(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079766
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】リコータ、及びこれを備えた積層造形装置、並びに積層造形方法
(51)【国際特許分類】
B22F 12/67 20210101AFI20230601BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20230601BHJP
B29C 64/214 20170101ALI20230601BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230601BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230601BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20230601BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20230601BHJP
【FI】
B22F12/67
B29C64/153
B29C64/214
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F10/28
B22F12/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193385
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】初田 光嶺
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL32
4F213WL74
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】製造時間を抑えつつ金属粉末を良好に圧縮させて品質の高い積層造形物を製造することが可能なリコータ、及びこれを備えた積層造形装置、並びに積層造形方法を提供する。
【解決手段】金属粉末23が収容される収容空間を有し、収容空間の底部に設けられたスリット部27から造形部11へ金属粉末23を送給する粉末収容部25と、粉末収容部25における往路での移動方向の後方側に設けられ、往路での移動に伴って造形部11上に送給された金属粉末23を均す第1ブレード部28と、粉末収容部25における復路での移動方向の後方側に設けられ、復路での移動に伴って造形部11上に送給された金属粉末23を均す第2ブレード部29と、を備え、第2ブレード部29は、第1ブレード部28よりも下方の造形部11へ向かって突出されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形部に敷設された金属粉末を選択的に溶融接合させて溶融結合体を形成し、該溶融結合体を順次に積層する粉末床溶融方式の積層造形装置に用いられ、前記造形部上を往復移動して前記造形部に前記金属粉末の層を形成するリコータであって、
前記金属粉末が収容される収容空間を有し、前記収容空間の底部に設けられたスリット部から前記造形部へ前記金属粉末を送給する粉末収容部と、
前記粉末収容部における往路での移動方向の後方側に設けられ、前記往路での移動に伴って前記造形部上に送給された前記金属粉末を均す第1ブレード部と、
前記粉末収容部における復路での移動方向の後方側に設けられ、前記復路での移動に伴って前記造形部上に送給された前記金属粉末を均す第2ブレード部と、
を備え、
前記第2ブレード部は、前記第1ブレード部よりも前記造形部へ向かって突出されている、
リコータ。
【請求項2】
前記第1ブレード部及び前記第2ブレード部のうちの少なくとも前記第2ブレード部には、前記粉末収容部と反対側へ延びる延長ブレード部が端部に設けられている、
請求項1に記載のリコータ。
【請求項3】
前記第1ブレード部及び前記第2ブレード部のうちの少なくとも前記第2ブレード部は、端部における前記粉末収容部側に、前記造形部へ向かって前記粉末収容部と反対側へ次第に傾斜する押圧面を有する、
請求項1または請求項2に記載のリコータ。
【請求項4】
前記押圧面は、外側へ膨出する曲面である、
請求項3に記載のリコータ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のリコータを備える、
積層造形装置。
【請求項6】
造形部に敷設された金属粉末を選択的に溶融接合させて溶融結合体を形成し、該溶融結合体を順次に積層する積層造形方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載のリコータを前記造形部上で往復移動させて、前記造形部に前記金属粉末の層を形成する工程を有する、
