(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079650
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/471 20060101AFI20230601BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20230601BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61F13/471
A61F13/475 111
A61F13/56 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193222
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 基成
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA14
3B200CA11
3B200CA12
3B200DA02
3B200DA03
3B200DA04
3B200DE01
(57)【要約】
【課題】トランクス着用時にも装着感に優れ、尿漏れを軽減可能な吸収性物品を提供する。
【解決手段】本開示に係る吸収性物品10は、着用状態で着用者の肌側に位置するトップシートと、着用状態で着用者の非肌側に位置するバックシートと、トップシートとバックシートとの間に挟持される吸収体と、トップシートの肌側の面の長手方向と交叉する幅方向の両側に配置されて、長手方向に沿って延びて起立可能な1対の立体ギャザー14と、バックシートの非肌側の面に設けられて下着の肌側の面に取付可能な取付手段と、を備え、1対の立体ギャザー14の起立状態での根元間の幅方向の距離は、長手方向の両端よりも長手方向の中央部の方が長く、1対の立体ギャザー14の起立状態での高さは、長手方向の両端よりも長手方向の中央部の方が高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の下着の内側に装着されて使用され、着用状態では着用者の前方から股下へ向かう長手方向に沿って延びる吸収性物品であって、
着用状態で着用者の肌側に位置するトップシートと、
着用状態で着用者の非肌側に位置するバックシートと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に挟持される吸収体と、
前記トップシートの肌側の面の前記長手方向と交叉する幅方向の両側に配置されて、前記長手方向に沿って延びて起立可能な1対の立体ギャザーと、
前記バックシートの非肌側の面に設けられて前記下着の肌側の面に取付可能な取付手段と、を備え、
前記1対の立体ギャザーの起立状態での根元間の前記幅方向の距離は、前記長手方向の両端よりも前記長手方向の中央部の方が長く、
前記1対の立体ギャザーの起立状態での高さは、前記長手方向の両端よりも前記長手方向の中央部の方が高い
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記1対の立体ギャザーの前記長手方向の両端部を、前記トップシートのうち前記1対の立体ギャザーよりも前記幅方向の外側の外側領域に対して固定可能な固定手段、を備え、
前記固定手段は、前記1対の立体ギャザーの前記長手方向の両端部を前記トップシートの前記外側領域に対して固定することによって、前記1対の立体ギャザーを起立状態に保持可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記1対の立体ギャザーの起立状態での根元側の基端は、前記長手方向の一端から前記長手方向の中央側の前記幅方向の外側へ向かって延び、前記長手方向の中央部分で屈曲し、前記長手方向の中央側から前記長手方向の他端の前記幅方向の内側へ向かって延びる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記1対の立体ギャザーの少なくとも一方には、前記長手方向に延びる形状保持材が設けられる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性物品の前記幅方向の長さは、前記長手方向の両端部よりも前記長手方向の中央部の方が長い
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記取付手段は、前記バックシートの非肌側の面のうち、着用時に着用者の前側となる前記長手方向の少なくとも一端側に設けられる
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
