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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079859
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】水晶振動素子および水晶振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/09 20060101AFI20230601BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20230601BHJP
   H03H 9/10 20060101ALI20230601BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H03H9/09
H03H9/02 A
H03H9/10
H03H9/19 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193535
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】古城 有果
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE14
5J108FF06
5J108GG03
5J108GG07
5J108GG14
5J108GG16
5J108GG17
5J108KK02
5J108KK03
5J108KK04
(57)【要約】
【課題】振動特性の変動を抑制することが可能であり、小型化を図ることが可能な水晶振動素子および水晶振動デバイスを提供する。
【解決手段】振動部11と、振動部11の外周と所定の間隔を隔てて設けられた枠体部12と、所定の幅および厚さを有する金属膜からなる連結部13,14とを備え、連結部13,14を介して、振動部11の第1、第2励振電極111,112と枠体部12の電極121,122とが電気的に接続されるとともに、連結部13,14によって、振動部11が枠体部12に保持されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部と、
前記振動部の外周と所定の間隔を隔てて設けられた枠体部と、
所定の幅および厚さを有する金属膜からなる連結部とを備え、
前記連結部を介して、前記振動部の電極と前記枠体部の電極とが電気的に接続されるとともに、前記連結部によって、前記振動部が前記枠体部に保持されていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項2】
請求項1に記載の水晶振動素子において、
前記枠体部は、少なくとも3辺構成になっていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水晶振動素子において、
前記振動部は、平面視矩形であり、前記連結部は、前記振動部の少なくとも一対の対向辺に形成されていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項4】
請求項1に記載の水晶振動素子において、
前記振動部は、平面視矩形であり、前記連結部は、前記振動部の各辺に少なくとも1つ形成されていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記振動部の1つの辺に対して複数の前記連結部が形成され、各連結部の幅および/または厚さが異なっていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項6】
請求項2~4のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記振動部の1つの辺に対して3つ以上の前記連結部が形成され、平面視で中央側の前記連結部の幅および/または厚さよりも、外側の前記連結部の幅および/または厚さの方が大きいことを特徴とする水晶振動素子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記連結部は、少なくともAu膜を含むことを特徴とする水晶振動素子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記連結部における、前記振動部との接続部分、および前記枠体部との接続部分は、Cr膜またはTi膜に、Au膜が積層された構成になっていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記枠体部は、平面視矩形であり、
前記連結部が前記枠体部の内周の角部の対角となる位置に接続されることにより、前記振動部が保持されていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記振動部は、平面視矩形であり、前記振動部の一方の主面には、長辺側のみに前記連結部が形成され、前記振動部の他方の主面には、短辺側のみに前記連結部が形成されていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記連結部に緩衝部が設けられていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記連結部が、前記枠体部の側壁および/または前記振動部の側壁にも設けられていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記振動部は、平面視矩形であり、前記連結部は、前記枠体部の内周部および前記振動部の外周部のそれぞれに金属膜が全周にわたって形成された構成になっており、
前記連結部によって前記枠体部と前記振動部とが架橋されていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記枠体部および前記振動部の両方には、幅広の金属膜が架橋され、当該金属膜に複数の開口部が設けられることにより前記連結部が形成されていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載の水晶振動素子において、
