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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079661
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】無線局および周波数誤差補正方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/12 20060101AFI20230601BHJP
   H04L 27/14 20060101ALI20230601BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H04L27/12 Z
H04L27/14 Z
H04B1/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193238
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(72)【発明者】
【氏名】野村 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大迫 大輔
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061CC02
5K061CC08
5K061CC14
5K061CC16
5K061CC27
5K061CC53
5K061CD04
(57)【要約】
【課題】複数の発振器を備える無線局において、各発振器の周波数精度のばらつきを抑制することが可能な無線局および周波数誤差補正方法を提供する。
【解決手段】無線局1は、第1目標値が目標周波数である第1基準信号を出力する第1発振器11と、第1目標値に目標偏差を加算した第2目標値が目標周波数である第2基準信号を出力する少なくとも1つの第2発振器12と、第2基準信号に基づいて第1中間周波数が目標周波数である対象信号を生成する信号生成部26と、を備える。無線局1は、対象信号から生成した第2中間周波数信号を復調することで復調信号を生成する復調部33と、復調信号に基づいて第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差を検出する偏差検出部34と、周波数偏差の目標偏差からのずれに応じて第2目標値に対する第2基準信号の周波数誤差を補正する誤差補正部35と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1目標値が目標周波数である第1基準信号を出力する第1発振器と、
前記第1目標値に目標偏差を加算した第2目標値が目標周波数である第2基準信号を出力する少なくとも1つの第2発振器と、
前記第2基準信号に基づいて第1中間周波数が目標周波数である対象信号を生成する信号生成部と、
前記対象信号に基づいて、前記第1基準信号を用いて周波数変換して周波数が前記第1中間周波数より低い第2中間周波数である第2中間周波数信号を生成し、前記第2中間周波数信号を復調することで、復調信号を生成する復調部と、
前記復調信号に基づいて、前記第1基準信号と前記第2基準信号との周波数偏差を検出する偏差検出部と、
前記第1基準信号と前記第2基準信号との前記周波数偏差の前記目標偏差からのずれに応じて、前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正する誤差補正部と、
を備える無線局。
【請求項2】
前記信号生成部は、入力される対象データと前記第2基準信号とに基づいて変調を行うことで変調信号である前記対象信号を生成する、
請求項1に記載の無線局。
【請求項3】
前記信号生成部は、前記第2基準信号に基づく無変調信号である前記対象信号を生成する、
請求項1に記載の無線局。
【請求項4】
前記信号生成部は、前記第1基準信号に基づいて無変調信号である変換用信号を生成し、
周波数が前記第1目標値に一致する目標信号に基づいて変調を行うことで生成された信号を受信し、受信信号に基づいて、前記変換用信号を用いて周波数変換を行うことで前記第1中間周波数が目標周波数である第1中間周波数信号を生成する受信部をさらに備え、
前記復調部は、前記対象信号または前記第1中間周波数信号に基づいて、前記第1基準信号を用いて周波数変換して前記第2中間周波数信号を生成し、前記第2中間周波数信号を復調することで、前記復調信号を生成し、
前記偏差検出部は、前記復調部が前記対象信号に基づいて前記復調信号を生成する場合は、前記復調信号に基づいて、前記第1基準信号と前記第2基準信号との周波数偏差を検出し、前記復調部が前記第1中間周波数信号に基づいて前記復調信号を生成する場合は、前記復調信号に基づいて、前記第1基準信号と前記目標信号との周波数偏差を検出し、
前記誤差補正部は、前記第1基準信号と前記目標信号との前記周波数偏差に応じて、前記目標信号に対する前記第1基準信号の周波数誤差を補正し、前記第1基準信号と前記第2基準信号との前記周波数偏差の前記目標偏差からのずれに応じて、前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の無線局。
【請求項5】
前記誤差補正部は、前記第1基準信号と前記目標信号との前記周波数偏差を低減させる周波数補償量に応じて前記目標信号に対する前記第1基準信号の周波数誤差を補正する、
請求項4に記載の無線局。
【請求項6】
前記誤差補正部は、前記第1基準信号と前記第2基準信号との前記周波数偏差の前記目標偏差からのずれに応じて前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正した後は、前記周波数補償量に応じて前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正する、
請求項5に記載の無線局。
【請求項7】
第1目標値が目標周波数である第1基準信号を出力する第1発振器と、前記第1目標値に目標偏差を加算した第2目標値が目標周波数である第2基準信号を出力する少なくとも1つの第2発振器と、を備える無線局が行う周波数誤差補正方法であって、
前記第2基準信号に基づいて第1中間周波数が目標周波数である対象信号を生成し、