男性用の軽失禁製品は、近年、様々なタイプが開発され、店頭で市販されている。男性用軽失禁製品は、女性用同様、下着に装着して使用することを前提としており、下着としては主にブリーフまたはボクサーパンツが想定されている。これらの下着は、身体(股間)に圧着しやすいため、下着の体側表面に軽失禁製品を装着した場合、軽失禁製品を局部に密着させることができる。このため、男性器の排尿部と軽失禁製品の吸収部との隙間を少なくすることができ、吸収時に漏れを抑制することができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、使用者の下着に装着される男性用の使い捨て吸収性物品が記載されている。同公報には、吸収性物品をブリーフ(男性用下着)に装着した状態が図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、下着には、ブリーフやボクサーパンツとは着用感が異るトランクスが存在する。トランクスは、ブリーフ又はボクサーよりも身体(股間)に対して圧着し難く、下着と身体(股間)との間に空間を確保することができ、脚周りに開放感があるので、その着用感は一定の割合で消費者に愛好される。
【0006】
しかしながら、従来のブリーフ又はボクサーパンツ対応型の軽失禁製品(吸収性物品)をトランクスに装着すると、吸収性物品を身体(股間)に密着させることが難しいので、装着感が悪く、また尿が吸収性物品と身体との間から漏れてしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本開示は、トランクス着用時にも装着感に優れ、尿漏れを軽減することが可能な吸収性物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、着用者の下着の内側に装着されて使用され、着用状態では着用者の前方から股下へ向かう長手方向に沿って延びる吸収性物品であって、着用状態で着用者の肌側に位置するトップシートと、着用状態で着用者の非肌側に位置するバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に挟持される吸収体と、前記トップシートの肌側の面の前記長手方向と交叉する幅方向の両側に配置されて、前記長手方向に沿って延びて起立可能な1対の立体ギャザーと、前記バックシートの非肌側の面に設けられて前記下着の肌側の面に取付可能な取付手段と、を備え、前記1対の立体ギャザーの起立状態での根元間の前記幅方向の距離は、前記長手方向の両端よりも前記長手方向の中央部の方が長く、前記1対の立体ギャザーの起立状態での高さは、前記長手方向の両端よりも前記長手方向の中央部の方が高い。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の吸収性物品であって、前記1対の立体ギャザーの前記長手方向の両端部を、前記トップシートのうち前記1対の立体ギャザーよりも前記幅方向の外側の外側領域に対して固定可能な固定手段、を備え、前記固定手段は、前記1対の立体ギャザーの前記長手方向の両端部を前記トップシートの前記外側領域に対して固定することによって、前記1対の立体ギャザーを起立状態に保持可能である。
【0010】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様の吸収性物品であって、前記1対の立体ギャザーの起立状態での根元側の基端は、前記長手方向の一端から前記長手方向の中央側の前記幅方向の外側へ向かって延び、前記長手方向の中央部分で屈曲し、前記長手方向の中央側から前記長手方向の他端の前記幅方向の内側へ向かって延びる。
【0011】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様から上記第3の態様のいずれかの吸収性物品であって、前記1対の立体ギャザーの少なくとも一方には、長手方向に延びる形状保持材が設けられる。
【0012】
本発明の第5の態様は、上記第1の態様から上記第4の態様のいずれかの吸収性物品であって、前記吸収性物品の前記幅方向の長さは、前記長手方向の両端部よりも前記長手方向の中央部の方が長い。
【0013】
本発明の第6の態様は、上記第1の態様から上記第5の態様のいずれかの吸収性物品であって、前記取付手段は、前記バックシートの非肌側の面のうち、着用時に着用者の前側となる前記長手方向の少なくとも一端側に設けられる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、トランクス着用時にも吸収性物品の装着感に優れ、尿漏れを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸収性物品を着用した状態を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る吸収性物品の肌側からの平面図である。
【
図3】
図2の吸収性物品の非肌側からの平面図である。
