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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079495
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】腕補助装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20230601BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A61H1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192994
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】近藤 清人
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 武
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】川端 純平
【テーマコード(参考)】
3C707
4C046
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS21
3C707HT04
3C707HT11
3C707XK02
3C707XK06
3C707XK17
3C707XK42
3C707XK85
3C707XK86
4C046AA42
4C046BB04
4C046BB05
4C046DD02
4C046DD04
4C046DD05
4C046DD12
4C046DD37
(57)【要約】
【課題】使用者の上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助することができる腕補助装置を提供する。
【解決手段】腕補助装置10は、使用者の胴体により支持される本体20と、本体20により支持され、使用者の上腕に固定される上腕リンク44及び前腕に固定される前腕リンク46を含むリンク機構40L,40Rと、リンク機構40L,40Rを動作させる力をリンク機構40L,40Rへ入力するアクチュエータ70と、を備える。リンク機構40L,40Rは、アクチュエータ70により力が入力された場合に、本体20に対して上腕リンク44,45を回転させて上腕を上げる補助力を発生するとともに、上腕リンク44,45に対して前腕リンク46を回転させて前腕を上げる補助力を発生する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の胴体により支持される本体と、
前記本体により支持され、前記使用者の上腕に固定される上腕リンク及び前腕に固定される前腕リンクを含むリンク機構と、
前記リンク機構を動作させる力を前記リンク機構へ入力するアクチュエータと、
を備える腕補助装置であって、
前記リンク機構は、前記アクチュエータにより前記力が入力された場合に、前記本体に対して前記上腕リンクを回転させて前記上腕を上げる補助力を発生するとともに、前記上腕リンクに対して前記前腕リンクを回転させて前記前腕を上げる補助力を発生する、腕補助装置。
【請求項2】
前記力は第1力であり、
前記アクチュエータは、前記第1力と、前記第1力と反対向きの第2力を前記リンク機構へ入力可能であり、
前記リンク機構は、前記アクチュエータにより前記第2力が入力された場合に、前記本体に対して前記上腕リンクを回転させて前記上腕を下げる補助力を発生するとともに、前記上腕リンクに対して前記前腕リンクを回転させて前記前腕を下げる補助力を発生する、請求項1に記載の腕補助装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、内部に流体が供給されることにより長手方向に縮む第1人工筋肉及び第2人工筋肉を含み、
前記第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉は、内部の圧力が所定の中立圧力になるまで前記流体が供給された場合に所定の中立長さになり、
前記第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉が前記中立長さである状態から前記アクチュエータが前記第1力を前記リンク機構へ入力する際に、前記第1人工筋肉の内部に前記流体が供給されて前記第1人工筋肉が長手方向に縮み、且つ前記第2人工筋肉の内部から前記流体が排出されて前記第2人工筋肉が長手方向に伸び、
前記第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉が前記中立長さである状態から前記アクチュエータが前記第2力を前記リンク機構へ入力する際に、前記第2人工筋肉の内部に前記流体が供給されて前記第2人工筋肉が長手方向に縮み、且つ前記第1人工筋肉の内部から前記流体が排出されて前記第1人工筋肉が長手方向に伸びる、請求項2に記載の腕補助装置。
【請求項4】
前記第1人工筋肉の前記中立長さから最短長さまでの縮み量と、前記第2人工筋肉の前記中立長さから最長長さまでの伸び量とが等しくなるように、前記中立長さが設定されている、請求項3に記載の腕補助装置。
【請求項5】
前記第2人工筋肉の前記中立長さから最短長さまでの縮み量と、前記第1人工筋肉の前記中立長さから最長長さまでの伸び量とが等しくなるように、前記中立長さが設定されている、請求項4に記載の腕補助装置。
【請求項6】
前記第1人工筋肉と前記第2人工筋肉とは、滑車を介してワイヤにより接続されており、
前記ワイヤは、前記リンク機構において前記力が入力される入力リンクに接続されている、請求項3~5のいずれか1項に記載の腕補助装置。
【請求項7】
前記第1人工筋肉と前記第2人工筋肉とは、前記リンク機構において前記力が入力される入力リンクにそれぞれ接続されている、請求項3~5のいずれか1項に記載の腕補助装置。
【請求項8】
使用者の胴体により支持される本体と、
前記本体により支持され、前記使用者の上腕に固定される上腕リンク及び前腕に固定される前腕リンクを含むリンク機構と、
前記リンク機構を動作させる力を前記リンク機構へ入力するアクチュエータと、
を備える腕補助装置であって、
前記リンク機構は、前記アクチュエータにより前記力が入力された場合に、前記本体に対して前記上腕リンクを回転させて前記上腕を下げる補助力を発生するとともに、前記上腕リンクに対して前記前腕リンクを回転させて前記前腕を下げる補助力を発生する、腕補助装置。
【請求項9】
前記リンク機構は、前記力を増幅して前記上腕リンクを回転させるてこ機構を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の腕補助装置。
【請求項10】
