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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079833
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】三味線の棹およびこれを備えた三味線
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/06 20200101AFI20230601BHJP
   G10D 1/05 20200101ALI20230601BHJP
【FI】
G10D3/06
G10D1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193492
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】591274668
【氏名又は名称】株式会社セベル・ピコ
(72)【発明者】
【氏名】二宮 朝保
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA08
5D002CC27
(57)【要約】
【課題】糸の張力に耐えうる強度を有し、デザインの自由度を高めることが出来る三味線の棹およびこれを備えた三味線を提供する。
【解決手段】
外観構成部材100と骨格部材160を具備し、外観構成部材100は、一端に天神部110、他端に胴に差し込まれる差込部140を備えており、
骨格部材160は、天神部110から差込部140まで延在している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外観構成部材100と骨格部材160を有する三味線の棹であって、
前記外観構成部材100は、一端に天神部110、他端に胴に差し込まれる差込部140を備えており、
前記骨格部材160は、前記天神部110から前記差込部140まで延在していることを特徴とする三味線の棹。
【請求項2】
請求項1に記載の三味線の棹において、
前記差込部140は、前記胴の差込口に対向する側面を貫通して前記胴の外側に突出する差込部先141を備えており、前記骨格部材160は、前記差込部先141まで延在していることを特徴とする三味線の棹。
【請求項3】
請求項1また2に記載の三味線の棹において、
前記骨格部材160が、前記天神部110の先端部111まで延在している
ことを特徴とする三味線の棹。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の三味線の棹において、
前記骨格部材160の一端と前記天神部110を係着する第1係着部161が、
前記骨格部材160に形成されていることを特徴とする三味線の棹。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の三味線の棹において、
前記骨格部材160の他端と前記胴を係着する第2係着部162が、
前記骨格部材160に形成されていることを特徴とする三味線の棹。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の三味線の棹において、
前記胴の側面に当接して当該胴と前記棹との嵌合を規制する第1ストップ部163且つ/又は第2ストップ部164が、前記骨格部材160に形成されていることを特徴とする三味線の棹。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の三味線の棹において、
略平坦なベース面151を有する付設板150が、
前記骨格部材160の上に付設されていることを特徴とする三味線の棹。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の三味線の棹において、
少なくとも1つの貫通孔167が、
前記骨格部材160に形成されていることを特徴とする三味線の棹。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の三味線の棹において、
少なくとも1つの略凹凸部168が、
前記骨格部材160に形成されていることを特徴とする三味線の棹。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の三味線の棹において、