前記対象信号に基づいて、前記第1基準信号を用いて周波数変換して周波数が前記第1中間周波数より低い第2中間周波数である第2中間周波数信号を生成し、前記第2中間周波数信号を復調することで、復調信号を生成し、
前記復調信号に基づいて、前記第1基準信号と前記第2基準信号との周波数偏差を検出し、
前記第1基準信号と前記第2基準信号との前記周波数偏差の前記目標偏差からのずれに応じて、前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正する、
周波数誤差補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線局および周波数誤差補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
局部発振器は、ディスクリート部品で構成される発振回路と、1つの基準周波数発振器を有するPLL(Phase-Locked Loop:位相同期ループ)-VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)とで構成される。この種の局部発振器を備える無線局の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
PLL-VCOは、VCOが内蔵されたPLL IC(Integrated Circuit:集積回路)で実現されることがある。PLL ICは、10MHz以上、かつ、1400MHz以下という広帯域でFM(Frequency Modulation:周波数変調)、具体的には、FSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-326752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のPLL ICが、PLL-VCOを構成する基準周波数発振器の発振周波数の整数倍付近で用いられる場合に、整数値境界スプリアスが発生することがある。整数値境界スプリアスが発生すると、送信側の無線局は電波法で定められるスプリアス規格を満たすことができず、受信側の無線局では所望の電波以外の電波を受信するスプリアス受信が起こることがある。
【0006】
整数値境界スプリアスによる送受信への影響を抑制するため、複数の基準周波数発振器を備え、複数の基準周波数発振器を切り替えて使用する無線局がある。基準周波数発振器には、経年による周波数誤差が生じる。経年による周波数誤差の大きさは、基準周波数発振器ごとに異なることがある。
【0007】
例えば、基地局と通信する無線局において、基地局から受信した受信信号を周波数変換する際に用いられる基準周波数発振器については、受信信号に基づいて、基地局が有する基準周波数発振器にあわせて、無線局が備える基準周波数発振器の周波数誤差を補正することが可能である。上述のように周波数誤差を補正することで、受信時に用いられる基準周波数発振器の周波数精度を維持することができる。しかしながら、基地局に送信される送信信号の生成時に用いられる基準周波数発振器については、上述のように周波数誤差を補正することができないため、周波数精度が低下することがある。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、複数の発振器を備える無線局において、各発振器の周波数精度のばらつきを抑制することが可能な無線局および周波数誤差補正方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る無線局は、
第1目標値が目標周波数である第1基準信号を出力する第1発振器と、
前記第1目標値に目標偏差を加算した第2目標値が目標周波数である第2基準信号を出力する少なくとも1つの第2発振器と、
前記第2基準信号に基づいて第1中間周波数が目標周波数である対象信号を生成する信号生成部と、
前記対象信号に基づいて、前記第1基準信号を用いて周波数変換して周波数が前記第1中間周波数より低い第2中間周波数である第2中間周波数信号を生成し、前記第2中間周波数信号を復調することで、復調信号を生成する復調部と、
前記復調信号に基づいて、前記第1基準信号と前記第2基準信号との周波数偏差を検出する偏差検出部と、
前記第1基準信号と前記第2基準信号との前記周波数偏差の前記目標偏差からのずれに応じて、前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正する誤差補正部と、
を備える。
【0010】
好ましくは、前記信号生成部は、入力される対象データと前記第2基準信号とに基づいて変調を行うことで変調信号である前記対象信号を生成する。
【0011】
好ましくは、前記信号生成部は、前記第2基準信号に基づく無変調信号である前記対象信号を生成する。
【0012】
好ましくは、前記信号生成部は、前記第1基準信号に基づいて無変調信号である変換用信号を生成し、
周波数が前記第1目標値に一致する目標信号に基づいて変調を行うことで生成された信号を受信し、受信信号に基づいて、前記変換用信号を用いて周波数変換を行うことで前記第1中間周波数が目標周波数である第1中間周波数信号を生成する受信部をさらに備え、
前記復調部は、前記対象信号または前記第1中間周波数信号に基づいて、前記第1基準信号を用いて周波数変換して前記第2中間周波数信号を生成し、前記第2中間周波数信号を復調することで、前記復調信号を生成し、
前記偏差検出部は、前記復調部が前記対象信号に基づいて前記復調信号を生成する場合は、前記復調信号に基づいて、前記第1基準信号と前記第2基準信号との周波数偏差を検出し、前記復調部が前記第1中間周波数信号に基づいて前記復調信号を生成する場合は、前記復調信号に基づいて、前記第1基準信号と前記目標信号との周波数偏差を検出し、
前記誤差補正部は、前記第1基準信号と前記目標信号との前記周波数偏差に応じて、前記目標信号に対する前記第1基準信号の周波数誤差を補正し、前記第1基準信号と前記第2基準信号との前記周波数偏差の前記目標偏差からのずれに応じて、前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正する。
【0013】
好ましくは、前記誤差補正部は、前記第1基準信号と前記目標信号との前記周波数偏差を低減させる周波数補償量に応じて前記目標信号に対する前記第1基準信号の周波数誤差を補正する。
