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特開2023-79540固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法
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  • 特開-固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法 図1
  • 特開-固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法 図2
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  • 特開-固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法 図4
  • 特開-固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079540
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193048
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慎二
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AE01
4C082AL03
4C082AR02
(57)【要約】
【課題】低コストで大きなサイズの固定具を作成すること。
【解決手段】実施形態に係る固定具データ生成装置は、取得部と、決定部と、生成部とを備える。取得部は、放射線の照射条件を表す情報を取得する。決定部は、当該情報にもとづいて固定具の分割位置を決定する。生成部は、当該分割位置にもとづいて、固定具の形状を表す固定具形状データを生成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の照射条件を表す情報を取得する取得部と、
当該情報にもとづいて固定具の分割位置を決定する決定部と、
当該分割位置にもとづいて、前記固定具を分割した分割要素それぞれの形状データを生成する生成部と、
を備えた固定具データ生成装置。
【請求項2】
前記固定具の前記分割位置は、放射線の照射領域を避ける位置である、
請求項1記載の固定具データ生成装置。
【請求項3】
前記分割要素のそれぞれには、隣接する分割要素どうしを接合する接合部が形成される、
請求項1または2に記載の固定具データ生成装置。
【請求項4】
前記固定具の前記分割位置に対応する前記接合部は、放射線透過率が均一になるように形成される、
請求項3記載の固定具データ生成装置。
【請求項5】
前記分割要素のそれぞれは、
被検体との位置関係に応じた機械的強度を有する、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項6】
前記固定具の複数の分割要素の一部は被検体の体表形状に応じた形状を有するよう生成するとともに、前記複数の分割要素の一部は被検の体表形状に依存しない形状を有するよう生成して他の被検体と共用する、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項7】
前記分割要素の少なくとも2つは、互いの表面が鋭角をなすように接合される、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項8】
前記生成部は、
被検体の体表の情報にもとづいて前記分割位置を決定する、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項9】
前記生成部は、
さらに被検体の骨格の情報にもとづいて前記分割位置を決定する、
請求項8記載の固定具データ生成装置。
【請求項10】
前記決定部は、
被検体の生体機能にもとづく体表の動態に応じて前記分割位置を決定する、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項11】
前記生成部は、
前記固定具の表面に照射領域を含むマーカを付加する、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項12】
前記決定部は、
前記分割要素のそれぞれのサイズが、前記形状データにもとづいて前記固定具の前記分割要素のそれぞれを作成する3Dプリンタが作成可能な最大サイズ以内となるように、前記分割位置を決定する、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の固定具データ生成装置。
【請求項13】
放射線の照射条件を表す情報を取得するステップと、
当該情報にもとづいて固定具の分割位置を決定するステップと、
当該分割位置にもとづいて、前記固定具を分割した分割要素それぞれの形状データを生成するステップと、
を有する固定具データ生成方法。
【請求項14】
放射線の照射条件を表す情報を取得するステップと、
当該情報にもとづいて固定具の分割位置を決定するステップと、
当該分割位置にもとづいて、前記固定具を分割した分割要素それぞれの形状データを生成するステップと、
前記形状データにもとづいて3Dプリンタにより前記分割要素のそれぞれが作成されるステップと、
前記分割要素のそれぞれを接合することで前記固定具を作成するステップと、
を有する固定具作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書および図面に開示の実施形態は、固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療では、治療計画時の被検体撮像によって医用画像データを生成し、その医用画像にもとづいて放射線をあてる腫瘍の大きさや範囲を含む治療計画が決定される。治療計画が決定されると、被検体に放射線を照射する際に、治療計画に含まれる腫瘍の位置を固定するために、被検体の顔全体や体幹部全体を覆う固定具(シェル)が用いられる。固定具は、被検体の体表面形状に応じて被検体ごとに作成される。
