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特開2023-79539固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法
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  • 特開-固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079539
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193047
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 仁一
(72)【発明者】
【氏名】小山 和里
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AE01
4C082AL03
4C082AR02
(57)【要約】
【課題】放射線治療における被検体の皮膚障害を低減すること。
【解決手段】実施形態に係る固定具データ生成装置は、取得部と、生成部とを備える。取得部は、被検体への接触が許容される許容領域および被検体への接触が許容されない非許容領域の少なくとも一方を識別する領域識別情報を取得する。生成部は、当該領域識別情報にもとづいて、固定具の形状を表す固定具データを生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体への接触が許容される許容領域および被検体への接触が許容されない非許容領域の少なくとも一方を識別する領域識別情報を取得する取得部と、
当該領域識別情報にもとづいて、固定具の形状を表す固定具形状データを生成する生成部と、
を備えた固定具データ生成装置。
【請求項2】
前記生成部は、
前記非許容領域に対応する部分は開放、または、前記許容領域に対応する部分よりも固定具の厚さを薄くする、
請求項1記載の固定具データ生成装置。
【請求項3】
前記生成部は、
被検体の体内の解剖学的構造を表す医用画像または当該医用画像にもとづく情報を取得し、当該情報にもとづいて前記領域識別情報を生成する、
請求項1または2に記載の固定具データ生成装置。
【請求項4】
前記生成部は、
被検体の体表の情報にもとづいて前記領域識別情報を生成する、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項5】
前記生成部は、
さらに被検体の骨格の情報にもとづいて前記固定具の形状を決定する、
請求項4記載の固定具データ生成装置。
【請求項6】
前記生成部は、
所定の強度以上の強度を有するよう前記固定具の形状を決定する、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項7】
前記生成部は、
被検体の生体機能にもとづく体表の動態に応じて前記固定具の形状を決定する、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項8】
前記生成部は、
前記固定具の表面に照射領域、リスク領域、腫瘍の位置の少なくとも1つを示すマーカを付加すべき旨の情報を前記固定具形状データに含める、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項9】
被検体への接触が許容される許容領域および被検体への接触が許容されない非許容領域の少なくとも一方を識別する領域識別情報を取得するステップと、
当該領域識別情報にもとづいて、固定具の形状を表す固定具形状データを生成するステップと、
を有する固定具データ生成方法。
【請求項10】
被検体への接触が許容される許容領域および被検体への接触が許容されない非許容領域の少なくとも一方を識別する領域識別情報を取得するステップと、
当該領域識別情報にもとづいて、固定具の形状を表す固定具形状データを生成するステップと、
前記固定具形状データにもとづいて3Dプリンタにより前記固定具が作成されるステップと、
を有する固定具作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書および図面に開示の実施形態は、固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療では、治療計画時の被検体撮像によって医用画像データを生成し、その医用画像にもとづいて放射線をあてる腫瘍の位置や範囲を含む治療計画が決定される。治療計画が決定されると、被検体に放射線を照射する際に、治療計画に含まれる腫瘍の位置を固定するために、被検体の顔全体や体幹部全体を覆う固定具(シェル)が用いられる。
【0003】
ところが、この種の固定具を用いると、放射線が固定具を透過する際に発生する散乱の影響(ビルドアップ)で皮膚焼けを生じてしまうことがある。また、所定期間(たとえば3ヶ月)にわたり複数回に分けて放射線照射を施す分割照射を行う場合には、放射線照射の機会ごとに被検体の同じ場所に固定具が脱着される。この場合、固定具の脱着のたびに皮膚焼けした部分をこするなどして傷つけてしまい、皮膚焼けが悪化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-148279号公報
【特許文献2】特開2006-212219号公報
