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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007956
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】橋梁添架ケーブルの取付構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/02 20060101AFI20230112BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H02G9/02
H02G1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111137
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】505413255
【氏名又は名称】阪神高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508061549
【氏名又は名称】阪神高速技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】新原 拓海
(72)【発明者】
【氏名】金本 翔平
【テーマコード(参考)】
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
5G352CA10
5G352CE03
5G369AA06
5G369AA13
5G369AA19
5G369BA01
5G369BB03
5G369CA01
5G369CA02
5G369CB01
(57)【要約】
【課題】比較的簡単な構成で容易に設置できる橋梁添架ケーブルの取付構造を提供する。
【解決手段】
道路橋2に添架された電力用又は通信用のケーブル10に、横向きの8の字状に屈曲した余長部11を、第1の橋桁3の端部に設置する。余長部11の上端部11a,11bを、余長部保持部材12,12で支持する。余長部保持部材12は、ケーブル10に挿通された筒状部材15と、この筒状部材15の部分を支持部材14に連結する複数の連結紐16,16を有する。保持解除機構としての解除用線状部材18の先端側の環状部分18aを、余長部保持部材12の連結紐16,16に係合させると共に、基端側の環状部分を第2の橋桁4側の横桁20に連結する。第1の橋桁3と第2の橋桁の間に基準値を超える変位が生じると、解除用線状部材18に張力が生じて連結紐16が切断され、余長部保持部材12による余長部11の保持が解除される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の第1部材と第2部材の間に掛け渡された通信用又は電力用のケーブルの取付構造であって、
上記ケーブルの上記第1部材又は第2部材の端部の近傍に設けられた余長部と、
上記ケーブルの余長部を、上記第1部材又は第2部材に設定された保持位置に保持する余長部保持部材と、
上記第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに、上記余長部保持部材によるケーブルの余長部の保持を解除して、上記余長部を伸展可能とする保持解除機構と
を備えることを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の橋梁添架ケーブルの取付構造において、
上記余長部保持部材が、上記ケーブルの余長部を上記第1部材又は第2部材に連結する線状部材を含み、
上記保持解除機構が、上記第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに引張力が作用する引張部材と、この引張部材の引張力により上記余長部保持部材の線状部材を切断する切断部材とを含むことを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載の橋梁添架ケーブルの取付構造において、
上記保持解除機構の引張部材が、上記余長部保持部材の線状部材よりも強度の高い線状部材で形成され、
上記保持解除機構の切断部材が、上記引張部材としての線状部材の一端を曲げ返して作製され、上記余長部保持部材の線状部材に係合する環状部分により形成されていることを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【請求項4】
請求項2に記載の橋梁添架ケーブルの取付構造において、
上記保持解除機構の引張部材が、線状部材で形成され、
上記保持解除機構の切断部材が、上記引張部材としての線状部材の引張力によって駆動されて上記余長部保持部材の線状部材を切断する切断刃で形成されていることを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【請求項5】
請求項1に記載の橋梁添架ケーブルの取付構造において、
上記余長部保持部材が、上記第1部材又は第2部材に係合する係合金具を含み、
上記保持解除機構が、上記第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに引張力が作用し、この引張力により上記係合金具の上記第1部材又は第2部材への係合を解除させる引張部材を含むことを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【請求項6】
請求項1に記載の橋梁添架ケーブルの取付構造において、
上記余長部保持部材が、上記ケーブルの余長部を上記第1部材又は第2部材に吸着させる磁石を含み、
上記保持解除機構が、上記第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに引張力が作用し、この引張力により上記磁石の上記第1部材又は第2部材への吸着を解除する引張部材を含むことを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【請求項7】
請求項2,5又は6に記載の橋梁添架ケーブルの取付構造において、
上記保持解除機構の引張部材が、上記第1部材及び第2部材のうち、この保持解除機構で保持が解除される余長部の配置された部材と異なる部材に接続されていることを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【請求項8】
請求項1に記載の橋梁添架ケーブルの取付構造において、
上記ケーブルの上記保持位置にある余長部が、山型に屈曲していることを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【請求項9】
請求項1に記載の橋梁添架ケーブルの取付構造において、
