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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079772
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/34 20060101AFI20230601BHJP
   B29C 65/50 20060101ALI20230601BHJP
   B29C 65/18 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B65G15/34
B29C65/50
B29C65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193397
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】川本 啓司
(72)【発明者】
【氏名】深草 孝郎
【テーマコード(参考)】
3F024
4F211
【Fターム(参考)】
3F024AA19
3F024BA05
3F024CA01
3F024CA04
3F024CB02
3F024CB09
4F211AA16
4F211AD08
4F211AD16
4F211AD20
4F211AD25
4F211AG16
4F211TA01
4F211TA05
4F211TC08
4F211TC21
4F211TD07
4F211TD11
4F211TH19
4F211TN07
4F211TN43
4F211TN56
4F211TQ04
(57)【要約】
【課題】接合部での折れ曲がりを抑制することで、優れた耐久性を達成可能なベルトを提供すること。
【解決手段】一実施形態によれば、ベルトが提供される。ベルト10は、帯状を有すると共に第1端部1a及び第2端部1bを有するベルト基材1を備える。第1端部1a及び第2端部1bは、ベルト基材1が環状構造をなすように互いに突き合わせて接合して接合部1cを構成している。第1端部1aは、複数の第1凸部31a及び複数の第1凹部31bを備える。第2端部は、複数の第2凸部32a及び複数の第2凹部32bを備える。複数の第1凸部31aのそれぞれは、複数の第2凹部32bのそれぞれと嵌合している。複数の第2凸部32aのそれぞれは、複数の第1凹部31bのそれぞれと嵌合している。ベルト10は、裏材2と、第1層3とを更に備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性織布と、前記耐熱性織布の表面の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂とを具備し、且つ、表面及び裏面を有するベルト基材を備えるベルトであって、
前記ベルト基材は、第1端部及び第2端部を有する帯状を有しており、
前記第1端部及び前記第2端部は、前記ベルト基材が環状構造をなすように互いに突き合わせて接合して、接合部を構成しており、
前記第1端部は、複数の第1凸部、及び、前記複数の第1凸部間に規定される複数の第1凹部を備え、
前記第2端部は、複数の第2凸部、及び、前記複数の第2凸部間に規定される複数の第2凹部を備え、
前記複数の第1凸部のそれぞれは、前記複数の第2凹部のそれぞれと嵌合しており、
前記複数の第2凸部のそれぞれは、前記複数の第1凹部のそれぞれと嵌合しており、
前記ベルトは、
前記ベルト基材の前記裏面に対向し且つ前記接合部の少なくとも一部を被覆する裏材と、
前記ベルト基材及び前記裏材との間に介在する第1層とを更に備えるベルト。
【請求項2】
前記ベルト基材の前記表面と接触し且つ前記接合部の少なくとも一部を被覆する保護フィルムを更に備える請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記ベルト基材の前記表面に対向し且つ前記接合部の少なくとも一部を被覆する表材と、
前記ベルト基材及び前記表材との間に介在する第2層とを更に備える請求項1に記載のベルト。
【請求項4】
前記複数の第1凸部の形状、及び、前記複数の第2凸部の形状は、順テーパ状である請求項1~3の何れか1項に記載のベルト。
【請求項5】
前記複数の第1凸部の形状、及び、前記複数の第2凸部の形状は、一部が順テーパ状であり、且つ、先端部の少なくとも一部が中腹部と比較してより拡径している請求項1~3の何れか1項に記載のベルト。
【請求項6】