【特許文献3】特開2016-043267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書および図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、放射線治療における被検体の皮膚障害を低減することである。ただし、本明細書および図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る固定具データ生成装置は、取得部と、生成部とを備える。取得部は、被検体への接触が許容される許容領域および被検体への接触が許容されない非許容領域の少なくとも一方を識別する領域識別情報を取得する。生成部は、当該領域識別情報にもとづいて、固定具の形状を表す固定具データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る固定具データ生成装置の一構成例を示すブロック図。
図2】従来の固定具の一例を示す説明図。
図3】各種放射線の体表面からの深さと相対線量の関係の一例を示す説明図。
図4図1に示す固定具データ生成装置により、放射線治療における被検体の皮膚障害を低減可能な固定具を作成する際の手順の一例を示すフローチャート。
図5】本実施形態に係る頭部用の固定具の一例を示す説明図である。
図6】本実施形態に係る腹部用の固定具の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は、一実施形態に係る固定具データ生成装置10の一構成例を示すブロック図である。
【0010】
固定具データ生成装置10は、形状測定装置101、治療計画装置102、および3Dプリンタ103とデータ送受信可能に接続される。
【0011】
形状測定装置101は、被検体の体表形状を測定し、体表データを出力可能な装置である。形状測定装置101としては、たとえばX線CT(Computed Tomography)装置や一般的な3Dスキャナなどを用いることができる。形状測定装置101としてX線CT装置を用いる場合は、形状測定装置101は、体表データとして被検体のボリュームデータなどの画像データを出力する。形状測定装置101として一般的な3Dスキャナを用いる場合は、形状測定装置101は、体表データとしてたとえば被検体の体表に沿った点群データを出力する。
【0012】
治療計画装置102は処理回路112を有する。治療計画装置102の処理回路112のプロセッサは、抽出機能121および計画機能122を実現する。これらの各機能は、それぞれプログラムの形態で図示しない記憶回路に記憶されている。
【0013】
抽出機能121は、治療計画時の被検体のX線CT撮像によって生成されたX線CT画像から、被検体の腫瘍と、腫瘍近傍に位置するリスク臓器を抽出する。また、抽出機能121は、被検体の骨格を抽出してもよい。X線CT撮像は、少なくとも固定具を覆う部位に対して行われる。固定具を覆う部位は、少なくとも腫瘍を含む。
【0014】
計画機能122は、抽出機能121の抽出結果にもとづいて被検体の腫瘍とリスク臓器の位置および形状を含む体内データを取得し、腫瘍に対する放射線の照射条件を決定する。体内データには、骨格の形状および位置が含まれてもよい。照射条件は、放射線ビームの照射方向および照射領域(ビームパス、照射経路)を含む。また、計画機能122は、放射線治療における線量分布を求める。固定具を装着した状態の治療計画をたてることで、放射線が集中する箇所を事前に知ることができる。また、計画機能122は、被検体の腫瘍とリスク臓器の位置および形状とともに骨格の形状および位置の情報を取得し、これらを被検体の体内データとして出力してもよい。
【0015】
固定具データ生成装置10は、記憶回路11および処理回路12を有する。記憶回路11は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0016】
図2は、従来の固定具200の一例を示す説明図である。図2には、固定対象が頭部である場合の例を示した。また、図3は、各種放射線の体表面からの深さと相対線量の関係の一例を示す説明図である。
【0017】
図3に示すように、放射線は、体表で散乱された放射線と直接放射線との影響により、放射線の種類および強度に応じた体表面からの深さにおいて線量のピークを迎える(ビルドアップ)。図2に示すように被検体の体表を覆い隠す固定具200を用いる場合は、放射線は必ず固定具200を透過することになる。この場合、放射線は固定具200で散乱され、固定具200の厚みによっては被検体の体表の線量が高まってしまうことで皮膚焼けをおこしてしまう。また、被検体の体表を覆い隠す固定具200を用いる場合、被検体は窮屈さを感じてしまい放射線治療時の被検体の負担が重くなる。
【0018】
そこで、本実施形態に係る固定具データ生成装置10の処理回路12は、放射線治療における被検体の皮膚障害を低減するように、被検体の皮膚との接触面積の小さい固定具の形状データを生成する。
【0019】
処理回路12は、固定具データ生成装置10を統括制御する機能を実現する。また、処理回路12は、記憶回路11に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、被検体の皮膚との接触面積の小さい固定具の形状データ(以下、固定具形状データという)を生成するための処理を実行するプロセッサである。
【0020】
