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特開2023-79814ポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、および、ポリスチレン系樹脂発泡容器。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079814
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、および、ポリスチレン系樹脂発泡容器。
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20230601BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20230601BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20230601BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B32B27/30 B
B32B5/18
C08J9/36 CET
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193467
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
(72)【発明者】
【氏名】加藤 治
【テーマコード(参考)】
3E086
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA15
3E086BA16
3E086BA35
3E086BB15
3E086BB23
3E086BB35
3E086BB41
3E086BB62
3E086BB63
3E086CA01
4F074AA32
4F074BA38
4F074BC12
4F074CA22
4F074CE17
4F074CE48
4F074DA02
4F074DA19
4F074DA20
4F074DA22
4F074DA34
4F100AC10A
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK12C
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA01A
4F100DJ01A
4F100EH17
4F100EJ02
4F100EJ19
4F100EJ42
4F100EJ50
4F100GB16
4F100JA03
4F100JL01
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】高強度とバブル抑制を両立させたポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、および、ポリスチレン系樹脂発泡容器を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、内層としての発泡層と表層としてのスキン層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートであって、該スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1μmと該ポリスチレン系樹脂発泡シート全体の発泡倍率F倍との積D1×Fが100μm・倍~1000μm・倍である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層としての発泡層と表層としてのスキン層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートであって、
該スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1μmと該ポリスチレン系樹脂発泡シート全体の発泡倍率F倍との積D1×Fが100μm・倍~1000μm・倍である、
ポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項2】
前記9箇所の厚みの中の最大値D1maxμmと最小値D1minμmとの差D1max-D1minをRμmとしたとき、R/D1が0.1以上である、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
MD方向に20mm、TD方向に20mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が、50%以下である、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
MD方向に20mm、TD方向に20mmでスライスした切片の、125℃で150秒間加熱した後における収縮率が、40%以下である、請求項1から3までのいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなる、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれかに記載のポリスチレン系樹脂発泡シートまたは請求項5に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形された、ポリスチレン系樹脂発泡容器。
【請求項7】
内層としての発泡層と表層としてのスキン層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートまたは該ポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたポリスチレン系樹脂発泡容器であって、
該ポリスチレン系樹脂発泡容器の内面側壁において、MD方向に30mm、TD方向に10mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が、40%以下である、
ポリスチレン系樹脂発泡容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、および、ポリスチレン系樹脂発泡容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られる容器や、ポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形して得られる容器は、トレー、弁当箱、丼、カップ等の各種容器として、コンビニエンストア等で広く使用されている。
【0003】
直近のコロナ禍の影響を受けて、すごもり需要が拡大し、内食需要が活発化している。このため、生鮮食品を洋装するトレー容器やカップ麺容器の需要が高まり、容器に対する要求品質が高まっている。例えば、トレー容器については、ピロー包装においてトレー容器が座屈しないように、高強度の品質が求められる。
【0004】
強度向上を目的として完成されたポリスチレン系樹脂発泡シートやポリスチレン系樹脂積層発泡シートがいくつか報告されている(例えば、特許文献1、2)
【0005】
しかし、ポリスチレン系樹脂発泡シートやポリスチレン系樹脂積層発泡シートの強度を上げていくと、例えば、非発泡層がラミネートされた発泡シートを熱成形して発泡容器とする場合には特に、容器表面にバブル(浮き)が発生しやすくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-111339号公報
【特許文献2】特開2014-080562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、高強度とバブル抑制を両立させたポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、および、ポリスチレン系樹脂発泡容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、
内層としての発泡層と表層としてのスキン層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートであって、
該スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1μmと該ポリスチレン系樹脂発泡シート全体の発泡倍率F倍との積D1×Fが100μm・倍~1000μm・倍である。
【0009】
一つの実施形態としては、上記9箇所の厚みの中の最大値D1maxμmと最小値D1minμmとの差D1max-D1minをRμmとしたとき、R/D1が0.1以上である。
【0010】
一つの実施形態としては、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、MD方向に20mm、TD方向に20mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が、50%以下である。
【0011】
一つの実施形態としては、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、MD方向に20mm、TD方向に20mmでスライスした切片の、125℃で150秒間加熱した後における収縮率が、40%以下である。
【0012】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなる。
【0013】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートまたは本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたものである。
【0014】
本発明の別の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器は、
内層としての発泡層と表層としてのスキン層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートまたは該ポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたポリスチレン系樹脂発泡容器であって、