前記ベルト基材の厚さは0.075mm~1.0mmの範囲内にある請求項1~5の何れか1項に記載のベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベルト、特に製品等の製造に使用されるベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシールなど、各種製品を製造する際に用いられるベルトは、例えば、ベルト基材の長さ方向の端部同士が接合された、無端状又は環状構造を有する。ベルト基材の接合方法として、例えばバット接合が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-291617号公報
【特許文献2】特開2000-344318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バット接合は、ベルト基材の端部を突合わせた状態で、当該突合わせ部(接合部とも呼ぶ)の表面及び/又は裏面上に別の基材を融着して、接合部が離間しないように補強する接合方法である。
【0005】
バット接合を用いて製造されたベルトの参考例を、図12及び図13に示す。図12は、環状構造を有するベルト100がロール20に取り付けられた状態を示す。図13は、図12に示すベルト基材50が有する接合部50cの近傍を拡大して示す概略断面図である。
【0006】
図12に示すベルト100は、帯状のベルト基材50と、裏材40と、ベルト基材50及び裏材40を接着している第1接着層60とを備える。帯状のベルト基材50は、互いに対向する2つの長辺55、56と、互いに対向する2つの短辺とを有する矩形状のシートである。帯状のベルト基材50における2つの短辺のうちの一方が第1端部50aである。帯状のベルト基材50における2つの短辺のうちの他方が第2端部50bである。
【0007】
第1端部50a及び第2端部50bは、当該ベルト基材50が環状構造又は無端状をなすように互いに突き合わせて接合して接合部50cを構成している。つまり、ベルト基材50はエンドレスベルトであり得る。
【0008】
第1端部50a及び第2端部50bは、いずれも、ベルト基材50の長辺55、56と直交する方向に伸びる辺である。それ故、これらを突き合わせることで形成される接合部50cは、ベルト基材50の長辺又はベルト100の進行方向Pと直交する方向に伸びている。ベルト100が進行方向Pに沿って走行すると、接合部50cは、裏材40を介してロール20の外周壁と接触する。接合部50cは、円柱状のロール20の回転軸(図示しない)と平行に伸びているため、ベルト100がロール20の外周壁と接触することにより接合部50cが折れやすいという問題がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、接合部での折れ曲がりを抑制することで、優れた耐久性を達成可能なベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、ベルトが提供される。ベルトは、耐熱性織布と、耐熱性織布の表面の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂とを具備し、且つ、表面及び裏面を有するベルト基材を備える。ベルト基材は、第1端部及び第2端部を有する帯状を有している。第1端部及び第2端部は、ベルト基材が環状構造をなすように互いに突き合わせて接合して、接合部を構成している。第1端部は、複数の第1凸部、及び、複数の第1凸部間に規定される複数の第1凹部を備える。第2端部は、複数の第2凸部、及び、複数の第2凸部間に規定される複数の第2凹部を備える。複数の第1凸部のそれぞれは、複数の第2凹部のそれぞれと嵌合している。複数の第2凸部のそれぞれは、複数の第1凹部のそれぞれと嵌合している。ベルトは、ベルト基材の裏面に対向し且つ接合部の少なくとも一部を被覆する裏材と、ベルト基材及び裏材との間に介在する第1層とを更に備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接合部での折れ曲がりを抑制することで、優れた耐久性を達成可能なベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るベルトの一例を概略的に示す斜視図。
図2図1に示すベルトを概略的に示す平面図。
図3図2に示すベルトのIII-III線に沿った概略断面図。
図4図1に示すベルトが備えるベルト基材の概略断面図。
図5図2のA部を拡大して示す平面図。
図6図1に示すベルトの裏面を概略的に示す平面図。
図7】他の例に係るベルトの裏面を概略的に示す平面図。
図8】他の例に係るベルトの裏面を概略的に示す平面図。
図9】実施形態に係るベルトの他の例を概略的に示す断面図。
図10】実施形態に係るベルトの他の例を概略的に示す断面図。
図11】実施形態に係るベルトの他の例を概略的に示す平面図。