前記天神部110と前記差込部140との間の中間部120に対応する前記骨格部材160の断面の形状が、上下方向に長い略長方形であることを特徴とする三味線の棹。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の三味線の棹において、
前記骨格部材160の上面と、前記外観構成部材100の上面とが、
面一であることを特徴とする三味線の棹。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の三味線の棹において、
溝部101が、前記外観構成部材100に形成されており、
前記溝101に前記骨格部材160が嵌め込まれていることを特徴とする三味線の棹。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の三味線の棹において、
前記骨格部材160が、一対の前記外観構成部材100に挟まれて固着されている
ことを特徴とする三味線の棹。
【請求項14】
請求項13に記載の三味線の棹において、
前記骨格部材160の下面と、 前記外観構成部材100の下面とが、
同一の曲面を形成していることを特徴とする三味線の棹。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の三味線の棹において、
前記骨格部材160の天神部110において、
糸巻を挿通できる糸巻挿通孔169が形成されていることを特徴とする三味線の棹。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の三味線の棹において、
前記外観構成部材100の素材が、木材、プラスチック、合成樹脂、セラミック、粘土、陶器、ゴム、合成繊維、
または繊維強化プラスチック(FRP)であることを特徴とする三味線の棹。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の三味線の棹を備えた三味線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三味線に関し、特に、三味線の棹の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から三味線の棹が、糸の張力により曲がることがないように、三味線の棹の強度を高める仕組みが必要とされていた。
【0003】
例えば、特許文献1では、粒子や粉末状の骨材を合成樹脂で混練して棹本体部を形成し、強度を強める為に、芯材が棹の内部に挿入されている三味線の棹を示している。
【0004】
また、別の観点ではあるが、棹の変形を防ぐ為に、一定以上の強度を有する紅木や紫檀等の堅い素材が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-160940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の三味線は、強度を有する芯材が、棹の途中までしか入っていないので、糸の張力に負けてしまい、棹が曲がってしまうおそれがあった。
【0007】
また、従来から用いられていた紅木や紫檀等の堅い素材では、三味線の外観デザインの自由度が制約されていた。
【0008】
そこで本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、棹の強度を向上させて、かつデザインの自由度を高められる三味線の棹およびこれを備えた三味線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために本発明の三味線の棹は、外観構成部材100と骨格部材160を有し、前記外観構成部材100は、一端に天神部110、他端に胴に差し込まれる差込部140を備えており、前記骨格部材160は、前記天神部110から前記差込部140まで延在している。
【発明の効果】
【0010】
糸の張力に耐えうる強度を有し、デザインの自由度を高めることが出来る三味線の棹およびこれを備えた三味線を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】三味線の棹10の平面図[全体]である。
図2】<A>は三味線の棹10の斜視図[全体]であり、<B>は三味線の胴200の平面図である。
図3】三味線の棹10Aの平面図[全体]である。
図4】三味線の棹10Aの斜視図[全体]である。
図5】<A>は三味線の棹10Bの平面図[全体]であり、<B>は三味線の棹10Cの平面図[中間部]である。
図6】<A>は三味線の棹10Dの斜視図[中間部]であり、<B>は三味線の棹10Eの斜視図[中間部]であり、<C>は三味線の棹10Eの断面図[中間部]である。
