(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079784
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20230601BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20230601BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20230601BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230601BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230601BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20230601BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20230601BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/24
A61K8/19
A61K8/44
A61Q11/00
A23L33/17
A23L33/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193418
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000130776
【氏名又は名称】株式会社サンギ
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】兼子 謙一
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD04
4B018MD20
4B018ME14
4B018MF02
4C083AB291
4C083AB292
4C083AB311
4C083AB312
4C083AC581
4C083AC582
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC41
4C083DD21
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD41
4C083EE31
4C083EE34
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、高い唾液分泌促進効果を有する口腔用組成物を提供することである。
【解決手段】リン酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムと、ラクトフェリンを含有することを特徴とする口腔用組成物。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムと、ラクトフェリンを含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
グルタミン酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
リン酸カルシウムがハイドロキシアパタイト又はリン酸三カルシウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
リン酸カルシウムの含有量が1~5質量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液分泌を促進する口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライマウスは、唾液の分泌量低下により発症することが知られており、乾燥感やのどの渇きを感じるとともに、痛みや不快感を生じ、さらには、口臭の原因にもなる。さらに乾燥症状が続くと、口腔内菌数の変化から、う蝕、歯周疾患等を生じる。これらの症状を緩和するには、口腔内の保湿が重要であり、解決策の一例として、唾液の分泌を促進することが考えられる。唾液の分泌を促進して口腔内を潤す製品は既に知られており、唾液分泌を促進する成分が配合された口腔用組成物が各種開発されている。例えば、特許文献1では、リン酸化オリゴ糖カルシウムとラクトフェリンを含有する口腔ケア組成物が提案されており、特許文献2では、ポリグルタミン酸を含有する唾液分泌促進剤が提案されている。