(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079855
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】正極活物質およびフッ化物イオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20230601BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20230601BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M10/054
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193528
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】井手 一人
(72)【発明者】
【氏名】三木 秀教
(72)【発明者】
【氏名】折笠 有基
(72)【発明者】
【氏名】大橋 亮悟
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AK04
5H029AL02
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL11
5H029AL16
5H029AM02
5H029AM07
5H029AM14
5H029HJ02
5H029HJ13
5H050AA08
5H050BA05
5H050BA15
5H050CA10
5H050CB02
5H050CB04
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB20
5H050HA02
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】本開示は、反応電子数が多く、高容量な正極活物質を提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示においては、フッ化物イオン電池に用いられる正極活物質であって、A
2B
2OS
2F
2(Aは、Mg、Ca、SrおよびBaの少なくとも一種であり、Bは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの少なくとも一種である)で表される結晶相を有する、正極活物質を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物イオン電池に用いられる正極活物質であって、
A2B2OS2F2(Aは、Mg、Ca、SrおよびBaの少なくとも一種であり、Bは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの少なくとも一種である)で表される結晶相を有する、正極活物質。
【請求項2】
フッ化物イオン電池に用いられる正極活物質であって、
A元素(Aは、Mg、Ca、SrおよびBaの少なくとも一種である)と、B元素(Bは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの少なくとも一種である)と、S元素と、O元素と、F元素と、を含有する結晶相を備え、
前記結晶相は、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=26.6°±1.0°、2θ=33.3°±1.0°、2θ=37.3°±1.0°および2θ=44.9°±1.0°の位置にピークを有する、正極活物質。
【請求項3】
正極活物質層と、負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するフッ化物イオン電池であって、
前記正極活物質層が、請求項1または請求項2に記載の正極活物質を含有する、フッ化物イオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極活物質およびフッ化物イオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧かつ高エネルギー密度な電池として、例えばLiイオン電池が知られている。Liイオン電池は、Liイオンと正極活物質との反応、および、Liイオンと負極活物質との反応を利用したカチオンベースの電池である。一方、アニオンベースの電池として、フッ化物イオン(フッ化物アニオン)の反応を利用したフッ化物イオン電池が知られている。
【0003】
フッ化物イオン電池の正極活物質として、酸化物系材料や硫化物系材料が知られている。例えば、特許文献1には、層状ペロブスカイト構造を有し、かつ、An+1BnO3n+1-αFx(Aはアルカリ土類金属元素および希土類元素の少なくとも一方から構成され、Bは遷移金属元素から構成され、nは1または2であり、αは0≦α≦2を満たし、xは0≦x≦2.2を満たす)で表される結晶相を有する遷移金属酸化物がフッ化物イオン電池の正極活物質に用いられることが開示されている。また、特許文献2には、遷移金属硫化物CuSxがフッ化物イオン電池の正極活物質として機能することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-143044号公報
【特許文献2】特開2018-186067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1の実施例1では、フッ化物イオン電池の正極活物質として、遷移金属酸化物La1.2Sr1.8Mn2O7F2を用いている。このような遷移金属酸化物材料では、遷移金属元素または酸素原子の酸化還元反応による充放電反応(フッ素化/脱フッ素化)が生じていることが知られている。また、特許文献2に記載されているCu2S等の硫化物系材料においても、硫黄の酸化還元反応によるものと推定される充放電反応が報告されている。このように、フッ化物イオン電池の活物質として、酸素や硫黄等のアニオンの酸化還元反応を利用した活物質が用いられている。
【0006】
