(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079756
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】通信機器及び通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 40/10 20090101AFI20230601BHJP
H04W 40/02 20090101ALI20230601BHJP
H04W 84/18 20090101ALN20230601BHJP
【FI】
H04W40/10
H04W40/02 110
H04W84/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193369
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐介
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA43
5K067BB27
5K067KK05
(57)【要約】
【課題】通信機器の消費電力を低減することができる通信機器及び通信システムを提供する。
【解決手段】複数の他の通信機器から取得する通信経路の情報から、前記通信機器毎のゲートウェイからのホップ数により算出されるRANK値に基づいて初期経路を決定し、前記初期経路によって通信される自装置の消費電力予測値に基づいて、前記初期経路から修正した修正経路を決定するツリー構造の無線メッシュネットワークを構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の他の通信機器から取得する通信経路の情報から、前記通信機器毎のゲートウェイからのホップ数により算出されるRANK値に基づいて初期経路を決定し、
前記初期経路によって通信される自装置の消費電力予測値に基づいて、前記初期経路から修正した修正経路を決定するツリー構造の無線メッシュネットワークを構成する通信機器。
【請求項2】
前記消費電力予測値は、前記通信経路の末端の前記通信機器から前記ゲートウェイに向けて送信されるアプリケーションデータの送信間隔値に基づいて決定される請求項1に記載の通信機器。
【請求項3】
前記消費電力予測値は、前記通信経路の末端の前記通信機器から前記ゲートウェイに向けて送信されるアプリケーションデータの送信間隔値と、前記通信機器から周辺の前記通信機器に送信される自装置の情報を周辺の前記通信機器に知らせるためのデータの送信間隔値とに基づいて決定される請求項1に記載の通信機器。
【請求項4】
前記通信経路の末端の前記通信機器から前記ゲートウェイに送信される前記アプリケーションデータには、自装置の前記送信間隔値を付加して、他の前記通信機器に送信する請求項2又は3に記載の通信機器。
【請求項5】
前記アプリケーションデータを送信するデータフォーマットには、下位の領域に、中継の前記通信機器の前記送信間隔値を入力するための予約部を設け、
前記予約部は、予め定められた特定の数値が初期値として入力されており、
前記データフォーマットの最下位の領域から前記特定の数値ではない数値を検索していき、前記特定の数値ではない数値を発見した場合は、当該特定の数値ではない数値の直下の領域に、前記特定の数値に替えて自装置の前記送信間隔値を付加する請求項4に記載の通信機器。
【請求項6】
前記消費電力予測値は、予め定められたタイミングで再算出され、
再算出された消費電力予測値に基づいて修正経路を修正する請求項1~5のいずれか1項に記載の通信機器。
【請求項7】
バッテリーで駆動される請求項1~6のいずれか1項に記載に記載の通信機器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の通信機器と、
前記ゲートウェイと、から構成される通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器及び通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の通信機器によりメッシュネットワークを構成するゲートウェイにおいて、ポップ数と経路の数とに基づき、各通信機器を経由する経路の数を平滑化するように経路の選択を行うものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すゲートウェイではホップ数と経路の数だけで通信経路を決定しているため、データの送信間隔が異なることによる各通信機器の消費電力の偏りが大きくなり、通信機器の消費電力が大きくなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するために提案されたものであり、通信機器の消費電力を低減することができる通信機器及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る通信機器は、複数の他の通信機器から取得する通信経路の情報から、前記通信機器毎のゲートウェイからのホップ数により算出されるRANK値に基づいて初期経路を決定し、前記初期経路によって通信される自装置の消費電力予測値に基づいて、前記初期経路から修正した修正経路を決定するツリー構造の無線メッシュネットワークを構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通信機器の消費電力を低減することