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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079924
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】紙製成形体の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/24 20060101AFI20230601BHJP
   D21H 21/18 20060101ALI20230601BHJP
   D04H 1/425 20120101ALI20230601BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20230601BHJP
【FI】
B32B5/24
D21H21/18
D04H1/425
D04H1/541
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193643
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】513301517
【氏名又は名称】甲斐 義浩
(74)【代理人】
【識別番号】100087778
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 義浩
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
4F100AJ04A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG01A
4F100DG06A
4F100DG10B
4F100DG10C
4F100DG15A
4F100EJ172
4F100EJ202
4F100EK06
4F100JB16A
4F100JC00B
4F100JC00C
4L047AA07
4L047AA27
4L047AA28
4L047AA29
4L047AB02
4L047CA06
4L047EA03
4L055AF09
4L055AF13
4L055AH16
4L055AJ02
4L055FA11
4L055FA13
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】 十分な強度を有し、表面に皺が生ぜず、表面から紙粉が生じない紙製の成形体を低コストで製造可能とする。
【解決手段】 植物繊維と熱融着繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体S1と成すエアレイド部2と、前記エアレイド部2で形成された堆積体S1を加圧してシートS2と成す加圧部4と、前記加圧部4で成形されたシートS1の第1面に保護フィルム610を貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に保護フィルム620を貼着するラミネート部6と、前記ラミネート部6で表裏に保護シート610,620を貼着されたシートS22を所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す成形部8と、を有することを特徴とする紙製成形体の製造装置
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維と熱融着繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体と成すエアレイド部と、
前記エアレイド部で形成された堆積体を加圧してシートと成す加圧部と、
前記加圧部で成形されたシートの第1面に保護フィルムを貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に保護フィルムを貼着するラミネート部と、
前記ラミネート部で表裏に保護フィルムを貼着されたシートを所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す成形部と、
を有することを特徴とする紙製成形体の製造装置。
【請求項2】
植物繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体と成すエアレイド部と、
前記エアレイド部で形成された堆積体を加圧してシートと成す加圧部と、
前記加圧部で成形されたシートの第1面に接着剤を用いて保護フィルムを貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に接着剤を用いて保護フィルムを貼着するラミネート部と、
前記ラミネート部で表裏に保護フィルムを貼着されたシートを所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す成形部と、
を有することを特徴とする紙製成形体の製造装置。
【請求項3】
請求1に於いて、
前記エアレイド部で分散される植物繊維と熱融着繊維の混合物に対して紙力剤を噴霧する噴霧機構を有する、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
【請求項4】
請求項2に於いて、
前記エアレイド部で分散される植物繊維に対して紙力剤を噴霧する噴霧機構を有する、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかに於いて、