該ポリスチレン系樹脂発泡容器の内面側壁において、MD方向に30mm、TD方向に10mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が、40%以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高強度とバブル抑制を両立させたポリスチレン系樹脂発泡シート、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、および、ポリスチレン系樹脂発泡容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの概略断面図である。
図2】本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの表面付近の代表的な走査電子顕微鏡(SEM)による撮像図である。
図3】本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートの表面付近の代表的な走査電子顕微鏡(SEM)による撮像図である。
図4】本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器の概略斜視図である。
図5】スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1の測定方法を説明するための説明図の一つであり、測定対象のポリスチレン系樹脂発泡シートを平面方向から見た平面図である。
図6】スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1の測定方法を説明するための説明図の一つであり、測定サンプルのMD方向からの断面を走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影することによってスキン層の厚みを測定する方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0018】
本明細書において「(メタ)アクリル」とある場合は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とある場合は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0019】
≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、内層としての発泡層と表層としてのスキン層を有する。代表的には、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、発泡層の両側にスキン層を有する。
【0020】
発泡層は、樹脂組成物が発泡されて形成された発泡層である。
【0021】
スキン層は、ポリスチレン系樹脂発泡シートを製造する際に表層部に形成される薄層である。スキン層は、発泡層とは異なり、ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面(一方の表面または他方の表面)から、該表面の最も近くに位置する気泡径70μm以上の気泡であって且つ該気泡の該表面に最も近い端面までを厚みとする表層である。したがって、スキン層と発泡層とは、任意の適切な手段で区別可能であり、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)によってスキン層と発泡層とは明確に区別可能である。
【0022】
図1は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの概略断面図である。図1に示すように、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シート100は、内層としての発泡層10と表層としてのスキン層20を有する。
【0023】
図2は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの表面付近の代表的な走査電子顕微鏡(SEM)による撮像図である。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シート100は、表面付近を走査電子顕微鏡(SEM)によって撮像すると、図2に示すように、内層としての発泡層10と表層としてのスキン層20が観察される。
【0024】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1μmとポリスチレン系樹脂発泡シート全体の発泡倍率F倍との積D1×Fが、好ましくは100μm・倍~1000μm・倍であり、より好ましくは100μm・倍~900μm・倍であり、さらに好ましくは100μm・倍~850μm・倍であり、特に好ましくは100μm・倍~800μm・倍である。上記D1×Fが上記範囲内にあれば、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、高強度とバブル抑制を両立し得る。上記D1×Fが上記範囲を外れて小さすぎると、高強度が発現できないおそれがある。上記D1×Fが上記範囲を外れて大きすぎると、バブルが発生するおそれがある。
【0025】
スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1(単位:μm)の測定方法については、後述する。
【0026】
スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは1.0μm~75μmであり、より好ましくは2.0μm~70μmであり、さらに好ましくは5.0μm~65μmであり、特に好ましくは8.0μm~60μmである。
【0027】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、上記のスキン層の9箇所の厚みの中の最大値D1maxμmと最小値D1minμmとの差D1max-D1minをRμmとしたとき、R/D1が、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.5~10であり、さらに好ましくは0.8~10であり、特に好ましくは1.0~10である。上記R/D1が上記範囲内にあれば、厚みが適度に厚い部分と適度に薄い部分とを有するスキン層となり、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、高強度とバブル抑制をより両立し得る。
【0028】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、MD方向に20mm、TD方向に20mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が、好ましくは50%以下であり、より好ましくは43%以下であり、さらに好ましくは41%以下であり、特に好ましくは39%以下である。この収縮率は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面近傍(表面から厚み200μmまでの範囲)における収縮率の指標であり、この収縮率が上記範囲内にあれば、成形時の延伸が緩和される傾向となり、得られる発泡容器の脆化を抑制できて強度が向上し得る。
【0029】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、MD方向に20mm、TD方向に20mmでスライスした切片の、125℃で150秒間加熱した後における収縮率が、好ましくは40%以下であり、より好ましくは34%以下であり、さらに好ましくは31%以下であり、特に好ましくは29%以下である。この収縮率は、ポリスチレン系樹脂発泡シート全体における収縮率の指標であり、この収縮率が上記範囲内にあれば、成形時の延伸が緩和される傾向となり、得られる発泡容器の脆化を抑制できて強度が向上し得る。
【0030】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの厚みは、好ましくは0.5mm~4.0mmであり、より好ましくは0.8mm~3.5mmであり、さらに好ましくは1.0mm~3.0mmであり、特に好ましくは1.1mm~2.5mmである。
【0031】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの坪量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な坪量を採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの坪量は、好ましくは60g/m~500g/mであり、より好ましくは70g/m~400g/mであり、さらに好ましくは80g/m~300g/mであり、さらに好ましくは90g/m~300g/mであり、さらに好ましくは100g/m~250g/mであり、特に好ましくは100g/m以上250g/m未満であり、最も好ましくは100g/m~200g/mである。
【0032】
ポリスチレン系樹脂発泡シートの坪量は、例えば、次の方法で測定することができる。すなわち、ポリスチレン系樹脂発泡シートの幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、ポリスチレン系樹脂発泡シートの坪量(g/m)とする。
【0033】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な見掛け密度を採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度は、好ましくは0.021g/cm~0.50g/cmであり、より好ましくは0.030g/cm~0.40g/cmであり、さらに好ましくは0.040g/cm~0.30g/cmであり、特に好ましくは0.050g/cm~0.20g/cmである。
【0034】
ポリスチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度は、例えば、JIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して測定することによって求められる。具体的には、元のセル構造を変えないように切断したポリスチレン系樹脂発泡シートの試験片について、その質量と見掛け体積とを測定し、下記式により算出する。
ポリスチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度(g/cm)=試験片の質量(g)/試験片の見掛け体積(cm
【0035】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの全体としての発泡倍率は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡倍率を採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの全体としての発泡倍率は、好ましくは2倍~20倍であり、より好ましくは3倍~18倍であり、さらに好ましくは4倍~17倍であり、特に好ましくは5倍~16倍である。
【0036】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な平均気泡径を採り得る。本発明の効果をより発現し得る点で、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径は、好ましくは100μm~3000μmであり、より好ましくは150μm~2500μmであり、さらに好ましくは200μm~2000μmであり、特に好ましくは250μm~1500μmである。
【0037】
ポリスチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径は、ASTM2842-69に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0038】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、代表的には、ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を発泡させて形成したものであり、好ましくは、ポリスチレン系樹脂と発泡剤を含む樹脂組成物を押出発泡させて形成したものであり、より好ましくは、ポリスチレン系樹脂と発泡剤と、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤とを含む樹脂組成物を、押出機内で加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからシート状に押し出すと共に発泡させ、直ちに冷却して形成したものである。
【0039】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体;上記スチレン系モノマーの共重合体;上記スチレン系モノマーとカルボン酸エステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートなど)との共重合体;上記スチレン系モノマーと二官能性モノマー(例えば、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなど)との共重合体;ブタジエンやイソプレンなどのゴム成分ブロックとスチレンブロックとを有するブロック共重合体、上記ゴム成分ブロックをスチレンからなる分子鎖にグラフトさせたグラフト共重合体などのハイインパクトポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン、HIPS);などが挙げられる。ポリスチレン系樹脂(I)は、リサイクル原料のポリスチレン系樹脂であってもよい。スチレン系モノマーは、好ましくは、少なくともスチレンを含有する。スチレン系モノマーの全量に対するスチレンの含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。
【0040】
ポリスチレン系樹脂は、1種のポリスチレン系樹脂であってもよいし、2種以上のポリスチレン系樹脂の混合物であってもよい。
【0041】
ポリスチレン系樹脂は、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)、市販されているポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で新たに調製されたポリスチレン系樹脂等、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂であってもよいし、リサイクル原料のポリスチレン系樹脂であってもよい。リサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体である。リサイクル原料は、食品包装用トレー、魚箱、家電緩衝材等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したもの等である。また、使用できるリサイクル原料は、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものでもよい。
【0042】
ポリスチレン系樹脂として、他の樹脂と混合された市販品を採用してもよい。他の樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
ポリスチレン系樹脂は、他の樹脂と併用してもよい。他の樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0044】
本発明の効果をより発現させ得る点で、樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂の含有割合は、好ましくは30質量%~100質量%であり、より好ましくは50質量%~100質量%であり、さらに好ましくは70質量%~100質量%であり、特に好ましくは90質量%~100質量%である。
【0045】
他の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ(2,6-ジメチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2,6-ジエチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2,6-ジクロルフェニレン-1,4-エーテル)等のポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SIPS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体ゴム(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体ゴム(SEPS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-マレイミド共重合体、ポリパラメチルスチレン樹脂などが挙げられる。
【0046】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、これら重合体の架橋体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂;などが挙げられる。なお、低密度は、好ましくは0.91g/cm~0.94g/cmであり、より好ましくは0.91g/cm~0.93g/cmである。高密度は、好ましくは0.95g/cm~0.97g/cmであり、より好ましくは0.95g/cm~0.96g/cmである。中密度は、低密度と高密度との間の密度である。
【0047】
発泡剤としては、発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な発泡剤を採用し得る。このような発泡剤としては、例えば、プロパン、i-ブタン、n-ブタン、i-ペンタン、n-ペンタン、N、CO、N/CO、ジメチルエーテル、水、水と-OH、-COOH、-CN、-NH、-OSOH、-NH、CO、NH、-CONH、-COOR、-CHSOH、-SOH、-COONHなどの基を持つ化合物との混合物、これらの混合物、から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。本発明の効果をより発現させ得る点で、発泡剤としては、好ましくは、i-ブタンおよびn-ブタンから選ばれる少なくとも1種である。
【0048】
ポリスチレン系樹脂100質量部に対する発泡剤の含有量は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは0.5質量部~10質量部であり、より好ましくは1.0質量部~8.0質量部であり、さらに好ましくは1.5質量部~7.0質量部であり、特に好ましくは1.5質量部~6.0質量部である。
【0049】
ポリスチレン系樹脂と発泡剤を含む樹脂組成物には、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料も含み)、消臭剤、発泡核剤、造核剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤が含まれていてもよい。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0050】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末;多価カルボン酸の酸性塩;多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの反応混合物;などが挙げられる。
【0051】
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤などが挙げられる。
【0052】
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0053】
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、フラーレンなどが挙げられる。
