(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079652
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】車両搬送機
(51)【国際特許分類】
B60P 3/075 20060101AFI20230601BHJP
B62D 65/18 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B60P3/075
B62D65/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193225
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000191353
【氏名又は名称】新明工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】吉原 千秋
(72)【発明者】
【氏名】赤川 正明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 寛
【テーマコード(参考)】
3D114
【Fターム(参考)】
3D114AA06
3D114BA40
3D114CA05
3D114JA07
(57)【要約】
【課題】少量生産を行うラインへの導入や柔軟なライン構成への対応を容易とする車両搬送機を提供すること。
【解決手段】車両VのタイヤTに回転力を加えながら走行することにより、当該車両Vを搬送する車両搬送機1であって、接地状態の前記タイヤTを前記車両Vの前後方向から挟み込む駆動ローラ8及び押さえローラ9を具備し、前記駆動ローラ8は前記タイヤTに回転力を付与し、前記押さえローラ9は前記タイヤTの回転に従動するように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤに回転力を加えながら走行することにより、当該車両を搬送する車両搬送機であって、
接地状態の前記タイヤを前記車両の前後方向から挟み込む駆動ローラ及び押さえローラを具備し、
前記駆動ローラは前記タイヤに回転力を付与し、前記押さえローラは前記タイヤの回転に従動するように構成した車両搬送機。
【請求項2】
前記車両の左右方向又は前後方向から接地状態の前記タイヤを受け入れ可能なタイヤ用スペースを有し、前記タイヤ用スペースに接地状態で位置する前記タイヤに前記駆動ローラ及び前記押さえローラが前記車両の前後方向から挟み込み可能となるように構成した請求項1に記載の車両搬送機。
【請求項3】
前記駆動ローラ及び前記押さえローラのいずれか一方を、他方に対して近接離間自在としてある請求項1または2に記載の車両搬送機。
【請求項4】
接地状態の前記タイヤを前記車両の左方向からガイドするサイドガイドローラ及び右方向からガイドするサイドガイドローラを具備し、一方の前記サイドガイドローラは他方の前記サイドガイドローラに対して近接離間自在である請求項1~3の何れか一項に記載の車両搬送機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のタイヤに回転力を加えながら走行することにより、当該車両を搬送する車両搬送機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両組立ラインにおけるタイヤが装着された車両(完成車)につき、車両を動かす、車間を保つ、作業スペースを確保する、といった条件を満たす搬送手段によって搬送する必要がある場合、スラットコンベヤが用いられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スラットコンベヤは、大量の車両を一定間隔で搬送するラインには有効な手法であるが、設備導入費用が比較的高額であることから、少量生産を行うラインへの導入には不向きであり、また、その構造上、種々のライン構成に柔軟に対応させることも難しいといった問題がある。
【0005】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、少量生産を行うラインへの導入や柔軟なライン構成への対応を容易とする車両搬送機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両搬送機は、車両のタイヤに回転力を加えながら走行することにより、当該車両を搬送する車両搬送機であって、接地状態の前記タイヤを前記車両の前後方向から挟み込む駆動ローラ及び押さえローラを具備し、前記駆動ローラは前記タイヤに回転力を付与し、前記押さえローラは前記タイヤの回転に従動するように構成した(請求項1)。
【0007】