前記エアレイド部で形成された堆積体に対して紙力剤を噴霧する噴霧機構を有する、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかに於いて、
前記ラミネート部が貼着する保護フィルムは紙製又は生分解性プラスチック製である、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項3に於いて、
前記熱融着繊維は、芯鞘タイプである、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れに於いて、
前記エアレイド部で分散される繊維、前記エアレイド部から前記加圧部へ送られるシート、前記加圧部でシートを加圧する加圧ローラ、前記加圧部から前記ラミネート部へ送られるシートを、10~40℃の温度範囲に制御する温度制御部、
を更に有することを特徴とする紙製成形帯の製造装置。
【請求項9】
植物繊維と熱融着繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体と成し、
前記堆積体を加圧してシートと成し、
前記シートの第1面に保護フィルムを貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に保護フィルムを貼着し、
前記表裏に保護フィルムを貼着されたシートを所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す、
ことを特徴とする紙製成形体の製造方法。
【請求項10】
植物繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体と成し、
前記堆積体を加圧してシートと成し、
前記シートの第1面に接着剤を用いて保護フィルムを貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に接着剤を用いて保護フィルムを貼着し、
前記表裏に保護フィルムを貼着されたシートを所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す、
ことを特徴とする紙製成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製成形体の製造装置及び製造方法に関する。詳しくは、乾式で紙製の成形体を製造する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-136878号公報(特許文献1)には、被解繊物を大気中で解繊する解繊部と、解繊された解繊物に樹脂を含む添加物を大気中で混合する混合部と、前記解繊物と前記添加物とを混合した混合物を加熱する加熱部とを備え、乾式法によって機械的強度及び/又は耐水性の良好な紙を製造できる紙製造技術が開示されている。
特開2004-346441号公報(特許文献2)には、植物繊維を主材料とし、熱融着可能な熱可塑性樹脂材料と吸水性材料を混合し、乾式積繊法により製造したマット状シートを熱プレス成形して成る成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-136878号公報
【特許文献2】特開2004-346441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾式で紙製の成形体を製造する従来の技術では、十分な強度が得られない、成形体に皺が生ずる、成形体の表面から紙粉が生ずる、等の問題がある。
【0005】
強度を向上させるべく厚みを増すと、プレス加工に時間を要し、コスト面で問題が生ずる。
【0006】
本願は、上記の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構成を、下記[1]~[6]に記す。なお、この項([課題を解決するための手段])と次項([発明の効果])に於いて、符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
【0008】
[1]発明1
植物繊維と熱融着繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体S1と成すエアレイド部2と、
前記エアレイド部2で形成された堆積体S1を加圧してシートS2と成す加圧部4と、
前記加圧部4で成形されたシートS2の第1面に保護フィルム610を貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に保護フィルム620を貼着するラミネート部6と、
前記ラミネート部6で表裏に保護フィルム610,620を貼着されたシートS22を所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す成形部8と、
を有することを特徴とする紙製成形体の製造装置。
[2]発明2
植物繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体S1と成すエアレイド部2と、
前記エアレイド部2で形成された堆積体S1を加圧してシートS2と成す加圧部4と、
前記加圧部4で成形されたシートS2の第1面に接着剤を用いて保護フィルム610を貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に接着剤を用いて保護フィルム620を貼着するラミネート部6と、
前記ラミネート部6で表裏に保護フィルム610,620を貼着されたシートS22を所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す成形部8と、