上記ケーブルの上記保持位置にある余長部が、8の字状に屈曲していることを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【請求項10】
請求項1に記載の橋梁添架ケーブルの取付構造において、
上記ケーブルの上記保持位置にある余長部が、互いに反対側に巻回された2つの巻回部分で形成されていることを特徴とする橋梁添架ケーブルの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁に添架される電力用又は通信用のケーブルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、橋梁に添架される電力用又は通信用のケーブルの取付構造として、橋梁の構成部材の変位による影響を軽減するように構成されたものが知られている。このようなケーブルの取付構造として、従来、隣接する2つの橋桁端部の近傍に、ケーブルを山形状に湾曲させて余長部を夫々形成し、各余長部の橋桁端部側を、対向する橋桁端部から延びるアーム部材に連結させたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この橋梁添架ケーブルの取付構造は、2つのアーム部材の先端部が、対向する橋桁端部側に設けられたガイド部材に案内されるように嵌合している。また、一方のアーム部材の先端部の近傍に、他方の橋桁端部側におけるケーブルの余長部の連結部の変位量をアーム部材の変位量の半分に低減させる変位低減装置が設置されている。
【0004】
隣接する橋桁の間に変位が生じると、ケーブルのアーム部材への連結部が、アーム部材の案内される方向に移動すると共に、2つの連結部の移動距離が、変位低減装置によって均一化される。これにより、ケーブルの2つの余長部を均等に伸縮するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02-250612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の橋梁添架ケーブルの取付構造は、アーム部材と、このアーム部材にケーブルを連結する連結部材と、アーム部材を案内するガイド部材と、変位低減装置とを備えるので部品点数が比較的多く、また、設置に手間がかかる不都合がある。また、アーム部材及びガイド部材と、変位低減装置の設置のために比較的広いスペースが必要であるため、橋梁の構造によっては設置できないという不都合がある。また、変位低減装置は、ラック及びピニオン等の機械要素を含むため、メンテナンスに手間がかかると共に、耐久性が比較的低いという不都合がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、比較的簡単な構成で容易に設置でき、比較的狭いスペースに設置でき、また、高い耐久性を有する橋梁添架ケーブルの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の橋梁添架ケーブルの取付構造は、橋梁の第1部材と第2部材の間に掛け渡された通信用又は電力用のケーブルの取付構造であって、
上記ケーブルの上記第1部材又は第2部材の端部の近傍に設けられた余長部と、
上記ケーブルの余長部を、上記第1部材又は第2部材に設定された保持位置に保持する余長部保持部材と、
上記第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに、上記余長部保持部材によるケーブルの余長部の保持を解除して、上記余長部を伸展可能とする保持解除機構と
を備えることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、橋梁の第1部材と第2部材の間に掛け渡されて取り付けられるケーブルに、上記第1部材又は第2部材の端部の近傍に位置するように、余長部が形成される。ここで、余長部は、第1部材及び第2部材のうちの一方に形成されてもよく、第1部材及び第2部材の両方に形成されてもよく、余長部の個数は特に限定されない。上記橋梁の第1部材と第2部材は、橋梁を構成する部材であって、地震や、車両荷重や、風荷重等の種々の原因により相互間に変位が生じる部材が該当する。例えば、第1部材と第2部材は、互いに隣り合う橋桁と橋桁が該当する。また、例えば、第1部材と第2部材は、互いに隣り合う橋桁と橋台が該当する。上記ケーブルは、橋梁に添架される通信用又は電力用のケーブルであり、銅やアルミニウム等の導体を用いたものや、光ファイバを用いたものが該当する。上記ケーブルの余長部が、余長部保持部材により、上記第1部材又は第2部材に設定された保持位置に保持される。上記保持位置は、上記余長部が形成された側の部材に設定され、例えば上記余長部が第1部材の端部の近傍に形成された場合、保持位置は第1部材に設定される。ここで、上記第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに、保持解除機構により、上記余長部保持部材によるケーブルの余長部の保持が解除される。これにより、ケーブルの余長部が、伸展可能となる。その結果、第1部材と第2部材の相対変位にケーブルが追従できるので、ケーブルへの影響が軽減され、ケーブルの断線や切断等の不都合を効果的に防止できる。上記構成の橋梁添架ケーブルの取付構造は、余長部を保持する余長部保持部材と保持解除機構により構成が比較的簡単であるので、容易に設置でき、また、比較的狭いスペースに設置できる。また、ラック及びピニオン等の機械要素を含まないので、メンテナンスの手間が少なく、また、高い耐久性を有する。
【0010】
一実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、上記余長部保持部材が、上記ケーブルの余長部を上記第1部材又は第2部材に連結する線状部材を含み、
上記保持解除機構が、上記第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに引張力が作用する引張部材と、この引張部材の引張力により上記余長部保持部材の線状部材を切断する切断部材とを含む。
【0011】
上記実施形態によれば、余長部保持部材が線状部材を含み、この線状部材により、ケーブルの余長部が第1部材又は第2部材に連結される。線状部材による第1部材又は第2部材への連結は、直接行われても、他の部材を介して間接的に行われてもよい。これと共に、保持解除機構が引張部材と切断部材を含み、第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに上記引張部材に生じる引張力により、上記切断部材が上記余長部保持部材の線状部材を切断する。余長部保持部材の線状部材が切断部材で切断されると、ケーブルの余長部の第1部材又は第2部材に対する連結が解除されて、上記余長部が伸展可能となる。その結果、第1部材と第2部材の相対変位にケーブルが追従可能となり、ケーブルの断線や切断等が防止される。
