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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079873
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】パンツタイプ使い捨て着用物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/496 20060101AFI20230601BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61F13/496 100
A61F13/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193557
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 友記
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 貞直
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA12
3B200BA16
3B200BB03
3B200BB11
3B200CA04
3B200DA01
3B200DA21
3B200EA24
(57)【要約】
【課題】サイドシール領域の不要な変形を低減する。
【解決手段】外装体12F,12Bは、弾性部材15,17を横切って前後方向LDに続く接合位置80に、少なくとも各弾性部材15,17の前後方向LDの両側に密接するように配置された第1シート12S及び第2シート12Hの接合部と、弾性部材15,17を固定する固定部84を有し、サイドシール領域12Aは、幅方向WDの中央側の縁から側方に離間した弾性部材15,17の固定部84と、その固定部84を基準として前後方向LDに±1.5mmの矩形範囲RAに少なくとも一部が含まれる溶着部70の群とを有し、この溶着部70の群を前後方向LDから見たとき、無溶着部72の幅方向WDの寸法が1.5mm未満となり、溶着部70の最長径は0.5~2mmであり、サイドシール領域12Aにおける溶着部70の面積率は5~30%であることにより解決される。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃の両側部と、後身頃の両側部とが接合されて形成された、環状の胴周り領域と、前身頃の胴周り領域から股間部を経て後身頃の胴周り領域にわたる中間領域と、前記胴周り領域における前記中間領域と反対側に設けられたウエスト開口と、前記中間領域の幅方向の両側に設けられた脚開口と、少なくとも前記胴周り領域を形成する外装体と、前身頃の幅方向の中間部から後身頃の幅方向の中間部にわたるように外装体に対して取り付けられた内装体と、前記前身頃における前記外装体の両側部と、前記後身頃における前記外装体の両側部とがそれぞれ内面同士を対向させて溶着接合された溶着部が散在するサイドシール領域とを備え、
前記外装体は、それぞれ不織布からなる第1シート及び第2シートと、これら第1シート及び第2シートの間に前後方向に間隔を空けて配置された、幅方向に沿って延びる複数本の細長状の弾性部材とを有し、
前記第1シート、前記第2シート及び前記弾性部材は、前記サイドシール領域及びその幅方向の中央側にわたり延びており、
前記外装体には、前記弾性部材を横切って前後方向に続く接合位置と、前記弾性部材を横切って前後方向に続く非接合位置とが幅方向に交互に繰り返し設けられ、
各前記接合位置のうち、前記弾性部材と交差しない部分では、前記第1シート及び前記第2シートが溶着された接合部が少なくとも各弾性部材の前後方向の両側に密接するように配置されるとともに、前記弾性部材と交差する部分は、前記弾性部材が前記第1シート及び前記第2シートに固定された固定部となっており、
いずれか一方又は両方の前記サイドシール領域は、幅方向の中央側の縁から側方に離間した前記固定部と、その固定部を基準として前後方向に±1.5mmの矩形範囲に少なくとも一部が含まれる前記溶着部の群とを有し、
前記矩形範囲に少なくとも一部が含まれる前記溶着部の群を前後方向から見たとき、無溶着部の幅方向の寸法が1.5mm未満となるように、幅方向に複数の溶着部が並んでおり、
前記溶着部の最長径は0.5~2mmであり、前記サイドシール領域における前記溶着部の面積率は5~30%である、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記サイドシール領域全体を幅方向から見たとき、無溶着部の前後方向の寸法が展開状態の前記弾性部材の前後方向の寸法よりも短くなるように、前後方向に複数の溶着部が並んでいる、
請求項1記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記溶着部は、前記幅方向に沿う振動中心を有し、波長が前記サイドシール領域の幅方向の寸法よりも短い波線に沿って間隔を空けて配列された単位配列が、前後方向に間隔を空けて繰り返し設けられており、
前記振動中心との各交差位置に前記溶着部が設けられるとともに、前記振動中心の前後両側に少なくとも一つの前記溶着部を有する、
請求項2記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記サイドシール領域の側縁に接する溶着部が前後方向に間隔を空けて繰り返し設けられている、
請求項3記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記接合位置の幅方向の間隔は、前記サイドシール領域の幅方向の寸法よりも短く、
前記接合位置は、前記前後方向に沿う振動中心を有し、全振幅が前記サイドシール領域の幅方向の寸法よりも短い波状をなしている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドシール領域を備えたパンツタイプ使い捨て着用物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パンツタイプ使い捨ておむつや、パンツタイプ使い捨て生理用ナプキン、パンツタイプ使い捨ておむつカバー等のパンツタイプ使い捨て着用物品は、前身頃の両側部と後身頃の両側部とがそれぞれ内面同士を対向させて溶着接合された溶着部が散在するサイドシール領域を有しており、このサイドシール領域の形成により、ウエスト開口及び脚開口が予め形成されたものである。したがって、この種のパンツタイプ使い捨て着用物品では、外面に突出するサイドシール領域が不可避的に存在する(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
このようなパンツタイプ使い捨て着用物品では、排泄後などにおいておむつを脱がす際、サイドシール領域で前身頃と後身頃とを引き剥がし、おむつを身体から取り除くことが行われる。このため、サイドシール領域には、装着中に破れないような剥離強度だけでなく、使用後の剥がし易さも求められており、従来から様々な技術が提案されている。なお、周知のように、サイドシール領域の引き剥がし(剥離)には、界面剥離の他、溶着部の周囲に沿う基材破壊(破断)も含まれる。
【0004】
一般に、サイドシール領域には溶着部が間隔を空けた所定のパターンで配列され、各溶着部の面積が大きいほど、またサイドシール領域に占める溶着部の面積の割合(以下、単に面積率ともいう)が高いほど、サイドシール領域の引き剥がしは困難となるが、溶着部が硬質であるためサイドシール領域の形状安定性は高くなる。
【0005】
また、一般的なパンツタイプ使い捨て着用物品では、身体に対するフィット性を確保するために、外装体のウエスト部を含む領域に幅方向の伸縮を可能とする伸縮構造が設けられている。
【0006】
このような伸縮構造の代表的なものは、重なり合う第1シート及び第2シートの間に、伸縮方向に沿ってかつ互いに間隔を空けて設けられた細長状の弾性部材を備えるものである。第1シート及び第2シートは面状の伸縮領域を形成するとともに、弾性部材を被覆、隠蔽する役割を担い、第1シート及び第2シート間に内蔵される弾性部材は、弾性伸縮のための力を生み出す役割を担うものである。弾性部材は、伸縮方向に伸長された状態で、少なくとも伸縮領域の両端部に位置する部分が第1シート及び第2シートに固定される。この固定により、弾性部材と第1シート及び第2シートとが一体化され、第1シート及び第2シートは弾性部材の収縮力により収縮して襞(皺状のものも含む。自然長状態だけでなく、弾性部材が伸長した状態でも形成される。以下、単に襞ともいう。)が形成され、またこの収縮状態から弾性部材の収縮力に抗して伸長されると、襞が展開される。通常、第1シート及び第2シートは弾性伸長限界では襞が無い展開状態となり、弾性部材の収縮に伴って襞が寄り、自然長状態では最も密に襞が寄る。
