(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079864
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】読取装置、検査装置および読取システム
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20230601BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230601BHJP
H04N 1/031 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
G02B3/00 B
G02B3/00 A
G03B15/00 T
H04N1/031
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193541
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000104629
【氏名又は名称】キヤノン・コンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕介
(72)【発明者】
【氏名】霜田 修一
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】服部 好弘
【テーマコード(参考)】
5C051
【Fターム(参考)】
5C051AA01
5C051BA04
5C051DA03
5C051DB01
5C051DB22
5C051DB29
5C051DC04
5C051DC07
(57)【要約】
【課題】ロッドレンズアレイを縮小光学系に適用した読取装置に有利な技術を提供する。
【解決手段】センサと、光軸と交差する配列方向に沿って配列された複数のロッドレンズを含むロッドレンズアレイと、を備える読取装置であって、前記複数のロッドレンズは、読取領域を前記センサに縮小結像する複数の使用レンズと、前記読取領域を前記センサに結像しない複数の不使用レンズと、を含み、前記複数の使用レンズのうち互いに隣り合う使用レンズの間のそれぞれに、前記複数の不使用レンズのうち少なくとも1つの不使用レンズが配されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、
光軸と交差する配列方向に沿って配列された複数のロッドレンズを含むロッドレンズアレイと、を備える読取装置であって、
前記複数のロッドレンズは、読取領域を前記センサに縮小結像する複数の使用レンズと、前記読取領域を前記センサに結像しない複数の不使用レンズと、を含み、
前記複数の使用レンズのうち互いに隣り合う使用レンズの間のそれぞれに、前記複数の不使用レンズのうち少なくとも1つの不使用レンズが配されていることを特徴とする読取装置。
【請求項2】
センサと、
光軸と交差する配列方向に沿って配列された複数のロッドレンズを含むロッドレンズアレイと、を備える読取装置であって、
前記複数のロッドレンズは、読取領域のうち第1読取領域を前記センサに縮小結像する第1レンズと、前記第1レンズと互いに隣接するように配され、前記読取領域のうち第2読取領域を前記センサに縮小結像する第2レンズと、を含み、
前記第1読取領域と前記第2読取領域とが重なる領域の前記配列方向の長さをRover、前記第1読取領域の前記配列方向の長さをR1としたときに、
0.05≦(Rover/R1)<0.99
の関係を満たすことを特徴とする読取装置。
【請求項3】
前記第1レンズが前記センサに縮小結像する結像領域の前記配列方向の長さをL1、前記複数のロッドレンズの光軸方向の長さをLzとしたときに、
0.50≦(Lz/L1)<100
の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記第1レンズと前記第2レンズとが、長さLbw離れて配され、
前記第1レンズが前記センサに縮小結像する結像領域の前記配列方向の長さをL1としたときに、
-3.00≦{(L1-Lbw)/L1}≦0.15
の関係を満たすことを特徴とする請求項2または3に記載の読取装置。
【請求項5】
前記センサは、前記配列方向に沿って配された複数のセンサチップによって構成され、
前記第1レンズおよび前記第2レンズのそれぞれが前記読取領域を縮小結像する結像領域が、前記複数のセンサチップのチップ間に配されていないことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項6】
さらに、
0.00<{(L1-Lbw)/L1}≦0.15
の関係を満たし、
前記センサは、前記配列方向に沿って配された複数のセンサチップによって構成され、
