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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079660
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】パネルを固定するための治具と方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/18 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
E04F21/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193236
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
(57)【要約】
【課題】建築物の躯体に固定された胴縁に対し、建築物の外壁として用いられるパネルを安全に、低コストで、あるいは短い工期で固定するための治具と方法を提供すること。
【解決手段】この治具は、ドライバユニット、およびドライバユニットに連結される固定ユニットを含む。ドライバユニットは、電動ドライバを支持するように構成される支持機構、および支持機構を第1の軸上を可逆的にスライドさせるスライド機構を有する。固定ユニットは、ドライバユニットに連結されるアーム、およびアームに固定され、第1の軸または第1の軸に平行な軸上をスライドするスライド顎を有する。第1の軸は、電動ドライバにビスが取り付けられる際、ビスの軸と同軸である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルを胴縁に固定するための治具であり、
ドライバユニット、および前記ドライバユニットに連結される固定ユニットを含み、
前記ドライバユニットは、
電動ドライバを支持するように構成される支持機構、および
前記支持機構を第1の軸上を可逆的にスライドさせるスライド機構を有し、
前記固定ユニットは、
前記ドライバユニットに連結されるアーム、および
前記アームに固定され、前記第1の軸または前記第1の軸に平行な軸上をスライドするスライド顎を有し、
前記第1の軸は、前記電動ドライバにビスが取り付けられる際、前記ビスの軸と同軸である、治具。
【請求項2】
前記ドライバユニットは、前記スライド機構に連結され、前記パネルの一辺と噛み合う嵌合部をさらに有する、請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記アームは、前記第1の軸を中心に回転するように構成される、請求項1に記載の治具。
【請求項4】
前記ドライバユニットは、前記スライド顎に対向する第1の円板をさらに備え、
前記第1の円板は、前記第1の軸が貫通する開口を有する、請求項1に記載の治具。
【請求項5】
前記固定ユニットは、第2の円板をさらに有し、
前記第2の円板は、前記第1の円板を囲み、前記スライド顎と対向し、前記アームに固定され、前記第1の軸を中心として回転し、
前記固定ユニットは、前記第2の円板と前記スライド顎の間に前記パネルと前記胴縁を挟むように構成される、請求項4に記載の治具。
【請求項6】
前記支持機構は、
前記スライド機構上のデッキ、
前記デッキに取り付けられるバックパネル、および
前記デッキに取り付けられ、前記第1の軸上で前記バックパネルに対向するフロントパネルを有し、
前記フロントパネルは、前記電動ドライバの一部が配置されるように構成される開口を備える、請求項1に記載の治具。
【請求項7】
前記スライド機構は、前記第1の軸に平行にスライドするスライドシャフトを有し、
前記スライドシャフトは、前記支持機構に連結される、請求項1に記載の治具。
【請求項8】
前記ビスを支持するビスホルダをさらに備える、請求項4に記載の治具。
【請求項9】
前記ビスホルダは、前記第1の軸に垂直な方向に可逆的にスライドする一対のスライディングプレートを備え、
前記一対のスライディングプレートは、互いに対向する切り欠きを備える、請求項8に記載の治具。
【請求項10】
前記ビスホルダは、
前記第1の円板に囲まれ、前記第1の軸を中心として回転する第3の円板、
前記第3の円板に囲まれ、前記第3の円板に噛み合わされる一対の回転爪、および
前記第3の円板を回転させる回転機構を備え、
前記一対の回転爪は、前記第3の円板の回転に伴って前記第1の軸に平行な第2の軸と第3の軸を中心として互いに逆方向に可逆的に回転することで開いた状態と閉じた状態を取るように構成され、
前記開いた状態では、前記ビスが前記一対の回転爪に挟まれて支持され、
前記閉じた状態では、前記ビスが前記一対の回転爪から解放される、請求項8に記載の治具。
【請求項11】
前記第3の円板は、前記一対の回転爪を収容する開口を有し、
前記一対の回転爪は、それぞれ前記第1の軸に対して垂直な方向に突出する突起を有し、
前記第3の円板と前記一対の回転爪は、前記開口の内壁に設けられる一対の切り欠きと前記突起によって噛み合わされる、請求項10に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、建築物の外壁として用いられるパネルを胴縁に固定するための治具と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫などの物流施設や工場、商業ビルなどの大規模建築物は、建築物の骨格となる躯体を構築し、躯体に外壁やルーバー、建具、窓などが取り付けられて施工されることが多い。