【0007】
このような伸縮構造では、第1シート及び第2シートが互いに自由であると、一方のシートが他方のシートに対して部分的又は全体的に浮いて不必要な襞や膨らみを生じるおそれがあり、装着時のフィット性の悪化やずれの原因ともなるため、第1シート及び第2シートはそのほぼ全体にわたり直接的又は間接的に接合されている必要がある。また、弾性部材により伸縮性を生み出すため、弾性部材は伸縮領域の伸縮方向の全体にわたり延在され、かつ少なくとも伸縮領域の伸縮方向の両端部に位置する部分は第1シート及び第2シートに対して固定され、自然長状態では弾性部材の収縮に伴い第1シート及び第2シートも収縮されている必要がある。つまり、第1シート及び第2シート間の接合と、第1シート及び第2シートに対する弾性部材の固定とが必要となるのである。
【0008】
また、第1シート及び第2シートの接合パターンは襞の形状に影響する。このため、外装体には、弾性部材を横切って前後方向に続く接合位置と、弾性部材を横切って前後方向に連続する非接合位置とが、幅方向に交互に繰り返し設けられ、各接合位置のうち、弾性部材と交差しない部分では、第1シート及び第2シートが溶着された接合部が少なくとも各弾性部材の前後方向の両側に密接するように配置されるとともに、弾性部材と交差する部分は、弾性部材が第1シート及び第2シートに固定された固定部となっているものが提案されている(特許文献1~4参照)。この場合、接合部及び固定部が連なる接合列と、非接合部とが幅方向に繰り返し形成されるため、製品の収縮状態では、第1シート及び第2シートのうち非接合部に位置する部分が互いに反対向きに離れるように膨らんで、伸縮方向と直交する方向に綺麗に延びる襞が形成される。
【0009】
他方、このような伸縮構造を形成する場合、第1シート、第2シート及び弾性部材は、サイドシール領域及びその幅方向の中央側にわたり延びていると、製造が容易であるため好ましい。
【0010】
しかしながら、図18に示すように、サイドシール領域12Aにおける幅方向WDの中央側の縁70eから側方に離間した位置に弾性部材15の固定部84を有すると、サイドシール領域12Aにおける固定部84よりも幅方向WDの中央側の部分が弾性部材15に伴い収縮し、サイドシール領域12Aに不必要な変形が発生し、皺12w等が形成されることがある。このような不必要な変形が発生すると、外観だけでなく、サイドシール領域12Aの手触りや装着感の悪化をもたらすおそれがあるため好ましくない。なお、図18中の符号81は第1シート及び第2シートの接合部を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2016-067436号公報
【特許文献2】国際公開2018/154684号
【特許文献3】特開2020-199248号公報
【特許文献4】特許6794546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の主たる課題は、サイドシール領域の不必要な変形を低減すること等にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための代表的態様は次のとおりである。
<第1の態様>
前身頃の両側部と、後身頃の両側部とが接合されて形成された、環状の胴周り領域と、前身頃の胴周り領域から股間部を経て後身頃の胴周り領域にわたる中間領域と、前記胴周り領域における前記中間領域と反対側に設けられたウエスト開口と、前記中間領域の幅方向の両側に設けられた脚開口と、少なくとも前記胴周り領域を形成する外装体と、前身頃の幅方向の中間部から後身頃の幅方向の中間部にわたるように外装体に対して取り付けられた内装体と、前記前身頃における前記外装体の両側部と、前記後身頃における前記外装体の両側部とがそれぞれ内面同士を対向させて溶着接合された溶着部が散在するサイドシール領域とを備え、
前記外装体は、それぞれ不織布からなる第1シート及び第2シートと、これら第1シート及び第2シートの間に前後方向に間隔を空けて配置された、幅方向に沿って延びる複数本の細長状の弾性部材とを有し、
前記第1シート、前記第2シート及び前記弾性部材は、前記サイドシール領域及びその幅方向の中央側にわたり延びており、
前記外装体には、前記弾性部材を横切って前後方向に続く接合位置と、前記弾性部材を横切って前後方向に続く非接合位置とが幅方向に交互に繰り返し設けられ、
各前記接合位置のうち、前記弾性部材と交差しない部分では、前記第1シート及び前記第2シートが溶着された接合部が少なくとも各弾性部材の前後方向の両側に密接するように配置されるとともに、前記弾性部材と交差する部分は、前記弾性部材が前記第1シート及び前記第2シートに固定された固定部となっており、
いずれか一方又は両方の前記サイドシール領域は、幅方向の中央側の縁から側方に離間した前記固定部と、その固定部を基準として前後方向に±1.5mmの矩形範囲に少なくとも一部が含まれる前記溶着部の群とを有し、
前記矩形範囲に少なくとも一部が含まれる前記溶着部の群を前後方向から見たとき、無溶着部の幅方向の寸法が1.5mm未満となるように、幅方向に複数の溶着部が並んでおり、
前記溶着部の最長径は0.5~2mmであり、前記サイドシール領域における前記溶着部の面積率は5~30%である、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0014】
(作用効果)
本パンツタイプ使い捨て着用物品のサイドシール領域は、その幅方向の中央側の縁から側方に離間した固定部を有するものの、その固定部の前後方向に±1.5mmの矩形範囲に少なくとも一部が含まれる溶着部の群を有している。しかも、この溶着部の群を前後方向から見たとき、無溶着部の幅方向の寸法が1.5mm未満となるように、幅方向に複数の溶着部が比較的に密に並んでいる。また、溶着部は無溶着部と比較して顕著に剛性が高い。よって、サイドシール領域にける固定部よりも幅方向の中央側の部分に弾性部材の収縮力が作用しても、その付近に比較的に密に配置された溶着部(高剛性の部分)により変形が抑制される。
単にサイドシール領域を高剛性とするだけでなら、溶着部の面積やその割合を増加すればよいが、その場合、サイドシール領域が硬くなるだけでなく、使用後の引き剥がしが困難となる。よって、溶着部の最長径、並びにサイドシール領域における溶着部の面積率を上記範囲内に抑えつつ、上記弾性部材に対する溶着部の配置を採用することが重要である。
なお、サイドシール領域の幅方向の中央側の縁は、最も幅方向の中央側に位置する溶着部の外周縁のうち最も幅方向の中央側に位置する部分を通り前後方向に直線的に延びる仮想線を意味する。言うまでもないが、サイドシール領域の側縁、上縁及び下縁は、第1シート及び第2シート縁に一致する。
【0015】
<第2の態様>
前記サイドシール領域全体を幅方向から見たとき、無溶着部の前後方向の寸法が展開状態の前記弾性部材の前後方向の寸法よりも短くなるように、前後方向に複数の溶着部が並んでいる、
第1の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0016】
(作用効果)
本第2の態様によれば、サイドシール領域内の弾性部材の通過位置には少なくとも一つの溶着部が存在するため、その分だけ、サイドシール領域において弾性部材の収縮力が直接作用する部分が減少し、サイドシール領域において弾性部材の収縮力により形成される皴が低減する。
また、外装体の固定部による弾性部材の固定がサイドシール領域内で不十分であると、弾性部材の端部がサイドシール領域よりも幅方向中央側に抜け出てしまい、サイドシール領域よりも幅方向中央側の伸縮性が損なわれるおそれがある。これに対して、本第2の態様によれば、サイドシール領域内の弾性部材の通過位置には少なくとも一つの溶着部が存在し、この弾性部材と交差する溶着部が弾性部材の固定を補助することとなる。よって、外装体の固定部による弾性部材の固定がサイドシール領域内で不十分となっても、弾性部材の端部がサイドシール領域よりも幅方向中央側に抜け出にくいものとなる。
【0017】
<第3の態様>
前記溶着部は、前記幅方向に沿う振動中心を有し、波長が前記サイドシール領域の幅方向の寸法よりも短い波線に沿って間隔を空けて配列された単位配列が、前後方向に間隔を空けて繰り返し設けられており、
前記振動中心との各交差位置に前記溶着部が設けられるとともに、前記振動中心の前後両側に少なくとも一つの前記溶着部を有する、
第2の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0018】
(作用効果)
外装体における弾性部材の固定部の位置が製造上の理由により前後方向や幅方向に変動しても、サイドシール領域における溶着部は弾性部材の付近に密に配置されるだけでなく、弾性部材の前後両側にバランスよく配置されるため好ましい。