【0054】
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤などが挙げられる。
【0055】
消臭剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト焼成物などが挙げられる。
【0056】
≪≪B.ポリスチレン系樹脂発泡シートの形成方法≫≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項で説明した発泡層とスキン層を形成するような方法であれば、任意の適切な方法によって形成し得る。
【0057】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートは、本発明の効果をより発現し得る点で、代表的には、ポリスチレン系樹脂と発泡剤と、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤とを含む樹脂組成物を、押出機に入れて加熱溶融、混練し、ダイから押し出すと共に発泡させる押出発泡を行い、直ちに冷却することによって、形成し得る。形成後のポリスチレン系樹脂発泡シートは、好ましくは、しばらく放置し、残存する発泡ガスを空気置換する。
【0058】
押出発泡においては、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項で説明した発泡層とスキン層を効果的に形成させ得る点で、代表的には、押出機先端に取り付けられたダイ(例えば、サーキュラーダイ)の吐出口から吐出させて押出発泡させて発泡シートとし、吐出口から所定の位置において冷却エアーを発泡シートに吹き付け、その後、冷却用マンドレルでさらに冷却する。
【0059】
冷却エアーの風量は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは0.1Nm/min~10.0Nm/minであり、より好ましくは0.2Nm/min~9.0Nm/minであり、さらに好ましくは1.0Nm/min~8.0Nm/minであり、特に好ましくは1.5Nm/min~7.0Nm/minであり、最も好ましくは2.0Nm/min~6.0Nm/minである。
【0060】
冷却エアーのあたる位置は、以下の通りである。発泡シート上の冷却エアーのあたる位置とそこからサーキュラー金型の吐出口までの距離を冷却エアーのあたる位置を示す指標とする。なお、冷却エアーのあたる位置は冷却エアーの噴出口から直線状に吐出されると仮定する。本発明の効果をより発現し得る点で、冷却エアーのあたる位置を示す指標は、好ましくは0.05mm~40mmであり、より好ましくは0.10mm~30mmであり、さらに好ましくは0.10mm~25mmであり、特に好ましくは0.15mm~20mmであり、最も好ましくは0.20mm~15mmである。
【0061】
冷却用マンドレルで冷却後のポリスチレン系樹脂発泡シート表面温度(冷却用マンドレルの尻部で測定)は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは10℃~70℃であり、より好ましくは20℃~65℃であり、さらに好ましくは20℃~60℃であり、特に好ましくは20℃~55℃であり、最も好ましくは20℃~50℃である。
【0062】
≪≪C.ポリスチレン系樹脂積層発泡シート≫≫
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなる。
【0063】
非発泡樹脂フィルムとしては、例えば、非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム、熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムなどが挙げられる。
【0064】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、発泡層とスキン層を有する本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを構成要素として備え、さらに、非発泡層としての非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなる。したがって、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、好ましくは、内層としての発泡層と表層としてのスキン層(本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シート由来のスキン層、非発泡樹脂フィルム由来のスキン層、および、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シート由来のスキン層と非発泡樹脂フィルム由来のスキン層とがラミネートされて構成されるスキン層から選ばれる少なくとも1種)を有する。
【0065】
図3は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートの表面付近の代表的な走査電子顕微鏡(SEM)による撮像図である。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シート500は、表面付近を走査電子顕微鏡(SEM)によって撮像すると、図3に示すように、内層としての発泡層10と表層としてのスキン層20が観察される。
【0066】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートのスキン層の9箇所の厚みの平均厚みD2は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは1.0μm~100μmであり、より好ましくは2.0μm~90μmであり、さらに好ましくは5.0μm~80μmであり、特に好ましくは7.0μm~70μmである。スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD2(単位:μm)の測定方法については、後述する。
【0067】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、MD方向に20mm、TD方向に20mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が、好ましくは50%以下であり、より好ましくは43%以下であり、さらに好ましくは41%以下であり、特に好ましくは39%以下である。この収縮率は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの表面近傍(表面から厚み200μmまでの範囲)における収縮率の指標であり、この収縮率が上記範囲内にあれば、成形時の延伸が緩和される傾向となり、得られる発泡容器の脆化を抑制できて強度が向上し得る。
【0068】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、MD方向に20mm、TD方向に20mmでスライスした切片の、125℃で150秒間加熱した後における収縮率が、好ましくは40%以下であり、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは31%以下であり、特に好ましくは29%以下である。この収縮率は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート全体における収縮率の指標であり、この収縮率が上記範囲内にあれば、成形時の延伸が緩和される傾向となり、得られる発泡容器の脆化を抑制できて強度が向上し得る。
【0069】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法で製造し得る。このような製造方法としては、代表的には、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムをラミネートすることにより製造し得る。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムをラミネートする手段としては、例えば、非発泡樹脂フィルムを構成する原料を、必要に応じて加えられる各種の添加剤と共に押出機に供給し、加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからフィルム状に押し出し、冷却しきらないうちに、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの表面に積層し、該積層の際に熱処理を行う。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムをラミネートする別の手段としては、例えば、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートの表面に、別途用意した、非発泡樹脂フィルムを、加熱ロールで圧着して、熱ラミネートする。本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムをラミネートするさらに別の手段としては、例えば、バインダー、接着剤等を用いてラミネートする。これにより、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされる。
【0070】
非発泡樹脂フィルムを構成する原料に必要に応じて加えられる各種の添加剤としては、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤(顔料も含み)、消臭剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。これらの説明については、耐熱性ポリスチレン系樹脂発泡層(A1)やポリスチレン系樹脂発泡層(A2)の製造において添加し得る添加剤の説明を援用し得る。
【0071】
≪C-1.非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルム≫