前記第1レンズの前記結像領域と前記第2レンズの前記結像領域とが重なる領域が、前記複数のセンサチップのチップ間に配されていることを特徴とする請求項4に記載の読取装置。
【請求項7】
前記複数のセンサチップのそれぞれに、前記複数のロッドレンズのうち何れか2つ以上のレンズが前記読取領域を縮小結像する複数の前記結像領域が配されていることを特徴とする請求項5または6に記載の読取装置。
【請求項8】
前記センサは、前記配列方向に沿って配された複数のセンサチップによって構成され、
前記複数のセンサチップのそれぞれの前記配列方向の長さをLsc、前記複数のセンサチップのそれぞれに配される前記結像領域の数をIS、前記第1レンズが前記センサに縮小結像する結像領域の前記配列方向の長さをL1としたときに、
0.20≦{(IS・L1)/Lsc}≦1.10
を満たすことを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項9】
前記センサは、前記配列方向に沿って配された複数のセンサチップによって構成され、
前記複数のセンサチップのそれぞれの前記配列方向の長さをLsc、前記第1レンズが前記センサに縮小結像する結像領域の前記配列方向の長さをL1としたときに、
1.50≦(Lsc/L1)≦50.0
を満たすことを特徴とする請求項5乃至8の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項10】
前記複数のロッドレンズは、前記第1レンズおよび前記第2レンズを含み、前記読取領域を前記センサに縮小結像する複数の使用レンズと、前記読取領域を前記センサに結像しない複数の不使用レンズと、を含み、
前記複数の使用レンズのうち互いに隣り合う使用レンズの間のそれぞれに、前記複数の不使用レンズのうち少なくとも1つの不使用レンズが配されていることを特徴とする請求項2乃至9の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項11】
前記複数の使用レンズは、互いに隣り合う第3レンズおよび第4レンズと、互いに隣り合う第5レンズおよび第6レンズを含み、
前記複数の不使用レンズのうち前記第3レンズと前記第4レンズとの間に配される不使用レンズの数と、前記複数の不使用レンズのうち前記第5レンズと前記第6レンズとの間に配される不使用レンズの数と、が異なっていることを特徴とする請求項1または10に記載の読取装置。
【請求項12】
前記読取領域から前記ロッドレンズアレイの光入射面までの距離をLo、前記ロッドレンズアレイの光出射面から前記センサまでの距離をLi、前記複数のロッドレンズの光軸方向の長さをLzとしたときに、
0.10≦[Li・Lo/{(Li+Lo)・Lz}]≦5.00
の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項13】
前記読取領域から前記ロッドレンズアレイの光入射面までの距離をLo、前記ロッドレンズアレイの光出射面から前記センサまでの距離をLi、前記複数のロッドレンズの光軸方向の長さをLzとしたときに、
0.30≦{(Li・Lo)/(Lz2)}≦200
の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項14】
前記複数のロッドレンズのレンズ径をLr、前記複数のロッドレンズの光軸方向の長さをLzとしたときに、
3.00≦(Lz/Lr)≦200
の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項15】
前記読取領域を前記センサに縮小結像する倍率をMとしたとき、
0.05≦M≦0.80
の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項16】
前記読取領域を照明するための照明装置をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の読取装置と、
前記読取装置で取得した画像情報を用いて被写体の状態を検査する検査部と、
を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項18】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の読取装置と、
前記読取装置で取得した画像情報を記憶媒体に記憶する記憶装置と、