その他にも、グルタミン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム等が、唾液分泌促進効果を有する成分として知られている。γ-ポリグルタミン酸は、唾液分泌促進効果に加え保湿効果を有し、グルタミン酸ナトリウム、クエン酸及びクエン酸ナトリウムは、それぞれうまみ成分や酸味成分として広く知られている。しかしながら、γ-ポリグルタミン酸、L-グルタミン酸ナトリウムは、特有の食感(ヌメリ感)や味(うまみ)を有し、配合量を高くすると原料特有の食感や味が目立つという問題点があるため、配合量や応用できる製品が制限されていた。また、クエン酸やクエン酸ナトリウムは、速攻性がある反面、持続せずにすぐ効果が減衰し、さらに口腔粘膜の乾燥が進んだいわゆるドライマウスの患者に対しては、酸味刺激が痛みの原因となることがあり使用できないという問題点があった。そのため、高い唾液分泌促進効果を発揮しつつ、成分特有の食感や味を抑え、乾燥によって口腔粘膜の弱った人でも安心して使用できる低刺激の唾液分泌促進成分の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-138043号公報
【特許文献2】特許第4632048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、高い唾液分泌促進効果を有する口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、唾液分泌促進効果や口腔粘膜の修復効果等を有するラクトフェリンに着目し、ラクトフェリンを使用した唾液分泌促進効果や生体防御効果等を有する口腔用組成物の検討を開始した。検討を進めたところ、意外にもラクトフェリンに、通常唾液分泌促進効果を有さないハイドロキシアパタイト(以下、HAPともいう)又は炭酸カルシウムを組み合わせて使用すると、ラクトフェリンを単独で使用する場合に比べて唾液分泌促進効果が向上することを見いだした。また、ハイドロキシアパタイト以外のリン酸カルシウムでも同様の効果が得られた。さらに、ラクトフェリンとハイドロキシアパタイト又は他のリン酸カルシウムとの組合せは、特有の食感(ヌメリ感)や味(うまみ)を生じず、刺激も少ないものであった。さらに、上記組合せにグルタミン酸ナトリウムを少量加えることにより、原料由来の触感、味等のクセを抑えたまま、乾燥粘膜を刺激せずに、より高い唾液分泌促進効果を発揮できることを見いだした。本発明は、こうして完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)リン酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムと、ラクトフェリンを含有することを特徴とする口腔用組成物。
(2)グルタミン酸ナトリウムを含有することを特徴とする上記(1)記載の口腔用組成物。
(3)リン酸カルシウムがハイドロキシアパタイト又はリン酸三カルシウムであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の口腔用組成物。
(4)リン酸カルシウムの含有量が1~5質量%であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の口腔用組成物は、口腔内に含ませることにより、ラクトフェリンとリン酸カルシウムが互いの存在により相乗的に作用して、高い唾液分泌効果を有する。また、グルタミン酸ナトリウムを更に加えることにより、より高い唾液分泌効果を得ることができるとともに、唾液分泌効果を長時間持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】
図4は、実施例3と実施例4の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の口腔用組成物は、リン酸カルシウム及び/又は炭酸カルシウムと、ラクトフェリンを含有する。ラクトフェリンは、ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳動物の母乳、涙液、唾液、血液、粘液等の分泌液などに含まれる、哺乳動物の体内で広く分布している分子量約8万程度の鉄結合性糖タンパク質である。本発明におけるラクトフェリンとしては、特に制限されず、上記原料等から分離されて得られたものでもよく、植物由来のものでもよく、遺伝子組み換えによって得られるものでもよい。また、市販品を使用してもよく、調製したものを使用してもよい。本発明の口腔用組成物においては、ラクトフェリンを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0010】