図7】<A>および<B>は三味線の棹10Fの斜視図[中間部]であり、<C>および<D>は三味線の棹10Gの斜視図[中間部]である。
図8】<A>は三味線の棹10Hの斜視図[中間部]であり、<B>は三味線の棹10Iの斜視図[中間部]であり、<C>は三味線の棹10Eの斜視図[中間部]である。
図9】三味線の棹20の斜視図[全体]である。
図10】三味線の棹30の斜視図[天神部]である。
図11】三味線の棹30Aの斜視図[天神部]である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における「上・下・左・右・前・後」(斜視図の場合)、「上・下・左・右」(2次元図の場合)を、図中に矢印を付けて示しており、具体的には、「前後方向」とは、棹の長手方向であり、「上下方向」とは、後述する外観構成部材100のベース面102に対して垂直となる方向であり、「左右方向」とは、前後方向及び上下方向に垂直な棹の短手方向である。
【0013】
先行して記載した内容を、それ以降の実施例(変形例を含む)で用いてもよい。別途説明が必要である場合を除き、形態に関する記述における重複した内容を適宜省略している。
【0014】
本発明における「天神部110」とは、先端部111、糸倉112、乳袋113を含めた領域を指し、「差込部140」とは、胴の内部に差し込むことの出来る領域を指す。また、「中間部120」とは、天神部110と差込部140の中間の領域を指す。
【0015】
本発明における胴200は、従来の三味線の胴と同様の形状である。当該胴200には、棹を差し込む差込口201と、当該差込口201に対向する面に突出口202が設けられている。なお、差込部先141は、差込部140の先端部が突出口202を貫通して胴200の外側に突出している部分である。差込口201と突出口202はどちらも貫通孔である。(図2B参照)
[第1実施例]
【0016】
図1図2Aは、第1実施例(三味線の棹10)を示している。三味線の棹10は、外観構成部材100と骨格部材160とを備えている。図1等において、2点鎖線は、胴200を表し、破線は、外観構成部材100の内部にある溝部101の底を表している。
【0017】
[外観構成部材100]
外観構成部材100は、棹本体の外観を構成するものであり、天神部110から差込部140まで延在している。外観構成部材100は、その領域として、天神部110と中間部120と差込部140を備えている。
【0018】
また、外観構成部材100の上面は、略フラットなベース面102になっており、このベース面102には、前後方向に延在する溝部101が形成されている。この溝部101の深さは、骨格部材160の上下方向の長さとほぼ等しく、溝部101に骨格部材160を嵌合させることが可能である。
【0019】
また、骨格部材160よりも低い強度の素材で構成されており、変形例も含めた外観構成部材100の具体的な素材については、後述する[素材]欄に記載する。
【0020】
[骨格部材160(1)]
骨格部材160は、外観構成部材100の溝部101に嵌合させられて、棹の骨格となる部材であり、棹10の強度を向上させる部材である。
【0021】
骨格部材160は、薄板形状であり、外観構成部材100の素材よりも高い強度を有して経年変化が生じにくい素材で構成されている。例えば金属などの強度のある素材から出来ていることが好ましい。また、骨格部材160の厚さ(左右方向の大きさ)は、2~4mm程度が好ましい。骨格部材160の具体的な素材については、後述する[素材]欄に記載する。
【0022】
骨格部材160の断面の形状は、上下方向に細長い略長方形の形状である。例えば、骨格部材160の断面は「I型」とすることで糸の張力に対する強度向上と外観構成部材100の溝部101への嵌合容易性を両立できる。骨格部材160は、外観構成部材100のベース面102に対して、ほぼ垂直で嵌合されている。
【0023】
骨格部材160は、ベース部165と差込突出部166とを備えている。当該ベース部165は、外観構成部材100の中間部120における溝部101に嵌合させられる部分であり、当該差込突出部166は、外観構成部材100の差込部140における溝部101に嵌合させられる部分である。換言すれば、差込突出部166は、胴200の内部に差し込まれる部分である。
【0024】
骨格部材160における差込突出部166の前後方向の長さは、胴200の差込口201を貫通し、胴200の内部空間に至るのに必要な長さを有している。
【0025】
(第1係着部161)
