(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079593
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】床版取替え工法に適用されるスタッドジベルの塗装方法および塗装ローラー
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230601BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
E01D19/12
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193128
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591211917
【氏名又は名称】川田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514172954
【氏名又は名称】川田テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 尚文
(72)【発明者】
【氏名】臂 公博
(72)【発明者】
【氏名】志村 勉
(72)【発明者】
【氏名】辻角 学
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059AA14
2D059GG39
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】橋梁の新設床版の取替え工法において、狭小部位に溶植されたスタッドジベルの外表面に塗料を効率的に塗布する。
【解決手段】床版取替え工法につき、該貫通開孔にコンクリートを打設する前段階で該スタッドジベルの外表面に塗料を塗布するに当たり、回転軸が水平投影面内で互いに交差し、かつ、該スタッドジベルの軸芯に沿って回転可能に配列された少なくとも二組のローラー対を備えた塗装ローラーを準備し、該塗装ローラーのローラー対のそれぞれを、塗装を施すべきスタッドジベルの頭頂部から差し入れて該ローラー対の各ローラーの相互間にて該スタッドジベルを挟み込み、その状態を維持したまま該ローラー対をスタッドジベルの軸芯に沿い往復移動させるとともに、該スタッドジベルの軸芯の周りに適宜旋回させることにより該スタッドジベルの外表面に塗料を塗布する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設床版を鋼桁から撤去したのち、既設床版が撤去された鋼桁のケレンおよび塗装作業を実施し、ケレンおよび塗装作業を終えた鋼桁に対して新設床版を設置するとともに、該新設床版に形成された貫通孔を通して鋼桁のフランジ上面にスタッドジベルを溶植し、さらに、該貫通孔にコンクリートを打設して該スタッドジベルを埋設する一連の工程を経て橋梁の床版を取替える床版取替え工法につき、該貫通開孔にコンクリートを打設する前段階で該スタッドジベルの外表面に塗料を塗布するに当たり、
回転軸が水平投影面内で互いに交差し、かつ、該スタッドジベルの軸芯に沿って回転可能に配列された少なくとも二組のローラー対を備えた塗装ローラーを準備し、該塗装ローラーのローラー対のそれぞれを、塗装を施すべきスタッドジベルの頭頂部から差し入れて該ローラー対の各ローラーの相互間にて該スタッドジベルを挟み込み、その状態を維持したまま該ローラー対をスタッドジベルの軸芯に沿い往復移動させるとともに、該スタッドジベルの軸芯の周りに適宜旋回させることにより該スタッドジベルの外表面に塗料を塗布することを特徴とするスタッドジベルの塗装方法。
【請求項2】
下端部が鋼桁のフランジ上面に溶接、固定され、該下端部を起点に起立姿勢に保持されたスタッドジベルの外表面に塗料を塗布する塗装ローラーであって、
前記スタッドジベルを径方向の両側から挟み込み、該スタッドジベルの軸芯に沿う回転により該スタッドジベルの外表面に塗料を塗布するローラー対を備え、
該ローラー対は、回転軸が水平投影面内で互いに交差し、かつ、該スタッドジベルの軸芯に沿って配列された少なくとも二組からなることを特徴とするスタッドジベルの塗装ローラー。
【請求項3】
前記ローラー対は、該ローラー対を構成するローラーの軸端にそれぞれ連係し、該ローラーを互いに引き寄せる付勢力を付加して該スタッドジベルの外表面に対するローラーの接触圧を高める弾性部材を有することを特徴とする請求項2に記載したスタッドジベルの塗装ローラー。
【請求項4】
前記ローラー対のうち、最も下位に位置するローラー対は、そのローラー対を構成するローラーの相互間に形成される下開き形状をなす隙間において配置され、先端部分がスタッドジベルの外表面に接触し、下面がスタッドジベルを固定する鋼桁のフランジ上面に接触して塗料を塗布する少なくとも1つの塗布手段を有することを特徴とする請求項2または3に記載したスタッドジベルの塗装ローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の床版取替え工法において、鋼桁のフランジ上面に設けられるスタッドジベルの外表面に防錆処理を施すために塗料を塗布するのに好適なスタッドジベルの塗装方法および塗装ローラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁の床版取替え工法としては、通常、既設床版の鋼桁からの撤去、既設床版が撤去された鋼桁のケレンおよび塗装、新設床版の鋼桁への設置、鋼桁のフランジ上面へのスタッドジベルの溶植、コンクリートの打設によるスタッドジベルの埋設、という工程を経て行われるのが一般的である。