を含むことを特徴とする読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置、検査装置および読取システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光軸に直交する方向に屈折率分布を持った光ファイバを多数直線状に配列した、正立等倍像を形成するレンズアレイが示されている。このように正立等倍像を結ぶレンズアレイを用いた場合は、隣接する2つのレンズの像はセンサ上において互いに重畳するが、センサ上の同じ位置に同じ像を結ぶため重畳しても問題は生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるようなレンズアレイを、被写界深度を深くするために縮小光学系に適用すると、隣接する2つのレンズによってセンサ上に結ばれる像の位置が互いにずれてしまう(被写体上の同じ位置の像がセンサ上の別の位置に結ばれる)。その結果、センサ上で異なる画像同士が重畳することとなり、センサ上に鮮明な被写体の像が結ばれなくなってしまう。
【0005】
本発明は、ロッドレンズアレイを縮小光学系に適用した読取装置に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る読取装置は、センサと、光軸と交差する配列方向に沿って配列された複数のロッドレンズを含むロッドレンズアレイと、を備える読取装置であって、前記複数のロッドレンズは、読取領域を前記センサに縮小結像する複数の使用レンズと、前記読取領域を前記センサに結像しない複数の不使用レンズと、を含み、前記複数の使用レンズのうち互いに隣り合う使用レンズの間のそれぞれに、前記複数の不使用レンズのうち少なくとも1つの不使用レンズが配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によって、ロッドレンズアレイを縮小光学系に適用した読取装置に有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る読取装置の構成例を示す図。
【
図5】
図1の読取装置に組み込まれるロッドレンズアレイを示す図。
【
図6】
図1の読取装置が組み込まれた検査装置および読取システムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1~
図6(a)、6(b)を参照して、本開示の実施形態による読取装置について説明する。
図1は、本実施形態の読取装置100の構成例を示す断面図である。読取装置100は、センサ101と、光軸と交差する配列方向に沿って配列された複数のロッドレンズ120を含むロッドレンズアレイ102と、を備えている。
図1において、光軸は、Y方向に沿って配され、また、配列方向は、X方向に沿っている。X方向とY方向とは、垂直の関係であってもよい。
【0011】
ロッドレンズアレイ102は、
図5(a)に示されるように、例えば、複数のロッドレンズ120の光軸が互いに平行になるように、複数のロッドレンズ120の光軸の法線方向の配列方向(X方向)に直線状に配列されることによって構成されている。また、例えば、
図5(b)に示されるように、ロッドレンズアレイ102において、ロッドレンズ120が、配列方向と交差する方向に複数の列を構成するように配されていてもよい。ロッドレンズ120の列数によらず、ロッドレンズアレイ102は、
図5(a)、5(b)に示される配列方向(X方向)に沿った方向が、長手方向の形状を有しうる。
【0012】
本実施形態において、
図1に示されるように、複数のロッドレンズ120は、それぞれのロッドレンズ120の読取領域131をセンサ101に縮小結像する複数の使用レンズ121と、読取領域131をセンサ101に結像しない複数の不使用レンズ122と、を含む。このとき、複数の使用レンズ121のうち互いに隣り合う使用レンズの間のそれぞれに、複数の不使用レンズ122のうち少なくとも1つの不使用レンズが配されている。これによって、近接する複数のロッドレンズ120によって合成される像の重なりに起因する画質の低下を抑制しつつ、ロッドレンズアレイ102を縮小光学系に適用し、被写界深度を深くすることが可能になる。尚、ここでの互いに隣り合う使用レンズとは、読取領域からの光をセンサに導く使用レンズの中で、ある使用レンズと、当該使用レンズの+X方向において最も近い使用レンズ、或いは-X方向において最も近い使用レンズ、の組合せのことである。また、不使用レンズとは、読取領域からの光をほとんどセンサ上に導かないレンズ(ロッドレンズ)のことであり、使用レンズがセンサに導く光量に比べて1割以下(好ましくは1%以下)の光量の光しかセンサに導かないレンズのことである。或いは不使用レンズは、使用レンズがセンサに結像する像のコントラストと比較して、1割以下(好ましくは1%以下)のコントラストの像をセンサ上に結ぶレンズのことと考えても良い。或いは、不使用レンズは、使用レンズがセンサに導く光量の2割以下(好ましくは3%以下)であり、且つ使用レンズが結ぶ像のコントラストの2割以下(好ましくは3%以下)であるようなレンズであっても良い。
【0013】
例えば、