前記枠体部の前記振動部側に、前記振動部と略同一の厚みからなり前記枠体部よりも薄肉の薄肉部が設けられていることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載の水晶振動素子が、上側封止部材と下側封止部材とによって、気密封止されていることを特徴とする水晶振動デバイス。
【請求項17】
請求項16に記載の水晶振動デバイスにおいて、
前記上側封止部材および前記下側封止部材には、前記水晶振動素子側に凹部がそれぞれ形成され、前記振動部がそれぞれの凹部の底面に対向していることを特徴とする水晶振動デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載の水晶振動デバイスにおいて、
前記各凹部の底面には、前記振動部に対向する位置に凸部が形成されていることを特徴とする水晶振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動素子および水晶振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動デバイスでは、水晶振動素子の振動領域が、導電性接着剤を介して、あるいは、水晶振動素子に設けられた水晶の連結部を介して、パッケージに電気機械的に接続されている(例えば、特許文献1参照)。このような構成では、パッケージに外力が作用すると、振動領域に応力が伝わりやすく振動特性が変動しやすいといった問題がある。
【0003】
そこで、振動領域(振動部)を複数のワイヤを用いて枠体部に保持させた水晶振動素子が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。この構成では、外部からの振動や衝撃が直接、振動部に伝わることを防ぐことが可能であり、振動特性の急激な変動を抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-252051号公報
【特許文献2】特開2012-4625号公報
【特許文献3】特開2019-47373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したワイヤ用いた構成では、複数のワイヤ架橋による応力の影響(互いに引っ張り合う)を受け、振動特性が変動する可能性がある。また、ワイヤ接続用パッドの形成領域を確保する必要があるため、小型化が困難になることが懸念される。
【0006】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、振動特性の変動を抑制することが可能であり、しかも、小型化を図ることが可能な水晶振動素子および水晶振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、水晶振動素子であって、振動部と、前記振動部の外周と所定の間隔を隔てて設けられた枠体部と、所定の幅および厚さを有する金属膜からなる連結部とを備え、前記連結部を介して、前記振動部の電極と前記枠体部の電極とが電気的に接続されるとともに、前記連結部によって、前記振動部が前記枠体部に保持されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、振動部と枠体部との間に空間が形成され、振動部が枠体部から分離されるので、振動部に作用する熱や、外力等による環境応力を低減することができ、振動特性の変動を抑制することができる。また、複数のワイヤを用いて振動部を支持する構成に比べて、ワイヤ同士が互いに引っ張り合うことによる応力の影響を振動部が受けないため、振動特性の変動を抑制することができる。さらに、振動部および枠体部にワイヤ接続用パッドの形成領域を確保することが不要になるため、小型化を図ることができる。
【0009】
上記構成において、前記枠体部は、少なくとも3辺構成になっていることが好ましい。この構成によれば、枠体部の少なくとも3辺によって振動部を保持することで、連結部による振動部の保持の安定性を確保することができる。
【0010】
上記構成において、前記振動部は、平面視矩形であり、前記連結部は、前記振動部の少なくとも一対の対向辺に形成されていることが好ましい。この構成によれば、枠体部に対し、振動部が傾いたり、回転する動作が生じにくくなり、連結部による振動部の保持の安定性を高めることができる。
【0011】
上記構成において、前記振動部は、平面視矩形であり、前記連結部は、前記振動部の各辺に少なくとも1つ形成されていることが好ましい。この構成によれば、連結部による振動部の保持の安定化を図ることができる。
【0012】
上記構成において、前記振動部の1つの辺に対して複数の前記連結部が形成され、各連結部の幅および/または厚さが異なっていることが好ましい。この構成によれば、外側の連結部の幅、厚さが大きく、内側の連結部の幅、厚さが小さい場合、内側の連結部に作用する応力を逃がしやすく、振動部の耐衝撃性が向上するので、連結部が破断することを抑制することができる。
【0013】
上記構成において、前記振動部の1つの辺に対して3つ以上の前記連結部が形成され、平面視で中央側の前記連結部の幅および/または厚さよりも、外側の前記連結部の幅および/または厚さの方が大きいことが好ましい。この構成によれば、外側の連結部の幅、厚さが大きく、内側の連結部の幅、厚さが小さいので、内側の連結部に作用する応力を逃がしやすく、振動部の耐衝撃性が向上するため、連結部の破断を抑制することができる。
【0014】
上記構成において、前記連結部は、少なくともAu膜を含むことが好ましい。この構成によれば、Auの延性および展性により、連結部による振動部の保持強度が低下しにくくなり、連結部の環境変化や経年変化を抑制することができる。
【0015】
上記構成において、前記連結部における、前記振動部との接続部分、および前記枠体部との接続部分は、Cr膜またはTi膜に、Au膜が積層された構成になっていることが好ましい。この構成によれば、CrまたはTiは水晶との密着性が良好なため、連結部と振動部との接合強度、および連結部と枠体部との接合強度を向上させることができる。
【0016】