【0014】
好ましくは、前記誤差補正部は、前記第1基準信号と前記第2基準信号との前記周波数偏差の前記目標偏差からのずれに応じて前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正した後は、前記周波数補償量に応じて前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正する。
【0015】
本発明の第2の観点に係る周波数誤差補正方法は、
第1目標値が目標周波数である第1基準信号を出力する第1発振器と、前記第1目標値に目標偏差を加算した第2目標値が目標周波数である第2基準信号を出力する少なくとも1つの第2発振器と、を備える無線局が行う周波数誤差補正方法であって、
前記第2基準信号に基づいて第1中間周波数が目標周波数である対象信号を生成し、
前記対象信号に基づいて、前記第1基準信号を用いて周波数変換して周波数が前記第1中間周波数より低い第2中間周波数である第2中間周波数信号を生成し、前記第2中間周波数信号を復調することで、復調信号を生成し、
前記復調信号に基づいて、前記第1基準信号と前記第2基準信号との周波数偏差を検出し、
前記第1基準信号と前記第2基準信号との前記周波数偏差の前記目標偏差からのずれに応じて、前記第2目標値に対する前記第2基準信号の周波数誤差を補正する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る無線局は、第1目標値が目標周波数である第1基準信号を出力する第1発振器と、第1目標値に目標偏差を加算した第2目標値が目標周波数である第2基準信号を出力する少なくとも1つの第2発振器と、を備える。無線局は、第2基準信号に基づく対象信号から生成された復調信号に基づいて検出された第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差の目標偏差からのずれに応じて、第2目標値に対する第2基準信号の周波数誤差を補正する。これにより、複数の発振器を備える無線局において、各発振器の周波数精度のばらつきを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係る無線局の構成を示すブロック図
図2】実施の形態1に係る無線局が行う周波数誤差補正方法の動作の一例を示すフローチャート
図3】実施の形態1に係る無線局が行う周波数誤差補正方法の動作の一例を示すフローチャート
図4】本発明の実施の形態2に係る無線局の構成を示すブロック図
図5】実施の形態2に係る無線局が行う周波数誤差補正方法の動作の一例を示すフローチャート
図6】本発明の実施の形態に係る無線局の変形例の構成を示すブロック図
図7】実施の形態に係る無線局が行う周波数誤差補正方法の動作の変形例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る無線局および周波数誤差補正方法について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0019】
(実施の形態1)
ダブルスーパーヘテロダイン方式の無線局を例にして、実施の形態1に係る無線局1について説明する。図1に示す無線局1は、第1目標値が目標周波数である第1基準信号を出力する第1発振器11と、第1目標値に目標偏差を加算した第2目標値が目標周波数である第2基準信号を出力する少なくとも1つの第2発振器12と、を備える。実施の形態1では、無線局1は、1つの第1発振器11と、1つの第2発振器12と、を備える。
【0020】
無線局1は、受信モードにおいて、第1基準信号を用いて、他の無線局からの信号を受信する受信処理を行う。さらに無線局1は、送信モードにおいて、第2基準信号を用いて他の無線局に信号を送信する送信処理を行う。無線局1は、誤差補正モードにおいて、第1発振器11にあわせて第2発振器12の周波数誤差を補正する。詳細には、無線局1は、誤差補正モードにおいて、第2基準信号を用いて生成され、第1中間周波数が目標周波数である対象信号に基づいて、第1基準信号を用いて周波数変換して第2中間周波数信号を生成し、第2中間周波数信号を復調して得られる復調信号から第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差を検出する。そして、無線局1は、周波数偏差と目標偏差に応じて、第2目標値に対する第2基準信号の周波数誤差を補正する。
【0021】
無線局1の各発振器の周波数精度、具体的には、第1発振器11および第2発振器12の周波数精度の低下を抑制するためには、第2基準信号の周波数誤差を補正する際に基準となる第1基準信号の周波数誤差を補正することが好ましい。第1基準信号の周波数誤差を補正する処理の一例として、無線局1は、受信モードにおいて、周波数が第1目標値である目標信号に基づいて変調を行うことで生成された信号を受信し、受信信号に基づいて、第1目標値に対する第1基準信号の周波数誤差を補正すればよい。実施の形態1では、無線局1は、目標信号を出力する基準発振器を有する他の無線局の一例である基地局から、目標信号に基づいて変調を行うことで生成された信号を受信し、受信信号に基づいて、第1目標値に対する第1基準信号の周波数誤差を補正する。
【0022】
変調方式として、周波数変調、具体的には、FSK(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調)を用いる場合を例にして、無線局1の各部について以下に説明する。無線局1は、データの入力を受け付ける入力部21と、入力部21で入力されたデータに対して信号処理を行って送信用データを生成する入力信号処理部22と、周波数誤差を補正するための補正用データおよび周波数変換に用いられる無変調信号を生成するための変換用データを出力するデータ出力部23と、送信用データまたは補正用データを多値FSKのシンボルにマッピングするシンボルマッパ24と、を備える。
【0023】