図1において、複数の使用レンズ121のうち使用レンズ121aと使用レンズ121bとの間に、5本の不使用レンズ122が配されている。しかしながら、使用レンズ121の間に配される不使用レンズ122の数は、5本に限られることはなく、後述する条件に適合するように適当な本数が選択されればよい。また、ロッドレンズアレイ102の全体で、使用レンズ121の間に配される不使用レンズ122の数が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
不使用レンズ122は、ロッドレンズ120に適当な加工を行うことによって、センサ101に結像しない、または、結像し難くなるようにする。例えば、ロッドレンズ120の光出射面または光入射面の少なくとも一部を遮光することによって、不使用レンズ122とすることができる。例えば、不使用レンズ122となるロッドレンズ120の光出射面または光入射面に、遮光材が塗布されていてもよいし、遮光テープが貼られていてもよい。また、例えば、不使用レンズ122となるロッドレンズ120の光入射面が、研磨などによって凸凹状に粗くなっていてもよい。ロッドレンズ120に入射した光が、光入射面で散乱しロッドレンズ120の側壁などに向かうことによって、センサ101に結像し難くなる。また、ロッドレンズ120の光出射面または光入射面が、光軸の法線方向から傾いていてもよい。光出射面が傾いている場合、出射光がセンサ101に向かわないように、ロッドレンズ120の光出射面を傾ければよい。また、ロッドレンズ120の光入射面が傾いている場合、入射光は、ロッドレンズ120の側壁などで吸収され、センサ101に結像し難くなる。また、不使用レンズ122となるロッドレンズ120の光入射面と光出射面との間が連続していなくてもよい。
【0015】
読取装置100において、ロッドレンズアレイ102を用いずに、複数のロッドレンズを所定の間隔を開けて配置することが考えられる。しかしながら、φ1.0mm程度のロッドレンズを所定の間隔で光軸を揃えて配置するためには高い精度が求められ、コストアップの原因にもなりうる。一方、本実施形態において、ロッドレンズアレイ102に配されたロッドレンズ120の一部に対して遮光などの加工を実施するだけで、複数のロッドレンズ120をそれぞれ使用レンズ121および不使用レンズ122として使用することができる。
【0016】
また、ロッドレンズ間を所定の間隔に保つために結合部材などを配した場合、温度などの環境変化があると、熱膨張率の違いなどによってロッドレンズが意図しない方向に傾くなどの影響が生じうる。本実施形態において、使用レンズ121と不使用レンズ122とは、同じ材質のロッドレンズ120である。したがって、本実施形態に示されるように、ロッドレンズアレイ102を用いた方が、環境変化に強い可能性がある。また、読取装置100が長尺化した場合であっても、ロッドレンズアレイ102を用いた方が、ロッドレンズを所定の間隔で配する場合よりも容易に対応できる。
【0017】
次いで、使用レンズ121の配置について詳細を説明する。まず、複数の使用レンズ121のうち互いに隣接するように配された使用レンズ121aと使用レンズ121bとに着目する。ここで、使用レンズ121aと使用レンズ121bとの間には、上述したように5本の不使用レンズ122が配されているが、複数の使用レンズ121の中では、使用レンズ121aと使用レンズ121bとは、互いに隣接している。
【0018】
複数のロッドレンズ120のうち使用レンズ121aは、読取領域131aをセンサ101に縮小結像する。複数のロッドレンズ120のうち使用レンズ121bは、読取領域131bをセンサ101に縮小結像する。ここで、読取領域131とは、ロッドレンズ120の焦点距離fと、読取装置100におけるロッドレンズアレイ102(ロッドレンズ120)の光出射面からセンサ101までの距離Liと、の関係から導かれる被写体側の仮想面201において、ロッドレンズ120の開口角によって定義されるイメージサークルの領域である。開口角とは、屈折率分布型レンズであるロッドレンズ120の光軸の一端に入射可能な光線(入射してロッドレンズ内部を通って出射することが可能な光線)と光軸とがなす角度の最大値である。読取領域131(仮想面201)からロッドレンズアレイ102(ロッドレンズ120)の光入射面までの距離Loは、焦点距離fおよび距離Liに対して、例えば、
1/Li+1/Lo≒1/f ・・・ (1)
の関係を有しうる。尚、距離Liは光出射面からセンサまでの距離であり(ロッドレンズのレンズ主面からの距離ではない)、距離Loはピントが合っている被写体位置から光入射面(レンズ主面ではない)までの距離であるため、焦点距離fは正確にはロッドレンズの焦点距離とは異なる。
【0019】