非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みは、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採り得る。耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みは、各種目的を鑑みると、好ましくは80μm~180μmであり、より好ましくは80μm~170μmであり、さらに好ましくは80μm~150μmであり、特に好ましくは100μm~145μmである。非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムの厚みは、好ましくは、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートの厚みよりも小さい。
【0072】
非発泡耐衝撃性ポリスチレン系樹脂フィルムは、代表的には、ポリスチレン系樹脂とゴム変性ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物から形成される。
【0073】
ポリスチレン系樹脂としては、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートを形成する際に用い得るポリスチレン系樹脂が挙げられる。
【0074】
ポリスチレン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0075】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂としては、分子自身を変性したものであってもよいし、バルクの状態で変性させたものであってもよい。このようなゴム変性ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系モノマーの1種以上とゴム成分モノマーの1種以上との共重合体や、ポリスチレン系樹脂の1種以上とゴムの1種以上とのブレンド品が挙げられる。
【0076】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂としては、具体的には、例えば、いわゆる耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS:ハイインパクトポリスチレン)と汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)などと呼ばれるスチレンホモポリマーとの混合樹脂が挙げられる。
【0077】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂として耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)と汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)との混合樹脂を採用する場合には、耐衝撃性付与の観点等から、該混合樹脂中に耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)を40質量%以上含有させることが好ましい。
【0078】
耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)を採用し得る。このような耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体がサラミ構造状に分散し、その粒径が0.3μm~10μmのものを含むものが挙げられる。さらに、ポリスチレン系樹脂層を形成するポリスチレン系樹脂(II)としては、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレンホモポリマー、エチレン・プロピレンランダムポリマー、エチレン・プロピレンブロックポリマー、エチレン・プロピレン-ブテン-ターポリマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体(例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合体)、エチレン-不飽和カルボン酸金属塩共重合体(例えば、エチレン-アクリル酸マグネシウム(又は亜鉛)共重合体)、プロピレン-塩化ビニルコポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、プロピレン-無水マレイン酸コポリマー、プロピレン-オレフィン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体)ポリエチレン又はポリプロピレンの不飽和カルボン酸(例えば、無水マレイン酸)変性物、エチレン-プロピレンゴム、アタクチックポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、これらの混合物などが挙げられる。
【0079】
≪C-2.熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルム≫
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを積層することで、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートの表面がより美麗になり、また剛性がより高くなり、また耐熱、耐油性がより向上する。
【0080】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂等が挙げられる。これらは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0081】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムは、1層であっても2層以上であってもよい。2層以上の場合、例えば、各層をドライラミネート等で積層したものであってもよい。
【0082】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムは、着色料(顔料、染料など)が添加されていてもよい。着色料(顔料、染料など)が添加されることで、様々な色調に着色しでき、表面に印刷を施すなどを行うことで様々な模様やデザインを表示できる。
【0083】
熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採用し得る。このような厚みとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは10μm~150μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの厚みが上記範囲を外れて薄すぎると、加熱成形時にフィルムが伸びにくくなるおそれがあり、欠損が生じやすくなるおそれがある。熱可塑性樹脂を含む非発泡フィルムの厚みが上記範囲を外れて厚すぎると、コストアップとなるおそれがあり、フィルム積層時に低温で積層できずに光沢性が失われるおそれがある。
【0084】
≪≪D.ポリスチレン系樹脂発泡容器≫≫
本発明の一つの実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器(第一のポリスチレン系樹脂発泡容器と称する)は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートまたは本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたものである。
【0085】
本発明の別の一つの実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器(第二のポリスチレン系樹脂発泡容器と称する)は、内層としての発泡層と表層としてのスキン層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートまたは該ポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたポリスチレン系樹脂発泡容器であって、該ポリスチレン系樹脂発泡容器の内面側壁において、MD方向に30mm、TD方向に10mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が、40%以下である。
【0086】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡容器(第一のポリスチレン系樹脂発泡容器または第二のポリスチレン系樹脂発泡容器)は、代表的には、図4に示すように、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートが、ポリスチレン系樹脂発泡シートが内側、非発泡ポリスチレン系樹脂フィルムが内側となるように容器形状に成形されたものである。図4において、ポリスチレン系樹脂発泡容器1000の容器内側が200、容器外側が300である。
【0087】
≪D-1.第一のポリスチレン系樹脂発泡容器≫
第一のポリスチレン系樹脂発泡容器は、本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートまたは本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたものであるので、高強度とバブル抑制を両立させた発泡容器となり得る。
【0088】
第一のポリスチレン系樹脂発泡容器を製造するには、代表的には、ロール状に巻き取られた本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートまたは本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを成形機の加熱ゾーンで一定温度に加熱した後、成形ゾーンで所望の容器形状に成形して製造される。この容器形状としては、例えば、丼形、コップ形、箱形、トレー形などの種々の形状とすることができる。
【0089】
≪D-2.第二のポリスチレン系樹脂発泡容器≫