上記構成において、前記枠体部は、平面視矩形であり、前記連結部が前記枠体部の内周の角部の対角となる位置に接続されることにより、前記振動部が保持されていることが好ましい。この構成によれば、振動部の中心に対する回転モーメントの大きい部位である枠体部の内周の角部が連結部によって保持されるので、振動部の回転する動作が抑制される。これにより、連結部による振動部の保持の安定性を向上させることができる。
【0017】
上記構成において、前記振動部は、平面視矩形であり、前記振動部の一方の主面には、長辺側のみに前記連結部が形成され、前記振動部の他方の主面には、短辺側のみに前記連結部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、一方の主面には、振動部の短辺側に連結部が形成されず、また、他方の主面には、振動部の長辺側に連結部が形成されないので、ウェットエッチングによって振動部の外形加工を行う際、そのエッチング加工を精度よく行うことができる。
【0018】
上記構成において、前記連結部に緩衝部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、連結部が弾性的に伸縮可能になっており、振動部の耐衝撃性を向上させることができる。
【0019】
上記構成において、前記連結部が、前記枠体部の側壁および/または前記振動部の側壁にも設けられていることが好ましい。この構成によれば、連結部と、枠体部および/または振動部との接合強度を向上させることができ、外部衝撃が加わった場合でも、連結部の破断を抑制することができる。
【0020】
上記構成において、前記振動部は、平面視矩形であり、前記連結部は、前記枠体部の内周部および前記振動部の外周部のそれぞれに金属膜が全周にわたって形成された構成になっており、前記連結部によって前記枠体部と前記振動部とが架橋されていることが好ましい。この構成によれば、外部衝撃が加わった際、連結部の一部が断線した場合であっても、略全周にわたって形成された金属膜により電気的接続を確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0021】
上記構成において、前記枠体部および前記振動部の両方には、幅広の金属膜が架橋され、当該金属膜に複数の開口部が設けられることにより前記連結部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、複数の開口部が設けられた連結部によって連結部に作用する応力を緩和することができる。
【0022】
上記構成において、前記枠体部の前記振動部側に、前記振動部と略同一の厚みからなり前記枠体部よりも薄肉の薄肉部が設けられていることが好ましい。この構成によれば、薄肉部と振動部との高低差がなくなり、連結部に不要なテンションが作用しにくくなることから、安定した電気的接続を確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0023】
また、本発明は、水晶振動デバイスであって、上記構成の水晶振動素子が、上側封止部材と下側封止部材とによって、気密封止されていることを特徴とする。この構成によれば、上記構成の水晶振動素子を備えた水晶振動デバイスにおいても、上記構成の水晶振動素子と同様の効果が得られる。
【0024】
上記構成において、前記上側封止部材および前記下側封止部材には、前記水晶振動素子側に凹部がそれぞれ形成され、前記振動部がそれぞれの凹部の底面に対向していることが好ましい。この構成によれば、振動部の可動領域を確保することができ、振動部が外部衝撃等により微小に動いた場合であっても上側封止部材や下側封止部材に接触することを抑制できる。
【0025】
上記構成において、前記各凹部の底面には、前記振動部に対向する位置に凸部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、外部衝撃等によって振動部の励振電極が形成された領域に対しては各凹部によって可動領域を確保しつつ、各凹部の底面に振動部の励振電極が形成されていない領域に対向する位置に凸部を設けることによって、振動部の鉛直方向の変位量を抑制することができる。その結果、連結部の破断を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、振動特性の変動を抑制することができ、しかも、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態にかかる水晶振動子の概略構成を示す分解斜視図である。
図2図1の水晶振動子の水晶振動板の第2主面側を示す斜視図である。
図3図1のA1-A1線断面図である。
図4】変形例1にかかる水晶振動板の第1主面側を示す斜視図である。
図5図4の水晶振動板の第2主面側を示す斜視図である。
図6】変形例2にかかる水晶振動板の第1主面側を示す平面図である。
図7】変形例3にかかる水晶振動板の第1主面側を示す平面図である。
図8】変形例4にかかる水晶振動板の連結部を示す断面図である。
図9】変形例5にかかる水晶振動板の連結部を示す断面図である。
図10】変形例6にかかる水晶振動板の第1主面側を示す平面図である。
図11】変形例7にかかる水晶振動板の第1主面側を示す平面図である。
図12】変形例8にかかる水晶振動板の第1主面側を示す平面図である。
図13】変形例9にかかる水晶振動板の第1主面側を示す平面図である。
図14】変形例10にかかる水晶振動板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を適用する水晶振動デバイスが水晶振動子である場合について説明する。
【0029】
まず、本実施形態にかかる水晶振動子100の基本的な構造について説明する。水晶振動子100は、図1図3に示すように、水晶振動板(水晶振動素子)10と、水晶からなる上側封止部材20および下側封止部材30とを備えて構成されている。水晶振動子100では、水晶振動板10と上側封止部材20とがシール部115によって接合され、水晶振動板10と下側封止部材30とがシール部116によって接合されることにより、略直方体の三枚重ね構造のパッケージが構成される。水晶振動板10の両主面のそれぞれに上側封止部材20および下側封止部材30が接合されることによってパッケージの内部空間(キャビティ)110が形成され、この内部空間110に水晶振動板10の振動部(振動領域)11が気密封止されている。詳細には、上側封止部材20の水晶振動板10に対向する面に形成された凹部21と、下側封止部材30の水晶振動板10に対向する面に形成された凹部31とによって、水晶振動板10の振動部11を収容可能な内部空間110が形成されている。凹部21,31の底面には、凸部22,32が形成されている。なお、水晶振動子100は、外部に設けられる外部回路基板(実装基板)に、例えば半田等を用いて搭載可能になっている。