図12】参考例に係るベルトの一例を概略的に示す斜視図。
図13図12に示すベルトの接合部近傍を概略的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0014】
図1は、実施形態に係るベルト10がロール20に装着された状態を示している。図2は、ベルト10を概略的に示す平面図である。図3は、図2に示すベルト10のIII-III線に沿った概略断面図である。図4は、ベルト10が備えるベルト基材1の概略的な断面図である。図面におけるX軸は、ベルト10の進行方向(走行方向ともいう)Pと平行な方向である。Y軸は、X軸と直交する方向である。Z軸は、X軸及びY軸の双方と直交する方向であって、ベルト基材1の厚さ方向と平行な方向である。
【0015】
ベルト10は、帯状のベルト基材1と、裏材2と、ベルト基材1及び裏材2との間に介在する第1層3とを備える。第1層3は、ベルト基材1と裏材2とを接着又は融着している。第1層3は、ベルト基材1と裏材2とを一体化させている。図2に示すように、帯状のベルト基材1は、互いに対向する2つの長辺15a、15bと、互いに対向する2つの短辺1a、1bとを有する矩形状のシートである。帯状のベルト基材1における2つの短辺のうちの一方が第1端部1aである。帯状のベルト基材1における2つの短辺のうちの他方が第2端部1bである。第1端部1a及び第2端部1bは、いずれも凹凸構造を備える。
【0016】
第1端部1aは、複数の第1凸部31aを備える。複数の第1凸部31aは、それぞれ、ベルト基材1の面内方向に沿って突出している。面内方向とは、X軸及び/又はY軸に沿う方向である。複数の第1凸部31aのそれぞれは、順テーパ状であり得る。但し、複数の第1凸部31aの厚さ(Z軸方向についての長さ)は、その位置によらず略一定である。
【0017】
第2端部1bは、複数の第2凸部32aを備える。複数の第2凸部32aは、それぞれ、ベルト基材1の面内方向に沿って突出している。複数の第2凸部32aのそれぞれは、順テーパ状であり得る。但し、複数の第2凸部32aの厚さ(Z軸方向についての長さ)は、その位置によらず略一定である。
【0018】
第1端部1a及び第2端部1bの詳細は後述するが、第1端部1a及び第2端部1bは、当該ベルト基材1が環状構造又は無端状をなすように互いに突き合わせて接合して接合部1cを構成している。つまり、ベルト基材1はエンドレスベルトであり得る。環状構造を有するベルト基材1において、その内周面が裏面9として規定され、その外周面が表面8として規定される。ベルト基材1の裏面9は、ロール20の外周壁と接触し得る。ベルト基材1の裏面9は、ロール20の外周壁と接触しながら、ロール20の回転に伴って周方向に沿って移動する。これにより、ベルト10が進行方向Pに沿って走行する。ロール20は、駆動ロールであってもよく、従動ロールであってもよい。
【0019】
上記の通り、接合部1cは、各々が凹凸構造を有する第1端部1a及び第2端部1bが突合わされて構成されている。接合部1cは、参考例としての図12を参照しながら示した接合部50cとは異なり、ベルト基材1の幅方向(Y軸方向)と平行な方向に沿って伸びていない。それ故、ベルト基材1がロール20と接触することによる接合部1cへの負荷が分散して、接合部1cでの過度な折れ曲がりが抑制される。従って、実施形態に係るベルト10は優れた耐久性を達成可能である。
【0020】
図4に示すように、ベルト基材1は、例えば、耐熱性織布11と、耐熱性織布11の表面の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂12とを含む。フッ素樹脂12は、織布11の表面を部分的に被覆していてもよく、表面全体を被覆していてもよい。
【0021】
ベルト基材1の厚さは、特に制限されるものではないが、例えば0.075mm~1.0mmの範囲内にありうる。
【0022】
ベルト基材1に含まれる材料について説明する。耐熱性織布11の例として、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、及び、ガラス繊維とアラミド繊維とを混合したものなどが挙げられる。ガラス繊維は、不燃性であり、かつ電気絶縁性を有する。一方、アラミド繊維は、強度に優れ、かつ耐薬品性を有する。
【0023】
フッ素樹脂12の例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂(FEP)などが挙げられる。フッ素樹脂の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
【0024】
