(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079826
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】3次元造形用組成物
(51)【国際特許分類】
B29C 64/129 20170101AFI20230601BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230601BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230601BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230601BHJP
A61C 7/08 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B29C64/129
C08F290/06
B33Y70/00
B33Y80/00
A61C7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193483
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 周司
(72)【発明者】
【氏名】上野 貴之
【テーマコード(参考)】
4C052
4F213
4J127
【Fターム(参考)】
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4J127FA43
(57)【要約】
【課題】強度が高く、透明性に優れた造形物を得ることができる、3次元造形用組成物を提供する。
【解決手段】ウレタン結合を有する第1の(メタ)アクリレートと、ポリ共役ジエン構造を有し且つウレタン結合を有する第2の(メタ)アクリレートと、ガラス転移温度Tgが70℃以上である単官能の第3の(メタ)アクリレートと、を含有する、3次元造形用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン結合を有する第1の(メタ)アクリレートと、
ポリ共役ジエン構造を有し、且つウレタン結合を有する第2の(メタ)アクリレートと、
ガラス転移温度Tgが70℃以上である単官能の第3の(メタ)アクリレートと、を含有する、
3次元造形用組成物。
【請求項2】
前記第2の(メタ)アクリレートは、2個以上のウレタン結合を有する、
請求項1に記載の3次元造形用組成物。
【請求項3】
前記第3の(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有しない、
請求項1又は2に記載の3次元造形用組成物。
【請求項4】
前記第1の(メタ)アクリレートは、ポリ共役ジエン構造を有しない、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の3次元造形用組成物。
【請求項5】
歯列矯正用アライナーの3次元造形に用いられる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の3次元造形用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元造形用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オブジェクトを三次元造形する技術が発展しており、歯科分野においても、義歯床、人工歯等の歯科用物品が3次元造形物として製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、出願人は、例えば、歯列矯正用アライナーに用いられる3次元造形用組成物を開示している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/203356号
【特許文献2】国際公開第2020/017122号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、3次元造形物に対しては、透明性を維持しながらさらに高強度の材料が求められている。
【0006】
本発明の課題は、強度が高く、透明性に優れた3次元造形物が得られる3次元造形用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ウレタン結合を有する第1の(メタ)アクリレートと、ポリ共役ジエン構造を有し且つウレタン結合を有する第2の(メタ)アクリレートと、ガラス転移温度Tgが70℃以上である単官能の第3の(メタ)アクリレートと、を含有する、3次元造形用組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、強度が高く、透明性に優れた造形物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0010】
本実施形態の3次元造形用組成物は、第1の(メタ)アクリレートと、第2の(メタ)アクリレート、及び第3の(メタ)アクリレートと、を含有する。
【0011】
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、メタクリロイルオキシ基及び/又はアクリロイルオキシ基を有する化合物(例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等)を意味する。
【0012】
第1の(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートである。第1の(メタ)アクリレートは、本実施形態の3次元造形用組成物におけるマトリックス樹脂(またはベース樹脂)を構成する。
【0013】
本明細書において、ウレタン結合は、ウレタン(-NHCOO-)が介する結合を示す。
【0014】
ウレタン結合を有する第1の(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ウレタンジメタクリレート、ウレタンジメタクリレートのオリゴマーとポリマーとの混合物、等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0015】
第1の(メタ)アクリレートは、ポリ共役ジエン構造を有しない(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0016】