【
図6】立体ギャザーを起立させた状態の吸収性物品の肌側からの平面図である。
【
図7】
図6の吸収性物品の幅方向からの斜視図である。
【
図9】着用状態の吸収性物品の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付する。
【0017】
本明細書では次のように定義する。上下方向は、吸収性物品10の着用者(以下、単に「着用者」という。)の頭側を上方とし、足側を下方とする方向を意味する。また、前後方向は、着用者の腹側を前方とし、背側を後方とする方向を意味する。また、吸収性物品10の着用状態とは、尿の吸収前、吸収時及び吸収後を問わず、着用者が吸収性物品10を着用(装着)した状態をいう。また、吸収性物品10の長手方向とは、吸収性物品10が長尺の長さを有する方向(図中の矢印Xに沿った方向)であり、吸収性物品10は、その長手方向を着用者の前方から股下に向かう方向に沿わせた状態で着用される。すなわち、吸収性物品10の長手方向は、着用状態では着用者の前方から股下に向かう方向となる。また、吸収性物品10の幅方向とは、吸収性物品10の長手方向に対して交叉する短手方向(図中の矢印Yに沿った方向)であり、吸収性物品10は、その幅方向を着用者の左右方向に沿わせた状態で着用される。また、吸収性物品10の厚み方向とは、長手方向と幅方向とを含む平面に対して略垂直な方向(図中の矢印Zに沿った方向)を意味する。また、肌側とは、吸収性物品10の厚み方向のうち、着用状態で着用者の肌に面する側を意味し、非肌側とは、その反対方向を意味する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品10を着用した状態を示す図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品10の肌側からの平面図である。
図3は、
図2の吸収性物品10の非肌側からの平面図である。
図4は、
図2のIV-IV矢視断面図である。
図5は、
図2のV-V矢視断面図である。
図6は、立体ギャザーを起立させた状態の吸収性物品10の肌側からの平面図である。
図7は、
図6の吸収性物品10の幅方向からの斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本開示に係る吸収性物品10は、着用者が着用する下着1(本実施形態ではトランクス)の内側に装着されて使用される。吸収性物品10は、その長手方向(
図2等に矢印Xで示す方向)を着用者の前方から股下に向かう方向に沿わせ、その幅方向(
図2等に矢印Yで示す方向)を着用者の左右方向に沿わせた状態で着用される。なお、下着1とは、着用者が地肌に直接的に着用する衣服を意味する。
【0020】
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る吸収性物品10は、幅方向よりも長手方向に長尺な形状を有するシート状に形成される。吸収性物品10の外形は、特に限定されないが、
図2及び
図3に示すように、長手方向に細長い略六角形状が好ましい。具体的には、吸収性物品10の幅方向の両側で長手方向に延びる両辺10aは、長手方向の中央部が長手方向の両端側よりも幅方向の外側へ突出する山型に形成される。これにより、吸収性物品10の外形は、吸収性物品10の幅方向の両側の両辺10aと長手方向の両側の両辺10bとによって囲まれた長手方向に細長い略六角形状となっている。なお、吸収性物品10の外形は、略六角形状に限定されるものではなく、例えば、長手方向に長尺の矩形状であってもよい。
【0021】
吸収性物品10の長手方向の長さL1は、200mm以上300mm以下、幅方向の最大長さL2(本実施形態では、長手方向の中央部の幅方向の長さL2)は、70mm以上150mm以下であることが好ましい。また、吸収性物品10の長手方向の中央部の幅方向の長さL2は、吸収性物品10の長手方向の両端部の幅方向の長さL3よりも長いことが好ましい。特に、吸収性物品10の長手方向の両端部の幅方向の長さL3と長手方向の中央部の幅方向の長さL2との比(L3:L2)は、1:2から13:17であることが好ましい。吸収性物品10の寸法を上記の範囲に調整することにより、下着1の内側に装着される軽失禁製品に適した男性用の吸収性物品10を得ることができる。
【0022】
図2~
図7に示すように、吸収性物品10は、肌側に配置されるトップシート11と、トップシート11に対向して非肌側に配置されるバックシート12と、トップシート11とバックシート12との間に挟持される吸収体13と、トップシート11上に左右1対の立体ギャザー14を構成する左右のギャザーシート15と、立体ギャザー14の長手方向の両端部をトップシート11側へ固定可能な固定部(固定手段)16と、バックシート12の非肌側の面12aの一部の領域に設けられる粘着層(取付手段)17とを備える。