大規模建築物に特殊な外観形状やデザインが要求されない場合には、ロックウールなどの不燃断熱材を鋼板で挟み込んだ外壁パネル(以下、単にパネルと記す)を外壁として用いることにより、短い工期で建築物を施工することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-116823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、建築物の躯体に固定された胴縁に対し、建築物の外壁として用いられるパネルを安全に、低コストで、あるいは短い工期で固定するための治具と方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、建築物の躯体に固定された胴縁に対し、建築物周囲に足場を組み立てることなく、建築物内部における作業としてパネルを固定するための治具と方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、ビスを用いてパネルを胴縁に固定するための治具である。この治具は、ドライバユニット、およびドライバユニットに連結される固定ユニットを含む。ドライバユニットは、電動ドライバを支持するように構成される支持機構、および支持機構を第1の軸上を可逆的にスライドさせるスライド機構を有する。固定ユニットは、ドライバユニットに連結されるアーム、およびアームに固定され、第1の軸または第1の軸に平行な軸上をスライドするスライド顎を有する。第1の軸は、電動ドライバにビスが取り付けられる際、ビスの軸と同軸である。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、建築物に取り付けられた胴縁にパネルを固定するための方法である。この方法は、建築物に取り付けられた胴縁、および胴縁に固定されるパネルに治具を取り付けること、ならびに、治具および治具に収容される電動ドライバを胴縁側から操作し、電動ドライバをパネルから胴縁へ向かう第1の方向へ移動しつつパネルを介して胴縁にビスを打ち付けることで、パネルを胴縁に固定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の一つである、パネルの固定方法を説明する正面図、およびパネルと胴縁の端面図。
図2】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の斜視図。
図3】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図と上面図。
図4】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図と上面図。
図5】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の斜視図。
図6】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図。
図7】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の斜視図と背面図。
図8】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の斜視図と側面図。
図9】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の斜視図。
図10】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の背面図。
図11】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の背面図と側面図。
図12】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の側面図。
図13】本発明の実施形態の一つである、パネルを固定するための治具の背面図と側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0009】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。符号が付された要素の一部を表記する際には、符号に小文字のアルファベットが添えられる。
【0010】
以下、本発明の実施形態の一つに係る、パネルを胴縁に固定するための治具、およびこの治具を用いるパネルの胴縁への固定方法について説明する。より具体的には、建築物内における操作によって建築物に固定された胴縁にパネルを固定するための治具と方法について説明する。
【0011】
1.胴縁とパネル
図1(A)に示すように、建築物10は、図示しない杭または基礎コンクリートに連結される基礎梁12、基礎梁12と連結される躯体14、16を基本骨格として有しており、躯体14、16によって建築物10の外部形状が主に決定される。躯体14、16には、鉛直方向および/または水平方向に延伸する複数の胴縁18が固定される。各パネル20はクレーンなどの揚重機によって吊り上げられ、所定の位置に搬送され、ねじや釘などの固定具(以下、固定具を総じてビスと記す)を用いて躯体14、16に取り付けられる。以下の説明では、胴縁18が鉛直方向に配置される例を主に用いて説明するが、本発明の実施形態の一つに係る治具は、水平方向に配置された胴縁18に対してパネル20を固定することも可能である。
【0012】
胴縁18はパネル20を支持する機能を有し、アルミニウムや鉄などの金属、あるいはステンレスなどの合金、木材、あるいは樹脂を含む、直線状に延伸するフレームである。胴縁18は、一方向に延伸する板、中空管、あるいは空洞を持たないロッドでもよい。例えば胴縁18は、所謂リップ付き溝形鋼でもよく、あるいは断面が閉じた形状を有する角鋼管でもよい。胴縁18は、リップを持たない溝形鋼(平行フランジ溝形鋼)やH鋼でもよい。胴縁18の外表面の少なくとも一部は、胴縁18が延伸する方向の全体にわたって平坦であり、この平坦面にパネル20が配置、固定される。胴縁18の長さや幅、厚さは任意であり、例えば日本産業規格(JIS)G 3350を満たすように構成してもよい。
