(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007989
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】コーヒードリッパー
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20230112BHJP
A47J 31/02 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A47J31/06 160
A47J31/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111177
(22)【出願日】2021-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】595018765
【氏名又は名称】有限会社洙山陶苑
(71)【出願人】
【識別番号】510236232
【氏名又は名称】千陶 千賀陶器株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】393026456
【氏名又は名称】山田 康明
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】山田 康明
【テーマコード(参考)】
4B104
【Fターム(参考)】
4B104AA02
4B104EA30
4B104EA35
(57)【要約】
【課題】粉粒滓の通過を効果的に阻止しながら円滑に濾過し、コーヒー豆本来の味や香りを出来る限り逃さずに抽出するコーヒードリッパーを提供する。
【解決手段】上方開口20の容器に係る底部22に、該上方開口よりも小さい開口の下方開口部220を有するドリップ容器2と、金属製ネットで形成された第一網部31を有して、前記下方開口部を該第一網部で覆って前記ドリップ容器内に着脱自在にセットされた第一漉し具3と、金属製ネットで形成された第二網部41を有して、平面視で前記下方開口部を該第二網部で覆って、該第一網部上に該第二網部が重なるようにして前記ドリップ容器内に着脱自在にセットされた第二漉し具4と、を具備し、且つ該第一網部よりも該第二網部の方の網目を大きくして、前記第二漉し具上にコーヒー粉体7へ入れ、お湯8を注いで該第二網部及び該第一網部で漉すようにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方開口の容器に係る底部に、該上方開口よりも小さい開口の下方開口部を有するドリップ容器と、
金属製ネットで形成された第一網部を有して、前記下方開口部を該第一網部で覆って前記ドリップ容器内に着脱自在にセットされた第一漉し具と、
金属製ネットで形成された第二網部を有して、平面視で前記下方開口部を該第二網部で覆って、該第一網部上に該第二網部が重なるようにして前記ドリップ容器内に着脱自在にセットされた第二漉し具と、を具備し、且つ該第一網部よりも該第二網部の方の網目を大きくして、
前記第二漉し具上にコーヒー粉体へ入れ、お湯を注いで該第二網部及び該第一網部で漉すようにしたことを特徴とするコーヒードリッパー。
【請求項2】
前記ドリップ容器は容器側部の下端部分から前記底部をつくる内鍔部分が底部中央へ向けて延在し、該内鍔部分に囲まれた底部の中央が前記下方開口部となる穴開き容器にして、前記第一漉し具に係る中央部分が該下方開口部を覆い、該中央部分よりも外方域の部分が該内鍔部分に載っている請求項1記載のコーヒードリッパー。
【請求項3】
前記第二漉し具が、シート状に形成された前記第二網部と、該第二網部の周縁に沿って環状に設けられ、内側域が該第二網部の周縁部分を埋設一体化し、外側域が第二網部の全周に亘って該第二網部からヒレ状に外方へ張り出す合成樹脂製又はゴム製の第二ヒレと、を備え、該第二ヒレを前記下方開口部周りの前記ドリップ容器の内側周壁に当接させる請求項1又は2に記載のコーヒードリッパー。