積層造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リコータ、及びこれを備えた積層造形装置、並びに積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元CAD(Computer Aided Design)データを層分割し、分割した層に、更に上の層を積層させて3次元の造形物を製造する方法が、「Additive Manufacturing」の技術として知られている。この技術によれば、3次元CADデータがあれば、金型を使わずに複雑な形状を容易に製造することができる。
このような造形方法の一つに、敷き詰められた金属材料の粉末を選択的に加熱して、粉末を溶融・凝固、又は焼結させて積層構造物を造形する粉末床溶融結合(PBF:Powderbed fusion)方式がある。
【0003】
一般的な粉末床溶融結合方式の積層造形装置では、造形部上をリコータが移動して、金属粉末の薄層を形成する。
【0004】
特許文献1には、リコータが一方向へ移動して造形部上をリコートする際に、複数のブレードのうちの仕上げブレードが粉体を圧縮するユニットを備えた積層造形システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、粉末床溶融結合方式では、造形部上に供給した金属粉末を十分に圧縮させることが要求される。
【0007】
しかし、一方向への移動時に仕上げブレードが粉体を圧縮する特許文献1に記載のリコータでは、金属粉末が十分に圧縮されず、造形品質が低下するおそれがある。この場合、一方向へ移動させたリコータを初期位置へ戻し、再度一方向へ移動させてリコートすることにより、金属粉末を良好に圧縮させることができるが、リコータを繰り返し移動させることによって製造時間が嵩んでしまう。
【0008】
そこで本発明は、製造時間を抑えつつ金属粉末を良好に圧縮させて品質の高い積層造形物を製造することが可能なリコータ、及びこれを備えた積層造形装置、並びに積層造形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記構成からなる。
(1) 造形部に敷設された金属粉末を選択的に溶融接合させて溶融結合体を形成し、該溶融結合体を順次に積層する粉末床溶融方式の積層造形装置に用いられ、前記造形部上を往復移動して前記造形部に前記金属粉末の層を形成するリコータであって、
前記金属粉末が収容される収容空間を有し、前記収容空間の底部に設けられたスリット部から前記造形部へ前記金属粉末を送給する粉末収容部と、
前記粉末収容部における往路での移動方向の後方側に設けられ、前記往路での移動に伴って前記造形部上に送給された前記金属粉末を均す第1ブレード部と、
前記粉末収容部における復路での移動方向の後方側に設けられ、前記復路での移動に伴って前記造形部上に送給された前記金属粉末を均す第2ブレード部と、
を備え、
前記第2ブレード部は、前記第1ブレード部よりも前記造形部へ向かって突出されている、リコータ。
(2) (1)に記載のリコータを備える、積層造形装置。
(3) 造形部に敷設された金属粉末を選択的に溶融接合させて溶融結合体を形成し、該溶融結合体を順次に積層する積層造形方法であって、(1)に記載のリコータを前記造形部上で往復移動させて、前記造形部に前記金属粉末の層を形成する工程を有する、積層造形方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造時間を抑えつつ金属粉末を良好に圧縮させて品質の高い積層造形物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】
図3の(A)~(D)は、各造形工程を順に示す工程説明図である。
【
図4】
図4の(A)~(D)は、各造形工程を順に示す工程説明図である。
【
図5】
図5は、リコータによるリコート動作を示す図であって、(A)は往路におけるリコータの概略断面図、(B)は復路におけるリコータの概略断面図である。
【
図6】
図6は、曲面からなる押圧面を有する第2ブレード部を備えたリコータを示す図であって、(A)及び(B)は、それぞれリコータの概略断面図である。
【
図7】
図7は、複数の分割面からなる押圧面を有する第2ブレード部を備えたリコータの概略断面図である。
【
図8】
図8は、延長ブレード部を有する第2ブレード部を備えた変形例に係るリコータの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<積層造形装置の構成>
図1は、積層造形装置の概略構成図である。
図1に示すように、積層造形装置100は、ハウジング10に設けられた造形部11と、パウダーポッド13と、リコータ15と、レーザ出力部17とを備える。造形部11は、ハウジング10に形成されたスライド孔10a内に昇降自在に配置されたベースプレート21を有する。ベースプレート21は、不図示の上下方向駆動機構によってスライド孔10a内で昇降駆動される。ベースプレート21は、ハウジング10の上方からの平面視で長方形であり、その上面が平坦面にされている。
【0013】
パウダーポッド13は、ハウジング10の上方に設けられ、金属粉末23を貯留する。また、金属粉末23を下方に排出する不図示のノズルを有する。
【0014】
リコータ15は、ハウジング10上に配置され、不図示の水平方向駆動機構によって、パウダーポッド13の下方位置から造形部11を超えた位置までの間を含む領域において水平方向に移動自在となっている。リコータ15は、水平移動方向に交差する方向(