【0013】
パネル20は、木材、セメント、金属、ロックウールなどの鉱物繊維、ケイ酸カルシウム、石膏、樹脂などを含み、単層構造、あるいは積層構造を有するように構成される。例えばグラスウールやロックウールなどの鉱物繊維、セルロースファイバーなどの天然高分子由来の繊維、ポリウレタンやポリスチレンまたはフェノール樹脂を含む発泡プラスチックなどの断熱材、ケイ酸カルシウム、石膏などを板状に加工し、これを一対の金属板や樹脂板、木板などで挟持した構造を採用することができる。金属板を用いる場合、金属板はアルミニウムや鉄などの金属、あるいはステンレスなどの合金などを含むことができ、その表面はアルミニウムや亜鉛を含む合金皮膜で覆われていてもよい。各パネル20の長さ(長手方向の長さ)と幅(長手方向に垂直な長さ)は任意に決定することができる。パネル20の長さは、例えば1m以上10m以下、2m以上6m以下、3m以上7m以下、5m以上6m以下、あるいは3m以上5m以下である。パネル20の幅は、例えば20cm以上200cm以下、60cm以上100cm以下、30cm以上150cm以下、あるいは30cm以上100cm以下である。
【0014】
図1(B)に示すように、通常、パネル20は、対向する長辺に沿って延伸する一対のレール20a、20bがそれぞれ設けられる。二つのパネル20を一つの胴縁18に対して上下に固定する場合、下側のパネル20のレール20aが上側のパネル20のレール20bで挟み込まれる。下側のパネル20の主面20cと上側のパネル20のレール20bの一つが略同一平面になるようにパネル20が構成されるため、レール20aが設けられる長辺側の端部20dでは、パネル20の厚さが小さくなっている。ビス24は、下側のパネル20の端部20dを貫通し、胴縁18に達するように打ち付けられ、上側のパネル20のレール20bがビス24を覆うように上側のパネル20が配置される。
【0015】
以下に述べるように、パネル20の取り付けは、建築物10の内部の作業として行われる。すなわち、パネル20に対して胴縁18側に配置される作業員の作業としてビス24がパネル20と胴縁18に打付けられてパネル20が胴縁18に固定される。以下の説明では、便宜上、ビス24が打ち付けられる方向をy方向とし、鉛直方向をz方向とする。y方向とz方向に垂直な方向がパネル20が延伸するx方向である。また、電動ドライバ22が動作してビス24を回転する際、その回転軸を第1の軸と呼ぶ。したがって、電動ドライバ22の回転するスリーブの回転軸やビス24の軸も第1の軸と同軸となる。第1の軸は、y方向に平行である。
【0016】
2.治具
2-1.全体構造
本発明の実施形態の一つである、パネル20を胴縁18に固定するための治具100の模式的斜視図を図2に示す。図2に示すように、治具100は、主な構成として、ドライバユニット110と固定ユニット150を備える。ドライバユニット110と固定ユニット150は互いに連結され、これらが協働して機能することで、パネル20の胴縁18への固定を建築物10内部の作業として実施することができる。
【0017】
2-2.ドライバユニット
ドライバユニット110の模式的側面図と上面図をそれぞれ図3(A)と図3(B)に示す。これらの図では、見やすさを考慮し、ドライバユニット110以外の構成は点線で示されており、さらにパネル20は鎖線で示されている。ドライバユニット110は、パネル20と胴縁18をビス24を用いて固定する際にビスを回転させる電動ドライバ22を支持し、パネル20側へ電動ドライバ22をスライドさせる機能を有する。ドライバユニット110としては、これらの機能が発現される構成であれば任意の構成を採用することができる。図2に示された例では、ドライバユニット110は、電動ドライバ22を支持する支持機構として、デッキ124、バックパネル126、およびフロントパネル122を備えるとともに、電動ドライバ22をy方向に可逆的にスライドさせるスライド機構として、スライドシャフト116を有するエアシリンダ114を備える。スライドシャフト116は、支持機構に連結される。また、治具100をパネル20上に配置する機構として、ドライバユニット110は嵌合部132を備えてもよい(図3(A)、図3(B)参照。)。
【0018】
エアシリンダ114は、例えばxy平面に主面を有するプラットフォーム112上に固定することができる。プラットフォーム112のy方向における長さは、スライドシャフト116が嵌合部132から最も遠い位置にある際にビス24を電動ドライバ22に取り付けることが可能であり、かつ、嵌合部132に最も近い位置にある際に打ち付けられたビス24のヘッドがパネル20の端部20dに接するように適宜調整される。エアシリンダ114はインレット118とアウトレット120を有しており、インレット118とアウトレット120は図示しないエアチューブによってスイッチ144に接続される。スライドシャフト116に対してy方向にトルクを与えるため、図示しないエアコンプレッサからスイッチ144とエアチューブを介してエアシリンダ114に圧縮空気が導入される。エアシリンダ114の上面には、支持機構のデッキ124の一部が収容される一つまたは複数の溝114aを設けてもよい(図2図3(B))。溝114aに支持機構のデッキ124の一部が収容された状態で支持機構をスライドさせることで、より精確に支持機構をy方向にスライドさせることができる。なお、図3(A)と図3(B)に示す例では、スイッチ144はアーム154上に設けられるが、スイッチ144の位置は任意に設定すればよい。例えば、スイッチが搭載されたエアシリンダ114を用いてもよく、あるいは、治具100には固定されないペダル式のスイッチを床面に配置してもよい。
【0019】