本発明におけるリン酸カルシウムとしては、リン酸のカルシウム塩であれば特に限定されず、例えば、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム等を挙げることができ、これらのリン酸カルシウムは、それぞれ単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよく、水和物やリン及びカルシウムの一部が、マグネシウム、亜鉛、チタン、ナトリウム、カリウム等の他の元素で置換されたものでもよい。本発明におけるリン酸カルシウムとしては、唾液分泌効果促進の観点から、ハイドロキシアパタイト及びリン酸三カルシウムから選ばれる少なくとも一種が好ましい。本発明における炭酸カルシウムとしては、その原料、製法等は特に制限されず、例えば、食品添加物、日本薬局方、医薬部外品原料規格等の規格適合品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
本発明におけるリン酸カルシウムの一つであるハイドロキシアパタイトは、通常の方法で合成されるものの他、天然硬組織としてサケ等の食用魚の魚骨、豚骨、牛骨等から得られるものであってもよい。通常、ハイドロキシアパタイトは、化学量論的にはCa10(PO4)6(OH)2からなる組成で示されるが、Ca/Pモル比が1.67にならない非化学量論的なものであっても、ハイドロキシアパタイトの性質を示すと共にアパタイト構造をとることができ、例えば、Ca/Pモル比1.4~1.8程度の合成ハイドロキシアパタイトも本発明におけるハイドロキシアパタイトに含まれる。本発明において使用されるハイドロキシアパタイトは、結晶性、低結晶性、非晶質のいずれであってもよい。「低結晶性」とは、X線回折ピークが、高結晶性の粉体に比べてブロードな結晶質のものをいい、「非晶質」とは、X線回折パターンが幅広いハローを示し、結晶の特徴を示す回折パターンが得られないものをいう。このようなアモルファスハイドロキシアパタイトは、例えば、湿式合成法により合成したアパタイトを凍結乾燥若しくは100℃以下の温度で乾燥し、又は300℃程度以下の温度で焼成して得ることができる。また、結晶性のハイドロキシアパタイトは、例えば、湿式合成法により合成したアパタイトを600~1300℃で焼成して得ることができる。本発明において使用されるハイドロキシアパタイトは、分散後の平均粒径が1~10μmであるものが好ましい。
【0012】
本発明におけるリン酸カルシウムの一つであるリン酸三カルシウムは、第三リン酸カルシウムとも称され、化学式でCa3(PO4)2で表される組成物で、医薬品や化粧品をはじめ、食品、雑貨品、石油化学工業など広く一般的に使用されている。また、水和物であってもよい。本発明において使用されるリン酸三カルシウムは、例えば、医薬品添加物規格、医薬部外品原料規格、化粧品種別配合成分規格等の規格適合品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、その製造方法や製造するための原料も特に制限されるものではない。
【0013】
本発明におけるリン酸カルシウムの一つであるリン酸一水素カルシウムは、第二リン酸カルシウムとも称され、化学式でCaHPO4や、その二水和物であるCaHPO4・2H2Oで表わされる組成物で、医薬品、食品、化粧品、工業用原料など広く一般的に使用されている。本発明において使用されるリン酸一水素カルシウムは、例えば、食品添加物、日本薬局方、医薬部外品原料規格等の規格適合品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、その製造方法や製造するための原料も特に制限されるものではない。
【0014】
本発明の口腔用組成物におけるラクトフェリンの含有量は、唾液分泌促進効果が得られるかぎり特に限定されるものではないが、口腔用組成物全体に対して1~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2.5~10質量%がより好ましく、5~10質量%が更に好ましい。ラクトフェリンの含有量が1質量%未満では、ラクトフェリンが本来保有する機能を発揮しえず、唾液分泌促進効果を得ることができないおそれがあり、ラクトフェリンの含有量が15質量%を超えると、ラクトフェリンの増加量に対する唾液分泌促進効果の増加割合が低下するおそれがある。