無線局1はさらに、第1発振器11および第2発振器12に接続され、第1基準信号または第2基準信号を出力する発振器切替器25と、発振器切替器25が出力する第2基準信号に応じた対象信号または送信用変調信号、あるいは発振器切替器25が出力する第1基準信号に応じた無変調信号である変換用信号を生成する信号生成部26と、を備える。無線局1はさらに、信号生成部26から取得した対象信号、送信用変調信号、または変換用信号を出力する信号切替器27と、信号切替器27が出力する送信用変調信号から送信信号を生成する送信部28と、を備える。送信部28で生成された送信信号は、送受信切替部29およびアンテナ30を介して、任意の他の無線局に送信される。
【0024】
無線局1はさらに、アンテナ30で受信され、送受信切替部29を介して供給される受信信号から第1中間周波数信号を生成する受信部31と、信号切替器27が出力する対象信号または受信部31で生成された第1中間周波数信号を出力する信号切替器32と、を備える。無線局1はさらに、信号切替器32が出力する対象信号または第1中間周波数信号に基づいて、第1基準信号を用いて周波数変換して第2中間周波数信号を生成し、第2中間周波数信号を復調することで、復調信号を生成する復調部33を備える。無線局1はさらに、復調信号に基づいて、第1基準信号と目標信号との周波数偏差および第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差を検出する偏差検出部34と、周波数偏差に基づいて第1発振器11および第2発振器12の周波数誤差を補正する誤差補正部35と、を備える。
【0025】
無線局1はさらに、復調信号から出力用データを抽出する出力信号処理部36と、出力用データを出力する出力部37と、を備える。
【0026】
上述の各部を制御するため、無線局1はコントローラ50を備える。コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)51と、I/O(Input/Output)52と、RAM(Random Access Memory)53と、ROM(Read-Only Memory)54と、を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ50から無線局1の各部への信号線が省略されている。コントローラ50は無線局1の各部にI/O52を介して接続され、各部の処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。CPU51は、ROM54に記憶されている制御プログラムを実行して、無線局1の制御を行う。またI/O52を介して入力されるコマンド、データ等は、処理され、RAM53に一時的に記憶される。CPU51は、RAM53に記憶されたコマンド、データ等を必要に応じて読み出し、無線局1の制御を行う。
【0027】
上記構成を有する無線局1の各部の詳細について以下に説明する。第1発振器11は、水晶振動子と発振回路とを有し、第1基準信号を出力する。実施の形態1では、第1基準信号は、正弦波のクロック信号である。第1基準信号の目標周波数である第1目標値f1は、例えば、50.40MHzである。第2発振器12は、水晶振動子と発振回路とを有し、第2基準信号を出力する。実施の形態1では、第2基準信号は、正弦波のクロック信号である。
【0028】
入力部21は、音声を取り込んでアナログ音声信号を生成するマイク、アナログ音声信号の振幅を増幅する低周波増幅器等を有する。
【0029】
入力信号処理部22は、増幅されたアナログ音声信号をA-D(Analog-to-Digital)変換し、圧縮符号化し、同期ワード、ヘッダ等を付加して送信用データを生成する。同期ワードは、既知のビットデータ系列である。
【0030】
データ出力部23は、周波数誤差を補正する際に用いられる補正用データをシンボルマッパ24に出力する。実施の形態1では、補正用データは、同期ワードを含む固定データである。補正用データが含む同期ワードは、送信用データに含まれる同期ワードと同じである。データ出力部23は、周波数変換に用いられる無変調信号の生成に用いられる変換用データを信号生成部26に出力する。変換用データは、例えば、0が連続するデータである。
【0031】
シンボルマッパ24は、入力信号処理部22で生成された送信用データまたはデータ出力部23で生成された補正用データをシンボルにマッピングし、マッピングしたシンボルを示す変調用データを出力する。例えば、無線局1が4値FSKを行う場合、シンボルマッパ24は、2ビットのデータ00に+1のシンボルを割り当て、2ビットのデータ01に-1のシンボルを割り当て、2ビットのデータ10に+3のシンボルを割り当て、2ビットのデータ11に-3のシンボルを割り当てる。シンボルごとに周波数偏移量が定められている。
【0032】
発振器切替器25は、受信モードでは第1発振器11から取得した第1基準信号を出力し、送信モードまたは誤差補正モードでは第2発振器12から取得した第2基準信号を出力する。
【0033】
信号生成部26は、入力される対象データと発振器切替器25が出力する第2基準信号とに基づいて周波数変調を行うことで変調信号である対象信号を生成し、または、発振器切替器25が出力する第1基準信号に基づいて無変調信号である変換用信号を生成する。対象信号の生成に用いられる対象データは、シンボルマッパ24から入力される変調用データである。
【0034】
詳細には、信号生成部26は、第1基準信号と後述の分周器41で分周された信号とに基づく位相差信号を出力する位相比較器38と、位相差信号を電圧に変換して出力するループフィルタ39と、制御電圧に応じた発振周波数で発振するVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発振器)40と、VCO40の出力を図示しないΔΣ変調器が出力する分周比に応じて分周する分周器41と、を備える。
【0035】
位相比較器38は、発振器切替器25が出力する第1基準信号または第2基準信号とVCO40から出力され、分周器41で分周された信号との位相差に応じた信号である位相差信号を出力する。
【0036】
ループフィルタ39は、位相比較器38が出力する位相差信号を電流に変換し、電流を積分して平滑化することで電圧に変換し、この電圧を制御電圧としてVCO40に出力する。
【0037】
VCO40は、受信モードにおいて、第1基準信号に基づいて周波数が受信周波数より第1中間周波数だけ低い無変調信号である変換用信号S1を生成し、出力する。例えば、受信モードにおいて、VCO40は、周波数が受信周波数より第1中間周波数だけ低い搬送波信号に、データ出力部23から出力され、周波数偏移量が0であることを示す変換用データを重畳した信号である変換用信号S1を生成する。受信周波数は、例えば、360MHz以上、かつ、400MHz以下の範囲に含まれる周波数である。第1中間周波数は、例えば、49.95MHzである。