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る通信システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る通信機器の概略ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るゲートウェイの概略ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るDIOデータの送信を説明するための説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るDAOデータの送信を説明するための説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る通信データのデータフォーマットの一例を説明するための説明図である。
【
図7】
図6に示す通信データのデータフォーマットに送信間隔値を入力した場合の一例を説明するための説明図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る初期経路と送信間隔値との一例を説明するための説明図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る修正経路の一例を説明するための説明図である。
【
図10】
図9に示す修正経路から更に修正した修正経路と送信間隔値との一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0010】
図1を用いて、本実施形態に係る通信システム10の一例を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る通信システム10の概略構成の一例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る通信システム10は、複数の通信機器100(101~108)及びゲートウェイ200を含む無線メッシュネットワークで構成される。通信機器100は、無線メッシュネットワークにおいて、通信機器100間及びゲートウェイ200とデータを送受信する装置である。また、ゲートウェイ200は、無線メッシュネットワーク10の入口となる装置であり、通信機器100とデータを送受信すると共に、他のネットワークともデータを送受信する装置である。また、本実施形態では、通信機器100をノードとも言う。
【0012】
図1に示す点線は、各通信機器100及びゲートウェイ200の通信可能範囲を示す。すなわち、同じ点線で囲まれた通信機器100及びゲートウェイ200は通信可能であることを示している。例えば、ゲートウェイ200は、通信機器101と通信機器102と通信可能であり、通信機器101は、ゲートウェイ200、通信機器102、通信機器103及び通信機器104と通信可能である。また、通信機器102は、ゲートウェイ200、通信機器101及び通信機器105と通信可能である。また、通信機器103は、通信機器101、通信機器104、通信機器106及び通信機器107と通信可能である。また、通信機器104は、通信機器101、通信機器103、通信機器105、通信機器106、通信機器107及び通信機器108と通信可能である。また、通信機器105は、通信機器102、通信機器104、通信機器107及び通信機器108と通信可能である。また、通信機器106は、通信機器103、通信機器104及び通信機器107と通信可能である。また、通信機器107は、通信機器103、通信機器104、通信機器105、通信機器106及び通信機器108と通信可能である。
【0013】
図2は、本実施形態に係る通信機器100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0014】
図2に示すように、通信機器100は、データ受信部110、解析部120、情報格納部130、経路算出部140、制御部150、タイマ制御部160、省電力制御部170、アプリケーションデータ制御部180及びデータ送信部190を有する。
【0015】
データ受信部110は、周辺の通信機器100の情報やアプリケーションデータなどの通信データを受信する。ここで、通信機器100の情報は、アドレス、RANK、シーケンス番号、動作モードなどである。また、アプリケーションデータは、無線メッシュネットワークで送受信されるアプリケーション、例えば、無線メッシュネットワークがセンサの検出データを送受信するネットワークである場合は、当該センサの検出データである。
【0016】
解析部120は、データ受信部110が受信した通信データを解析する。解析部120は、解析の結果、周辺の通信機器100の情報を含むデータと、それ以外のアプリケーションデータなどのデータとに分類する。周辺の通信機器100の情報を含むデータは、情報格納部130に送信する。それ以外のデータは制御部150に送信する。
【0017】
情報格納部130は、解析部120から送信されたデータから、通信機器100毎の、RANK、データ損失量及び消費電力予測値を保存する。かかるデータは、周辺の通信機器100のRANKなどだけではなく、自装置のRANKなどのデータも含まれる。RANK、データ損失量及び消費電力予測値については後述する。RANK、データ損失量及び消費電力予測値は、経路算出部140に送信する。
【0018】
経路算出部140は、情報格納部130から送信されたRANK、データ損失量及び消費電力予測値を元に、ゲートウェイ200までの通信経路を算出する。そして、算出した通信経路を制御部150に送信する。通信経路の算出については後述する。