本発明の口腔用組成物におけるリン酸カルシウムの含有量は、唾液分泌促進効果が得られるかぎり特に限定されるものではないが、口腔用組成物全体に対して1~5質量%が好ましく、1.25~5質量%、1.5~4質量%、2~4質量%又は3~4質量%がより好ましい。リン酸カルシウムの含有量が、1質量%未満又は5質量%を超える場合、ほぼラクトフェリンが有する唾液分泌促進効果しか得られず、相乗効果が得られないおそれがある。また、本発明の口腔用組成物は、リン酸カルシウムの代わりに炭酸カルシウムを用いることが可能である。炭酸カルシウムの含有量は、唾液分泌促進効果が得られるかぎり特に限定されるものではないが、口腔用組成物全体に対して1~5質量%が好ましく、1.25~5質量%、1.5~4質量%、2~4質量%又は3~4質量%がより好ましい。炭酸カルシウムの含有量が、1質量%未満又は5質量%を超える場合、ほぼラクトフェリンが有する唾液分泌促進効果しか得られず、相乗効果が得られないおそれがある。本発明の口腔用組成物においては、リン酸カルシウムと炭酸カルシウムの両方を使用することもできる。その場合、リン酸カルシウムと炭酸カルシウムの合計の含有量は、口腔用組成物全体に対して1~5質量%が好ましく、1.25~5質量%、1.5~4質量%、2~4質量%又は3~4質量%がより好ましい。
【0015】
本発明の口腔用組成物は、ラクトフェリン及びリン酸カルシウムに加えて、さらにグルタミン酸ナトリウムを含有することが好ましい。グルタミン酸ナトリウムを加えることで、より高い唾液分泌促進効果を長時間持続させることが可能となる。本発明におけるグルタミン酸ナトリウムの含有量は特に制限されるものではないが、0.1~5質量%が好ましい。グルタミン酸ナトリウムの含有量が0.1質量%未満の場合、グルタミン酸ナトリウムを添加した効果が得られないおそれがあり、グルタミン酸ナトリウムの含有量が5質量%を超えた場合、原料(グルタミン酸ナトリウム)由来の癖(えぐみ)が強くなるとともに、持続時間を長くする効果も飽和状態となるおそれがある。グルタミン酸ナトリウムとしては、L-グルタミン酸ナトリウムが好ましい。
【0016】
本発明の口腔用組成物は、唾液分泌促進効果を有する、唾液の分泌を促すことが可能な口腔用組成物であり、口腔内で使用される組成物であれば、その形態、使用方法等は特に制限されない。本発明の口腔用組成物は、唾液分泌促進剤として使用でき、練歯磨剤、粉歯磨剤、液体歯磨剤、洗口剤、口腔洗浄剤又はトローチ剤等の口腔ケア用品、食品、飲料等に配合できる。また、医薬品、医薬部外品及び食品のいずれの分類において使用してもよい。本発明の口腔用組成物の形態は、液状、ゲル状、ペースト状又は固形状のいずれの形状でもよい。また、本発明の口腔用組成物は、前述の必須成分に加えて、その種類、剤形等に応じて、口腔ケア用品、食品、飲料、薬剤等に通常使用される添加剤、各種薬効成分等の有効成分などを含有することができ、添加剤としては、例えば、研磨剤、湿潤剤、発泡剤、増粘剤、乳化剤、結合剤、pH調整剤、有機酸、着色料、界面活性剤、油脂、アルコール、甘味料、酸味料、香料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、保存料等を挙げることができ、剤形が液状の場合は水、アルコール等の通常使用される溶媒又は分散媒を、剤形が固形状の場合は通常使用される各種の賦形剤を使用することができる。これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げず、薬剤学的に許容できる範囲で適宜使用される。また、本発明の口腔用組成物において、ラクトフェリン、リン酸カルシウム及びグルタミン酸ナトリウム及びその他の成分は、製造過程のいかなる過程で添加してもよい。本発明の口腔用組成物は、一定時間口腔内に存在させることにより、唾液分泌促進効果を発揮することができる。
【実施例0017】
[参考例]
(ラクトフェリン)
被験水溶液中のラクトフェリン濃度を、それぞれ1質量%、2.5質量%、5質量%、10質量%とした4種類の被験水溶液を調製した。被験水溶液の調製は、所定量のラクトフェリンを容量15mLのプラスチック製遠沈管に入れ、水を加えてラクトフェリンの濃度が目的の濃度となるようにし、ラクトフェリンのダマが完全に溶解するまで、ボルテックスミキサーによる攪拌及び転倒攪拌を繰り返した。被験水溶液の摂取は、摂取量をマイクロピペットで計り取り摂取し、摂取後30分間にわたる唾液分泌量を測定した。その結果を
図1に示す。
図1は、5分後の結果において、唾液分泌量の促進率の高い方から、10質量%ラクトフェリン、5質量%ラクトフェリン、2.5質量%ラクトフェリン、1質量%ラクトフェリンを示している。