【請求項4】
平面視略同じ大きさのシート状に形成された前記第一網部と前記第二網部とを重ね合わせ、且つ該第一網部及び該第二網部の周縁に沿って環状に設けられ、内側部分が該第一網部及び該第二網部の両周縁部分を埋設一体化して両網部を連結させると共に、外側部分が両網部の全周に亘って両網部からヒレ状に外方へ張り出す合成樹脂製又はゴム製の連結ヒレを、さらに具備して、第一漉し具と第二漉し具とが一体化され、
該連結ヒレを前記下方開口部周りの前記ドリップ容器の内側周壁に当接させる請求項1又は2に記載のコーヒードリッパー。
【請求項5】
前記ドリップ容器の側部で、前記内鍔部分から上方の近傍地点となる内側周壁に、複数の小突起を互いに離間して突出形成し、前記第一漉し具及び前記第二漉し具が、前記内鍔部分と該小突起との間に挟まれるようにして該内鍔部分に載って、前記ドリップ容器内に着脱自在に取付けられた請求項2乃至4のいずれか1項に記載のコーヒードリッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挽いたコーヒー豆の上からお湯を注いで抽出されたコーヒー液が、これを受けるカップやサーバー等へ滴下するコーヒードリッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドタイプのコーヒードリッパーでは、挽いたコーヒー豆(以下、「コーヒー粉体」という)の上からお湯を注いで、抽出されたコーヒー液がドリップとなってカップやサーバーに収容される。コーヒー粉体からコーヒー成分が抽出されて残った部分(以下、「粉粒滓」という)と、抽出コーヒーとを漉して分ける濾過手段には、これまで一般的なペーパーフィルタの他、セラミック製濾過部材等が用いられてきた。
ただ、ペーパーフィルタを用いるとコーヒー豆の油分が、ペーパーフィルタに浸み込んで除かれてしまう。油分まで取り除かれると、油分に在るコーヒーの旨みやコクが逃げてしまう。また、ペーパーフィルタは使い捨てになるため、コスト面を考えると望ましくない。
一方、セラミック濾過部材を用いたものは、使用続けることによって、セラミックのポーラスな細孔へ粉粒滓が入り込んで、目詰まりを起こす。洗浄や焼成等を行っても目詰まり除去が難しくなると、新たなセラミック濾過部材と交換しなければならない。
こうしたことから、金属製濾過皿を用いたドリッパーも提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかし、特許文献1の請求項1は「…陶磁器製ドリッパー本体に、…容器受座部を設け、又ドリッパー本体の下方開口の開口縁外周に螺刻部を形成し、中央の底面には濾過するコーヒー粉・茶葉又は液体中の小さな固形物を通過させない所要の小さな径の濾過孔を多数穿設した皿状の濾過皿をドリッパー本体の前記螺刻部に着脱自在に螺合した、ドリッパー。」であり、ドリッパー本体に螺刻部を形成し、且つこれに螺合させる濾過孔を有する濾過皿を設け、さらにネットが必要になっている。いきおいコストが上昇する。
段落0019には「…注ぎ入れた湯は、ゆっくりと上方濾過皿17の濾過孔17aから濾過して下方のドリッパー本体1の下付開口11に取付けた下方の濾過皿15のコーヒー粉Kを濡らしてコーヒー成分を濾過孔15a及びネット16を介して下方に摘下して、コーヒーポットPにコーヒー飲物を貯える。ネット16の篩目より大きい粉・固形物は濾過皿内に残される。」とあるが、上方濾過皿17の孔は大きくて、茶葉などは除けても、挽いたコーヒー豆は素通りする。また、段落0019のごとく、「…濾過皿15の内に、コーヒー粉Kを所定量置き」とし、実質、たった一枚のネット16に濾過処理を頼っている。