スライド機構上に設けられる支持機構では、デッキ124にフロントパネル122とバックパネル126が固定される。フロントパネル122には、電動ドライバ22を支持機構で支持する際に電動ドライバ22の一部を収容する開口122aが設けられる(図2)。また、フロントパネル122はスライドシャフト116に連結され、スライドシャフト116の移動によって支持機構がy方向に可逆的にスライドする。バックパネル126はフロントパネル122とy方向において対向し、電動ドライバ22の背面を支える。開口122aに電動ドライバ22の一部を収容した状態でバックパネル126とフロントパネル122で電動ドライバ22を挟持することで、電動ドライバ22が倒立した状態、(すなわち、電動ドライバ22のトリガがスリーブよりも上に位置する状態)で支持することができる。任意の構成として、電動ドライバ22の側面に当接するサイドレスト128をバックパネル126に設けてもよい。サイドレスト128を設けることで、より安定的に電動ドライバ22を支持機構によって支持することができる。
【0020】
図2から図3(B)に示した例では、エアシリンダ114は二本のスライドシャフト116を有しているが、単一のスライドシャフト116を有するエアシリンダ114を用いてもよい。これにより、エアシリンダ114の軽量化が図れる。また、単一のスライドシャフト116の場合、支持機構がスライドする方向に柔軟性が与えられ、支持機構のスライド方向をy方向だけでなく、y方向から上下左右にずれた方向(例えば、±10°ずれた方向)へ微調整することができる。このため、ビス24の打込み方向にずれが発生しても、電動ドライバのビット(ビス24のヘッドに当接し、ねじ穴に噛み合うパーツ)からビス24が外れること無く、このずれに柔軟に対応してビス24を打ち込むことができる。
【0021】
ここで、図2から図3(B)に示すドライバユニット110では、プラットフォーム112にエアシリンダ114が固定され、スライドシャフト116がスライドすることで支持機構がスライドする。したがって、スライドシャフト116をスライドさせても、パネル20や胴縁18、固定ユニット150に対するエアシリンダ114の位置は変化しない。しかしながら、ドライバユニット110はこのような構造に限られず、スライドシャフト116をプラットフォーム112の替わりに用い、エアシリンダ114とそれに固定される支持機構をスライドシャフト116上でスライドさせてもよい。例えば図4(A)と図4(B)に示すように、スライドシャフト116を固定ユニット150側の第1の円板140(後述)に直接またはハンガー130(後述)を介して固定することで、パネル20や胴縁18、固定ユニット150に対するスライドシャフト116の位置を固定する。これにより、スライドシャフト116を固定したままエアシリンダ114と支持機構をスライドシャフト116上でスライドさせることができる。この場合、プラットフォーム112が不要となるため、さらに軽量化を図ることができる。
【0022】
嵌合部132を中心とする模式的斜視図と側面図をそれぞれ図5図6(A)に示す。嵌合部132は、スライド機構に連結され、パネル20の一辺と嵌合する。嵌合部132とスライド機構との連結方法も任意であるが、例えばプラットフォーム112の法線方向に延伸するハンガー130をプラットフォーム112に固定し(図1図3(A)、図3(B)参照。)、ハンガー130の端部に嵌合部132を設けることができる。嵌合部132は、フック136、キャッププレート134、およびスペーサ138などによって構成することができる。フック136とキャッププレート134は一体化されてもよく、あるいは独立したパーツとしてボルトや溶接によって互いに固定されてもよい。一方、スペーサ138はフック136とキャッププレート134から離隔し、ハンガー130に直接または間接的に固定される。図5図6(A)に示す例では、嵌合部132は一対のフック136と一対のキャッププレート134、および一対のスペーサ138を含むが、フック136、キャッププレート134、スペーサ138の数に制約はなく、それぞれ一つでもよく、三つ以上でもよい。例えば、一つのフック136を一対のキャッププレート134で挟持するよう、嵌合部132を構成してもよい。あるいは、一つのキャッププレート134を一対のフック136で挟持するように嵌合部132を構成してもよい。
【0023】
フック136は、パネル20の一辺に設けられる一対のレール20aと噛み合うように構成される。より具体的には、図6(A)に示すように、一部136aが一対のレール20aの間に挿入され、かつ、この一部136aと他の一部136bで主面20cから遠い方のレール20aを挟むように構成することができる(図6(A))。フック136は、スライド機構や支持機構から遠い側の側面がパネル20の背面20eと同一平面上に位置するように構成することが好ましい。これにより、胴縁18とパネル20を接触させた状態で、ハンガー130を介して治具100をパネル20から吊り下げ、固定することができる。
【0024】
スペーサ138は、フック136がパネル20に嵌合した状態において主面20cに当接し、かつ、電動ドライバ22のスリーブの回転軸、すなわち、第1の軸がy方向を向くようにその長さ(y方向の長さ)が設定される。このため、嵌合部132を用いて治具100をパネル20に吊り下げるだけで、電動ドライバ22の精確な配置が可能となる。なお、治具100が吊り下げられた状態では、端部20dがフック136とスペーサ138の間に配置される。
【0025】
このように嵌合部132を設けることにより、治具100をパネル20に安定に固定し、パネル20と胴縁18をビス24を用いて固定する位置決めを容易に行うことができる。ただし、嵌合部132は必ずしも設ける必要は無く、例えば、図6(B)に示すように、一対のレール20aと重なり、胴縁18側のレール20aの胴縁18側の側面を覆う、yz平面に平行な端面がL字形状のキャッププレート135をドライバユニット110を吊り下げる支持部133として用いてもよい。この場合、図6(C)に示すように、キャッププレート135は、z方向を法線として有する平板でもよい。