上記車両搬送機が、前記車両の左右方向又は前後方向から接地状態の前記タイヤを受け入れ可能なタイヤ用スペースを有し、前記タイヤ用スペースに接地状態で位置する前記タイヤに前記駆動ローラ及び前記押さえローラが前記車両の前後方向から挟み込み可能となるように構成してもよい(請求項2)。
【0008】
上記車両搬送機において、前記駆動ローラ及び前記押さえローラのいずれか一方を、他方に対して近接離間自在としてもよい(請求項3)。また、上記車両搬送機が、接地状態の前記タイヤを前記車両の左方向からガイドするサイドガイドローラ及び右方向からガイドするサイドガイドローラを具備し、一方の前記サイドガイドローラを他方の前記サイドガイドローラに対して近接離間自在としてもよい(請求項4)。
【発明の効果】
【0009】
本願発明では、少量生産を行うラインへの導入や柔軟なライン構成への対応を容易とする車両搬送機が得られる。
【0010】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の車両搬送機では、1台の車両を1台の車両搬送機で搬送することができるので、少量生産を行うラインへの導入や柔軟なライン構成への対応が容易となる。
【0011】
また、例えばタイヤを台車に載せて車両を搬送する場合、車両の重量の増大は、台車の車輪の転がり抵抗の増加ひいては台車の搬送能力の低下に直結し易いが、本願発明の車両搬送機では、搬送対象とする車両の重量が増えると、駆動ローラとタイヤ間の摩擦力が増大し、この増大は搬送能力の上昇に寄与するので、車両の重量増加による搬送能力の低下を抑えることができ、ひいては小さな力での車両の搬送の実現に資するものとなる。
【0012】
請求項2に係る発明の車両搬送機では、車両を持ち上げることなく車両搬送機のセッティング及びその解除を行えるのであり、ひいては搬送工程の容易化・省力化を図ることができる。
【0013】
請求項3に係る発明の車両搬送機では、駆動ローラから押さえローラまでの距離を可変としてあるので、タイヤの直径の違いに柔軟に対応することが可能となる。また、請求項4に係る発明の車両搬送機では、接地状態のタイヤをサイドガイドローラによって左右方向からガイドすることにより、車両搬送機が蛇行せずに車両に追従する走行を可能とする上、左右のサイドガイドローラ間の距離を可変としてあるので、タイヤの厚み(左右方向の幅)の違いにも柔軟に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る車両搬送機の正面、平面及び右側面を表す図である。
【
図2】前記車両搬送機の背面、平面及び右側面を表す図である。
【
図3】一部の部品を取り除いた状態の前記車両搬送機の平面図である。
【
図5】一部の部品を取り除いた状態の車両搬送機につき、(A)はその正面、平面及び右側面を表す図、(B)はその背面、平面及び右側面を表す図である。
【
図6】(A)~(D)は、一部の部品を取り除いた状態の前記車両搬送機の左側面図、平面図、右側面図及び正面図である。
【
図7】前記車両搬送機の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図8】(A)及び(B)はそれぞれ、前記車両搬送機の他の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図9】(A)~(C)は、前記車両搬送機の操舵ユニットの平面図、正面図及び右側面図である。
【
図10】(A)~(C)は、前記車両搬送機の操舵ユニットにつきその内部構造を破線で示した平面図、正面図及び右側面図である。
【
図11】(A)は前記操舵ユニットの正面、平面及び右側面を表す図、(B)は前記操舵ユニットの背面、平面及び左側面を表す図、(C)は前記操舵ユニットの要部を拡大して示す斜視図である。
【
図12】(A)は前記車両搬送機のセッティング方法を示す説明図、(B)及び(C)は本発明の変形例に係る車両搬送機のセッティング方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0016】
図1~
図6に示す本例の車両搬送機1は、
図1、
図5(A)、
図6(A)~(D)に示す車両VのタイヤTに回転力を加えながら走行(自走)することにより、当該車両Vを搬送するものである。
【0017】
まず、大まかな構成について説明すると、本例の車両搬送機1は、前後方向に長い搬送機本体(ベースフレーム)2(
図3,
図4参照)に対し、駆動ユニット3、押さえユニット4、操舵ユニット5及び電源ユニット6を前側から後ろ側に向かってこの順に取り付けて構成してある(
図1~
図4参照)。また、車両搬送機1の自走を可能とするために、複数の車輪(後述する走行車輪7A、操舵車輪7B以外は自在車輪である)7を搬送機本体2の下方に突出する状態(つまり接地可能な状態)で設けてある(
