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特開2023-79576インサートブロー成形体、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079576
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】インサートブロー成形体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/20 20060101AFI20230601BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20230601BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20230601BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20230601BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20230601BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B29C49/20
B32B27/04 Z
B29C49/48
B29C49/04
B29C70/42
B29C70/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193097
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390014029
【氏名又は名称】株式会社八木熊
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 晴司
(72)【発明者】
【氏名】内田 和也
(72)【発明者】
【氏名】替田 智文
【テーマコード(参考)】
4F100
4F202
4F205
4F208
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100BA02
4F100BA15
4F100DG04B
4F100DG12B
4F100DH01B
4F100DH02B
4F100EC03
4F100GB16
4F100JB16A
4F100JB16B
4F202AD05
4F202AD16
4F202AD19
4F202AD20
4F202AG07
4F202AH55
4F202CA15
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB13
4F202CB22
4F202CQ01
4F202CQ05
4F205AD05
4F205AD12
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH55
4F205HA14
4F205HA17
4F205HA24
4F205HA34
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC05
4F205HK03
4F205HK04
4F208AD16
4F208AD20
4F208AG03
4F208AG07
4F208AH55
4F208LA01
4F208LA09
4F208LB01
4F208LB12
4F208LG04
4F208LG22
4F208LJ09
(57)【要約】
【課題】 圧力容器等に使用することができ、内側の樹脂層と外側のFRP層の剥離強度に優れ、かつ、使用済みとなった場合でもリサイクル性にも優れたインサートブロー成形体、及びその効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】 本体樹脂層の外側にインサート部品から成るFRP補強層を一体に備え、かつ、前記FRP補強層を、方向性を持たせたフィラメント群をマトリックス樹脂で結合して形成すると共に、前記FRP補強層のマトリックス樹脂と前記本体樹脂層の主材料に相溶性を有する熱可塑性樹脂をそれぞれ使用して、前記本体樹脂層と前記FRP補強層を熱融着により一体化してインサートブロー成形体を構成した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体樹脂層の外側にインサート部品から成るFRP補強層を一体に備え、かつ、前記FRP補強層が、方向性を持たせたフィラメント群をマトリックス樹脂で結合して形成されると共に、前記FRP補強層のマトリックス樹脂と前記本体樹脂層の主材料に相溶性を有する熱可塑性樹脂がそれぞれ使用されて、前記本体樹脂層と前記FRP補強層が熱融着により一体化されている、インサートブロー成形体。
【請求項2】
前記FRP補強層の少なくとも一部のフィラメント群が前記本体樹脂層に対してヘリカル巻き、パラレル巻き、インプレーン巻き、またはポーラ巻きの配向となっている、請求項1記載のインサートブロー成形体。
【請求項3】
前記FRP補強層が、フィラメント群を一方向に配向して樹脂を含侵させたUDテープまたはUDシート、前記UDテープを所定長さに切断したチョップドシートの積層体、或いはフィラメント群の方向を揃えて束ねたストランドを織りあげて樹脂を含侵させた織物シートから形成されている、請求項1記載のインサートブロー成形体。