【0012】
一実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、上記保持解除機構の引張部材が、上記余長部保持部材の線状部材よりも強度の高い線状部材で形成され、
上記保持解除機構の切断部材が、上記引張部材としての線状部材の先端に設けられ、上記余長部保持部材の線状部材に係合する環状部分により形成されている。
【0013】
上記実施形態によれば、保持解除機構が、引張部材としての線状部材と、この線状部材の先端に設けられた環状部分で形成される。橋梁の第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じると、引張部材としての線状部材に生じた張力によって環状部分に引張力が作用する。ここで、保持解除機構の引張部材としての線状部材は、余長部保持部材の線状部材よりも強度が高いので、余長部保持部材の線状部材が環状部分によって切断される。その結果、余長部保持部材によるケーブルの余長部の保持が、効果的に解除される。ここで、保持解除機構の切断部材としての環状部分は、引張部材としての線状部材の先端を環状に湾曲させて、線状部材の途中に固定することにより形成してもよい。すなわち、保持解除機構の引張部材と切断部材を線状部材により一体に形成してもよい。
【0014】
一実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、上記保持解除機構の引張部材が、線状部材で形成され、
上記保持解除機構の切断部材が、上記引張部材としての線状部材の引張力によって駆動されて上記余長部保持部材の線状部材を切断する切断刃で形成されている。
【0015】
上記実施形態によれば、保持解除機構が、引張部材としての線状部材と、この線状部材に作用する引張力によって駆動される切断刃を含んで形成される。橋梁の第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じると、引張部材としての線状部材に生じた張力によって切断刃が駆動され、この切断刃により、余長部保持部材の線状部材が切断される。その結果、上記余長部保持部材によるケーブルの余長部の保持が、効果的に解除される。
【0016】
一実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、上記余長部保持部材が、上記第1部材又は第2部材に係合する係合金具を含み、
上記保持解除機構が、上記第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに引張力が作用し、この引張力により上記係合金具の上記第1部材又は第2部材への係合を解除させる引張部材を含む。
【0017】
上記実施形態によれば、余長部保持部材の係合金具が第1部材又は第2部材に係合して、ケーブルの余長部を第1部材又は第2部材の保持位置に保持する。ここで、上記係合金具は、第1部材又は第2部材に直接係合してもよく、あるいは、第1部材又は第2部材に設けられた他の部材を介して間接的に係合してもよい。保持解除機構が引張部材を含み、この保持解除機構の引張部材に、第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに引張力が作用する。この保持解除機構の引張部材の引張力により、上記係合金具の第1部材又は第2部材への係合が解除される。その結果、上記余長部保持部材によるケーブルの余長部の保持が、効果的に解除される。
【0018】
一実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、上記余長部保持部材が、上記ケーブルの余長部を上記第1部材又は第2部材に吸着させる磁石を含み、
上記保持解除機構が、上記第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに引張力が作用し、この引張力により上記磁石の上記第1部材又は第2部材への吸着を解除する引張部材を含む。
【0019】
上記実施形態によれば、余長部保持部材の磁石が第1部材又は第2部材に吸着して、ケーブルの余長部を第1部材又は第2部材の保持位置に保持する。ここで、上記磁石は、第1部材又は第2部材に直接吸着してもよく、あるいは、第1部材又は第2部材に設けられた他の部材に間接的に吸着してもよい。保持解除機構が引張部材を含み、この保持解除機構の引張部材に、第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じたときに引張力が作用する。この保持解除機構の引張部材の引張力により、上記磁石の第1部材又は第2部材への吸着が解除される。その結果、上記余長部保持部材によるケーブルの余長部の保持が、効果的に解除される。
【0020】
一実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、上記保持解除機構の引張部材が、上記第1部材及び第2部材のうち、この保持解除機構で保持が解除される余長部の配置された部材と異なる部材に接続されている。
【0021】
上記実施形態によれば、第1部材と第2部材のうちの一方の部材に配置された余長部に関する保持解除機構は、この保持解除機構の引張部材が他方の部材に接続されているので、第1部材と第2部材の間に基準値を超える相対変位が生じるに伴って引張部材に引張力が作用する。したがって、上記保持解除機構は、余長部保持部材によるケーブルの余長部の保持を、確実に解除することができる。
【0022】
一実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、上記ケーブルの上記保持位置にある余長部が、山型に屈曲している。
【0023】
上記実施形態によれば、ケーブルの余長部の形状を山型とすることにより、余長部を容易に作成できる。
【0024】
一実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、上記ケーブルの上記保持位置にある余長部が、8の字状に屈曲している。
【0025】
上記実施形態によれば、ケーブルの余長部の形状を8の字状とすることにより、この余長部が伸展したときのケーブルの捻じれを防止できるので、例えば断線等のような捻じれに起因する損傷を、効果的に防止できる。
【0026】
一実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、上記ケーブルの上記保持位置にある余長部が、互いに反対側に巻回された2つの巻回部分で形成されている。
【0027】