よって、ネット16の篩目が細かいと直ぐに目詰まりを起こし、篩目が粗いとコーヒー豆の粒状滓までも通過してしまう問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、粉粒滓の通過を効果的に阻止しながら円滑に濾過し、コーヒー豆本来の味や香りを出来る限り逃さずに抽出するコーヒードリッパーを提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、第1発明の要旨は、上方開口の容器に係る底部に、該上方開口よりも小さい開口の下方開口部を有するドリップ容器と、金属製ネットで形成された第一網部を有して、前記下方開口部を該第一網部で覆って前記ドリップ容器内に着脱自在にセットされた第一漉し具と、金属製ネットで形成された第二網部を有して、平面視で前記下方開口部を該第二網部で覆って、該第一網部上に該第二網部が重なるようにして前記ドリップ容器内に着脱自在にセットされた第二漉し具と、を具備し、且つ該第一網部よりも該第二網部の方の網目を大きくして、前記第二漉し具上にコーヒー粉体へ入れ、お湯を注いで該第二網部及び該第一網部で漉すようにしたことを特徴とするコーヒードリッパーにある。
第2発明は、第1発明で、ドリップ容器は容器側部の下端部分から前記底部をつくる内鍔部分が底部中央へ向けて延在し、該内鍔部分に囲まれた底部の中央が前記下方開口部となる穴開き容器にして、前記第一漉し具に係る中央部分が該下方開口部を塞ぎ、該中央部分よりも外方域の部分が該内鍔部分に載っていることを特徴とする。第3発明は、第1又は第2発明で、第二漉し具が、シート状に形成された前記第二網部と、該第二網部の周縁に沿って環状に設けられ、内側域が該第二網部の周縁部分を埋設一体化し、外側域が第二網部の全周に亘って該第二網部からヒレ状に外方へ張り出す合成樹脂製又はゴム製の第二ヒレと、を備え、該第二ヒレを前記下方開口部周りの前記ドリップ容器の内側周壁に当接させることを特徴とする。第4発明は、第1又は第2発明で、平面視略同じ大きさのシート状に形成された前記第一網部と前記第二網部とを重ね合わせ、且つ該第一網部及び該第二網部の周縁に沿って環状に設けられ、内側部分が該第一網部及び該第二網部の両周縁部分を埋設一体化して両網部を連結させると共に、外側部分が両網部の全周に亘って両網部からヒレ状に外方へ張り出す合成樹脂製又はゴム製の連結ヒレを、さらに具備して、第一漉し具と第二漉し具とが一体化され、該連結ヒレを前記下方開口部周りの前記ドリップ容器の内側周壁に当接させることを特徴とする。第5発明は、第2~第4発明において、ドリップ容器の側部で、前記内鍔部分から上方の近傍地点となる内側周壁に、複数の小突起を互いに離間して突出形成し、前記第一漉し具及び前記第二漉し具が、前記内鍔部分と該小突起との間に挟まれるようにして該内鍔部分に載って、前記ドリップ容器内に着脱自在に取付けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコーヒードリッパーは、ドリップ容器内に網目の大きさが違う第一漉し具と第二漉し具とを取付けることによって、粉粒滓の通過を効果的に阻止しながら円滑に濾過し、且つコーヒー豆本来の味や香りを出来る限り逃さずに抽出したおいしいコーヒー液をドリップさせることができ優れた効果を発揮する。
【0008】
本発明のコーヒードリッパーのように、ドリップ容器と第一漉し具と第二漉し具を具備し、下方開口部を覆う第一漉し具の第一網部上に、第二漉し具の第二網部が重なるようにしてドリップ容器内にセットされると、コーヒードリッパーはドリップ容器の大きさと変わらず、特許文献1のものと比べるとコンパクトになる。ドリッパー本体に形成する螺刻部や、これに螺合させる濾過孔を有する濾過皿も不要であるので、コーヒードリッパーがシンプルであり低コスト化できる。