前記リンク機構は、前記力を入力する際の前記アクチュエータの駆動長さを増幅して前記前腕リンクを回転させるてこ機構を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の腕補助装置。
【請求項11】
前記本体は、前記使用者の左右方向で左本体と右本体とに分割されており、前記左本体と前記右本体とは前記左右方向に相対移動可能である、請求項1~10のいずれか1項に記載の腕補助装置。
【請求項12】
前記上腕リンクには、前記使用者の上腕と前記上腕リンクとを固定する上腕固定ユニットが取り付けられている、請求項1~11のいずれか1項に記載の腕補助装置。
【請求項13】
前記前腕リンクには、前記使用者の前腕と前記前腕リンクとを固定する前腕固定ユニットが取り付けられている、請求項1~12のいずれか1項に記載の腕補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の腕の動作を補助する腕補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の背部に装着される背部装着部と、使用者の上肢に装着される上肢装着部と、上肢装着部を背部装着部に対して付勢することで、使用者の上肢を引き上げる方向へのサポート力を付与するサポート力付与部と、を備える腕補助装置がある(特許文献1参照)。特許文献1に記載の腕補助装置では、上肢装着部は、背部装着部に対して使用者の左右方向に傾動可能とされ、使用者の手首に装着される手首装着部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-187709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の腕補助装置は、上肢装着部を背部装着部に対して使用者の左右方向に傾動可能としつつ、使用者の手首を引き上げることができるものの、使用者の上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助することができない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、使用者の上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助することができる腕補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
使用者の胴体により支持される本体と、
前記本体により支持され、前記使用者の上腕に固定される上腕リンク及び前腕に固定される前腕リンクを含むリンク機構と、
前記リンク機構を動作させる力を前記リンク機構へ入力するアクチュエータと、
を備える腕補助装置であって、
前記リンク機構は、前記アクチュエータにより前記力が入力された場合に、前記本体に対して前記上腕リンクを回転させて前記上腕を上げる補助力を発生するとともに、前記上腕リンクに対して前記前腕リンクを回転させて前記前腕を上げる補助力を発生する。
【0007】
上記構成によれば、本体は、使用者の胴体により支持される。リンク機構は、前記本体により支持される。このため、前記使用者の上腕に固定される上腕リンク及び前腕に固定される前腕リンクを含むリンク機構を、本体を介して使用者の胴体により支持することができる。そして、アクチュエータが前記リンク機構を動作させる力を前記リンク機構へ入力することにより、リンク機構を動作させて上腕リンク及び前腕リンクに固定された使用者の腕の動作を補助することができる。
【0008】
ここで、前記リンク機構は、前記アクチュエータにより前記力が入力された場合に、前記本体に対して前記上腕リンクを回転させて前記上腕を上げる補助力を発生するとともに、前記上腕リンクに対して前記前腕リンクを回転させて前記前腕を上げる補助力を発生する。したがって、リンク機構による一連の動作によって上腕リンクを回転させるとともに前腕リンクを回転させることができ、使用者の上腕を上げる動作と前腕を上げる動作とを連動して補助することができる。
【0009】
第2の手段では、前記力は第1力であり、前記アクチュエータは、前記第1力と、前記第1力と反対向きの第2力を前記リンク機構へ入力可能であり、前記リンク機構は、前記アクチュエータにより前記第2力が入力された場合に、前記本体に対して前記上腕リンクを回転させて前記上腕を下げる補助力を発生するとともに、前記上腕リンクに対して前記前腕リンクを回転させて前記前腕を下げる補助力を発生する。
【0010】
上記構成によれば、前記アクチュエータは、上腕リンク及び前腕リンクを上げる補助力を発生させる第1力と、前記第1力と反対向きの第2力を前記リンク機構へ入力可能である。そして、前記リンク機構は、前記アクチュエータにより前記第2力が入力された場合に、前記本体に対して前記上腕リンクを回転させて前記上腕を下げる補助力を発生するとともに、前記上腕リンクに対して前記前腕リンクを回転させて前記前腕を下げる補助力を発生する。したがって、リンク機構による一連の動作によって上腕リンクを回転させるとともに前腕リンクを回転させることができ、使用者の上腕を下げる動作と前腕を下げる動作とを連動して補助することができる。さらに、使用者の上腕を上げる動作と前腕を上げる動作とを連動して補助することと、使用者の上腕を下げる動作と前腕を下げる動作とを連動して補助することとの双方が可能となる。
【0011】
第3の手段では、
前記アクチュエータは、内部に流体が供給されることにより長手方向に縮む第1人工筋肉及び第2人工筋肉を含み、
前記第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉は、内部の圧力が所定の中立圧力になるまで前記流体が供給された場合に所定の中立長さになり、
前記第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉が前記中立長さである状態から前記アクチュエータが前記第1力を前記リンク機構へ入力する際に、前記第1人工筋肉の内部に前記流体が供給されて前記第1人工筋肉が長手方向に縮み、且つ前記第2人工筋肉の内部から前記流体が排出されて前記第2人工筋肉が長手方向に伸び、
前記第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉が前記中立長さである状態から前記アクチュエータが前記第2力を前記リンク機構へ入力する際に、前記第2人工筋肉の内部に前記流体が供給されて前記第2人工筋肉が長手方向に縮み、且つ前記第1人工筋肉の内部から前記流体が排出されて前記第1人工筋肉が長手方向に伸びる。
【0012】
内部に流体が供給されることにより長手方向に縮んで縮む力を発生する人工筋肉は、一般に長手方向に伸びる力を発生することができない。このため、アクチュエータが第1力と、第1力と反対向きの第2力とをリンク機構へ入力するために、2本の人工筋肉を組み合わせることが考えられる。しかし、2本の人工筋肉が長手方向に縮む力を共通のリンクにそれぞれ加えることにより、第1力と第2力とを共通のリンクへそれぞれ入力する場合は、一方の人工筋肉が縮む際に他方の人工筋肉が伸びる必要がある。