ベルト基材は、充填材を含有していてもよい。充填材は、フッ素樹脂に混合または分散されていることが望ましい。充填材の例として、炭素材料、無機物(酸化チタン、窒化ホウ素、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)、各種顔料を挙げることができる。使用する充填材の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。充填材の形態は、特に限定されず、粒状、繊維状、針状などにすることができる。
【0025】
裏材2は、ベルト基材1の裏面9に対向しており且つ接合部1cの少なくとも一部を被覆している。裏材2は、第1端部1aと第2端部1bとの接合を維持するために、第1層3を介してベルト基材1の裏面9に貼り付けられている。裏材2は、接合部1cの全体を被覆していることが好ましい。言い換えると、裏材2は、接合部1cの全体と対向していることが好ましい。この場合、第1端部1aと第2端部1bとが剥離するのをより抑制することができる。
【0026】
裏材2としては、例えば、ベルト基材1と同一の基材を用いる。この場合、接合部1c近傍における機械的強度の低下を抑制することができる。裏材2はベルト基材1とは異なる基材であってもよい。その場合においても、当該基材は、上記ベルト基材1を構成する材料として説明した耐熱性織布と、耐熱性織布の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂とを含み得る。或いは、裏材2は、ポリイミドフィルムであってもよい。裏材2の厚さは、例えば、0.050mm~1.0mmの範囲内にありうる。
【0027】
第1層3は、ベルト基材1の裏面9上において、接合部1cの少なくとも一部を被覆している。第1層3は、接合部1cの全体を被覆していることが好ましい。第1層3は、ベルト基材1と裏材2とを接着又は融着させている。第1層3及び裏材2が、第1端部1aと第2端部1bとが突合わされた接合部1cを跨がるように融着されることで、第1端部1aと第2端部1bとが離間するのを抑制することができる。
【0028】
第1層3は、溶融流動性フッ素樹脂を含むことが好ましい。第1層3は、溶融流動性フッ素樹脂からなっていてもよい。溶融流動性フッ素樹脂の例としては、PFA及びFEPなどを挙げることができる。第1層3の厚さは、例えば、12.5μm~250μmの範囲内にある。
【0029】
第1端部1a及び第2端部2aの詳細について、図5を参照しながら説明する。図5は、図2に示すA部を拡大して示す平面図である。
【0030】
第1端部1aは、複数の第1凸部31aと、複数の第1凸部31a間に規定される複数の第1凹部31bとを備える。複数の第1凸部の数は、例えば、2以上であり、好ましくは5以上である。第2端部1bは、複数の第2凸部32aと、複数の第2凸部32a間に規定される複数の第2凹部32bとを備える。複数の第2凸部の数は、例えば、2以上であり、好ましくは5以上である。
【0031】
複数の第1凸部31aのそれぞれは、複数の第2凹部32bのそれぞれと嵌合している。複数の第2凸部32aのそれぞれは、複数の第1凹部31bのそれぞれと嵌合している。こうして、第1端部1aが有する凹凸構造と、第2端部1bが有する凹凸構造とが嵌合することによって接合部1cが構成されている。接合部1cは、ベルト基材1の端面(側面)同士が突き合わされている部分であり得る。
【0032】
第1端部1a及び第2端部1bは、接合部1cにおいて、Z軸方向への段差が生じないように突き合わされ得る。また、接合部1cのY軸方向に沿った端部において、第1端部1a及び第2端部1bは、Y軸方向への段差が生じないように構成されることが好ましい。
【0033】
複数の第1凸部31aは、ベルト基材1の幅方向(Y軸方向)に沿って配列している。図5では、複数の第1凸部31aの先端部31cを結ぶ仮想的な線分31xが規定されている。また、複数の第2凸部32aは、ベルト基材1の幅方向に沿って配列している。図5では、複数の第2凸部32aの先端部32cを結ぶ仮想的な線分32xが規定されている。
【0034】
図5では、複数の第1凸部31aの先端部31c及び複数の第2凸部32aの先端部32cが鋭角な角形状を有する場合を描いているが、これら先端部31c、32cは、丸みを帯びたR形状を有していてもよい。先端部がR形状を有することにより、先端部におけるベルト基材の立ち上がり又はめくれを抑制することができる。
【0035】
複数の第1凸部31aの各々の長さ30Lは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。図5では一例として、複数の第1凸部31aの各々の長さ30Lが、互いに同一である場合を示している。第1端部1aが有する凹凸構造と、第2端部1bが有する凹凸構造とは嵌合しているため、長さ30Lは、複数の第2凸部32aの長さでもあり得る。