図1に示すように、固定具データ生成装置10の処理回路12のプロセッサは、3Dデータ生成機能21、シミュレーション機能22、および固定具データ生成機能23を実現する。これらの各機能はそれぞれプログラムの形態で記憶回路11に記憶されている。
【0021】
3Dデータ生成機能21は、被検体の体表形状と骨格の形状および位置とを含む3Dデータを生成する。3Dデータには、腫瘍やリスク臓器の位置および形状が関連付けられてもよい。
【0022】
シミュレーション機能22は、3Dデータを用いて人間工学、人体力学にもとづくシミュレーションを行うことにより、被検体への接触が許容される許容領域および被検体への接触が許容されない非許容領域の少なくとも一方を識別する領域識別情報を取得する。シミュレーション機能22は、取得部の一例である。
【0023】
固定具データ生成機能23は、領域識別情報にもとづいて、固定具の形状を表す固定具形状データを生成する。
【0024】
3Dプリンタ103は、固定具データ生成機能23が出力した固定具形状データにもとづいて、プリント処理により固定具を作成する。固定具の材料としては、たとえばポリカプロラクトンなどの熱可塑性材料を用いてもよい。
【0025】
次に、固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法の動作の一例について説明する。
【0026】
図4は、図1に示す固定具データ生成装置10により、放射線治療における被検体の皮膚障害を低減可能な固定具を作成する際の手順の一例を示すフローチャートである。図4において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。この手順は、治療計画がたてられてスタートとなる。
【0027】
まず、ステップS1において、3Dデータ生成機能21は、形状測定装置101から被検体の少なくとも固定具を覆う部位の体表データを取得する。
【0028】
次に、ステップ2において、3Dデータ生成機能21は、治療計画装置102の計画機能122から被検体の体内データを取得する。体内データは、たとえば腫瘍、リスク臓器、および骨格の位置および形状を含む。
【0029】
次に、ステップS3において、3Dデータ生成機能21は、治療計画装置102の計画機能122から腫瘍に対する放射線の照射条件を取得する。次に、ステップS4において、3Dデータ生成機能21は、被検体の体表面の形状データを生成する。
【0030】
次に、3Dデータ生成機能21は、被検体の体表面の形状データに対して体内データを関連付けし(ステップS5)、体表と骨格、腫瘍、リスク臓器の形状および位置を含んだ3Dデータを生成する(ステップS6)。
【0031】
以上のステップS1-S6により、体表と骨格、腫瘍、リスク臓器の形状および位置を含んだ被検体の3Dデータを生成することができる。
【0032】
図5は、本実施形態に係る頭部用の固定具30の一例を示す説明図である。また、図6は、本実施形態に係る腹部用の固定具30の一例を示す説明図である。
【0033】
ステップS7において、シミュレーション機能22は、被検体の3Dデータを用いて人間工学、人体力学にもとづくシミュレーションを行うことにより、被検体への接触が許容される許容領域31および被検体への接触が許容されない非許容領域の少なくとも一方を識別する領域識別情報を取得する。非許容領域に対応する部分は、開放領域32、または許容領域31に対応する部分よりも薄い領域33とされる(図5参照)。この結果、被検体の皮膚との接触面積の小さい固定具30の固定具形状データを生成することができる。
【0034】
シミュレーション機能22は、所定の優先度にもとづいて許容領域31および非許容領域を識別するとよい。
【0035】
たとえば、優先度は、被検体の固定に有効な押圧ポイント(固定ポイント)を含む領域か否かにもとづいて決定してもよい。具体的には、固定具30を固定する平面(たとえば天板50)と平行な平面(たとえば仰臥位の被検体の顔であれば顔の正面にある額や顎など)は、被検体の動きを抑える効果が高いため、許容領域31とする優先度を上げる。一方、固定具30を固定する平面となす角が大きい平面(たとえば顔の側面など)については、許容領域31とする優先度を下げる。また、力を加えると変形しやすい箇所(たとえば鼻や耳、頬など)は、固定には適さないため、許容領域31とする優先度を下げ、開放領域32、または許容領域31に対応する部分よりも薄い領域33とするとよい。
【0036】
また、体表と骨の間が近い(筋肉や脂肪の層が薄い)領域は固定に有効であるため許容領域31とする優先度を上げるとよい。これは、治療経過にともない被検体が痩せることで形状が変化する可能性のある場所(たとえば頬や腹など)を非許容領域(開放領域32、または許容領域31に対応する部分よりも薄い領域33)として固定ポイントから除外することにより、経時変化による体型の変化が固定具30の固定効率に与える影響を低減するためである。
【0037】
また、優先度は、被検体のQOL(Quality of Life)の観点で決定してもよい。この場合、被検体の体内の解剖学的構造を表す医用画像または当該医用画像にもとづいて決定された放射線の照射条件(照射領域、照射方向を含む)にもとづいて優先度を決定するとよい。具体的には、たとえば、皮膚焼けの低減のためにビームパス(照射経路)上に固定具30が無いように、照射領域を含む領域を非許容領域とするとよい。図5には、照射領域を含む領域を開放領域32とする場合の例を示した。照射領域を含む領域を薄い領域33とする場合は、照射する放射線の種類および強度に応じたビルドアップの深度(図3参照)に応じて、ビルドアップの影響による皮膚焼けを防ぐように厚みを決定するとよい。