骨格部材160の前端には、外観構成部材100の天神部110と係着(または嵌着)する第1係着部161が形成されている。この第1係着部161は、外観構成部材100の天神部110に係り止め可能な形状であり、互いに掛かり合って、係着位置を固定化できる形状である。また、外観構成部材100の天神部110の後端に、骨格部材160と係り止め可能な形状となるように、第1係着部161を逆転させた形状を備えている。
【0026】
図示された例では、骨格部材160の前端下方に段差(切り欠き部)が形成されている。この段差により、外観構成部材100の天神部110との係着位置を固定化させることが出来る。第1係着部161の形状には様々なバリエーションが存在する。
【0027】
(第1ストップ部163)
骨格部材160は、胴200の側面と当接する面に、第1ストップ部163を備えている。この第1ストップ部163の位置は、差込突出部166よりも上方である。
【0028】
第1ストップ部163は、胴200と棹10との嵌合を規制することが出来る。すなわち、棹10を胴200の差込口201に挿通させる際に、差し込む長さを制限することが出来る。
【0029】
(第2ストップ部164)
骨格部材160は、胴200の側面と当接する面に、第2ストップ部164を備えている。この第2ストップ部164の位置は、差込突出部166よりも下方である。
【0030】
第2ストップ部164は、胴200と棹10との嵌合を規制することが出来る。すなわち、棹10を胴200の差込口201に挿通させる際に、差し込む長さを制限することが出来る。
【0031】
[第1実施例の補足]
外観構成部材100の溝部101に、骨格部材160を嵌合させることで三味線の棹10を組み立てることが出来る。組み立てられた後において、外観構成部材100のベース面102と、骨格部材160の上面とが、同じ高さとなり、面一となることが好ましい。
【0032】
骨格部材160の差込突出部166が、胴200の差込口201を介して胴200の内部まで伸びていることで、棹10全体の強度を高めることが出来る。
【0033】
外観構成部材100と骨格部材160を固定化させる方法としては、ネジ止めで固定させてもよく、接着剤で固定させてもよい。
【0034】
[第1実施例の効果]
骨格部材160が外観構成部材100の差込部140まで延在していることで、棹全体の強度を高めており、棹を胴200に挿入して三味線を構成した後でも、糸の張力に耐えうる強固な三味線の棹を提供することが可能である。
【0035】
また、骨格部材160自体の経年劣化は起こりにくく、それにより棹全体の経年劣化による変形を防ぐことが出来る。
【0036】
さらに、骨格部材160が棹の強度を保つ為、外観構成部材100は比較的に柔らかい素材でもよく、外観構成部材100に種々の装飾を施すことも可能であり、デザインの自由度を高めることも可能である。
【0037】
[第1実施例の変形1]
図3図4は、第1実施例の変形1(三味線の棹10A)を示している。三味線の棹10Aは、外観構成部材100と骨格部材160と付設部材150とを備えている。
【0038】
[骨格部材160(2)]
図示するように、骨格部材160の差込突出部166は、外観構成部材100の差込部先141に相当する位置まで延在している。換言すれば、骨格部材160の差込突出部166は、外観構成部材100の差込部先141に相当する位置まで延在する長さを有している。つまり、骨格部材160の差込突出部166は、胴200の差込口201から突出口202を突き抜け、胴200の外部まで伸びている。
【0039】
また、骨格部材160の前端は、外観構成部材100の天神部110の先端部111に相当する位置まで延在している。骨格部材160と外観構成部材100とが嵌合した後に、天神部側の骨格部材160は、三味線の糸巻きを迂回した形状になっている。つまり、糸倉112空間が中空になるように、糸倉112近傍では骨格部材160は下方に屈曲し、糸巻きを迂回した後に、上方に屈曲する形状になっている。骨格部材160の天神部側の上下方向の長さを局所的に(ベース部165の上下方向の長さよりも)短くすることで、骨格部材160の軽量化に繋げることも出来る。
【0040】
[付設部材150]
付設部材150は薄板の形状であり、前後方向に長く延在し、付設部材150の上面にフラットなベース面151が形成されている。付設部材150前後方向の長さは、外観構成部材100における中間部120の前後方向の長さとほぼ等しく、付設部材150の左右方向の長さも、外観構成部材100における中間部120の左右方向の長さとほぼ等しい。