【0026】
ドライバユニット110はさらに、固定ユニット150と連結するためのパーツとして、第1の円板140を備える(図2参照。)。第1の円板140は、例えばハンガー130に固定することができる。第1の円板140には、第1の軸Aに加え、ビス24や電動ドライバ22の一部が貫通できる開口140aが形成される。ビス24が打ち付けられてビス24のヘッドがパネル20に当接した際に電動ドライバ22と第1の円板140が干渉しなければ、開口140aの形状に制約はない。好ましくは、開口140aの形状(xz平面における形状)は円であり、その中心が第1の軸と一致する。図示しないが、固定ユニット150と連結するためのパーツの外周は円形でなく、開口140aに相当する切り欠きを有する円弧でもよい。例えば、後述する第2の円板152と接する外周の一部が半円または円弧であり、その中心にビス24や電動ドライバ22の一部が通過できる半円または扇型の切り欠きを有するパーツを第1の円板140の替わりに用いてもよい。さらに、第1の円板140は、所謂ドーナツ形状であるトーラス体(輪環体、円環体)でもよく、管状でもよい。
【0027】
2-3.固定ユニット
固定ユニット150を中心とする模式的斜視図を図7(A)に、y方向から見た模式的背面図を図7(B)に示す。図7(A)では、固定ユニット150以外は点線で示され、パネル20は鎖線で示されている。固定ユニット150は、所謂万力の構造を有し、ドライバユニット110に連結され、胴縁18とパネル20を互いに固定する機能を有するユニットである。これらの機能が発現できる構成であれば固定ユニット150の構成に制約はない。図2図7(A)、図7(B)に示される例においては、固定ユニット150は第2の円板152、スライド顎156、およびアーム154を基本的な構成として備える。
【0028】
第2の円板152は、第1の円板140を囲み、第1の円板140の周りを第1の軸Aを中心に回転するように構成される(図7(B)の矢印参照)。すなわち、第2の円板152には、第1の円板140を囲む円形の開口が設けられ、この開口の中に第1の円板140が配置される。図示しないが、第2の円板152の内壁と第1の円板140の円板の外側の側面に一つまたは複数の互いにyz平面上で重なる溝を設け、これらの溝の間にベアリングを設けてもよい。第2の円板152が第1の円板140を囲むことで、固定ユニット150がドライバユニット110に連結される。第2の円板152は、第1の円板140に対して着脱可能なように取り付けられてもよく、実質的に恒久的に取りつけられてもよい。第1の円板140と同様、第2の円板152もトーラス体(輪環体、円環体)でもよく、管状でもよい。
【0029】
スライド顎156は第2の円板152や第1の円板140と対向し、y方向にスライドするように構成される。y方向にスライドさせるための構成も適宜設計することができ、例えば図2図7(A)、図7(B)に示すように、スライド顎156にはスピンドル158、およびスピンドル158を回転するためのハンドル160を設けることができる。ハンドル160を回転させることでスピンドル158が回転しながらy方向に可逆的にスライドし、その結果、スライド顎156がy方向に可逆的にスライドする。
【0030】
アーム154は、第2の円板152とスライド顎156を互いに連結する。アーム154の少なくとも一部は、y方向に平行な方向に延伸する。また、アーム154は、スライド顎156がスライドする方向が第1の軸Aに一致するように構成される。胴縁18とパネル20を同時に第2の円板152とスライド顎156の間に配置し、スライド顎156をドライバユニット110側に向けて第1の軸A上をスライドさせることで、胴縁18とパネル20を固定し、かつ、パネル20上にドライバユニット110を安定的に固定することができる。なお、上述したように、第1の円板140はハンガー130に溶接またはボルト142などを用いて固定されるが、第2の円板152は第1の円板140の周りで回転する。したがって、アーム154は第2の円板152を介してドライバユニット110に連結されるとともに、固定ユニット150やそのアーム154も第1の軸Aを中心として回転することができる。このため、胴縁18の厚さ(x方向における長さ)に依存することなく、固定ユニット150を用いて治具100の配置、固定が可能となる。さらに、胴縁18に対するアーム154の配置位置を任意に選択することができる。すなわち、胴縁18に対して+x側にアーム154を配置することもでき、-x側に配置することも可能である。このため、胴縁18の周辺の状況に応じてフレキシブルに治具100を配置することができる。なお、図示しないが、固定ユニットは、スライド顎156を複数有してもよい。この場合、複数のスライド顎156は、第1の軸Aまたはそれに平行な軸上をスライドするように構成される。
【0031】
2-4.ビスホルダ
治具100は、さらに、任意の構成として、ビス24を一時的に固定するビスホルダを有してもよい。ビスホルダは、パネル20に打ち付けられる前のビス24を支持しつつ、ビス24が打ち付けられるとビス24を解放することでy方向への移動を許容するように構成される。これにより、ビス24がパネル20に打ち付けられる前において、ビス24を所定の位置に配置することができる。さらに、ビス24がパネル20に打ち付けられて一部がパネル20に進入するとビス24は安定するが、この時にはビス24を解放し、電動ドライバ22の操作に従ってパネル20の方向にスライドさせることができる。
【0032】