【0019】
制御部150は、解析部120、経路算出部140、タイマ制御部160、アプリケーションデータ制御部180から送信された情報類を元にデータ(後述するDIOデータと通信データ)を生成する。そして、生成したデータをデータ送信部190に送信する。
【0020】
タイマ制御部160は、通信機器100の自装置の情報を周辺に通知するためのタイマ設定時間を管理する。当該時間になった場合に、制御部150に自装置の情報を周辺に通知するための時間になったことを通知する。かかる通知を受信した制御部150は、後述するように、DIOデータとして周辺の通信機器100に送信する。かかる自装置の情報を周辺に通知するためのタイマ設定時間は、制御部150により決定される。制御部150は、後述するDIOデータの送信に成功する確率が高い場合はタイマ設定時間を長く設定し、DIOデータの送信に成功する確率が低い場合はタイマ設定時間を短く設定する。すなわち、通信が安定している場合はタイマ設定時間が長くなり、安定していない場合はタイマ設定時間が短くなる。
【0021】
省電力制御部170は、自装置がSleep状態に移行するための制御をする。
【0022】
アプリケーションデータ制御部180は、ゲートウェイ200に送信するためのデータ(例えば、センサから送信された検出データ)を取得した場合に、制御部150に当該データを送信する。
データ送信部190は、制御部150から送信された通信データを他の通信機器100やゲートウェイ200に送信する。
【0023】
図3は、本実施形態に係るゲートウェイ200のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0024】
図3に示すように、ゲートウェイ200は、データ受信部210、解析部220、情報監視部230、制御部240、タイマ制御部250及びデータ送信部260を有する。
【0025】
データ受信部210は、周辺の通信機器100の情報やアプリケーションデータなどの通信データを受信する。
【0026】
解析部220は、データ受信部210が受信した通信データを解析する。解析部220は、解析の結果、通信機器100間で構築された通信経路を含むデータと、それ以外のアプリケーションデータなどのデータとに分類する。通信経路を含むデータは、情報監視部230に送信する。それ以外のデータは制御部240に送信する。
【0027】
情報監視部230は、解析部220から送信された全ての通信機器100の通信経路を保存、更新を実施する。そして、最新の通信経路を制御部240に送信する。
【0028】
制御部240は、データ解析部220、情報監視部230、タイマ制御部250から送信された情報類を元にデータ(後述するDIOデータと通信データ)を生成する。そして、データをデータ送信部190に送信する。
【0029】
タイマ制御部250は、ゲートウェイ200の自装置の情報を周辺に通知するためのタイマ設定時間を管理する。当該時間になった場合に、制御部240に自装置の情報を周辺に通知するための時間になったことを通知する。かかる通知を受信した制御部240は、後述するように、DIOデータとして周辺の通信機器100に送信する。かかる自装置の情報を周辺に通知するためのタイマ設定時間は、制御部240により決定される。制御部240は、後述するDIOデータの送信に成功する確率が高い場合はタイマ設定時間を長く設定し、DIOデータの送信に成功する確率が低い場合はタイマ設定時間を短く設定する。すなわち、通信が安定している場合はタイマ設定時間が長くなり、安定していない場合はタイマ設定時間が短くなる。
【0030】
データ送信部260は、制御部240から送信された通信データを他の通信機器100やサーバ(図示せず)に送信する。
【0031】
次に、通信経路の算出について説明する。
まず、通信経路の初期経路の算出について説明する。
【0032】
通信機器100やゲートウェイ200(データ送信部190、データ送信部260)は、自装置の情報(アドレス、RANK、シーケンス番号、動作モードなど)を周辺の通信機器100に知らせるために、DIOデータをマルチキャスト送信する(
図4参照)。DIOデータは、トリクルタイマ(タイマ制御部160)を使用し送信される(データ送信部190)。トリクルタイマは、ネットワークの通信が安定している間は、タイマ設定時間が長くなり、不安定な間は短くなる。
【0033】
各通信機器100は、周辺の通信機器100の情報を把握すると、ゲートウェイ200から無線メッシュネットワークの中継の通信機器100(本例では、通信機器101、通信機器102、通信機器103、通勤機器104、通信機器105)、末端の通信機器100(本例では、通信機器106、通信機器107、通信機器108)まで順にRANK(256×(n+1))が割り当てられる。ここで、nはゲートウェイ200からのホップ数である。ゲートウェイ200のRANKは256であり、通信機器100は、RANKが小さいほどゲートウェイ200に近いことになる。
図1のネットワークの場合、通信機器101、102がRANK512、通信機器103、通信機器104、通信機器105がRANK768、通信機器106、通信機器107、通信機器108がRANK1024となる。
【0034】