上記実施形態によれば、ケーブルの余長部を、互いに反対側に巻回された2つの巻回部分によって形成することにより、これらの2つの余長部が伸展したときのケーブルの捻じれを防止できる。したがって、例えば断線等のような捻じれに起因する損傷を、効果的に防止できる。ここで、上記ケーブルの巻回部分は、第1部材の端部の近傍と、第2部材の端部の近傍に、各々形成されるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が設けられた橋梁を示す模式図である。
図2】第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における第1余長部保持部材を示す側面図である。
図3】地震発生時の第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造を示す模式図である。
図4A】第2実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す断面図である。
図4B】第2実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す平面図である。
図4C】地震発生時の第2実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す断面図である。
図5A】第3実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す平面図である。
図5B】第3実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す側面図である。
図5C】地震発生時の第3実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す平面図である。
図6A】第4実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す側面図である。
図6B】地震発生時の第4実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す側面図である。
図7A】第5実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す側面図である。
図7B】地震発生時の第5実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造における余長部保持部材と保持解除機構を示す側面図である。
図8】第6実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が設けられた橋梁を示す模式図である。
図9】第7実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が設けられた橋梁を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が設けられた橋梁の部分を示す模式図である。この橋梁添架ケーブルの取付構造1は、橋梁としての道路橋2が有する第1部材としての第1の橋桁3と、第2部材としての第2の橋桁4との間に設置されている。この道路橋2は桁橋であり、第1の橋桁3と第2の橋桁4の隣り合う端部が、橋脚5の上端に設置された支承6,7によって支持されている。
【0031】
道路橋2の上部工には、電力用又は通信用のケーブル10が、橋桁3,4に設置されたケーブルラック8,9に支持されて添架されている。ここで、ケーブル10は、電力又は通信の用途に供されるケーブルであれば、構成される材料は特に限定されない。上記ケーブル10は、例えば、銅やアルミニウム等の導体を用いたものや、光ファイバを用いたものが該当する。また、ケーブル10内に収容される導体や光ファイバの本数は限定されない。本実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1は、第1の橋桁3と第2の橋桁4との間で変位が生じたときに、ケーブル10の断線を防止しながら第1の橋桁3と第2の橋桁4の変位に追従するために設置されている。
【0032】
第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1は、第1の橋桁3の端部に設けられたケーブルの余長部11と、この余長部11を、第1の橋桁3の端部に設定された保持位置に保持する2つの余長部保持部材12,12と、この余長部保持部材12,12による余長部11の保持を解除する保持解除機構として機能する2つの解除用線状部材18,18を含んで構成されている。ケーブルの余長部11は、ケーブル10を、横向きの8の字状に屈曲して形成されている。
【0033】
この橋梁添架ケーブルの取付構造1におけるケーブルの余長部11は、伸展したときに、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に想定し得る変位の最大値よりも大きい長さに設定されている。すなわち、ケーブル10を第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に直線状に配置する場合よりも、例えば地震時に想定し得る第1の橋桁3と第2の橋桁4の間の変位の最大値に余裕長を付加した長さに相当する部分を、余長部11として設定している。この余長部11は、下端部がケーブルラック8上に配置されると共に、横向きの8の字の2つの上端部11a,11bが、2つの余長部保持部材12,12によって各々支持されている。
【0034】
図2は、余長部11の一方の上端部11aを支持する余長部保持部材12を拡大して示した模式図である。この余長部保持部材12は、第1の橋桁3に固定された棒状の金属製の支持部材14に連結されている。なお、支持部材14の形状や材質は、余長部11を支持可能に余長部保持部材12が連結できれば、特に限定されない。余長部保持部材12は、ケーブル10が挿通されて可撓性を有する筒状部材15と、ケーブル10の筒状部材15による被覆部分と支持部材14とを巻回して連結する複数の線状部材としての連結紐16,16を有する。筒状部材15は、例えば波付硬質ポリエチレン管で形成することができる。連結紐16は、例えばビニロン製の組紐で形成することができる。
【0035】