第1の(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、例えば、20質量%以上80質量%以下であり、好ましくは30質量%以上70質量%以下、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。3次元造形用組成物中の第1の(メタ)アクリレートの含有量が20質量%以上80質量%以下であると、造形物が三次元造形しやすくなる。
【0017】
第2の(メタ)アクリレートは、ポリ共役ジエン構造を有し、且つウレタン結合を有する(メタ)アクリレートである。
【0018】
本明細書において、ポリ共役ジエン構造とは、1つの単結合によって二重結合が隔てられ共役したジエンのポリマー構造を示す。なお、ポリ共役ジエン構造は、ポリ共役ジエンを水素化した構造(水添ポリ共役ジエン構造)でもよい。
【0019】
ポリ共役ジエン構造を有し且つウレタン結合を有する第2の(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、下記化学式で示される1,2-ポリブタジエンウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0020】
【0021】
【0022】
ポリ共役ジエン構造を有し且つウレタン結合を有する第2の(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を2個以上有することが好ましく、より好ましくは3個以上有し、さらに好ましくは4個以上有する。
【0023】
第2の(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、例えば、1質量%以上25質量%以下であり、好ましくは3質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。3次元造形用組成物中の第2の(メタ)アクリレートの含有量が1質量%以上25質量%以下であると、3次元造形物の強度及び透明性を高めることができる。
【0024】
第3の(メタ)アクリレートは、ガラス転移温度Tgが70℃以上である単官能の(メタ)アクリレートである。
【0025】
本明細書において、単官能の(メタ)アクリレートとは、分子内に(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレートを示す。
【0026】
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により測定される値である。本実施形態では、ガラス転移温度Tgは、70℃以上であり、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは90℃以上である。ガラス転移温度Tgが70℃未満であると、得られる3次元造形物の強度が低下する。
【0027】
ガラス転移温度Tgが70℃以上である単官能の第3の(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0028】
ガラス転移温度Tgが70℃以上である単官能の第3の(メタ)アクリレートは、特に限定されないが、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレー等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0029】
第3の(メタ)アクリレートの含有量は、特に限定されないが、例えば、15質量%以上70質量%以下であり、好ましくは20質量%以上65質量%以下、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。3次元造形用組成物中の第3の(メタ)アクリレートの含有量が15質量%以上70質量%以下であると、3次元造形物の強度を向上させることができる。
【0030】
本実施形態の3次元造形用組成物は、本発明の目的を損なわない限り、その他の成分を含有してもよい。3次元造形用組成物に含まれるその他の成分としては、例えば、光重合開始剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光重合促進剤、顔料、保存安定剤等が挙げられる。
【0031】
光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、カンファーキノン(CQ)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジルケタール、ジアセチルケタール、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルビス(2-メトキシエチル)ケタール、4,4'-ジメチル(ベンジルジメチルケタール)、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0032】
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドが好ましい。
【0033】
3次元造形用組成物中の光重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上5質量%以下である。3次元造形用組成物中の光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、3次元造形物の硬化性が向上し、10質量%以下であると、3次元造形用組成物が光硬化しやすくなり、3次元造形物の透明性が向上する。
【0034】
重合禁止剤は、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)(BHT)、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール等が挙げられる。
【0035】
これらの重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)が好ましい。
【0036】
3次元造形用組成物中の重合禁止剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.001質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.001質量%以上1質量%以下である。3次元造形用組成物中の光重合開始剤の含有量が0.0005質量%以上5質量%以下であると、3次元造形用組成物の保存安定性が向上する。
【0037】
紫外線吸収剤は、例えば、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール等が挙げられる。
【0038】
紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、得られる3次元造形物のプリント性を向上させる点で2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェンが好ましく、3次元造形用組成物の光安定性向上の点で2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノールが好ましい。
【0039】
3次元造形用組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.0005質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.001質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上1質量%以下である。3次元造形用組成物中の光重合開始剤の含有量が0.0005質量%以上5質量%以下であると、3次元造形用組成物の保存安定性が向上し、得られる3次元造形物のプリント性が向上する。
【0040】
光重合促進剤としては、特に限定されず、例えば、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン、トリルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル(EPA)、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等の第三級アミン等、バルビツール酸、1,3-ジメチルバルビツール酸、1,3,5-トリメチルバルビツール酸、1,3,5-トリエチルバルビツール酸、5-ブチルバルビツール酸、1-ベンジル-5-フェニルバルビツール酸、1-シクロヘキシル-5-エチルバルビツール酸等のバルビツール酸誘導体等が挙げられる。これらの光重合促進剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0041】
本実施形態の3次元造形用組成物中の光重合促進剤の含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
顔料としては、例えば、二酸化チタン(白色)、酸化鉄(黄色・赤色)、四酸化三鉄(黒色)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0043】
本実施形態の3次元造形用組成物中の顔料の含有量は、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
保存安定剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0045】
本実施形態の3次元造形用組成物中の保存安定剤の含有量は、0.01質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
本実施形態の3次元造形用組成物は、上述のように、ウレタン結合を有する第1の(メタ)アクリレートと、ポリ共役ジエン構造を有し、且つウレタン結合を有する第2の(メタ)アクリレートと、ガラス転移温度Tgが70℃以上である単官能の第3の(メタ)アクリレートと、を含有する。これにより、本実施形態の3次元造形用組成物を用いて得られる3次元造形物の透明性を維持しながら3次元造形物に靭性を持たせることができる。
【0047】
そのため、本実施形態の3次元造形用組成物によれば、高い柔軟性を持ちながら、強度が高く、しかも透明性に優れた3次元造形物を得ることができる。
【0048】
本実施形態の3次元造形用組成物では、上述のように、第1の(メタ)アクリレートとしては、ポリ共役ジエン構造を有しない(メタ)アクリレートであることが好ましい。これにより、ポリ共役ジエン構造を有する第2の(メタ)アクリレートとの関係で、3次元造形用組成物に含まれるポリ共役ジエン構造の含有量が多くなりすぎることによる強度及び透明性の低下を防ぐことができる。
【0049】
本実施形態の3次元造形用組成物では、上述のように、第2の(メタ)アクリレートを構成するウレタン結合を有する(メタ)アクリレートがウレタン結合を2個以上有することが好ましい。これにより、得られる3次元造形物において高い強度と透明性を両立することができる。
【0050】
本実施形態の3次元造形用組成物では、上述のように、第3の(メタ)アクリレートとしては、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリレートであることが好ましい。これにより、ウレタン結合を有する第1の(メタ)アクリレート及び第2の(メタ)アクリレートとの関係で、3次元造形用組成物に含まれるウレタン結合の含有量が多くなりすぎることによる強度及び透明性の低下を防ぐことができる。
【0051】
なお、ウレタン結合を有する第1、第2の(メタ)アクリレートは、いずれも高粘度になりやすく、低粘度のモノマー等で希釈しないと光造形に適した粘度とならない。一方、ウレタン結合を有しない第3の(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートに比べて低粘度であるため、このような第3の(メタ)アクリレートを3次元造形用組成物全体の約半分を占めることで、造形に適した粘度にすることができる。
【0052】
本実施形態の3次元造形用組成物の用途は、特に限定されないが、例えば、歯科用補綴物、歯列矯正用アライナー、歯列矯正用リテーナー、サージカルガイド、スプリント(マウスピース)、インダイレクトボンディング用トレー、歯科用模型等の3次元造形用に用いられる。これらの中でも、歯列矯正用アライナーの3次元造形に好ましく用いられ、より好ましくは歯列矯正用透明トレイアライナーの3次元造形に用いられる。
【0053】
本実施形態の3次元造形用組成物を歯列矯正用アライナーの3次元造形に用いることにより、3次元造形物として得られる歯列矯正用アライナーに柔軟性を付与しながら、該歯列矯正用アライナー強度及び透明性を向上させることができる。
【0054】
3次元造形物の製造方法は、本実施形態の3次元造形用組成物を用いて3次元造形物を製造する工程を含む。
【0055】
本実施形態の3次元造形用組成物を用いて、3次元造形物を製造する際に、公知の3Dプリンタを用いることができる。
【0056】
3Dプリンタの方式としては、例えば、ステレオリソグラフィー(SLA)方式、デジタルライトプロセッシング(DLP)方式等が挙げられるが、DLP方式が好ましい。
【0057】
DLP方式の3Dプリンタの市販品としては、例えば、MAX UV(Asiga製)等が挙げられる。
【0058】