第二のポリスチレン系樹脂発泡容器は、内層としての発泡層と表層としてのスキン層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートまたは該ポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートが熱成形されたポリスチレン系樹脂発泡容器であって、該ポリスチレン系樹脂発泡容器の内面側壁において、MD方向に30mm、TD方向に10mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が、40%以下である。
【0090】
第二のポリスチレン系樹脂発泡容器は、該ポリスチレン系樹脂発泡容器の内面側壁において、MD方向に30mm、TD方向に10mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が40%以下であり、好ましくは38%以下であり、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは33%以下であり、特に好ましくは30%以下である。この収縮率は、第二のポリスチレン系樹脂発泡容器の内面の側壁の表面近傍(表面から厚み200μmまでの範囲)における収縮率の指標であり、この収縮率が上記範囲内にあれば、発泡容器の脆化を抑制できて強度が向上し得る。ここで、側壁とは、図4の200の箇所を意味する。
【0091】
内層としての発泡層と表層としてのスキン層を有するポリスチレン系樹脂発泡シートは、代表的には、発泡層の両側にスキン層を有する。発泡層は、樹脂組成物が発泡されて形成された発泡層である。スキン層は、ポリスチレン系樹脂発泡シートを製造する際に表層部に形成される薄層である。発泡層とスキン層との違いは、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項における説明を援用し得る。
【0092】
スキン層は、その9箇所の厚みの平均厚みD1が、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは1.0μm~75μmであり、より好ましくは2.0μm~70μmであり、さらに好ましくは5.0μm~65μmであり、特に好ましくは8.0μm~60μmである。ここで、スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1の測定方法については、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項における説明を援用し得る。
【0093】
スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1μmとポリスチレン系樹脂発泡シート全体の発泡倍率F倍との積D1×Fは、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは100μm・倍~1000μm・倍であり、より好ましくは100μm・倍~900μm・倍であり、さらに好ましくは100μm・倍~850μm・倍であり、特に好ましくは100μm・倍~800μm・倍である。
【0094】
スキン層の9箇所の厚みの中の最大値D1maxμmと最小値D1minμmとの差D1max-D1minをRμmとしたとき、R/D1は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.5~10であり、さらに好ましくは0.8~10であり、特に好ましくは1.0~10である。
【0095】
熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂発泡シートは、MD方向に20mm、TD方向に20mm、表面から厚み200μmまででスライスした切片の、100℃で90秒間加熱した後における収縮率が、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは50%以下であり、より好ましくは43%以下であり、さらに好ましくは41%以下であり、特に好ましくは39%以下である。ここで、上記収縮率については、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項における説明を援用し得る。
【0096】
熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂発泡シートは、MD方向に20mm、TD方向に20mmでスライスした切片の、125℃で150秒間加熱した後における収縮率が、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは40%以下であり、より好ましくは34%以下であり、さらに好ましくは31%以下であり、特に好ましくは29%以下である。ここで、上記収縮率については、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項における説明を援用し得る。
【0097】
熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂発泡シートの厚みは、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは0.5mm~4.0mmであり、より好ましくは0.8mm~3.5mmであり、さらに好ましくは1.0mm~3.0mmであり、特に好ましくは1.1mm~2.5mmである。
【0098】
熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂発泡シートの坪量は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは60g/m~500g/mであり、より好ましくは70g/m~400g/mであり、さらに好ましくは80g/m~300g/mであり、さらに好ましくは90g/m~300g/mであり、さらに好ましくは100g/m~250g/mであり、特に好ましくは100g/m以上250g/m未満であり、最も好ましくは100g/m~200g/mである。ここで、上記坪量の測定方法については、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項における説明を援用し得る。
【0099】
熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは0.02g/cm~0.50g/cmであり、より好ましくは0.03g/cm~0.40g/cmであり、さらに好ましくは0.04g/cm~0.30g/cmであり、特に好ましくは0.05g/cm~0.20g/cmである。ここで、上記見掛け密度の測定方法については、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項における説明を援用し得る。
【0100】
熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは100μm~3000μmであり、より好ましくは150μm~2500μmであり、さらに好ましくは200μm~2000μmであり、特に好ましくは250μm~1500μmである。ここで、上記平均気泡径の測定方法については、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項における説明を援用し得る。
【0101】
熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂発泡シートは、代表的には、ポリスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を発泡させて形成したものであり、好ましくは、ポリスチレン系樹脂と発泡剤を含む樹脂組成物を押出発泡させて形成したものであり、より好ましくは、ポリスチレン系樹脂と発泡剤と、必要に応じて加えられる気泡調整剤などの各種の添加剤とを含む樹脂組成物を、押出機内で加熱溶融、混練し、所定温度に冷却後、ダイからシート状に押し出すと共に発泡させ、直ちに冷却して形成したものである。
【0102】
ポリスチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂と併用し得る他の樹脂、発泡剤、添加剤については、≪≪A.ポリスチレン系樹脂発泡シート≫≫の項における説明を援用し得る。
【0103】
熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂発泡シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のような発泡層とスキン層を形成するような方法であれば、任意の適切な方法によって形成し得る。熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂発泡シートの形成方法としては、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、≪≪B.ポリスチレン系樹脂発泡シートの形成方法≫≫の項における説明を援用し得る。
【0104】
熱成形によって第二のポリスチレン系樹脂発泡容器を提供し得るポリスチレン系樹脂積層発泡シート、すなわち、上記ポリスチレン系樹脂発泡シートに非発泡樹脂フィルムがラミネートされてなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートについては、≪≪C.ポリスチレン系樹脂積層発泡シート≫≫の項における説明を援用し得る。
【実施例0105】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0106】
<発泡シートの厚み>
測定対象の発泡シートについて、TD方向(幅方向)に均等に13点の測定箇所を決定し、13点それぞれについて厚みゲージ(タフテック社製)を用いて厚みを測定した。測定した13点の厚みの平均値を、発泡シートの厚みとした。
【0107】
<発泡シートの坪量>
測定対象の発泡シートについて、TD方向(幅方向)に均等に10個、10cm×10cmの切片を切り出し、10個の切片それぞれの質量を測定し、測定した10個の切片の質量の平均値を100倍し、坪量(単位:g/m)を算出した。