図4参照)。
【0018】
なお、
図1と
図4を対比すれば明らかなように、
図1では、駆動ユニット3、操舵ユニット5及び電源ユニット6をそれぞれカバー部材Cで覆ってあるが、
図4ではカバー部材Cを破線で示してある。このように、
図1、
図2に示すカバー部材C等の一部の部品を、便宜上、
図3以降では取り除いてある。
【0019】
以下、車両搬送機1の構成につき、より詳細に説明する。以下の説明において、特に断りがなければ、
図4を参照されたい。
【0020】
車両搬送機1は、接地状態のタイヤTを車両Vの前後方向(
図3の紙面上における左右方向)から挟み込む駆動ローラ8及び押さえローラ9を具備し、この挟み込み状態で、駆動ローラ8はタイヤTに回転力を付与し、押さえローラ9はタイヤTの回転に従動するように構成してある。
【0021】
斯かる構成を実現するために、駆動ローラ8及び押さえローラ9をそれぞれ車両搬送機1の左右方向に延びる軸回りに回転可能とし、このうち、駆動ローラ8は、モータ(推進力発生用モータ)10によって回転駆動するようにしてある。すなわち、モータ10の出力は適宜の機構を介して駆動ローラ8の回転力に変換される。
【0022】
ここで、駆動ローラ8によってタイヤTに回転力を確実に付与するために、駆動ローラ8の外周面(転動面)の摩擦係数を適宜に高めておくのが好ましい(
図7参照)。この方法としては、例えば駆動ローラ8の外周面にローレット(平目、綾目)等の凹凸を設ける、溝を設ける、摩擦係数の高い材料を配する、といったことが考えられる。これとあわせて、駆動ローラ8の外周面には、できるだけ摩耗が進行し難い構造、材料を採用するのが好ましい。
【0023】
また、駆動ローラ8及び押さえローラ9によって接地状態のタイヤTを車両Vの前後方向から挟み込むに際し、この挟み込み力(クランプ力)が小さすぎると、駆動ローラ8によるタイヤTへの回転力の付与が不十分となって駆動ローラ8が空回りし易くなり、逆に挟み込み力が大きすぎると、タイヤTが両ローラ8,9により持ち上げられて地面との摩擦力が不十分となってタイヤTが空回りし易くなる。
【0024】
そこで、本例では、挟み込み力の適正化を図るために、押さえローラ9を含む押さえユニット4全体が、適宜のガイド手段によってガイドされながら搬送機本体2に対して前後方向に移動するようにし、かつ、押さえユニット4に設けたトグルクランプ11をロック解除位置(
図8(B)に実線で示す位置)からロック位置(
図8(B)に破線で示す位置)に移動させる(倒伏操作する)と、押さえユニット4が駆動ローラ8(駆動ユニット3)に近づく側(本例では前側)に若干移動してその位置で固定されるように構成してある。
【0025】
すなわち、トグルクランプ11がロック解除位置にあるとき、搬送機本体2上にある押さえユニット4を人力で前後にその可動範囲内で移動させることができる(
図5(A)及び(B)、
図6(A)~(C)の灰色の線は、
図8(B)における破線と同様、押さえユニット4が前方に移動した状態を示す仮想線である)。そして、二つのローラ8,9によってタイヤTを挟み込む際は、トグルクランプ11をロック解除位置に移動させた状態で押さえユニット4を前後に動かし、両ローラ8,9がタイヤTに当たる状態でトグルクランプ11をロック位置に移動させればよい。つまり、本例では、両ローラ8,9をタイヤTに当てる、トグルクランプ11をロック位置に移動させる、という2回の操作で、タイヤTが両ローラ8,9によって適正な力で挟み込まれた状態となるようにしてある。なお、上記のような機能を有するトグルクランプ11を含むトグル機構には公知のものを採用可能である。
【0026】
上記の様な機構を用いて、作業者によって手動でクランプ作業を行わずに、モータ、シリンダー等の動力とボールネジ、LMガイド(登録商標)等の直動機構を採用し、自動でクランプ力の適正化を図る方法を採用しても構わない。
【0027】
上記のように、本例では、駆動ローラ8(駆動ユニット3)から押さえローラ9(押さえユニット4)までの距離を可変としてあるので、タイヤTの直径の違いに柔軟に対応することが可能となる。
【0028】
また、本例では、車両搬送機1が蛇行せずに車両Vに追従する走行を可能とするために、接地状態のタイヤTを車両Vの左方向からガイドするサイドガイドローラ12及び右方向からガイドするサイドガイドローラ12を設けてあり、具体的には、タイヤTの左右面に当接可能な左右一対のサイドガイドローラ12を駆動ユニット3及び押さえユニット4のそれぞれに設けてある。そして、