【0003】
ところで、コンクリートの打設によるスタッドジベルの埋設に際しては、その前段階でスタッドジベルの外表面に塗装を施して腐食の回避を図ることが望まれるところ、スタッドジベルの溶植は、新設床版に形成された狭小な貫通孔を通して行われるのが普通であり、スタッドジベルの外表面に塗料を効率的に塗装するのが難しい状況にあった。
【0004】
この点に関する先行技術としては、例えば特許文献1が参照されるが、ここに開示された技術は、トタン屋根の一部である瓦棒への塗料の塗布に係るものであって、橋梁の床版取替え工事において行われるスタッドジベルへの塗装に適用することができないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、橋梁の床版取替え工法において、狭小部位に溶接、固定されたスタッドジベルであっても、該スタッドジベルの外表面に塗料を効率的に塗装することができるスタッドジベルの塗装方法および塗装ローラーを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、既設床版を鋼桁から撤去したのち、既設床版が撤去された鋼桁のケレンおよび塗装作業を実施し、ケレンおよび塗装作業を終えた鋼桁に対して新設床版を設置するとともに、該新設床版に形成された貫通孔を通して鋼桁のフランジ上面にスタッドジベルを溶植し、さらに、該貫通孔にコンクリートを打設して該スタッドジベルを埋設する一連の工程を経て橋梁の床版を取替える床版取替え工法につき、該貫通開孔にコンクリートを打設する前段階で該スタッドジベルの外表面に塗料を塗布するに当たり、
回転軸が水平投影面内で互いに交差し、かつ、該スタッドジベルの軸芯に沿って回転可能に配列された少なくとも二組のローラー対を備えた塗装ローラーを準備し、該塗装ローラーのローラー対のそれぞれを、塗装を施すべきスタッドジベルの頭頂部から差し入れて該ローラー対の各ローラーの相互間にて該スタッドジベルを挟み込み、その状態を維持したまま該ローラー対をスタッドジベルの軸芯に沿い往復移動させるとともに、該スタッドジベルの軸芯の周りに適宜旋回させることにより該スタッドジベルの外表面に塗料を塗布することを特徴とするスタッドジベルの塗装方法である。
【0008】
また、本発明は、下端部が鋼桁のフランジ上面に溶接、固定され、該下端部を起点に起立姿勢に保持されたスタッドジベルの外表面に塗料を塗布する塗装ローラーであって、
前記スタッドジベルを径方向の両側から挟み込み、該スタッドジベルの軸芯に沿う回転により該スタッドジベルの外表面に塗料を塗布するローラー対を備え、
該ローラー対は、回転軸が水平投影面内で互いに交差し、かつ、該スタッドジベルの軸芯に沿って配列された少なくとも二組からなることを特徴とするスタッドジベルの塗装ローラーである。
【0009】
上記の構成からなる塗装ローラーにおいて、前記ローラー対は、該ローラー対を構成するローラーの軸端にそれぞれ連係し、該ローラーを互いに引き寄せる付勢力を付加して該スタッドジベルの外表面に対するローラーの接触圧を高める弾性部材を有すること、また、前記ローラー対のうち、最も下位に位置するローラー対は、そのローラー対を構成するローラーの相互間に形成される下開き形状をなす隙間において配置され、先端部分がスタッドジベルの外表面に接触し、下面がスタッドジベルを固定する鋼桁のフランジ上面に接触して塗料を塗布する少なくとも1つの塗布手段を有すること、が課題解決のための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ローラー対にてスタッドジベルを径方向の両側から挟み込み、該ローラー対をスタッドジベルの軸芯に沿うように往復移動させるとともに、該ローラー対を、スタッドジベルの軸芯の周りに適宜旋回させることにより簡単かつ確実に、スタッドジベルに塗料を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】床版取替え工法において、鋼桁のフランジ上面に新設床版を設置し、該新設床版に形成された貫通孔を通してスタッドジベルを溶植させた状態を示した外観斜視図である。
【
図3】本発明にしたがうスタッドジベルの塗装ローラーの実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。
【
図4】
図1に示したスタッドジベルの塗装ローラーの正面を示した図である。
【
図5】
図1に示したスタッドジベルの塗装ローラーの側面を示した図である。
【
図6】
図1に示したスタッドジベルの塗装ローラーの底面を示した図である。
【
図7】本発明にしたがう塗装ローラーを用いてスタッドジベルに塗料を塗布する要領の説明図である。
【