を有することを特徴とする紙製成形体の製造装置。
[3]発明3
発明1に於いて、
前記エアレイド部2で分散される植物繊維と熱融着繊維の混合物に対して紙力剤を噴霧する噴霧機構5,5bを有する、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
[4]発明4
発明2に於いて、
前記エアレイド部2で分散される植物繊維に対して紙力剤を噴霧する噴霧機構5,5bを有する、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
[5]発明5
発明1~発明4の何れかに於いて、
前記エアレイド部2で形成された堆積体S1に対して紙力剤を噴霧する噴霧機構5,5cを有する、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
[6]発明6
発明1~発明5の何れかに於いて、
前記ラミネート部6が貼着する保護フィルム610,620は紙製又は生分解性プラスチック製である、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
[7]発明7
発明1又は発明3に於いて、
前記熱融着繊維は、芯鞘タイプである、
ことを特徴とする紙製成形体の製造装置。
[8]発明8
発明1~発明7の何れに於いて、
前記エアレイド部2で分散される繊維、前記エアレイド部2から前記加圧部4へ送られる堆積体S1、前記加圧部4で堆積体S1を加圧する加圧ローラ41,42、前記加圧部4から前記ラミネート部6へ送られるシートS2を、10~40℃の温度範囲に制御する温度制御部7、
を更に有することを特徴とする紙製成形体の製造装置。
[9]発明9
植物繊維と熱融着繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体S1と成し、
前記堆積体S1を加圧してシートS2と成し、
前記シートS2の第1面に保護フィルム610を貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に保護フィルム620を貼着し、
前記表裏に保護フィルム610,620を貼着されたシートS22を所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す、
ことを特徴とする紙製成形体の製造方法。
[10]発明10
植物繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体S1と成し、
前記堆積体S1を加圧してシートS2と成し、
前記シートS2の第1面に接着剤を用いて保護フィルム610を貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に接着剤を用いて保護フィルム620を貼着し、
前記表裏に保護フィルム610,620を貼着されたシートS22を所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す、
ことを特徴とする紙製成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
発明1は、植物繊維と熱融着繊維を空気流で混合するとともに分散して分散空間の下方の堆積位置にて堆積体S1と成すエアレイド部2と、前記エアレイド部2で形成された堆積体S1を加圧してシートS2と成す加圧部4と、前記加圧部4で成形されたシートS1の第1面に保護フィルム610を貼着するとともに前記第1面の裏面側の第2面に保護フィルム620を貼着するラミネート部6と、前記ラミネート部6で表裏に保護フィルム610,620を貼着されたシートS22を所望の成形面の金型でプレス成形して成形体と成す成形部8と、を有することを特徴とする紙製成形体の製造装置であるため、十分な強度を有し、表面に皺が生ずることもなく、表面から紙粉が生じない紙製の成形体を、低コストで製造することができる。
発明2~発明10は、上記発明1と同様の効果を少なくとも奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の紙製成形体の製造装置の具体的な一例を示す模式図。
図2図1のラミネート部の一例を示す模式図。
図3】本発明の紙製成形体の製造装置の図1とは異なる具体的な一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、実施の形態の製造装置は、解繊部1、エアレイド部2、サクション部25、搬送部3、加圧部4、噴霧機構5、ラミネート部6、成形部8、端材回収部91を有する。
【0012】
解繊部1は、原料をエアレイド処理可能な繊維に破砕・解繊する機能を奏し、図示の例では、樹木や木材パルプ等の天然セルロース原料を破砕・解繊して植物繊維と成す解繊部A11と、熱可塑性樹脂等の合成原料を熱融着繊維と成す解繊部B12とを有する。熱融着繊維は、加熱すると比較的低温で軟化・溶融する繊維であり、素材としては、エステル系、オレフィン系、アミド系等を挙げることができる。
【0013】
熱融着繊維の成分やタイプは、表裏両面にフィルム610,620を備えるシートS22と成したとき等の望まれる特性に応じて適宜に選択することができる。
例えば、接着剤無しでシートS2の表裏両面にフィルム610,620を貼着するべく、加熱ローラ61a-61b間や、加熱ローラ62a-62b間で加熱・加圧する際に、適切に溶融してシートS2の表面とフィルム610/620とを良好に接着できる成分や、構造のタイプを選択することができる。
【0014】