【0108】
<発泡シートの発泡倍率>
発泡シートの厚み、坪量を用い、下記式にて発泡倍率を算出した。
発泡倍率(倍)=(ポリスチレンの樹脂密度×1000×発泡シートの厚み(mm))÷発泡シートの坪量(g/m
ただし、ポリスチレンの樹脂密度=1.05とした。
【0109】
<発泡シートのスキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1>
図5は、スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1の測定方法を説明するための説明図の一つであり、測定対象のポリスチレン系樹脂発泡シート100を平面方向から見た平面図である。図5に示すように、測定対象のポリスチレン系樹脂発泡シート100に、TD方向を4等分する3本の直線L1をMD方向に引いた。次に、図5に示すように、それぞれの直線L1が測定サンプルの中心を通るように1cm×1cmにカットして、3個の測定サンプルS1、S2、S3を得た。このとき、3個の測定サンプルS1、S2、S3の中心は、同一のTD方向の直線L2上に位置するようにした。続いて、得られた3個の測定サンプルそれぞれについて、MD方向からの断面を走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影した。
【0110】
図6は、スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1の測定方法を説明するための説明図の一つであり、得られた3個の測定サンプルの中の1個である測定サンプルS1のMD方向からの断面を走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影することによってスキン層の厚みを測定する方法を説明する説明図である。図6に示すように、測定サンプルS1のMD方向からの断面Aについて、TD方向の中間点を通る直線が、撮像の横方向(TD方向)の真ん中を通るようにして、測定サンプルS1の表面近傍を走査電子顕微鏡(SEM)によって倍率300倍で撮影し、表面1側の撮像P1、表面2側の撮像P2を得た。
【0111】
次に、得られた撮像P1について、図6に示すように、TD方向に4等分する3本の直線L3を厚み方向に引き、各直線上にて、表面から直下の気泡端部までの距離を測定し、表面1側の3箇所の厚みD111、D112、D113を取得した。得られた撮像P2についても、図6に示すように、同様に行い、表面2側の3箇所の厚みD121、D122、D123を取得した。測定サンプルS2についても同様に行い、表面1側の3箇所の厚みD211、D212、D213、表面2側の3箇所の厚みD221、D222、D223を取得した。測定サンプルS3についても同様に行い、表面1側の3箇所の厚みD311、D312、D313、表面2側の3箇所の厚みD321、D322、D323を取得した。なお、測定サンプルS1の表面1、測定サンプルS2の表面1、測定サンプルS3の表面1は、測定対象のポリスチレン系樹脂発泡シート100の同一の一方の表面に位置していた表面であり、測定サンプルS1の表面2、測定サンプルS2の表面2、測定サンプルS3の表面2は、測定対象のポリスチレン系樹脂発泡シート100の同一のもう一方の表面に位置していた表面である。
【0112】
3個の測定サンプルS1、S2、S3の表面1側の合計9箇所の厚みの平均値と表面2側の合計9箇所の厚みの平均値とを比較し、大きい方の平均値を与える側の9箇所の厚みを、スキン層の9箇所の厚みのとし、その平均値を、スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1(単位:μm)とした。
【0113】
<積層発泡シートのスキン層の9箇所の厚みの平均厚みD2>
測定対象をポリスチレン系樹脂発泡シートに代えてポリスチレン系樹脂積層発泡シートとし、非発泡層と発泡層の界面をマイクロスコープにて観測し、その界面から直下の気泡端面までの距離を測定した以外は、スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1と同様に行い、スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD2(単位:μm)とした。
【0114】
<発泡シートの表層厚み200μm部分の収縮率>
ポリスチレン系樹脂発泡シートの表面のうち、スキン層の9箇所の厚みの平均厚みD1を算出する際に採用した9箇所が属する側の表面に対して、TD方向を4等分する3本の直線と任意の1本のTD方向の直線との交点(3箇所)が得られる切片の中心となるように、スライサーまたはカミソリにて、MD方向に20mm、TD方向に20mm、表面から厚み200μmまででスライスし、得られた3つの切片を加熱炉に入れ、100℃×90秒間加熱し、加熱後のMD方向の寸法を測定し、その3つの測定値の平均値を加熱後寸法として算出した。下記式によって、ポリスチレン系樹脂発泡シートの表層厚み200μm部分の収縮率(発泡シート表層200μm収縮率)を測定した。
【0115】
発泡シート表層200μm収縮率(%)=(加熱前寸法-加熱後寸法)÷加熱前寸法×100
【0116】
<積層発泡シートの表層厚み200μm部分の収縮率>
ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの表面のうち、非発泡樹脂フィルムがラミネートされた側の表面に対して、TD方向を4等分する3本の直線と任意の1本のTD方向の直線との交点(3箇所)が得られる切片の中心となるように、スライサーまたはカミソリにて、MD方向に20mm、TD方向に20mm、表面から厚み200μmまででスライスし、得られた3つの切片を加熱炉に入れ、100℃×90秒間加熱し、加熱後のMD方向の寸法を測定し、その3つの測定値の平均値を加熱後寸法として算出した。下記式によって、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの表層厚み200μm部分の収縮率(積層発泡シート表層200μm収縮率)を測定した。
【0117】
積層発泡シート表層200μm収縮率(%)=(加熱前寸法-加熱後寸法)÷加熱前寸法×100
【0118】
<発泡容器の内面側壁の表層厚み200μm部分の収縮率>
ポリスチレン系樹脂発泡容器(200mm×200mmのトレー型)について、容器内面側の側壁部分に対して測定を行った。容器内面側の側壁部分の表面から、スライサーまたはカミソリにて、MD方向に30mm、TD方向に10mm、表面から厚み200μmまでで2つスライスし、得られた2つの切片を加熱炉に入れ、100℃×90秒間加熱し、加熱後のMD方向の寸法を測定し、その2つの測定値の平均値を加熱後寸法として算出した。下記式によって、ポリスチレン系樹脂発泡容器の表層厚み200μm部分の収縮率(発泡容器表層200μm収縮率)を測定した。
【0119】
発泡容器表層200μm収縮率(%)=(加熱前寸法-加熱後寸法)÷加熱前寸法×100
【0120】
<発泡シートまたは積層発泡シートの収縮率>
ポリスチレン系樹脂発泡シートまたはポリスチレン系樹脂積層発泡シートに対して、TD方向を6等分する5本の直線と任意の1本のTD方向の直線との交点(5箇所)が得られる切片の中心となるように、スライサーまたはカミソリにて、MD方向に10cm、TD方向に10cmでスライスし、得られた5つの切片を加熱炉に入れ、125℃×150秒間加熱し、加熱後の表裏のMD方向、TD方向の寸法を測定し、それらの寸法のうち最も短い寸法に対して、収縮率を以下計算式にて算出した。
【0121】
収縮率(%)=(加熱前寸法-加熱後寸法)÷加熱前寸法×100
【0122】
<バブル評価>
成形機(製品名:FVS-500、株式会社脇坂エンジニアリング製)を用いて評価を行った。加熱炉の温度は400℃とし、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの非発泡樹脂フィルムがラミネートされた側の表面が上面になるようにセットし、加熱した。加熱秒数については、表面が焼けるまで、0.5秒ずつ加熱秒数を上げた。以下の基準にて評価した。
〇:表面(上面)が焼けるのみでバブル(浮き)の発生はなし。
△:表面(上面)が焼けると同時にバブル(浮き)が発生。
×:表面(上面)が焼ける前にバブル(浮き)が発生。
【0123】
<容器強度評価>
両手でポリスチレン系樹脂発泡容器のフランジ部を持ち、以下の基準にて評価した。
×:容器フランジ部を両手で持って圧縮するとすぐに折れる。
△:容器フランジ部を両手で持って圧縮すると剛性はあるがすぐに折れる。
〇:容器フランジ部を両手で持って圧縮すると剛性もありがすぐに折れない。
【0124】
[実施例1]
<ポリスチレン系樹脂発泡シート>
ポリスチレン樹脂(DIC社製、XC-515)100質量部に対して、気泡調整剤としてタルク0.7質量部をブレンドし、φ115の短軸押出機に投入して溶融混錬し、ブタンガスを注入した。その後、φ180の単軸押出機にて冷却し、サーキュラーダイの口径φ175mm、開口幅0.36mmの吐出口から吐出量350kg/hにて吐出した。このとき、冷却エアーのあたる位置を示す指標=13mmの位置に、風量3.2Nm/mの冷却エアーが当たるようにした。その後、冷却用マンドレルにて冷却し、ロール状に引取った。冷却用マンドレルで冷却後のポリスチレン系樹脂発泡シートの表面温度(冷却用マンドレルの尻部で測定)は45℃であった。
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(1A)は、厚みが2.0mm、坪量が150g/m、幅が1050mmであり、発泡倍率は14倍であった。
結果を表1に示した。
【0125】
<ポリスチレン系樹脂積層発泡シート>
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(1A)を常温で2週間養生後、厚みが15μmのポリスチレンフィルムを積層した。積層は、140℃の加熱ロールを用い、0.4MPaの圧力で圧着し、引き取り速度4m/minで熱ラミネートを行い、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(1B)を得た。