【請求項4】
前記FRP補強層が、複数のインサート部品を隣接配置して形成されると共に、隣り合うインサート部品の境界をまたいで前記本体樹脂層が形成されている、請求項1~3の何れか一つに記載のインサートブロー成形体。
【請求項5】
前記FRP補強層のマトリックス樹脂と前記本体樹脂層の主材料が同種の熱可塑性樹脂である、請求項1~4の何れか一つのインサートブロー成形体。
【請求項6】
請求項1記載のインサートブロー成形体の製造方法であって、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とするFRPの予備成形体をインサート部品として金型内に設置した後、前記予備成形体のマトリックス樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂から成るパリソンを金型内で膨張させて本体樹脂層を形成すると共に、当該本体樹脂層と前記予備成形体を熱融着により一体化してFRP補強層を形成する、インサートブロー成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート部品を挿入してブロー成形されたインサートブロー成形体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧水素容器等の圧力容器には金属容器が使用されていたが、近年では樹脂製の容器(ライナー)の外側に炭素繊維等のFRPから成る外殻を形成したものが使用されている。またFRPから成る外殻の形成方法としては、射出成形またはブロー成形した樹脂製容器の外周に炭素繊維をフィラメントワインディング法により巻き付け、巻き付けた炭素繊維等のフィラメント群に樹脂を含侵させて形成する方法が一般的に採用されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の樹脂製容器と外殻から成る圧力容器は、樹脂製容器の材料に熱可塑性樹脂を使用する一方、FRPのマトリックス樹脂に熱硬化性樹脂を使用していたため、容器本体とFRPから成る外殻を熱融着させることができなかった。またFRPに熱硬化性樹脂を使用することで熱膨張率にも違いが生じ、容器本体とFRP補強層に層間剥離が生じ易いという欠点があった。
【0004】
更に上記従来の圧力容器においては、使用済みの容器をリサイクルすることなく産業廃棄物として処分することが多かったため、環境面の問題も大きかった。圧力容器を高温で焼却し、炭素繊維だけ取り出して再利用する方法もあるが、樹脂を焼却処理して除去するためにはかなりの高温で焼却しなければならなかったため、リサイクルに必要なコストが高く付き、採算面で現実的な方法とはいえなかった。
【0005】
また上記フィラメントワインディング法を利用して外殻を形成する方法では、フィラメントを張力を掛けて巻くために容器本体にかなりの強度が求められるだけでなく、様々な形状の容器に対し位置を調整してフィラメントを巻く技術が求められたため、精度良く効率的に製造を行うことが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-183935号公報
【特許文献2】特開2021-171978号公報
【特許文献3】特許第6490976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを課題としており、要約すると圧力容器等に使用することができ、内側の樹脂層と外側のFRP層の剥離強度に優れ、かつ、使用済みとなった場合でもリサイクル性にも優れたインサートブロー成形体、及びその効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決する手段として、本体樹脂層の外側にインサート部品から成るFRP補強層を一体に備え、かつ、前記FRP補強層を、方向性を持たせたフィラメント群をマトリックス樹脂で結合して形成すると共に、前記FRP補強層のマトリックス樹脂と前記本体樹脂層の主材料に相溶性を有する熱可塑性樹脂をそれぞれ使用して、前記本体樹脂層と前記FRP補強層を熱融着により一体化してインサートブロー成形体を構成した。
【0009】
また本発明では、上記FRP補強層のフィラメント群を上記本体樹脂層に対してヘリカル巻き、パラレル巻き、インプレーン巻き、またはポーラ巻きの配向とすることで、本体樹脂層の補強効果を高めることができる。
【0010】
また本発明では、上記FRP補強層を、フィラメント群を一方向に配列して樹脂を含侵させたUDテープまたはUDシート、前記UDテープを所定長さに切断したチョップドシートの積層体、或いはフィラメント群の方向を揃えて束ねたストランドを織りあげて樹脂を含侵させた織物シートから形成することにより、本体樹脂層の補強効果を高めることができる。
【0011】
また本発明では、上記FRP補強層を、複数のインサート部品を隣接配置して形成すると共に、隣り合うインサート部品の境界をまたいで上記本体樹脂層を形成することにより、部位によって材料や形状が異なるFRP補強層を一体に形成することができる。
【0012】