【0013】
この点、第3の手段では、前記第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉は、内部の圧力が所定の中立圧力になるまで前記流体が供給された場合に所定の中立長さになる。第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉は、中立長さからは縮むことも伸びることもできる。そして、前記第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉が前記中立長さである状態から前記アクチュエータが前記第1力を前記リンク機構へ入力する際に、前記第1人工筋肉の内部に前記流体が供給されて前記第1人工筋肉が長手方向に縮み、且つ前記第2人工筋肉の内部から前記流体が排出されて前記第2人工筋肉が長手方向に伸びる。また、前記第1人工筋肉及び前記第2人工筋肉が前記中立長さである状態から前記アクチュエータが前記第2力を前記リンク機構へ入力する際に、前記第2人工筋肉の内部に前記流体が供給されて前記第2人工筋肉が長手方向に縮み、且つ前記第1人工筋肉の内部から前記流体が排出されて前記第1人工筋肉が長手方向に伸びる。このため、前記アクチュエータが前記第1力及び前記第2力を前記リンク機構へそれぞれ入力する際に、一方の人工筋肉が縮む際に他方の人工筋肉が伸びる構成を実現することができる。
【0014】
第4の手段では、前記第1人工筋肉の前記中立長さから最短長さまでの縮み量と、前記第2人工筋肉の前記中立長さから最長長さまでの伸び量とが等しくなるように、前記中立長さが設定されている。こうした構成によれば、第1人工筋肉が最短長さまで縮んだ時に第2人工筋肉が最長長さまで伸びるため、第1人工筋肉が中立長さから縮むことが可能な長さを長くすることができる。
【0015】
第5の手段では、第4の手段を前提として、前記第2人工筋肉の前記中立長さから最短長さまでの縮み量と、前記第1人工筋肉の前記中立長さから最長長さまでの伸び量とが等しくなるように、前記中立長さが設定されている。こうした構成によれば、第2人工筋肉が最短長さまで縮んだ時に第1人工筋肉が最長長さまで伸びるため、第2人工筋肉が中立長さから縮むことが可能な長さを長くすることができる。さらに、第1人工筋肉が中立長さから縮むことが可能な長さと、第2人工筋肉が中立長さから縮むことが可能な長さとの双方を長くすることができる。
【0016】
第6の手段では、前記第1人工筋肉と前記第2人工筋肉とは、滑車を介してワイヤにより接続されており、前記ワイヤは、前記リンク機構において前記力が入力される入力リンクに接続されている。こうした構成によれば、アクチュエータとリンク機構との接続箇所を1箇所にすることができる。したがって、リンク機構の1箇所への入力により、使用者の上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助することができる。
【0017】
第7の手段では、前記第1人工筋肉と前記第2人工筋肉とは、前記リンク機構において前記力が入力される入力リンクにそれぞれ接続されている。こうした構成によれば、人工筋肉から入力リンクへの力の伝達を仲介する機構(例えばワイヤや滑車等)を省略することができる。したがって、簡潔な構成により、使用者の上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助することができる。
【0018】
第8の手段は、
使用者の胴体により支持される本体と、
前記本体により支持され、前記使用者の上腕に固定される上腕リンク及び前腕に固定される前腕リンクを含むリンク機構と、
前記リンク機構を動作させる力を前記リンク機構へ入力するアクチュエータと、
を備える腕補助装置であって、
前記リンク機構は、前記アクチュエータにより前記力が入力された場合に、前記本体に対して前記上腕リンクを回転させて前記上腕を下げる補助力を発生するとともに、前記上腕リンクに対して前記前腕リンクを回転させて前記前腕を下げる補助力を発生する。
【0019】
上記構成によれば、第2の手段と同様に、リンク機構による一連の動作によって上腕リンクを回転させるとともに前腕リンクを回転させることができ、使用者の上腕を下げる動作と前腕を下げる動作とを連動して補助することができる。
【0020】
第9の手段では、前記リンク機構は、前記力を増幅して前記上腕リンクを回転させるてこ機構を含む。こうした構成によれば、発生する力が小さいアクチュエータを用いても、上腕リンクにより使用者の上腕を上げる補助力を確保しやすくなり、使用者の上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助する構成を実現しやすくなる。
【0021】
第10の手段では、前記リンク機構は、前記力を入力する際の前記アクチュエータの駆動長さを増幅して前記前腕リンクを回転させるてこ機構を含む。こうした構成によれば、駆動長さが短いアクチュエータを用いても、前腕リンクにより使用者の前腕を上げる動作量を確保しやすくなり、使用者の上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助する構成を実現しやすくなる。
【0022】
第11の手段では、前記本体は、前記使用者の左右方向で左本体と右本体とに分割されており、前記左本体と前記右本体とは前記左右方向に相対移動可能である。こうした構成によれば、使用者の体型に合わせて本体の左右方向の幅を調節することができる。
【0023】
第12の手段では、前記上腕リンクには、前記使用者の上腕と前記上腕リンクとを固定する上腕固定ユニットが取り付けられている。こうした構成によれば、上腕固定ユニットにより前記使用者の上腕と前記上腕リンクとを固定して、上腕リンクから使用者の上腕へ補助力を安定して伝達することができる。
【0024】
第13の手段では、前記前腕リンクには、前記使用者の前腕と前記前腕リンクとを固定する前腕固定ユニットが取り付けられている。こうした構成によれば、前腕固定ユニットにより前記使用者の前腕と前記前腕リンクとを固定して、前腕リンクから使用者の前腕へ補助力を安定して伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の腕補助装置の斜視図。
図2図1の腕補助装置の側面図。
図3図1の腕補助装置の正面図。
図4図1の腕補助装置の平面図。
図5図1の制御ボックスの構成を示す模式図。
図6】自然長の人工筋肉を示す模式図。
図7】最長長さの人工筋肉を示す模式図。
図8】中立長さの第1人工筋肉及び第2人工筋肉を示す模式図。
図9図1のリンク機構の中立位置を示す側面図。
図10図1のリンク機構の上端位置を示す側面図。
図11図1のリンク機構の下端位置を示す側面図。
図12図1の前腕リンクの屈曲部を示す側面図。
図13図1の前腕リンクの屈曲部を示す平面図。