従来の正極活物質材料では、反応電子数が1~3電子程度と少なく、容量が低くなる場合がある。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、反応電子数が多く、高容量な正極活物質を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示においては、フッ化物イオン電池に用いられる正極活物質であって、A2B2OS2F2(Aは、Mg、Ca、SrおよびBaの少なくとも一種であり、Bは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの少なくとも一種である)で表される結晶相を有する、正極活物質を提供する。
【0008】
本開示によれば、特定の組成を有する結晶相を備えるため、反応電子数が多く、高容量な正極活物質とすることができる。
【0009】
また、本開示においては、フッ化物イオン電池に用いられる正極活物質であって、A元素(Aは、Mg、Ca、SrおよびBaの少なくとも一種である)と、B元素(Bは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの少なくとも一種である)と、S元素と、O元素と、F元素と、を含有する結晶相を備え、上記結晶相は、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=26.6°±1.0°、2θ=33.3°±1.0°、2θ=37.3°±1.0°および2θ=44.9°±1.0°の位置にピークを有する、正極活物質を提供する。
【0010】
本開示によれば、特定の元素を含み、かつ、所定の位置にXRDピークを有する結晶相を備えるため、反応電子数が多く、高容量な正極活物質とすることができる。
【0011】
本開示においては、正極活物質層と、負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するフッ化物イオン電池であって、上記正極活物質層が、上述した正極活物質を含有する、フッ化物イオン電池を提供する。
【0012】
本開示によれば、上述した正極活物質を用いることで、高容量なフッ化物イオン電池とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示においては、反応電子数が多く、高容量な正極活物質を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示におけるフッ化物イオン電池の一例を示す概略断面図である。
【
図3】実施例の充放電試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示における正極活物質およびフッ化物イオン電池について、詳細に説明する。
【0016】
A.正極活物質
正極活物質は、フッ化物イオン電池の充電時にフッ素化され、放電時に脱フッ素化される。本開示における正極活物質は、A元素(Aは、Mg、Ca、SrおよびBaの少なくとも一種である)と、B元素(Bは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの少なくとも一種である)と、S元素と、O元素と、F元素と、を含有する結晶相を備える。上記結晶相は、A2B2OS2F2(AおよびBは上記と同様である)で表されることが好ましい。また、上記結晶相は、CuKα線を用いたX線回折測定において、所定の位置にピークを有することが好ましい。
【0017】
本開示によれば、所定の結晶相を有する正極活物質が、反応電子数が多く、高容量であることを新たに知見した。また、充放電効率(クーロン効率)が高い正極活物質となることを知見した。
【0018】
上述したように、従来フッ化物イオン電池の正極活物質として知られている遷移金属酸化物系の材料は容量が低い場合がある。これは、遷移金属元素または酸素元素の酸化還元反応(例えば、O2-⇔O-)による充放電反応であり、反応電子数が少ないためと推察される。また、Cu2S等の硫化物系材料は、構成元素である硫黄が幅広い価数を取り得るものの、SおよびF以外の構成元素がイオン半径の小さいCuのみであり、かつ、硫黄の酸化に伴うF-の挿入が可能なスペースに乏しい結晶構造であるため、反応電子数が小さいと推察される。
【0019】
これに対し、本開示における正極活物質は、特定の結晶相を有することにより、反応電子数が多く、高容量な正極活物質となる。これは、正極活物質が、反応に関与するS元素、B元素およびF元素以外の構成元素として、A元素およびO元素を含むことにより、結晶の骨格構造が安定化し、硫黄の価数変化を大きく利用した酸化還元反応が生じるためと推察される。
【0020】
本開示における活物質が備える結晶相は、A2B2OS2F2(Aは、Mg、Ca、SrおよびBaの少なくとも一種であり、Bは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの少なくとも一種である)で表されることが好ましい。
【0021】
Aは、Mg、Ca、SrおよびBaの少なくとも一種であり、二種以上であってもよい。本開示における結晶相は、A元素およびO元素を含むことにより、結晶の骨格構造が安定化すると推察される。また、Bは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの少なくとも一種であり、二種類以上であってもよい。本開示における結晶相は、B元素を含むことにより、S元素とともに反応に関与し、高容量が得られると推察される。
【0022】
また、上記結晶相は、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=26.6°±1.0°、2θ=33.3°±1.0°、2θ=37.3°±1.0°および2θ=44.9°±1.0°の位置にピークを有することが好ましい。また、上記のピーク以外に、2θ=29.8°±1.0°、2θ=32.9°±1.0°および2θ=51.7°±1.0°の位置にピークを有していてもよい。これらのピーク位置は、それぞれ、±0.5°の範囲で前後していてもよく、±0.3°の範囲で前後していてもよい。
【0023】
また、上記結晶相は、空間群I4/mmmの結晶構造を有することが好ましい。
【0024】