図1の奥行き方向)に延びる細長状であって、水平移動によってベースプレート21の全面を走査可能な奥行き長さに形成される。
【0015】
ここで、本明細書では、
図1に示す上下方向をZ方向、リコータ15の移動方向をX方向、また、X方向及びZ方向に直交する奥行き方向をY方向と定義する。なお、リコータ15の移動方向は必ずしも水平方向に限らず、積層造形装置100の構造等に応じて適宜設定される。
【0016】
レーザ出力部17は、入力された3次元形状データに応じて、レーザ光Lを造形部11に向けて照射する。レーザ光Lは、金属粉末23の溶融熱源であり、レーザ光Lの照射領域内の金属粉末23を選択的に溶融接合させ、溶融結合体39を形成する。この溶融結合体39を順次に積層することで造形物が得られる。
【0017】
図2はリコータ15の模式的な要部断面図である。
図2に示すように、リコータ15は、金属粉末23が収容される収容空間を画成する粉末収容部25と、収容空間の底部に設けられたスリット部27と、粉末収容部25のX方向の一側面に取り付けられた第1ブレード部28と、粉末収容部25のX方向の他側面に取り付けられた第2ブレード部29とを備える。スリット部27は、リコータ15の移動方向(X方向)と交差する方向(Y方向)に延びて設けられ、下方に向けて金属粉末23を排出するスリット出口27aが形成されている。このスリット部27において、スリット出口27aに対向する位置に設けられ、金属粉末23を受け入れる開口を、スリット入口27bと称する。
【0018】
粉末収容部25は、リコータ15のY方向に沿って形成され、粉末の収容空間が内壁面25aの内側に画成される。粉末収容部25は、内壁面25aがリコータ15のY方向の一端から他端まで連続して形成された単一の構造であってもよく、内壁面25aを所定の長さ毎に分割して複数の収容空間を画成し、これら複数の収容空間が一列に配置された構造であってもよい。
【0019】
スリット部27は、粉末収容部25の下部に設けた一対の底板31を有する。一対の底板31は、互いに平行に配置された板状部材であって、対向する一対の側面同士の間にスリットを形成する(底板31をスリット板とも称する)。底板31の互いに対向する側面はスリット内壁面31aであって、これらスリット内壁面31aは、底板31の板厚内に形成される。また、少なくとも一方(本構成では両方)のスリット内壁面31aは、板厚方向(Z方向)から傾斜した傾斜面である。スリット内壁面31a同士のX方向の隙間は、スリット出口27aに向かうほど狭くなっている。つまり、スリット内壁面31aは、下方に向けて先細りとなる隙間を挟んで配置されている。また、金属粉末23を受け入れる開口となるスリット入口27bは、スリット出口27aに対向する位置に形成される。これにより、スリット入口27bから供給された金属粉末は、一対の互いに対向するスリット内壁面31aに沿って移動して、スリット出口27aに送給される。
【0020】
第1ブレード部28は、粉末収容部25に対して往路での移動方向の後方側に設けられ、粉末収容部25の一側面に取り付けられている。第1ブレード部28は、下端部がスリット部27よりも下方側へ突出されており、この下端部に押圧面41を有している。押圧面41は、下方へ向かって次第に粉末収容部25と反対側へ傾斜されている。
【0021】
第2ブレード部29は、粉末収容部25に対して復路での移動方向の後方側に設けられ、粉末収容部25の一側面に取り付けられており、第1ブレード部28に対して対向配置されている。第2ブレード部29は、下端部がスリット部27よりも下方へ突出され、さらに、第1ブレード部28よりも下方へ突出されている。この第2ブレード部29も、下端部に押圧面43を有している。押圧面43は、下方へ向かって次第に粉末収容部25と反対側へ傾斜されている。
【0022】
上記構造のリコータ15は、パウダーポッド13の下方位置と造形部11を超えた位置との間で水平方向に往復移動する。そして、リコータ15は、往路及び復路での移動時に造形部11へ金属粉末23を敷設するリコート動作を行う。
【0023】
<積層造形装置による造形工程>
次に、上記構成の積層造形装置100による造形工程を説明する。
図3の(A)~(D)及び
図4の(A)~(D)は、各造形工程を順に示す工程説明図である。以下に説明する各工程の動作は、CPU、メモリ、及びストレージ等を備えるコンピュータ装置からなる不図示の制御部からの指令によって行われる。
【0024】
まず、
図3の(A)に示すように、リコータ15をパウダーポッド13の下方位置に配置して、パウダーポッド13から所定量の金属粉末23をリコータ15の粉末収容部25の収容空間に供給する。また、ベースプレート21をΔtだけ降下させ、ハウジング10の上面とベースプレート21の上面との間に厚さΔtの段差を形成する。
【0025】
次に、リコータ15による造形部11へのリコート動作を開始させる。
具体的には、
図3の(B)に示すように、金属粉末23を粉末収容部25に供給されたリコータ15を、パウダーポッド13の下方位置から造形部11を超えた位置へ向かう一方向(