各通信機器100(経路算出部140)は、RANK値とデータ損失量の情報をもとに、親決めをする。ここで、データ損失量は、ゲートウェイ200に向けて送信したアプリケーションデータが何回目の送信で成功したかの回数である。なお、データ損失量は、何回目の送信で成功したかの回数に限定されず、送信の成功率などであってもよい。
【0035】
親決めの例として通信機器106について説明をする。
【0036】
通信機器106で親決めをする際に、RANK値とデータ損失量を足し、値が低い方を親として決定する。通信機器106で親が決定した場合、通信機器106は親(通信機器103が親とした場合)に対してDAOデータを通信機器103に対してユニキャスト送信する(
図5)。通信機器103は通信機器106からDAOデータを受信すると自装置のルーティングテーブルに子として通信機器106を登録し、DAOデータを通信機器103の親の通信機器101にユニキャスト送信する。同様に、通信機器101もルーティングテーブルの登録をし、ゲートウェイ200にユニキャスト送信する。
【0037】
ゲートウェイ200は通信経路情報データを受信すると、自身のルーティングテーブル(情報監視部230)に末端の通信機器106から、通信機器103、通信機器101の順となる経路を登録し、通信経路情報データを送信してきた通信機器100(通信機器101、通信機器103及び通信機器106)にACKを送信する(
図5)。
【0038】
他の通信機器100も同様な処理をし、最終的にゲートウェイ200のルーティングテーブル(情報監視部230)には、全通信機器100の経路情報が登録される(後述する
図8参照)。
【0039】
ネットワークの末端の通信機器100(通信機器106、通信機器107及び通信機器108)がアプリケーションデータをゲートウェイ200に送信した場合は、ゲートウェイ200に登録されている経路情報の経路でデータが送信されることになる。
【0040】
また、通信機器100のうち、ネットワークの末端の通信機器100(通信機器106、通信機器107及び通信機器108)には、当該ネットワークで送受信されるアプリケーションのデータの元となるセンサなどが接続されている(図示せず)。
【0041】
なお、かかる初期経路の算出は、非特許文献「RFC6550 “RPL:IPv6 Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks」に規定された通信プロトコルである。
【0042】
次に、通信経路の再算出について
図6~
図10を用いて説明する。
図1の通信機器106、通信機器107、通信機器108からゲートウェイ200にアプリケーションデータを送信する際には、各通信機器100は、アプリケーションデータに送信間隔値を付加して通信データを生成して、送信する。そして、通信データに含まれるアプリケーションデータの送信間隔値に基づいて、経路を算出する。
【0043】
通信データについて、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6に示すように、アプリケーションデータをゲートウェイ200に送信するための通信データは、イーサネットヘッダ部、IPヘッダ部、UDPヘッダ部、アプリケーションデータ、送信間隔値及び予約部を含むデータフォーマットにより構成される。アプリケーションデータは、上述したように、無線メッシュネットワークで送受信されるアプリケーション、例えば、無線メッシュネットワークがセンサの検出データを送受信するネットワークである場合は、当該センサの検出データである。送信間隔値は、無線メッシュネットワークのユーザや管理者などにより設定された無線メッシュネットワークの末端の通信機器100毎の通信データの送信間隔の値である。本例では、通信機器106での送信間隔値を4分、通信機器107での送信間隔値を6分、通信機器108での送信間隔値を15分として説明する。すなわち、無線メッシュネットワークの末端の通信機器106からは、ゲートウェイ200に向けてアプリケーションデータを4分毎、通信機器107からは、ゲートウェイ200に向けて6分毎、通信機器108からは、ゲートウェイ200に向けて15分毎、にそれぞれ送信する場合を例にして説明する。また、上述した初期経路の算出により、末端の通信機器106の親が通信機器103、末端の通信機器107の親を通信機器103、末端の通信機器108の親を通信機器104の場合を例にして説明する(
図8参照)。なお、図中の各通信機器100とゲートウェイ200とを接続する線は、経路を示す線である。また、中継の通信機器100の送信間隔値を入力するための予約部分には「0」を入力しておく。すなわち、通信データのうち、下位の領域には、想定される無線メッシュネットワークの末端の通信機器100からゲートウェイ200までに経由する中継の通信機器100の数の送信間隔値を記憶できる分の固定長の空き領域を備えておく。かかる空き領域を中継の通信機器100の送信間隔値を記憶するための予約部として予め定められた特定の数値、例えば「0」を初期値として入力しておく。通信データは、アプリケーションデータの送信だけではなく、末端の通信機器100(本例では、通信機器106、通信機器107、通信機器108)に設定されているアプリケーションデータの送信間隔値を中継の通信機器100に知らせる役割も持つ。
【0044】