それでいて、第一網部よりも第二網部の方の網目を大きくして、上方開口から投入して第二漉し具上に載せたコーヒー粉体へお湯を注いで、第二網部、第一網部と順に漉すと、大きな粒径の粉粒滓は第二漉し具が捕集して通し、該第二漉し具を潜った細かい粉粒滓に限って第一漉し具が捕集して、抽出コーヒー液は通して濾過される。第二漉し具の網目よりも細かい網目の第一漉し具を採用して、雑味がなく、コーヒー本来の味・香り豊かなコーヒーを楽しむことができる。第二漉し具と第一漉し具が役割分担を果たして、細かい網目の第二網部を使用しても直ぐに目詰まりを起こすことなく、抽出した美味しいコーヒー液が、第二漉し具、第一漉し具を順に通過して、ドリップ液となって下方開口部から円滑に滴下する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1でのコーヒードリッパーの分解斜視図である。
【
図2】
図1のドリップ容器に
図1の第一漉し具及び第二漉し具がセットされたコーヒードリッパーの斜視図である。
【
図6】実施形態2で、第一網部と第二網部とを連結ヒレが連結し、第一漉し具と第二漉し具とが一体化している拡大断面図である。
【
図7】
図6の第一漉し具と第二漉し具の一体品を
図1のドリップ容器に取付けた縦断面図である。
【
図8】実施形態3で、第一漉し具と第二漉し具と
図1に代わる別形態のドリップ容器とを示すコーヒードリッパーの分解斜視図である。
【
図9】
図8の第一漉し具と第二漉し具とを
図8のドリップ容器にセットしたコーヒードリッパーの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るコーヒードリッパーについて詳述する。
図1~
図9は本発明のコーヒードリッパーの一形態で、
図1はその分解斜視図、
図2は
図1のドリップ容器に第一漉し具及び第二漉し具をセットした斜視図、
図3は
図2の縦断面図、
図4は第二漉し具の拡大断面図、
図5は
図4の第二漉し具の画像斜視図、
図6は第一網部と第二網部を連結ヒレで連結し、両漉し具が一体化した拡大断面図、
図7は
図6の第一漉し具と第二漉し具の一体品をドリップ容器に取付けた縦断面図、
図8は第一漉し具と第二漉し具と別形態のドリップ容器とを示す分解斜視図、
図9は
図8の第一漉し具と第二漉し具を
図8のドリップ容器にセットした縦断面図を示す。各図は判り易くするため要部を強調図示し、また本発明と直接関係しない部分を省略する。
【0011】
(1)実施形態1
コーヒードリッパー1は、ドリップ容器2と第一漉し具3と第二漉し具4とを具備する(
図1~
図4)。
ドリップ容器2は、上方開口20の容器に係る底部22に、該上方開口20よりも小さい開口の下方開口部220がある穴開き底部22を有した陶器製容器になっている。ここで、本発明でいう上方開口20の「上方」とは、使用状態を示す
図3のコーヒードリッパー1でいえば、その紙面上方を指し、下方開口部220の「下方」とは紙面下方を指す。
【0012】
図1に示すドリップ容器2は、底部22をつくる内鍔部分221が容器側部21の下端部分から底部中央へ向けて、やや下降傾斜しながらも略水平に延在し、該内鍔部分221に囲まれた底部22の中央が下方開口部220となる穴開き容器である。側部21は、平面視略円形の上方開口20の開口径20Dから底部22へ向けて開口径が次第に小さくなっていき、且つ上方開口20近くには段差部分215が設けられて、蓋をすることができる。
ここでは、コーヒーカップに似せてこれよりも一回り大きな図示のごとくカップ形状にして、下方開口部220を有し、また側部21の下端部分から外方に外鍔部23が延在するドリップ容器2とする。外鍔部23を設けることによって、
図3ごとくの受けカップ6(又はサーバー等)の開口上縁にドリップ容器2を安定載置でき、抽出コーヒー液を受けカップ内60へドリップ可能とする。符号2a,25はドリップ容器2の外壁,把手、符号61,62,65は受けカップ6の側部,底部,把手を示す。
【0013】