【0030】
本実施形態にかかる水晶振動板(水晶振動素子)10は、図1図2に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101、第2主面102)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。本実施形態では、水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。本実施形態の水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がX軸方向とされている。なお、ATカットは、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)、および光学軸(Z軸)のうち、Z軸に対してX軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ATカット水晶板では、X軸は水晶の結晶軸に一致する。Y´軸およびZ´軸は、水晶の結晶軸のY軸およびZ軸からそれぞれ概ね35°15′傾いた(この切断角度はATカット水晶振動板の周波数温度特性を調整する範囲で多少変更してもよい)軸に一致する。Y´軸方向およびZ´軸方向は、ATカット水晶板を切り出すときの切り出し方向に相当する。
【0031】
水晶振動板10は、平面視で略矩形に形成された振動部11と、振動部11の外周と所定の間隔を隔てて設けられた枠状の枠体部12と、所定の幅および厚さを有する金属膜からなる連結部13,14とを備えている。振動部11に形成された励振電極111,112と、枠体部12に形成された電極121,122とが、連結部13,14(図1図2では、連結部13a,14a)を介して電気的に接続されている。振動部11と枠体部12とは、金属膜である連結部13,14を介して電気的かつ機械的に繋がっているが、同一の素材である水晶としては一体的に繋がっておらず、振動部11と枠体部12との間には、環状の空間が設けられている。
【0032】
図1図3に示すように、振動部11の両主面には、平面視で略矩形に形成された一対の励振電極(第1励振電極111、第2励振電極112)が形成されている。連結部13は、水晶振動板10の第1主面101側に複数形成されている。複数の連結部13は、振動部11の短辺方向(Z´軸方向)で対向する一対の対向辺に設けられている。複数の連結部13は、振動部11の短辺方向に沿って設けられており、振動部11と枠体部12とに跨るように配置されている。複数の連結部13は、振動部11の長辺方向(X軸方向)に所定の間隔を隔てて配置されている。
【0033】
複数の連結部13のうち、1つの連結部(中央に位置する連結部)13aの一端が振動部11の第1励振電極111に接続されており、この連結部13aの他端が枠体部12に形成された電極121に接続されている。電極121は、枠体部12に形成されたスルーホール123内の電極、および下側封止部材30に形成されたスルーホール35内の電極を介して、下側封止部材30の底面(パッケージの底面)に形成された外部接続端子34に電気的に接続されている。なお、下側封止部材30の底面には、一対の外部接続端子34が所定の間隔を隔てて設けられている。一対の外部接続端子34は、下側封止部材30の長辺方向(X軸方向)に沿って設けられている。
【0034】
連結部14は、水晶振動板10の第2主面102側に複数形成されている。複数の連結部14は、振動部11の長辺方向(X軸方向)で対向する一対の対向辺に設けられている。複数の連結部14は、振動部11の長辺方向に沿って設けられており、振動部11と枠体部12とに跨るように配置されている。複数の連結部14は、振動部11の短辺方向(Z´軸方向)に所定の間隔を隔てて配置されている。また、振動部11の短辺方向の一辺にも連結部14aが設けられている。この連結部14aの一端が振動部11の第2励振電極112に接続されており、この連結部14aの他端が枠体部12に形成された電極122に接続されている。電極121は、下側封止部材30に形成されたスルーホール36内の電極を介して、下側封止部材30の底に形成された外部接続端子34に電気的に接続されている。
【0035】
複数の連結部13,14は、同じ厚さに形成されている。連結部13は、第1励振電極111に接続される連結部13aを除いて、同じ幅(X軸方向の幅)であり、かつ同じ長さ(Z´軸方向の幅)に形成されている。連結部13aは、それ以外の連結部13よりもZ´軸方向の幅が大きくなっている。連結部14は、第2励振電極112に接続される連結部14aを除いて、同じ幅(Z´軸方向の幅)であり、かつ同じ長さ(X軸方向の幅)に形成されている。連結部14aは、それ以外の連結部14よりもZ´軸方向の幅が大きくなっている。
【0036】
第1、第2励振電極111,112、電極121,122、および連結部13,14は、複数の金属膜が水晶振動板10上に積層されて構成されている。例えば、第1、第2励振電極111,112、および電極121,122は、水晶振動板10上に、下地膜としてのTi(チタン)膜またはCr(クロム)膜が、蒸着またはスパッタリングにより形成され、その下地膜上にAu(金)膜が、蒸着またはスパッタリングにより形成された構成になっている。連結部13,14は、下地膜としてのTi(チタン)膜またはCr(クロム)膜が除去されることによって、Au(金)膜により形成された構成になっている。水晶振動板10に形成される電極および金属膜を同一の構成とすれば、電極および金属膜を同時にパターニングでき、好ましい。
【0037】