【0003】
最近、この種の固定具は、3Dプリンタを用いて作成されることがある。3Dプリンタを用いて固定具を作成することにより、被検体の体表に熱可塑性の材料をあてがって固定具を作成する場合に比べ、固定具の作成における被検体の負担を無くすことができる。
【0004】
しかしながら、被検体を覆う範囲が広く大きな固定具を作成する必要がある場合には、大きな固定具のサイズに応じた大きな3Dプリンタを用いなければならない。大きな3Dプリンタは高額であるため、大きな固定具を作成するためには高額な費用が必要となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-083491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書および図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、低コストで大きなサイズの固定具を作成することである。ただし、本明細書および図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る固定具データ生成装置は、取得部と、決定部と、生成部とを備える。取得部は、放射線の照射条件を表す情報を取得する。決定部は、当該情報にもとづいて固定具の分割位置を決定する。生成部は、当該分割位置にもとづいて、固定具の形状を表す固定具形状データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る固定具データ生成装置の一構成例を示すブロック図。
図2図1に示す固定具データ生成装置により、低コストに大きなサイズの固定具を作成する際の手順の一例を示すフローチャート。
図3】本実施形態に係る腹部用の固定具の一例を示す説明図。
図4】本実施形態に係る頭部用の固定具の一例を示す説明図。
図5】(a)は隣接する分割要素の接合部の一例を示す平面図、(b)は(a)に示す接合部の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る固定具データ生成装置10の一構成例を示すブロック図である。
【0011】
固定具データ生成装置10は、形状測定装置101、治療計画装置102、および3Dプリンタ103とデータ送受信可能に接続される。
【0012】
形状測定装置101は、被検体の体表形状を測定し、体表データを出力可能な装置である。形状測定装置101としては、たとえばX線CT(Computed Tomography)装置や一般的な3Dスキャナなどを用いることができる。形状測定装置101としてX線CT装置を用いる場合は、形状測定装置101は、体表データとして被検体のボリュームデータなどの画像データを出力する。形状測定装置101として一般的な3Dスキャナを用いる場合は、形状測定装置101は、体表データとしてたとえば被検体の体表に沿った点群データを出力する。
【0013】
治療計画装置102は処理回路112を有する。治療計画装置102の処理回路112のプロセッサは、抽出機能121および計画機能122を実現する。これらの各機能は、それぞれプログラムの形態で図示しない記憶回路に記憶されている。
【0014】
抽出機能121は、治療計画時の被検体のX線CT撮像によって生成されたX線CT画像から、被検体の腫瘍と、腫瘍近傍に位置するリスク臓器を抽出する。また、抽出機能121は、被検体の骨格を抽出してもよい。X線CT撮像は、少なくとも固定具を覆う部位に対して行われる。固定具を覆う部位は、少なくとも腫瘍を含む。
【0015】
計画機能122は、抽出機能121の抽出結果にもとづいて被検体の腫瘍とリスク臓器の位置および形状を含む体内データを取得し、腫瘍に対する放射線の照射条件を決定する。体内データには、骨格の形状および位置が含まれてもよい。照射条件は、放射線ビームの照射方向および照射領域(ビームパス、照射経路)を含む。また、計画機能122は、放射線治療における線量分布を求める。固定具を装着した状態の治療計画をたてることで、放射線が集中する箇所を事前に知ることができる。また、計画機能122は、被検体の腫瘍とリスク臓器の位置および形状とともに骨格の形状および位置の情報を取得し、これらを被検体の体内データとして出力してもよい。
【0016】
固定具データ生成装置10は、記憶回路11および処理回路12を有する。記憶回路11は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0017】
固定具データ生成装置10の処理回路12は、固定具データ生成装置10を統括制御する機能を実現する。また、処理回路12は、記憶回路11に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、被検体の皮膚との接触面積の小さい固定具の形状データ(以下、固定具形状データという)を生成するための処理を実行するプロセッサである。
【0018】
図1に示すように、固定具データ生成装置10の処理回路12のプロセッサは、体表形状データ生成機能21、固定具形状データ生成機能22、分割機能23、および接合部生成機能24を実現する。これらの各機能はそれぞれプログラムの形態で記憶回路11に記憶されている。
【0019】
体表形状データ生成機能21は、形状測定装置101から被検体の少なくとも固定具を覆う部位の体表データを取得し、被検体の体表面の形状データを生成する。体表形状データ生成機能21は、治療計画装置102の計画機能122から腫瘍、リスク臓器、および骨格の位置および形状を含む被検体の体内データを取得して、被検体の体表面の形状データに対して体内データを関連付けすることで、体表と骨格、腫瘍、リスク臓器の形状および位置を含んだ3Dデータを生成してもよい。
