(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079807
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/62 20060101AFI20230601BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61F13/62 120
A61F13/56 210
A61F13/56 213
A61F13/62 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193458
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 雄吾
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200CA02
3B200CA06
3B200CA07
3B200DE01
3B200DE11
3B200DE14
(57)【要約】
【課題】ファスニングテープをターゲットテープにしっかりと止着させることができる使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】おむつ本体2の外面側にターゲットテープ11が設けられた使い捨ておむつであって、ターゲットテープ11は幅方向xに第1領域17と第2領域18とを有し、ベース層12上に糸条による網構造14が形成され、網構造14は格子部15と斜行部16を含み、斜行部16のうち、糸条が2つの格子点を幅方向xの一方側から他方側に向かって後側から前側に斜めに結ぶように配置されたものを第1斜行部16Aとし、糸条が2つの格子点を幅方向xの他方側から一方側に向かって後側から前側に斜めに結ぶように配置されたものを第2斜行部16Bとしたとき、第1領域17では第1斜行部16Aの数が第2斜行部16Bの数よりも多く、第2領域18では第2斜行部16Bの数が第1斜行部16Aの数よりも多い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向と前後方向を有し、おむつ本体の前記幅方向の両側にファスニングテープが設けられたテープタイプの使い捨ておむつであって、
前記ファスニングテープには面ファスナーのフック部材が設けられ、
前記おむつ本体の外面側には、前記おむつの着用の際に前記ファスニングテープの前記フック部材が係合されるターゲットテープが設けられ、
前記ターゲットテープは、ベース層と、前記ベース層の外面側に設けられ、糸条による網構造が形成された係合層とを有し、
前記網構造は、前記糸条が四角格子状に配置された格子部と、前記糸条が前記四角格子の少なくとも2つの格子点を斜めに結ぶように配置された斜行部を含み、
前記ターゲットテープは、前記幅方向に対して2つの領域を有し、前記幅方向の一方側に位置する第1領域と、前記幅方向の他方側に位置する第2領域とを有し、
前記斜行部のうち、前記糸条が2つの格子点を前記幅方向の一方側から他方側に向かって前記前後方向の後側から前側に斜めに結ぶように配置されたものを第1斜行部とし、前記糸条が2つの格子点を前記幅方向の他方側から一方側に向かって前記前後方向の後側から前側に斜めに結ぶように配置されたものを第2斜行部としたとき、前記第1領域では前記第1斜行部の数が前記第2斜行部の数よりも多く、前記第2領域では前記第2斜行部の数が前記第1斜行部の数よりも多いことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記ターゲットテープは、前記前後方向に対してさらに2つの領域となる第3領域と第4領域を有しており、前記前後方向の後側であって前記幅方向の一方側に位置する前記第1領域と、前記前後方向の後側であって前記幅方向の他方側に位置する前記第2領域と、前記前後方向の前側であって前記幅方向の一方側に位置する前記第3領域と、前記前後方向の前側であって前記幅方向の他方側に位置する前記第4領域が配置され、
前記第4領域では前記第1斜行部の数が前記第2斜行部の数よりも多く、前記第3領域では前記第2斜行部の数が前記第1斜行部の数よりも多い請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記おむつ本体の前記幅方向の両側に配置されたファスニングテープは、前記おむつ本体の幅方向の両側の一方側に取り付けられた第1テープ本体部と、前記第1テープ本体部から少なくとも前記幅方向の一方側に延在する第1つまみ部とを有する第1ファスニングテープと、前記おむつ本体の幅方向の両側の他方側に取り付けられた第2テープ本体部と、前記第2テープ本体部から少なくとも前記幅方向の他方側に延在する第2つまみ部を有する第2ファスニングテープを含む請求項1または2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記第1つまみ部は、前記第1テープ本体部から前記幅方向に延在し前記前後方向に離隔して設けられた前側つまみ部と後側つまみ部とを有し、前記第2つまみ部は、前記第2テープ本体部から前記幅方向に延在し前記前後方向に離隔して設けられた前側つまみ部と後側つまみ部とを有し、前記前側つまみ部と前記後側つまみ部にそれぞれ前記フック部材が設けられ、
前記フック部材は、基盤と、前記基盤から突出する複数の係合素子とを有し、
少なくとも前記後側つまみ部に設けられた前記フック部材は、前記係合素子が前記前後方向に並んで配置されている請求項3に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記後側つまみ部には、前記フック部材として、外側フック部材と、前記外側フック部材から前記幅方向に離隔し、前記外側フック部材よりも前記幅方向の内方に設けられた内側フック部材とが設けられ、
前記外側フック部材は、前記幅方向の内方縁に沿った領域に設けられた前記係合素子の高さが、それよりも前記幅方向の外方の領域に設けられた前記係合素子の高さよりも高く、
前記内側フック部材は、前記幅方向の外方縁に沿った領域に設けられた前記係合素子の高さが、それよりも前記幅方向の内方の領域に設けられた前記係合素子の高さよりも高い請求項4に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記後側つまみ部には、前記フック部材として、外側フック部材と、前記外側フック部材から前記幅方向に離隔し、前記外側フック部材よりも前記幅方向の内方に設けられた内側フック部材とが設けられ、
前記外側フック部材は、前記幅方向の内方縁に沿った領域に設けられた前記係合素子の頂部の大きさが、それよりも前記幅方向の外方の領域に設けられた前記係合素子の頂部の大きさよりも大きく、