図8】本発明にしたがう塗布ローラーの他の実施の形態を示した外観斜視図である。
【
図9】
図7に示した塗布ローラーの正面を示した図である。
【
図10】
図7に示した塗布ローラーの底面を示した図である。
【
図11】
図7~9に示した塗布ローラーの構成部材の一部分のみを取り出して示した外観斜視図である。
【
図12】塗料の塗り残し領域を示した外観斜視図である。
【
図13】塗布手段とスタッドジベルの位置関係を示した図である。
【
図14】本発明にしたがう塗装ローラーを用いて塗料を塗布した場合における塗料の塗布状況を示した外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は、橋梁の床版取替え工法において、鋼桁Nのフランジ上面N1に新設床版Hを設置し、該新設床版Hに形成された貫通孔hを通してスタッドジベルSを鋼桁Nのフランジ上面N1に溶植させた状態を示した外観斜視図であり、
図2は、その断面を示した図である。本発明は、貫通孔hにおいて溶植されたスタッドジベルSに塗料を塗布するのに好適な技術に係るものである。
【0013】
図3は、本発明にしたがうスタッドジベルの塗装ローラーの実施の形態を模式的に示した外観斜視図であり、
図4は、
図3に示したスタッドジベルの塗装ローラーの正面を示した図であり、
図5は、
図3に示したスタッドジベルの塗装ローラーの側面を示した図であり、
図6は、
図3に示したスタッドジベルの塗装ローラーの底面を示した図である。
【0014】
図3~6における符号1、2は、フレームFに回転可能に保持され、スタッドジベルSの軸芯に沿って配置された二組のローラー対である。ローラー対1は、ローラー1aを2つ組み合わせたもので構成されており、ローラー対2は、ローラー2aを2つ組み合わせたもので構成されている。ローラー対1、2は、塗料の効率的な塗布ができるように、回転軸が投影水平面内で互いに交差するように、より好ましくは直交するように配置されたものを用いる。ローラー1a、ローラー2aの本体部分は、塗料を適度に吸収するとともに吸収された塗料を塗布できるパフやスポンジ、毛足が適度に調整された刷毛、不織布等が適用されるが、材質等には限定されない。
【0015】
また、
図3~6における符号3、4は、ローラー1aの軸端、ローラー2aの軸端にそれぞれ連係し、ローラー1a同士、ローラー2a同士を互いに引き寄せる付勢力を付加してスタッドジベルSの外表面に対するローラー1a、2aの接触圧を高めるばねの如き弾性部材、5は、フレームFにつながり、ローラー対1、2をスタッドジベルSの軸芯に沿って往復移動させるのに使用される把手である。
【0016】
上記の構成からなる塗装ローラーを用いてスタッドジベルSに塗料を塗布するには、塗装を施すべきスタッドジベルSの頭頂部から、ローラー対1、2を差し入れて、
図7に示すように、ローラー対1、2の各ローラー1a、2aの相互間で該スタッドジベルSを挟み込み、その状態を維持したまま該ローラー対1、2をスタッドジベルSの軸芯に沿い往復移動させるとともに、該軸芯の周りに適宜旋回させればよく、これによりスタッドジベルSの外表面に塗料を簡単に塗布することができる。
【0017】
図8は、本発明にしたがう塗布ローラーの他の実施の形態を示した外観斜視図であり、
図9は、
図8に示した塗布ローラーの正面を示した図であり、
図10は、
図8に示した塗布ローラーの底面を示した図であり、さらに、
図11は、
図8~10に示した塗布ローラーの構成部材の一部分のみを取り出して示した外観斜視図である。
【0018】
図8~11における符号6は、最も下位に位置するローラー対2のローラー2aの相互間に形成される下開き形状をなす隙間M(
図4参照)において配置され、先端部分がスタッドジベルSの外表面に接触し、下面がスタッドジベルSを固定する鋼桁NのフランジN1上面に接触して塗料の塗布を可能とする塗布手段である。塗装手段6としては、フレームFに垂下保持されるホルダー6aと、ホルダー6aに固定保持されるローラー、パフ、スポンジあるいは刷毛、不織布等6bからなるものが適用される。
【0019】
上掲
図3~6に示した塗布ローラーにおいては、ローラー対2のローラー2aの相互間に隙間Mが形成されることから、
図12に示すような塗り残し領域tが生じることがないとはいえない。
【0020】
上掲
図8~11に示した塗布ローラーにおいては、
図13に示すように、隙間Mにおいて塗布手段6がスタッドジベルS、鋼桁NのフランジN1上面に接触させることが可能であり、
図14に示す如く、スタッドジベルSの全域のみならずその固定部周辺に塗料を確実に塗布することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、新設床版の取替え工法において、スタッドジベルの外表面に塗料を効率的に塗装可能な塗装方法および塗装ローラーを提供することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ローラー対
1a ローラー
2 ローラー対
2a ローラー
3 弾性部材
4 弾性部材
5 把手
6 塗装手段
h 貫通孔
N 鋼桁
N1 フランジ
S スタッドジベル
F フレーム
M 隙間
t 塗り残し領域