図14】第2実施形態の腕補助装置におけるリンク機構の側面図。
図15図14のリンク機構の上端位置を示す側面図。
図16図14のリンク機構の下端位置を示す側面図。
図17】圧力センサの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、人体に取り付けられて腕の動作を補助する腕補助装置に具現化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1~4に示すように、腕補助装置10は、本体20、リンク機構40L,40R、上腕固定ユニット60、前腕固定ユニット65、アクチュエータ70、制御ボックス90等を備えている。各図において、使用者Uの正面方向をFR、左方向をL、右方向をR、上方向をUPで示す。
【0028】
本体20は、背面フレーム21L,21R、上部フレーム22L,22R、下部フレーム23L,23R等を備えている。
【0029】
背面フレーム21L,21Rは、矩形板状に形成されている。背面フレーム21Lの左方向の端部は、前方へ屈曲している。背面フレーム21Rの右方向の端部は、前方へ屈曲している。これにより、使用者Uの胴体の側部を保持することができる。背面フレーム21L,21Rは、互いに左右方向へスライド可能に接続されている。
【0030】
背面フレーム21L,21Rの上部には、それぞれ上部フレーム22L,22Rが取り付けられている。上部フレーム22L,22Rは、矩形板状に形成されており、それぞれ左右方向へ延びている。上部フレーム22Lの左方向の端部は、前方へ屈曲している。上部フレーム22Rの右方向の端部は、前方へ屈曲している。これにより、使用者Uの肩の側部を保持することができる。
【0031】
背面フレーム21L,21Rの下部には、それぞれ下部フレーム23L,23Rが取り付けられている。下部フレーム23L,23Rは、矩形板状に形成されており、それぞれ左右方向へ延びている。下部フレーム23Lの左方向の端部は、前方へ屈曲している。下部フレーム23Rの右方向の端部は、前方へ屈曲している。これにより、使用者Uの腰の側部を保持することができる。
【0032】
背面フレーム21Lの上部から下部フレーム23Lの前部へ、肩固定ベルト24Lが架け渡されている。背面フレーム21Rの上部から下部フレーム23Rの前部へ、肩固定ベルト24Rが架け渡されている。肩固定ベルト24L,24Rは、長さ調節可能である。
【0033】
下部フレーム23L,23Rの前部には、それぞれ腰固定ベルト25L,25Rの基端が固定されている。腰固定ベルト25L,25Rの先端は互いに接続可能である。腰固定ベルト25L,25Rの少なくとも一方は、長さ調節可能である。
【0034】
なお、背面フレーム21L、上部フレーム22L、及び下部フレーム23Lにより、左本体が構成されている。背面フレーム21R、上部フレーム22R、及び下部フレーム23Rにより、右本体が構成されている。すなわち、本体20は、使用者Uの左右方向で左本体と右本体とに分割されており、左本体と右本体とは左右方向に相対移動可能である。
【0035】
リンク機構40L,40Rは、それぞれ上部フレーム22L,22R(本体20)により支持されている。リンク機構40Lとリンク機構40Rとは、左右対称に形成されている。以下、リンク機構40Lを例にして説明する。
【0036】
リンク機構40Lは、入力リンク41、伝達リンク42,43、上腕リンク44,45、前腕リンク46等を備えている。
【0037】
入力リンク41は、屈曲して形成されており、後側の直線部41a(第1直線部)及び前側の直線部41b(第2直線部)を備えている。伝達リンク42は、直線状に形成されている。前側の直線部41bの後端(入力リンク41の中間部)には、伝達リンク42の上端(第1端)が回転可能に接続されている。上腕リンク45は、三角形状に形成されている。伝達リンク42の下端(第2端)には、上腕リンク45の後側の頂部(第1頂部)が回転可能に接続されている。上腕リンク45の前側の頂部(第2頂部)は、上部フレーム22Lの前部に回転可能に接続されている。入力リンク41の後側の直線部41aの後端(力点)から上腕リンク45の前側の頂部(支点)までの長さは、直線部41aの後端(力点)から伝達リンク42と上腕リンク45との接続点(作用点)までの長さよりも長い。なお、入力リンク41、伝達リンク42、及び上腕リンク45により、アクチュエータ70の力を増幅して上腕リンク45を回転させるてこ機構が構成されている。
【0038】
伝達リンク43は、三角形状に形成されている。入力リンク41の前側の直線部41bの前端には、伝達リンク43の上側の頂部(第1頂部)が回転可能に接続されている。伝達リンク43の前側の頂部(第2頂部)は、上部フレーム22Lの前部に回転可能に接続されている。上腕リンク44は、直線状に形成されている。伝達リンク43の後側の頂部(第3頂部)には、上腕リンク44の上端(第1端)が回転可能に接続されている。
【0039】
前腕リンク46は、三角形状に形成されている。上腕リンク45の下側の頂部(第3頂部)には、前腕リンク46の後側の頂部(第1頂部)が回転可能に接続されている。上腕リンク44の下端(第2端)には、前腕リンク46の上側の頂部(第2頂部)が回転可能に接続されている。上腕リンク45と前腕リンク46との接続点(力点)から上腕リンク44と前腕リンク46との接続点(支点)までの長さは、前腕リンク46の前側の頂部(作用点)から上腕リンク44と前腕リンク46との接続点(支点)までの長さよりも短い。なお、入力リンク41、伝達リンク42,43、上腕リンク44,45、及び前腕リンク46により、アクチュエータ70の駆動長さを増幅して前腕リンク46を回転させるてこ機構が構成されている。
【0040】
上腕リンク44には、上腕固定ユニット60が取り付けられている。上腕固定ユニット60は、半円筒状の上腕固定具61と、帯状の上腕固定ベルト62を備えている。上腕固定ユニット60は、上腕固定具61の内周側に使用者Uの上腕の外側を当て、上腕固定ベルト62を使用者Uの上腕に巻き付けて留めることにより、使用者Uの上腕と上腕リンク44とを固定する。上腕固定具61は半円筒状であるため、上腕固定具61と上腕との接触面積を増やすことができ、部分当たりを抑制して装着感を向上させることができる。
【0041】
前腕リンク46には、前腕固定ユニット65が取り付けられている。前腕固定ユニット65は、半円筒状の前腕固定具66と、帯状の前腕固定ベルト67と、筋電位センサ68とを備えている。前腕固定ユニット65は、前腕固定具66の内周側に使用者Uの前腕の外側を当て、前腕固定ベルト67を使用者Uの前腕に巻き付けて留めることにより、使用者Uの前腕と前腕リンク46とを固定する。前腕固定具66は半円筒状であるため、前腕固定具66と前腕との接触面積を増やすことができ、部分当たりを抑制して装着感を向上させることができる。
【0042】
筋電位センサ68は、使用者Uの筋肉の動きを検出し、検出結果を制御ボックス90へ出力する。