【0036】
長さ30Lは、複数の第1凸部31aの先端部31cから仮想的な線分32xに向けて降ろした垂線の長さである。長さ30Lを測定する場合、測定対象のベルト基材1が有する複数の第1凸部31aのうち、任意に選択した5つ以上の第1凸部31aについて長さ30Lを測定する。そして、これらの値を単純平均して得られた値を、複数の第1凸部31a又は複数の第2凸部32aの長さ30Lと決定する。
【0037】
長さ30Lは、ロール20の直径及びベルト基材1の厚さ等に応じて適宜変更することができるが、例えば10mm~30mmの範囲内にある。長さ30Lが小さい場合、小さなロール直径を有するロール20を使用した場合であっても、折れ曲がり抑制効果が得られやすい。但し、長さ30Lが過剰に小さいと、接合部1cにおける折れ曲がり抑制効果が得られにくい傾向がある。長さ30Lが大きい場合、大きなロール直径を有するロール20を使用した場合であっても、折れ曲がり抑制効果を期待できる。
【0038】
複数の第1凸部31aの配列間隔は、1つ当たりの第1凸部31aの幅31wで示される。1つ当たりの第1凸部31aの幅31wは、或る第2凸部32aの先端部32cから、これと隣り合う第2凸部32aの先端部32cまでの距離である。幅31wを測定する場合、任意に選択した5つ以上の第1凸部31aについて、それぞれ幅31wを測定する。そして、これらの値を単純平均して得られた値を幅31wと決定する。
【0039】
複数の第1凸部31aについて、1つ当たりの第1凸部31aの幅31wの寸法は、特に制限されるものではないが、例えば6mm~30mmの範囲内にある。
【0040】
複数の第2凸部32aの配列間隔は、1つ当たりの第2凸部32aの幅32wで示される。1つ当たりの第2凸部32aの幅32wは、或る第1凸部31aの先端部31cから、これと隣り合う第1凸部31aの先端部31cまでの距離である。幅32wを測定する場合、任意に選択した5つ以上の第2凸部32aについて、それぞれ幅32wを測定する。そして、これらの値を単純平均して得られた値を幅32wと決定する。
【0041】
複数の第2凸部32aについて、1つ当たりの第2凸部32aの幅32wの寸法は、特に制限されるものではないが、例えば6mm~30mmの範囲内にある。
【0042】
幅31wの寸法と幅32wの寸法とは、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。幅31wの寸法及び幅32wの寸法は、ロール20の直径及びベルト基材1の厚さ等に応じて適宜変更することができる。
【0043】
図6は、接合部1cをベルト基材1の裏面9側から観察した場合の一例を概略的に示す平面図である。図6において、接合部1cの全体は裏材2で被覆されている。なお、接合部1cの形状は、複数の第1凹部と複数の第2凸部とが嵌合しており、且つ、複数の第1凸部と複数の第2凹部とが嵌合している限り、特に制限されない。図6では一例として、複数の第1凸部及び複数の第2凸部が、いずれも順テーパ形状を有する場合を示しているが、複数の第1凸部及び複数の第2凸部は、図7に示す形状を有していてもよい。図7に示す接合部1cの形状の詳細については、図11を参照しながら後述する。
【0044】
裏材2の形状は、特に制限されないが、例えば、接合部1cを被覆することが可能な帯状(矩形状)を有する。帯状の裏材2は、長辺方向がY軸方向と平行となるように、且つ、短辺方向がX軸と平行となるようにベルト基材1の裏面9上に第1層3(図示していない)を介して貼付されている。
【0045】
X軸方向についての裏材2の寸法は、複数の第1凸部31a又は複数の第2凸部32aの長さ30Lと比較して大きいことが好ましい。Y軸方向についての裏材2の寸法は、ベルト基材1のY軸方向についての幅1wと同一又は略同一であることが好ましい。
【0046】
図8は、他の例に係る裏材2を概略的に示す平面図である。図8における裏材2は、裏材2の長辺部分が波形であることを除いて図6で示した帯状の裏材2と同様の形状を有している。ベルトの幅方向(Y軸方向)と平行な方向について、裏材2が波形を有していることにより、裏材2がロール20の外周壁と接触した際に、ベルト基材1の裏面9に与える損傷を抑えることができる。
【0047】
<変形例>
図9は、実施形態に係るベルトの他の例を概略的に示す断面図である。図9に示すベルト10は、ベルト基材1の表面8と接触し且つ接合部1c(図示しない)を被覆する保護フィルム4を更に備えることを除いて、図1図5を参照しながら説明したベルトと同様の構造を有する。保護フィルム4は、ベルト基材1の表面8において、接合部1cの少なくとも一部を被覆している。保護フィルム4は、ベルト基材1の表面8において、接合部1cの全体を被覆していることが好ましい。