【0041】
付設部材150は、ギター等の弦楽器の用語では指板と呼ばれている部材であり、骨格部材160と同様の強度を有していてもよい。付設部材150の具体的な素材については、後述する[素材]欄に記載する。
【0042】
[第1実施例の変形1の補足]
図4で示すように、組立前において、三味線の棹10Aの天神部110は、外観構成部材100から分離している。この天神部110は一対になっており、各々の天神部110の後端側、外観構成部材100の前端側、および骨格部材160の前端側には、ネジ孔が形成されている。
【0043】
ネジ等の連結部材190とナット等の被連結部材195を用いて、一対の天神部110と外観構成部材100と骨格部材160は、螺着(固着)されている。
【0044】
[第1実施例の変形1の効果]
骨格部材160が胴200の内部まで延在していることで、三味線の棹10Aの差込部が胴200と接触して摩耗して細くなってゆく(棹が痩せてゆく)ことを防ぐことが出来る。さらに、三味線の棹10Bと胴200の皮面との角度(三味線用語ではハの高さ)を適切な状態に保持することも可能である。
【0045】
また、骨格部材160が金属等の強度のある素材であるので、加工により端部に変化を持たせることが出来る。骨格部材160の端部に加工を施した例として、骨格部材160の天神部側に、壁掛用フックや、ショルダーベルト取付部を設けることも出来る。
【0046】
骨格部材160が、先端部111から差込部先141まで延在することで、三味線の棹10A自体の強度をさらに高めることが出来る。勿論、骨格部材160が先端部111まで延在することで、天神部自体の破損を防止することも可能である。
【0047】
[第1実施例の変形2]
図5Aは、第1実施例の変形2(三味線の棹10B)を示している。三味線の棹10Bは、外観構成部材100と骨格部材160を備えている。
【0048】
[骨格部材160(3)]
三味線の棹10Bの差込突出部166は、外観構成部材100の差込部先141に相当する位置まで延在している。
【0049】
図示している三味線の棹10Bにおける第1係着部161の形状は、三味線の棹10における第1係着部161の形状とは異なり、骨格部材160の前端側の中央が凹んだ形状になっている。
【0050】
(第2係着部162)
骨格部材160の後端(差込突出部166の先端)に、棹10Bと胴200との嵌合を係着する第2係着部162が形成されている。図示された例では、差込突出部166の先端上方に段差(切り欠き部)が形成されている。この段差により、三味線の棹10Bと胴200との係着位置を固定化させることが出来る。
【0051】
つまり、第2係着部162は、突出口202近傍の胴200の内壁に当接することで、安定的に棹10Bと胴200が係着(嵌着)するようになる。第2係着部162の形状には様々なバリエーションが可能である。
【0052】
(貫通孔167)
図示している骨格部材160は、ベース部165において、上下2列に複数個の貫通孔167が形成されている。この貫通孔167は、ネジ孔であってもよい。上下2列の貫通孔167により、外観構成部材100と骨格部材160との取付位置を2段階で調整することも出来る。
【0053】
[第1実施例の変形2の効果]
第2係着部162が形成されていることで、三味線の棹10Bと胴200との係着状態が安定化する。
【0054】
また、外観構成部材100が樹脂や粘土等の柔らかい素材であれば、左右の外観構成部材100が、貫通孔167を通して結び付くことが出来る為、外観構成部材100と骨格部材160の組立後の状態を安定化させることが出来る。この貫通孔167が形成されていることで、骨格部材160の軽量化にも繋がる。
【0055】
[第1実施例の変形3]
図5Bは、第1実施例の変形3(三味線の棹10C)を示している。三味線の棹10Cは、外観構成部材100と骨格部材160を備えている。
【0056】
[骨格部材160(4)]
三味線の棹10Cの差込突出部166は、外観構成部材100の差込部先141に相当する位置まで延在している。
【0057】
図示している三味線の棹10Cにおける第1係着部161の形状は、三味線の棹10Bにおける第1係着部161の形状とは異なり、骨格部材160の前端側の中央が突出した形状である。
【0058】
(第2係着部162)
図示している三味線の棹10Cにおける第2係着部162の形状は、三味線の棹10Bにおける第2係着部162の形状とは異なり、段差(切り欠き部)が差込突出部166の先端部の下方に形成されている。
【0059】
(凹凸部168)