【0019】
<第4の態様>
前記サイドシール領域の側縁に接する溶着部が前後方向に間隔を空けて繰り返し設けられている、
第3の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0020】
(作用効果)
サイドシール領域の側縁に接する溶着部が設けられていることにより、サイドシール領域は側縁まで平坦となるため好ましい。
【0021】
<第5の態様>
前記接合位置の幅方向の間隔は、前記サイドシール領域の幅方向の寸法よりも短く、
前記接合位置は、前記前後方向に沿う振動中心を有し、全振幅が前記サイドシール領域の幅方向の寸法よりも短い波状をなしている、
第1~4のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0022】
(作用効果)
このような波状の接合位置に沿って接合部及び弾性部材の固定部を設けると、サイドシール領域の少なくとも一部に必ず、サイドシール領域の幅方向の中央側の縁から側方に離間した固定部が存在することとなる。また、このような波状の接合位置に沿って接合部及び弾性部材の固定部が設けられていると、サイドシール領域における固定部よりも幅方向の中央側の部分が弾性部材に伴い収縮して不必要に変形するとき、皺の方向が斜めとなったり、皺が形成される部分と形成されない部分とが発生したりし、外観や手触りの悪化が特に顕著となる。よって、前述の溶着部による不要な変形の低減は、本態様の場合に特に技術的意義が大きいものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、サイドシール領域の不要な変形を低減できる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの内面を示す、平面図である。
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの外面を示す、平面図である。
図3図1の2-2断面図である。
図4図1の3-3断面図である。
図5】(a)図1の4-4断面図、及び(b)図1の5-5断面図である。
図6】パンツタイプ使い捨ておむつの斜視図である。
図7】展開状態の内装体の外面を外装体の輪郭とともに示す、平面図である。
図8】強接合部、弱接合部及び非接合部を誇張して概略的に示した外装体の接合位置における断面図である。
図9図8の例における(a)外側部分の平面図、及び(b)内側部分の平面図である。
図10】強接合部、弱接合部及び非接合部を誇張して概略的に示した外装体の接合位置における断面図である。
図11図10の例における(a)外側部分の平面図、及び(b)内側部分の平面図である。
図12】展開状態のサイドシール領域及びその近傍領域の外面を示す、平面図である。
図13図12のEV部分の拡大図である。
図14】展開状態のサイドシール領域及びその近傍領域の外面を示す、平面図である。
図15図14のEV部分の拡大図である。
図16】展開状態のサイドシール領域及びその近傍領域の外面を示す、平面図である。
図17図16のEV部分の拡大図である。
図18】サイドシール領域の皺の形成メカニズムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、パンツタイプ使い捨て着用物品の一例として、パンツタイプ使い捨ておむつについて、添付図面を参照しつつ詳説する。厚み方向に隣接する各構成部材は、以下に述べる固定又は接合部以外も、必要に応じて公知のおむつと同様に固定又は接合される。断面図における点模様部分は、この固定又は接合手段としてのホットメルト接着剤等の接着剤を示している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状、波状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、ポリオレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する固定又は接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。厚み方向の液の透過性が要求される部分では、厚み方向に隣接する構成部材は間欠的なパターンで固定又は接合される。例えば、ホットメルト接着剤によりこのような間欠的な固定又は接合を行う場合、スパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を好適に用いることができ、一つのノズルによる塗布幅以上の範囲に塗布する場合には、幅方向に間隔を空けて又は空けずにスパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を行うことができる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0026】
また、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等を含む)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
【0027】
図1図6は、パンツタイプ使い捨ておむつを示している。本パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃Fの少なくとも胴周り部を構成する長方形の前側外装体12F及び後身頃Bの少なくとも胴周り部を構成する長方形の後側外装体12Bと、前側外装体12Fから股間部を経て後側外装体12Bまで延在するように外装体12F,12Bの内側に設けられた内装体200とを備えており、前側外装体12Fの両側部と後側外装体12Bの両側部とが接合されてサイドシール領域12Aが形成されることにより、外装体12F,12Bの前後端部により形成される開口が装着者の胴を通すウエスト開口WOとなり、内装体200の幅方向両側において外装体12F,12Bの下縁及び内装体200の側縁によりそれぞれ囲まれる部分が脚を通す脚開口LOとなる。内装体200は、尿等の排泄物等を吸収保持する部分であり、外装体12F,12Bは着用者の身体に対して内装体200を支えるための部分である。また、符号Yは展開状態におけるおむつの全長(前身頃Fのウエスト開口WOの縁Weから後身頃Bのウエスト開口WOの縁Weまでの前後方向長さ)を示しており、符号Xは展開状態におけるおむつの全幅を示している。
【0028】
本パンツタイプ使い捨ておむつは、前身頃Fの両側部と、後身頃Bの両側部とがサイドシール領域12Aで接合されて形成された、環状の胴周り領域Tと、前身頃Fの胴周り領域Tから股間部を経て後身頃Bの胴周り領域Tにわたる中間領域Lと、胴周り領域Tにおける中間領域Lと反対側に設けられたウエスト開口WOと、中間領域Lの幅方向WDの両側に設けられた脚開口LOとを有する。換言すると、胴周り領域Tは、ウエスト開口WOの縁と脚開口LOの上端を通り幅方向に延びる仮想直線との間のとして定まり、中間領域Lは、前身頃Fのサイドシール領域12Aの下端と、後身頃Bのサイドシール領域12Aの下端との間の前後方向LD範囲として定まる。図1及び図2に示す展開状態では、中間領域Lの両側縁は被着者の脚周りに沿うようにコ字状又は曲線状に括れており、おむつ全体の形状は略砂時計状となる。
【0029】
また、本パンツタイプ使い捨ておむつは、二つの主要アセンブリ、つまり少なくとも胴周り領域Tを形成する外装体12F,12Bと、前身頃Fから後身頃Bにわたるように外装体12F,12Bに対して取り付けられた内装体200とを備える。サイドシール領域12Aには、前身頃Fにおける外装体12Fの両側部と、後身頃Bにおける外装体12Bの両側部とがそれぞれ内面同士を対向させて溶着接合された溶着部70が散在している。サイドシール領域12Aの幅方向WDの寸法は適宜定めることができる。一例として、サイドシール領域12Aの幅方向WDの寸法は10~20mmとすることができる。
【0030】
(内装体)
内装体200は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。内装体200は、図3図5に示されるように、身体側となるトップシート30と、液不透過性シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えているものであり、吸収機能を担うアセンブリである。符号40は、トップシート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、トップシート30と吸収要素50との間に設けられた中間シート(セカンドシート)を示しており、符号60は、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側部から装着者の脚周りに接するように延び出た起き上がりギャザー60を示している。