【0023】
トップシート11は、尿が吸収体13へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されていればよい。基材の一例としては、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。また、トップシート11には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート11には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0024】
トップシート11の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の点から、18g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。18g/m2より小さい場合、吸収性物品10の製造時にトップシート11が破損し易くなる傾向があり、40g/m2より大きい場合、肌に当たる際にトップシート11の硬さを感じる傾向があり、いずれの場合も好ましくない。トップシート11の形状は、特に制限されるものではないが、尿を漏れがないように吸収体13へと誘導するため、吸収体13を覆う形状であればよい。
【0025】
バックシート12は、吸収体13が保持している尿の非肌側への漏れがないように液不透過性を備えた基材を用いて形成されていればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の各種不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布等の積層体である複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0026】
バックシート12の坪量は、強度及び加工性の観点から、15g/m2以上60g/m2以下であることが好ましい。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート12には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート12に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート12にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。例えば、樹脂とフィラーとを混練し、得られた混練物をフィルム状に成形し、得られたフィルムからフィラーを除去することにより、多孔性(通気性)樹脂フィルムを得ることができる。
【0027】
吸収体13は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマーとを含有する。吸収体13の吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、セルロースアセテートトウ等を挙げることができる。吸収体13の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン・アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸・ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン・無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0028】
また、フラッフパルプやセルロースアセテートトウの開繊物を基材とする場合は、担持される高吸収性ポリマーの坪量は、100g/m2以上600g/m2以下であることが好ましく、245g/m2以上445g/m2以下であることがより好ましい。上記の数値範囲内とすることで、吸収体13におけるゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収体13に多量の体液を吸収させることができる。
【0029】
セルロースアセテートトウは、開繊されていることが好ましく、開繊されたセルロースアセテートトウの坪量は、20g/m2以上120g/m2以下であることが好ましく、45g/m2以上85g/m2以下であることがより好ましい。上記数値範囲内とすることで、吸収体13の形成に支障がなく、且つ、高吸収性ポリマーの体液保持性能にも問題がない。
【0030】