このような、それぞれの使用レンズ121が有する読取領域において、互いに隣接するように配された使用レンズ121aと使用レンズ121bとの読取領域131aと読取領域131bとが重なる領域の配列方向(X方向)の長さをRoverとする。また、それぞれの使用レンズ121の読取領域131(例えば、読取領域131a)の配列方向の長さをR1とする。このとき、
0.05≦(Rover/R1)<0.99 ・・・ (2)
の関係を満たしていてもよい。つまり、互いに隣接するように配された使用レンズ121の読取領域131は、互いに重なりあっている。式(2)は、物体側の読取領域131のオーバーラップ率を表しており、上限は、式(2)に示されるように99%未満でありうる。しかしながら、上限の値が大きい場合、センサ101に結像される画像において、重複して結像される領域が大きくなる。したがって、上限の値は、0.70(70%)以下であってもよいし、さらに、0.50(50%)以下であってもよい。
【0020】
また、読取領域131のオーバーラップ率の下限は、式(2)に示されるように5%以上である。オーバーラップ率が低い場合、センサ101に結像される画像の端部が暗くなり、互いに隣接するように配された使用レンズ121によって縮小結像された画像同士をつなぎ合わせる際に、つなぎ合わせの精度が低下してしまう可能性がある。したがって、互いに隣接するように配された使用レンズ121の読取領域131は、重なっている必要がある。つなぎ合わせの精度を向上させるために、式(2)における下限の値は、0.20(20%)以上であってもよいし、さらに、0.32(32%)以上であってもよい。
【0021】
図3、4は、
図1に示されるような構成を有する読取装置100の実施例におけるパラメータを示した一覧である。
図3、4に示される実施例1~20は、それぞれ適当な画質が得られたパラメータの組み合わせを示している。
図3に示される「不使用」は、互いに隣接するように配された使用レンズ121の間に配されている不使用レンズ122の数を表している。他のパラメータについても、以下、順次説明する。
【0022】
次に、複数の使用レンズ121のそれぞれがセンサ101に縮小結像する結像領域141の配置について説明する。結像領域141は、センサ101に結像された、ロッドレンズ120の焦点距離fと、読取装置100におけるロッドレンズアレイ102(ロッドレンズ120)の光出射面からセンサ101までの距離Liと、ロッドレンズ120の開口角と、によって定義されるイメージサークルの領域である。
図1に示されるように、複数の使用レンズ121のうち配列方向(X方向)に互いに隣接する2つの使用レンズが、長さLbw離れて配されている。複数の使用レンズ121のそれぞれがセンサ101に縮小結像する結像領域141の配列方向の長さをL1としたときに、
-3.00≦{(L1-Lbw)/L1}≦0.15 ・・・ (3)
の関係を満たすように、それぞれの使用レンズ121が配される。
【0023】
式(3)がマイナスの値を有する場合、
図1に示されるように、それぞれの使用レンズ121によって縮小結像される結像領域141は、互いに離れている。一方、式(3)がプラスの値を有する場合、
図2に示されるように、互いに隣接するように配された使用レンズ121の結像領域141は、重なっている。このため、式(3)に対応する実施例の値は、
図4の「像側Overlap率」として示されている。
【0024】
式(3)の下限を下回った場合、センサ101において、画像の生成に使用されない画素(受光素子)領域が増加し、センサ101の使用効率が低下してしまう。このため、式(3)の下限は、センサ101を有効に使用可能な-2.30(-230%)以上であってもよい。また、式(3)の下限は、-1.95(-195%)以上であってもよいし、さらに、-1.63(-163%)以上であってもよい。
【0025】
式(3)の上限を上回った場合、互いに隣接するように配された使用レンズ121によって合成される像の重なりに起因する画質の低下が生じる場合がある。一方、結像領域141の端部は、画像が暗くなり、また、収差の影響なども発生しうる。したがって、互いに隣接するように配された使用レンズ121の結像領域141が重なってしまっても、重なった領域から出力される信号を使用せずに画像を生成することが考えられる。これらの要因から、式(3)の上限は、0.10(10%)以下であってもよい。また、式(3)の上限は、0.08(8%)以下であってもよいし、さらに、0.01(1%)以下であってもよい。
【0026】
読取装置100を長尺化するために、センサ101は、
図1、2に示されるように、配列方向(X方向)に沿って配された複数のセンサチップ111によって構成されうる。互いに隣り合うセンサチップ111のチップ間112には、画素(受光素子)が配されていない領域が配されうる。そこで、