図示しているように、骨格部材160のベース部165において、骨格部材160の上端および下端に凹凸部168が形成されている。この凹凸部168はギザギザであってもよい。
【0060】
[第1実施例の変形3の効果]
外観構成部材100が樹脂等の場合に、凹凸部168に引っ掛けることで、外観構成部材100と骨格部材160との密着度が強まり、外観構成部材100と骨格部材160の係着状態を安定化させることが出来る。
【0061】
[第1実施例の変形4]
図6Aは、第1実施例の変形4(三味線の棹10D)を示している。三味線の棹10Dは、外観構成部材100と骨格部材160を備えている。図示しているように、外観構成部材100の下面に溝部101が形成されており、この溝部101に骨格部材160を嵌合させることが出来る。
【0062】
骨格部材160の下面と外観構成部材100の下面とで同一の曲面を形成してもよく、骨格部材160の下端が、外観構成部材100の下面より突出していてもよい。
【0063】
[第1実施例の変形4の効果]
溝部101が外観構成部材100の下面に形成されていることで、外観構成部材100と骨格部材160を組み合わせる上での自由度が高まる。
【0064】
また、骨格部材160の上下方向の長さを拡大化させて、骨格部材160の下端を外観構成部材100の下面より突出させることで、三味線の強度を高めることも出来る。
【0065】
[第1実施例の変形5]
図6B図6Cは、第1実施例の変形5(三味線の棹10E)を示している。三味線の棹10Eは、一対の外観構成部材100と骨格部材160を備えている。
【0066】
図示しているように、骨格部材160が、一対の外観構成部材100に挟まれて固着されている。骨格部材160の左側および右側から、一対の外観構成部材100に挟まれている。本発明における「固着」とは、接着剤等で固着された状態のみならず、圧力等によって固定化されている状態も含まれる。
【0067】
また、中間部120において、骨格部材160の上下方向の長さと、外観構成部材100の上下方向の長さがほぼ同じであり、組立後において、骨格部材160の上面と外観構成部材100の上面が、面一(同一の平面)となり、骨格部材160の下面と外観構成部材100の下面とで同一の曲面を形成する。
【0068】
[第1実施例の変形5の効果]
一対の外観構成部材100で骨格部材160を挟み込んで固着することで、外観構成部材100と骨格部材160を組み合わせる上での自由度が高まる。また、骨格部材160の下面と外観構成部材100の下面とで同一の曲面を形成することで、三味線の棹の美観を向上させることも出来る。
【0069】
[第1実施例の変形6]
図7A図7Bは、第1実施例の変形6(三味線の棹10F)を示している。三味線の棹10Fは、一対の外観構成部材100と骨格部材160を備えている。
【0070】
図示しているように、各々の外観構成部材100には溝部101が形成され、骨格部材160の上側および下側から、一対の外観構成部材100に挟まれて固着されている。
【0071】
上方の外観構成部材100の溝部101の深さと、下方の外観構成部材100の溝部101の深さを合わせると、骨格部材160の上下方向の長さとほぼ等しくなる。
【0072】
[第1実施例の変形6の効果]
三味線の棹10Fは、演奏者の手の大きさに合うように、下方の外観構成部材100を取り替えることが可能である。
【0073】
[第1実施例の変形7]
図7C図7Dは、第1実施例の変形7(三味線の棹10G)を示している。図示しているように、三味線の棹10Gは、上方に一対の略四角柱形状の外観構成部材100を備え、下方に略丸柱形状の外観構成部材100を備えている。
【0074】
中間部120において、骨格部材160には複数の貫通孔167(ネジ孔)が形成され、下方の外観構成部材100には複数の貫通孔103(ネジ孔)が形成されており、下方にある外観構成部材100と骨格部材160は、連結部材190と被連結部材195によって螺着されている。
【0075】
[第1実施例の変形7の効果]
三味線の棹10Gは、三味線の棹10Fと同様に、演奏者の手の大きさに合うように、下方の外観構成部材100を取り替えることが可能である。
【0076】
[第1実施例の変形8]
図8Aは、第1実施例の変形8(三味線の棹10H)を示している。三味線の棹10Hは、外観構成部材100と骨格部材160を備えている。
【0077】
図示しているように、骨格部材160に付設部材150を一体化させて形成しており、骨格部材160の断面はT字型であり、骨格部材160の上面にフラットな面が形成されている。