左右のギャザーシート15は、左右1対の立体ギャザー14を構成するシートであって、トップシート11の肌側の面11aに積層される。左右のギャザーシート15の幅方向の外端部15aは、トップシート11及びバックシート12の少なくとも一方のシートの幅方向の外端部に対して接合される。例えば、左右のギャザーシート15の外端部15aを、トップシート11等(バックシート12を含む)に対して、ホットメルトで接合してもよいし、或いはヒートシールなどの熱融着処理で接合してもよい。なお、本実施形態では、左右のギャザーシート15を、トップシート11及びバックシート12とは別体のシートとしたが、これに限定されるものではない。例えば、バックシート12をトップシート11よりも幅広に形成し、バックシート12の幅方向の外側の領域をトップシート11側に折り返して延在させて左右のギャザーシート15として機能させてもよい。
【0031】
左右のギャザーシート15としては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は非通水性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0032】
左右のギャザーシート15の幅方向の内端15bは、自由端となっている。左右のギャザーシート15の内端15bよりも幅方向の外側には、トップシート11に対して長手方向に沿って接合される部分18が設けられる。左右のギャザーシート15のうちトップシート11に接合される上記部分18よりも幅方向の内側の領域は、左右の立体ギャザー14として機能する。すなわち、左右のギャザーシート15のうちトップシート11に接合される上記部分18は、左右の立体ギャザー14の起立状態での根元側の基端となる部分18である。なお、以下の説明において、左右のギャザーシート15のうちトップシート11に接合される上記部分18を、左右の立体ギャザー14の基端18と称する場合がある。また、左右のギャザーシート15の幅方向の内端15bを、左右の立体ギャザー14の自由端15bと称する場合がある。
【0033】
左右の立体ギャザー14は、トップシート11の肌側の面11aの幅方向の両側に配置されて、長手方向に沿って延びる。左右の立体ギャザー14は、吸収性物品10の長手方向の略全域に亘って延びる。本実施形態では、吸収性物品10の未使用時には、左右の立体ギャザー14は、起立することなく、トップシート11の肌側の面11aに重なった状態(以下、「非起立状態」という。)となっている(
図2参照)。そして、吸収性物品10の使用時には、左右のギャザーシート15の内端15b側を肌側へ持ち上げて、左右の立体ギャザー14を起立状態にすることができる(
図6及び
図7参照)。すなわち、左右の立体ギャザー14は、起立可能に設けられる。左右の立体ギャザー14を起立させた状態では、左右の立体ギャザー14の幅方向の内側面14aとトップシート11の肌側の面11aとの間に男性器2を収納可能な収納空間29が区画される。なお、非起立状態の左右の立体ギャザー14の自由端15b側は、吸収性物品10の幅方向の中央の位置を越えていてもよく、左右の立体ギャザー14の自由端15b側同士が重なっていてもよい(
図2、
図4、及び
図5参照)。
【0034】
図2に示すように、左右の立体ギャザー14の基端18は、長手方向に延びる。左右の立体ギャザー14の基端18の長手方向の中央部20は、長手方向において、吸収性物品10の長手方向の中央部と略同じ位置に配置される。左右の立体ギャザー14の基端18は、長手方向の一端21(着用状態で着用者の前側に位置する端21)から長手方向の中央側(中央部20側)の幅方向の外側へ向かって延び、長手方向の中央部分(中央部20)で屈曲し、長手方向の中央側(中央部20側)から長手方向の他端22(着用状態で着用者の股下側に位置する端22)の幅方向の内側へ向かって延びる。すなわち、左右の立体ギャザー14の基端18は、その長手方向の中央部20が長手方向の両端21,22側よりも幅方向の外側へ突出する山型にそれぞれ形成される。左右の立体ギャザー14の基端18の中央部20の幅方向の距離L4は、基端18の長手方向の両端21,22の幅方向の距離L5,L6よりも長い。すなわち、左右の立体ギャザー14の基端18間(起立状態での根元間)の幅方向の距離は、長手方向の両端21,22よりも長手方向の中央部20の方が長い。なお、トップシート11及びギャザーシート15には、左右の立体ギャザー14の長手方向の両端部よりも幅方向の外側に位置する外側領域23,24が設けられる。ギャザーシート15の外側領域24は、トップシート11の外側領域23の肌側の面11aに少なくとも一部が重なる領域である。
【0035】
起立状態での左右の立体ギャザー14の中央部20の高さH1(基端18から自由端15bまでの長さ)は、長手方向の両端21,22の高さH2,H3よりも高い。すなわち、左右の立体ギャザー14の高さは、長手方向の両端21,22よりも長手方向の中央部20の方が高い。左右の立体ギャザー14のうち最も低い箇所の高さと最も高い箇所の高さとの比(最も低い箇所の高さ:最も高い箇所の高さ)は、1:3~7:9であることが好ましい。これにより、男性器2をすっぽりと包み込むことが可能となり、尿漏れを効果的に防止することができる。