【0043】
アクチュエータ70は、滑車支持フレーム71、滑車連結フレーム72、滑車73、ワイヤ74、第1人工筋肉75、第2人工筋肉76等を備えている。滑車73、ワイヤ74、第1人工筋肉75、及び第2人工筋肉76は、リンク機構40L,40Rに対応して左右にそれぞれ設けられている。
【0044】
滑車支持フレーム71は、上部フレーム22L(又は上部フレーム22R)に取り付けられている。滑車支持フレーム71は、滑車連結フレーム72を支持している。滑車連結フレーム72の両端には、それぞれ滑車73が回転可能に取り付けられている。滑車連結フレーム72は、左右で分割されており、左右方向の長さが調節可能である。
【0045】
第1人工筋肉75の下端及び第2人工筋肉76の下端は、それぞれ制御ボックス90に固定されている。第1人工筋肉75の上端と第2人工筋肉76の上端とは、ワイヤ74により接続されている。ワイヤ74は、滑車73に巻き掛けられている。すなわち、第1人工筋肉75と第2人工筋肉76とは、滑車73を介してワイヤ74により接続されている。ワイヤ74において第1人工筋肉75と滑車73との中間部には、入力リンク41の後側の直線部41aの後端が回転可能に接続されている。
【0046】
図5に示すように、制御ボックス90は、電源91、圧縮空気供給源92、切替バルブ93、制御部94等を備えている。切替バルブ93は、リンク機構40L,40Rに対応して左右にそれぞれ設けられている。
【0047】
電源91は、例えばバッテリであり、圧縮空気供給源92及び切替バルブ93へ電力を供給する。圧縮空気供給源92は、例えば小型ポンプであり、圧縮空気を切替バルブ93へ供給する。
【0048】
切替バルブ93は、例えば電磁バルブであり、圧縮空気の供給先を、第1人工筋肉75のみ、第2人工筋肉76のみ、第1人工筋肉75及び第2人工筋肉76、なし、のいずれかに切り替える。また、切替バルブ93は、第1人工筋肉75及び第2人工筋肉76をそれぞれ大気開放して圧縮空気を排出させる。また、切替バルブ93は、第1人工筋肉75及び第2人工筋肉76への圧縮空気の流入出を停止して、第1人工筋肉75及び第2人工筋肉76の内部の圧縮空気を保持することができる。
【0049】
制御部94は、例えばマイコンにより構成されている。制御部94は、筋電位センサ68からの検出結果に基づいて、圧縮空気供給源92、切替バルブ93の状態を制御する。
【0050】
制御ボックス90は、背面フレーム21L(又は背面フレーム21R)に取り付けられている。制御ボックス90の筐体は左右で分割されており、背面フレーム21Lと背面フレーム21Rとのスライドに追従して左右方向に相対移動可能である。
【0051】
図6は自然長の人工筋肉75,76を示す模式図であり、図7は最長長さの人工筋肉75,76を示す模式図である。
【0052】
人工筋肉75,76は、いわゆるマッキベン(McKibben)型の人工筋肉である。人工筋肉75,76は、チューブ81、メッシュ82等を備えている。
【0053】
チューブ81は、軟質ゴム(弾性体)により、円筒状(筒状)に形成されている。チューブ81の内径(径)及び長さは、チューブ81の内部に圧縮空気が供給された際に、チューブ81により発生させる縮む力の大きさに応じて設定されている。
【0054】
メッシュ82は、繊維をスリーブ状に編み込んだ編組スリーブである。繊維は、ナイロン等の合成樹脂(樹脂)により形成されている。メッシュ82は、繊維のなす角度が変化することにより、長手方向に伸縮可能になっている。
【0055】
図6に示すように、自然長のチューブ81に対して、メッシュ82が長手方向に中間まで縮んで径方向に中間まで膨張した状態で接合されている。このため、図7に示すように、人工筋肉75,76は、チューブ81の自然長から長手方向に伸びて径方向に収縮することができる。また、人工筋肉75,76は、内部に圧縮空気が供給されることにより、チューブ81の自然長から長手方向に縮んで径方向に膨張する。
【0056】
図8は、中立長さLnの第1人工筋肉75及び第2人工筋肉76を示す模式図である。
【0057】
人工筋肉75,76は、内部が大気に開放されており、外部から力が作用していない自然状態において自然長Loになる。自然状態では、ワイヤ74は若干弛んでいる。人工筋肉75,76は、内部の圧力が所定の中立圧力Pnになるまで圧縮空気が供給された中立状態において、所定の中立長さLnになる。人工筋肉75,76の長さが中立長さLnになると、ワイヤ74の弛みが解消される。
【0058】
中立状態から第1人工筋肉75の内部へ圧縮空気が供給されて第2人工筋肉76の内部から圧縮空気が排出されると、第1人工筋肉75は長手方向に縮み、第2人工筋肉76は長手方向に伸びる。第1人工筋肉75が長手方向に最も縮んで最短長さLsになった時に、第2人工筋肉76は最長長さLlになる。すなわち、第1人工筋肉75の中立長さLnから最短長さLsまでの縮み量d1と、第2人工筋肉76の中立長さLnから最長長さLlまでの伸び量d2とが等しくなるように、中立長さLnが設定されている。
【0059】
中立状態から第2人工筋肉76の内部へ圧縮空気が供給されて第1人工筋肉75の内部から圧縮空気が排出されると、第2人工筋肉76は長手方向に縮み、第1人工筋肉75は長手方向に伸びる。第2人工筋肉76が長手方向に最も縮んで最短長さLsになった時に、第1人工筋肉75は最長長さLlになる。すなわち、第2人工筋肉76の中立長さLnから最短長さLsまでの縮み量d1と、第1人工筋肉75の中立長さLnから最長長さLlまでの伸び量d2とが等しくなるように、中立長さLnが設定されている。
【0060】
図9は、リンク機構40Lの中立位置Hnを示す側面図である。人工筋肉75,76の長さは、共に中立長さLnである。入力リンク41の後側の直線部41aの後端とワイヤ74との接続点74aは、滑車73から所定長さ離れた位置にある。このとき、人工筋肉75,76は上記中立状態であり、前腕リンク46の先端46aの高さは中立位置Hnである。中立状態から第1人工筋肉75の内部へ圧縮空気が供給されて第2人工筋肉76の内部から圧縮空気が排出されると、第1人工筋肉75は長手方向に縮み、第2人工筋肉76は長手方向に伸びる。
【0061】
図10は、リンク機構40Lの上端位置Huを示す側面図である。第1人工筋肉75の長さは最短長さLsであり、第2人工筋肉76の長さは最長長さLlである。入力リンク41の後側の直線部41aの後端とワイヤ74との接続点74aは、滑車73から最も離れた位置にある。このとき、第1人工筋肉75の内部の圧力は最高圧力Phであり、第2人工筋肉76の内部は大気に開放されており、前腕リンク46の先端46aの高さは上端位置Huである。
【0062】