図1に示されるように、複数の使用レンズ121のそれぞれが読取領域131を縮小結像する結像領域141が、複数のセンサチップ111のチップ間112に配されないように、それぞれの使用レンズ121およびセンサチップ111が配されうる。
【0027】
また、
図2に示されるように、互いに隣接するように配された使用レンズ121の結像領域141が重なる場合、つまり、長さLbw、L1が、
0.00<{(L1-Lbw)/L1}≦0.10 ・・・ (3')
の関係を満たす(像側Overlap率がプラスになる)場合を考える。この場合、複数の使用レンズ121のうち複数のセンサチップ111のチップ間112を跨いで配される2つの使用レンズの結像領域141が重なる領域が、複数のセンサチップ111のチップ間112に配されるように、それぞれの使用レンズ121およびセンサチップ111が配されうる。
【0028】
さらに、複数のセンサチップ111のそれぞれに、複数の結像領域141が配されていてもよい。それぞれのセンサチップ111に複数の結像領域141が配されることによって、センサ101に用いられるセンサチップ111の数や、センサチップのうち画像を得るために使用される画素(受光素子)の数を適当な数にすることができる。例えば、1つのセンサチップ111に2個以上かつ5個以下の結像領域141が配されるように、使用レンズ121およびセンサチップ111の位置が決定されてもよい。
【0029】
例えば、複数のセンサチップ111のそれぞれの配列方向(X方向)の長さをLsc、複数のセンサチップ111のそれぞれに配される結像領域141の数をIS(
図3において「IS数」と示されている。)、使用レンズ121のそれぞれがセンサチップ111に縮小結像する結像領域141の配列方向の長さをL1としたときに、
0.20≦{(IS・L1)/Lsc}≦1.10 ・・・ (4)
を満たしていてもよい。
【0030】
式(4)の下限を下回った場合、センサ101において、画像の生成に使用されない画素(受光素子)領域が増加し、センサ101の使用効率が低下してしまう。このため、式(4)の下限は、センサ101を有効に使用可能な0.26以上であってもよい。また、式(4)の下限は、0.32以上であってもよいし、さらに、0.34以上であってもよい。一方、式(4)の上限は、互いに隣接するように配された使用レンズ121によって合成される像の重なりに起因する画質の低下が生じ難い0.94以下であってもよい。また、式(4)の上限は、さらなる画質の向上のために、0.51以下であってもよいし、さらに、0.45以下であってもよい。尚、本実施例の読取装置に用いる複数のセンサチップ111の配列方向(X方向)の長さLscはセンサチップの感度を持つ部分(受光部)の長さのことであり、この長さは全てのセンサチップで同じである必要は無い。ただし、センサチップごとに上記の式(4)が成立していることが望ましい。
【0031】
また、センサチップ111の配列方向の長さLscと、結像領域141の配列方向の長さL1と、が、
1.50≦(Lsc/L1)≦50.0 ・・・ (5)
を満たしていてもよい。
【0032】
式(5)の下限を下回った場合、センサチップ111が結像領域141に対して小さくなり、より多くのセンサチップ111が必要になる。このため、式(5)の下限は、1.50以上であってもよい。また、式(5)の下限は、2.30以上であってもよいし、さらに、3.90以上であってもよい。一方、式(5)の上限は、結像領域141の大きさが小さくなることによる画質の低下によって決定される。式(5)の上限は、画質の低下が生じ難い9.80以下であってもよい。また、式(5)の上限は、さらなる画質の向上のために、6.2以下であってもよいし、さらに、5.8以下であってもよい。
【0033】
上述したが、互いに隣接するように配された2つの使用レンズ121の間に配される不使用レンズ122の数が、2つの使用レンズ121の組み合わせによって異なっていてもよい。例えば、複数の使用レンズ121のうち複数のセンサチップ111のチップ間112を跨いで配される2つの使用レンズの間に配される不使用レンズ122の数と、複数の使用レンズ121のうち複数のセンサチップ111のチップ間112を跨がずに配される2つの使用レンズの間に配される不使用レンズ122の数と、が互いに異なっていてもよい。
【0034】
次に、ロッドレンズ120の光軸方向(Y方向)の長さLzの他のパラメータに対する関係について説明する。読取領域131からロッドレンズアレイ102(ロッドレンズ120)の光入射面までの距離Lo、ロッドレンズアレイ102(ロッドレンズ120)の光出射面からセンサ101までの距離Li、および、ロッドレンズ120の光軸方向の長さLzは、
0.10≦[Li・Lo/{(Li+Lo)・Lz}]≦5.00 ・・・ (6)
の関係を満たしていてもよい。
【0035】