【0031】
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、有孔プラスチックシートなどを例示することができる。また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
【0032】
トップシート30の両側部は、吸収要素50の側縁で裏側に折り返しても良く、また折り返さずに吸収要素50の側縁より側方にはみ出させても良い。
【0033】
トップシート30は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0034】
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体56へ移行させるためや、吸収した液の吸収体56からの「逆戻り」現象を防止するために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。中間シート40は省略することもできる。
【0035】
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド不織布又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/m2が好ましく、17~50g/m2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
【0036】
図示例の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、おむつの全長と同一でもよいし、吸収要素50の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0037】
中間シート40は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、中間シート40はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により包装シート58のうち吸収体56の表側に位置する部分の表面に固定されている。
【0038】
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。液不透過性シート11には、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることにより防漏性を強化した不織布、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができるが、後述するカバー不織布13とのホットメルト接着剤を介した接着時に十分な接着強度を得るため、樹脂フィルムを用いるのが望ましい。
【0039】
液不透過性シート11は、図示のように吸収要素50の裏側に収まる幅とする他、防漏性を高めるために、吸収要素50の両側を回り込ませて吸収要素50のトップシート30側面の両側部まで延在させることもできる。この延在部の幅は、左右それぞれ5~20mm程度が適当である。
【0040】
(起き上がりギャザー)
起き上がりギャザー60は、内装体200の両側部に沿って前後方向LDの全体にわたり延在し、装着者の脚周りに接して横漏れを防止するために設けられているものである。必要に応じて、起き上がりギャザー60は省略することもできる。
【0041】
図1図3及び図4に示される起き上がりギャザー60(いわゆる立体ギャザー)は、内装体200の側部から表側に起立するものである。この起き上がりギャザー60は、付け根側部分60Bが幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側部分60Aが幅方向外側に向かって斜めに起立するものであるが、これに限定されるものではなく、全体として幅方向中央側に起立する形態等、適宜の変更が可能である。
【0042】
より詳細に説明すると、図示例の起き上がりギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザー不織布62を、先端となる部分で幅方向WDに折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状のギャザー弾性部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向WDに間隔を空けて複数本固定してなるものである。起き上がりギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向WDにおいてシート折り返し部分と反対側の端部)は、内装体200における液不透過性シート11より裏側の側部に固定された付根部分65とされ、この付根部分65以外の部分は付根部分65から延び出る本体部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、本体部分66は、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され、幅方向外側に延びる先端側部分60Aとを有している。この形態は面接触タイプの起き上がりギャザー60であるが、幅方向外側に折り返されない線接触タイプの起き上がりギャザー60も採用することができる。そして、本体部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態でトップシート30の側部表面に対して固定された倒伏部分67とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の自由部分68とされ、この自由部分68の少なくとも先端部に前後方向LDに沿うギャザー弾性部材63が伸長状態で固定されている。
【0043】
以上のように構成された起き上がりギャザー60では、ギャザー弾性部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、本体部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分68とされているため、自由部分68のみが図3に矢印で示すように身体側に当接するように起立する。特に、付根部分65が内装体200の裏側に位置していると、股間部及びその近傍において自由部分68が幅方向外側に開くように起立するため、起き上がりギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
【0044】
図示例の起き上がりギャザー60のように、本体部分66が、幅方向中央側に延びる付け根側部分60Bと、この付け根側部分60Bの先端で折り返され幅方向外側に延びる先端側部分60Aとからなる屈曲形態では、倒伏部分67で、先端側部分60Aと付け根側部分60Bとが倒伏状態で接合されるとともに、付け根側部分60Bが倒伏状態でトップシート30に接合される。倒伏部分67における対向面の接合には、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。この場合において、付け根側部分60B及びトップシート30の接合と、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合とを同じ手段により行っても、また異なる手段により行っても良い。例えば、付け根側部分60B及びトップシート30の接合をホットメルト接着剤により行い、先端側部分60A及び付け根側部分60Bの接合を素材溶着により行うのは一つの好ましい形態である。
【0045】
ギャザー不織布62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコーンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10~30g/m2程度とするのが好ましい。ギャザー弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470~1240dtexが好ましく、620~940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150~350%が好ましく、200~300%がより好ましい。また、図示のように、二つに折り重ねたギャザー不織布62の間に防水フィルム64を介在させることもでき、この場合には防水フィルム64の存在部分においてギャザー不織布62を部分的に省略することもできるが、製品の外観及び肌触りを布のようにするためには、図示例のように、少なくとも起き上がりギャザー60の基端から先端までの外面がギャザー不織布62で形成されていることが必要である。
【0046】