【0038】
VCO40は、送信モードにおいて、第2基準信号に基づいて周波数が送信周波数である搬送波信号に、送信用データに基づく変調用データが重畳された変調信号である送信用変調信号S2を生成し、出力する。送信周波数は、例えば、360MHz以上、かつ、400MHz以下の範囲に含まれる周波数である。
【0039】
VCO40は、誤差補正モードにおいて、第2基準信号に基づいて周波数が第1中間周波数である搬送波信号に、補正用データに基づく変調用データが重畳された対象信号S3を生成し、出力する。
【0040】
信号切替器27は、受信モードにおいて、VCO40から出力される無変調信号である変換用信号S1を受信部31に送る。信号切替器27は、送信モードにおいて、VCO40から出力される送信用変調信号S2を送信部28に送る。信号切替器27は、誤差補正モードにおいて、VCO40から出力される対象信号S3を信号切替器32に送る。
【0041】
送信部28は、送信用変調信号を送信に適した所望のレベルまで増幅し、不要な信号、例えば高調波を低減させて送信信号を生成し、送受信切替部29およびアンテナ30を介して、送信信号を他の無線局に送信する。
【0042】
受信部31は、アンテナ30で受信され、送受信切替部29を介して供給される受信信号を増幅する増幅器42と、増幅器42が出力する受信信号から第1中間周波数信号を生成するミキサ43と、を備える。
【0043】
増幅器42は、例えば、LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)を有し、受信信号を増幅する。ミキサ43は、信号切替器27が出力する変換用信号S1と増幅器42で増幅された受信信号とを掛け合わせて、周波数が第1中間周波数である第1中間周波数信号を生成し、出力する。
【0044】
受信モードにおいて、信号切替器32は、受信部31が有するミキサ43から取得した第1中間周波数信号を復調部33に送る。誤差補正モードにおいて、信号切替器32は、信号切替器27を介してVCO40から取得した対象信号S3を復調部33に送る。
【0045】
復調部33は、第1基準信号と信号切替器32の出力とを掛け合わせて、周波数が第1中間周波数より低い第2中間周波数である第2中間周波数信号を生成するミキサ44と、第2中間周波数信号からデジタルデータを生成するA-D変換器45と、A-D変換器45で生成されたデジタルデータについて復調処理を行って復調信号を生成するFM(Frequency Modulation:周波数変調)検波部46と、を備える。
【0046】
受信モードにおいて、ミキサ44は、第1基準信号の周波数と第1中間周波数信号との差を周波数とする第2中間周波数信号を出力する。第1基準信号の目標周波数である第1目標値f1が50.40MHzであって、第1中間周波数が49.95MHzである場合、ミキサ44は、50.40MHzから49.95MHzを減算した値である0.45MHzの第2中間周波数信号を出力する。
【0047】
誤差補正モードにおいて、ミキサ44は、第1基準信号の周波数と対象信号S3の周波数との差を周波数とする第2中間周波数信号を出力する。
【0048】
A-D変換器45は、第2中間周波数信号をA-D変換してデジタルデータを生成し、FM検波部46に送る。
【0049】
FM検波部46は、A-D変換器45から取得した各データの値が予め定められた4つの振幅レベルのいずれに相当するか判別し、判別した振幅レベルに対応付けられた2ビットのデータ、具体的には、00,01,10,11のいずれかを復調信号として出力する。
【0050】
偏差検出部34は、復調信号に含まれる同期ワードを検出する同期ワード検出部47と、同期ワードに基づいて、第1基準信号と目標信号との周波数偏差および第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差を検出する偏差算出部48と、を備える。
【0051】
同期ワード検出部47は、復調信号と同期ワードとの相関演算を行うことを1シンボルずつ、換言すれば、2ビットずつずらして繰り返す。相関演算の結果、相関値が閾値以上であれば、同期ワードが検出されたとみなすことができる。
【0052】
偏差算出部48は、検出された同期ワードに対応するシンボルに含まれるDC(Direct Current:直流)オフセットから周波数偏移を算出する。偏差算出部48は、周波数偏移の移動平均値を周波数偏差として出力することが好ましい。
【0053】
無線局1が受信モードであって、第1発振器11に周波数誤差が生じている場合、具体的には、第1基準信号の周波数が第1目標値からずれている場合、ミキサ43が出力する第1中間周波数信号の周波数が目標値である第1中間周波数からずれてしまう。この結果、ミキサ44の出力である第2中間周波数信号の周波数が目標値である第2中間周波数からずれてしまう。偏差算出部48は、第2中間周波数信号に基づく復調信号から、第2中間周波数信号の周波数ずれ、換言すれば、第1基準信号と目標信号との周波数偏差を算出し、算出した周波数偏差を誤差補正部35に送る。
【0054】
無線局1が誤差補正モードであって、第2発振器12に周波数誤差が生じている場合、具体的には、第1基準信号の周波数と第2基準信号の周波数との差が目標偏差と異なる場合、対象信号S3の中心周波数が目標値である第1中間周波数からずれてしまう。この結果、ミキサ44の出力である第2中間周波数信号の周波数の中心周波数が目標値である第2中間周波数からずれてしまう。偏差算出部48は、第2中間周波数信号に基づく復調信号から、第2中間周波数信号の中心周波数のずれ、換言すれば、第1基準信号の周波数と第2基準信号の周波数との周波数偏差を算出し、算出した周波数偏差を誤差補正部35に送る。
【0055】
誤差補正部35は、偏差検出部34で検出された周波数偏差に応じて、第1基準信号および第2基準信号の周波数誤差を補正する。詳細には、誤差補正部35は、第1基準信号と目標信号との周波数偏差を低減させるように第1発振器11を制御して第1基準信号の周波数を調節する。さらに誤差補正部35は、周波数誤差が補正された第1発振器11が出力する第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差を目標偏差に近づけるように第2発振器12を制御して第2基準信号の周波数を調節する。