図9の中立位置Hnから図10の上端位置Huへ移行する際に、アクチュエータ70は、リンク機構40Lの入力リンク41へ下向きの第1力(力)を入力する。これにより、伝達リンク42を介して入力リンク41に接続された上腕リンク45が、上記上部フレーム22Lの前部と上腕リンク45との接続点Rを支点として回転させられる。また、入力リンク41に接続された伝達リンク43が、上部フレーム22Lの前部と伝達リンク43との接続点Rを支点として回転させられる。これに伴い、伝達リンク43に接続された上腕リンク44が回転させられ、上腕リンク44,45に接続された前腕リンク46が回転させられる。このとき、各リンク41~46は、互いに作用を与えるとともに反作用を受ける。その結果、リンク機構40Lは、アクチュエータ70により第1力が入力された場合に、本体20に対して上腕リンク44,45を回転させて使用者Uの上腕を上げる補助力を発生するとともに、上腕リンク44,45に対して前腕リンク46を回転させて使用者Uの前腕を上げる補助力を発生する。
【0063】
ここで、入力リンク41の直線部41aの後端とワイヤ74との接続点74aから接続点Rまでの長さは、接続点74aから伝達リンク42と上腕リンク45との接続点42aまでの長さよりも長い。このため、アクチュエータ70による第1力は増幅されて上腕リンク45へ伝達される。
【0064】
上腕リンク45と前腕リンク46との接続点45aから上腕リンク44と前腕リンク46との接続点44aまでの長さは、前腕リンク46の先端46aから上腕リンク44と前腕リンク46との接続点44aまでの長さよりも短い。このため、接続点45aの移動距離よりも、前腕リンク46の先端46aの移動距離は増幅される。
【0065】
図11は、リンク機構40Lの下端位置Hdを示す側面図である。第2人工筋肉76の長さは最短長さLsであり、第1人工筋肉75の長さは最長長さLlである。入力リンク41の後側の直線部41aの後端とワイヤ74との接続点74aは、滑車73に最も近い位置にある。このとき、第2人工筋肉76の内部の圧力は最高圧力Phであり、第1人工筋肉75の内部は大気に開放されており、前腕リンク46の先端の高さは下端位置Hdである。
【0066】
図9の中立位置Hnから図11の下端位置Hdへ移行する際に、アクチュエータ70は、リンク機構40Lの入力リンク41へ上向きの第2力(力)を入力する。この場合は、図10の上端位置Huへ移行する際と逆向きにリンク機構40Lが動作する。その結果、リンク機構40Lは、アクチュエータ70により第2力が入力された場合に、本体20に対して上腕リンク44,45を回転させて使用者Uの上腕を下げる補助力を発生するとともに、上腕リンク44,45に対して前腕リンク46を回転させて使用者Uの前腕を下げる補助力を発生する。その際に、アクチュエータ70による第2力は増幅されて上腕リンク45へ伝達され、接続点45aの移動距離よりも前腕リンク46の先端46aの移動距離は増幅される。
【0067】
図12は前腕リンク46の屈曲部を示す側面図であり、図13は前腕リンク46の屈曲部を示す平面図である。前腕リンク46は、後部46b及び前部46cを備えている。前部46cは、後部46bにより左右方向に回転可能に支持されている。
【0068】
使用者Uは、以下のように腕補助装置10を使用する。
【0069】
まず、使用者Uは、肩固定ベルト24L,24Rに腕を通して、腕補助装置10を背負う。すなわち、使用者Uの胴体により本体20を支持する。その後、腰固定ベルト25L,25Rにより使用者Uの腰を腕補助装置に固定し、上腕固定ベルト62により上腕を上腕固定具61に固定し、前腕固定ベルト67により前腕を前腕固定具66に固定する。使用者Uが腕を動かすと、筋電位センサ68により使用者Uの筋肉の動きが検出される。制御部94は、筋電位センサ68からの検出結果に基づいて、圧縮空気供給源92及び切替バルブ93の状態を制御する。詳しくは、制御部94は、使用者Uが腕を上げる動作をする際に図10に示すようにアクチュエータ70を制御し、使用者Uが腕を下げる動作をする際に図11に示すようにアクチュエータ70を制御する。その際に、制御部94は、アクチュエータ70の駆動量を調節して、リンク機構40L,40Rにより発生する補助力を調節する。
【0070】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0071】
・リンク機構40L,40Rは、アクチュエータ70により力が入力された場合に、本体20に対して上腕リンク44,45を回転させて上腕を上げる補助力を発生するとともに、上腕リンク44,45に対して前腕リンク46を回転させて前腕を上げる補助力を発生する。したがって、リンク機構40L,40Rによる一連の動作によって上腕リンク44,45を回転させるとともに前腕リンク46を回転させることができ、使用者Uの上腕を上げる動作と前腕を上げる動作とを連動して補助することができる。
【0072】
・アクチュエータ70は、上腕リンク44,45及び前腕リンク46を上げる補助力を発生させる第1力と、第1力と反対向きの第2力をリンク機構40L,40Rへ入力可能である。そして、リンク機構40L,40Rは、アクチュエータ70により第2力が入力された場合に、本体20に対して上腕リンク44,45を回転させて上腕を下げる補助力を発生するとともに、上腕リンク44,45に対して前腕リンク46を回転させて前腕を下げる補助力を発生する。したがって、リンク機構40L,40Rによる一連の動作によって上腕リンク44,45を回転させるとともに前腕リンク46を回転させることができ、使用者Uの上腕を下げる動作と前腕を下げる動作とを連動して補助することができる。さらに、使用者Uの上腕を上げる動作と前腕を上げる動作とを連動して補助することと、使用者Uの上腕を下げる動作と前腕を下げる動作とを連動して補助することとの双方が可能となる。
【0073】
・第1人工筋肉75及び第2人工筋肉76は、内部の圧力が所定の中立圧力Pnになるまで圧縮空気が供給された場合に所定の中立長さLnになる。第1人工筋肉75及び第2人工筋肉76は、中立長さLnからは縮むことも伸びることもできる。そして、第1人工筋肉75及び第2人工筋肉76が中立長さLnである状態からアクチュエータ70が第1力をリンク機構40L,40Rへ入力する際に、第1人工筋肉75の内部に圧縮空気が供給されて第1人工筋肉75が長手方向に縮み、且つ第2人工筋肉76の内部から圧縮空気が排出されて第2人工筋肉76が長手方向に伸びる。また、第1人工筋肉75及び第2人工筋肉76が中立長さLnである状態からアクチュエータ70が第2力をリンク機構40L,40Rへ入力する際に、第2人工筋肉76の内部に圧縮空気が供給されて第2人工筋肉76が長手方向に縮み、且つ第1人工筋肉75の内部から圧縮空気が排出されて第1人工筋肉75が長手方向に伸びる。このため、アクチュエータ70が第1力及び第2力をリンク機構40L,40Rへそれぞれ入力する際に、一方の人工筋肉が縮む際に他方の人工筋肉が伸びる構成を実現することができる。
【0074】