図8(B)に示すように、各対のサイドガイドローラ12につき、一方を他方に対して近接離間自在(左右方向に移動自在)としてあり、このサイドガイドローラ12の位置調整は調整レバー13を操作することにより行える。斯かる構成により、本例の車両搬送機1は、タイヤTの直径のみならず、厚み(左右幅)の違いにも柔軟に対応可能となっている。なお、本例では、駆動ユニット3及び押さえユニット4のそれぞれに調整レバー13を設け、各ユニット3,4に設けた一対のサイドガイドローラ12間の距離を個別に調整可能としてある。
【0029】
さらに、本例では、駆動ローラ8を含む駆動ユニット3と、押さえローラ9を含む押さえユニット4とを前後に離して具備し、両ユニット3,4の間に、タイヤTを受け入れるタイヤ用スペース14を設けてあり、このタイヤ用スペース14は、平面視において左右何れか一方が外部に開放されている。このように、タイヤ用スペース14の左右何れか一方を外部に開放してあるので、その開放した側から接地状態のタイヤTを受け入れれば、車両Vを持ち上げることなく車両搬送機1のセッティング(
図6(A)~(D)にこのセッティング状態を示してある)及びその解除(取り外し)を行えるのであり(
図12(A)参照)、ひいては搬送工程の容易化・省力化を図ることができる。
【0030】
上記のようなタイヤ用スペース14を設けるために、搬送機本体2における前部(駆動ユニット3が取り付けられる部位)と中央部(押さえユニット4が取り付けられる部位)との間には、他の部位よりも左右幅が狭く左右何れか一方(本例では左方)に偏った細ベース部2aを設けてある。そして、この細ベース部2aにも、タイヤTの左右何れかの側面(本例では左側面)に当接可能なサイドガイドローラ12を配してある。
【0031】
本例の車両搬送機1は、これを車両Vにセッティングしたセッティング状態(二つのローラ8,9がタイヤTに接触した状態)で駆動ローラ8を回転駆動すると、タイヤTが接地状態を維持しながら回転するように構成してあり、つまり、セッティング状態の車両搬送機1は、タイヤTを回転させることによって車両V、車両搬送機1両方の推進力を得る。その一方、本例の車両搬送機1は、車両Vにセッティングしていない非セッティング状態(二つのローラ8,9がタイヤTに接触していない状態)でも自走可能(単独走行可能)である。
【0032】
具体的には、
図8(A)に示すように、駆動ローラ8の近傍に設けた車輪7を、駆動ローラ8から回転力を付与されて回転し推進力を発生させる走行車輪7Aとなるように構成してある。走行車輪7Aは、切換ペダル(踏みリンク)15を切換操作することにより、駆動ローラ8に接触する状態と駆動ローラ8から離れた状態とに切り換わり、後者の状態では推進力を発生しない。従って、車両搬送機1が上記セッティング状態にあるときは、走行車輪7Aを駆動ローラ8から離しておくことにより、駆動ローラ8の回転力をタイヤTに効率よく伝達することができ、上記非セッティング状態にあるときは、走行車輪7Aを駆動ローラ8及び走行フロア(地面ないし床面)に接触させることにより、車両搬送機1の自走(単独走行)が可能となる。
【0033】
本例の車両搬送機1は、図外の制御システムからの指令を受けて、
図9(A)~(C)、
図10(A)~(C)に示す操舵ユニット5が自動操舵を行うように構成してある。
図11(B)、(C)に示すように、操舵ユニット5は、その下部に設けた車輪7を、鉛直軸回りに自在に回転させることのできる操舵車輪7Bとして含む。操舵車輪7Bには、モータ(操舵用モータ)16の出力がギア機構(ねじ歯車)17を介して伝達され、これにより、操舵車輪7Bは鉛直軸回りに回転し、所定の方向に向けられる。また、操舵ユニット5は、操舵車輪7Bの鉛直軸回りの角度を検知するための車輪角度検知センサ18を有する。
【0034】
さらに、
図11(A)に示すように、操舵ユニット5は、昇降ペダル(昇降リンク)19を操作することによりその全体が昇降する。すなわち、車両搬送機1を自動走行させる場合は操舵ユニット5を降ろして操舵車輪7Bが接地するようにし、車両搬送機1を人力で移動させる場合は操舵ユニット5を上げて接地しないようにする。これにより、車両搬送機1を人力移動させる際に特定の方向に向けられている操舵車輪7Bがその移動作業の邪魔にならないようにすることができる。
【0035】
電源ユニット6は、上述した車両搬送機1の各作動を可能とするために、電力を必要とするモータ10,16等の各部に電力供給を行えるように構成してある。なお、
図4において、20はバッテリ、21は受電ヘッドであり、本例の車両搬送機1はワイヤレス充電を可能としてあるが、有線接続にて充電する構成を採用しても構わない。
【0036】
なお、車両搬送機1が、上述の各作動を行えるように、適宜の制御装置等を有していることはいうまでもない。
【0037】
以上の構成を有する本例の車両搬送機では、1台の車両を1台の車両搬送機で搬送することができるので、少量生産を行うラインへの導入や柔軟なライン構成への対応が容易となる。
【0038】