図3の(B)における矢印X1方向)へ移動させる。このリコータ15が一方向へ向かう往路を移動する際に、
図5の(A)に示すように、リコータ15におけるスリット出口27aから金属粉末23が流れ落ち、造形部11のベースプレート21上に、金属粉末23の薄層37が敷設される。このとき、ベースプレート21上に敷設された金属粉末23からなる薄層37は、その表面がリコータ15の第1ブレード部28の押圧面41によって均される。
【0026】
さらに、
図3の(C)に示すように、リコータ15をパウダーポッド13の下方位置である材料供給位置へ向かう他方向(
図3の(C)における矢印X2方向)へ移動させ、パウダーポッド13の下方の材料供給位置へ戻す。このリコータ15が他方向へ向かう復路を移動する際に、
図5の(B)に示すように、第1ブレード部28によって均された金属粉末23からなる薄層37は、第1ブレード部28よりも下方へ突出された第2ブレード部29の押圧面43によって押圧されて圧縮される。
【0027】
その後、
図3の(D)に示すように、レーザ出力部17が、ベースプレート21上に敷設された薄層37に向けてレーザ光Lを照射する。レーザ光Lは、目標形状の3次元形状データに応じて、薄層37の所定の位置へ選択的に照射される。レーザ光Lが照射された領域では、金属粉末23の薄層37が溶融して1層分の溶融結合体39が形成される。
【0028】
さらに、
図4の(A)に示すように、ベースプレート21を更にΔtだけ降下させ、ハウジング10の上面とベースプレート21上の薄層37との間に厚さΔtの段差を形成する。
【0029】
次に、
図4の(B)に示すように、金属粉末23を粉末収容部25に供給されたリコータ15がパウダーポッド13の下方位置から造形部11を超えた位置に向けて往路を移動し、薄層37上の段差内に金属粉末23の2層目の薄層37を形成する。このときも、ベースプレート21上に敷設された金属粉末23からなる薄層37は、その表面がリコータ15の第1ブレード部28の押圧面41によって均される(
図5の(A)参照)。
【0030】
さらに、
図4の(C)に示すように、リコータ15がパウダーポッド13の下方位置である材料供給位置へ向けて復路を移動し、パウダーポッド13の下方の材料供給位置へ戻される。このときも、第1ブレード部28によって均された金属粉末23からなる薄層37は、第1ブレード部28よりも下方へ突出された第2ブレード部29の押圧面43によって押圧されて圧縮される(
図5の(B)参照)。
【0031】
その後、
図4の(D)に示すように、形成された薄層37に向けてレーザ出力部17から3次元形状データに応じてレーザ光Lを照射する。
【0032】
上記のリコータ15によるリコート動作を含む金属粉末23の敷設と、レーザ光Lの照射による溶融結合体39の形成とを繰り返すことにより、造形部11において溶融結合体39が順次積層され、3次元形状データに応じた形状の造形物が得られる。
【0033】
以上、説明した本構成のリコータ15によれば、第1ブレード部28によって往路で均された金属粉末23が、第2ブレード部29によって復路で再度均される。この金属粉末23を再度均す第2ブレード部29は、第1ブレード部28よりも下方へ向かって突出されている。したがって、第1ブレード部28で均された金属粉末23を、第1ブレード部28よりも下方へ突出された第2ブレード部29で十分に圧縮させて均一な密度で均すことができる。よって、形状精度に優れた高品質な積層造形物を製造できる。
【0034】
しかも、一度の往復移動によって金属粉末23を十分に圧縮させることができるので、リコート方向が一方向のリコータを繰り返しリコート方向へ移動させる場合と比べ、製造時間を抑えて生産性を高めることができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、第2ブレード部29の押圧面43を断面視において直線状の平滑面としたが、この押圧面43としては、平滑面に限らず、断面視において外側へ膨出する曲線状の曲面であってもよい。例えば、第2ブレード部29の押圧面43としては、
図6の(A)に示すように、外側へ膨出する円弧状の曲面であってもよく、また、
図6の(B)に示すように、外側へ膨出する放物線状の曲面であってもよい。
【0036】
このように、断面視において外側へ膨出する曲線状の曲面からなる押圧面43を有する第2ブレード部29によれば、直線状の平滑面からなる押圧面43と比較し、金属粉末23を圧縮させる際に、金属粉末23との滑りを抑えて効率的に圧縮させることができる。なお、押圧面43を曲面とする場合、例えば、金属粉末23の特性(滑りに対する摩擦抵抗)を考慮して適正な曲線形状を選択するのが好ましい。
【0037】
また、
図7に示すように、第2ブレード部29の押圧面43を、下方に向かって傾斜が大きくなる複数の分割面43aとしてもよい。この押圧面43によれば、複数の分割面43aによって金属粉末23を段階的に圧縮させることができる。
【0038】
次に、変形例に係るリコータについて説明する。
図8は、延長ブレード部を有する第2ブレード部を備えた変形例に係るリコータの概略断面図である。