【0020】
固定具形状データ生成機能22は、分割機能23が決定した分割位置にもとづいて、固定具を分割した分割要素それぞれの形状データを生成する。具体的には、固定具形状データ生成機能22は、まず、被検体の体表面の形状データ(体表形状データ)にもとづいて固定具全体の形状データを生成する。そして、固定具形状データ生成機能22は、体表形状データおよび分割機能23が決定した分割位置にもとづいて、分割要素のそれぞれの形状データ(以下、要素形状データという)を生成して、3Dプリンタ103に出力する。固定具形状データ生成機能22は、生成部の一例である。
【0021】
分割機能23は、治療計画装置102の計画機能122から腫瘍に対する放射線の照射条件を示す情報を取得する。分割機能23は、取得部の一例である。
【0022】
また、分割機能23は、腫瘍に対する放射線の照射条件を示す情報にもとづいて固定具の分割位置を決定する。具体的には、分割機能23は、分割位置における放射線の散乱が起因となるビルドアップによる皮膚焼けを未然に防ぐように、放射線の照射範囲を避けるように分割位置を決定する。固定具は、この分割位置で分割要素に分割される。また、分割機能23は、3Dプリンタ103が作成可能な最大サイズの情報を取得し、分割要素のそれぞれのサイズが当該最大サイズ以内となるように分割位置を決定する。分割機能23は、決定部の一例でもある。
【0023】
接合部生成機能24は、分割要素のそれぞれに、分割要素どうしを接合する接合部の形状を決定する。このとき、接合部生成機能24は、放射線透過率が均一になるように接合部の形状を決定する。固定具形状データ生成機能22は、当該形状を有する接合部を含むように分割要素のそれぞれの形状データ(要素形状データ)を生成する。分割要素どうしの接合方法は、係合、嵌合、接着、螺合などの方法を用いることができる。係合や嵌合により接合される場合は、接合部における放射線透過率が均一になるように、接合部の形状を決定する。なお、分割要素の端部に表面に直交する単なる断面が形成され、隣接して対抗する当該断面どうしを単純に接着する場合は、固定具データ生成装置10は接合部生成機能24を備えずともよい。
【0024】
3Dプリンタ103は、少なくとも3Dプリンタ103が作成可能な最大サイズの情報を分割機能23に与える。このとき、3Dプリンタ103は、さらに材料の成形に用いる材料の情報を分割機能23に与えてもよい。
【0025】
また、3Dプリンタ103は、固定具形状データ生成機能22が出力した要素形状データにもとづいて、プリント処理により分割要素のそれぞれを作成する。固定具の材料としては、放射線の透過性を向上するよう、鉛当量が低い材料を薄く形成することが好ましく、たとえばポリカプロラクトンなどの熱可塑性材料を用いてもよい。接合部を介してこれらの分割要素を接合することにより、放射線の照射範囲を避ける位置に分割位置が位置した固定具を作成することができる。
【0026】
次に、固定具データ生成装置、固定具データ生成方法、および固定具作成方法の動作の一例について説明する。
【0027】
図2は、図1に示す固定具データ生成装置10により、低コストに大きなサイズの固定具を作成する際の手順の一例を示すフローチャートである。図2において、Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。この手順は、治療計画がたてられてスタートとなる。
【0028】
また、図3は、本実施形態に係る腹部用の固定具30の一例を示す説明図である。また、図4は、本実施形態に係る頭部用の固定具30の一例を示す説明図である。
【0029】
まず、体表形状データ生成機能21は、形状測定装置101から少なくとも固定具30が覆う被検体の部位の体表データを取得し(ステップS1)、被検体の体表面の形状データを生成する(ステップS2)。
【0030】
次に、ステップS3において、固定具形状データ生成機能22は、被検体の体表形状データにもとづいて、固定具30の全体の形状データ(固定具形状データ)を生成する。
【0031】
次に、ステップS4において、分割機能23は、治療計画装置102の計画機能122から腫瘍62に対する放射線の照射条件を示す情報を取得する。
【0032】
次に、ステップS5において、分割機能23は、3Dプリンタ103から、3Dプリンタ103が作成可能な最大サイズの情報を取得する。分割機能23は、以下の処理において固定具30を分割位置31で分割することで複数の分割要素32に分割するとき、分割要素32のそれぞれのサイズが、3Dプリンタ103が作成可能な最大サイズ以内となるように分割位置31を決定する。
【0033】
次に、ステップS6において、分割機能23は、放射線の照射領域61を避けるよう照射線量が少ない位置に、かつ、分割要素32のサイズが3Dプリンタ103の作成可能な最大サイズ以内となるように、分割位置31を決定する(図3図4参照)。
【0034】
なお、固定具30における位置に応じて分割要素32に要求される強度は異なる。このため、分割機能23は、固定具30の全体の形状データを用いて人間工学、人体力学にもとづくシミュレーションを行うことにより、分割要素32のそれぞれが、被検体との位置関係に応じた機械的強度を有するように、分割位置31を決定するとよい。
【0035】
固定具30は、固定部材41を介して固定板40および天板50に固定される(図3参照)。固定具30は被検体の体表形状にあわせて作成されることが好ましいが、固定部材41に固定される分割要素32fなど、分割要素32によっては被検体の体表形状に依存しない形状とすることが可能である。したがって、分割機能23は、被検体との位置関係に応じて、被検体の体表形状に無関係な形状でよい領域に対応する分割要素32fを、他の被検体と共用可能なように、分割位置31を決定してもよい。この場合、他の被検体のために作成済みの分割要素32fが入手可能であれば、固定具形状データ生成機能22は、分割要素32fに対応する要素形状データを生成せずともよい。