【0056】
出力信号処理部36は、偏差検出部34が有する同期ワード検出部47で同期ワードが検出されて同期がとられた復調信号から音声データを取り出し、D-A(Digital-to-Analog)変換してアナログ音声信号を生成し、出力部37に送る。
【0057】
出力部37は、アナログ音声信号を増幅させる低周波増幅器と、低周波増幅器で増幅されたアナログ音声信号を出力するスピーカと、を有する。
【0058】
上記構成を有する無線局1が行う周波数誤差補正処理について以下に説明する。無線局1は、起動されると受信モードとなり、図2に示す第1基準信号の周波数誤差補正処理を開始する。
【0059】
信号生成部26は、発振器切替器25を介して第1発振器11から取得した第1基準信号に基づいて、周波数が受信周波数より第1中間周波数だけ低い無変調信号である変換用信号S1を生成し、出力する(ステップS11)。信号切替器27は、ステップS11で生成された変換用信号S1を受信部31が備えるミキサ43に送る。
【0060】
ミキサ43は、アンテナ30で受信され、送受信切替部29を介して供給され、増幅器42で増幅された基地局からの受信信号と変換用信号S1とを掛け合わせて第1中間周波数信号を生成し、出力する(ステップS12)。
【0061】
復調部33が備えるミキサ44は、第1基準信号と信号切替器32を介して供給されるステップS12で生成された第1中間周波数信号とを掛け合わせて第2中間周波数信号を生成し、出力する(ステップS13)。
【0062】
復調部33が備えるFM検波部46は、ステップS13で生成された第2中間周波数信号をA-D変換器45でA-D変換することで生成されるデジタルデータについて復調処理を行って、復調信号を生成する(ステップS14)。
【0063】
偏差検出部34は、ステップS14で生成された復調信号に含まれる同期ワードに基づいて、第2中間周波数信号の周波数ずれ、換言すれば、第1基準信号と目標信号との周波数偏差を検出し、検出した周波数偏差を誤差補正部35に送る(ステップS15)。
【0064】
誤差補正部35は、ステップS15で検出された周波数偏差に応じて第1発振器11が出力する第1基準信号の周波数誤差を補正する(ステップS16)。例えば、誤差補正部35は、第1基準信号と目標信号との周波数偏差を低減させる周波数補償量に応じて、目標信号に対する第1基準信号の周波数誤差を補正する。ステップS16の処理が完了すると、無線局1は、第1基準信号の周波数誤差を補正する処理を終了する。その後、無線局1は、定められた時間ごとに、図2に示す第1基準信号の周波数誤差を補正する処理を繰り返す。この結果、無線局1が備える第1発振器11が出力する第1基準信号の周波数を、基地局に設けられ、目標信号を出力する基準発振器に追従させることが可能となる。
【0065】
上述の処理によって第1基準信号の周波数誤差が補正された後に、例えば無線局1の図示しない操作部が操作されることで無線局1が誤差補正モードとなった場合に、無線局1は図3に示す第2基準信号の周波数誤差補正処理を開始する。
【0066】
誤差補正モードにおいて、信号生成部26は、発振器切替器25を介して第2発振器12から取得した第2基準信号に基づいて、周波数が第1中間周波数である搬送波信号に、補正用データに基づく変調用データが重畳された変調信号である対象信号S3を生成し、出力する(ステップS21)。信号切替器27は、ステップS21で生成された対象信号S3を信号切替器32に送る。信号切替器32は、信号切替器27から、ステップS21で生成された対象信号S3の供給を受け、対象信号S3を復調部33に送る。
【0067】
復調部33が備えるミキサ44は、第1基準信号と信号切替器27,32を介して供給されるステップS21で生成された対象信号S3とを掛け合わせて第2中間周波数信号を生成し、出力する(ステップS22)。
【0068】
復調部33が備えるFM検波部46は、ステップS22で生成された第2中間周波数信号をA-D変換器45でA-D変換することで生成されるデジタルデータについて復調処理を行って、復調信号を生成する(ステップS23)。
【0069】
偏差検出部34は、復調信号に含まれる同期ワードに基づいて、第2中間周波数信号の周波数ずれ、換言すれば、第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差を検出し、検出した周波数偏差を誤差補正部35に送る(ステップS24)。
【0070】
誤差補正部35は、ステップS24で検出された周波数偏差の目標偏差からのずれに応じて第2発振器12が出力する第2基準信号の周波数誤差を補正する(ステップS25)。例えば、誤差補正部35は、第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差が目標偏差に近づくように、第2目標値に対する第2基準信号の周波数誤差を補正する。ステップS25の処理が完了すると、無線局1は、第2基準信号の周波数誤差を補正する処理を終了する。その後、無線局1は、定められた時間ごとに、図3に示す第2基準信号の周波数誤差を補正する処理を繰り返す。この結果、無線局1が備える第2発振器12が出力する第2基準信号の周波数を、第1発振器11が出力する第1基準信号の周波数に追従させることが可能となる。
【0071】
以上説明した通り、実施の形態1に係る無線局1は、第2基準信号に基づく対象信号S3から生成された復調信号に基づいて検出された第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差の目標偏差からのずれに応じて、第2目標値に対する第2基準信号の周波数誤差を補正する。この結果、第2発振器12が出力する第2基準信号の周波数を、第1発振器11が出力する第1基準信号の周波数に追従させることができ、無線局1における各発振器の周波数精度のばらつきが抑制される。
【0072】
無線局1によれば、第1発振器11が出力する第1基準信号にあわせて第2発振器12が出力する第2基準信号の周波数誤差を補正するため、他の無線局から信号を受信できない場合であっても、無線局1における各発振器の周波数精度のばらつきを抑制することが可能である。