前記内側フック部材は、前記幅方向の外方縁に沿った領域に設けられた前記係合素子の頂部の大きさが、それよりも前記幅方向の内方の領域に設けられた前記係合素子の頂部の大きさよりも大きい請求項4または5に記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記おむつの着用の際に、前記第1ファスニングテープの前記第1つまみ部が少なくとも前記第1領域に係合され、前記第2ファスニングテープの前記第2つまみ部が少なくとも前記第2領域に係合されるよう構成された請求項3~6のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記第1斜行部において前記糸条によって斜めに結ばれている前記2つの格子点が、隣設された2つの四角形状の2つの格子点であり、前記第2斜行部において前記糸条によって斜めに結ばれている前記2つの格子点が、隣設された2つの四角形状の2つの格子点である請求項1~7のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項9】
前記ターゲットテープは第1ターゲットテープと第2ターゲットテープを有し、前記第1領域として前記第1ターゲットテープが前記幅方向の前記一方側に位置し、前記第2領域として前記第2ターゲットテープが前記幅方向の前記他方側に位置している請求項1~8のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープタイプの使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テープタイプの使い捨ておむつが広く知られている。テープタイプの使い捨ておむつは、おむつの左右に設けられたファスニングテープをおむつの外面側に設けられたターゲットテープに止着することにより、パンツ形状に形成して着用され、例えば特許文献1~3にはそのような使い捨ておむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-185073号公報
【特許文献2】特開2005-296603号公報
【特許文献3】特開2012-50575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テープタイプの使い捨ておむつでは、着用の際、ファスニングテープをターゲットテープにしっかりと止着できることが求められ、これにより、使い捨ておむつを着用者の腰回りに安定して装着することができる。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、幅方向の両側にファスニングテープが設けられ、外面側にファスニングテープを止着させるターゲットテープが設けられた使い捨ておむつであって、ファスニングテープのフック部材をターゲットテープに容易に係合することができる使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の実施態様における使い捨ておむつとは、幅方向と前後方向を有し、おむつ本体の幅方向の両側にファスニングテープが設けられたテープタイプの使い捨ておむつであって;ファスニングテープには面ファスナーのフック部材が設けられ;おむつ本体の外面側には、おむつの着用の際にファスニングテープのフック部材が係合されるターゲットテープが設けられ;ターゲットテープは、ベース層と、ベース層の外面側に設けられ、糸条による網構造が形成された係合層とを有し;網構造は、糸条が四角格子状に配置された格子部と、糸条が四角格子の少なくとも2つの格子点を斜めに結ぶように配置された斜行部を含み;ターゲットテープは、幅方向に対して2つの領域を有し、幅方向の一方側に位置する第1領域と、幅方向の他方側に位置する第2領域とを有し;斜行部のうち、糸条が2つの格子点を幅方向の一方側から他方側に向かって前後方向の後側から前側に斜めに結ぶように配置されたものを第1斜行部とし、糸条が2つの格子点を幅方向の他方側から一方側に向かって前後方向の後側から前側に斜めに結ぶように配置されたものを第2斜行部としたとき、第1領域では第1斜行部の数が第2斜行部の数よりも多く、第2領域では第2斜行部の数が第1斜行部の数よりも多いところに特徴を有する。
【0006】
本発明の実施態様における使い捨ておむつは、上記のように、糸条による網構造が形成されたターゲットテープが設けられ、ターゲットテープは幅方向に対して第1領域と第2領域の2つの領域を有し、第1領域は網構造に第1斜行部が多く含まれるように形成され、第2領域は網構造に第2斜行部が多く含まれるように形成されているため、使い捨ておむつを着用した際に、ファスニングテープにつまみ部が1つ設けられている場合でも、つまみ部のフック部材がターゲットテープの対応する領域に係合されやすくなることから、ファスニングテープをしっかりとターゲットテープに止着することができる。
【0007】
また、別の実施態様において、ターゲットテープは、前後方向に対してさらに2つの領域となる第3領域と第4領域を有するものであってもよい。この場合、ターゲットテープには、前後方向の後側であって幅方向の一方側に位置する第1領域と、前後方向の後側であって幅方向の他方側に位置する第2領域と、前後方向の前側であって幅方向の一方側に位置する第3領域と、前後方向の前側であって幅方向の他方側に位置する第4領域とが配置され、第1領域と第4領域では第1斜行部の数が第2斜行部の数よりも多く、第2領域と第3領域では第2斜行部の数が第1斜行部の数よりも多いことが好ましい。このようにターゲットテープが形成されており、例えば、ファスニングテープのつまみ部が前後方向に並んで2つ設けられる場合には、使い捨ておむつを着用した際に、ファスニングテープの2つのつまみ部のそれぞれのフック部材がターゲットテープの対応する領域に係合されやすくなり、ファスニングテープをしっかりとターゲットテープに止着することができる。
【0008】
本発明の使い捨ておむつの実施態様において、おむつ本体の幅方向の両側に配置されたファスニングテープは、おむつ本体の幅方向の両側の一方側に取り付けられた第1テープ本体部と、第1テープ本体部から少なくとも幅方向の一方側に延在する第1つまみ部とを有する第1ファスニングテープと、おむつ本体の幅方向の両側の他方側に取り付けられた第2テープ本体部と、第2テープ本体部から少なくとも幅方向の他方側に延在する第2つまみ部を有する第2ファスニングテープを含むことが好ましい。
【0009】
本発明の使い捨ておむつの別の実施態様として、第1つまみ部は、第1テープ本体部から幅方向に延在し前後方向に離隔して設けられた前側つまみ部と後側つまみ部とを有し、第2つまみ部は、第2テープ本体部から幅方向に延在し前後方向に離隔して設けられた前側つまみ部と後側つまみ部とを有していてもよい。この場合には、前側つまみ部と後側つまみ部にそれぞれフック部材が設けられ、フック部材は、基盤と、基盤から突出する複数の係合素子とを有し、少なくとも後側つまみ部に設けられたフック部材は、係合素子が前後方向に並んで配置されていることが好ましい。
【0010】
さらに、フック部材の実施態様として、後側つまみ部には、フック部材として、外側フック部材と、外側フック部材から幅方向に離隔し、外側フック部材よりも幅方向の内方に設けられた内側フック部材とが設けられ、外側フック部材は、幅方向の内方縁に沿った領域に設けられた係合素子の高さが、それよりも幅方向の外方の領域に設けられた係合素子の高さよりも高く、内側フック部材は、幅方向の外方縁に沿った領域に設けられた係合素子の高さが、それよりも幅方向の内方の領域に設けられた係合素子の高さよりも高く形成されていてもよい。