式(6)の下限を下回った場合、距離Loや距離Liが短くなる。換言すると、ロッドレンズ120のパワーが強くなる(焦点距離fが短くなる)。ロッドレンズ120のような屈折率分散レンズにおいて、焦点距離fが短いレンズを精度良く製造することは難しく、ロッドレンズの精度が低下してしまうおそれがある。また、通常のレンズであっても、焦点距離fが短いレンズは収差が大きくなりやすい。このため、式(6)の下限は、0.25以上であってもよい。また、式(6)の下限は、0.30以上であってもよいし、さらに、0.35以上であってもよい。一方、式(6)の上限を上回った場合、ロッドレンズ120の長さLzが短くなりすぎてしまう。つまり、ロッドレンズ120内の屈折率分布をより正確に制御しなくてはならなくなるため、ロッドレンズ120の製造時の誤差が出やすくなる。また、不使用レンズ122として入射光をロッドレンズ120の側壁に当たるように制御して遮光をしようとした場合、ロッドレンズ120の長さLzが短くなると、遮光の機能が低下してしまう。したがって、式(6)の上限は、ロッドレンズ120の製造誤差などを考慮し、3.00以下であってもよい。また、式(6)の上限は、1.00以下であってもよいし、さらに、0.60以下であってもよい。
【0036】
さらに、読取領域131からロッドレンズアレイ102(ロッドレンズ120)の光入射面までの距離Lo、ロッドレンズアレイ102(ロッドレンズ120)の光出射面からセンサ101までの距離Li、および、ロッドレンズ120の光軸方向の長さLzは、
0.30≦{(Li・Lo)/(Lz2)}≦200 ・・・ (7)
の関係を満たしていてもよい。
【0037】
式(7)の下限を下回った場合、式(6)と同様に距離Loや距離Liが短くなる。このため、式(7)の下限は、0.50以上であってもよい。また、式(7)の下限は、0.90以上であってもよいし、さらに、1.00以上であってもよい。一方、式(7)の上限を上回った場合、式(6)と同様にロッドレンズ120の長さLzが短くなりすぎてしまう。したがって、式(7)の上限は、70.0以下であってもよい。また、式(7)の上限は、20.0以下であってもよいし、さらに、9.90以下であってもよい。
【0038】
次に、ロッドレンズ120のレンズ径をLrと、ロッドレンズ120の光軸方向の長さLzと、は、
3.00≦(Lz/Lr)≦200 ・・・ (8)
の関係を満たしていてもよい。
【0039】
式(8)の下限を下回った場合、ロッドレンズ120の長さLzが短くなりすぎてしまう。このため、式(8)の下限は、ロッドレンズ120の長さLzを適当な長さにするために、5.00以上であってもよい。また、式(8)の下限は、10.0以上であってもよいし、さらに、15.0以上であってもよい。一方、式(8)の上限を上回った場合、ロッドレンズ120のレンズ径Lrが小さくなり、ロッドレンズ120内の屈折率分布をより正確に制御しなくてはならなくなるため、ロッドレンズ120の製造時の誤差が出やすくなる。したがって、ロッドレンズ120の製造時の誤差を考慮し、式(8)の上限は、70.0以下であてもよい。また、式(8)の上限は、50.0以下であってもよいし、さらに、28.0以下であってもよい。
【0040】
さらに、結像領域141の配列方向(X方向)の長さL1と、複数のロッドレンズ120の光軸方向(Y方向)の長さLzと、は、
0.50≦(Lz/L1)<100 ・・・ (9)
の関係を満たしていてもよい。
【0041】
式(9)の下限を下回った場合、ロッドレンズ120の長さLzが短くなりすぎてしまう。このため、式(9)の下限は、2.00以上であってもよい。また、式(9)の下限は、4.00以上であってもよいし、さらに、4.55以上であってもよい。一方、式(9)の上限を上回った場合、結像領域141の大きさが小さくなり、画質が低下してしまう可能性がある。したがって、式(9)の上限は、画質の低下が生じ難い60.0未満であってもよい。また、式(9)の上限は、40.0以下であってもよいし、さらに、6.00以下であってもよい。
【0042】
読取領域131をセンサ101に縮小結像する倍率をMとしたとき、
0.05≦M≦0.80 ・・・ (10)
の関係を満たしていてもよい。
【0043】
式(10)の下限は、センサ101(センサチップ111)の解像度によって決定されうる。式(10)の下限は、0.10以上であってもよいし、さらに、0.18以上であってもよい。一方、式(10)の上限を上回った場合、被写界深度が浅くなってしまう。したがって、式(10)の上限は、被写界深度の深さを考慮し、0.70以下であってもよい。また、式(10)の上限は、0.40以下であってもよいし、さらに、0.34以下であってもよい。
【0044】