ドリップ容器2には、第一漉し具3及び第二漉し具4が平面視で下方開口部220を覆って取付けられる。上方開口20から投入して第二漉し具4上に載せたコーヒー粉体7へお湯8を注ぐことによって、第二漉し具4と第一漉し具3で漉した抽出コーヒー液が該下方開口部220からドリップ液9となって受けカップ6内へ滴下する。
【0014】
第一漉し具3は、金属製ネットで形成された孔空きシート状の第一網部31を有し、第一網部31が下方開口部220を覆って該下方開口部220周りのドリップ容器2内に着脱自在に取付けセットされる網状シート部材である。ステンレス製や鉄製等の金属製金網を用い、多数の網目310を有する孔空きシート状体にして可撓性を有し、
図2,
図3のように下方開口部220を覆うことができる外径3dの第一網部になっている。第一網部31の網目310は第二漉し具4に係る第二網部41の網目410よりも小さく設定される。詳しくは、150~200メッシュの細かい目開きの第一網部31が用いられる。
【0015】
ここでの第一漉し具3は、単なる平面視円形の金網からなる第一網部31にして、
図3のごとく上方開口20から入れて、第一漉し具3(第一網部31でもある)の中央部分が該下方開口部220を上から覆い、該中央部分よりも外方域の部分が該内鍔部分221に載るだけのセットとしている。該第一漉し具3の上に重なるようにして、第二漉し具4がドリップ容器2内に着脱自在に取付けセットされると、第二漉し具4が内鍔部分221に載せた第一漉し具3を押さえるようになる。
図3では、判り易く説明するため、第一漉し具3と第二漉し具4とを離して図示するが、第一漉し具3の少なくとも一部に第二漉し具4が押さえるよう当接している。コーヒードリッパー1の使用時にも特に横ズレすることなく、下方開口部220周りのドリップ容器2内に第一漉し具3が着脱自在にセットされたことになる。
尚、本実施形態の第一漉し具3は第一網部31だけからなるが、次に述べる第二漉し具4のように、第一網部31に第二ヒレ42に相当するヒレを備えた漉し具としてもよい。
【0016】
第二漉し具4は、金属製ネットで形成された孔空きシート状の第二網部41を有する網状シート部材である(
図2,
図3)。第二漉し具4は、平面視で下方開口部220を覆い、前記第一網部31の網面上に該第二網部41の網面が重なって下方開口部220周りのドリップ容器2内に着脱自在にセットされる。ちなみに、第二網部41が第一網部31上に重なるようにして第二漉し具4がセットされるが、両網部41,31の対向する網面の全てを当接させるに及ばない。第一網部31に当接して第一漉し具3の横ズレ防止できる第二網部41の当接部分があれば足りる。さらに、第一漉し具3がドリップ容器2に係止されているなら、第一網部31の網面上への該第二網部41の網面の重なりで、両網面間に隙間ができても構わない。
ドリップ容器2の上方開口20からコーヒー豆を挽いたコーヒー紛体7を投入して第二漉し具4上に載せた後、該コーヒー粉体へお湯8を注げば、第二網部41、次いで、第一網部31で漉すコーヒードリッパー1となる。ここで、前記第一網部31よりも該第二網部41の方の網目410が大きく設定される。詳しくは、30~50メッシュの粗い目開きの第二網部41が用いられる。
【0017】
第二漉し具4は平面視で第一漉し具3と同等の大きさか又は第一漉し具3よりも大きい外径4dのものを採用する。
本実施形態の第二漉し具4は、シート状に形成された第二網部41と、合成樹脂製又はゴム製の第二ヒレ42と、を備えて、可撓性のある扁平化シート状体とする(
図4,
図5)。第二ヒレ42は、該第二網部41の周縁に沿って環状に設けられ、内側域42aが第二網部41の周縁部分411を埋設一体化し、外側域42bが第二網部41の全周に亘って、該第二網部41からヒレ状に外方へ張り出す。
図1,
図3のように第二漉し具4の平面視外径4dをドリップ容器2の底部22の内径よりも大きくする。第二漉し具4の外周部を撓ませ、第二ヒレ42の外周域が底部22近くの側部21に係る内側周壁211に当接して、第二漉し具4をドリップ容器2内に着脱自在に係止固定させる。第二漉し具4の第二網部41及び第二ヒレ42は可撓性を有する。