植物繊維としては、広葉樹、針葉樹、イネ、葦等の草本類の繊維を用いることが可能で、その利用形態としては、パルプ繊維になったもの、古紙由来のパルプ、古紙等も可能である。熱融着可能な熱可塑性樹脂としては、表面が少なくとも熱融着性があることが必要であり、例えば、内部が植物繊維や化学繊維等で構成されている芯鞘構造の表面が熱可塑性樹脂から成る繊維状のものでもよい。
解繊部1に供給される原料は、最終製品の紙製の成形体の端材であってもよい。
解繊部1には、噴霧機構5から噴霧器(ノズル等)5aを介して、適宜の薬剤等を噴霧するように構成してもよい。適宜の薬剤としては、下記のエアレイド部2の場合と同様の薬剤を例示することができる。
【0015】
エアレイド部2は、解繊部1から供給される繊維(植物繊維、熱融着繊維)を混合し及び分散して、搬送部3の搬送ワイヤ30上に堆積させて堆積体S1と成す。堆積体S1の厚みは、目的の紙製成形体の形状やサイズ等に応じても異なるが、例えば、3~30mm程度とすることができる。エアレイド部2の混合・分散用の空間内の繊維が搬送ワイヤ30上へ堆積する際には、下方のサクション部25からの吸引(図中、下矢印で示す)が寄与する。
【0016】
エアレイド部2の混合・分散用の空間には、噴霧機構5から噴霧器(ノズル等)5bを介して、適宜の薬剤等を噴霧するように構成してもよい。
例えば、耐水・耐油剤を、水分に対し、固形分換算0.05~22%に溶解したものを噴霧すると、ノズル詰まりを防止することができる。目的とする紙製成形体の表裏にはフィルムが貼着されている(後述)ため、一応は耐水・耐油機能を奏するのであるが、例えば、紙製成形体が食器の場合、フォーク等の使用により孔が開くと、内部へ水や油が侵入する。このため、堆積体S1の部位にも耐水・耐油機能を付与するとよい。
また、紙力剤(乾式紙力剤、湿潤紙力剤等)を、水分に対し、固形分換算0.05~18%に溶解したものを噴霧すると、コストを改善することができる。プレス加工(後述)で得る紙製成形体が或るサイズを越えて大きくなると、使用中に折れ曲がる等の不具合が発生する場合がある。堆積体S1の厚みを増してシートS2の厚みを増せば強度は向上するが、機器仕様の制約からプレス加工の所要時間が長時間化して、コスト面で不利となる。この改善のため、紙力剤を用いると、良い結果を得る。紙力剤としては、例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(PAE)、ポリビニルアミン(PVAm)を用いることができる。
また、柔軟剤を、水分に対し、固形分換算0.05~24.5%に溶解したものを噴霧すると、プレス加工(後述)で得る紙製成形体の表面の皺を抑制することができる。
【0017】
上記の噴霧は、エアレイド部2の混合・分散空間とともに、又は、エアレイド部2の混合・分散空間に代えて、搬送ワイヤ30上に堆積する堆積体S1に対して行うこともできる(図中、破線矢印5c)。その場合、噴霧圧力を3~5barの範囲に設定すると、堆積体S1を吹き飛ばしてしまう等の不具合を防止しつつ、上記効果を良好に得ることができる。また、噴霧温度を10~40℃、好ましくは20~35℃の範囲とすると、濾水性及び含水性の変化に起因するフィルム(後述)の剥離等の接着不良を防止することができる。また、噴霧する薬品の粘度を50~150mPa・Sの範囲とすると、噴霧ノズルの詰まりを防止でき、結果、薬品塗布の均一性を向上させることができ、上記の効果を良好に得ることができる。
なお、エアレイド部2の混合・分散空間への噴霧(破線矢印5b)に代えて又はエアレイド部2の混合・分散空間への噴霧(破線矢印5b)とともに、破線矢印5aの如く、解繊部1への噴霧を行う構成も可能である。その場合の温度や薬品の粘度に関しても、エアレイド部2の混合・分散空間への噴霧(破線矢印5b)と同様にしてよい。
また、破線矢印5dの如く、堆積体S1を加圧した後のシートS2に噴霧を行う構成も可能であり、その場合の温度や薬品の粘度に関しても、エアレイド部2の混合・分散空間への噴霧(破線矢印5b)と同様にしてよい。
【0018】
無端の搬送ワイヤ30は、不図示の駆動源により駆動されて、図示の破線矢印の方向へ移動する。搬送ワイヤ30の移動は一定速度でもよく、また、間欠的に移動・停止を繰り返す方式でもよい。要は、堆積体S1を所望の厚みと成して加圧部4へ送り込むことができればよい。
また、図1ではエアレイド部2で乾式成形した堆積体S1を、続けて、加圧部4へ送り込んでいるが、所定サイズの堆積体S1を順に加圧部4にセットして加圧する、いわゆるバッチ方式としてもよい。
【0019】
加圧部4は、上ローラ41と下ローラ42間にて堆積体S1を加圧して、目的の紙製成形体に適した適宜の厚みのシートS2と成す機能を奏する。このロールプレス圧を7~9barの範囲に設定すると、目的の紙成形体を成形部8にて例えば深絞りプレス成形する際に、破れる等の不具合を良好に防止することができる。
また、上ローラ41と下ローラ42間での加圧時に、及び/又は、加圧に先立って、適宜に加熱してもよい。加熱による温度範囲としては、10~40℃、好ましくは20~35℃の範囲とすると、濾水性及び含水性の変化に起因するフィルム(後述)の剥離等の接着不良を防止することができる。また、紙への浸透性や、脱水性も良好となる。
【0020】
加圧部4から送り出されるシートS2を搬送するワイヤを、例えば、搬送ワイヤ30から次段の搬送ワイヤ31に受け渡すように複数段階で構成する場合、接続ローラ35a-35bの径を15~50mmの範囲にすると、コンベアライン間のピッチを小さくでき、その結果、両面ラミネートでのフィルムの歪みや皺の発生を防止することができる。