なお、水晶振動板10の振動部11および枠体部12は、1枚の水晶素板からウェットエッチングによって形成される。具体的には、ウェットエッチングによって振動部11の外形形成を行う際に、振動部11と枠体部12との間に空間を形成し、振動部11と枠体部12とを分離するようにしている。そして、ウェットエッチングの際に用いたメタルマスクの一部を残し、さらに、下地膜を除去することによって、Au膜からなる連結部13,14を形成し、連結部13,14によって、振動部11を枠体部12に保持させるようにしている。
【0038】
連結部13,14は、水晶振動板10の外周縁に形成されたシール部115,116に電気的に接続しない位置に設けられている。また、シール部115,116および連結部13,14は、連結部13a,14aを除いて、第1、第2励振電極111,112に電気的に接続しない位置に設けられている。シール部115,116は、水晶振動子100において、水晶振動板10の振動部11を気密封止するために設けられており、平面視で、環状に形成されている。シール部115は、水晶振動板10の第1主面101の外周縁に形成された環状のAu膜と、上側封止部材20の外周縁に形成された環状のAu膜とが拡散接合(Au-Au接合)することによって形成される。シール部116は、水晶振動板10の第2主面102の外周縁に形成された環状のAu膜と、下側封止部材30の外周縁に形成された環状のAu膜とが拡散接合(Au-Au接合)することによって形成される。
【0039】
本実施形態では、上述したように、水晶振動板10において、所定の幅および厚さを有する金属膜からなる連結部13,14を介して、振動部11の第1、第2励振電極111,112と枠体部12の電極121,122とが電気的に接続されるとともに、連結部13,14によって振動部11が枠体部12に保持されている。
【0040】
本実施形態によれば、振動部11と枠体部12との間に内部空間110が形成され、振動部11が枠体部12から分離されるので、枠体部12から振動部11への熱や応力の伝達が遮断される。これにより、振動部11に作用する熱や、外力等による環境応力を低減することができ、振動特性の変動を抑制することができる。
【0041】
ここで、複数のワイヤを用いて振動部11を支持する構成では、複数のワイヤ架橋に起因してワイヤ同士が互いに引っ張り合うことによる応力の影響を受けたり、振動部11および枠体部12にワイヤ接続用パッドの形成領域を確保する必要があるため、水晶振動板10の小型化が困難になることが懸念される。しかし、本実施形態では、そのような応力の影響を振動部11が受けないため、振動特性の変動を抑制することができる。また、振動部11および枠体部12にワイヤ接続用パッドの形成領域を確保することが不要になるため、水晶振動板10の小型化を図ることができる。
【0042】
本実施形態では、連結部13,14が少なくともAu膜を含む構成になっているので、Auの延性および展性により、連結部13,14による振動部11の保持強度が低下しにくくなり、連結部13,14の環境変化や経年変化を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、連結部13,14における、振動部11との接続部分、および枠体部12との接続部分は、Cr膜またはTi膜に、Au膜が積層された構成になっている。CrまたはTiは水晶との密着性が良好なため、連結部13,14と振動部11との接合強度、および連結部13,14と枠体部12との接合強度を向上させることができる。
【0044】
本実施形態では、連結部13,14は、振動部11の各辺に少なくとも1つ形成されているので、連結部13,14による振動部11の保持の安定化を図ることができる。また、連結部13,14が、平面視で略矩形の振動部11の少なくとも一対の対向辺に形成されているので、枠体部12に対し、振動部11が傾いたり、回転する動作が生じにくくなり、連結部13,14による振動部11の保持の安定性を高めることができる。
【0045】
また、本実施形態では、振動部11の1つの辺に対して3つ以上の連結部13が形成され、平面視で中央側の連結部13の幅および/または厚さよりも、外側の連結部13の幅および/または厚さの方が大きくなっている。図1図2では、5つの連結部13が形成されており、中央に位置する連結部13aの幅(X軸方向の幅)よりも、それ以外の連結部13の幅の方が大きくなっている。このように、外側の連結部13の幅、厚さが大きく、内側の連結部13aの幅、厚さが小さい場合、内側の連結部13aに作用する応力を逃がしやすく、振動部11の耐衝撃性が向上するので、連結部13の破断を抑制することができる。なお、連結部13の幅および厚さのうちいずれか一方を調整することによって、連結部13の破断を抑制するようにしてもよい。
【0046】
なお、本実施形態にかかる水晶振動板10を備えた水晶振動子100においても、上記構成の水晶振動板10と同様の効果が得られる。また、水晶振動子100では、上側封止部材20および下側封止部材30には、水晶振動板10側に凹部21,31がそれぞれ形成され、振動部11がそれぞれの凹部21,31の底面に対向しているので、振動部11の可動領域を確保することができ、振動部11が外部衝撃等により微小に動いた場合であっても上側封止部材20や下側封止部材30に接触することを抑制できる。また、各凹部21,31の底面には、振動部11に対向する位置に凸部22,32が形成されているので、外部衝撃等によって振動部11の第1、第2励振電極111,112が形成された領域に対しては各凹部21,31によって可動領域を確保しつつ、各凹部21,31の底面に振動部11の第1、第2励振電極111,112が形成されていない領域に対向する位置に凸部22,32を設けることによって、振動部11の鉛直方向の変位量を抑制することができる。その結果、連結部13,14の破断を抑制することができる。なお、各凸部22,32の数は2つに限定されず、1つ、あるいは3つ以上であってもよい。
【0047】
今回開示した実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0048】
上述した振動部11の大きさ、形状や、水晶振動板10における配置位置は一例であって、さまざまに変更することが可能である。上述した連結部13,14の大きさ、形状、数や、水晶振動板10における配置位置は一例であって、さまざまに変更することが可能である。
【0049】