また本発明では、上記FRP補強層のマトリックス樹脂と上記本体樹脂層の主材料に、融点や熱膨張率が同じ同種の熱可塑性樹脂を使用することにより剥離強度をより高めることができる。
【0013】
また本発明では、上記インサートブロー成形体の効率的な製造方法として、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とするFRPの予備成形体をインサート部品として金型内に設置した後、前記予備成形体のマトリックス樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂から成るパリソンを金型内で膨張させて本体樹脂層を形成すると共に、当該本体樹脂層と前記予備成形体を熱融着により一体化してFRP補強層を形成する方法を採用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインサートブロー成形体は、内側の本体樹脂層と外側のFRP補強層のマトリックス樹脂に相溶性を有する熱可塑性樹脂を使用しているため、本体樹脂層とFRP補強層の熱融着性を高めて剥離強度を向上させることができる。また熱膨張率が近いまたは同じ熱可塑性樹脂を使用することで、温度変化が大きい環境で使用する場合でも本体樹脂層とFRP補強層を剥がれ難くすることができる。
【0015】
また本発明のインサートブロー成形体は、本体樹脂層およびFRP補強層の両方に熱可塑性樹脂を使用しているため、圧力容器等が使用済みになった場合でも、容器(繊維)を細かく粉砕して樹脂を溶融させることでFRPのペレットとして再利用することができ、低コストでリサイクルを行うことができる。
【0016】
また本発明のインサートブロー成形体は、FRP補強層のインサート部品を金型内に設置してブロー成形を行うだけでよいため、効率的に製造を行うことができる。更にFRP補強層のインサート部品は、マンドリル等を使用して予備成形することができるため、フィラメントワインディング法のような本体樹脂層の強度(厚み)も求められない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明における第一実施形態の筒型のインサートブロー成形体を示す全体斜視図である。
図2】本発明における第一実施形態の筒型のインサートブロー成形体の縦断面を示す断面拡大図である。
図3】本発明における第一実施形態のインサートブロー成形体の製造方法を示す工程説明図である。
図4】本発明における第二実施形態の容器型のインサートブロー成形体を示す全体斜視図である。
図5】本発明における第二実施形態の容器型のインサートブロー成形体の縦断面を示す全体断面図である。
図6】本発明における第二実施形態のインサートブロー成形体の製造方法を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
『第一実施形態』
本発明の第一実施形態を図1図2に基づいて説明する。なお図中、符号1で指示するものは、インサートブロー成形体であり、符号11で指示するものは、本体樹脂層である。また符号12で指示するものは、FRP補強層である。なお本明細書中において、「フィラメント」は、繊維長100mm以上の長繊維や連続繊維またはそれを切断したものを意味し、「ストランド」は、フィラメントを一方向に揃えて束ねた状態のもの(トウ等)を意味する。また「UDテープ」は、フィラメントを長さ方向に揃えてテープ状に配列したものを意味し、「UDシート」は、フィラメントを一方向に揃えてシート状に配列したものを意味する。
【0019】
「インサートブロー成形体の構成及び用途」
[1]基本構成について
本実施形態のインサートブロー成形体1の基本構成について説明する。本実施形態では、図1及び図2に示すように本体樹脂層11の外側にFRP補強層11を形成し、二層構造の積層体としてパイプ状のインサートブロー成形体1を構成している。また本体樹脂層11とFRP補強層12の主材料には、相溶性を有する熱可塑性樹脂をそれぞれ使用し、本体樹脂層11とFRP補強層12を熱融着により一体化している。FRP補強層11は、ブロー成形時に金型内に挿入するインサート部品から形成し(詳しくは後述する)、方向性を持たせたフィラメント群をマトリックス樹脂で結合して形成している。これにより剥離強度及びリサイクル性に優れたインサートブロー成型体1を構成できる。
【0020】
[2]本体樹脂層について
[2-1]材料
次に上記インサートブロー成形体1の各構成要素について説明する。まず上記本体樹脂層11の材料に関しては、本実施形態ではポリカーボネートを主材料に使用しているが、FRP補強層12のマトリックス樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂であれば他の材料を選択することもでき、例えば、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、またはこれらを主材料とするポリマーアロイ等を使用できる。また本実施形態では、本体樹脂層11を単層構造としているが強度や機能性(例えば、ガス遮断性や耐薬品性、ガス遮断性)の観点から積層構造とすることもでき、その場合には異なる材料の樹脂層を組み合わせることができる。なお本体樹脂層11とFRP補強層12の剥離強度やリサイクル性の観点からはFRP補強層12のマトリックス樹脂と融点や熱膨張率が同じ同種の熱可塑性樹脂を主材料に用いるのが好ましい。