【0038】
また、優先度は、被検体の体表の状態(PS、Performance Status)の情報にもとづいて決定してもよい。この場合は、高齢の被検体の皮膚のしわやたるみが多い箇所(固定に寄与しづらいため)や、被検体の怪我をしている箇所(固定具30を接触すべきではないため)などであって、固定に必要な箇所を含まない領域を、開放領域32とするとよい。
【0039】
また、シミュレーション機能22は、固定具30が所定の強度以上の強度を有するよう領域識別情報を設定してもよい。また、シミュレーション機能22は、呼吸や心拍などの被検体の生体機能にもとづく体表の動態に応じて領域識別情報を設定してもよい。
【0040】
次に、ステップS8において、固定具データ生成機能23は、領域識別情報にもとづいて、固定具30の形状を表す固定具形状データを生成する。固定具データ生成機能23は、非許容領域に対応する部分を開放するか、許容領域31に対応する部分よりも薄くする。このため、被検体の皮膚との接触面積の小さい固定具30の固定具形状データが生成される。
【0041】
なお、シミュレーション機能22は、生成された固定具30の形状を用いて人間工学、人体力学にもとづくシミュレーションを行うことにより、固定具30を効率的に固定板40に固定する位置41および数を求めるとよい。この場合、固定具データ生成機能23は、この固定位置41および数の情報を含む固定具形状データを出力する。
【0042】
また、固定具データ生成機能23は、照射領域(ビームパス面)61やリスク領域62、腫瘍の位置などを示すマーカを固定具30の表面に付加すべき旨の情報として固定具形状データに含めてもよい(図6参照)。
【0043】
そして、ステップS9において、3Dプリンタ103は、固定具データ生成機能23が出力した固定具形状データにもとづいて、プリント処理により固定具30を作成して、一連の手順は終了となる。固定具形状データにマーカの情報が含まれている場合は、3Dプリンタ103は、マーカを固定具30の表面に印刷する。
【0044】
図6には、照射領域61およびリスク領域62を示す色付けマーカを固定具30の表面に印刷する場合の例を示した。図6に示すように照射領域61を示すマーカを付す場合は、照射領域61を含む領域は開放領域32ではなく薄い領域33とする。開放領域32ではなく薄い領域33とする場合、ビルドアップの影響による皮膚焼けの可能性が若干高まる一方、開放領域32とする場合よりも照射領域61をしっかりと固定することができるためより正確に腫瘍に放射線照射することができる。
【0045】
以上の手順により、放射線治療における被検体の皮膚障害を低減可能な固定具30を作成することができる。
【0046】
本実施形態に係る固定具データ生成装置10によれば、被検体をしっかりと固定可能であるとともに被検体の皮膚との接触面積を最小化した固定具30の形状データを生成することができる。このため、固定具30を用いることにより、放射線治療における被検体の負荷を下げることができる。たとえば、照射領域61を含む領域を非許容領域とすることにより、ビルドアップによる皮膚焼けを未然に防ぐことができる。
【0047】
また、3Dプリンタ103を用いて固定具30を作成することにより、被検体の体表に熱可塑性の材料をあてがって固定具を作成する場合に比べ、固定具30の作成における被検体の負担を無くすことができる。
【0048】
なお、固定具データ生成機能23は、固定具の取り付けをガイドする情報(たとえば、額を押さえる位置や、シェルの裏表や上下の表示など)や注意情報(たとえば、皮膚のしわやたるみを挟まないようとか、怪我をしている位置など)を固定具30の表面に付加すべき旨の情報として固定具形状データに含ませてもよい。このガイド情報を3Dプリンタ103が固定具30の表面に印刷することで、放射線治療時に術者の作業を支援することができる。
【0049】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、放射線治療における被検体の皮膚障害を低減することができる。
【0050】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサがたとえばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。また、プロセッサがたとえばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行するハードウェア処理により各種機能を実現する。あるいはまた、プロセッサは、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0051】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
10 固定具データ生成装置
22 シミュレーション機能
23 固定具データ生成機能
30 固定具
31 許容領域
32 開放領域
33 薄い領域
61 照射領域
103 3Dプリンタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6