【0078】
[第1実施例の変形8の効果]
骨格部材160の断面がT字型となることで、骨格部材160自体の強度が高まり、骨格部材160と骨格部材160が組み合わさった後の棹全体の強度も向上する。
【0079】
[第1実施例の変形9]
図8Bは、第1実施例の変形9(三味線の棹10I)を示している。三味線の棹10Iは、外観構成部材100と骨格部材160を備えている。
【0080】
図示しているように、付設部材150に骨格部材160を一体化させて形成しており、骨格部材160の断面はコ字型であり、骨格部材160の上面にフラットな面が形成されている。なお、「コ」の形状における開口部は下側に向いている。
【0081】
[第1実施例の変形9の効果]
骨格部材160の断面がコ字型となることで、骨格部材160自体の強度が高まり、骨格部材160と骨格部材160が組み合わさった後の棹全体の強度も向上する。
【0082】
[第1実施例の変形10]
図8Cは、第1実施例の変形10(三味線の棹10J)を示している。三味線の棹10Jは、外観構成部材100と骨格部材160と付設部材150を備えている。
【0083】
図示しているように、骨格部材160は、その内部に中空を有するパイプ形状であり、骨格部材160の断面は略長方形となっている。
【0084】
[第1実施例の変形10の効果]
骨格部材160がパイプ形状となることで、骨格部材160自体の強度が高まり、骨格部材160と骨格部材160が組み合わさった後の棹全体の強度も向上する。また、骨格部材160の中空により、骨格部材160自体を軽量化させることも出来る。
【0085】
[第2実施例]
図9は、第2実施例(三味線の棹20)を示している。三味線の棹20は、外観構成部材100と付設部材150と骨格部材160と骨格部材170とキャップ部材145を備えている。すなわち、三味線の棹20は、2つの骨格部材(骨格部材160と骨格部材170)を備え、棹の後端側にキャップ部材145を備えている。
【0086】
外観構成部材100と骨格部材160と骨格部材170は、連結部材190と被連結部材195によって螺着することが出来る。
【0087】
[骨格部材170]
骨格部材170は、骨格部材160と連結(螺着)されて一本の骨格部材とすることが出来る。三味線の棹20の骨格部材170の前後方向の長さは、三味線の棹10における外観構成部材100の差込部140の長さとほぼ等しい。骨格部材160と骨格部材170の素材は、同じ素材でよく異なった素材でもよい。骨格部材170の具体的な素材については、後述する[素材]欄に記載する。
【0088】
骨格部材170の基端部171は、中空を有するパイプ形状になっており、骨格部材160の差込突出部166を差し込むことが出来る。また、骨格部材170の先端部172は先細形状であり、この先端部172に後述するキャップ部材145を取り付けることが出来る。
【0089】
[キャップ部材145]
キャップ部材145は、中空の略円柱形状であり、下方にスリット部が形成されている。このスリット部に、骨格部材170の先端部172を嵌合させることが出来る。キャップ部材145の先端に差込部先141が設けられている。キャップ部材145の具体的な素材については、後述する[素材]欄に記載する。
【0090】
[第2実施例の効果]
骨格部材170によって、胴200の内部における棹の強度を高めることが可能である。骨格部材170が、差込部先141まで延在することで、三味線の棹20自体の強度を高めることが出来る。
【0091】
胴200の外部に突出している為、差込部先141は比較的に破損しやすいものであるが、差込部先141が破損した場合でも、棹全体を交換する必要がなくなり、キャップ部材145のみを取り替えることで、補修費用を安価に抑えることが出来る。同様に、骨格部材170が破損した場合でも、棹全体を交換する必要がなくなり、骨格部材170のみを取り替えることで、補修費用を安価に抑えることが出来る。
【0092】
[第3実施例]
図10は、第3実施例(三味線の棹30)を示している。三味線の棹30は、外観構成部材100と骨格部材160とを備えている。外観構成部材100と骨格部材160は、連結部材190と被連結部材195によって螺着することが出来る。
【0093】
[骨格部材160(5)]
骨格部材160の前端側は、糸倉112まで延在しており、上下方向が中空である略長方形のブロックを形成している。
【0094】
(糸巻挿通孔169)