【0018】
[実施例1]
(ラクトフェリン+HAP)
被験水溶液中のラクトフェリン濃度を10質量%で一定とし、被験水溶液中のHAP濃度がそれぞれ1.25、2、3、4%となるようにした4種類の被験水溶液を調製した。被験水溶液の調製は、所定量のラクトフェリンとHAPを容量15mLのプラスチック製遠沈管に入れ、水を加えてラクトフェリンとHAPの濃度が目的の濃度となるようにし、ラクトフェリンのダマが完全に溶解するまで、ボルテックスミキサーによる攪拌及び転倒攪拌を繰り返した。HAPは水に溶解しないため、被験水溶液中で懸濁状態となる。被験水溶液の摂取の際には、摂取量を図り取る直前にボルテックスし、懸濁されたHAPが沈まないよう即座にマイクロピペットで計り取り摂取した。摂取後30分間にわたる唾液分泌量を測定した。その結果を
図2に示す。
図2は、5分後の結果において、唾液分泌量の促進率の高い方から、10質量%ラクトフェリン+4質量%HAP、10質量%ラクトフェリン+3質量%HAP、10質量%ラクトフェリン+2質量%HAP、10質量%ラクトフェリン+1.25質量%HAP、10質量%ラクトフェリンを示している。10質量%ラクトフェリン+4質量%HAP、10質量%ラクトフェリン+3質量%HAP及び10質量%ラクトフェリン+2質量%HAPは、5~30分の全ての経過時間において、10質量%ラクトフェリンの場合よりも高い唾液分泌量促進率を示した。10質量%ラクトフェリン+1.25質量%HAPは、5分後において10質量%ラクトフェリンの場合よりも高い唾液分泌量促進率を示した。
【0019】
[実施例2]
(ラクトフェリン+第三リン酸カルシウム)
HAPに替えて第三リン酸カルシウムを3質量%の濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様に被験水溶液を作製し、摂取後30分間にわたる唾液分泌量を測定した。その結果を
図3に示す。
図3は、5分後の結果において、唾液分泌量の促進率の高い方から、10質量%ラクトフェリン+3質量%HAP、10質量%ラクトフェリン+3質量%第三リン酸カルシウム、10質量%ラクトフェリンを示している。HAPが3質量%の場合と比較して、第三リン酸カルシウムが3質量%の場合は、HAPより若干唾液促進率が低いものの、HAPの場合とほぼ同等の唾液促進の相乗効果が得られた。
【0020】
[実施例3]
(ラクトフェリン+HAP+グルタミン酸ナトリウム)
ラクトフェリン濃度を10質量%とし、これにHAPを3質量%の濃度、グルタミン酸ナトリウムを0.5質量%の濃度となるように実施例1と同様に被験水溶液を作製し、摂取後30分間にわたる唾液分泌量を測定した。その結果を
図4に示す。
図4は、実施例3と実施例4の結果を示した図である。5分後の結果において、唾液分泌量の促進率の高い方から、10質量%ラクトフェリン+3質量%HAP+0.5質量%グルタミン酸ナトリウム、10質量%ラクトフェリン+3質量%炭酸カルシウム+0.5質量%グルタミン酸ナトリウム、10質量%ラクトフェリンを示している。ラクトフェリンのみの場合と比較して、HAPを添加した被験水溶液は高い唾液促進の相乗効果が得られた。実施例1及び2と比較して、最も良好な唾液促進の相乗効果が得られた。また、グルタミン酸ナトリウムを添加した場合、時間の経過に対する唾液分泌促進効果の低下が穏やかであることが確認でき、唾液分泌促進効果を長時間持続させることが可能であることが分かる。
【0021】
[実施例4]
(ラクトフェリン+炭酸カルシウム+グルタミン酸ナトリウム)
ラクトフェリン濃度を10質量%とし、これにHAPの代わりに炭酸カルシウムを3質量%の濃度、グルタミン酸ナトリウムを0.5質量%の濃度となるように実施例1と同様に被験水溶液を作製し、摂取後30分間にわたる唾液分泌量を測定した。その結果を
図4に示す。
図4に示すように、5分後、10分後の結果において、10質量%ラクトフェリン+3質量%炭酸カルシウム+0.5質量%グルタミン酸ナトリウムを含む被験水溶液は、ラクトフェリンのみの場合と比較して、唾液促進の相乗効果が得られた。
【0022】
[比較例1]
(ラクトフェリン+グルタミン酸ナトリウム)
HAPに替えてグルタミン酸ナトリウムを0.5質量%の濃度となるように添加した以外は、実施例1と同様に被験水溶液を作製し、摂取後30分間にわたる唾液分泌量を測定した。その結果を
図5に示す。