【0073】
さらに、受信信号から生成された復調信号に基づいて検出された第1基準信号と目標信号との周波数偏差に応じて第1基準信号の周波数誤差を補正することで、第1発振器11が出力する第1基準信号の周波数を、他の無線局に設けられている基準発振器が出力する目標信号の周波数に追従させることができる。この結果、無線局1における各発振器の周波数精度の低下を抑制することが可能となる。上述のように周波数誤差補正処理を行うことで、複数の発振器、具体的には第1発振器11および第2発振器12を備える無線局1において、各発振器の周波数誤差を補正することが可能である。
【0074】
無線局1によれば、第1基準信号の周波数誤差を補正する処理および第2基準信号の周波数誤差を補正する処理のいずれにおいても、同期ワード検出部47で検出された同期ワードに基づいて偏差算出部48で算出された周波数偏差が用いられる。このため、第1基準信号および第2基準信号の周波数誤差を補正するために個別に周波数偏差を検出する回路を設ける必要がなく、無線局1の構造の複雑化が抑制される。
【0075】
(実施の形態2)
第2目標値に対する第2基準信号の周波数誤差を補正する方法は、上述の例に限られない。無変調信号である対象信号を用いて第2基準信号の周波数誤差を補正する無線局2について、実施の形態1に係る無線局1と異なる点を中心に実施の形態2で説明する。
【0076】
図4に示す実施の形態2に係る無線局2は、無線局1と同様の構成を有するが、データ出力部23が変換用データのみを出力し、信号生成部26が無変調信号である対象信号S4を生成する点で、無線局1と異なる。
【0077】
データ出力部23は、周波数変換に用いられる無変調信号の生成に用いられる変換用データを信号生成部26に出力する。変換用データは、例えば、0が連続するデータである。
【0078】
信号生成部26は、発振器切替器25が出力する第1基準信号に基づいて無変調信号である変換用信号S1を生成し、発振器切替器25が出力する第2基準信号に基づいて無変調信号である対象信号S4を生成する。
【0079】
詳細には、VCO40は、受信モードにおいて、実施の形態1と同様に、第1基準信号に基づいて変換用信号S1を生成し、出力する。VCO40は、送信モードにおいて、実施の形態1と同様に、第2基準信号に基づいて送信用変調信号S2を生成し、出力する。VCO40は、誤差補正モードにおいて、第2基準信号に基づいて周波数が第1中間周波数である無変調信号である対象信号S4を生成し、出力する。具体的には、誤差補正モードにおいて、VCO40は、周波数が第1中間周波数である搬送波信号に、データ出力部23から出力され、周波数偏移量が0であることを示す変換用データを重畳した信号である対象信号S4を生成する。
【0080】
信号切替器27は、受信モードにおいて、VCO40から出力される変換用信号S1を受信部31に送る。信号切替器27は、送信モードにおいて、VCO40から出力される送信用変調信号S2を送信部28に送る。信号切替器27は、誤差補正モードにおいて、VCO40から出力される対象信号S4を信号切替器32に送る。
【0081】
受信モードにおいて、信号切替器32は、受信部31が有するミキサ43から取得した第1中間周波数信号を復調部33に送る。誤差補正モードにおいて、信号切替器32は、信号切替器27を介してVCO40から取得した対象信号S4を復調部33に送る。
【0082】
受信モードにおいて、ミキサ44は、第1基準信号の周波数と第1中間周波数信号との差を周波数とする第2中間周波数信号を出力する。誤差補正モードにおいて、ミキサ44は、第1基準信号の周波数と対象信号S4との周波数との差を周波数とする第2中間周波数信号を出力する。
【0083】
FM検波部46は、復調信号を同期ワード検出部47および偏差算出部48に出力する。誤差補正モードにおいて、偏差算出部48は、復調信号のDCオフセットから周波数偏移を算出する。偏差算出部48は、周波数偏移の移動平均値を周波数偏差として出力することが好ましい。
【0084】
無線局2が誤差補正モードであって、第2発振器12に周波数誤差が生じている場合、具体的には、第1基準信号の周波数と第2基準信号の周波数との差が目標偏差と異なる場合、対象信号S4の中心周波数が目標値である第1中間周波数からずれてしまう。この結果、ミキサ44の出力である第2中間周波数信号の周波数の中心周波数が目標値である第2中間周波数からずれてしまう。偏差算出部48は、第2中間周波数信号に基づく復調信号から、第2中間周波数信号の中心周波数のずれ、換言すれば、第1基準信号の周波数と第2基準信号の周波数との周波数偏差を算出し、算出した周波数偏差を誤差補正部35に送る。
【0085】
上記構成を有する無線局2が行う周波数誤差補正処理について以下に説明する。受信モードにおける第1基準信号の周波数誤差補正処理は、実施の形態1と同様である。第1基準信号の周波数誤差が補正された後に、例えば無線局2の図示しない操作部が操作されることで無線局2が誤差補正モードとなった場合に、無線局2は図5に示す第2基準信号の周波数誤差補正処理を開始する。
【0086】
誤差補正モードにおいて、VCO40は、第2基準信号に基づいて周波数が第1中間周波数である無変調信号である対象信号S4を生成する(ステップS31)。信号切替器27は、ステップS31で生成された対象信号S4を信号切替器32に送る。信号切替器32は、信号切替器27から、ステップS31で生成された対象信号S4の供給を受け、対象信号S4を復調部33に送る。
【0087】
復調部33が備えるミキサ44は、第1基準信号と信号切替器27,32を介して供給されるステップS31で生成された対象信号S4とを掛け合わせて第2中間周波数信号を生成し、出力する(ステップS32)。ステップS32の処理の終了後に行われるステップS23からS25までの処理は、図3のステップS23からS25までの処理と同様である。
【0088】
ステップS25の処理が完了すると、無線局2は、第2基準信号の周波数誤差を補正する処理を終了する。その後、無線局2は、定められた時間ごとに、図5に示す第2基準信号の周波数誤差を補正する処理を繰り返す。この結果、無線局2が備える第2発振器12が出力する第2基準信号の周波数を、第1発振器11が出力する第1基準信号の周波数に追従させることが可能となる。
