施例7
H-Gln-Asn-Cys-Arg-OHの合成
1)H-Arg(Pbf)-O-(B-STag)の合成
B-STag 0.40g(0.5mmol)をCPME1mL、THF1.5mLに溶解し、Fmoc-Arg(Pbf)-OH 0.81g(1.3mmol)、WSCI・HCl 0.24g(1.3mmol)、4-ジメチルアミノピリジン6.1mg(0.05mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。B-STagが生成物のFmoc-Arg(Pbf)-O-(B-STag)に対し10%以下になったことを確認後、リン酸二水素2-アミノエチル(AEDP)0.18g(1.3mmol)、DMSO 2.5mLを加え、室温で1時間撹拌した。Fmoc-Arg(Pbf)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEDPと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.37g(2.3mmol)を添加し、DBU0.84mL(5.6mmol)を加え、65分撹拌した。Fmoc-Arg(Pbf)-O-(B-STag)が生成物のH-Arg(Pbf)-O-(B-STag)に対し10%以下になったことを確認後、5%炭酸水素カリウム水溶液15mL、CPME3mLを滴下し、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水6mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Arg(Pbf)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEDPと縮合した化合物がないことを確認し、有機層を濃縮したのち、残渣にCPME0.6mL加え、H-Arg(Pbf)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0143】
2)H-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Arg(Pbf)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にDMF7mL、Fmoc-Cys(Trt)-OH 0.40g(0.7mmol)、COMU 0.28g(0.7mmol)、DIEPA 0.24mLを加え、室温で80分撹拌した。H-Arg(Pbf)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)に対し10%以下になったことを確認後、AEDP 92mg(0.7mmol)、DMSO 1.3mLを加え、室温で2時間撹拌した。Fmoc-Cys(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEDPと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.21g(1.2mmol)を添加し、DBU0.45mL(3mmol)を加え、50分撹拌した。Fmoc-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)が生成物のH-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)に対し10%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液1.6mLを滴下したのち、5%炭酸水素カリウム水溶液7mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水8mL、DMF 0.4mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Cys(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEDPと縮合した化合物がないことを確認し、H-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0144】
3)H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME0.2mL、DMF1.1mL、Fmoc-Asn(Trt)-OH 0.40g(0.7mmol)、COMU 0.28g(0.7mmol)、DIEPA 0.24mLを加え、室温で65分撹拌した。H-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)に対し10%以下になったことを確認後、AEDP92mg(0.7mmol)、DMSO 1.3mLを加え、室温で90分撹拌した。Fmoc-Asn(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEDPと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.21g(1.2mmol)を添加し、DBU0.45mL(3mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)が生成物のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)に対し10%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液1.6mLを滴下したのち、5%炭酸水素カリウム水溶液7mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水8mL、DMF 0.4mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Asn(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEDPと縮合した化合物がないことを確認し、H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
【0145】
4)H-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)の合成
上記のH-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)を含むCPME溶液にCPME0.2mL、DMF1.1mL、Fmoc-Gln(Trt)-OH0.48g(0.75mmol)、COMU 0.31g(0.73mmol)、DIEPA 0.39mLを加え、室温で80分撹拌した。H-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)が生成物のFmoc-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)に対し10%以下になったことを確認後、AEDP 0.10g(0.73mmol)、DMSO 1。5mLを加え、室温で45分撹拌した。Fmoc-Gln(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEDPと縮合した化合物を確認したのち、0℃に冷却し、2-メルカプト-1-エタンスルホン酸ナトリウム0.22g(1.4mmol)を添加し、DBU0.50mL(3.4mmol)を加え、1時間撹拌した。Fmoc-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)が生成物のH-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)に対し10%以下になったことを確認後、1M硫酸水溶液1.8mLを滴下した後、5%炭酸水素カリウム水溶液7mLを加え、室温まで昇温し、分液した。得られた有機層に20%食塩水8mL、DMF 0.4mLを加え、分液した。得られた有機層にFmoc-Gln(Trt)-OHの活性エステルがスカベンジャーとして用いたAEDPと縮合した化合物がないことを確認し、H-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)を含むCPME溶液を得た。
得られたCPME溶液を減圧下で濃縮し、残渣として、H-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag) 1.58gを得た。
【0146】
5)H-Gln―Asn-Cys-Arg-OHの合成
上記のH-Gln(Trt)-Asn(Trt)-Cys(Trt)-Arg(Pbf)-O-(B-STag)1.58(0.50mmol相当)に事前に調製したトリフルオロ酢酸/水/トリイソプロピルシラン/3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール混液(90/2.5/2.5/5)10mLを添加し、室温で2時間撹拌した。反応溶液を0℃に冷却し、MTBE60mLをゆっくりと滴下し、沈澱物を濾取した。ろ取した沈殿物をMTBE10mLで3回洗浄行った後、沈澱物を減圧下で乾燥し、H-Gln―Asn-Cys-Arg-OH 275mgを得た。得られたH-Gln―Asn-Cys-Arg-OHの純度は82.6%であった。
以上のように、本発明で見いだされたアミノスルホン酸類、アミノ硫酸類、アミノホスホン酸類、アミノリン酸類及びアミノアルコール類は、アミノ酸活性エステルのスカベンジャーとして機能し、ペプチド伸長反応、特にワンポットで行う連続したペプチド伸長反応に有用であることが示された。
前記液相ペプチド合成用担体が、アミノ酸、ペプチド又はアミノ酸アミドに直接またはリンカーを介して結合して、それらを有機溶媒に溶解性で水に不溶性にする化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の液相ペプチド製造方法。