結果を表1に示した。
【0126】
<ポリスチレン系樹脂発泡容器>
得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シート(1B)を用い、成形機(製品名:FVS-500、株式会社脇坂エンジニアリング製)を用いて、200mm×200mmのトレー容器に成形し、ポリスチレン系樹脂発泡容器(1C)とした。成形において、ヒーター槽の温度は430℃とし、加熱後の厚みが3.7mmとなるように加熱秒数を設定した。トレー容器の金型としては、樹脂製の金型を用い、マッチモールド成形を行った。また、ポリスチレン系樹脂発泡容器の成形の際は、該発泡容器の内面が非発泡層となるようにポリスチレン系樹脂積層発泡シートをセットして成形した。
結果を表1に示した。
【0127】
[実施例2]
<ポリスチレン系樹脂発泡シート>
ポリスチレン樹脂(DIC社製、XC-515)100質量部に対して、気泡調整剤としてタルク0.7質量部をブレンドし、φ115の短軸押出機に投入して溶融混錬し、ブタンガスを注入した。その後、φ180の単軸押出機にて冷却し、サーキュラーダイの口径φ175mm、開口幅0.36mmの吐出口から吐出量350kg/hにて吐出した。このとき、冷却エアーのあたる位置を示す指標=1.0mmの位置に、風量3.2Nm/mの冷却エアーが当たるようにした。その後、冷却用マンドレルにて冷却し、ロール状に引取った。冷却用マンドレルで冷却後のポリスチレン系樹脂発泡シートの表面温度(冷却用マンドレルの尻部で測定)は45℃であった。
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(2A)は、厚みが2.0mm、坪量が150g/m、幅が1050mmであり、発泡倍率は14倍であった。
結果を表1に示した。
【0128】
<ポリスチレン系樹脂積層発泡シート>
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(2A)を常温で2週間養生後、厚みが15μmのポリスチレンフィルムを積層した。積層は、140℃の加熱ロールを用い、0.4MPaの圧力で圧着し、引き取り速度4m/minで熱ラミネートを行い、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(2B)を得た。
結果を表1に示した。
【0129】
<ポリスチレン系樹脂発泡容器>
得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シート(2B)を用い、成形機(製品名:FVS-500、株式会社脇坂エンジニアリング製)を用いて、200mm×200mmのトレー容器に成形し、ポリスチレン系樹脂発泡容器(2C)とした。成形において、ヒーター槽の温度は430℃とし、加熱後の厚みが3.7mmとなるように加熱秒数を設定した。トレー容器の金型としては、樹脂製の金型を用い、マッチモールド成形を行った。
結果を表1に示した。
【0130】
[実施例3]
<ポリスチレン系樹脂発泡シート>
ポリスチレン樹脂(DIC社製、XC-515)100質量部に対して、気泡調整剤としてタルク0.7質量部をブレンドし、φ115の短軸押出機に投入して溶融混錬し、ブタンガスを注入した。その後、φ180の単軸押出機にて冷却し、サーキュラーダイの口径φ175mm、開口幅0.36mmの吐出口から吐出量350kg/hにて吐出した。このとき、冷却エアーのあたる位置を示す指標=0.22mmの位置に、風量5.0Nm/mの冷却エアーが当たるようにした。その後、冷却用マンドレルにて冷却し、ロール状に引取った。冷却用マンドレルで冷却後のポリスチレン系樹脂発泡シートの表面温度(冷却用マンドレルの尻部で測定)は40℃であった。
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(3A)は、厚みが2.0mm、坪量が150g/m、幅が1050mmであり、発泡倍率は14倍であった。
結果を表1に示した。
【0131】
<ポリスチレン系樹脂積層発泡シート>
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(3A)を常温で2週間養生後、厚みが15μmのポリスチレンフィルムを積層した。積層は、140℃の加熱ロールを用い、0.4MPaの圧力で圧着し、引き取り速度4m/minで熱ラミネートを行い、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(3B)を得た。
結果を表1に示した。
【0132】
<ポリスチレン系樹脂発泡容器>
得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シート(3B)を用い、成形機(製品名:FVS-500、株式会社脇坂エンジニアリング製)を用いて、200mm×200mmのトレー容器に成形し、ポリスチレン系樹脂発泡容器(3C)とした。成形において、ヒーター槽の温度は430℃とし、加熱後の厚みが3.7mmとなるように加熱秒数を設定した。トレー容器の金型としては、樹脂製の金型を用い、マッチモールド成形を行った。
結果を表1に示した。
【0133】
[比較例1]
<ポリスチレン系樹脂発泡シート>
ポリスチレン樹脂(DIC社製、XC-515)100質量部に対して、気泡調整剤としてタルク0.7質量部をブレンドし、φ115の短軸押出機に投入して溶融混錬し、ブタンガスを注入した。その後、φ180の単軸押出機にて冷却し、サーキュラーダイの口径φ175mm、開口幅0.36mmの吐出口から吐出量350kg/hにて吐出した。このとき、冷却エアーのあたる位置を示す指標=35mmの位置に、風量1.0Nm/mの冷却エアーが当たるようにした。その後、冷却用マンドレルにて冷却し、ロール状に引取った。冷却用マンドレルで冷却後のポリスチレン系樹脂発泡シートの表面温度(冷却用マンドレルの尻部で測定)は65℃であった。
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(C1A)は、厚みが2.0mm、坪量が150g/m、幅が1050mmであり、発泡倍率は14倍であった。
結果を表1に示した。
【0134】
<ポリスチレン系樹脂積層発泡シート>
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(C1A)を常温で2週間養生後、厚みが15μmのポリスチレンフィルムを積層した。積層は、140℃の加熱ロールを用い、0.4MPaの圧力で圧着し、引き取り速度4m/minで熱ラミネートを行い、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(C1B)を得た。
結果を表1に示した。
【0135】
<ポリスチレン系樹脂発泡容器>
得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シート(C1B)を用い、成形機(製品名:FVS-500、株式会社脇坂エンジニアリング製)を用いて、200mm×200mmのトレー容器に成形し、ポリスチレン系樹脂発泡容器(C1C)とした。成形において、ヒーター槽の温度は430℃とし、加熱後の厚みが3.7mmとなるように加熱秒数を設定した。トレー容器の金型としては、樹脂製の金型を用い、マッチモールド成形を行った。
結果を表1に示した。
【0136】
[比較例2]
<ポリスチレン系樹脂発泡シート>
ポリスチレン樹脂(DIC社製、XC-515)100質量部に対して、気泡調整剤としてタルク0.7質量部をブレンドし、φ115の短軸押出機に投入して溶融混錬し、ブタンガスを注入した。その後、φ180の単軸押出機にて冷却し、サーキュラーダイの口径φ175mm、開口幅0.36mmの吐出口から吐出量350kg/hにて吐出した。このとき、冷却エアーのあたる位置を示す指標=0.1mmの位置に、風量7.2Nm/mの冷却エアーが当たるようにした。その後、冷却用マンドレルにて冷却し、ロール状に引取った。冷却用マンドレルで冷却後のポリスチレン系樹脂発泡シートの表面温度(冷却用マンドレルの尻部で測定)は30℃であった。
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(C2A)は、厚みが2.0mm、坪量が150g/m、幅が1050mmであり、発泡倍率は14倍であった。
結果を表1に示した。
【0137】
<ポリスチレン系樹脂積層発泡シート>
得られたポリスチレン系樹脂発泡シート(C2A)を常温で2週間養生後、厚みが15μmのポリスチレンフィルムを積層した。積層は、140℃の加熱ロールを用い、0.4MPaの圧力で圧着し、引き取り速度4m/minで熱ラミネートを行い、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート(C2B)を得た。
結果を表1に示した。
【0138】
<ポリスチレン系樹脂発泡容器>
得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シート(C2B)を用い、成形機(製品名:FVS-500、株式会社脇坂エンジニアリング製)を用いて、200mm×200mmのトレー容器に成形し、ポリスチレン系樹脂発泡容器(C2C)とした。成形において、ヒーター槽の温度は430℃とし、加熱後の厚みが3.7mmとなるように加熱秒数を設定した。トレー容器の金型としては、樹脂製の金型を用い、マッチモールド成形を行った。
結果を表1に示した。
【0139】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂発泡シートまたは本発明の実施形態によるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形して得られる容器は、トレー、弁当箱、丼、カップ等の各種容器として、コンビニエンストア等で広く利用できる。
【符号の説明】
【0141】
100 ポリスチレン系樹脂発泡シート
500 ポリスチレン系樹脂積層発泡シート
10 発泡層
20 スキン層
1000 ポリスチレン系樹脂発泡容器
200 容器内側
300 容器外側
図1
図2
図3
図4
図5
図6