起き上がりギャザー60の自由部分に設けられるギャザー弾性部材63の本数は2~6本が好ましく、3~5本がより好ましい。配置間隔は3~10mmが適当である。このように構成すると、ギャザー弾性部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にもギャザー弾性部材63を配置しても良い。
【0047】
起き上がりギャザー60の自由部分68では、ギャザー不織布62の内側層及び外側層の貼り合わせや、その間に挟まれるギャザー弾性部材63の固定に、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段の少なくとも一方を用いることができる。ギャザー不織布62の内側層及び外側層の全面を貼り合わせると柔軟性を損ねるため、ギャザー弾性部材63の接着部以外の部分は接着しないか弱く接着するのが好ましい。図示例では、コームガンやシュアラップノズル等の塗布手段によりギャザー弾性部材63の外周面にのみホットメルト接着剤を塗布してギャザー不織布62の内側層及び外側層間に挟むことにより、当該ギャザー弾性部材63の外周面に塗布したホットメルト接着剤のみで、ギャザー不織布62の内側層及び外側層へのギャザー弾性部材63の固定と、ギャザー不織布62の内側層及び外側層間の固定とを行う構造となっている。
【0048】
同様に、起き上がりギャザー60に組み込まれる防水フィルム64とギャザー不織布62との固定や、倒伏部分67の固定についても、種々の塗布方法によるホットメルト接着剤、及びヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段の少なくとも一方を用いることができる。
【0049】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、この吸収体56の全体を包む包装シート58とを有する。包装シート58は省略することもできる。
【0050】
(吸収体)
吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0051】
吸収体56は長方形形状でも良いが、図7等にも示すように、前後方向中間に、その前後両側よりも幅が狭い括れ部56Nとを有する砂時計形状をなしていると、吸収体56自体と起き上がりギャザー60の、脚周りへのフィット性が向上するため好ましい。
【0052】
また、吸収体56の寸法は排尿口位置の前後左右にわたる限り適宜定めることができるが、前後方向LD及び幅方向WDにおいて、内装体200の周縁部又はその近傍まで延在しているのが好ましい。なお、符号56Xは吸収体56の全幅を示している。
【0053】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の使い捨ておむつに使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
【0054】
高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0055】
高吸収性ポリマー粒子としては、例えば吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0056】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、例えばゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
【0057】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/m2とすることができる。
【0058】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0059】
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻付け、かつその前後縁部を吸収体56の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0060】
(カバー不織布)
外装二分割タイプのパンツタイプ使い捨ておむつでは、前側外装体12F及び後側外装体12Bとの間に内装体200が露出するため、内装体200の裏面に液不透過性シート11が露出しないように、前側外装体12Fと内装体200との間から、後側外装体12Bと内装体200との間にかけて、内装体200の裏面を覆うカバー不織布13を備えていることが好ましい。
【0061】
カバー不織布13は、繊維の種類や、繊維の結合(交絡)方法により特に限定されるものではなく、例えば、後述する外装体12F,12Bの第1シート及び第2シートと同様のものを適宜選択することができる。カバー不織布13の一例としては、エアスルー不織布を好適に用いることができ、その場合の目付けは20~40g/m2、厚みは0.3~1.0mmであると好ましい。カバー不織布13としては、表裏に貫通する孔を有しない無孔不織布を用いても、また表裏に貫通する孔が間隔を空けて多数設けられた有孔不織布を用いてもよい。
【0062】
カバー不織布13の前後方向範囲は特に限定されず、図2及び図5に示すように、内装体200の前端から後端までの全体にわたり前後方向LDに延在していてもよく、図7に示すように、前側外装体12Fと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置から後側外装体12Bと内装体200とが重なる領域の前後方向中間位置まで前後方向LDに延在していてもよい。また、図7に示す例の場合、カバー不織布13と前側外装体12Fとの重なり部分の前後方向長さ13y、及びカバー不織布13と後側外装体12Bとの重なり部分の前後方向長さ13yは適宜定めることができるが、通常の場合それぞれ20~40mm程度とすることができる。
【0063】
カバー不織布13の幅方向範囲は、液不透過性シート11の裏面露出部分を隠しうる範囲とされる。このため、図示例では、左右の起き上がりギャザー60の基端の間に液不透過性シート11が露出するため、少なくとも一方の起き上がりギャザー60の基端部の裏側から他方の起き上がりギャザー60の基端部の裏側までの幅方向範囲を覆うようにカバー不織布13が設けられている。これにより、液不透過性シート11をカバー不織布13と起き上がりギャザー60のギャザー不織布62とで隠蔽することができる。また、カバー不織布13の幅方向両端部が起き上がりギャザー60の基端部の裏側を覆うのではなく、ギャザー不織布62がカバー不織布13の幅方向両端部の裏側を覆うようにしても、カバー不織布13とギャザー不織布62とで液不透過性シート11を隠蔽することは可能である。この場合、カバー不織布13の両側部がギャザー不織布62により覆われるため、カバー不織布13の両側部が液不透過性シート11から剥がれにくくなるという利点がある。
【0064】
カバー不織布13の内面及び外面は、それぞれ対向面にホットメルト接着剤を介して接着することができる。カバー不織布13の固定領域は、カバー不織布13の前後方向全体及び幅方向全体とするほか、一部を非固定とすることもできる。例えばカバー不織布13の幅方向両端部が非固定であると、起き上がりギャザー60の影響で吸収体56の側部がいくらか収縮した状態でもその影響を受けにくくなり、カバー不織布13に皺や折れが形成されにくいという利点がもたらされる。この場合におけるカバー不織布13の幅方向両端部の非固定部分の幅は適宜定めればよいが、例えば3~10mm、好ましくは5~8mmとすることができる。
【0065】
(内装体固定部)
内装体200の外装体12F,12Bに対する固定は、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により行うことができる。図示例では、内装体200の裏面、つまりこの場合は液不透過性シート11の裏面及び起き上がりギャザー60の付根部分65に塗布されたホットメルト接着剤を介して外装体12F,12Bの内面に対して固定されている。この内装体200と外装体12F,12Bとを固定する内装体固定部201,202は、図2に示すように、両者が重なる領域のほぼ全体に設けることができ、例えば内装体200の幅方向両端部を除いた部分に設けることもできる。
【0066】
(外装体)
図示例の外装体12F,12Bは、前身頃Fの胴周り領域Tを形成する長方形の前側外装体12Fと、後身頃Bの胴周り領域Tを形成する長方形の後側外装体12Bとからなり、前側外装体12F及び後側外装体12Bは股間側で連続しておらず、前後方向LDに離間されたものとなっている。この離間距離12dは例えば全長Yの0.4~0.5倍程度とすることができる。外装体12F,12Bは、前身頃Fから後身頃Bにかけて股間部を通り連続する一体的なものであってもよい。
【0067】