ビスホルダの構成に制約はないが、例えば図2図8(A)に示すように、ビスホルダとして、一対のスライディングプレート170を設けてもよい。スライディングプレート170は、例えばハンガー130に直接または間接的に取り付けられる。スライディングプレート170は、第1の円板140に取り付けられてもよい。スライディングプレート170は、第1の軸Aに対して垂直な方向(例えばx方向)に可逆的にスライドするよう、アンカーボルト172を用いてハンガー130または第1の円板140などに取り付けられる。スライディングプレート170には、アンカーボルト172が貫通し、スライディングプレート170がスライドする方向に延伸する開口170aが設けられ、この開口170aを利用してスライディングプレート170をx方向に移動させることができる。
【0033】
各スライディングプレート170には、スライディングプレート170がスライドする方向において互いに対向する切り欠き170bが設けられる(図8(A)、図8(B))。切り欠き170bは、一対のスライディングプレート170でビス24を挟持する際に、ビス24を収容するように形成される。したがって、切り欠き170bの形状(y方向から見た形状)は、ビス24の端面形状の一部と同一であることが好ましい。なお、図8(B)に示すように、切り欠き170bの側壁は、ドライバユニット110側の形状が固定ユニット150側の形状よりも大きくなるよう、傾斜を有することが好ましい。このような傾斜を付与することで、ビス24の打ち込みが開始した後にヘッドがスライディングプレート170に当接するとスライディングプレート170が自動的に徐々に開き、ビス24を解放することができる。したがって、スライディングプレート170は、パネル20上に治具100が配置された際、切り欠き170bとパネル20までの距離(すなわち、切り欠き170bからスペーサ138の固定ユニット150側の端部までのy方向における距離)がビス24のヘッドを除く長さよりも短くなるように配置することが好ましい。このようなサイジングを採用することで、ビス24がパネル20に当接する前にビス24が開放されることを防ぎ、ビス24に一部がパネル20に打ち込まれて安定化した後にビス24を解放することができる。
【0034】
あるいは、ビスホルダは、図9から図10(B)に示すように、互いに逆方向に回転することでビス24を支持可能な閉じた状態とビス24を開放する開いた状態を可逆的に取るように構成される一対の回転爪180を含んでもよい。より具体的には、ビスホルダは、一対の回転爪180に加え、第3の円板182、レバー184、および操作ロッド190などを含むように構成されてもよい。
【0035】
第3の円板182は、第1の円板140に囲まれ、第1の軸Aを中心として第1の円板140に対して相対的に回転するように構成される。第3の円板182には、一対の回転爪180を収容する開口が設けられ、開口の内壁には、それぞれ一対の回転爪180と嵌合する切り欠き182aが設けられる。第1の円板140や第2の円板152と同様、第3の円板182もトーラス体(輪環体、円環体)でもよく、管状でもよい。
【0036】
一方、一対の回転爪180は、第3の円板182に囲まれるとともに、ハンガー130に取り付けられる。このとき、一対の回転爪180は、それぞれ第2の軸Aと第3の軸Aを中心に回転するようにハンガー130に取り付けられる(図9)。第2の軸Aと第3の軸Aは、第1の軸Aと平行であり、かつ、第3の円板182の開口を貫通する。一対の回転爪180にはさらに、切り欠き182aと嵌合する突起180aが設けられる(図10(A))。突起180aが切り欠き182aに収容されることでこれらが噛み合い、その結果、一対の回転爪180が第3の円板182と噛み合う。また、一対の回転爪180にはさらに、それぞれ突起180aに対して反対側の端部に切り欠き180bが形成される(図10(B)参照。)。二つの切り欠き180bは、それぞれビス24の一部を収容し、ビス24を上下から挟持するように形成される。このため、切り欠き180bの形状(y方向から見た形状)は、ビス24の端面形状の一部と同一であることが好ましい。図示しないが、スライディングプレート170の切り欠き170bと同様、切り欠き180bの側壁も傾斜を有してもよい。
【0037】
レバー184は、第3の円板182に固定される。例えば、レバー184の一端は第3の円板182の外周面に固定される。レバー184の他端には、z方向で重なる一対のローラ186が設けられ、一対のローラ186に挟まれるように、屈曲した操作ロッド190が配置される。図9に示されるように、操作ロッド190は支持機構、例えばフロントパネル122に固定され、y方向に延伸する。ただし、操作ロッド190は、y方向に延伸する互いに平行な第1と第2のベクトル成分を備える。例えば図9に示すように、操作ロッド190は、パネル20側、すなわち、ドライバユニット110に対して反対側に第1のベクトル成分を有する部分、およびドライバユニット110に第2のベクトル成分を有する部分を含む。ドライバユニット110がパネル20から最も離れた状態では、第1の成分を有する部分が一対のローラ186に挟まれ、ドライバユニット110がパネル20へ移動すると、第1のベクトル成分と第2のベクトル成分を有する部分の間の部分が一対のローラ186の間に進み、さらに第2のベクトル成分を有する部分が一対のローラ186に挟まれるよう、操作ロッド190が構成される。
【0038】