また、上述した振動部11の第1、第2励振電極111,112への電気的な配線は一例であって、さまざまに変更することが可能である。上記実施形態では、スルーホール35,36,123を形成して電気的な接続を行ったが、そのようなスルーホールの代わりに、下側封止部材30等の側面にキャスタレーションを形成し、その内壁面に電極を形成することによって電気的な接続を行ってもよい。あるいは、スルーホールとキャスタレーションとを併用してもよい。
【0050】
上記実施形態では、水晶振動子100として、水晶振動板10が上側封止部材20および下側封止部材30の間に挟まれた3枚重ね構造の水晶振動子を用いたが、これ以外の構造の水晶振動子100を用いてもよい。例えば、凹部を有するベース(下側封止部材)の内部に水晶振動板10を収容し、当該ベースに蓋(上側封止部材)を接合した構造の水晶振動子を用いてもよい。この場合、水晶振動板10は、例えば導電性接着剤等によってベースに接合される。
【0051】
また、上記実施形態では、上側封止部材20および下側封止部材30を水晶により形成したが、例えばセラミックやガラス等によって上側封止部材20および下側封止部材30を形成してもよい。
【0052】
上記実施形態では、本発明を水晶振動子100に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば水晶発振器等にも本発明を適用してもよい。
【0053】
以下、複数の変形例を挙げて説明するが、上記実施形態と同様の部分については説明を省略し、上記実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0054】
図4図5に示す変形例1では、連結部13,14、ベースへの搭載用電極15の構成が、上記実施形態とは主に異なる。
【0055】
図4図5に示すように、水晶振動板10の長辺方向(X軸方向)の一端側に一対の搭載用電極15が設けられている。水晶振動板10の第1主面101側では、複数の連結部13が水晶振動板10の短辺方向(Z´軸方向)に沿って設けられている。複数の連結部13は、水晶振動板10の長辺方向のみにおいて、振動部11と枠体部12との間に橋架されている。複数の連結部13のうち、1つの連結部(中央に位置する連結部)13aが第1励振電極111に接続されている。また、連結部13aを含む複数(図4では、3つ)の連結部13が搭載用電極15に接続されている。この場合、連結部13aを含む複数の連結部13は、振動部11側に形成された接続電極16aと、枠体部12側に形成された接続電極16bとによって電気的に接続されている。接続電極16a,16bは水晶振動板10の長辺方向に沿って形成されており、接続電極16bの一端が搭載用電極15に接続されている。このように、搭載用電極15には、複数の連結部13が共通して接続されている。なお、接続電極16aを振動部11の外周全体にわたって形成してもよい。
【0056】
水晶振動板10の第2主面102側では、複数の連結部14が水晶振動板10の長辺方向に沿って設けられている。複数の連結部14は、水晶振動板10の短辺方向のみにおいて、振動部11と枠体部12との間に橋架されている。複数の連結部14のうち、1つの連結部(端に位置する連結部)14bには、第2励振電極112から延びる引出電極16cが接続されている。この連結部14bが搭載用電極15に接続されている。この場合、連結部14bを含む複数の連結部14の全てが、振動部11側に形成された接続電極16dと、枠体部12側に形成された接続電極16eとによって電気的に接続されている。接続電極16d,16eは水晶振動板10の短辺方向に沿って形成されている。このように、搭載用電極15には、複数の連結部14が共通して接続されている。なお、接続電極16dを振動部11の外周全体にわたって形成してもよい。
【0057】
変形例1にかかる水晶振動板10では、振動部11は、平面視で略矩形であり、水晶振動板10の第1主面101には、振動部11の長辺側のみに連結部13が形成され、水晶振動板10の第2主面102には、振動部11の短辺側のみに連結部14が形成されている。この構成によれば、水晶振動板10の第1主面101には、振動部11の短辺側に連結部13が形成されず、また、水晶振動板10の第2主面102には、振動部11の長辺側に連結部14が形成されないので、ウェットエッチングによって振動部11の外形加工を行う際、そのエッチング加工を精度よく行うことができる。
【0058】
また、搭載用電極15に、複数の連結部13,14が共通して接続されているので、複数の連結部13,14のうち一部が破断したとしても、残りの連結部13,14によって、第1、第2励振電極111,112と、搭載用電極15との間の電気的接続を確保することができる。
【0059】
図6に示す変形例2では、ベースへの搭載用電極15の構成が、上記実施形態とは主に異なる。図6に示すように、水晶振動板10の枠体部12の四隅にベースへの搭載用電極15が設けられている。
【0060】
図4図5に示す水晶振動板10をベースに搭載する際、例えば導電性接着剤によって、水晶振動板10の搭載用電極15がベースの搭載用パッドに接合される。搭載用電極15は、水晶振動板10の長辺方向(X軸方向)の一端側にのみ設けられているため、水晶振動板10がベースに対し片持ち状態で支持されることになる。しかし、変形例21にかかる水晶振動板10では、水晶振動板10の四隅に搭載用電極15が設けられているので、ベースに対し水晶振動板10を安定して支持させることができる。これにより、連結部13,14に無用な応力が作用しなくなり、振動部11の耐衝撃性の面で好ましい。
【0061】
図7に示す変形例3では、連結部13,14の構成が、上記実施形態とは主に異なる。図7に示すように、水晶振動板10の第1主面101側では、複数の連結部13のうち、2つの連結部13が水晶振動板10の一対の対角位置に設けられている。2つの連結部13は、振動部11の角部と、枠体部12の内周側の角部とにわたって設けられている。また、複数の連結部13のうち、1つの連結部13aの一端が振動部11の第1励振電極111に接続されており、この連結部13aの他端が枠体部12に形成された電極121に接続されている。
【0062】