【0048】
ベルト10が保護フィルム4を具備する場合、ベルト基材1の表面8側からの接合部1cに対するワークの侵入を抑制することができ、また、複数の第1凸部31aの先端部31c、及び、複数の第2凸部32aの先端部32cがめくれるのを抑制することができる。
【0049】
図示していないが、保護フィルム4について、ベルト10の進行方向Pについての寸法は、複数の第1凸部31a又は複数の第2凸部32aの長さ30Lと比較して大きいことが好ましい。また、保護フィルム4のY軸方向についての寸法は、ベルト基材1のY軸方向についての幅1wと同一又は略同一であることが好ましい。保護フィルム4は、図8に示した裏材2と同様に、その長辺側(Y軸と平行な方向)が波形を有していてもよい。
【0050】
保護フィルム4は、溶融流動性フッ素樹脂を含むことが好ましい。保護フィルム4は、溶融流動性フッ素樹脂からなっていてもよい。つまり保護フィルム4は、耐熱性織布を備えていなくてもよい。溶融流動性フッ素樹脂の例としては、PFA及びFEPなどを挙げることができる。保護フィルム4の厚さは、例えば、12.5μm~250μmの範囲内にある。
【0051】
図10は、実施形態に係るベルトの他の例を概略的に示す断面図である。図10に示すベルト10は、ベルト基材1の表面8に対向し且つ接合部1c(図示しない)を被覆する表材5と、ベルト基材1及び表材5の間に介在する第2層6とを更に備えることを除いて、図1図5を参照しながら説明したベルトと同様の構造を有する。表材5は、接合部1cの少なくとも一部を被覆していればよいが、接合部1cの全体を被覆していることが好ましい。言い換えると、表材5は、接合部1cの全体と対向していることが好ましい。
【0052】
ベルト10が表材5を更に備えていると、ベルト基材1の表面8側からの接合部1cに対するワークの侵入を抑制することができ、また、複数の第1凸部31aの先端部31c、及び、複数の第2凸部32aの先端部32cがめくれるのを抑制することができる。
【0053】
表材5によって生じるZ軸方向への段差は、ワークに対して直接的に転写されてしまう傾向がある。それ故、表材5としては、ベルト基材1と比較してより薄い基材を使用することが好ましい。
【0054】
表材5は、上記ベルト基材1を構成する材料として説明した耐熱性織布と、耐熱性織布の少なくとも一部を被覆するフッ素樹脂とを含み得る。表材5はベルト基材1と同一の基材であってもよい。
【0055】
図示していないが、表材5について、ベルト10の進行方向Pについての寸法は、複数の第1凸部31a又は複数の第2凸部32aの長さ30Lと比較して大きいことが好ましい。また、表材5のY軸方向についての寸法は、ベルト基材1のY軸方向についての幅1wと同一又は略同一であることが好ましい。表材5は、図8に示した裏材2と同様に、その長辺側(Y軸と平行な方向)が波形を有していてもよい。
【0056】
表材5の厚さは、例えば、25μm~100μmの範囲内にありうる。表材5が、織布を含む基材(ファブリック)の場合は、その厚さは例えば50μm~125μmの範囲内にあり得る。表材5が、織布を含まないフィルムの場合は、その厚さは例えば25μm~100μmの範囲内にあり得る。
【0057】
第2層6は、ベルト基材1の表面8上において、接合部1cの少なくとも一部を被覆している。第2層6は、ベルト基材1と表材5とを接着又は融着させている。第2層6は、ベルト基材1と表材5とを一体化させている。第2層6及び表材5が、第1端部1aと第2端部1bとが突合わされた接合部1cを跨がるように貼付されることで、第1端部1aと第2端部1bとが離間するのを抑制することができる。
【0058】
第2層6は、溶融流動性フッ素樹脂を含むことが好ましい。第2層6は、溶融流動性フッ素樹脂からなっていてもよい。溶融流動性フッ素樹脂の例としては、PFA及びFEPなどを挙げることができる。第2層6の厚さは、例えば、12.5μm~250μmの範囲内にある。
【0059】
図1図6及び図8図10では、複数の第1凸部31a及び複数の第2凸部32aが、順テーパ状である場合を例示した。しかしながら、複数の第1凸部31a及び複数の第2凸部32aの形状は、接合部1cが伸びる方向が、ベルト基材1の幅方向(Y軸方向)と平行にならない限り、他の形状を有していてもよい。
【0060】
図11は、複数の第1凸部31a及び複数の第2凸部32aが他の形状を有する場合を概略的に示す平面図である。図11に示すベルト基材1において、複数の第1凸部31aのそれぞれは、一部が順テーパ状であり、且つ、先端部の少なくとも一部が中腹部と比較してより拡径した形状を有する。同様に、複数の第2凸部32aのそれぞれは、一部が順テーパ状であり、且つ、先端部の少なくとも一部が中腹部と比較してより拡径した形状を有する。