このような構成を有するビスホルダでは、図10(A)と図10(B)に示すように、第3の円板182が第1の軸Aを中心として一方向(例えば時計回り)に回転すると(曲線矢印c)、切り欠き182aも第1の軸Aを中心として回転する。同時に、切り欠き182aと噛み合う突起180aは、切り欠き182aに収容された状態を維持するため、切り欠き182aの回転に伴って移動する。しかしながら、上述したように、一対の回転爪180は、それぞれ第2の軸Aと第3の軸Aを中心として回転するよう、ハンガー130に固定される。このため、一対の回転爪180は、それぞれ第2の軸Aと第3の軸Aを中心として逆方向に回転し(曲線矢印d)、切り欠き180bが互いに離れて開いた状態を取る。逆に、第3の円板182が第1の軸Aを中心として逆方向(例えば半時計回り)に回転すると、切り欠き180bが互いに近づき、閉じた状態を取る。閉じた状態では、ビス24の下側に位置する回転爪(図10(A)において、左側の回転爪180-1)の突起180aが切り欠き182aに引っ掛かり、さらに時計回りに回転しないように突起180aと切り欠き182aの形状が調整される。これにより、閉じた状態において、一対の回転爪180の切り欠き180b内にビス24を支持することができるとともに、開いた状態においてビス24を解放することができる。
【0039】
一方、操作ロッド190は、第1のベクトル成分が第2のベクトル成分よりも上(z方向においてビス24に近い位置)になるように構成すればよい(図9参照)。これにより、第1のベクトル成分を有する部分がローラ186に挟まれるときに閉じた状態が得られる。操作ロッド190がパネル20に向けてy方向にスライドし(図9の直線矢印a)、第2のベクトル成分を有する部分がローラ186に挟まれると、レバー184が押し下げられる(直線矢印b)。その結果、第3の円板182が時計回りに回転し(曲線矢印c)、回転爪180が回転する(曲線矢印d)。
【0040】
逆に、第3の円板182を反時計回りに回転させることで閉じた状態から開いた状態へ遷移させる場合には、第1のベクトル成分が第2のベクトル成分よりも下(z方向においてビス24から遠い位置)になるよう、操作ロッド190を構成すればよい。また、操作ロッド190の第1のベクトル成分と第2のベクトル成分を有する部分は、ビス24の一部がパネル20に打ち込まれ、その方向が安定した後に閉じた状態から開いた状態への遷移を開始するよう、適宜その長さと間隔が調整される。このように、レバー184、一対のローラ186、および操作ロッド190が第3の円板182を回転させる回転機構として働く。
【0041】
あるいは、回転爪180が観音開き方式で開閉するようにビスホルダを構成してもよい。例えば、図11(A)と図11(B)に示すように、y方向に延伸する軸を中心に回転し(図11(A)の曲線矢印参照。)、ビス24を挟持する一対の回転爪200-1、200-2、および一対の回転爪200-1、200-2を押さえるピン204でビスホルダを構成してもよい。回転爪180と同様、回転爪200にもビス24を挟持するための切り欠きが設けられる。ピン204は、ばねなどの弾性部材が設けられるばね台座202に一部が収容され、弾性部材の復元力によって一対の回転爪200-1、200-2を閉じるように配置される。このため、ビス24を切り欠きに収容することで、y方向を向いた状態でビス24を回転爪200の間に固定することができる。ばね台座202や回転爪200は、例えばハンガー130に固定され、ハンガー130に対してドライバユニット110側に設けられるベースプレート208などに固定すればよい。任意の構成として、回転爪200を手動で開閉するためのレバー206を回転爪200の各々に設けてもよい。
【0042】
ドライバユニット110のフロントパネル122には、回転爪200を開けるための機構としてブレード210が設けられる。ブレード210は、フロントパネル122がy方向にスライドすることで回転爪200の間に挿入されるよう、形状と位置が調整される。なお、図11(A)などに示した例では、回転爪200を開けるための機構は板状のブレード210であるが、当該機構は針状でも棒状でもよい。
【0043】
ビス24を回転爪200で挟持しつつスライドシャフト116をy方向に移動することで、電動ドライバ22やブレード210がy方向へスライドする(図11(B)の矢印参照。)。ブレード210は、電動ドライバ22のビットがビス24のヘッドに当接した時点では回転爪200と接触しないようにそのy方向の長さが調整される(図12(A)参照。)。この状態でビットを回転させながらさらに電動ドライバ22をy方向に移動させることで、ビス24の打込みが開始される。ビス24の一部がパネル20に打ち込まれると、ビス24は安定化し、延伸方向が容易に変化しなくなる(図12(B))。ここで、ブレード210の長さは、ビス24が安定化されたときにブレード210が回転爪200の間に進入し、回転爪200の回転が開始されるように調整される。回転爪200の回転が始まると、図13(A)に示すように回転爪200がビス24から離隔するが、ビス24は安定化されているので、ビス24が落下したり傾いたりする不具合は発生しない。
【0044】
さらにビットを回転させながら電動ドライバ22をy方向にスライドさせると、ビス24のヘッドはx方向において回転爪200と重なる(図13(B))。しかしながら、ブレード210が回転爪200の間に進入して回転爪200をさらに回転させるため、回転爪200の間に十分な距離を確保することができ、ビス24のヘッドと回転爪200の干渉を防止することができる。ビス24が打ち込まれた後、電動ドライバ22やフロントパネル122を逆方向にスライドさせるとブレード210は回転爪200から離隔する。このとき、ばね台座202に配置される弾性体の復元力がピン204に作用するため、回転爪200が閉じ、初期状態が再現される。
【0045】
3.パネルの胴縁への固定方法
以下、上述した治具100を用い、建築物10に設置された胴縁18にパネル20を固定する方法について説明する。
【0046】
3-1.治具の取り付け
まず、パネル20を所定の位置に搬送する(図1(A))。搬送はクレーンなどの揚重機を用いればよい。既に他のパネル20が設置されており、そのパネル20上に新たにパネル20を配置する場合には、下側のパネル20のレール20aを新たなパネル20のレール20bで挟持するように新たなパネル20を設置すればよい(図1(B)参照)。
【0047】