このブロックの側面に糸巻挿通孔169が形成されている。図示する例では、ブロックの両側面に、糸巻挿通孔169が3個ずつ形成されており、それぞれの糸巻挿通孔169に糸巻きを挿通することが出来る。
【0095】
[第3実施例の効果]
骨格部材160が糸倉112まで延在することで、糸倉112の破損を防ぐことが出来る。また、糸巻挿通孔169に糸巻きを挿通することが出来る為、糸巻きの挿通状態を安定化させることが出来る。
【0096】
[第3実施例の変形1]
図11は、第3実施例の変形1(三味線の棹30A)を示している。三味線の棹30Aは、外観構成部材100と骨格部材160と骨格部材180とを備えている。外観構成部材100と骨格部材160と骨格部材180は、連結部材190と被連結部材195によって螺着することが出来る。
【0097】
[骨格部材180]
骨格部材180は、外観構成部材100の天神部110側の端部を間に挟んで骨格部材160と連結(螺着)されて一本の骨格部材とすることが出来る。骨格部材180の前後方向の長さは、外観構成部材100の天神部110の長さとほぼ等しい。骨格部材160と骨格部材180の素材は、同じ素材でよく異なった素材でもよい。骨格部材180の具体的な素材については、後述する[素材]欄に記載する。
【0098】
骨格部材180は、薄板から出来ており、上方から見ると「コ」の形状となっている。骨格部材180の両側面に、糸巻挿通孔169が3個ずつ形成されており、それぞれの糸巻挿通孔169に糸巻きを挿通することが出来る。図示していないが、骨格部材180の上部または下部に天神部を保護する部材を設けてもよい。
【0099】
[第3実施例の変形1の効果]
三味線の棹30Aの天神部は、糸倉112空間に加えて、天神部の後端側も、中空空間となっており、この中空空間にデザイン性のある部材(例えば発光部を有する部材)を嵌め込んでもよい。そうすることで、三味線の棹の意匠性を高めることが可能である。勿論、骨格部材180が先端部111まで延在することで、天神部自体の破損を防止することも可能である。
【0100】
[全実施例に対する補足]
本発明の好ましい実施例について説明をしたが、本実施の形態は、本発明に係る三味線の棹(および三味線)の一形態に過ぎない故に、本発明の要旨を変更しない範囲で変更を加えることは可能である。
【0101】
なお、図面は、三味線の棹(および三味線)の構成部材等を模式的に表したものであり、これらの実物の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。
【0102】
本発明において掲載されている図面は、主に組立前の状態を示しており、組立後の状態を示す図面を基本的に省略しているが、当然ながら、本発明の三味線の棹は、組立後の三味線の棹を想定している。図6C図7B図7Dは、組立後の中間部120を示す図面である。
【0103】
[素材]
外観構成部材100の素材は、紅木や紫檀よりも柔らかい木材、プラスチック、合成樹脂、セラミック、粘土、陶器、ゴム、合成繊維、繊維強化プラスチック(FRP)、合金などの多用な素材を用いることが可能である。外観構成部材100の素材は、樹脂等の柔らかい素材でもよく、三味線の棹自体に装飾しやすい素材を選ぶことも可能である。
【0104】
骨格部材160、骨格部材170、および骨格部材180の素材は、鋼鉄、ステンレス、チタン、アルミ、マグネシウム合金、リン青銅などの多用な素材を用いることが可能であり、強度のある素材が好ましい。
【0105】
付設部材150の素材は、鋼鉄、ステンレス、チタン、アルミ、リン青銅、木材、プラスチック、合成樹脂、などの多用な素材を用いることが可能である。
【0106】
キャップ部材145の素材は、木材、プラスチック、合成樹脂、セラミック、粘土、陶器、ゴム、合成繊維、合金などの多用な素材を用いることが可能である。
【符号の説明】
【0107】
10、20、30 棹
100 外観構成部材
101 溝部
102 ベース面
103 貫通孔
110 天神部
111 先端部
112 糸倉
113 乳袋
120 中間部
140 差込部
141 差込部先
142 胴接合部
145 キャップ部材
150 付設板
151 ベース面
160 骨格部材
161 第1係着部
162 第2係着部
163 第1ストップ部
164 第2ストップ部
165 ベース部
166 差込突出部
167 貫通孔
168 凹凸部
169 糸巻挿通孔
170 骨格部材
180 骨格部材
190 連結部材
195 被連結部材
200 胴
201 差込口
202 突出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6