【0036】
また、分割機能23は、被検体の体表の性状にもとづいて分割位置31を決定してもよい。たとえば、分割機能23は、高齢の被検体の皮膚のしわやたるみが多い箇所や、被検体の怪我をしている箇所を避けて分割位置31を決定してもよい。また、体表と骨の間が近い(筋肉や脂肪の層が薄い)領域は、固定に有効であるため分割位置31を設けないようにしてもよい。また、呼吸や心拍などの被検体の生体機能にもとづく体表の動態に応じて分割位置31を決定してもよい。
【0037】
図5(a)は隣接する分割要素321と322の接合部35の一例を示す平面図であり、(b)は(a)に示す接合部35の側面図である。図5(a)、(b)には、隣接する分割要素321と322の接合部35が嵌合により接合される場合の例を示した。
【0038】
ステップS7において、接合部生成機能24は、放射線透過率が均一になるように隣接する分割要素32どうしを接合する接合部35の形状を決定する。接合部35は、固定具30の分割位置31に対応する。
【0039】
次に、ステップS8において、固定具形状データ生成機能22は、体表形状データおよび分割機能23が決定した分割位置31にもとづいて、固定具30を分割した分割要素32のそれぞれの形状データ(要素形状データ)を生成して、3Dプリンタ103に出力する。
【0040】
また、固定具形状データ生成機能22は、照射領域(ビームパス面)61やリスク領域、腫瘍62の位置などを示すマーカを、対応する分割要素32の表面に付加すべき旨の情報を固定具形状データに含めてもよい。
【0041】
また、固定具形状データ生成機能22は、固定具30の全体形状データ(固定具形状データ)を用いて人間工学、人体力学にもとづくシミュレーションを行うことにより、固定具30を効率的に固定板40に固定する位置および数を求めてもよい。
【0042】
そして、ステップS9において、3Dプリンタ103は、固定具形状データ生成機能22が出力した要素形状データにもとづいて、プリント処理により分割要素32のそれぞれを作成して、一連の手順は終了となる。分割要素32のそれぞれを接合することで、固定具30を作成することができる。要素形状データにマーカの情報が含まれている場合は、3Dプリンタ103は、対応する分割要素32の表面にマーカを印刷する。
【0043】
以上の手順により、小型の3Dプリンタ103を用いて低コストに大きなサイズの固定具30を作成することができる。
【0044】
本実施形態に係る固定具データ生成装置10によれば、大きな固定具30であっても、小型の3Dプリンタ103を利用可能なサイズの分割要素32に分割することができる。このため、容易かつ安価に高精度な大きな固定具30を作成することができる。
【0045】
また、接合部35において、分割要素32どうしを互いの表面が鋭角をなすように接合することも可能なため、固定具30の形状の自由度を大幅に高めることができる。
【0046】
また、固定板40に接続される分割要素32fをあらかじめ固定板40に接続しておくとともに、他の分割要素32をあらかじめ組み立てておくことができる。この場合、分割要素32fと他の分割要素32を接合するだけで、容易に固定具30を被検体に装着することができ、被検体の負担を軽減することができるとともに、接合位置を被検体側に折り込むことで固定具30と被検体の密着度を高めることができる。
【0047】
なお、治療計画装置102は、固定具形状データ生成機能22が生成した固定具形状データおよび要素形状データにもとづいて、固定具30の取り付けをガイドする情報を生成し、このガイド情報を治療計画に含ませてもよい。この場合、治療計画装置102は、放射線治療時に、このガイド情報を出力することで、術者の作業を支援することができる。
【0048】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、大きなサイズの固定具30を低コストで作成することができる。
【0049】
なお、上記実施形態において、「プロセッサ」という文言は、たとえば、専用または汎用のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、または、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサがたとえばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。また、プロセッサがたとえばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存するかわりに、当該プログラムに相当する機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行するハードウェア処理により各種機能を実現する。あるいはまた、プロセッサは、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて各種機能を実現することもできる。
【0050】
また、上記実施形態では処理回路の単一のプロセッサが各機能を実現する場合の例について示したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサが各機能を実現してもよい。また、プロセッサが複数設けられる場合、プログラムを記憶する記憶回路は、プロセッサごとに個別に設けられてもよいし、1つの記憶回路が全てのプロセッサの機能に対応するプログラムを一括して記憶してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
10 固定具データ生成装置
21 体表形状データ生成機能
22 固定具形状データ生成機能
23 分割機能
24 接合部生成機能
30 固定具
31 分割位置
32、32f、321、322 分割要素
35 接合部
61 照射領域
62 腫瘍
103 3Dプリンタ
図1
図2
図3
図4
図5