水晶振動板10の第2主面102側では、複数の連結部14のうち、2つの連結部14が水晶振動板10の残り一対の対角位置に設けられている。2つの連結部14は、振動部11の角部と、枠体部12の内周側の角部とにわたって設けられている。また、複数の連結部14のうち、1つの連結部14aの一端が振動部11の第2励振電極112に接続されており、この連結部14aの他端が枠体部12に形成された電極122に接続されている。
【0063】
変形例3にかかる水晶振動板10では、枠体部12は、平面視で略矩形であり、連結部13,14が枠体部12の内周の角部の対角となる位置に接続されることにより、振動部11が保持されている。この構成によれば、振動部11の中心に対する回転モーメントの大きい部位である枠体部12の内周の角部が連結部13,14によって保持されるので、振動部11の回転する動作が抑制される。これにより、連結部13,14による振動部11の保持の安定性を向上させることができる。なお、振動部11の形状は矩形以外であってもよい。
【0064】
図8に示す変形例4では、連結部13に緩衝部が設けられている(連結部14も同様)。図8(a)では、連結部13の中央部の断面形状が円形になっており、連結部13の中央部の幅(平面視での幅)が、その両側の部分の幅よりも大きくなっている。図8(b)では、連結部13の幅(平面視での幅)が大きい部分と、小さい部分とが繰り返し設けられている。図8(c)では、連結部13の中央部が中空形状になっている。図8(d)では、連結部13の中央部の幅(平面視での幅)が、その両側の部分の幅よりも小さくなっている。
【0065】
変形例4にかかる水晶振動板10では、連結部13,14は、その長さ方向の中央部の幅および/または厚さが、その両側の部分よりも大きくなっている。あるいは、連結部13,14は、その長さ方向の中央部の幅および/または厚さが、その両側の部分よりも小さくなっている。これにより、連結部13,14が柔軟性を有しており、弾性的に伸縮可能になっているため、振動部11の耐衝撃性を向上させることができる。
【0066】
図9に示す変形例5では、連結部13が、枠体部12の側壁に設けられた連結部13cおよび振動部11の側壁に設けられた13dも含む構成になっている(連結部14も同様)。変形例5にかかる水晶振動板10では、連結部13,14が、枠体部12の側壁および振動部11の側壁にも一体的に設けられているので、連結部13,14と、振動部11および枠体部12との接合強度を向上させることができ、外部衝撃が加わった場合でも、連結部13,14の破断を抑制することができる。なお、枠体部12の側壁および振動部11の側壁のいずれか一方に連結部13,14を設ける構成としてもよい。
【0067】
図10に示す変形例6では、枠体部12の構成が、上記実施形態とは主に異なる。図10に示すように、枠体部12は、3辺構成になっており、水晶振動板10の長辺方向(X軸方向)の一端側が開放されている。このように、枠体部12の少なくとも3辺によって振動部11を保持することで、連結部13,14による振動部11の保持の安定性を確保することができる。
【0068】
なお、枠体部12の開放端の近傍に設けられる連結部13の幅(X軸方向の幅)および/または厚さが、それ以外の連結部13の幅および/または厚さよりも大きくなっており、枠体部12の開放端の近傍に設けられる連結部13の破断を抑制することができる。
【0069】
図11に示す変形例7では、連結部13,14の構成が、上記実施形態とは主に異なる。図11に示すように、水晶振動板10の第1主面101側では、平面視で中央側の連結部13の幅(X軸方向の幅)および/または厚さよりも、外側の連結部13の幅および/または厚さの方が大きくなっている。詳細には、中央側に向かうほど、連結部13の幅が段階的に小さくなっている。
【0070】
また、水晶振動板10の第2主面102側では、平面視で中央側の連結部14の幅(Z´軸方向の幅)および/または厚さよりも、外側の連結部14の幅および/または厚さの方が大きくなっている。
【0071】
変形例7にかかる水晶振動板10では、外側の連結部13,14の幅、厚さを大きく、内側の連結部13,14の幅、厚さを小さくすることによって、内側の連結部13,14に作用する応力を逃がしやすく、振動部11の耐衝撃性が向上するので、連結部13,14の破断を抑制することができる。また、枠体部12の内周の角部の近傍の連結部13,14の幅、厚さが大きくなっており、振動部11の中心に対する回転モーメントの大きい部位の連結部13,14の幅、厚さが大きくなっているので、振動部11の回転する動作が抑制される。これにより、連結部13,14による振動部11の保持の安定性を向上させることができる。なお、連結部13,14の幅および厚さのうちいずれか一方を調整することによって、連結部13,14の破断を抑制するようにしてもよい。
【0072】
図12に示す変形例8では、連結部13,14の構成が、上記実施形態とは主に異なる。図12に示すように、連結部13,14が屈曲部を有する構成になっている。連結部13,14は、その長さ方向の中央部に屈曲部を有しており、屈曲部が曲率を有する形状に形成されている。連結部14では、隣り合う連結部14の屈曲部同士が相互に連結されている。連結部13,14は、例えば、平面視で「く」字状、X字状、網目状等に形成されている。
【0073】
水晶振動板10の第1主面101側では、複数の連結部13は、振動部11側に形成された接続電極16aと、枠体部12側に形成された接続電極16bとによって電気的に互いに接続されている。接続電極16a,16bは水晶振動板10の長辺方向(X軸方向)に沿って形成されている。このように、接続電極16a,16bによって、複数の連結部13が第1励振電極111に共通して接続されている。
【0074】
水晶振動板10の第2主面102側では、複数の連結部14は、振動部11側に形成された接続電極16dと、枠体部12側に形成された接続電極16eとによって電気的に互いに接続されている。接続電極16d,16eは水晶振動板10の短辺方向(Z´軸方向)に沿って形成されている。このように、接続電極16d,16eによって、複数の連結部14が第2励振電極112に共通して接続されている。
【0075】