このように、本実施形態の読取装置100において、ロッドレンズアレイ102に配されるロッドレンズ120は、使用レンズ121と不使用レンズ122とに分かれる。さらに、使用レンズ121および不使用レンズ122を上述の関係になるように配置することによって、ロッドレンズアレイ102を縮小光学系に適用しつつ、近接する複数のロッドレンズによって合成される像のボケを抑制する。結果として、被写界深度が深い読取装置100を得ることができる。
【0045】
次いで、本実施形態の読取装置100の応用例として、読取装置100が組み込まれた検査装置および読取システムについて説明する。
図6(a)は、読取装置100が組み込まれた検査装置600について説明する図である。
図6(b)は、読取装置100が組み込まれた読取システム610について説明する図である。
【0046】
読取装置100は、
図6(a)、6(b)に示されるように、照明装置151によって照明された被写体200(被照明体)の画像情報を取得してもよい。つまり、読取装置100は、読取領域131を照明するための照明装置151をさらに含んでいてもよい。センサ101およびロッドレンズアレイ102は、
図6(a)、6(b)に示されるように、1つの筐体に収められていてもよい。また、1つの筐体に収められたセンサ101およびロッドレンズアレイ102と、照明装置151と、が
図6(a)、6(b)に示されるように、1つの筐体に収められていてもよい。しかしながら、読取装置100の各構成の配置は、これに限られることはなく、被写体の画像情報が取得できればよい。
【0047】
被写体200が、
図6(a)、6(b)に示されるように大きさ(高さ)に差がある場合、撮像に際して深い被写界深度が求められる。したがって、使用レンズ121と不使用レンズ122とが上述の関係を有するロッドレンズアレイ102を含む読取装置100は、高さが異なる被写体200に対してピントを合わせることが可能になる。
【0048】
大きさが異なる被写体200に対してピントを合わせられる読取装置100は、例えば、
図6(a)に示されるような、検査装置600に適用することができる。検査装置600は、読取装置100と、読取装置100で取得した画像情報を用いて被写体200の状態を検査する検査部601と、を含みうる。例えば、検査部601は、被写体200が所定の状態にあるか否かの良否を検査してもよいし、被写体200の大きさや色などに応じて類別する検査を行ってもよい。ここで状態とは、特定の項目(例えば、サイズや色味など)に対してあらかじめ設けた判定基準に対しての被写体200についての良否状態でもよいし、印刷物の画像品位の状態でもよいし、印刷物の発色状態でもよい。また、検査装置600は、
図6(a)に示されるような、被写体200を搬送するための搬送装置602を備えていてもよい。検査装置600は、例えば、ライン状のロッドレンズアレイ102およびセンサ101(例えば、
図6(a)の紙面と交差する方向に延びるラインセンサ)を備え、搬送装置602上を移動する被写体200を検査する検査装置であってもよい。大きさが異なる被写体200に対してピントを合わせられる読取装置100によって、検査装置600での検査の精度を高めることが可能になる。
【0049】
また、大きさが異なる被写体200に対してピントを合わせられる読取装置100は、例えば、
図6(b)に示されるような、読取システム610に適用することができる。読取システム610は、読取装置100と、読取装置100によって取得された画像情報に基づいて記憶媒体に記憶を行う記憶装置611と、を含む。読取システム610は、複写機やプリンタ、ハードディスクやメモリにデータを記憶するデータ記憶装置などを含む。読取システム610は、上述の検査装置600のように被写体200を移動させながら撮像を行ってもよいし、読取装置100が移動することによって被写体200を撮像してもよい。被写体200が、
図6(b)に示されるように、凸凹している場合であっても、使用レンズ121と不使用レンズ122とが上述の関係を有するロッドレンズアレイ102を含む読取装置100を備える読取システム610は、被写体200の表面にピントが合った像を記憶することができる。
【0050】
記憶装置611が、読取装置100が読み取った画像情報などを、電子データとしてハードディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶してもよい。この場合、記憶装置611が、ハードディスクやメモリなどの記憶媒体を内包していてもよい。また、記憶装置611が、記憶装置611の外部に配されたクラウド上にあるストレージデバイスなどの記憶媒体に読取装置100が読み取った画像情報などを転送する通信装置を備えていてもよい。
【0051】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
100:読取装置、101:センサ、102:ロッドレンズアレイ、120:ロッドレンズ、121:使用レンズ、122:不使用レンズ