外装体12F,12Bにおける胴周り領域Tに位置する部分は、ウエスト開口WO側の端部を形成するウエスト部Wと、これよりも下側の部分であるウエスト下方部Uとに分けることができる。外装体12F,12Bにおける胴周り領域Tに位置する部分に、幅方向WDの伸縮力が変化する境界(例えば弾性部材の太さや伸長率が変化する)を有する場合は、最もウエスト開口WO側に位置する境界よりもウエスト開口WO側がウエスト部Wとなり、このような境界が無い場合は吸収体56又は内装体200よりもウエスト開口WO側に延び出たウエスト延出部分12Eがウエスト部Wとなる。これらの前後方向LDの長さは、製品のサイズによって異なり、適宜定めることができるが、一例を挙げると、ウエスト部Wは15~40mm、ウエスト下方部Uは65~120mmとすることができる。
【0068】
また、図示例では、前側外装体12F及び後側外装体12Bは前後方向LDの寸法が等しく、それぞれ中間領域Lに位置する部分を有していないが、図7に二点鎖線で示すように、前側外装体12Fよりも後側外装体12Bの方の前後方向寸法が長く、前側外装体12Fには中間領域Lに位置する部分を有していないが、後側外装体12Bは胴周り領域Tから中間領域L側に延び出た臀部カバー部Cを有していてもよい。図示しないが、前側外装体12Fにも胴周り領域Tから中間領域L側に延び出る鼠蹊カバー部を設けたり、鼠径カバー部は設けるものの臀部カバー部は設けない形態としたりしても良い。
【0069】
外装体12F,12Bには、装着者の胴周りに対するフィット性を高めるために、弾性部材15,17が内蔵され、弾性部材15,17の伸縮を伴って幅方向WDに弾性伸縮する伸縮領域A2が形成されている。この伸縮領域A2では、外装体12F,12Bは、自然長の状態では弾性部材の収縮に伴って収縮し、襞が形成されており、弾性部材15,17の長手方向に伸長すると、襞なく伸び切る所定の伸長率まで伸長が可能である。弾性部材15,17としては、糸状、帯状等の公知の細長状の弾性部材を特に限定なく用いることができる。弾性部材15,17としては合成ゴムを用いても、天然ゴムを用いても良い。
【0070】
図示例の弾性部材15,17についてより詳細に説明すると、外装体12F,12Bのウエスト部Wには、幅方向WDの全体にわたり連続するように、複数のウエスト弾性部材17が前後方向に間隔を空けて取り付けられている。また、ウエスト弾性部材17のうち、ウエスト下方部Uに隣接する領域に配設される1本又は複数本については、内装体200と重なっていてもよいし、内装体200と重なる幅方向中央部を除いてその幅方向両側にそれぞれ設けてもよい。このウエスト弾性部材17としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、2~12mmの間隔、特に3~7mmの間隔で、2~15本程度、特に4~10本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト部Wの幅方向WDの伸長率は150~400%、特に220~320%程度であるのが好ましい。ウエスト弾性部材17の前後方向LDの間隔は一定であってもよいし、前後方向LDの中間で変化していてもよい。
【0071】
また、外装体12F,12Bのウエスト下方部Uには、細長状の弾性部材からなるウエスト下方弾性部材15が複数本、前後方向に間隔を空けて取り付けられていると好ましい。ウエスト下方弾性部材15としては、太さ155~1880dtex、特に470~1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05~1.5mm2、特に0.1~1.0mm2程度)の糸ゴムを、1~15mm、特に3~8mmの間隔で5~30本程度設けるのが好ましく、これによるウエスト下方部Uの幅方向WDの伸長率は200~350%、特に240~300%程度であるのが好ましい。ウエスト下方弾性部材15の前後方向LDの間隔は一定であってもよいし、図示例のように前後方向LDの中間で変化していてもよい。
【0072】
図示例のウエスト下方部Uのように、吸収体56を有する前後方向範囲にウエスト下方弾性部材15を設ける場合には、その一部又は全部において吸収体56の幅方向WDの収縮を防止するために、吸収体56と幅方向WDに重なる部分の一部又は全部を含む幅方向中間(好ましくは内装体固定部201,202の全体を含む)が非伸縮領域A1とされ、その幅方向両側が伸縮領域A2とされる。ウエスト部Wは幅方向WDの全体にわたり伸縮領域A2とされるのが好ましいが、ウエスト下方部Uと同様に、幅方向中間に非伸縮領域A1を設けても良い。
【0073】
このような伸縮領域A2及び非伸縮領域A1は、外装体12F,12Bの製造に際し、弾性部材15を固定した後、非伸縮領域A1となる領域において、ウエスト下方弾性部材15を加圧及び加熱により幅方向中間の1か所で切断するか、又は多数個所で細かく切断し、伸縮領域A2に伸縮性を残しつつ非伸縮領域A1では伸縮性を殺すことにより構築することができる。これらの場合、非伸縮領域A1には、伸縮に実質的に寄与しない弾性部材の切断片16等が外装体12F,12B内に残ることとなる。
【0074】
(外装体の積層構造)
図8及び図9に示すように、ウエスト部Wは、不織布からなる第1シート12S及び不織布からなる第2シート12Hが積層された外側部分18と、この外側部分18から続く第1シート12S及び第2シート12Hがウエスト開口WOの縁Weで内側に折り返され、そのうちの第1シート12Sがウエスト部Wの全体にわたり延びて形成された内側部分19とを有し、内側部分19はホットメルト接着剤HMを介して(溶着でもよい)外側部分18に対して接合されている。図示例では、外側部分18の第1シート12S及び第2シート12Hは、ウエスト部W分からウエスト下方部Uにわたり(図示例の場合、胴周り領域Tの全体にわたり)延びているが、これに限定されず、ウエスト下方部Uを別のシートで形成する等、適宜の変更が可能である。また、図示例では、内側部分19の第2シート12Hはウエスト部Wにおける前後方向LDの中間までしか延びておらず、第1シート12Sがウエスト部Wからウエスト下方部Uにかけて延びて、内装体200のウエスト開口WO側の端部を被覆しているが、これに限定されず、例えば第1シート12S及び第2シート12Hの両方がウエスト下方部Uまで延びていてもよいし、第1シート12S及び第2シート12Hの両方がウエスト部W内に収まっていたり、内装体200よりもウエスト開口WO側までしか延びておらず、内装体200の端部を被覆していなかったりしてもよい。また、第2シート12Hは外側部分18のみに存在し、内側部分19まで延びていなくてもよい。さらに、図示例とは異なり、内側部分19を設けなくてもよい。
【0075】
第1シート12S及び第2シート12Hの素材は不織布である限り適宜定めることができる。例えば、第1シート12S及び第2シート12Hとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などからなる不織布を使用することができる。繊維の結合方法としては、例えばエアスルー法やポイントボンド法等を例示することができる。第1シート12S及び第2シート12Hに用いる不織布の繊度、目付け、厚みは適宜定めることができる。一例としては、第1シート12S及び第2シート12Hに用いる不織布は、それぞれ繊度1.0~2.5dtex、目付け10~30g/m2、厚み0.15~0.50mmの長繊維不織布であると好ましい。
【0076】
図8及び図9に示す例では、ウエスト部Wに設けられるウエスト弾性部材17は、外側部分18と内側部分19との間に設けられているが、図10及び図11に示すように、内側部分19における第1シート12Sと第2シート12Hとの間に設けられていてもよい。ウエスト弾性部材17は図8及び図9に示す例ではその外周面に塗布されたホットメルト接着剤HMにより外側部分18及び内側部分19の第2シート12Hに固定されているが、図10及び図11に示す例のように後述する固定部84により固定されていてもよい。ウエスト部Wは、自然長の状態ではウエスト弾性部材17とともに幅方向WDに収縮して襞が形成されているものの、ウエスト弾性部材17とともに幅方向WDに程度伸長した着用状態では襞が広がり、展開状態では完全に襞が無くなるようになっている。
【0077】
ウエスト下方部Uに設けられるウエスト下方弾性部材15は、外側部分18から続く第1シート12Sと第2シート12Hとの間に設けられているが、これに限定されるものではなく、他のシート間に設けることもできる。ウエスト下方弾性部材15は、図示例では後述の接合位置80で溶着により第1シート12S及び第2シート12Hに固定されているが、これに限られずウエスト下方部U弾性部材の外周面に塗布されたホットメルト接着剤HMにより第1シート12S及び第2シート12Hに固定されていてもよい。ウエスト下方部Uは、自然長の状態ではウエスト下方弾性部材15とともに幅方向WDに収縮して襞が形成されているものの、ウエスト下方弾性部材15とともに幅方向WDに程度伸長した着用状態では襞が広がり、展開状態では完全に襞が無くなるようになっている。