図3のように、第二漉し具4の外周部にあたる第二ヒレ42又は/及び第二網部41を撓ませ、第二ヒレを前記下方開口部周りの前記ドリップ容器の内側周壁に当接させる。第二ヒレ42を撓ませ、第二ヒレ42を前記下方開口部220周りの前記ドリップ容器2の内側周壁211に当接させると、第二ヒレ42が有する可撓性,弾性変形のし易さによって、ドリップ容器2への第二漉し具4のセットが容易になり、さらに内側周壁211への第二ヒレ42の当接シール性も良好となる。また、使用後のドリップ容器2からの第二漉し具4の取外しも容易となる。
ここでの第二漉し具4は、下方開口部220を覆った第一網部31上に該第二網部41が上から重なるように押さえて、下方開口部220周りのドリップ容器2内に取付けセットされる。したがって、第一漉し具3が内鍔部分221に載っただけでも、第二漉し具4によってドリップ容器2に係止された状態となる。尚、
図4では判り易くするため、第二ヒレ42の肉厚を大きく描くが、実際の肉厚は
図5のごとく小さく、第二ヒレ42は薄肉化した扁平環状体になっている。
【0018】
符号421は、第二ヒレ42に設けたつまみを示す。コーヒードリッパー1の使用後、上方開口20内へ手を入れて、該つまみ421を掴んで第二漉し具4を取外し易くする。
さらに、ここでの第二ヒレ42はシリコーン樹脂製又はシリコーンゴム製として、耐熱性に加え、ドリップ容器2に対し優れた粘着性を発揮させ、ドリップ容器2に取付けセットした第二漉し具4が底部22周りの側部21に係る内側周壁211への密着度合いを一段と高めさせている。故に、第一漉し具3,第二漉し具4を上方開口20から順に挿入し、
図3のようにドリップ容器2に両漉し具3,4を取付けただけで、第二漉し具4上に載せたコーヒー紛体7へお湯8を注いで下方開口部220からドリップ液9を滴下させる際、コーヒー液や粉粒滓が第二漉し具4とドリップ容器2との間を通ってショートパスするのを確実に防げる製品になっている。
【0019】
かくして、コーヒー粉体7のうちで大きな粒度の粉粒滓は第二網部41で取り除き、さらに第二網部41で除かれなかった粉粒滓で、コーヒーを味わう際に邪魔になる細かい粒度の粉粒滓を第一網部31で取り除くように漉し、味や香りは逃さない抽出コーヒー液(ドリップ液9)を受けカップ6等へ摘下できる所望のコーヒードリッパー1になっている。
【0020】
(2)実施形態2
図6は、第一漉し具3と第二漉し具4との一体品で、
図1~
図5に代わる別形態図を示す。
図7はこの一体品を
図1のドリップ容器2に組込んだコーヒードリッパー1の断面図である。
第一漉し具3と第二漉し具4との一体品は、平面視略同じ大きさに形成された孔空きシート状の第一網部31と第二網部41との対向面同士を重ね合わせ、連結ヒレ5の内側部分5aで両網部31,41を連結させる。そして、外側部分5bが両網部31,41の全周に亘って該両網部からヒレ状に外方へ張り出す合成樹脂製又はゴム製の連結ヒレ5を形成して、第一漉し具3と第二漉し具4とを一体化している。連結ヒレ5は、第一網部31及び第二網部41の周縁に沿って環状に設けられ、内側部分5aが第一網部31及び第二網部41の両周縁部分311,411を埋設一体化している。
本実施形態は、第一漉し具3と第二漉し具4との一体品の平面視外径3d,4dを、実施形態1の第二漉し具4とほぼ同じにする。
図6のように第一漉し具3,第二漉し具4の平面視大きさはドリップ容器2の底部22の内面よりも大きい。第一漉し具3,第二漉し具4の外周部を撓ませ、連結ヒレ5の外周域を底部22近くの側部21に係る内側周壁211に密着させて、第一漉し具3,第二漉し具4をドリップ容器2内に着脱自在に係止固定できるようにしている。