図5は、5分後の結果において、唾液分泌量の促進率の高い方から、10質量%ラクトフェリン、10質量%ラクトフェリン+0.5質量%グルタミン酸ナトリウムを示している。ラクトフェリンとグルタミン酸ナトリウムとの組み合わせでは、ラクトフェリンのみの場合と比較して、唾液分泌量の促進率が低下し、唾液促進の相乗効果は得られなかった。
【0023】
[比較例2]
(HAP+グルタミン酸ナトリウム)
HAP濃度を3質量%とし、これにグルタミン酸ナトリウムの濃度が0.5質量%となるように被験水溶液を作製し、摂取後30分間にわたる唾液分泌量を測定した。その結果を
図6に示す。
図6は、5分後の結果において、唾液分泌量の促進率の高い方から、10質量%ラクトフェリン、3質量%HAP+0.5質量%グルタミン酸ナトリウムを示している。ラクトフェリンのみの場合と比較して、HAPとグルタミン酸ナトリウムとの組み合わせでは、唾液促進の効果が低かった。
【0024】
[実施例5]
(ラクトフェリン+HAP)
被験水溶液中のラクトフェリン濃度を2.5質量%とし、HAP濃度を3質量%とした以外は、実施例1と同様に被験水溶液を作製し、摂取後30分間にわたる唾液分泌量を測定した。その結果を
図7に示す。
図7には、実施例5との比較のために、ラクトフェリン濃度が、それぞれ2.5質量%、5質量%、10質量%の場合の
図1のデータを示している。5分後の結果において、唾液分泌量の促進率の高い方から、10質量%ラクトフェリン、5質量%ラクトフェリン、2.5質量%ラクトフェリン+3質量%HAP、2.5質量%ラクトフェリンを示している。2.5質量%ラクトフェリン+3質量%HAPは、5~30分の全ての経過時間において、2.5質量%ラクトフェリンの場合よりも高い唾液分泌量促進率を示し、ラクトフェリン濃度が10質量%の場合と同様にHAPとの間で相乗効果が認められた。
【0025】
参考例、実施例及び比較例では、ラクトフェリンとして森永乳業株式会社製MLF-1を使用し、HAPとして株式会社サンギ製アパカルを使用し、第3リン酸カルシウムとして株式会社エヌ・シー・コーポレーション製フィッシュカルを使用し、グルタミン酸ナトリウムとしてMCフードスペシャリティーズ株式会社製グルエースVを使用した。また、唾液分泌量の測定は、以下のとおり行った。
(唾液分泌量の測定、評価方法)
以下の手順(1)~(4)によって、各被験水溶液摂取後30分間にわたる唾液分泌量を測定し、その測定結果に基づいて唾液分泌促進率を算出して、唾液分泌の促進効果を評価した。なお、上記唾液分泌量は、5分毎に採取して加算された被験水溶液を含む唾液の総重量から各被験水溶液の重量を減産したものである。なお、本試験にあたり、唾液分泌の日内変動の影響を最小限に抑えるため、測定は1日2回(午前及び午後)とし、試験開始は食後3時間程度とした。
(1)水20mLで30秒間洗口後に吐出し、安静状態に戻る5分後、試験を開始する。
(2)A:コントロール試験
まず、安静状態で唾液を5分間口内に溜めた後に吐出して、質量を測定する。この値をコントロール試験のベースラインとする。次に、1mLの水を口に含み、5分間保持した後に吐出して、質量を測定する。なお、同測定値から摂取した水の質量を減算して唾液質量を算出する。次に、5分経過ごと30分間にわたり、水を口に含まずに唾液を吐出して累積的に加算された質量を測定する。したがって、唾液の質量測定は、合計6回繰り返して行われる。
(3)B:被験水溶液を用いた試験
まず、安静状態で唾液を5分間口内に溜めた後に吐出して、質量を測定する。この値を被験水溶液の試験のベースラインとする。次に、1mLの被験水溶液を口に含み、5分間保持した後に吐出して、質量を測定する。なお、同測定値から摂取した被験水溶液の質量を減算して唾液質量を算出する。次に、5分経過ごと30分間にわたり、被験水溶液を口に含まずに唾液を吐出して累積的に加算された質量を測定する。したがって、唾液の質量測定は、合計6回繰り返して行われる。
(4)唾液分泌促進率の算出
唾液分泌促進率として、Aにおける唾液質量に対するBにおける唾液質量の比率(B/A)を算出して、唾液分泌促進率とする。5分後の唾液分泌促進率は、(5分後のB唾液質量)/(5分後のA唾液質量)として算出し、10分後の唾液分泌促進率は、(5分後のB唾液質量+10分後のB唾液質量)/(5分後のA唾液質量+10分後のA唾液質量)として算出し、以降の時間も同様に算出した。
図1~5には、6サンプルの測定の平均値を示している。また、
図1~6では唾液分泌促進率を%で表示している。
本発明の口腔用組成物は、唾液分泌促進剤として使用でき、練歯磨剤、粉歯磨剤、液体歯磨剤、洗口剤、口腔洗浄剤又はトローチ剤等の口腔ケア用品、食品、飲料等に配合できる。