【0078】
第1シート12S及び第2シート12Hは、弾性部材15,17を横切って前後方向LDに続く接合位置80と、弾性部材15,17を横切って前後方向LDに続く非接合位置90とが、幅方向WDに交互に繰り返し設けられている。この接合位置80及び非接合位置90は、図示例では第1シート12S及び第2シート12Hの重なり部分のほぼ全体にわたり(つまり、外側部分18及び内側部分19にわたり)続いているが、例えば外側部分18だけや、外側部分18のウエスト下方部Uだけとする等、一部にのみ設けてもよい。
【0079】
各接合位置80のうち、弾性部材15、17と交差しない部分では、第1シート12S及び第2シート12Hが溶着された接合部81,82が少なくとも各弾性部材15、17の前後方向LDの両側に密接するように配置されるとともに、弾性部材15、17と交差する部分は、弾性部材15、17が第1シート12S及び第2シート12Hに固定された固定部84となっている。ここで、第1シート12S及び第2シート12Hが溶着接合されている状態には、第1シート12S及び第2シート12Hのほぼ全ての繊維が溶けて一体化し(例えば10本未満の繊維が飛び出ていてもよい)、フィルム状(周囲より透明度が高くなる)になっている状態だけでなく、第1シート12S及び第2シート12Hの両方で接合面側の層の繊維のほぼ全体が溶着し、反対面側の層の繊維が溶着せずに独立状態で残っている状態や、第1シート12S及び第2シート12Hのいずれか一方のほぼ全ての繊維が溶けてフィルム状になり、他方の繊維のほぼ全体又は接合面と反対側の層の繊維が溶けずに残っている状態等、第1シート12S及び第2シート12Hが接合されるあらゆる状態が含まれる。
【0080】
接合位置80は図示例のように、前後方向LDに沿う直線状とする他、前後方向LDに0~30°傾斜した斜め直線状としたり、図16に示すように波線状としたりすることができる。接合位置80の幅(接合部81,82の幅)及び幅方向WDの間隔(非接合位置90の幅)は適宜定めればよいが、例えば接合位置80の幅は0.1~5mm程度、特に0.5~3mm程度とすることができ、幅方向WDの間隔は3~10mm程度、特に3~5mm程度とすることができる。また、溶着接合の加工方法としては、超音波シールの他、ロールの加温によるヒートシールを用いることができる。
【0081】
図8及び図9に示す例のように、内側部分19の第1シート12S及び第2シート12Hのうち一方のシートが他方のシートよりも前後方向LDの中央側に延び出ている場合、その延び出た部分には接合部82と同様の痕跡82mが残っていてもよいし、全く残っていなくてもよい。
【0082】
接合部81,82は、弾性部材15,17の前後両側に密接する限り、図12及び図13に示すように、全ての隣り合う弾性部材15,17の間の領域において前後方向LD全体にわたり連続していてもよいし、図8及び図9に示す例のように、一部の隣り合う弾性部材15,17の間の領域において前後方向LD全体にわたり連続し、他の隣り合う弾性部材15,17の間の領域では弾性部材15,17の前後近傍にのみ設けられて不連続となっていてもよいし、図14及び図15に示す例のように、全ての隣り合う弾性部材15,17の間の領域において弾性部材15,17の前後近傍にのみ設けられて不連続となっていてもよい。
【0083】
弾性部材15,17の固定部84は、第1シート12S及び第2シート12Hが弾性部材15,17の前後両側に密接する接合部81,82で接合されて形成された筒状部分であり、弾性部材15,17はこの筒状部分内に挟まれる。弾性部材15,17は、筒状部分に挟まれる力だけで固定され、筒状部分に溶着されていなくてもよいし、弾性部材15,17の外周部が筒状部分の第1シート12S及び第2シート12Hのいずれか一方又は両方に溶着されていてもよい。
【0084】
隣り合う弾性部材15,17の間の領域において前後方向全体にわたり連続する接合部81,82を設ける場合、そのような接合部81,82のすべてを一定の接合強度で形成していてもよいが、一般に不織布は溶着による接合強度が弱いほど、繊維の溶融が抑制され、柔軟となるため、例えば弾性部材15,17の前後両側の近傍部分は相対的に接合強度の高い強接合部81を設け、それ以外の部分には、相対的に接合強度の低い弱接合部82を設けることが好ましい。隣り合う弾性部材15,17の間隔が広い場合等、必要に応じて弱接合部82により挟まれた非接合部83を設けることもできる。
【0085】
ここで、接合部81,82の強弱(接合強度)は、単位面積又は単位長さ当たりの接合部を引き裂くのに必要な引張力の大小を意味する。接合の強弱の程度は適宜定めることができるが、例えば強接合部81は、第1シート12S及び第2シート12Hのほぼ全ての繊維が溶けて一体化し(例えば10本未満の繊維が飛び出ていてもよい)、フィルム状(周囲より透明度が高くなる)になっていると好ましい。また、弱接合部82は、第1シート12S及び第2シート12Hの接合面に位置する一部又は全部の繊維が溶着しているものの、反対面の一部又は全部の繊維が溶着しておらず、多数の繊維が変形可能に残存していると好ましい。
【0086】
強接合部81、弱接合部82、非接合部83の寸法は適宜定めることができるが、例えば次の範囲内であると好ましい。
強接合部81の前後方向LDの寸法:2~4mm
弱接合部82の前後方向LDの寸法:強接合部81の前後方向LDの寸法の1.0~2.0倍
非接合部83の前後方向LDの寸法:弱接合部82の前後方向LDの寸法の0.5~1.2倍
【0087】
強接合部81、弱接合部82、非接合部83の厚みは適宜定めることができるが、例えば次の範囲内であると好ましい。
弱接合部82の見かけの厚み:非接合部83における第1シート12Sの見かけの厚み及び第2シート12Hの見かけの厚みの総和の0.5~0.9倍
前記強接合部81の見かけの厚み:弱接合部82の見かけの厚みの0.5~0.9倍
【0088】
(サイドシール領域における溶着部の配列)
図12及び図13に示す例、図14及び図15に示す例、及び図16及び図17に示す例のように、いずれか一方又は両方のサイドシール領域12Aには、サイドシール領域12Aの幅方向WDの中央側の縁70eから側方に離間して前述の弾性部材15,17の固定部84を有することが好ましい。そして、その固定部84を基準として前後方向LDに±1.5mmの矩形範囲RAに少なくとも一部が含まれる溶着部70の群を有するとともに、その溶着部70の群を前後方向LDから見たとき(図13中下部の符号70,72で示される部分参照)、無溶着部72の幅方向WDの寸法が1.5mm未満となるように、幅方向WDに複数の溶着部70が並んでいると好ましい。よって、サイドシール領域12Aにおける固定部84よりも幅方向WDの中央側の部分に弾性部材15,17の収縮力が作用しても、その付近に比較的に密に配置された溶着部70(高剛性の部分)により変形が抑制される。また、固定部84を基準として前後方向LDに±5mmの矩形範囲RBに少なくとも一部が含まれる溶着部70の群を前後方向LDから見たとき、無溶着部72の幅方向WDの寸法が1mm未満であるとより好ましく、0.5mm未満(図15に示す例)であるとさらに好ましく、0mm(図13図17に示す例のように無溶着部72がない)であると特に好ましい。
【0089】
また、サイドシール領域12A全体を幅方向WDから見たとき(図13中左端の符号70,72で示される部分参照)、無溶着部72の前後方向LDの寸法が展開状態の弾性部材15,17の前後方向LDの寸法(展開状態まで伸長したときの直径)よりも短い(例えば展開状態の弾性部材15,17の前後方向LDの寸法の0.9倍以下、より好ましくは0.5倍以下。無溶着部72が存在しない場合も含む。)ように前後方向LDに複数の溶着部70が並んでいるとより好ましい。これにより、サイドシール領域12A内の弾性部材15,17の通過位置には少なくとも一つの溶着部70が存在するため、その分だけ、サイドシール領域12Aにおいて弾性部材15,17の収縮力が直接作用する部分が減少し、サイドシール領域12Aにおいて弾性部材15,17の収縮力により形成される皴が低減する。また、外装体12F,12Bの固定部84による弾性部材15,17の固定がサイドシール領域12A内で不十分であると、弾性部材15,17の端部がサイドシール領域12Aよりも幅方向WD中央側に抜け出てしまい、サイドシール領域12Aよりも幅方向WD中央側の伸縮性が損なわれるおそれがある。これに対して、サイドシール領域12A内の弾性部材15,17の通過位置には少なくとも一つの溶着部70が存在すると、この弾性部材15,17と交差する溶着部70が弾性部材15,17の固定を補助することとなる。よって、外装体12F,12Bの固定部84による弾性部材15,17の固定がサイドシール領域12A内で不十分となっても、弾性部材15,17の端部がサイドシール領域12Aよりも幅方向WD中央側に抜け出にくいものとなる。