また、図示を省略するが、連結ヒレ5の外側部分5bを撓ませることによって、該外側部分5bを底部22近くの側部21に係る内側周壁211に密着させ、第一漉し具3,第二漉し具4をドリップ容器2内に着脱自在に係止固定させてもよい。連結ヒレ5の有する可撓性,弾性変形によって、連結ヒレの内側周壁211に密着度合が一層高まる。
他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0021】
(3)実施形態3
本実施形態は、実施形態1,2のドリップ容器2に代えて
図8,
図9に示すドリップ容器2を採用したコーヒードリッパー1とする。底部22の内鍔部分221は、図示のごとく側部21の下端部分から底部22中央へ向け水平に張り出す水平部分221aになっている。第一漉し具3が第一網部31のみからなり、第二漉し具4も第二網部41のみからなり、両網部31,41の平面視大きさを、底部22の平面視内面大きさよりも若干大きくする。
ドリップ容器2の側部21には、前記内鍔部分221から上方の近傍地点となる内側周壁211に、複数の小突起34が互いに離間して突出形成される。そうして、上方開口20から挿入された第一漉し具3及び第二漉し具4は、撓んで小突起34を乗り越え、内鍔部分221と該小突起34との間に挟まれるようにして該内鍔部分221に載り、ドリップ容器2内に着脱自在に取付けセットされる。第一漉し具3及び第二漉し具4に、特に第二ヒレ42や連結ヒレ5を設けなくても、一旦セットされた第一漉し具3及び第二漉し具4は小突起34が係止し、ズレ難くなっている。第一漉し具3及び第二漉し具4をドリップ容器2に安定設置できる所望のコーヒードリッパー1になる。
他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0022】
(4)効果
このように構成したコーヒードリッパー1は、第一漉し具3が下方開口部220を覆ってドリップ容器2内に取付けられ、また第二漉し具4が第二漉し具3の上面側に重なるようにして平面視で下方開口部220を覆ってドリップ容器2内に取付けられる。且つ、第一網部31の網目310よりも該第二網部41の方の網目410を大きくしているので、第一網部31に細かい網を採用しても、粉粒滓で直ぐに詰まるようなことがない。
コーヒードリッパー1でコーヒー液(ドリップ液9)を得ようとするなら、第二漉し具4上に載せたコーヒー粉体7へ、上方開口20からお湯8を注いで、抽出されたコーヒー液を例えば
図3のような受けカップ6に滴下させていくことになる。斯かる場合、細かい網目310の第一網部31だけだと直ぐに目詰まりを起こすが、本コーヒードリッパー1は、大きな粒径の粉粒滓を、第一網部31よりも上方にある粗い目の第二網部41に捕捉させる。網目の大きさに違いがある第一網部31と第二網部41とが分離除去する粉粒滓の粒径を効果的に選択している。細かい網目310の第一網部31で直ぐに目詰まりを起こしてしまう粒度大の粉粒滓が、第一網部31に到達する前に、その上方域に在る第二網部41で捕捉する。
したがって、第二網部41を潜り抜けた細かい粒度の粉粒滓に対してだけ第二網部41が捕捉すれば済み、第二網部41の目詰まりが起き難くなる。したがって、たくさんの量の香り豊かなコーヒー液(ドリップ液9)を持続的且つ円滑に受けカップ6へ溜めることができる。
【0023】
そして、濾過手段として金属製ネットの第一,第二漉し具3,4を用いているので、コーヒーの旨みやコクを生む油分がペーパーフィルタに付着して逃げてしまうという事態にはならない。金属製第一網部31,第二網部41を用いて濾過することによって、コーヒー豆本来の味や香りをできる限り逃さずに抽出できる優れもののコーヒードリッパー1になっている。
【0024】
また、第一網部31,第二網部41が針金で編んだ金網等の金属製ネットであると、コーヒー粉体7からコーヒー成分が抽出されて、第一網部31,第二網部41に残った粉粒滓は、蛇口からの水道水の逆洗等によって容易に分離除去できる。使い捨てになるペーパーフィルタや細孔に入り込み除去困難になってしまうセラミック濾過部材と違って、第一漉し具3と第二漉し具4は、何度でも再使用できる。