【0036】
左右の立体ギャザー14には、長手方向に延びる形状保持材19が設けられる。形状保持材19は、形状変更可能な部材であって、左右の立体ギャザー14の形状を保持可能である。形状保持材19は、立体ギャザー14の形状を保持することによって、トップシート11、バックシート12、及び吸収体13の形状を保持(例えば、湾曲させた状態に保持)することができる。なお、本実施形態では、形状保持材19を左右の立体ギャザー14の双方に設けたが、これに限定されるものではなく、左右の立体ギャザー14の少なくとも一方に設けることができる。
【0037】
形状保持材19の素材としては、樹脂、針金、金属箔(アルミ箔等)等が挙げられる。その中でも、軽量化や経済性の観点から、樹脂(ポリエステルやポリエチレン等)が好ましい。特に、ポリエステル等の樹脂製の棒状素材が好ましく、その直径または厚さが1.0mm以下、幅が5mm以下、長さが50mm~100mmであることが好ましい。
【0038】
固定部16は、1対の立体ギャザー14の長手方向の両端部を、トップシート11の外側領域23に対して固定するために設けられる。本実施形態では、固定部16は、長手方向の両側かつ幅方向の両側の4箇所のギャザーシート15の外側領域24に設けられる。また、本実施形態では、固定部16は、ギャザーシート15の外側領域24のうち左右の立体ギャザー14の基端18の近傍に配置される。吸収性物品10の使用時には、左右の立体ギャザー14を非起立状態から起立状態にし、左右の立体ギャザー14の長手方向の両端部の幅方向の外側面14bを、ギャザーシート15の外側領域24に設けられる固定部16に固定する(
図6及び
図7参照)。これにより、左右の立体ギャザー14の長手方向の両端部は、ギャザーシート15を介してトップシート11の外側領域23に対して、固定部16及びギャザーシート15の外側領域24を介して固定される。固定部16は、左右の立体ギャザー14の長手方向の両端部をトップシート11の外側領域23に対して固定することによって、左右の立体ギャザー14の幅方向の内側への倒れを防止することができ、左右の立体ギャザー14を起立状態に保持することができる。固定部16としては、例えば、不織布等によって形成される立体ギャザー14を係止可能な面ファスナや、立体ギャザー14を接着可能な粘着層や粘着シート等が挙げられる。固定部16の長手方向の長さL7は、吸収性物品10の長手方向の長さL1の10%~20%の長さであることが好ましい。なお、本実施形態では、固定部16を、ギャザーシート15の外側領域24に設けたが、これに限定されるものではなく、ギャザーシート15の外側領域24を設けることなく、固定部16をトップシート11の外側領域23に直接的に設けてもよい。或いは、固定部16を、左右の立体ギャザー14の長手方向の両端部の幅方向の外側面14bに設けてもよい。
【0039】
図1及び
図3に示すように、粘着層17は、吸収性物品10を下着1の内面に取付可能な粘着層であって、バックシート12の非肌側の面12aの一部の領域に設けられる。粘着層17は、バックシート12の非肌側の面12aのうち、少なくとも吸収性物品10の長手方向の一端25(着用状態で着用者の前側に位置する端25)側に設けられる。粘着層17は、バックシート12の非肌側の面12aのうち、吸収性物品10の長手方向の一端25からの距離が吸収性物品10の長手方向の長さL1の10%の位置a1と20%の位置a2との間の領域27に設けられることが好ましい。粘着層17を構成する粘着剤については、公知の材料を用いることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、吸収性物品10を下着1の内面へ取り付けるための粘着層17を、バックシート12の非肌側の面12aの長手方向の一端25(着用状態で着用者の前側に位置する端25)側に設けたが、一端25の粘着層17に加えて、バックシート12の非肌側の面12aの他端26側に他の粘着層(取付手段)17を設けてもよい(
図9参照)。この場合、上記他の粘着層17は、バックシート12の非肌側の面12aのうち、吸収性物品10の長手方向の他端26からの距離が吸収性物品10の長手方向の長さL1の10%の位置a3と20%の位置a4との間の領域28(
図3参照)に設けられることが好ましい。また、バックシート12の非肌側の面12aの上記一端25側のみに粘着層17を設ける場合、或いは上記一端25側に粘着層17を設け上記他端26側に上記他の粘着層17を設ける場合のいずれの場合であっても、上記位置a2と上記位置a4との間の領域は、着用時にトランクス(下着1)の股下部分29(