図8に示すように、変形例では、第2ブレード部29が、外側へ膨出する円弧状の曲面からなる押圧面43を有し、さらに、下端に延長ブレード部45を有している。延長ブレード部45は、粉末収容部25と反対側の側方へ延在されており、その下面が金属粉末23を圧接する圧接面46とされている。
【0039】
この変形例では、第2ブレード部29の押圧面43によって押圧されて圧縮された金属粉末23に対する押圧を延長ブレード部45の圧接面46によって継続させることができる。これにより、金属粉末23を圧縮して均一に均しつつ、リコータ15の通過後における金属粉末23の表面の崩れを良好に抑えることができる。
【0040】
なお、延長ブレード部45としては、端部へ向かって圧接面46が次第に上方へ傾斜されていてもよい。このような形状とすることにより、延長ブレード部45の圧接面46による金属粉末23の押圧力を徐々に減少させ、リコータ15の通過後における金属粉末23の表面の崩れをより良好に抑えることができる。
【0041】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0042】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 造形部に敷設された金属粉末を選択的に溶融接合させて溶融結合体を形成し、該溶融結合体を順次に積層する粉末床溶融方式の積層造形装置に用いられ、前記造形部上を往復移動して前記造形部に前記金属粉末の層を形成するリコータであって、
前記金属粉末が収容される収容空間を有し、前記収容空間の底部に設けられたスリット部から前記造形部へ前記金属粉末を送給する粉末収容部と、
前記粉末収容部における往路での移動方向の後方側に設けられ、前記往路での移動に伴って前記造形部上に送給された前記金属粉末を均す第1ブレード部と、
前記粉末収容部における復路での移動方向の後方側に設けられ、前記復路での移動に伴って前記造形部上に送給された前記金属粉末を均す第2ブレード部と、
を備え、
前記第2ブレード部は、前記第1ブレード部よりも前記造形部へ向かって突出されている、リコータ。
このリコータによれば、第1ブレード部によって往路で均された金属粉末が、第2ブレード部によって復路で再度均される。この金属粉末を再度均す第2ブレード部は、第1ブレード部よりも造形部へ向かって突出されている。したがって、第1ブレード部で均された金属粉末を、第1ブレード部よりも造形部へ向かって突出された第2ブレード部で十分に圧縮させて均一な密度で均すことができる。よって、形状精度に優れた高品質な積層造形物を製造できる。
しかも、一度の往復移動によって金属粉末を十分に圧縮させることができるので、リコート方向が一方向のリコータを繰り返しリコート方向へ移動させる場合と比べ、製造時間を抑えて生産性を高めることができる。
【0043】
(2) 前記第1ブレード部及び前記第2ブレード部のうちの少なくとも前記第2ブレード部には、前記粉末収容部と反対側へ延びる延長ブレード部が端部に設けられている、(1)に記載のリコータ。
このリコータによれば、延長ブレード部によって金属粉末の圧縮を継続させることができる。これにより、金属粉末を均一に均しつつ、リコータの通過後における金属粉末の表面の崩れを抑えることができる。
【0044】
(3) 前記第1ブレード部及び前記第2ブレード部のうちの少なくとも前記第2ブレード部は、端部における前記粉末収容部側に、前記造形部へ向かって前記粉末収容部と反対側へ次第に傾斜する押圧面を有する、(1)または(2)に記載のリコータ。
このリコータによれば、造形部へ向かって粉末収容部と反対側へ次第に傾斜する押圧面によって、金属粉末の表面を押圧して良好に圧縮させることができる。
【0045】
(4) 前記押圧面は、外側へ膨出する曲面である、(3)に記載のリコータ。
このリコータによれば、曲面からなる押圧面によって、金属粉末との滑りを抑え、金属粉末の表面を効率的に圧縮させることができる。
【0046】
(5) (1)~(4)のいずれか一つに記載のリコータを備える、積層造形装置。
この積層造形装置によれば、第1ブレード部で均された金属粉末を、第1ブレード部よりも造形部へ向かって突出された第2ブレード部で十分に圧縮させて均一な密度で均すことができる。よって、製造時間を抑えつつ、形状精度に優れた高品質な積層造形物を製造できる。
【0047】
(6) 造形部に敷設された金属粉末を選択的に溶融接合させて溶融結合体を形成し、該溶融結合体を順次に積層する積層造形方法であって、(1)~(4)のいずれか一つに記載のリコータを前記造形部上で往復移動させて、前記造形部に前記金属粉末の層を形成する工程を有する、積層造形方法。
この積層造形方法によれば、リコータを造形部上で往復移動させることにより、第1ブレード部で金属粉末を均し、さらに、第2ブレード部で十分に圧縮させて均一な密度で均すことができる。よって、製造時間を抑えつつ、形状精度に優れた高品質な積層造形物を製造できる。
【符号の説明】
【0048】
11 造形部
15 リコータ
23 金属粉末
25 粉末収容部
27 スリット部
28 第1ブレード部
29 第2ブレード部
39 溶融結合体
41,43 押圧面
45 延長ブレード部
100 積層造形装置