例えば、通信機器106(制御部150)は、アプリケーションデータに送信間隔値「4」を付加した通信データを生成し、親の通信機器100である通信機器103に送信する(送信部190)。また、通信機器107(制御部150)も同様に、アプリケーションデータに送信間隔値「6」を付加した通信データを生成する。また、送信間隔値が付加されることにより、UDPヘッダ部のチェックサム値が変化するので、チェックサム値を再計算し設定する。そして、親の通信機器100である通信機器103に送信する(送信部190)。2つの通信データを受信した通信機器103は、通信データの最下位の領域から予約部分に入力されている「0」を検索していき、「0」でない数値を発見した場合に、当該「0」でない数値の直下の領域に、受信した通信データ「4」と「6」のうち、小さい数値の「4」を、自装置の送信間隔値として入力する(
図7)。そして、通信機器103は、通信データを親の通信機器101に送信する(送信部190)。ここで、複数の通信機器100の親になっている通信機器100の場合は、複数の通信機器100のうち、送信間隔値の小さい方の値を自装置の送信間隔値として記憶する。すなわち、送信間隔値4分の通信機器106と送信間隔値6分の通信機器107との親となっている通信機器103は、送信間隔値の小さい方の通信機器106の送信間隔値4分を自装置の送信間隔値として扱う。
【0045】
また、同様に、通信機器108も、アプリケーションデータに送信間隔値「15」を付加した通信データを生成し、親の通信機器100である通信機器104に送信する。通信データを受信した通信機器104は、通信データの下位の桁数から予約部分に入力されている「0」を検索していき、「0」でない桁数を発見した場合に、当該「0」でない部分の直下の桁数に、受信した通信データ「15」を、自装置の送信間隔値として入力する。そして、通信機器104は、通信データを親の通信機器101に送信する。
通信機器103と通信機器104から通信データを受信した通信機器101は、通信データの下位の桁数から予約部分に入力されている「0」を検索していき、「0」でない桁数を発見した場合に、当該「0」でない部分の直下の桁数に、受信した通信データ「4」と「15」のうち、小さい数値の「4」を、自装置の送信間隔値として入力する。そして、通信機器101は、通信データを親のゲートウェイ200に送信する。
【0046】
このように、初期経路では、
図8に示すように、通信機器103の送信間隔値が「4」、通信機器104の送信間隔値が「15」となる。また、
図8に示すように、通信機器107の親は通信機器103となっている。
【0047】
データの送信間隔が大きいほど各通信機器100の消費電力予測値が小さくなることから、経路算出部140は、送信間隔値とDIOデータのトリクルタイマのタイマ設定時間とを合計した合計値により消費電力予測値を算出する。そして、データ損失量に差がない場合は、算出した合計値が大きくなる通信機器100を親の通信機器100に決定する。例えば、通信機器107は、トリクルタイマのタイマ設定時間が同じ場合は、データ送信間隔値の長い通信機器104を親の通信機器100に決定する(経路算出部140)。これにより、消費電力が低い通信機器100を親として選択することができる。かかる経路の情報をDIOデータに含め周辺の通信機器100に通知する。各通信機器100が親を決めする際には、従来の非特許文献「RFC6550 “RPL:IPv6 Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks」に規定された通信プロトコルによる経路の算出に使用されるRANKとパケット損失量に加え、消費電力予測値も考慮に入れて決定することになる。なお、データ損失量に差があった場合であっても、消費電力予測値の小さい経路を算出するようにしてもよい。
【0048】
また、通信機器106も、周辺の通信機器100の情報を取得するに連れて、通信可能な通信機器100のうちから、送信間隔値の大きい通信機器104を親として選択する(
図9)。この場合、通信機器103の子となる通信機器100は存在しなくなるため、通信機器103は、情報格納部130で保存していた自装置の送信間隔値「4」を、より大きな値(例えば、送信間隔値が一番大きい通信機器100の2倍)に再算出して設定する。本実施例においては、通信機器104および108の送信間隔値「15」の2倍である送信間隔値「30」を通信機器103の送信間隔値として再設定する。それにより、予め定められたタイミングにおける経路の再算出の際に、再度、通信機器106および通信機器107は修正経路を再修正して、通信機器103を親として選択することができ(
図10)、分散して通信をすることが可能である。各通信機器100は周辺の通信機器100の送信間隔値に合わせて、Sleep状態への移行、Active状態への移行を実施することで省電力化を図っている(省電力制御部170)。
【0049】
なお、アプリケーションデータの送信間隔値とDIOデータのトリクルタイマのタイマ設定時間との合計値により経路を算出しているが、これに限定されず、アプリケーションデータの送信間隔値のみによって経路を算出してもよいし、又、DIOデータのトリクルタイマのタイマ設定時間のみによって経路を算出してもよい。
また、通信経路の再算出は、予め定められたタイミング、例えば、通信機器100が追加、削除、又は交換されたタイミングや、特定の時間間隔、で実行される。
【0050】
ここで、通信機器100やゲートウェイ200は、バッテリーで駆動するようにしてもよい。バッテリーで駆動する場合は、本発明により特定の通信機器100のバッテリーの消費が偏ることがなくなり、通信機器100毎の消費電力の平準化が図られることから、通信システム10全体の寿命が長くなる。
【符号の説明】
【0051】
10 通信システム
100(101~109) 通信機器
200 ゲートウェイ