【0025】
しかも、第一漉し具3と第二漉し具4を
図1の上方開口20から順に入れていき、
図2,
図3のように下方開口部220周りのドリップ容器2の内壁2bに取付けて、簡単にコーヒードリッパー1に組付け完成させることができる。そのコーヒードリッパー1の大きさは、ドリップ容器2と同じコンパクトな大きさとなる。特許文献1のようなドリッパー本体の下方開口縁に螺刻部を形成し、該螺刻部に螺合させる濾過皿や上方濾過皿が付加する大きさにならない。さらにネットが必要になる特許文献1のドリッパーと比べて、本コーヒードリッパー1は構成がシンプルで、安価に製造できる。
また、使用を終えたコーヒードリッパー1から第一網部31,第二網部41を、洗浄のため取り外す際は、
図3の下方開口部220よりも下方から手の指等で、下方開口部220に覗く第一漉し具3を上方へ向けて突き上げれば、ドリップ容器2から第一網部31,第二網部41を簡単に取り外すことができる。
【0026】
加えて、容器側部21の下端部分から底部をつくる内鍔部分221が底部中央へ向けて延在し、該内鍔部分221に囲まれた底部22の中央を下方開口部220にすると、第一漉し具3(第一網部31)の中央部分で下方開口部220を塞いで、該中央部分よりも外方域を該内鍔部分221に載せることができるので、第一漉し具3をドリップ容器2内に安定設置できる。
また、第二漉し具4で、内側域42aが該第二網部41の周縁部分411を埋設一体化し、外側域42bが第二網部41の全周に亘って該第二網部41からヒレ状に外方へ張り出す合成樹脂製又はゴム製の環状第二ヒレ42を備えると、金属製第二網部41の周縁に在る針金が手に直接触れないため安全性に富み、手を傷つけない。第二ヒレ42が可撓性を有するので、
図3のように該第二ヒレ42を下方開口部220周りのドリップ容器内壁2bに密着させて下方開口部220を覆うことができる。この密着によって、
図3のように第二漉し具4上にコーヒー紛体7をセットして、お湯8を注いでコーヒー液を抽出する際、粉粒滓やコーヒー液がドリップ容器2と第二漉し具4との間を潜り抜けるのを防止できる。第二漉し具4と第一漉し具3とで濾過処理されたコーヒー液だけが下方開口部220から滴下する優れたコーヒードリッパー1になる。
【0027】
さらに、第一漉し具3と第二漉し具4が、
図5,
図6のように一体品となったコーヒードリッパー1にすると、ドリップ容器2内へのセット及び使用後の取外しが一度でできるので、使い易くなる。
さらにいえば、
図8,
図9のような小突起34を形成して、第一漉し具3と第二漉し具4とが内鍔部分221と該小突起34との間に挟まれるようにして取付けられると、セットした第一漉し具3と第二漉し具4が上動等のズレがなくなり、設置安定した良好の漉し具として機能発揮できる。
かくのごとく、本コーヒードリッパー1は、上述した種々の優れた効果を発揮し極めて有益である。
【0028】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。ドリップ容器2,第一漉し具3,第二漉し具4,連結ヒレ5,受けカップ6等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、第一漉し具3、第二漉し具4に加え、第三漉し具を該第二漉し具4に重ねてドリップ容器2内に取付けるコーヒードリッパー1であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 コーヒードリッパー
2 ドリップ容器
20 上方開口
21 側部
22 底部
220 下方開口部
221 内鍔部分
3 第一漉し具
31 第一網部
4 第二漉し具
41 第二網部
41 第二ヒレ
5 連結ヒレ
5a 内側部分
5b 外側部分
7 コーヒー紛体