【0021】
[2-2]形状
上記本体樹脂層11の形状については、本実施形態ではインサート部品であるFRP補強層12の形状に対応した円筒状となっているが、FRP補強層12の形状に応じて任意に変更することができる。また本体樹脂層11の厚み(肉厚)については、筒状(パイプ状)のインサートブロー成形体1の用途や求められる強度に応じて任意に変更でき、厚みを均一にすること(偏肉を抑えること)が望ましいが意図的に不均一に形成すること(偏肉させること)もできる。また本実施形態では、無底筒状に形成しているが有底筒状に形成することもできる。
【0022】
[3]FRP補強層について
[3-1]フィラメント材料
上記FRP補強層12の繊維材料については、本実施形態では炭素繊維を使用しているが、フィラメント材料としては、炭素繊維以外のガラス繊維やアラミド繊維、ケプラー繊維、その他の合成繊維、化学繊維、天然繊維等を使用することができる。また本実施形態では、炭素繊維のUDテープをテープワインディング法によりマンドレルにヘリカル巻きしてFRP補強層12の予備成形体である筒状のインサート部品を形成しているが、炭素繊維のストランド(トウ)をフィラメントワインディング法によりマンドレルに巻き付けて形成することもできる。このようなフィラメント群を巻回する構造は、特にインサートブロー成形体1の筒胴部の補強構造として好適に採用できる。
【0023】
上記FRP補強層12のフィラメント群の配向としては、本実施形態では本体樹脂層11に対してヘリカル巻きの配向となっているが、パラレル巻きやインプレーン巻き、ポーラ巻きの配向とすることもできる。なお「ヘリカル巻き」とは、円筒の軸に対して角度±θをもって螺旋状に巻き付ける方法を意味し、「パラレル巻き」とは、円筒の軸に対してほぼ直角となる方向に巻き付ける方法を意味し、「インプレーン巻き」とは、円筒の軸方向に巻き付ける方法を意味し、「ポーラ巻き」とは、球体の子午線方向に巻き付ける方法を意味する。
【0024】
その他にも、上記FRP補強層12としては、フィラメント群を一方向に配向して樹脂を含侵させたUDテープまたはUDシート、UDテープやUDシートを所定長さに切断したチョップドシートの積層体、或いはフィラメント群の方向を揃えて束ねたストランドを所定長さに切断したチョップドストランドの積層体、また複数のストランドを織りあげて樹脂を含侵させた織物シートから形成することもできる。
【0025】
なお上記FRP補強層12の材料にUDシートを使用する場合には、複数のUDシートを各シートの繊維方向が重ならにように(例えば、0°,90°方向、0°,45°,90°,135°方向など)積層して一体化したものを筒状に成形してインサート部品として使用することができる。また上記FRP補強層12の材料にチョップドシートを使用する場合には、多数のチョップドシートを各シートの繊維方向がバラバラになるようにランダムに積層して一体化したもの(慣用名称としては「ランダムシート」)を筒状に成形してインサート部品として使用することができる。また上記FRP補強層12の材料に織物シートを使用する場合には、ストランドを平織りや多軸織りしたものを筒状に成形してインサート部品として使用できる。その他にも射出成形されたインサート部品を上記FRP補強層12の材料として使用することができる。
【0026】
上記FRP補強層12の材料に、フィラメント群の配向や材料が異なるシートを積層して構成することもできる。例えば、UDテープをテープワインディングして筒状に成形したシート層の外側に、チョップドシートをランダムに積層したシート層を形成した多層構造や、炭素繊維フィラメントを用いたシート層の外側に、ガラス繊維フィラメントを用いたシート層を形成した多層構造を採用することもできる。上記FRP補強層12の材料としてフィラメント以外の短繊維やミルドファイバーを併用することもできる。
【0027】
[3-2]マトリックス樹脂
上記FRP補強層12のマトリックス樹脂に関しては、本実施形態ではポリカーボネートを主材料に使用しているが、本体樹脂層11と相溶性を有する熱可塑性樹脂であれば他の材料を選択することもでき、例えば、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、またはこれらを主材料とするポリマーアロイ等を使用できる。なお本体樹脂層11とFRP補強層12の剥離強度やリサイクル性の観点からは本体樹脂層11と同じ熱可塑性樹脂を主材料に用いるのが好ましい。
【0028】
[3-3]形状
上記FRP補強層12(及びインサート部品)の形状に関しては、本実施形態では円筒状の形状を採用しているが、楕円筒状や角筒状の形状を採用することもできる。またFRP補強層12の厚み(肉厚)については、筒状(パイプ状)のインサートブロー成形体1の用途や求められる強度に応じて任意に変更でき、局部的に単層構造と積層構造を使い分けたり、フィラメント材料を使い分けたりすることもできる。また本実施形態では、無底筒状に形成しているが有底筒状に形成することもできる。
【0029】
[4]用途について