その後、固定ユニット150を用いて治具100を胴縁18に固定する。治具100の固定は、嵌合部132または支持部133をパネル20上に配置することで行えばよい。ドライバユニット110が嵌合部132を有する場合には、フック136がレール20aと噛み合い、キャッププレート134がレール20aと接するように嵌合部132をパネル20上に配置し(図5参照。)、その後、胴縁18とパネル20を挟んだ状態でスライド顎156をドライバユニット110側へy方向にスライドさせればよい(図7(A)参照。)。ドライバユニット110が支持部133を有する場合には、キャッププレート135を一対のレール20a上に配置すればよい。嵌合部132または支持部133をパネル20上に配置することで、容易に治具100をパネル20上の所定位置に配置することができるので、治具100の固定を建築物10内の作業として実施することができる。
【0048】
その後、電動ドライバ22をデッキ124上に配置する(図3(A)参照。)。これにより、電動ドライバ22が支持機構に支持される。一方、ビス24はビスホルダに取り付けられる。例えば、一対のスライディングプレート170または一対の回転爪180でビス24を挟持すればよい。なお、ビス24の先端がパネル20に当接する位置に、ビス24の挿入を容易にするための凹部をパネル20(例えば端部20d)に予め形成してもよい。
【0049】
なお、ビス24の一部をパネル20に打ち付けた後にパネル20を所定の位置に搬送してもよい。この場合には、ビスホルダが設けられていない治具100を使用すればよい。
【0050】
3-2.ビスの打ち付け
引き続き、エアコンプレッサを起動し、建築物10側からスイッチ144を操作してエアシリンダ114を動作させる。上述したように、エアシリンダ114の動作によってスライドシャフト116がy方向へスライドし、スライドシャフト116に連結される支持機構がy方向にスライドする(図3(A)の矢印参照。)。電動ドライバ22のスリーブに取り付けられるビットがビス24のヘッドに当接した後、電動ドライバ22のトリガを操作してビットを回転させるとともに、エアシリンダ114を用い、支持機構に対してy方向のトルクを加える。このとき、必要に応じ、ビスホルダのスライディングプレート170を手動で開いてビス24を解放してもよい。図9から図10(B)に例示したビスホルダを用いる場合には、操作ロッド190が第3の円板182を回転させ、これにより回転爪180が開いてビス24が自動的に解放される。ビス24がパネル20を貫通して胴縁18に達し、ビス24のヘッドが端部20dに接すれば、打ち込みが終了する(図6(A)参照。)。なお、ビス24の方向がy方向からずれた場合には、手動でドライバユニット110を適宜動かし、スライド方向を微調整すればよい。
【0051】
打付けが終了すると、エアシリンダ114を停止する。その後、例えばエアシリンダ114をニュートラル状態にし、ドライバユニット110を逆方向に移動させればよい。あるいは、パネル20から離れるようにスライドシャフト116に対してトルクを供給してもよい。以上のプロセスにより、胴縁18にパネル20を固定することができる。
【0052】
以上述べたように、本発明の実施形態に係る治具100を用いることにより、パネル20の胴縁18への固定作業をすべて胴縁18側、すなわち、建築物10内の作業として行うことができる。このため、従来、パネル20の固定のためには建築物10の周りに足場を固定し、建築物10の外側に作業員を配置して作業を行う必要があったが、治具100を用いる方法を適用することで、足場の組立・撤去が不要となり、工期の大幅な短縮と施行コストの低減が可能である。また、天候による影響も低減することができる。さらに、作業員は建築物10の内部で作業を行うことができるため、足場上での不安定な作業から解放され、より安全性の高い環境下での作業が可能となる。
【0053】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0054】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0055】
10:建築物、12:基礎梁、14:躯体、16:躯体、18:胴縁、20:パネル、20a:レール、20b:レール、20c:主面、20d:端部、20e:背面、22:電動ドライバ、24:ビス、100:治具、110:ドライバユニット、112:プラットフォーム、114:エアシリンダ、114a:溝、116:スライドシャフト、118:インレット、120:アウトレット、122:フロントパネル、122a:開口、124:デッキ、126:バックパネル、128:サイドレスト、130:ハンガー、132:嵌合部、133:支持部、134:キャッププレート、135:キャッププレート、136:フック、136a:一部、136b:一部、138:スペーサ、140:第1の円板、140a:開口、142:ボルト、144:スイッチ、150:固定ユニット、152:第2の円板、154:アーム、156:スライド顎、158:スピンドル、160:ハンドル、170:スライディングプレート、170a:開口、170b:切り欠き、172:アンカーボルト、180:回転爪、180-1:回転爪、180a:突起、180b:切り欠き、182:第3の円板、182a:切り欠き、184:レバー、186:ローラ、190:操作ロッド、200:回転爪、200-1:回転爪、200-2:回転爪、202:ばね台座、204:ピン、206:レバー、208:ベースプレート、210:ブレード
図1
図2
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図5
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図10
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図13