・第1人工筋肉75の中立長さLnから最短長さLsまでの縮み量と、第2人工筋肉76の中立長さLnから最長長さLlまでの伸び量とが等しくなるように、中立長さLnが設定されている。こうした構成によれば、第1人工筋肉75が最短長さLsまで縮んだ時に第2人工筋肉76が最長長さLlまで伸びるため、第1人工筋肉75が中立長さLnから縮むことが可能な長さを長くすることができる。
【0075】
・第2人工筋肉76の中立長さLnから最短長さLsまでの縮み量と、第1人工筋肉75の中立長さLnから最長長さLlまでの伸び量とが等しくなるように、中立長さLnが設定されている。こうした構成によれば、第2人工筋肉76が最短長さLsまで縮んだ時に第1人工筋肉75が最長長さLlまで伸びるため、第2人工筋肉76が中立長さLnから縮むことが可能な長さを長くすることができる。さらに、第1人工筋肉75が中立長さLnから縮むことが可能な長さと、第2人工筋肉76が中立長さLnから縮むことが可能な長さとの双方を長くすることができる。
【0076】
・第1人工筋肉75と第2人工筋肉76とは、滑車73を介してワイヤ74により接続されており、ワイヤ74は、リンク機構40L,40Rにおいて力が入力される入力リンク41に接続されている。こうした構成によれば、アクチュエータ70とリンク機構40L,40Rとの接続箇所を1箇所にすることができる。したがって、リンク機構40L,40Rの1箇所への入力により、使用者Uの上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助することができる。
【0077】
・リンク機構40L,40Rは、力を増幅して上腕リンク45を回転させるてこ機構を含む。こうした構成によれば、発生する力が小さいアクチュエータ70を用いても、上腕リンク44,45により使用者Uの上腕を上げる補助力を確保しやすくなり、使用者Uの上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助する構成を実現しやすくなる。
【0078】
・リンク機構40L,40Rは、力を入力する際のアクチュエータ70の駆動長さを増幅して前腕リンク46を回転させるてこ機構を含む。こうした構成によれば、駆動長さが短いアクチュエータを用いても、前腕リンク46により使用者Uの前腕を上げる動作量を確保しやすくなり、使用者Uの上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助する構成を実現しやすくなる。
【0079】
・本体20は、使用者Uの左右方向で左本体と右本体とに分割されており、左本体と右本体とは左右方向に相対移動可能である。こうした構成によれば、使用者Uの体型に合わせて本体20の左右方向の幅を調節することができる。
【0080】
・上腕リンク44には、使用者Uの上腕と上腕リンク44とを固定する上腕固定ユニット60が取り付けられている。こうした構成によれば、上腕固定ユニット60により使用者Uの上腕と上腕リンク44とを固定して、上腕リンク44から使用者Uの上腕へ補助力を安定して伝達することができる。
【0081】
・前腕リンク46には、使用者Uの前腕と前腕リンク46とを固定する前腕固定ユニット65が取り付けられている。こうした構成によれば、前腕固定ユニット65により使用者Uの前腕と前腕リンク46とを固定して、前腕リンク46から使用者Uの前腕へ補助力を安定して伝達することができる。
【0082】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態の腕補助装置10について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態の腕補助装置10は、リンク機構の構成、及びリンク機構とアクチュエータとの接続態様が第1実施形態と異なっている。その他の構成は、概ね第1実施形態と同様である。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0083】
腕補助装置10は、リンク機構140L,140Rを備えている。リンク機構140Lとリンク機構140Rとは、左右対称に形成されている。以下、リンク機構140Rを例にして説明する。
【0084】
図14は、本実施形態の腕補助装置10におけるリンク機構140Rの側面図である。図14は、リンク機構140Rの中立位置Hnを示している。
【0085】
リンク機構140Rは、入力リンク141、上腕リンク144,145、前腕リンク146,147、手首リンク148等を備えている。
【0086】
入力リンク141は、直線状に形成されている。入力リンク141の中間点141aは、上述した上部フレーム22Lの前部に回転可能に接続されている。上腕リンク145は、直線状に形成されている。入力リンク141の後端141bには、上腕リンク145の上端が回転可能に接続されている。上腕リンク144は、屈曲して形成されている。入力リンク141の中間点141aには、上腕リンク144の上端が回転可能に接続されている。
【0087】
前腕リンク146は、屈曲して形成されている。上腕リンク145の下端には、前腕リンク146の屈曲点146aが回転可能に接続されている。上腕リンク144の屈曲点144aには、前腕リンク146の基端が回転可能に接続されている。前腕リンク147は、直線状に形成されている。上腕リンク144の下端144b(先端)には、前腕リンク147の後端(基端)が回転可能に接続されている。
【0088】
手首リンク148は、「T」字状に形成されている。前腕リンク146の先端146bには、手首リンク148の「T」字の横棒の一端が回転可能に接続されている。前腕リンク147の前端147a(先端)には、手首リンク148における「T」字の横棒の他端が回転可能に接続されている。
【0089】
第1人工筋肉75は、入力リンク141における中間点141aと後端141bとの中間部と、上腕リンク144における屈曲点144aと上記中間点141aとの中間部とを接続している。第2人工筋肉76は、入力リンク141における中間点141aと前端141cとの中間部と、上腕リンク144における屈曲点144aと上記中間点141aとの中間部とを接続している。
【0090】
上腕リンク144(又は上腕リンク145)に、使用者Uの上腕を上腕リンク144(又は上腕リンク145)に固定する上腕固定ユニット60が取り付けられている。前腕リンク146(又は前腕リンク147)に、使用者Uの前腕を前腕リンク146(又は前腕リンク147)に固定する前腕固定ユニット65が取り付けられている。
【0091】
図14において、人工筋肉75,76の長さは、共に中立長さLnである。このとき、人工筋肉75,76は上記中立状態であり、手首リンク148の先端148aの高さは中立位置Hnである。中立状態から第1人工筋肉75の内部へ圧縮空気が供給されて第2人工筋肉76の内部から圧縮空気が排出されると、第1人工筋肉75は長手方向に縮み、第2人工筋肉76は長手方向に伸びる。
【0092】