余長部保持部材12には、図2に示すように、複数の連結紐16,16に、解除用線状部材18の先端部が係合している。解除用線状部材18は、例えばステンレス製のワイヤを用いて作製され、両端にアイ加工が施されて環状部分が形成されている。この解除用線状部材18の先端側の環状部分18aが、余長部保持部材12の複数の連結紐16,16にチェーン状に係合している。また、解除用線状部材18の基端側が、余長部11が設置された部材と異なる部材である第2の橋桁4に連結されている。この解除用線状部材18の基端側は、第2の橋桁4側の横桁20に設けられた連結孔に、環状部分が係合して連結されている。この解除用線状部材18は、余長部保持部材12の連結紐16よりも高い強度を有する。これらにより、解除用線状部材18の先端側の環状部分18aが、保持解除機構の切断部材として機能すると共に、解除用線状部材18の他の部分が、保持解除機構の引張部材として機能するように形成されている。余長部11の他方の上端部11bを支持する余長部保持部材12もまた、余長部11の一方の上端部11aを支持する余長部保持部材12と同様の構成を有する。解除用線状部材18は、通常は撓んで実質的に張力が生じない一方、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間の距離が基準値に達すると緊張し、張力が生じる長さに設定されている。上記第1の橋桁3と第2の橋桁4の間の距離の基準値は、上記第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に想定し得る変位の最大値よりも小さい値である。
【0036】
上記構成の橋梁添架ケーブルの取付構造1は、次のように作動する。まず、道路橋2に、車両による活荷重が作用した場合や、風荷重が作用した場合や、温度変化が生じた場合、第1の橋桁3と第2の橋桁4との間に、数ミリメートルから数センチメートルの範囲の変位が生じる。このような変位は基準値よりも小さく、解除用線状部材18には張力が生じない。したがって、ケーブルの余長部11は、上端部11a,11bが余長部保持部材12,12で保持され、8の字状の形状に保持される。この状態で、第1の橋桁3と第2の橋桁4との間に数ミリメートルから数センチメートルの変位が生じると、ケーブル10が余長部保持部材12,12の筒状部材15内を滑動することで、ケーブルの余長部11が8の字状を保持したまま伸縮する。こうして、橋梁添架ケーブルの取付構造1は、第1の橋桁3と第2の橋桁4との間の軽微な変位に伴うケーブル10への影響を解消する。
【0037】
一方、地震等により、道路橋2の第1の橋桁3と第2の橋桁4との間に基準値以上の変位が生じると、解除用線状部材18が緊張して張力が発生する。この張力により、2つの解除用線状部材18,18の先端側の環状部分18a,18aに係合している余長部保持部材12,12の連結紐16,16が切断され、余長部の上端部11a,11bと支持部材14の間の連結が解除される。こうして、余長部保持部材12,12による余長部11の保持が解除される。その結果、ケーブルの余長部11が伸展可能となり、図3に示すように、余長部11は、8の字状の部分が縮小すると共に、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じる変位に追従して伸展する。第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じる変位によっては、余長部11の8の字状が解消する。こうして、本実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1によれば、地震等により橋桁3,4の間に大きな変位が生じても、ケーブル10に断線等が生じる不都合を効果的に防止でき、高い耐震性を発揮することができる。
【0038】
図4Aは、本発明の第2実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が備える余長部保持部材及び保持解除機構を示す断面図であり、図4Bは余長部保持部材及び保持解除機構の平面図であり、図4Cは地震発生時の余長部保持部材及び保持解除機構を示す断面図である。図4Aは、図4B中のA-A’線に沿った断面図である。第2実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、保持解除機構以外は、第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1と同様の構成を有する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の機能を奏する部分には同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0039】
第2実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が備える余長部保持部材12は、第1実施形態と同様に、ケーブルの余長部11の上端部11a,11bに設けられた筒状部材15と、ケーブル10の筒状部材15が被覆された部分を支持部材14に連結する連結紐16を有する。この余長部保持部材12に、連結紐切断装置23が設けられている。この連結紐切断装置23は、筒状部材15の外側面に接する円弧状の凹部を有するケーシング24と、このケーシング24の内側面に沿ってスライドするスライド板25と、このスライド板25の外側面に設けられた係止具26と、上記スライド板25の内側面に設けられた切断刃27を有する。ケーシング24には、図4Aにおける上側の面と下側の面に、連結紐16を挿通させる連結紐挿通孔28が設けられている。また、ケーシング24には、図4Aにおける手前側と奥側に、解除用線状部材18の環状部分18aを挿通させる開口が設けられている。この連結紐切断装置23は、凹部が筒状部材15の外側面に接するようにケーシング24が取り付けられて、連結紐挿通孔28に挿通された連結紐16によってケーブルの余長部11の上端部11a,11bと共に支持部材14に連結される。また、解除用線状部材18の環状部分18aが、係止具26に係止してスライド板25の外側面を内包すると共に、ケーシング24の開口に挿通されて連結紐16を内包するように、解除用線状部材18が取り付けられる。上記連結紐切断装置23と解除用線状部材18により、保持解除機構が構成されている。
【0040】
上記構成の保持解除機構が設置された第2実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、地震等により、道路橋2の第1の橋桁3と第2の橋桁4との間に基準値以上の変位が生じると、解除用線状部材18が緊張して張力が発生する。この張力により、解除用線状部材18の先端側の環状部分18aが内包する連結紐切断装置23のスライド板25が、図4C中の矢印Bで示すように、ケーシング24の奥に向かって駆動される。その結果、スライド板25の内側面の切断刃27が、ケーシング24内に挿通された連結紐16に押圧されて連結紐16が切断され、ケーブルの余長部11の上端部11a,11bと支持部材14の間の連結が解除される。これにより、余長部保持部材12による余長部11の保持が解除され、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じる変位に追従して余長部11が伸展する。こうして、第2実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造によれば、地震により第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に過大な変位が生じても、ケーブル10の断線や破損を効果的に防止できる。