本実施形態の3次元造形用組成物を用いて、3次元造形物を製造する方法としては、例えば、3次元造形用組成物が収容されている容器に対して、上面から光を照射する方法(自由液面法)、下面から光を照射する方法(規制液面法)等が挙げられるが、規制液面法が好ましい。
【0059】
規制液面法を用いて、3次元造形物を製造する場合、容器の下面は、光透過性を有し、容器の下方から発射された光が、容器の下面を透過して、3次元造形用組成物に照射される。
【0060】
本実施形態の3次元造形用組成物を用いて、3次元造形物を製造する際に、3次元造形用組成物に照射される光としては、例えば、波長が380~450nmの紫外線、可視光線等が挙げられる。
【0061】
3次元造形用組成物に照射される光の光源としては、例えば、LEDレーザー、LEDランプ、LEDプロジェクター等が挙げられる。
【0062】
なお、3次元造形物の製造方法は、3次元造形物を洗浄する工程、3次元造形物を後重合する工程等をさらに含んでいてもよい。
【0063】
本実施形態の3次元造形用組成物を用いて製造される3次元造形物は、高い柔軟性を持ちながら強度が高く、透明性が高い。
【実施例0064】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。なお、以下において、単位のない数値又は「部」は、特に断りのない限り、質量基準(質量%)である。
【0065】
<3次元造形用組成物の調製>
表1に示す配合量[質量%]で、3次元造形用組成物を調製した。
【0066】
なお、表1における略号は、以下の通りである。
【0067】
Exothane(登録商標)32(X-894-0000):ウレタンジメタクリレート(CASNo.72869-86-4)のオリゴマーとポリマーとの混合物(Esstech社製)
IBOMA:イソボルニルメタクリレート
TPO:(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイド(光重合開始剤)
【0068】
<引張強度及び引張弾性率>
CADソフトウェア(Asiga製、Composer(登録商標))を使用し、JIS K7161:2014に従って厚さ1.0mm、幅10mm引張試験片のデジタルデータを設計した後、DLP方式の3Dプリンタ(Asiga製、MAX UV)及び3次元造形用組成物を用いて三次元造形した。その後、得られた造形物をイソプロパノールで十分に洗浄した後、歯科用光重合器を用いて後重合し引張試験用試験片を得た。
【0069】
この試験片を用いて37℃水中下、試験スピード10mm/minで引張試験を行い、引張強度[MPa]及び引張弾性率[MPa]を測定した。
【0070】
引張強度及び引張弾性率の評価は、以下の基準で行った。なお、引張強度及び引張弾性率のいずれも、Aは優良、Bは良、Cは不良と評価した。
【0071】
(引張強度の評価基準)
A:22MPa以上
B:20MPa以上22MPa未満
C:20MPa未満
【0072】
(引張弾性率の評価基準)
A:400MPa以上
B:100MPa以上400MPa未満
C:100MPa未満
【0073】
<透明性>
CADソフトウェア(Asiga製、Composer)を使用し、直径30mm、厚さ1mmの色調板のデジタルデータを設計した後、DLP方式の3Dプリンタ(Asiga製、MAX UV)及び3次元造形用組成物を用いて三次元造形した。その後、得られた造形物をイソプロパノールで十分に洗浄した後、歯科用光重合器を用いて後重合し試験片を得た。この試験片を耐水研磨紙(#1000,2000,4000)を用いて表面研磨し、透明性測定用試験片とした。
【0074】
透明性測定用試験片をヘイズメーター(BYK社製、haze-guard i)を用いて全光線透過率(T.T.)を測定し、透明性を評価した。
【0075】
透明性の評価は、以下の基準で行った。なお、Aは優良、Bは良、Cは不良と評価した。
【0076】
(透明性の評価基準)
A:90%以上
B:70%以上90%未満
C:70%未満
【0077】
(実施例1)
Exothane32を40部、1,2-ポリブタジエンウレタンアクリレートを10部、IBOM(Tg.110℃)を50部、TPOを2部、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを0.05部、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェンを0.01部配合して、3次元造形用組成物を調製し、評価した。実施例1の配合量及び評価結果を表1に示す。
【0078】
(実施例2)
1,2-ポリブタジエンウレタンアクリレートの配合量を15部とし、IBOMAに替えてt-ブチルメタクリレート(Tg.118℃)を45部配合した以外は、実施例1と同様に3次元造形用組成物を調製し、評価した。実施例2の配合量及び評価結果を表1に示す。
【0079】
(実施例3)
Exothane32の配合量を35部とし、1,2-ポリブタジエンウレタンアクリレートの配合量を5部とし、IBOMAに替えてフェニルメタクリレート(Tg.110℃)を60部配合した以外は、実施例1と同様に3次元造形用組成物を調製し、評価した。実施例3の配合量及び評価結果を表1に示す。
【0080】
(比較例1)
IBOMAに替えてn-プロピルメタクリレート(Tg.35℃)を50部配合した以外は、実施例1と同様に3次元造形用組成物を調製し、評価した。比較例1の配合量及び評価結果を表1に示す。
【0081】
(比較例2)
t-ブチルメタクリレートに替えて2-エチルヘキシルメタクリレート(Tg.-6℃)を45部配合した以外は、実施例2と同様に3次元造形用組成物を調製し、評価した。比較例2の配合量及び評価結果を表1に示す。
【0082】
(比較例3)
1,2-ポリブタジエンウレタンアクリレートを配合せず、IBOMAの配合量を60部とした以外は、実施例1と同様に3次元造形用組成物を調製し、評価した。比較例3の配合量及び評価結果を表1に示す。
【0083】
【0084】
表1から、ポリ共役ジエン構造を有し、且つウレタン結合を有するメタクリレートと、ガラス転移温度Tgが70℃以上である単官能のメタクリレートと、を配合した3次元造形用組成物を用いて得られた造形物は、引張強度、引張弾性率、透明性のいずれも良好であった(実施例1~3)。
【0085】
これに対して、ガラス転移温度Tgが70℃未満の単官能メタクリレートを配合した3次元造形用組成物を用いて得られた造形物は、引張強度、引張弾性率が不良であった(比較例1、2)。また、ポリ共役ジエン構造を有し且つウレタン結合を有するメタクリレートを配合しなかった3次元造形用組成物を用いて得られた造形物は、引張強度が不良であった(比較例3)。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。