また、例えばタイヤTを台車に載せて車両Vを搬送する場合、車両Vの重量の増大は、台車の車輪の転がり抵抗の増加ひいては台車の搬送能力の低下に直結し易いが、本例の車両搬送機1では、搬送対象とする車両Vの重量が増えると、駆動ローラ8とタイヤT間の摩擦力が増大し、この増大は搬送能力の上昇に寄与するので、車両Vの重量増加による搬送能力の低下を抑えることができ、ひいては小さな力での車両Vの搬送の実現に資するものとなる。
【0039】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0040】
上記実施の形態では、搬送機本体2に対して、駆動ユニット3、押さえユニット4、操舵ユニット5、電源ユニット6を前側からこの順で設けてあるが、この順は適宜変更可能であり、例えば押さえユニット4が駆動ユニット3よりも前方に位置していてもよい。また、これに限らず、各ユニット3~6の配置は適宜変更可能であり、例えば、車両Vの車体の下方に潜り込ませることが可能な範囲で複数のユニット3~6どうしを上下に積み重ねるようにしてもよい。
【0041】
上記実施の形態では、押さえローラ9(押さえユニット4)を駆動ローラ8(駆動ユニット3)に対して近接離間自在としてあるが、これに限らず、駆動ローラ8(駆動ユニット3)を押さえローラ9(押さえユニット4)に対して近接離間自在としてもよく、両者8,9が相互に近接離間自在となるようにしてもよい。
【0042】
上記実施の形態では、操舵ユニット5を設けて車両搬送機1の自動操舵を可能としているが、これに限らず、例えばガイド手段によって車両搬送機1をガイドしながら特定の方向に移動させるようにしてもよく、この場合、操舵ユニット5は不要となる。
【0043】
上記実施の形態では、
図12(A)に示すように、車両搬送機1は、車両Vの左右方向から接地状態のタイヤTを受け入れ可能なタイヤ用スペース14を有し、所定エリアに到着した車両Vに対し、必要に応じてタイヤTの大きさに合わせて駆動ローラ8(駆動ユニット3)から押さえローラ9(押さえユニット4)までの距離を調整した後、車両搬送機1をタイヤTに対して左右方向から差し込んでセッティングを行う(タイヤ用スペース14に接地状態で位置するタイヤTを駆動ローラ8及び押さえローラ9が車両Vの前後方向から挟み込む状態とする)ことができる。
【0044】
しかし、これに限らず、例えば、
図12(B)に示すように、車両搬送機1は、車両Vの前後方向から接地状態のタイヤTを受け入れ可能なタイヤ用スペース14を有していてもよい。すなわち、
図12(B)に示すように、タイヤ用スペース14の後方を外部に開放した状態の車両搬送機1を予め所定エリアに待機させておき、この所定エリアに車両Vが到着し、タイヤ用スペース14にタイヤTが受け入れられた状態になれば、
図12(C)に示すように、適宜の操作により、タイヤ用スペース14に接地状態で位置するタイヤTを駆動ローラ8及び押さえローラ9が車両Vの前後方向から挟み込む状態とすることが考えられる。このようにすれば、車両Vを待ち構えることができるため、車両搬送機1の前後の位置合わせが不要となり、車両搬送機1のセッティングに係る時間の削減を図ることもできる。
【0045】
なお、
図12(B)及び(C)の例では、押さえローラ9を含む押さえユニット4全体が鉛直軸回りに回転するようにし、この回転により、
図12(B)に示す状態(タイヤ用スペース14の後方を外部に開放した状態)と
図12(C)に示す状態(セッティング状態)とに変更可能としてあるが、これに限らず、例えば押さえユニット4全体が車両Vの左右方向にスライドするようにし、このスライドによってタイヤ用スペース14の後方を外部に開放した状態とセッティング状態とに変更可能となるようにしてもよい。また、
図12(B)及び(C)の例では、タイヤ用スペース14の後方を外部に開放可能としてあるが、これに限らず、前方を外部に開放可能としてもよい。ここで、
図12(B)及び(C)では、説明の簡略化のため、操舵ユニット5、電源ユニット6等を示していないが、これらのユニット5,6等は上記の機能の実現を妨げないように適宜に配置・構成してあればよい。
【0046】
本明細書で挙げた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 車両搬送機
2 搬送機本体
2a 細ベース部
3 駆動ユニット
4 押さえユニット
5 操舵ユニット
6 電源ユニット
7 車輪
7A 走行車輪
7B 操舵車輪
8 駆動ローラ
9 押さえローラ
10 モータ
11 トグルクランプ
12 サイドガイドローラ
13 調整レバー
14 タイヤ用スペース
15 切換ペダル
16 モータ
17 ギア機構
18 車輪角度検知センサ
19 昇降ペダル
20 バッテリ
21 受電ヘッド
C カバー部材
T タイヤ
V 車両