【0041】
図5Aは、本発明の第3実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が備える余長部保持部材及び保持解除機構を示す平面図であり、図5Bは余長部保持部材及び保持解除機構の側面図であり、図5Cは地震発生時の余長部保持部材及び保持解除機構を示す平面図である。第3実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、保持解除機構以外は、第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1と同様の構成を有する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の機能を奏する部分には同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0042】
第3実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が備える余長部保持部材12は、第1実施形態と同様に、ケーブルの余長部11の上端部11a,11bに設けられた筒状部材15と、ケーブル10の筒状部材15が被覆された部分を支持部材14に連結する連結紐16を有する。この余長部保持部材12に、図5Aに示すような連結紐切断具33が設けられている。この連結紐切断具33は、平面視において概ね長方形に形成され、奥側が拡大した切り欠きを有する板状体34と、この板状体34の切り欠きの奥に設けられた切断刃35を有する。板状体34の切り欠きは、平面視において大略長方形に形成され、板状体34の長辺側に形成された開口から複数の連結紐16,16,・・・を切り欠き内へ挿入して、連結紐切断具33を筒状部材15の側面に接して固定するように形成されている。上記板状体34に設けられた長方形の切り欠きの短辺側に、切り欠きの内側に刃先を向けた状態で切断刃35が固定されている。切断刃35の刃先は、切り欠きの長辺に接して巻回された連結紐16が板状体34の移動に伴って短辺側に相対的に移動したときに、この連結紐16切断を行うように、U字状に形成されている。連結紐切断具33の板状体34の切断刃35が設けられた側と反対側に、接続孔36が形成され、この接続孔36に解除用線状部材18の先端の環状部分18aが挿通されて、解除用線状部材18が接続されている。上記連結紐切断具33と解除用線状部材18により、保持解除機構が構成されている。
【0043】
上記構成の保持解除機構が設置された第3実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、地震等により、道路橋2の第1の橋桁3と第2の橋桁4との間に基準値以上の変位が生じると、解除用線状部材18が緊張して張力が発生する。この張力により、解除用線状部材18の先端側に接続された連結紐切断具33が、板状体34の接続孔36の方向に引っ張られて移動する。これにより、連結紐16が板状体34の切り欠き内を切断刃35の側に相対的に移動し、図5Cに示すように連結紐16が切断刃35によって切断されて、ケーブルの余長部11の上端部11a,11bと支持部材14の間の連結が解除される。これにより、余長部保持部材12による余長部11の保持が解除され、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じる変位に追従して余長部11が伸展する。こうして、第3実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造によれば、地震により第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に過大な変位が生じても、ケーブル10の断線や破損を効果的に防止できる。
【0044】
図6Aは、本発明の第4実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が備える余長部保持部材及び保持解除機構を示す側面図であり、図6Bは地震発生時の余長部保持部材及び保持解除機構を示す側面図である。第4実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、余長部保持部材及び保持解除機構以外は、第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1と同様の構成を有する。第4実施形態において、第1実施形態と同様の機能を奏する部分には同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0045】
第4実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が備える余長部保持部材42は、道路橋2の上部工に設けられた支持部材45に連結されている。上記支持部材45は、第1の橋桁3によって支持された床版44の下側面に固定されている。第4実施形態の余長部保持部材42は、支持部材45に対して着脱可能に係合する係合金具46と、ケーブルの余長部11の上端部11a,11bに設けられた筒状部材15と、ケーブル10の筒状部材15が被覆された部分を係合金具46に連結する連結紐16を有する。
【0046】
係合金具46は、図6Aに示すように、側面視において概ねU字状に形成された金具本体47と、U字状の金具本体47の先端部に互いに対向するように配置された係合爪48及び係合ネジ49と、金具本体47に連結された連結紐取付輪50を有する。支持部材45はL字状断面を有し、支持部材45の垂直部の上端が床版44に固定され、支持部材45の水平部に係合金具46が係合している。係合金具46は、U字状の金具本体47の先端部分を支持部材45の水平部に挿入した状態で、係合ネジ49を係合爪48側に螺進させ、係合ネジ49と係合爪48で支持部材45の水平部を挟持することにより、支持部材45に固定するようになっている。支持部材45に固定された係合金具46の下側に位置する結紐取付輪50に、ケーブル10の筒状部材15が被覆された部分を巻回する連結紐16が挿通されて、ケーブルの余長部11の上端部11a,11bが保持されている。上記係合金具46に、保持解除機構としての解除用線状部材18の先端が接続されている。詳しくは、U字状の金具本体47に、解除用線状部材18の先端の環状部分18aが挿通されて、解除用線状部材18が接続されている。
【0047】