【0011】
後側つまみ部には、フック部材として、外側フック部材と、外側フック部材から幅方向に離隔し、外側フック部材よりも幅方向の内方に設けられた内側フック部材とが設けられ、外側フック部材は、幅方向の内方縁に沿った領域に設けられた係合素子の頂部の大きさが、それよりも幅方向の外方の領域に設けられた係合素子の頂部の大きさよりも大きく、内側フック部材は、幅方向の外方縁に沿った領域に設けられた係合素子の頂部の大きさが、それよりも幅方向の内方の領域に設けられた係合素子の頂部の大きさよりも大きく形成されていてもよい。
【0012】
ファスニングテープのつまみ部が前後方向に並んで2つ設けられる場合には、後側つまみ部が前側つまみ部に重なる領域で、上記のようにフック部材の形状を変えることで、後側つまみ部を前側つまみ部の上に係合しやすくすることもできる。
【0013】
おむつの着用の際には、第1ファスニングテープの第1つまみ部が少なくとも第1領域に係合され、第2ファスニングテープの第2つまみ部が少なくとも第2領域に係合されるよう構成されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の使い捨ておむつの実施態様の一つとして、第1斜行部において糸条によって斜めに結ばれている2つの格子点が、隣設された2つの四角形状の2つの格子点であり、第2斜行部において糸条によって斜めに結ばれている2つの格子点が、隣設された2つの四角形状の2つの格子点であることが好ましい。
【0015】
本発明の使い捨ておむつの実施態様の一つとして、ターゲットテープが第1ターゲットテープと第2ターゲットテープを有していてもよい。この場合、第1領域として第1ターゲットテープを幅方向の一方側に位置するように配置し、第2領域として第2ターゲットテープを幅方向の他方側に位置するように配置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施態様における使い捨ておむつは、ファスニングテープのフック部材をターゲットテープに容易に係合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の使い捨ておむつの一例を示し、使い捨ておむつを肌面側から見た平面図を表す。
【
図2】
図1に示した使い捨ておむつを外面側から見た平面図の一例を表す。
【
図3】
図1および
図2に示した使い捨ておむつのIII-III断面図を表す。
【
図4】
図2に示した使い捨ておむつに設けられたターゲットテープの一実施形態の一部拡大平面図を表す。
【
図5】
図2に示した使い捨ておむつに設けられたターゲットテープの他の実施形態の一部拡大平面図を表す。
【
図6】
図1に示した使い捨ておむつの幅方向の一方側に設けられたファスニングテープの拡大平面図を表す。
【
図7】
図1に示した使い捨ておむつの幅方向の他方側に設けられたファスニングテープの拡大平面図を表す。
【
図8】
図6に示したファスニングテープのVIII-VIII断面図を表す。
【
図9】
図8に示したファスニングテープの断面図の変形例を表す。
【
図10】
図8に示したファスニングテープの断面図の変形例を表す。
【
図11】本発明の実施態様の一つである使い捨ておむつの着用状態の斜視図の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施態様に係る使い捨ておむつの構成について、図面を参照して説明する。なお本発明は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。
【0019】
図1~
図3には、本発明の使い捨ておむつの一例を示した。
図1は、使い捨ておむつを肌面側から見た平面図を表し、
図2は、
図1に示した使い捨ておむつを外面側から見た平面図の一例を表し、
図3は、
図1および
図2に示した使い捨ておむつのIII-III断面図を表す。本願の図では、矢印xが幅方向、矢印yが前後方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zを表す。なお
図1および
図2では、図面の上側がおむつの前側に相当し、図面の下側がおむつの後側に相当する。
【0020】
使い捨ておむつ1は、おむつ本体2と、おむつ本体2の幅方向xの両側に設けられたファスニングテープ31とを有する。
図1および
図2では、おむつ本体2は、前側部と後側部とこれらの間に位置する股部とを有し、ファスニングテープ31がおむつ本体2の後側部の両側に取り付けられている。使い捨ておむつ1は、着用の際、前側部を着用者の腹部に、股部を着用者の股間部に、後側部を着用者の背部に当て、ファスニングテープ31をおむつ本体2の前側部の外面側に設けられたターゲットテープ11に止着することで、パンツ形状に形成して使用する。なお、図面には示されていないが、ファスニングテープ31はおむつ本体2の前側部の両側に取り付けられ、ターゲットテープ11はおむつ本体2の後側部の外面側に設けられてもよい。
【0021】
使い捨ておむつ1は、前後方向yと幅方向xを有する。前後方向yとは、使い捨ておむつを着用した際に着用者の股間の前後方向に延びる方向に相当する。幅方向xとは、使い捨ておむつと同一面上にあり前後方向yと直交する方向を意味し、使い捨ておむつを着用した際の着用者の左右方向に相当する。また本発明において、使い捨ておむつの肌面側とは、使い捨ておむつを着用した際の着用者の肌に向く側を意味し、使い捨ておむつの外面側とは、使い捨ておむつを着用した際の着用者とは反対に向く側を意味する。
【0022】
おむつ本体2は、トップシート3と、バックシート4と、これらの間に配された吸収体5とを有する。トップシート3は、使い捨ておむつを着用した際に着用者側に位置するシートであり、バックシート4は、使い捨ておむつを着用した際に着用者とは反対側、すなわち外面側に位置するシートである。着用者から排泄された尿等は、トップシート3を透過して吸収体5に収容される。バックシート4は、排泄物が外部へ漏れるのを防いでいる。
【0023】
トップシート3は液透過性であることが好ましく、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシート3として、織布、編布、有孔樹脂フィルム等を用いてもよい。
【0024】
バックシート4は液不透過性であることが好ましく、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、樹脂フィルム等を用いることができる。またバックシート4として、不織布とフィルムとの積層体を用いてもよい。
【0025】