図1参照)に対向する部分であるので、粘着層(取付手段)が存在しないことが好ましい。また、本実施形態では、吸収性物品10を下着1の内面へ取り付けるための取付手段として、バックシート12の非肌側の面12aに粘着層(取付手段)17を設けたが、取付手段はこれに限定されるものではなく、例えば、粘着層を有する粘着シート(取付手段)をバックシート12の非肌側の面12aに設けてもよい。また、吸収性物品10の未使用時に粘着層17を保護するための保護シートを、粘着層17に剥離可能に接着してもよい。
【0041】
吸収性物品10の製造方法としては、吸収体13をトップシート11とバックシート12との間に挟持し、トップシート11とバックシート12と左右のギャザーシート15とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて接合する。そして、その接合した周囲を所定の形状で打ち抜き、肌側の面に固定部16を設け、非肌側の面に粘着層17を設けることにより、吸収性物品10を製造することができる。このとき、長手方向の中央部20において、左右のギャザーシート15の幅方向の内端15b同士は幅方向に重ならずに離して配置することもよく、また、一部が重なるように配置してもよい。一部が重なるように配置することで、中央部20のギャザーシート15の起立高さをより高めることができ、男性器2の収納性を高め、横漏れを軽減することができる。
【0042】
次に、着用状態の吸収性物品10について図面に基づいて説明する。
図8は、着用状態の吸収性物品10の説明図である。
図9は、着用状態の吸収性物品10の変形例を示す説明図である。
【0043】
図7~
図9に示すように、吸収性物品10を着用する際には、左右の立体ギャザー14を起立状態にし、トップシート11、バックシート12、及び吸収体13(以下、「トップシート11等」という。)を湾曲した状態にする。そして、左右の立体ギャザー14の幅方向の内側面14aとトップシート11の肌側の面11aとの間の収納空間29に男性器2を収納する。バックシート12の非肌側の面12aの粘着層17は、下着1の内面に接着される。例えば、
図8に示すように、吸収性物品10の前端(上記一端25)側のみに粘着層17を設けている場合には、係る粘着層17は、下着1の前見頃の内面に接着される。また、
図9に示すように、吸収性物品10の前端(上記一端25)側の粘着層17に加え、吸収性物品10の後端(上記他端26)側にも他の粘着層17を設けている場合には、前側の粘着層17は、下着1の前見頃の内面に接着され、後側の他の粘着層17は、下着1の後見頃の内面に接着される。
【0044】
上記のように構成された吸収性物品10では、左右の立体ギャザー14の基端18間(起立状態での根元間)の幅方向の距離は、長手方向の両端21,22よりも長手方向の中央部20の方が長い。また、左右の立体ギャザー14の高さは、長手方向の両端21,22よりも長手方向の中央部20の方が高い。このため、左右の立体ギャザー14を起立状態にすることによって、トップシート11等の長手方向の中央側が非肌側へ膨出するように、トップシート11等を湾曲させることができる(
図7~
図9参照)。したがって、トップシート11と左右の立体ギャザー14との間の収納空間29を広く確保することができ、吸収性物品10によって男性器2をすっぽりと包み込むことができるので、トランクス特有の着用感(解放感)を維持しながら、トランクス着用時にも吸収性物品の装着感を向上させることができる。また、吸収性物品10によって男性器2をすっぽりと包み込むことができるので、尿漏れを軽減することができる。
【0045】
また、左右の立体ギャザー14を起立状態にすることによって、トップシート11等を湾曲させることができるので、収納空間29に収納した男性器2から排尿された際に、尿をトップシート11等によって受け止め易く、尿をトップシート11等の長手方向に拡散することができる。このため、尿漏れを軽減することができる。
【0046】
また、左右の立体ギャザー14の高さは、長手方向の両端21,22よりも長手方向の中央部20の方が高いので、トップシート11等を湾曲させた場合であっても、トップシート11よりも肌側の空間の幅方向の両側を左右の立体ギャザー14によって覆うことができる(
図8及び
図9参照)。このため、トップシート11よりも肌側の空間の幅方向の両側からの尿漏れを軽減することができる。
【0047】
また、左右の立体ギャザー14には、長手方向に延びる形状保持材19が設けられ、形状保持材19は、立体ギャザー14の形状を保持することによって、トップシート11等の形状を湾曲させた状態に保持することができる。例えば、立体ギャザー14の長手方向の両端21,22間の距離を縮める方向に形状保持材19を変形させることによって、トップシート11等を湾曲した状態に保持することができる。このため、吸収性物品10の着用時にトップシート11等の湾曲形状を安定的に保持することができる。