上記構成の余長部保持部材42及び保持解除機構が設置された第4実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、地震等により、道路橋2の第1の橋桁3と第2の橋桁4との間に基準値以上の変位が生じると、解除用線状部材18が緊張して張力が発生する。この張力により、係合金具46の金具本体47が引っ張られて、支持部材45に対する係合ネジ49及び係合爪48の係合が解除され、図6Bに示すように支持部材45から係合金具46が離脱する。これにより、余長部保持部材42による余長部11の保持が解除され、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じる変位に追従して余長部11が伸展する。こうして、第4実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造によれば、地震により第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に過大な変位が生じても、ケーブル10の断線や破損を効果的に防止できる。
【0048】
図7Aは、本発明の第5実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が備える余長部保持部材及び保持解除機構を示す側面図であり、図7Bは地震発生時の余長部保持部材及び保持解除機構を示す側面図である。第5実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、余長部保持部材及び保持解除機構以外は、第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1と同様の構成を有する。第5実施形態において、第1実施形態と同様の機能を奏する部分には同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0049】
第5実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造が備える余長部保持部材52は、道路橋2の上部工を構成する床版44の下側面に固定されている。上記床版44は、第1の橋桁3に支持されている。第5実施形態の余長部保持部材52は、床版44に対して着脱可能に磁力で吸着する吸着部53と、ケーブルの余長部11の上端部11a,11bに設けられた筒状部材15と、ケーブル10の筒状部材15が被覆された部分を吸着部53に連結する連結紐16を有する。
【0050】
吸着部53は、ネオジウム磁石等の永久磁石を用いて形成され、地震の発生時においてもケーブルの余長部11を保持できる磁力を有する。吸着部53の吸着面と反対側には接続リング54が取り付けられており、この接続リング54に、ケーブル10の筒状部材15が被覆された部分を巻回する連結紐16が挿通されて固定されている。また、上記接続リング54には、保持解除機構としての解除用線状部材18の先端の環状部分18aが挿通されて、解除用線状部材18が接続されている。
【0051】
上記構成の余長部保持部材52及び保持解除機構が設置された第5実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造は、地震等により、道路橋2の第1の橋桁3と第2の橋桁4との間に基準値以上の変位が生じると、解除用線状部材18が緊張して張力が発生する。この張力により吸着部53が引っ張られて、吸着部53による床版44対する吸着が解除され、床版44から吸着部53が離脱する。これにより、余長部保持部材52による余長部11の保持が解除され、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じる変位に追従して余長部11が伸展する。こうして、第5実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造によれば、地震により第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に過大な変位が生じても、ケーブル10の断線や破損を効果的に防止できる。
【0052】
図8は、第6実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造101が設けられた道路橋2を示す模式図である。本実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造101は、ケーブルの余長部111の形状及び配置位置以外は、第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1と同様の構成を有する。第6実施形態において、第1実施形態と同様の機能を奏する部分には同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0053】
第6実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造101は、ケーブルの余長部111が、第1の橋桁3の端部と、第2の橋桁4の端部とに各々形成された2つの巻回部112,113を含んで形成されている。これらの2つの巻回部112,113は、ケーブル10を互いに反対側に巻回して形成されている。詳しくは、第1の橋桁3の端部の巻回部112は、図8の左側から右側に向かうにつれて、紙面の手前側から奥側に向かって巻回されている。これに対して、第2の橋桁4の端部の巻回部113は、図8の左側から右側に向かうにつれて、紙面の奥側から手前側に向かって巻回されている。これらの巻回部の上端部112a,113aが、余長部保持部材12,12によって各々支持されている。
【0054】
第6実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造101では、余長部保持部材12,12の保持解除機構として機能する2つの解除用線状部材18,18の基端部が、巻回部112,113の設置された橋桁3,4と異なる橋桁4,3に連結されている。詳しくは、第1の橋桁3の端部に配置された巻回部112を保持する余長部保持部材12は、連結紐16に、解除用線状部材18の先端側の環状部分18aが係合していると共に、この解除用線状部材18の基端部が、第2の橋桁4側の横桁20Bに連結されている。一方、第2の橋桁4の端部に配置された巻回部113を保持する余長部保持部材12は、連結紐16に、解除用線状部材18の先端側の環状部分18aが係合していると共に、この解除用線状部材18の基端部が、第1の橋桁3側の横桁20Aに連結されている。
【0055】