【0089】
以上説明した通り、実施の形態2に係る無線局2は、第2基準信号に基づく対象信号S4から生成された復調信号に基づいて検出された第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差の目標偏差からのずれに応じて、第2目標値に対する第2基準信号の周波数誤差を補正する。この結果、第2発振器12が出力する第2基準信号の周波数を、第1発振器11が出力する第1基準信号の周波数に追従させることができ、無線局2における各発振器の周波数精度のばらつきが抑制される。
【0090】
無線局2は、第2基準信号の周波数誤差の補正処理において、FM検波部46が出力する復調信号に基づいて、第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差を算出するため、同期ワードの検出処理の完了を待つ必要がない。このため、無線局2は、周波数偏差の算出処理を迅速に行うことができる。
【0091】
本発明は、上述の実施の形態の例に限られない。無線局1,2が備える第2発振器の数は任意である。一例として、図6に示す無線局3は2つの第2発振器12,49を備える。無線局2が誤差補正モードであって、第2発振器49の周波数誤差を補正する場合、VCO40は、第2発振器49が出力する第2基準信号に基づいて周波数が第1中間周波数である搬送波信号に、補正用データに基づく変調用データが重畳された対象信号S3を生成し、出力する。
【0092】
第1基準信号の周波数誤差を補正する方法は、上述の例に限られない。一例として、無線局1-3は、基地局と通信する他の無線局であって、発振器の周波数誤差が補正されている無線局から受信した受信信号に基づいて、第1基準信号の周波数誤差を補正してもよい。他の一例として、無線局1-3は、外部から供給される信号、例えばPPS(Pulse Per Second)信号に応じて校正される周波数カウンタを備え、周波数カウンタによって得られた第1基準信号の実際の周波数に応じて第1基準信号の周波数誤差を補正してもよい。
【0093】
無線局1-3は、例えば起動直後に、図2に示すように第1基準信号の周波数誤差を補正してから、図3に示すように第2基準信号の周波数誤差を補正した後は、図7に示すように第1基準信号と目標信号との周波数偏差に応じて、第1基準信号の周波数誤差および第2基準信号の周波数誤差を補正してもよい。
【0094】
図7に示すステップS11からS16までの処理は、図2に示す処理と同様である。ステップS16の後、誤差補正部35は、ステップS15で検出された周波数偏差に応じて第2発振器12が出力する第2基準信号の周波数誤差を補正する(ステップS17)。例えば、誤差補正部35は、ステップS16で第1基準信号の周波数誤差の補正に用いられた第1基準信号と目標信号との周波数偏差を低減させる周波数補償量に応じて第2発振器12が出力する第2基準信号の周波数誤差を補正する。換言すれば、第1基準信号の周波数の調節量と第2基準信号の周波数の調節量とは同じである。図7に示すように第1基準信号と目標信号との周波数偏差に応じて第1基準信号および第2基準信号の周波数誤差を補正することで、周波数誤差の補正をより短い時間で行うことが可能となる。
【0095】
上述の実施の形態では、VCO40は、送信周波数および受信周波数を含む使用周波数帯、例えば、360MHz以上、かつ、400MHz以下の範囲から、中間周波数帯、例えば49.95MHzを含む周波数帯に亘って発振可能であるが、無線局1-3は、使用周波数帯で発振可能なVCOと、中間周波数帯で発振可能なVCOと、を備えてもよい。
【0096】
第1基準信号と第2基準信号との周波数偏差の目標値である目標偏差は任意である。無線局2において、第1基準信号と第2発振器12が出力する第2基準信号との目標偏差および第1基準信号と第2発振器49が出力する第2基準信号との目標偏差は、同じでもよいし、異なってもよい。
【0097】
無線局1-3において、入力信号処理部22、データ出力部23、シンボルマッパ24、誤差補正部35、出力信号処理部36、FM検波部46、同期ワード検出部47、および偏差算出部48をDSP(Digital Signal Processor)で実現し、信号生成部26をVCOが内蔵されたPLL IC(Integrated circuit:集積回路)で実現し、ミキサ44およびA-D変換器45をIF(Intermediate Frequency:中間周波数)検波ICで実現してもよい。
【0098】
無線局1-3の変調方式は、4値FSKに限られず、復調信号から周波数偏差を検出できれば任意である。一例として、無線局1-3は、2値FSKを行ってもよいし、4値FSK以外の多値FSKを行ってもよい。他の一例として、無線局1-3は、PSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)、例えばπ/4DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying:差動四相位相偏移変調)を行ってもよいし、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交位相振幅変調)を行ってもよい。
【0099】
その他、上述のハードウェア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1,2,3 無線局
11 第1発振器
12 第2発振器
21 入力部
22 入力信号処理部
23 データ出力部
24 シンボルマッパ
25 発振器切替器
26 信号生成部
27,32 信号切替器
28 送信部
29 送受信切替部
30 アンテナ
31 受信部
33 復調部
34 偏差検出部
35 誤差補正部
36 出力信号処理部
37 出力部
38 位相比較器
39 ループフィルタ
40 VCO
41 分周器
42 増幅器
43,44 ミキサ
45 A-D変換器
46 FM検波部
47 同期ワード検出部
48 偏差算出部
49 第2発振器
50 コントローラ
51 CPU
52 I/O
53 RAM
54 ROM
S1 変換用信号
S2 送信用変調信号
S3,S4 対象信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7