【0048】
また、形状保持材19は、立体ギャザー14の形状を保持することができるので、立体ギャザー14を起立した状態に安定的に保持することができる。
【0049】
また、左右の立体ギャザー14の基端18は、その長手方向の中央部20が長手方向の両端21,22側よりも幅方向の外側へ突出する山型にそれぞれ形成される。このため、左右の立体ギャザー14の基端18が長手方向に直線状に延びる場合とは異なり、起立状態の左右の立体ギャザー14の安定性を確保することができる。
【0050】
また、固定部16は、ギャザーシート15の外側領域24のうち左右の立体ギャザー14の基端18の近傍に配置される。このため、収納空間29の長手方向の中央部側が幅方向の外側へ広がるように、左右の立体ギャザー14を安定的に保持することができる。
【0051】
また、着用時には、バックシート12の非肌側の面12aの粘着層17を下着1の内面に接着するので、吸収性物品10を下方から支持しなくても、トランクス(下着1)の内側の空間内での吸収性物品10の位置を保持することができる。また、低吸収量向けの吸収性物品10の場合は、吸収する尿の量が比較的少なく重くならないので、バックシート12の非肌側の面12aの上記一端25(前端)側のみに粘着層17を設けてもよい(
図8参照)。一方、高吸収量向けの吸収性物品10の場合は、吸収する尿の量が比較的多く重くなるので、上記一端25側に粘着層17を設け、かつ上記他端26(後端)側に他の粘着層17を設けてもよい(
図9参照)。
【0052】
また、粘着層(取付手段)17を、バックシート12の非肌側の面12aのうち、吸収性物品10の長手方向の一端25(又は他端26)からの距離が吸収性物品10の長手方向の長さL1の10%の位置a1(又はa3)と20%の位置a2(又はa4)との間の領域27(又は領域28)に設けることが好ましい。このように、粘着層17を、吸収性物品10の長手方向の一端25(又は他端26)から離間して配置することによって、吸収性物品10の製造時に吸収性物品10を所望の形状に打ち抜く前にバックシート12に粘着層17を設けた場合であっても、吸収性物品10を打ち抜く際にカッターに粘着層17が付着し難くなり、カッターの切れの低下を防止することができる。また、粘着層17を、吸収性物品10の長手方向の一端25(又は他端26)から離間して配置することによって、吸収性物品10の一端25(又は他端26)側に粘着層17がない持ち手部分を確保することができるので、吸収性物品10の着脱時等に持ち手部分を持って下着1に対して取り付けることができ、使用性を向上させることができる。
【0053】
また、バックシート12の非肌側の面12aのうち、長手方向の一端25から20%の位置a2と他端26から20%の位置a4との間の領域に、粘着層(取付手段)を設けないことによって、吸収性物品10の長手方向の中央部分とトランクス(下着1)の股下部分29との接着を回避することができる(
図1、
図8、及び
図9参照)。このように、トランクスの股下部分29と吸収性物品10の長手方向の中央部分とが接着されないので、吸収性物品10への接着によるトランクスの股下部分29のゴワつきの発生を防止することができ、使用性の低下を抑えることができる。
【0054】
また、吸収性物品10の幅方向の両側で長手方向に延びる両辺10aは、長手方向の中央部が長手方向の両端側よりも幅方向の外側へ突出する山型に形成される。すなわち、吸収性物品10の長手方向の中央部の幅方向の長さL2は、吸収性物品10の長手方向の両端部の幅方向の長さL3よりも長い。このため、左右の立体ギャザー14の基端18を、その長手方向の中央部20が長手方向の両端21,22側よりも幅方向の外側へ突出する山型に形成する場合に、左右の立体ギャザー14の基端18よりも幅方向の外側へのトップシート11等の無駄な突出を抑えることができる。
【0055】
このように、本実施形態によれば、ブリーフやボクサーパンツのみならず、トランクス着用時にも吸収性物品10の装着感に優れ、尿漏れを軽減することができる。
【0056】
なお、吸収性物品10を装着する下着1はトランクスに限定されるものではなく、下着1は着用者が地肌に直接的に着用するものであればよい。例えば、吸収性物品10を、ブリーフやボクサーパンツ型の下着1に装着してもよいし、或いはおむつ(下着1)に装着してもよい。
【0057】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1:下着
10:吸収性物品
11:トップシート
11a:トップシートの肌側の面
12:バックシート
12a:バックシートの非肌側の面
13:吸収体
14:1対の立体ギャザー
16:固定部(固定手段)
17:粘着層(取付手段)
18:左右の立体ギャザーの基端
19:形状保持材
23:トップシートの外側領域