本開示における正極活物質は、上述した本開示における結晶相のみを備える単相材料であってもよく、本開示における結晶相および他の結晶相を備える複相材料であってもよい。後者の場合、本開示における結晶相を主相として備えることが好ましい。「主相」とは、XRDチャートにおいて、最も強度が大きいピークが属する結晶相をいう。活物質が、本開示における結晶相を主相として備える場合、全ての結晶相に対する本開示における結晶相の割合は、例えば50重量%以上であり、70重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよく、99重量%以上であってもよい。
【0025】
正極活物質の形状は、特に限定されないが、例えば粒子状が挙げられる。また、活物質の平均粒径(D50)は、例えば50nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、活物質の平均粒径(D50)は、例えば100μm以下であり、30μm以下であってもよい。平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折式粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定から算出できる。また、本開示における正極活物質は、通常フッ化物イオン電池に用いられる。フッ化物イオン電池については後述する。
【0026】
本開示における正極活物質を製造する方法は、目的とする正極活物質が得ることができる方法であれば特に限定されない。例えば、固相反応法を挙げることができる。固相反応法では、A元素、B元素、O元素、S元素およびF元素を含有する原料組成物に対して、熱処理を行うことで、固相反応を生じさせ、正極活物質を合成する。
【0027】
B.フッ化物イオン電池
図1は本開示におけるフッ化物イオン電池の一例を示す概略断面図である。
図1に示されるフッ化物イオン電池10は、正極活物質を含有する正極活物質層1と、負極活物質を含有する負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に形成された電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5と、これらの部材を収納する電池ケース6とを有する。本開示においては、上記正極活物質が、上述した正極活物質である。
【0028】
本開示によれば、上述した正極活物質を用いることで、容量が良好なフッ化物イオン電池となる。
【0029】
1.正極活物質層
本開示における正極活物質層は、上述した本開示における正極活物質を含有する層である。また正極活物質層は、必要に応じて、電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。
【0030】
導電材としては、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブが挙げられる。一方、バインダーとしては、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダーが挙げられる。電解質については、後述の「3.電解質層」に記載する内容と同様である。
【0031】
正極活物質層における正極活物質の含有量は特に限定されないが、容量の観点からは多いことが好ましい。正極活物質の含有量は、例えば30重量%以上であり、50重量%以上であってもよく、70重量%以上であってもよい。また、正極活物質層の厚さは特に限定されず、電池の構成によって適宜調整することができる。
【0032】
2.負極活物質層
本開示における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。また負極活物質層は、必要に応じて、電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。
【0033】
負極活物質は、通常、放電時にフッ化する活物質である。また、負極活物質には、正極活物質よりも低い電位を有する任意の活物質が選択され得る。そのため、上述した正極活物質を負極活物質として用いても良い。負極活物質としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物、および、これらのフッ化物を挙げることができる。負極活物質に含まれる金属元素としては、例えば、La、Ca、Al、Eu、Li、Si、Ge、Sn、In、V、Cd、Cr、Fe、Zn、Ga、Ti、Nb、Mn、Yb、Zr、Sm、Ce、Mg、Pb等を挙げることができる。中でも、負極活物質は、Mg、MgFx、Al、AlFx、Ce、CeFx、Ca、CaFx、Pb、PbFxであることが好ましい。なお、上記xは、0よりも大きい実数である。また、負極活物質として、炭素材料およびポリマー材料を用いることもできる。
【0034】
電解質、導電材およびバインダーについては、上記「1.正極活物質層」に記載に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。負極活物質層における負極活物質の含有量は特に限定されないが、容量の観点からはより多いことが好ましい。負極活物質の含有量は、例えば30重量%以上であり、50重量%以上であってもよく、70重量%以上であってもよい。また、負極活物質層の厚さは特に限定されず、電池の構成によって適宜調整することができる。
【0035】
3.電解質層
本開示における電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層であり、電解質を少なくとも含有する。また、電解質層は、必要に応じて、さらにバインダーを含有していてもよい。バインダーの種類については、上記「1.正極活物質層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。電解質は、液体電解質(電解液)であってもよく、固体電解質であってもよい。
【0036】
上記電解液としては、例えば、フッ化物塩および有機溶媒を含有する電解液が挙げられる。フッ化物塩としては、例えば、無機フッ化物塩、有機フッ化物塩、イオン液体が挙げられる。無機フッ化物塩の一例としては、例えば、XF(Xは、Li、Na、K、RbまたはCsである)が挙げられる。有機フッ化物塩のカチオンの一例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン等のアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。電解液におけるフッ化物塩の濃度は、例えば0.1mol%以上40mol%以下であり、1mol%以上10mol%以下であってもよい。