吸収体5は、尿等の排泄物を吸収できる吸収性材料を含むものであれば特に限定されない。吸収体5としては、例えば、吸収性材料を所定形状に成形した成形体を用いたり、あるいは当該成形体を紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布等の被覆シートで覆ったものを用いることができる。吸収性材料としては、例えば、パルプ繊維等の親水性繊維や、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂等が挙げられる。また、吸水性材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の熱溶着性繊維が含まれてもよい。これらの熱溶着性繊維は、尿等との親和性を高めるために、界面活性剤等により親水化処理がされていてもよい。
【0026】
吸収性材料は、尿等の吸収速度を高める点から、親水性繊維を含むことが好ましい。また、吸収容量を高める点からは、吸収性材料は吸水性樹脂を含むことが好ましい。従って、吸収体は親水性繊維(特にパルプ繊維)と吸水性樹脂を含むことが好ましい。この場合、例えば、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂を混合または散布したものを用いることが好ましい。
【0027】
吸収体5は、シート状吸収体であってもよい。シート状吸収体としては、不織布間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように形成されたものが挙げられる。このように形成されたシート状吸収体は、不織布間に吸水性樹脂を有するため、高い吸収容量を実現できる。また、シート状吸収体は不織布間にパルプ繊維を有しないため、嵩張らず薄型に形成することができる。
【0028】
吸収体5の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収体(あるいは吸収体を構成する成形体)の形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が挙げられる。なお、吸収体5が着用者の大腿部に挟まれて幅方向xに圧迫されても歪みにくくする点から、吸収体5、あるいは吸収体5を構成する成形体は、砂時計形に形成されていることが好ましい。
【0029】
実施態様の一つとして、おむつ本体2は、トップシート3の幅方向xの両側に、トップシート3よりも幅方向xの外方に延在するサイドシート6が接合していることが好ましい。サイドシート6は液不透過性であることが好ましく、バックシート4に使用可能なシート材料から構成することができる。
【0030】
サイドシート6により、トップシート3の幅方向xの両側に、立ち上がりフラップ7が形成されることが好ましい。この場合、サイドシート6には、
図3に示すように、トップシート3との接合部6Aよりも幅方向xの内方部分に前後方向yに延びる起立用弾性部材8が設けられることが好ましい。起立用弾性部材8の収縮力によってサイドシート6の内方部分が立ち上げられ、立ち上がりフラップ7を形成することができる。立ち上がりフラップ7を設けることにより、尿等の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップ7は前後方向yの端部の内面がトップシート3上に接合されてもよく、これにより、おむつを着用の際に立ち上がりフラップ7が着用者の肌に向かって立ち上がりやすくなる。
【0031】
上記説明した各シートとして不織布を用いる場合、不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、SMS不織布等を用いることが好ましい。各シートの単位面積あたりの質量は、10g/m2以上が好ましく、12g/m2以上がより好ましく、また40g/m2以下が好ましく、30g/m2以下がより好ましい。
【0032】
おむつ本体2には、幅方向xの両側にそれぞれ、前後方向yに延びる脚用弾性部材9が設けられることが好ましい。脚用弾性部材9を設けることにより、着用者の脚回りにギャザーを形成して脚回りのフィット性を高めたり、横漏れを防止することができる。
【0033】
おむつ本体2には、前後方向yの端部に、幅方向xに延びるウェスト用弾性部材10を設けてもよい。ウェスト用弾性部材10の収縮力により、着用者の胴回りに沿ったウェストギャザーが形成され、背中側や腹部側からの尿等の排泄物の漏れが防止される。
【0034】
上記に説明した各弾性部材としては、ポリウレタン糸、ポリウレタンフィルム、天然ゴム等の通常使い捨ておむつに用いられる弾性伸縮材料を用いることができる。弾性部材は、伸張状態で、ホットメルト接着剤等の接着剤で固定されることが好ましい。例えば、繊度40~1,240dtexのポリウレタン糸を、倍率1.1~5.0倍に伸張して配設し、固定する。接着剤としては、ゴム系のホットメルト接着剤を用いることが好ましい。なお、前記倍率は、非伸張状態を1.0倍とする。
【0035】
おむつ本体2には、幅方向xの両側にファスニングテープ31が設けられる。ファスニングテープ31には面ファスナーのフック部材37が設けられており、使い捨ておむつ1の着用の際、ファスニングテープ31のフック部材37をおむつ本体2の外面側に設けられたターゲットテープ11に止着する。なお、おむつ本体2の幅方向xの一方側に設けられたファスニングテープ31を第1ファスニングテープ31Aと称し、おむつ本体2の幅方向xの他方側に設けられたファスニングテープ31を第2ファスニングテープ31Bと称する。使い捨ておむつ1の幅方向xの一方側と他方側とは、使い捨ておむつ1を着用した際の右側と左側または左側と右側に相当し、図面に示した使い捨ておむつ1では、幅方向xの一方側が使い捨ておむつ1の右側、幅方向xの他方側が使い捨ておむつ1の左側となっている。
【0036】
図6~
図8に示すように、ファスニングテープ31は、テープ基材36にフック部材37が設けられて構成され、フック部材37はテープ基材36の肌面側に設けられている。
図6には、
図1に示した使い捨ておむつ1の幅方向xの一方側に設けられた第1ファスニングテープ31Aの拡大平面図が示され、
図7には、
図1に示した使い捨ておむつ1の幅方向xの他方側に設けられた第2ファスニングテープ31Bの拡大平面図が示され、
図8には、
図6に示した第1ファスニングテープ31AのVIII-VIII断面図が示されている。
【0037】
ファスニングテープ31は、少なくとも一部がおむつ本体2に取り付けられたテープ本体部32と、テープ本体部32から幅方向xに延在したつまみ部33とを有し、テープ基材36がテープ本体部32とつまみ部33を構成し、フック部材37がつまみ部33に設けられることが好ましい。おむつ本体2の幅方向xの一方側に設けられた第1ファスニングテープ31Aは、おむつ本体2の幅方向xの一方側に取り付けられた第1テープ本体部32Aと、第1テープ本体部32Aから少なくとも幅方向xの一方側に延在する第1つまみ部33Aとを有する。おむつ本体2の幅方向xの他方側に設けられた第2ファスニングテープ31Bは、おむつ本体2の幅方向xの他方側に取り付けられた第2テープ本体部32Bと、第2テープ本体部32Bから少なくとも幅方向xの他方側に延在する第2つまみ部33Bを有する。
【0038】