図15は、リンク機構140Rの上端位置Huを示す側面図である。第1人工筋肉75の長さは最短長さLsであり、第2人工筋肉76の長さは最長長さLlである。このとき、第1人工筋肉75の内部の圧力は最高圧力Phであり、第2人工筋肉76の内部は大気に開放されており、手首リンク148の先端148aの高さは上端位置Huである。
【0093】
図14の中立位置Hnから図15の上端位置Huへ移行する際に、第1人工筋肉75(アクチュエータ70)は、リンク機構140Rの入力リンク141の後部へ下向きの第1力(力)を入力する。これにより、入力リンク141が、入力リンク141の中間点141aを支点として回転させられる。そして、入力リンク141に接続された上腕リンク145が、入力リンク141と上腕リンク145との接続点141bを支点として回転させられる。また、入力リンク141に接続された上腕リンク144が、入力リンク141と上腕リンク144との接続点141aを支点として回転させられる。これに伴い、上腕リンク144,145に接続された前腕リンク146が回転させられ、上腕リンク144に接続された前腕リンク147が回転させられる。そして、前腕リンク146,147に接続された手首リンク148が回転させられる。このとき、各リンク141~148は、互いに作用を与えるとともに反作用を受ける。その結果、リンク機構140Rは、第1人工筋肉75により第1力が入力された場合に、本体20に対して上腕リンク144,145を回転させて使用者Uの上腕を上げる補助力を発生するとともに、上腕リンク144,145に対して前腕リンク146,147を回転させて使用者Uの前腕を上げる補助力を発生する。
【0094】
図16は、リンク機構140Rの下端位置Hdを示す側面図である。第2人工筋肉76の長さは最短長さLsであり、第1人工筋肉75の長さは最長長さLlである。このとき、第2人工筋肉76の内部の圧力は最高圧力Phであり、第1人工筋肉75の内部は大気に開放されており、手首リンク148の先端148aの高さは下端位置Hdである。
【0095】
図14の中立位置Hnから図16の下端位置Hdへ移行する際に、第2人工筋肉76は、リンク機構140Rの入力リンク141の後部へ上向きの第2力(力)を入力する。この場合は、図15の上端位置Huへ移行する際と逆向きにリンク機構140Rが動作する。その結果、リンク機構140Rは、第2人工筋肉76により第2力が入力された場合に、本体20に対して上腕リンク144,145を回転させて使用者Uの上腕を下げる補助力を発生するとともに、上腕リンク144,145に対して前腕リンク146,147を回転させて使用者Uの前腕を下げる補助力を発生する。
【0096】
以上詳述した本実施形態は、第1実施形態に準じた利点と共に、以下の利点を有する。
【0097】
・第1人工筋肉75と第2人工筋肉76とは、リンク機構140L,140Rにおいて力が入力される入力リンク141にそれぞれ接続されている。こうした構成によれば、人工筋肉75,76から入力リンク141への力の伝達を仲介する機構(ワイヤ74や、滑車73等)を省略することができる。したがって、簡潔な構成により、使用者Uの上腕の動作と前腕の動作とを連動して補助することができる。
【0098】
なお、第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0099】
・手首リンク148に、使用者Uの手首を手首リンク148に固定する手首固定ユニットを取り付けてもよい。
【0100】
・入力リンク141の中間点141aに代えて、上腕リンク144の屈曲点144aを上部フレーム22L,22Rの前部に回転可能に接続することもできる。この場合は、リンク機構140L,140Rにより、使用者Uの前腕及び手首を上下させる動作のみを補助することができる。したがって、使用者Uの上腕及び前腕の動作を補助する場合と、前腕及び手首の動作を補助する場合とで腕補助装置10を使い分けることができる。
【0101】
また、第1,第2実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。第1,第2実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0102】
・上記筋電位センサ68に代えて、図17に示すように、指サック77に収納された圧力センサ168を使用者Uの手に取り付けてもよい。例えば、圧力センサ168は、使用者Uの親指に取り付けられており、親指により荷物を支持する際の圧力を検出する。制御部94は、圧力センサ168からの検出結果に基づいて、圧縮空気供給源92、切替バルブ93の状態を制御して、使用者Uの上腕及び前腕を上げる補助力をリンク機構40L,40R,140L,140Rにより発生させる。なお、使用者Uの人差し指にも圧力センサを取り付けて、人差し指により荷物を支持する際の圧力を検出してもよい。そして、制御部94は、人差し指の圧力センサからの検出結果に基づいて、圧縮空気供給源92、切替バルブ93の状態を制御して、使用者Uの上腕及び前腕を下げる補助力をリンク機構40L,40R,140L,140Rにより発生させる。
【0103】
・上記筋電位センサ68に代えて、音声センサを採用することもできる。この場合、制御部94は、音声センサによる認識結果に基づいて、圧縮空気供給源92、切替バルブ93の状態を制御して、使用者Uの上腕及び前腕を上下する補助力をリンク機構40L,40R,140L,140Rにより発生させる。
【0104】
・本体20及び制御ボックス90が左右で分割されていない構成を採用することもできる。
【0105】
・腕補助装置10は、使用者Uの腕を上げる動作及び下げる動作の一方のみを補助してもよい。
【0106】
・電源91に代えて、電気ケーブルにより、圧縮空気供給源92及び切替バルブ93へ電力を供給することもできる。
【0107】
・圧縮空気供給源92に代えて、配管(チューブ)により外部から圧縮空気を供給する構成を採用することもできる。
【0108】
・人工筋肉75,76の内部に供給される気体(流体)として、高圧窒素や、高圧アルゴン等を用いることもできる。また、人工筋肉75,76の内部に供給される流体として、水や油等の液体を用いることもできる。
【0109】
・アクチュエータ70は、人工筋肉75,76により駆動力を発生する構成に限らず、複動式のシリンダや、モータにより駆動力を発生する構成でもよい。
【0110】
なお、上記の各変更例を組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0111】
10…腕補助装置、20…本体、40L…リンク機構、40R…リンク機構、41…入力リンク、42…伝達リンク、43…伝達リンク、44…上腕リンク、45…上腕リンク、46…前腕リンク、70…アクチュエータ、140L…リンク機構、140R…リンク機構、141…入力リンク、144…上腕リンク、145…上腕リンク、146…前腕リンク、147…前腕リンク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17