【0037】
電解液の有機溶媒は、通常、フッ化物塩を溶解する溶媒である。有機溶媒としては、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル(G3)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(G4)等のグライム;エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートが挙げられる。また、有機溶媒として、イオン液体を用いてもよい。
【0038】
上記固体電解質としては、例えば、無機固体電解質が挙げられる。無機固体電解質としては、例えば、La、Ce等のランタノイド元素を含むフッ化物、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ元素を含むフッ化物、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類元素を含むフッ化物が挙げられる。具体的には、LaおよびBaを含むフッ化物(例えば、La0.9Ba0.1F2.9)、PbおよびSnを含むフッ化物が挙げられる。電解質層の厚さは特に限定されず、電池の構成によって適宜調整することができる。
【0039】
4.その他の構成
本開示におけるフッ化物イオン電池は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、負極活物質層の集電を行う負極集電体、および上述した部材を収容する電池ケースを有することが好ましい。集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状が挙げられる。また、フッ化物イオン電池は、正極活物質層および負極活物質層の間に、セパレータを有していてもよい。より安全性の高い電池を得ることができるからである。電池ケースとしては、従来公知の電池ケースを用いることができる。
【0040】
5.フッ化物イオン電池
本開示におけるフッ化物イオン電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよいが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。なお、二次電池には、一次電池的使用(充電後、一度の放電だけを目的とした使用)も含まれる。また、フッ化物イオンの形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、角型が挙げられる。
【0041】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【0042】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0043】
[実施例]
(活物質の合成)
Ar雰囲気下で、原料としてSrF2とSrOとFeとSとを、SrF2:SrO:Fe:S=1:1:2:2(mol比)となるように秤量し、乳鉢上で15分混合した。その後、6Mpaで1分間一軸加圧成型することで、直径10mmのペレット状に成型した。成型後の圧粉体ペレットを石英ガラス管に真空封入した。このガラス管を800℃で36時間焼成することで、活物質(Sr2Fe2OS2F2)を合成した。
【0044】
(XRD測定)
実施例で得られた活物質に対して、CuKα線を用いた粉末X線回折(XRD)測定を行った。
図2に結果を示す。2θ=26.6°、33.3°、37.3°および°44.9°に特徴的なピークが確認され、単相のSr
2Fe
2OS
2F
2が得られたことが確認された。
【0045】
(電池の作製)
得られた活物質を正極活物質として、電池(全固体フッ化物イオン電池)を以下のようにして作製した。上記活物質と、固体電解質(La0.9Ba0.1F2.9、フッ化物イオン伝導性材料)と、導電材(VGCF、電子伝導性材料)とを、30:60:10の重量比で秤量し、100rpmで10時間遊星ボールミルを用いて混合し、正極合材を得た。また、PbF2およびカーボンを同様に混合し、負極合材を得た。得られた正極合材を用いた層、La0.9Ba0.1F2.9を用いた固体電解質層、負極合材を用いた層を積層し、4MPaの圧力で一軸加圧成型することで、評価用セルを作製した。
【0046】
[評価]
(充放電試験)
実施例で得られた評価用セルをSUS製の容器に密閉し、140℃に加熱し、充放電試験を実施した。充放電試験の条件は、-1.5V~2.0V(vs.Pb/PbF
2)、10mA/g(30μA)の定電流充放電とした。実施例の充放電試験結果を
図3に示す。また、初回放電容量、反応電子数の結果を表1に示す。
【0047】
図3および表1に示すように、実施例の電池においては、充電容量および放電容量ともに高容量が得られることが確認され、良好なクーロン効率が得られることも確認された。また、初回放電容量は363mAh/gであり、この容量は、5.4電子反応に相当する。実施例の電池においては、遷移金属(Fe2価⇔Fe3価)の酸化還元反応だけではなく、-2価から+6価までを取り得る硫黄による4電子以上の酸化還元反応が生じていると推察される。
【0048】
[比較例1]
特開2017-143044号公報に記載の活物質(La1.2Sr1.8Mn2O7F2)を正極活物質として用いた以外は、実施例と同様にして評価用セルを作製し、充放電試験を行った。初回放電容量、反応電子数の結果を表1に示す。
【0049】
[比較例2]
特開2018-186067号公報に記載の活物質(Cu2S)を正極活物質として用いた以外は、実施例と同様にして評価用セルを作製し、充放電試験を行った。初回放電容量、反応電子数の結果を表1に示す。
【0050】
【0051】
表1に示すように、比較例1は放電容量が小さかった。これは、遷移金属元素または酸素元素の酸化還元反応(O2-⇔O-)による充放電反応のため、反応電子数が少ないためと推察される。また、比較例2のCu2Sは反応電子数が少ないことが確認された。これは、Cuのイオン変形が小さく、F-の挿入が可能なスペースに乏しい結晶構造であるためと推察される。また、比較例2のCu2Sは、充放電効率(クーロン効率)が低いことが確認された。