つまみ部33は、1つのファスニングテープ31に1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。
【0039】
実施態様の一つとして、第1つまみ部33Aと第2つまみ部33Bがそれぞれ1つの場合でも、後述するように、幅方向xに対して第1領域17と第2領域18の2つの領域を有するターゲットテープ11が、第1領域17は網構造14に第1斜行部16Aが多く含まれるように形成され、第2領域18は網構造14に第2斜行部16Bが多く含まれるように形成されているため、ターゲットテープ11の対応する領域に係合されやすい。
【0040】
また、実施態様の一つとして、図面に示した使い捨ておむつ1では、1つのファスニングテープ31につまみ部33が前後方向yに並んで2つ設けられている。具体的には、ファスニングテープ31は、テープ本体部32から幅方向xに延在し前後方向yに離隔して設けられた前側つまみ部34と後側つまみ部35を有し、前側つまみ部34と後側つまみ部35にそれぞれフック部材37が設けられている。第1つまみ部33Aは、第1テープ本体部32Aから幅方向xに延在し前後方向yに離隔して設けられた前側つまみ部34と後側つまみ部35とを含み、第2つまみ部33Bは、第2テープ本体部32Bから幅方向xに延在し前後方向yに離隔して設けられた前側つまみ部34と後側つまみ部35とを含み、前側つまみ部34と後側つまみ部35にそれぞれフック部材37が設けられている。
【0041】
1つのつまみ部33には、フック部材37が1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。1つのつまみ部33にフック部材37が複数設けられる場合、複数のフック部材37は幅方向xに互いに離隔して設けられることが好ましい。図面に示した使い捨ておむつ1では、1つのつまみ部33に、フック部材37として、外側フック部材37Oと、外側フック部材37Oから幅方向xに離隔し、外側フック部材37Oよりも幅方向xの内方に設けられた内側フック部材37Iとが設けられている。
【0042】
図8に示すように、フック部材37は、基盤38から係合素子39が多数突出して形成される。係合素子39の形状は特に限定されず、鉤形、錨形、きのこ形、柱形等が挙げられる。
【0043】
テープ基材36としては、不織布、織布、編布、樹脂フィルム、あるいはこれらの積層体等を用いることができる。なお、テープ基材36とおむつ本体2との接着性を高める点から、テープ基材36は、織布、編布、または不織布から構成されていることが好ましく、不織布から構成されていることがより好ましい。
【0044】
ターゲットテープ11はバックシート4の外面側に設けられる。
図4には、
図2に示した使い捨ておむつ1に設けられたターゲットテープ11の一部拡大平面図を示したが、ターゲットテープ11は、ベース層12と、ベース層12の外面側に設けられ、糸条による網構造14が形成された係合層13とを有する。網構造14は、フック部材37と係合するループ部として機能する。このようにターゲットテープ11が形成されることにより、ファスニングテープ31のフック部材37との係合力を確保しつつ、ターゲットテープ11の厚みを薄く形成することができる。
【0045】
ベース層12は、シート状の基材から構成することができ、好ましくはフィルム層から構成される。ベース層12をフィルム層から構成することにより、ベース層12上に形成された糸条の網構造14にフック部材37を係合しやすくなる。
【0046】
係合層13を構成する糸条は、合成繊維、半合成繊維、天然繊維のいずれから形成されてもよく、モノフィラメントであってもよく、マルチフィラメントであってもよい。係合層13を構成する糸条は、例えば接着剤によりベース層12に固定したり、ベース層12と係合層13の間に粘着層を設けることにより、係合層13を構成する糸条をベース層12に固定することができる。
【0047】
係合層13の網構造14は、糸条が四角格子状に配置された格子部15を含む。これにより、ベース層12上に安定して網構造14を形成することができる。四角格子の格子点において、糸条は結び目を形成していることが好ましい。網構造14は、1つの糸条から形成されていてもよく、複数の糸条から形成されていてもよい。なお、網構造14の形成が容易な点から、網構造14は複数の糸条から形成されることが好ましい。
【0048】
四角格子を構成する糸条は幅方向xおよび前後方向yに延在していることが好ましい。四角格子の格子点は、幅方向xおよび前後方向yに0.5mm以上10mm以下のピッチで配置されていることが好ましく、当該ピッチは1mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましく、また7mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましい。
【0049】
係合層13の網構造14は、糸条が四角格子の少なくとも2つの格子点を斜めに結ぶように配置された斜行部16をさらに含む。斜行部16を構成する糸条は、少なくとも2つの格子点を斜めに結ぶように延び、3つ以上の格子点を結ぶように延びていてもよい。網構造14において、1つの糸条が格子部15と斜行部16の両方を形成してもよく、格子部15を構成する糸状と斜行部16を構成する糸条が別々であってもよい。
【0050】
斜行部16は、斜めに延びる方向が互いに異なる第1斜行部16Aと第2斜行部16Bを含む。具体的には、斜行部16は、糸条が2つの格子点を幅方向xの一方側から他方側に向かって(
図4では図面の左側から右側に向かって)前後方向yの後側から前側に斜めに結ぶように配置された第1斜行部16Aと、糸条が2つの格子点を幅方向xの他方側から一方側に向かって(
図4では図面の右側から左側に向かって)前後方向yの後側から前側に斜めに結ぶように配置された第2斜行部16Bを含む。第1斜行部16Aと第2斜行部16Bは、幅方向xに対して1つ隣りまたは2つ以上隣りであって前後方向yに対して1つ隣りまたは2つ以上隣りである格子点どうしを結ぶように形成される。
図4では、第1斜行部16Aと第2斜行部16Bは、幅方向xに対して2つ隣りであって前後方向yに対して1つ隣りである格子点どうしを結ぶように形成されている。
【0051】
1つの第1斜行部16Aおよび1つの第2斜行部16Bは、糸条が2つの格子点を斜めに結ぶことにより形成される。1つの糸条は複数の第1斜行部16Aを形成してもよく、1つの糸条は複数の第2斜行部16Bを形成してもよく、1つの糸条の一部が第1斜行部16Aを形成し他部が第2斜行部16Bを形成してもよい。第1斜行部16Aの数および第2斜行部16Bの数は、糸条が2つの格子点を斜めに結んだ部分の数を数えることにより求めることができる。
【0052】
一実施態様において、ターゲットテープ11は、上記のように係合層13が格子部15と斜行部16を含む網構造14を有するように構成された上で、
図4に示すように、ターゲットテープ11が幅方向xに対して2つの領域を有し、幅方向xの一方側(
図4では図面の左側)に位置する第1領域17と、幅方向xの他方側(