【0061】
複数の第1凸部31aの先端部及び複数の第2凸部32aの先端部は、丸みを帯びたR形状を有していてもよく、有していなくてもよい。図11では、複数の第1凸部31aの先端部及び複数の第2凸部32aの先端部がR形状を有する場合を例示している。この場合、先端部におけるベルト基材の立ち上がり又はめくれを抑制することができる。
【0062】
複数の第1凸部31a及び複数の第2凸部32aが、先端部の少なくとも一部が中腹部と比較してより拡径した形状を有する場合、以下の効果を奏する。接合部1cに対して張力が掛かった場合においても、第1凸部31aが有する拡径部と第2凸部32aが有する拡径部とが互いに引っかかる。これにより、接合部1cでの素抜け(第1端部1aと第2端部1bとの離間)を抑制することができる。
【0063】
<製造方法>
実施形態に係るベルトは、例えば、以下の方法で形成され得る。
【0064】
まず、所望の長さを有する帯状のベルト基材を用意する。このベルト基材が有する2つの短辺を、それぞれ、凹凸構造を有するように打ち抜き型を使用して打ち抜く。このとき、打ち抜いた後の第1端部1aと第2端部1bとが、互いに接合可能となるようにベルト基材を打ち抜く。
【0065】
作成した第1端部1aと第2端部1bとを突合わせて、ベルト基材1が無端状となるように保持する。次いで、ベルト基材1の裏面9側(内周面)から、第1端部1aと第2端部1bとが突合わされた接合部1cを被覆するように、第1層3としての溶融流動性フッ素樹脂フィルムと裏材2とをこの順で配置し、これらを熱プレスに供して、第1層3に含まれる溶融流動性フッ素樹脂の融点以上に加熱する。こうして、裏材2を、第1層3を介してベルト基材1の裏面9上に融着させることができる。
【0066】
第1層3として、溶融流動性フッ素樹脂フィルムを使用する代わりに、フッ素樹脂粒子を含むディスパージョンを塗布してもよい。この場合、まず、ベルト基材1の裏面9側において、接合部1cを被覆するようにディスパージョンを塗布して塗膜を作製する。次に、当該塗膜上に裏材2を積層して、これらを熱プレスに供することで、裏材2を、第1層3を介してベルト基材1の裏面9上に融着することができる。
【0067】
こうして、実施形態に係るベルトを作製することができる。
【0068】
ベルト基材1の表面8側(外周面)において、接合部1cを被覆する保護フィルム4を更に設ける場合は、例えば下記の手順で作製することができる。保護フィルム4として、例えば、接合部1cの全体を被覆可能な大きさを有する溶融流動性フッ素樹脂フィルムを用意する。当該フィルムを、表面8側において接合部1cを被覆するように置き、これを熱プレスによってベルト基材1に対して融着する。
【0069】
また、ベルト基材1の表面8側において、接合部1cを被覆する第2層6と、第2層6上に積層される表材5とを更に設ける場合は、例えば下記の手順で作製することができる。ベルト基材1の表面8側から、接合部1cを被覆するように、第2層6としての溶融流動性フッ素樹脂フィルムと表材5とをこの順で配置し、これらを熱プレスによりベルト基材1の表面8上に融着する。
【0070】
或いは、第2層6として溶融流動性フッ素樹脂フィルムを使用する代わりに、フッ素樹脂粒子を含むディスパージョンを塗布してもよい。まず、ベルト基材1の表面8側において、接合部1cを被覆するようにディスパージョンを塗布して塗膜を作製する。次に、当該塗膜上に表材5を積層して、これらを熱プレスに供することで、表材5を、第2層6を介してベルト基材1の表面8上に融着することができる。
【0071】
実施形態のベルトは、例えば、ヒートシール機用ベルト、食品製造ライン、冷凍食品製造ライン、プラスチックフィルム及び床材などの製造ライン等に使用されるコンベアベルトとして、製品の製造に使用され得る。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0073】
1…ベルト基材、1a…第1端部、1b…第2端部、1c…接合部、2…裏材、3、第1層、4…保護フィルム、5…表材、6…第2層、8…表面、9…裏面、10…ベルト、11…耐熱性織布、12…フッ素樹脂、20…ロール、31a…第1凸部、31b…第1凹部、31c…先端部、32a…第2凸部、32b…第2凹部、32c…先端部、50…ベルト基材、50a…第1端部、50b…第2端部、50c…接合部、100…ベルト、P…進行方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13