上記構成の橋梁添架ケーブルの取付構造101は、地震等により、道路橋2の第1の橋桁3と第2の橋桁4との間に基準値以上の変位が生じると、各々の橋桁3,4に連結された解除用線状部材18,18が緊張して張力が発生する。この張力により、2つの解除用線状部材18,18の先端側の環状部分18a,18aに係合している余長部保持部材12,12の連結紐16,16が切断され、余長部の上端部112a,113aと支持部材14の間の連結が解除される。こうして、余長部保持部材12,12による余長部111の巻回部112,113の保持が解除される。その結果、ケーブルの余長部111は、2つの巻回部112,113の巻回が解かれ、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じる変位に追従して伸展する。ここで、2つの巻回部112,113は、互いに反対側に巻回されているので、解かれると、巻回部112,113の各々の捻じれが互いに解消されて、ケーブル10は捻じれが生じることなく伸展できる。こうして、本実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造101によれば、地震等により橋桁3,4の間に大きな変位が生じても、ケーブル10に捻じれや断線等が生じる不都合を効果的に防止でき、高い耐震性を発揮することができる。
【0056】
図9は、第7実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造121が設けられた道路橋2を示す模式図である。本実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造121は、ケーブルの余長部131の形状以外は、第1実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1と同様の構成を有する。第7実施形態において、第1実施形態と同様の機能を奏する部分には同一の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0057】
第7実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造121は、第1の橋梁3の端部に、ケーブル10を山型に屈曲してなる余長部131が設けられている。この山型の余長部131の上端部131aが、余長部保持部材12によって第1の橋梁3の支持部材14に支持されている。
【0058】
上記構成の橋梁添架ケーブルの取付構造121は、地震等により、道路橋2の第1の橋桁3と第2の橋桁4との間に基準値以上の変位が生じると、各々の橋桁3,4に連結された解除用線状部材18が緊張して張力が発生する。この張力により、解除用線状部材18の先端側の環状部分18aに係合している余長部保持部材12の連結紐16,16が切断され、余長部の上端部131aと支持部材14の間の連結が解除される。こうして、余長部保持部材12による余長部131の保持が解除される。その結果、ケーブルの余長部131が、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じる変位に追従して伸展する。こうして、本実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造121によれば、地震等により橋桁3,4の間に大きな変位が生じても、ケーブル10に捻じれや断線等が生じる不都合を効果的に防止でき、高い耐震性を発揮することができる。
【0059】
上記第1、第6及び第7の実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1,101,121は、ケーブルの余長部11,111,131を、連結紐16を含む余長部保持部材12で支持すると共に、解除用線状部材18による保持解除機構で余長部保持部材12の保持機能を解除したが、他の余長部保持部材や保持解除機構を備えてもよい。例えば、第1、第6及び第7の実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1,101,121は、第2実施形態の連結紐切断装置23を用いた保持解除機構を備えてもよく、第3実施形態の連結紐切断具33を用いた保持解除機構を備えてもよく、第4実施形態の係合金具46を用いた余長部保持部材42を備えてもよく、第5実施形態の吸着部53を用いた余長部保持部材52を備えてもよい。
【0060】
また、上記各実施形態の橋梁添架ケーブルの取付構造1,101,121において、余長部保持部材の線状部材としてビニロン製の連結紐16を用いると共に、保持解除機構の引張部材や切断部材を形成する線状部材としてステンレス製ワイヤの解除用線状部材18を用いたが、余長部保持部材の線状部材と保持解除機構の線状部材は、これらの材料に限定されない。保持解除機構の線状部材が余長部保持部材の線状部材よりも高い強度を有していれば、材料は特に限定されない。
【0061】
また、上記各実施形態において、保持解除機構が作動する第1の橋桁3と第2の橋桁4との間の変位の基準値は、第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じ得る状況に応じて、適宜設定することができる。例えば、上記基準値は、第1の橋桁3と第2の橋桁4が、橋脚5によって支持された状態で取り得る最大の変位に設定することができる。また、地震時に、橋脚5から離脱した第1の橋桁3及び/又は第2の橋桁4が支持される地震時支持機構を設け、この地震時支持機構に支持された第1の橋桁3と第2の橋桁4の間に生じる変位を基準値に設定してもよい。
【0062】
また、第1乃至第7実施形態において、橋梁添架ケーブルの取付構造1,101,121を、第1部材としての第1の橋桁3と、第2部材としての第2の橋桁4との間に設置したが、第1部材と第2部材は橋桁に限定されない。例えば、第1部材及び第2部材として、橋桁と橋台を用いる等、橋梁を構成し、変位が生じる可能性のある部材と部材との間に、本発明を広く適用することができる。
【0063】
また、上記各実施形態は、本発明の橋梁添架ケーブルの取付構造を、橋桁3,4を備える道路橋2に適用された場合について例示したが、I桁や箱桁等の種々の橋桁を有する橋梁に適用でき、橋梁の構造は限定されない。また、橋梁の用途は道路に限定されず、鉄道、水道、ガス及び電力等、種々の用途の橋梁に、本発明の橋梁添架ケーブルの取付構造を適用できる。
【0064】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0065】
1,101,121 橋梁添架ケーブルの取付構造
2 道路橋
3 第1の橋桁
4 第2の橋桁
6,7 支承
8,9 ケーブルラック
10 ケーブル
11,111,131 ケーブルの余長部
11a,11b,131a 余長部の上端部
12,42,52 余長部保持部材
14,45 支持部材
15 筒状部材
16 連結紐
18 解除用線状部材
18a 解除用線状部材の環状部分
20,20A,20B 横桁
23 連結紐切断装置
27,35 切断刃
33 連結紐切断具
44 床版
46 係合金具
53 吸着部
112,113 巻回部
112a,113a 巻回部の上端部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9