図4では図面の右側)に位置する第2領域18とを有し、第1領域17では第1斜行部16Aの数が第2斜行部16Bの数よりも多く、第2領域18では第2斜行部16Bの数が第1斜行部16Aの数よりも多くなるように構成される(第1実施形態)。なお
図4では、第1領域17には、斜行部16として第1斜行部16Aのみが設けられ、第2領域18には、斜行部16として第2斜行部16Bのみが設けられているが、第1領域17には、第1斜行部16Aの数よりも少ない数の第2斜行部16Bが設けられてもよく、第2領域18には、第2斜行部16Bの数よりも少ない数の第1斜行部16Aが設けられてもよい。
【0053】
なお、1つのターゲットテープ11を区分して複数の領域を配置してもよいし、領域ごとに別体のターゲットテープ11を配置してもよい。例えば、本発明の使い捨ておむつ1の実施態様の一つとして、ターゲットテープ11は、第1領域17として第1ターゲットテープと、第2領域18として第2ターゲットテープを有していてもよい 。この場合、第1領域17として第1ターゲットテープを幅方向xの一方側に位置するように配置し、第2領域18として第2ターゲットテープを幅方向xの他方側に位置するように配置することができる。第1領域17と第2領域18が幅方向xの中心線を境に互いに離隔間隔をあけて位置するように配置することもできるので、おむつの着用時に、着用者および/または介護者がおむつの幅方向xの中心と着用者の身体の中心を合わせやすいという利点もある。
【0054】
上記のようにターゲットテープ11が構成されることにより、使い捨ておむつ1を着用した際に、ファスニングテープ31のフック部材37をターゲットテープ11に係合しやすくすることができる。これについて具体的に説明すると、テープタイプの使い捨ておむつ1は、着用の際、着用者の腰回りに安定してサポートされるようにする点から、着用者の骨盤の側面の腸骨稜を覆うように装着されることが好ましい。この場合、使い捨ておむつ1は、着用者の腸骨稜を上方側から覆うように、着用者の腰回りに装着されることが好ましい。このように使い捨ておむつ1を装着した場合、ファスニングテープ31はターゲットテープ11に対して斜め方向に止着されることとなる。すなわち、ファスニングテープ31をターゲットテープ11に止着した際、ファスニングテープ31はターゲットテープ11上で幅方向xの外方から内方に向かって着用者の上方から下方に向かうように配置されることとなる。この場合、上記のようにターゲットテープ11に第1領域17と第2領域18が形成されていると、ファスニングテープ31のフック部材37が、ターゲットテープ11の係合層13の網構造14に対して第1斜行部16Aまたは第2斜行部16Bに特に係合しやすくなる。
【0055】
具体的には、使い捨ておむつ1を着用の際、第1ファスニングテープ31Aの第1つまみ部33Aはターゲットテープ11の第1領域17に少なくとも係合され、第2ファスニングテープ31Bの第2つまみ部33Bはターゲットテープ11の第2領域18に少なくとも係合されるが、第1ファスニングテープ31Aのフック部材37は、ターゲットテープ11の第1領域17の係合層13の第1斜行部16Aに係合されやすくなり、第2ファスニングテープ31Bのフック部材37は、ターゲットテープ11の第2領域18の係合層13の第2斜行部16Bに係合されやすくなる。そのため、ファスニングテープ31のつまみ部33が1つの場合でもターゲットテープ11にしっかりと止着され、使い捨ておむつ1を着用者の腰回りに安定して装着することができる。
【0056】
本発明の別の実施態様における使い捨ておむつ1はまた、図面に示すように、ファスニングテープ31のつまみ部33が前側つまみ部34と後側つまみ部35の2つを有するように構成されたものに対して好適に適用することができる。このように構成された使い捨ておむつ1は、着用の際、前後方向yに並んで設けられた前側つまみ部34と後側つまみ部35を互いにクロスさせるように重ね合わせてターゲットテープ11に止着する、いわゆるクロス留めに適したものとなる(
図11を参照)。ファスニングテープ31をクロス留めによりターゲットテープ11に止着させると、着用者の骨盤の側面が使い捨ておむつ1によって上方側および下方側からサポートされやすくなる。そのため、使い捨ておむつ1の着用者の腰回りへのフィット性や両脚の付け根付近でのフィット性が高まり、使い捨ておむつ1を安定して装着することができる。
【0057】
ファスニングテープ31をクロス留めによりターゲットテープ11に止着する場合、前側つまみ部34をまずターゲットテープ11に止着した後、前側つまみ部34とクロスさせて重ねるように後側つまみ部35をターゲットテープ11に止着することが好ましい。これにより、使い捨ておむつ1を着用者の腰回りにフィット性良く装着することができ、特に着用者の両脚の付け根付近でのフィット性を高めることができ、着用者の股部からの尿等の漏れを効果的に防ぐことができる。また、クロス留めによる使い捨ておむつ1の装着も容易になる。
【0058】
上記のようにファスニングテープ31をターゲットテープ11に止着する場合、後側つまみ部35は前側つまみ部34を間に挟んでターゲットテープ11に止着することとなる。また、後側つまみ部35は、ターゲットテープ11上で幅方向xの外方から内方に向かって着用者の上方から下方に向かうように配置されることとなる。そのため、上記のようにターゲットテープ11に第1領域17と第2領域18が形成されることにより、後側つまみ部35のフック部材37は、ターゲットテープ11の係合層13の網構造14に対して第1斜行部16Aまたは第2斜行部16Bに係合しやすくなるとともに、使い捨ておむつ1の着用時に安定した係合状態を保持することができる。
【0059】
具体的には、第1ファスニングテープ31Aの後側つまみ部35のフック部材37は、ターゲットテープ11の第1領域17の係合層13の第1斜行部16Aに係合しやすくなり、第2ファスニングテープ31Bの後側つまみ部35のフック部材37は、ターゲットテープ11の第2領域18の係合層13の第2斜行部16Bに係合しやすくなる。その結果、ファスニングテープ31をクロス留めにより安定してターゲットテープ11に止着することが可能となる。
【0060】
他の実施態様において、
図5に示すように、ターゲットテープ11は、幅方向xに対して2つの領域に区分されるとともに前後方向yに対して2つの領域に区分され、前後方向yの後側であって幅方向xの一方側に位置する第1領域19と、前後方向yの後側であって幅方向xの他方側に位置する第2領域20と、前後方向yの前側であって幅方向xの一方側に位置する第3領域21と、前後方向yの前側であって幅方向xの他方側に位置する第4領域22とを有し、第1領域19と第4領域22では第1斜行部16Aの数が第2斜行部16Bの数よりも多く、第2領域20と第3領域21では第2斜行部16Bの数が第1斜行部16Aの数よりも多くなるように構成されてもよい(第2実施形態)。第1領域19と第2領域20は、使い捨ておむつ1を装着して着用者が起立した状態で、第3領域21と第4領域22よりも下方側に位置することとなる。この場合、第2実施形態におけるターゲットテープ11は、第1領域19と第2領域20が、上記の第1実施形態のターゲットテープ11における第1領域17と第2領域18に相当するとともに、第1領域17と第2領域18に対して前後方向yの前側に第3領域21と第4領域22が形成されることとなる。なお