本実施形態におけるパイプ状のインサートブロー成形体1は、構造材料などの建築材料や車両部品、航空機部品、各種装置部品などに利用することができ、特に強度と軽量性が求められる用途に適している。また上記インサートブロー成形体1が不要となった場合には、パイプ状のインサートブロー成形体1を細かく切断処理することでFRP樹脂ペレットとして再利用できる。この際、本体樹脂層11とFRP補強層12のマトリックスに同じ熱可塑性樹脂を使用することで成形材料として再利用し易くなる。
【0030】
「インサートブロー成形体の製造方法」
次に本実施形態のインサートブロー成形体1の製造方法について説明する。まず図3(a)に示すように熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とするFRPの予備成形体Cをインサート部品としてブロー成形機の金型M・M内に設置した後、予備成形体Cのマトリックス樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂から成るパリソンPを金型M・M内に降ろす。その後、図3(b)に示すように金型M・Mを閉じ型締めすると共に、吹き込んだエアがパリソンPの上側に逃げないようにエア封止具A・A(パンチャー)でパリソンPの上側をエア吹き出し口に押し付ける。そして、図3(c)に示すようにエア吹き出し口からエアを吹き込みパリソンPを膨張させて予備成形体Cの内側に張り付け、予備成形体CのFRP補強層12とパリソンPの本体樹脂層11を熱融着させる。なお予備成形体Cの内側を予備加熱して本体樹脂層11とFRP樹脂層12の熱融着性を高めることもできる。これにより本実施形態のインサートブロー成形体1を効率的に製造できる。
【0031】
『第二実施形態』
「インサートブロー成形体の構成及び用途」
[1]基本構成について
本発明の第二実施形態を図4図5に基づいて説明する。本実施形態では、図4(a)(b)及び図5に示すようにインサートブロー成形体1を容器型に形成している。また容器の部位(開口部、胴部、底部)に応じて異なるインサート部品(予備成形体C1・C2・C3)を隣接配置してFRP補強層12を形成すると共に、隣り合うインサート部品(予備成形体C1・C2・C3)の境界をまたいで本体樹脂層11を形成している。これにより部位によって材料や形状が異なるFRP補強層12を一体に形成できる。なおFRP補強層12の異なるインサート部品(予備成形体C1・C2・C3)の境界面もブロー成形時に熱融着して一体化される。
【0032】
[2]本体樹脂層及びFRP補強層について
上記本体樹脂層11に関しては、材料に関しては第一実施形態と同様である。上記FRP補強層12の材料に関しては、本実施形態では容器の胴部に第一実施形態と同様のUDテープを筒状に巻いたインサート部品を使用し、容器の開口部及び底部にチョップドシートを積層したランダムシートから成るインサート部品を使用しているが、インサート部品の材料の組み合わせは任意に変更できる。上記本体樹脂層11及びFRP補強層12の形状に関しては、用途に応じて任意の容器形状および厚みで形成できる。その他については第一実施形態と同様である。
【0033】
[4]用途について
本実施形態における容器状のインサートブロー成形体1は、高圧水素容器等の圧力容器や燃料装置用容器、ガス貯蔵容器などに利用することができ、特に強度と軽量性が求められる用途に適している。また上記インサートブロー成形体1が不要となった場合には、容器状のインサートブロー成形体1を細かく粉砕処理することでFRP樹脂ペレットとして再利用できる。
【0034】
「インサートブロー成形体の製造方法」
次に本実施形態のインサートブロー成形体1の製造方法について説明する。まず図6(a)に示すように熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とするFRPの予備成形体C1・C2・C3をインサート部品としてブロー成形機の金型M・M内に設置する。この際、複数の予備成形体C1・C2・C3を隣接配置した状態(上下に重ねた状態)で固定する。なお予備成形体C1・C2・C3の固定方法は特に限定されないが、予備成形体C1・C2・C3および金型に凹凸を設けて嵌合固定する方法などを好適に採用できる。その後、予備成形体C1・C2・C3のマトリックス樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂から成るパリソンPを金型M・M内に降ろす。
【0035】
そして、図6(b)に示すように金型M・Mを閉じ型締めすると共に、吹き込んだエアがパリソンPの上側に逃げないようにエア封止具A・A(パンチャー)でパリソンPの上側をエア吹き出し口に押し付ける。そして、図6(c)に示すようにエア吹き出し口からエアを吹き込みパリソンPを膨張させて予備成形体Cの内側に張り付け、予備成形体CのFRP補強層12とパリソンPの本体樹脂層11を熱融着させる。なお予備成形体Cの内側を予備加熱して本体樹脂層11とFRP樹脂層12の熱融着性を高めることもできる。これにより本実施形態のインサートブロー成形体1を効率的に製造できる。
【符号の説明】
【0036】
1 インサートブロー成形体
11 本体樹脂層
12 FRP補強層
C 予備成形体
P パリソン
A エア封止具
M 金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6