変形例8にかかる水晶振動板10では、連結部13,14は、応力が作用すると、弾性的に伸縮可能になっているため、連結部13,14の破断を抑制することができ、振動部11の耐衝撃性を向上させることができる。しかも、連結部13,14の屈曲部が曲率を有する形状になっているので、連結部13,14の破断をより確実に抑制することができる。また、第1、第2励振電極111,112に、複数の連結部13,14が共通して接続されているので、複数の連結部13,14のうち一部が破断したとしても、残りの連結部13,14によって、第1、第2励振電極111,112と、枠体部12の電極121,122との間の電気的接続を確保することができる。
【0076】
また、枠体部12の内周部および振動部11の外周部のそれぞれに金属膜(接続電極16a、16b、16d、16e)が略全周にわたって形成された構成になっており、連結部13,14によって枠体部12と振動部11とが架橋されている。この構成によれば、外部衝撃が加わった際、複数の連結部13,14の一部が断線した場合であっても、略全周にわたって形成された金属膜により電気的接続を確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0077】
図13に示す変形例9では、連結部13,14の構成が、上記実施形態とは主に異なる。図13に示すように、水晶振動板10の第1主面101側では、連結部13が、水晶振動板10の長辺方向(X軸方向)に幅広のシート状の構成になっている。連結部13における、振動部11と枠体部12との間に位置する部分には、例えば円形、楕円形等の複数の貫通孔(開口部)13eが形成されている。複数の貫通孔13eは、水晶振動板10の長辺方向に沿って、一列に並んで配置されている。なお、連結部13は、例えば、上述した変形例8の複数の連結部13および接続電極16a,16bが一体に形成された構成になっている。
【0078】
水晶振動板10の第2主面102側では、連結部14が、水晶振動板10の短辺方向(Z´軸方向)に幅広のシート状の構成になっている。連結部14における、振動部11と枠体部12との間に位置する部分には、例えば円形、楕円形等の複数の貫通孔14eが形成されている。複数の貫通孔(開口部)14eは、水晶振動板10の短辺方向に沿って、一列に並んで配置されている。なお、連結部14は、例えば、上述した変形例8の複数の連結部14および接続電極16d,16eが一体に形成された構成になっている。
【0079】
変形例9にかかる水晶振動板10では、枠体部12および振動部11の両方には、幅広の金属膜が架橋され、当該金属膜に複数の貫通孔13e,14eが設けられることにより連結部13,14が形成される構成になっている。この構成によれば、複数の開口部13e,14eが設けられた連結部13,14によって連結部13,14に作用する応力を緩和することができる。しかも、複数の貫通孔13e,14eの内周が曲面であり、角部が存在しないので、連結部13,14に作用する応力をいっそう緩和することができる。なお、複数の貫通孔13e,14eを複数列(例えば2列)に並んで配置してもよい。
【0080】
図14に示す変形例10では、振動部11および枠体部12の構成が、上記実施形態とは主に異なる。図14に示すように、振動部11および枠体部12の厚さが同一ではなく、それぞれの厚さを変化させている。
【0081】
図14(a)では、振動部11の厚さが枠体部12の厚さよりも小さくなっている(逆メサ構造)。振動部11の厚さは全体にわたって同一になっている。枠体部12には段差12aが形成されており、この段差12aは平面視で周状に連続して形成されている。段差12aは、水晶振動板10の第1主面101および第2主面102の両方に設けられている。枠体部12の段差12aよりも内周側の部分の厚さは、振動部11の厚さと略同一になっている。枠体部12の段差12aよりも外周側の部分の厚さは、振動部11の厚さよりも大きくなっている。
【0082】
このように、枠体部12の振動部11側(内周側)に、振動部11と略同一の厚みからなり枠体部12の外周側よりも薄肉の薄肉部が設けられている。この構成によれば、枠体部12の薄肉部と振動部11との高低差がなくなり、連結部13,14に不要なテンションが作用しにくくなることから、安定した電気的接続を確保することができ、信頼性を高めることができる。
【0083】
図14(b)では、振動部11の中央部の厚さが外周部の厚さよりも大きくなっている(メサ構造)。振動部11には段差11aが形成されており、この段差11aは平面視で周状に連続して形成されている。段差11aは、水晶振動板10の第1主面101および第2主面102の両方に設けられている。振動部11の段差11aよりも内周側の中央部の厚さは、段差12aよりも外周側の外周部の厚さよりも大きくなっており、この振動部11の中央部に第1、第2励振電極111,112が形成されている。枠体部12にも段差12aが形成されており、この段差12aは平面視で周状に連続して形成されている。段差12aは、水晶振動板10の第1主面101および第2主面102の両方に設けられている。枠体部12の段差12aよりも内周側の部分の厚さは、振動部11の外周部の厚さと略同一になっている。枠体部12の段差12aよりも外周側の部分の厚さは、振動部11の中央部の厚さよりも大きくなっている。
【0084】
図14(c)では、振動部11の厚さが枠体部12の厚さよりも小さくなっている(逆メサ構造)。振動部11の厚さは全体にわたって同一になっている。枠体部12には段差12aが形成されており、この段差12aは平面視で周状に連続して形成されている。段差12aは、上述した図14(a)、図14(b)の場合とは異なり、水晶振動板10の第1主面101のみに設けられており、第2主面102には設けられていない。枠体部12の段差12aよりも内周側の部分の厚さは、振動部11の厚さと略同一になっている。枠体部12の段差12aよりも外周側の部分の厚さは、振動部11の厚さよりも大きくなっている。水晶振動板10の第2主面102側では、振動部11の表面と枠体部12の表面とが略同一面上に形成されている。
【符号の説明】
【0085】
10 水晶振動板(水晶振動素子)
11 振動部
12 枠体部
13,14 連結部
100 水晶振動子(水晶振動デバイス)
111,112 第1、第2励振電極
121,122 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14