【0090】
なお、単にサイドシール領域12Aを高剛性とするだけでなら、溶着部70の面積やその割合を増加すればよいが、その場合、サイドシール領域12Aが硬くなるだけでなく、使用後の引き剥がしが困難となる。よって、溶着部70の最長径は0.5~2mmとし、サイドシール領域12Aにおける溶着部70の面積率(全溶着部70の面積の総和/サイドシール領域12Aの面積)は5~30%としつつ、上記弾性部材15,17に対する溶着部70の配置を採用することが重要である。サイドシール領域12Aにおける溶着部70の面積率は5~20%であるとより好ましく、5~10%であると特に好ましい。
【0091】
溶着部70の平面形状は適宜定めることができ、図示例のような円形(真円形や楕円形)が好ましいが、三角形、四角形、五角形等の多角形の他、星形や雲形等、適宜の形状を採用することができる。溶着部70は真円形や正多角形等のように前後方向LDの寸法及び幅方向WDの寸法の比率が1に近い(例えば1.3未満)ものが好ましいが、幅方向WDに沿う長辺を有する長方形状や、斜め長方形状等、横長な形状であってもよい。
【0092】
溶着部70の前後方向LDの寸法及び幅方向WDの寸法は、上記最長径の範囲内で適宜定めることができる。また、溶着部70同士の間隔は、上記制限の範囲内で適宜定めることができるが、最短間隔(周囲全方向で最短の間隔)は0.5~1mmの範囲内であることが好ましく、最長間隔(周囲全方向で最長の間隔)は2~4mmの範囲内であることが好ましい。
【0093】
溶着部70の配列は適宜定めることができる。一つの好ましい例は、図12及び図13に示す例や、図16及び図17に示す例のように、幅方向WDに沿う振動中心21を有し、波長22がサイドシール領域12Aの幅方向WDの寸法よりも短い(例えば0.5~0.9倍)波線20に沿って溶着部70が間隔を空けて配列された単位配列が、前後方向LDに間隔を空けて繰り返す配列であり、振動中心21との各交差位置に溶着部70が設けられるとともに、振動中心21の前後両側に少なくとも一つの溶着部70を有するものである。このような波状の配列を採用すると、外装体12F,12Bにおける弾性部材15,17の固定部84の位置が製造上の理由により前後方向LDや幅方向WDに変動しても、サイドシール領域12Aにおける溶着部70は弾性部材15,17の付近に密に配置されるだけでなく、弾性部材15,17の前後両側にバランスよく配置されるため好ましい。このような波状配列を採用する場合、振動中心21の前後方向LDの間隔は適宜定めることができるが、通常の場合、全振幅23の0.5~1倍であると好ましい。また、全振幅23は、溶着部70の前後方向LDの寸法の1~5倍、特に1~3倍であると好ましい。
【0094】
溶着部70の配列の他の例としては、図14及び図15に示すように、斜め方向に並ぶ溶着部70の列24が前後方向LDに所定の間隔で繰り返す斜め縞状配列や、図示しないが千鳥状配列を採用することもできる。
【0095】
サイドシール領域12Aには、サイドシール領域12Aの側縁に接する溶着部71が前後方向LDに間隔(例えば3~12mm程度)を空けて繰り返し設けられていると、サイドシール領域12Aは側縁まで平坦となるため好ましいが、サイドシール領域12Aの側縁に接する溶着部70が全く存在しなくてもよい。
【0096】
溶着部70の形状、寸法及び配列は、サイドシール領域12Aの全体にわたり一定であってもよいし、サイドシール領域12Aの第1の部分では溶着部70の形状、寸法及び配列が一定であるが、サイドシール領域12Aの第2の部分では溶着部70の形状、寸法及び配列が第1の部分と異なっていてもよい。また、サイドシール領域12Aの一部又は全体にわたり、形状及び寸法の少なくとも一方が異なる溶着部70が混在していてもよい。
【0097】
他方、図16及び図17に示すように、接合位置80の幅方向WDの間隔は、サイドシール領域12Aの幅方向WDの寸法よりも短く、接合位置80は、前後方向LDに沿う振動中心25を有し、全振幅26がサイドシール領域12Aの幅方向WDの寸法よりも短い波状をなしている場合(例えば、接合位置80の幅方向WDの間隔がサイドシール領域12Aの幅方向WDの寸法の0.2倍~0.5倍程度であり、全振幅26がサイドシール領域12Aの幅方向WDの寸法の0.1倍~0.3倍程度である場合)、これに沿って接合部81,82及び弾性部材15,17の固定部84を設けると、サイドシール領域12Aの少なくとも一部に必ず、サイドシール領域12Aの幅方向WDの中央側の縁から側方に離間した固定部84が存在することとなる。また、このような波状の接合位置80に沿って接合部81,82及び弾性部材15,17の固定部84が設けられていると、サイドシール領域12Aにおける固定部84よりも幅方向WDの中央側の部分が弾性部材15,17に伴い収縮して不必要に変形するとき、皺の方向が斜めとなったり、皺が形成される部分と形成されない部分とが発生したりし、外観や手触りの悪化が特に顕著となる。波長がよって、前述の溶着部70による不要な変形の低減は、接合位置80が波状に設けられる場合に特に技術的意義が大きいものである。
【0098】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0099】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0100】
・「表側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0101】
・「表面」とは部材の、パンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とはパンツタイプ使い捨ておむつを着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0102】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0103】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0104】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0105】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0106】
・吸水量は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
【0107】
・吸水速度は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【0108】
・「展開状態」とは、収縮(弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む)や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0109】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0110】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、パンツタイプ使い捨ておむつ、パンツタイプ生理用品等のパンツタイプ使い捨て着用物品に利用できるものである。
【符号の説明】
【0112】
11…液不透過性シート、12A…サイドシール領域、12B…後側外装体、12E…ウエスト延出部分、12F,12B…外装体、12F…前側外装体、12H…第2シート、12S…第1シート、13…カバー不織布、15,17…弾性部材、15…ウエスト下方弾性部材、17…ウエスト弾性部材、18…外側部分、19…内側部分、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、56…吸収体、58…包装シート、60…起き上がりギャザー、60A…先端側部分、60B…付け根側部分、62…ギャザー不織布、67…倒伏部分、68…自由部分、70…溶着部、72…無溶着部、80…接合位置、81…強接合部、82…弱接合部、83…非接合部、84…固定部、90…非接合位置、200…内装体、201,202…内装体固定部、A1…非伸縮領域、A2…伸縮領域、B…後身頃、C…臀部カバー部、F…前身頃、HM…ホットメルト接着剤、L…中間領域、LD…前後方向、LO…脚開口、RA…矩形範囲、T…胴周り領域、U…ウエスト下方部、W…ウエスト部、WD…幅方向、WO…ウエスト開口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18