図5では、第1領域19と第4領域22には、斜行部16として第1斜行部16Aのみが設けられ、第2領域20と第3領域21には、斜行部16として第2斜行部16Bのみが設けられているが、第1領域19と第4領域22には、第1斜行部16Aの数よりも少ない数の第2斜行部16Bが設けられてもよく、第2領域20と第3領域21には、第2斜行部16Bの数よりも少ない数の第1斜行部16Aが設けられてもよい。
【0061】
上記のようにターゲットテープ11が構成されていて、ファスニングテープ31のつまみ部33が前後方向yに並んで2つ設けられる場合、クロス留めにより安定してターゲットテープ11に止着することができる。このように構成されたターゲットテープ11に、
図11に示すようにファスニングテープ31をクロス留めにより止着する場合、第1ファスニングテープ31Aの前側つまみ部34のフック部材37は、少なくとも先端部分がターゲットテープ11の第3領域21に止着され、第2ファスニングテープ31Bの前側つまみ部34のフック部材37は、少なくとも先端部分がターゲットテープ11の第4領域22に止着されることが好ましい。図面に示したファスニングテープ31のように、前側つまみ部34に、フック部材37として、外側フック部材37Oと内側フック部材37Iが設けられる場合は、少なくとも外側フック部材37Oがターゲットテープ11の第3領域21または第4領域22に止着されることが好ましい。ファスニングテープ31の前後方向yに並んで設けられた2つのつまみ部33をターゲットテープ11にクロス留めする場合、前側つまみ部34は、ターゲットテープ11上で幅方向xの外方から内方に向かって着用者の下方から上方に向かうように配置されることとなる。そのため、上記のようにターゲットテープ11に第3領域21と第4領域22が形成されることにより、前側つまみ部34のフック部材37は、ターゲットテープ11の係合層13の網構造14に対して第1斜行部16Aまたは第2斜行部16Bに係合しやすくなる。
【0062】
具体的には、第1ファスニングテープ31Aの前側つまみ部34のフック部材37は、ターゲットテープ11の第3領域21の係合層13の第2斜行部16Bに係合しやすくなり、第2ファスニングテープ31Bの前側つまみ部34のフック部材37は、ターゲットテープ11の第4領域22の係合層13の第1斜行部16Aに係合しやすくなる。その結果、前側つまみ部34をターゲットテープ11に止着した際、前側つまみ部34が先端側からターゲットテープ11から外れることが起こりにくくなる。
【0063】
後側つまみ部35については、第1ファスニングテープ31Aの後側つまみ部35のフック部材37は、少なくとも先端部分がターゲットテープ11の第1領域19に止着され、第2ファスニングテープ31Bの後側つまみ部35のフック部材37は、少なくとも先端部分がターゲットテープ11の第2領域20に止着されることが好ましい。図面に示したファスニングテープ31のように、後側つまみ部35に、フック部材37として、外側フック部材37Oと内側フック部材37Iが設けられる場合は、少なくとも外側フック部材37Oがターゲットテープ11の第1領域19または第2領域20に止着されることが好ましい。ファスニングテープ31をターゲットテープ11にクロス留めする場合、後側つまみ部35は、ターゲットテープ11上で幅方向xの外方から内方に向かって着用者の上方から下方に向かうように配置されることとなる。そのため、上記のようにターゲットテープ11に第1領域19と第2領域20が形成されることにより、後側つまみ部35のフック部材37が、ターゲットテープ11の係合層13の網構造14に対して第1斜行部16Aまたは第2斜行部16Bに係合しやすくなる。
【0064】
具体的には、第1ファスニングテープ31Aの後側つまみ部35のフック部材37は、ターゲットテープ11の第1領域19の係合層13の第1斜行部16Aに係合しやすくなり、第2ファスニングテープ31Bの後側つまみ部35のフック部材37は、ターゲットテープ11の第2領域20の係合層13の第2斜行部16Bに係合しやすくなる。その結果、後側つまみ部35をターゲットテープ11に止着して使い捨ておむつ1を着用した際、後側つまみ部35が先端側からターゲットテープ11から外れることが起こりにくくなる。
【0065】
従って、
図5に示すように、ターゲットテープ11が幅方向xと前後方向yに第1領域19、第2領域20、第3領域21および第4領域22の4つの領域に区分され、第1領域19と第4領域22で第1斜行部16Aの数が第2斜行部16Bの数よりも多く、第2領域20と第3領域21で第2斜行部16Bの数が第1斜行部16Aの数よりも多くなるように構成されることにより、ファスニングテープ31をクロス留めにより安定してターゲットテープ11に止着することができる。
【0066】
上記のようにターゲットテープ11に複数の領域が形成される場合、各領域は共通のベース層12から構成されていてもよく、別々のベース層12から構成されていてもよく、各領域は共通の係合層13から構成されていてもよく、別々の係合層13から構成されていてもよい。ターゲットテープ11は各領域に対応して分割されていてもよい。
【0067】
第1実施形態のターゲットテープ11において、第1領域17と第2領域18は、幅方向xの中心線(すなわち前後方向yに延びる中心線)で区分されることが好ましい。同様に、第2実施形態のターゲットテープ11において、第1領域19と第2領域20は幅方向xの中心線で区分されることが好ましく、第3領域21と第4領域22は幅方向xの中心線(すなわち前後方向yに延びる中心線)で区分されることが好ましい。これにより、より確実にファスニングテープ31をターゲットテープ11に安定して止着することができる。
【0068】
第1領域17,19、第4領域22は、第1斜行部16Aの数が第2斜行部16Bの数よりも多く形成されていれば、第1斜行部16Aと第2斜行部16Bの両方が存在していてもよい。なお、これらの領域において、第1斜行部16Aの数は第2斜行部16Bの数の1.25倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2倍以上がさらに好ましい。第1領域17,19、第4領域22には、第2斜行部16Bが存在していなくてもよい。
【0069】
第2領域18,20、第3領域21は、第2斜行部16Bの数が第1斜行部16Aの数よりも多く形成されていれば、第1斜行部16Aと第2斜行部16Bの両方が存在していてもよい。なお、これらの領域において、第2斜行部16Bの数は第1斜行部16Aの数の1.25倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2倍以上がさらに好ましい。第2領域18,20、第3領域21には、第1斜行部16Aが存在していなくてもよい。
【0070】
本発明の実施態様において、斜行部16を構成する糸条は、2つの格子点を斜めに結び、かつ当該2つの格子点間を真っ直ぐ延びるのではなく弛んで延びていることが好ましい。これにより、フック部材37が斜行部16に係合しやすくなる。例えば、斜行部16を構成する糸条は、格子部15を構成する糸条よりも、2つの格子点間を弛んで延びていることが好ましい。具体的には、斜行部16を構成する糸条が2つの格子点を結ぶ道のりの長さをL1、当該2つの格子点を直線で結んだ長さをL2、格子部15を構成する糸条が2つの格子点を結ぶ道のりの長さをL3、当該2つの格子点を直線で結んだ長さをL4としたとき、L1/L2の値がL3/L4の値よりも大きいことが好ましい。
【0071】
斜行部16を構成する糸条によって斜めに結ばれた2つの格子点を直線で結んだときの当該直線の角度は、幅方向xに延びる直線を基準として、時計回りまたは反時計回りに10°以上となることが好ましく、20°以上がより好ましく、また80°以下が好ましく、70°以下がより好ましい。
【0072】
第1斜行部16Aにおいて糸条によって斜めに結ばれた2つの格子点は、隣設された2つの四角形状の2つの格子点であることが好ましい。第2斜行部16Bにおいて糸条によって斜めに結ばれた2つの格子点は、隣設された2つの四角形状の2つの格子点であることが好ましい。これにより、フック部材37が第1斜行部16Aまたは第2斜行部16Bに係合しやすくなる。
【0073】
図面に示した使い捨ておむつ1のように、ファスニングテープ31が前側つまみ部34と後側つまみ部35を有する場合、少なくとも後側つまみ部35に設けられたフック部材37は、係合素子39が前後方向yに並んで配置されていることが好ましい。上記に説明したように、前側つまみ部34と後側つまみ部35とを有するファスニングテープ31はクロス留めに適したものとなり、特に
図11に示すように、前側つまみ部34をターゲットテープ11に止着した後、前側つまみ部34とクロスさせて重ねるように後側つまみ部35をターゲットテープ11に止着することにより、着用者の両脚の付け根付近でのフィット性が高めることができ、着用者の股部からの尿等の漏れを効果的に防ぐことができる。
【0074】
また、後側つまみ部35のフック部材37とターゲットテープ11との係合力を高めるために、後側つまみ部35に設けられるフック部材37は、係合素子39が前後方向yに並んで配置されることが好ましい。このように後側つまみ部35のフック部材37が構成されることにより、後側つまみ部35をより安定してターゲットテープ11に止着することができる。具体的には、第1ファスニングテープ31Aの後側つまみ部35のフック部材37が、ターゲットテープ11の第1領域17または第1領域19の係合層13の第1斜行部16Aにより係合しやすくなり、第2ファスニングテープ31Bの後側つまみ部35のフック部材37が、ターゲットテープ11の第2領域18または第2領域20の係合層13の第2斜行部16Bにより係合しやすくなり、使い捨ておむつ1の着用時のフィット感が保持されやすい。ファスニングテープ31は、前側つまみ部34に設けられたフック部材37も、係合素子39が前後方向yに並んで配置されていることが好ましい。
【0075】
前側つまみ部34の上に後側つまみ部35を重ねてクロス留めする際、後側つまみ部35を安定してターゲットテープ11に止着できるようにする点から、実施態様の一つとして、後側つまみ部35には、フック部材37として外側フック部材37Oと内側フック部材37Iが設けられることが好ましい。この場合、後側つまみ部35の外側フック部材37Oと内側フック部材37Iの間の部分を前側つまみ部34にクロスさせるように重ね、外側フック部材37Oと内側フック部材37Iをターゲットテープ11に止着させることで、後側つまみ部35を安定してターゲットテープ11に止着させることができる。
【0076】
上記のようにファスニングテープ31のクロス留めを行う場合、外側フック部材37Oと内側フック部材37Iは、クロスして重ねられる前側つまみ部34のテープ基材36とターゲットテープ11とに跨がって止着されることが好ましい。これにより、後側つまみ部35を安定して前側つまみ部34の上に重ねてクロス留めすることができる。
【0077】
後側つまみ部35を安定して前側つまみ部34の上に重ねてクロス留めする点から、
図9に示すように、後側つまみ部35の外側フック部材37Oは、幅方向xの内方縁に沿った領域40に設けられた係合素子39の高さが、それよりも幅方向xの外方の領域に設けられた係合素子39の高さよりも高く、後側つまみ部35の内側フック部材37Iは、幅方向xの外方縁に沿った領域41に設けられた係合素子39の高さが、それよりも幅方向xの内方の領域に設けられた係合素子39の高さよりも高く形成されていることが好ましい。このように各フック部材37が形成されることにより、後側つまみ部35が前側つまみ部34の上に係合しやすくなり、また安定して止着されるので、使い捨ておむつ1の着用の際、ファスニングテープ31をターゲットテープ11の上に安定してクロス留めすることができる。なお、前側つまみ部34のフック部材37も、このように構成されていてもよい。
【0078】
図10に示すように、後側つまみ部35において、外側フック部材37Oは、幅方向xの内方縁に沿った領域40に設けられた係合素子39の頂部の大きさが、それよりも幅方向xの外方の領域に設けられた係合素子39の頂部の大きさよりも大きく、内側フック部材37Iは、幅方向xの外方縁に沿った領域41に設けられた係合素子39の頂部の大きさが、それよりも幅方向xの内方の領域に設けられた係合素子39の頂部の大きさよりも大きく形成されることも好ましい。このように各フック部材37が形成される場合も、後側つまみ部35が前側つまみ部34の上に係合しやすくなり、また安定して止着されるので、使い捨ておむつ1の着用の際、ファスニングテープ31をターゲットテープ11の上に安定してクロス留めすることができる。なお、前側つまみ部34のフック部材37も、このように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1:使い捨ておむつ
2:おむつ本体
3:トップシート
4:バックシート
5:吸収体
6:サイドシート
7:立ち上がりフラップ
8:起立用弾性部材
9:脚回り弾性部材
10:ウェスト用弾性部材
11:ターゲットテープ
12:ベース層
13:係合層
14:網構造
15:格子部
16:斜行部、16A:第1斜行部、16B:第2斜行部
17,19:第1領域
18,20:第2領域
21:第3領域
22:第4領域
31:ファスニングテープ、31A:第1ファスニングテープ、31B:第2ファスニングテープ
32:テープ本体部、32A:第1テープ本体部、32B:第2テープ本体部
33:つまみ部、33A:第1つまみ部、33B:第2つまみ部
34:前側つまみ部
35:後側つまみ部
36:テープ基材
37:フック部材、37O:外側フック部材、37I:内側フック部材
38:基盤
39:係合素子