加圧部4から送り出されるシートS2を、適宜に加熱してもよい。加熱による温度範囲としては、10~40℃、好ましくは20~35℃の範囲とすると、濾水性及び含水性の変化に起因するフィルム(後述)の剥離等の接着不良を防止することができる。また、紙への浸透性や、脱水性も良好となる。
【0021】
図2は、ラミネート部6の具体的構成の一例を示す。
ロール61からフィルム610を送り出して、シートS2の上面(第1面)に供給しつつ、ローラ61a-61b間で加熱・加圧する。これにより、シートS2内の熱融着繊維が溶融してフィルム610とシートS2の上面(第1面)を接着する。これにより、片面にフィルムが接着されたシートS21が得られる。なお、加熱温度は解繊部B12へ供給される熱融着繊維に応じて決められる。当該の熱融着繊維が適切に溶融してフィルム610や620(下記)をシートS2に接着できるように決められる。
【0022】
次に、シートS2は、図示の経路を辿り、ローラ62a-62b間に至る。このローラ61a-62b間に、図示のようにロール62から送り出されるフィルム620が供給される。これにより、シートS2の裏面(第2面)に、上記と同様に溶融した熱融着繊維の作用により、フィルム620が接着される。
こうして、シートS2の両面にフィルム610、620が接着されて、保護フィルム付きシートS22が得られる。
【0023】
上記では、フィルム610やフィルム620をシートS2の面へ送り込む位置を、加圧部4の後段としたが、フィルム610及び/又はフィルム620をシートS2の面へ送り込む位置を、加圧部4の前段側に設ける構成も可能である。
また、図2の構成はラミネート部6の一例を示すものであり、シートS2の両面にフィルムを接着できる構成であれば、異なる構成としてもよい。
【0024】
フィルムとしては、公知の樹脂フィルムを用いことができる。また、紙製のフィルムや生分解性プラスチック(ポリ乳酸等)製のフィルムを用いる構成も可能である。熱可塑製樹脂製のフィルムを用いる場合は、後段の成形部でのプレス成形時に加熱を伴う場合、当該のフィルムが溶融して金型の表面に付着して剥がれる等の不具合を生じない樹脂、言い換えれば、比較的高融点の樹脂を選択することが望まれる。紙製のフィルムを用いると、成形部8の金型成形面への付着を防止でき、剥がれを防止できる。
フィルムとしては、2層もしくは多層のものを用いてもよい。2層/多層構造のフィルムを用いる場合、表層(貼着後に露出する外層)として高融点の材質を用いると、成形部8での成形時に金型成形面との融着を防止できる。また、この場合に於いて、内層側に低融点の材質を用いると、シートS2への貼着が良好となる。さらに、最内層(シートS2に貼着される層)に接着剤としての機能を付与してもよい。
【0025】
成形部8は、公知の金型を用いて構成することができる。
ラミネート部6から成形部8へのシートS22の供給は、間欠的に所定サイズ毎に供給する公知の方式でもよく、バッチ方式で供給する公知の方式でもよい。間欠的に所定サイズ毎に供給する公知の方式としては、例えば、特許第6884848号の図1内に、供給ユニット17として開示されている方式を用いることができる。
【0026】
成形部8では、所望の形状の成形体を、シートS22からプレス成形して切り出す。この切り出し後の端材を回収して、端材回収部91から、解繊部1へ供給し、植物繊維や熱融着繊維の原料として再度用いるように構成してもよい。
【0027】
また、解繊部A11へ供給される原料としては、例えば、パルプシート、紙、古紙、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、緩衝材、マット、段ボールなどの、繊維が絡み合い又は結着されたものを挙げることができる。
【0028】
上記では図1に即して説明したが、図3のような構成も可能である。
図3では、解繊部1を、樹木や木材パルプ等の天然セルロース原料を破砕・解繊して植物繊維と成す解繊部A11のみで構成している。このため、分離機構92を設けて、端材回収部91から端材をリサイクルする際、植物由来の繊維のみを取り出して送り込むように構成している。
【0029】
図3の構成では、熱融着繊維を原料としないため、加圧部4から送り出されてラミネート部6へ供給されるシートS2の両面にフィルムを貼着するためには、シートS2の表裏面とフィルム610/620との間に接着剤を供給する必要がある。図2に例示するラミネート部6では、接着剤供給機構は図示されていないが、シートS2の表裏面とフィルム610/620との間に接着剤を供給し得る適宜の位置に設けることとする。
【0030】
また、図3の構成では、エアレイド部2、エアレイド部2から加圧部4へ堆積体S1を搬送する部分、加圧部4からラミネート部6へシートS2を搬送する部分、及び、噴霧機構5を温度制御する温度制御部7が設けられており、温度を、10~40℃、好ましくは20~35℃の範囲に温度制御している。この構成は、図1の構成に於いても、同様に設けても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 解繊部
11 解繊部A(植物繊維)
12 解繊部B(熱融着繊維)
2 エアレイド部
25 サクション部
3 搬送部
30 搬送ワイヤ
31 搬送ワイヤ
34a,34b,34c,34d,
35a,35b,35d,35e,35f,35h 接続ローラ
4 加圧部
41 上ローラ
42 下ローラ
5 噴霧機構
5a,5b,5c,5d 噴霧器
6 ラミネート部
61 フィルムロール
610 フィルム
61a 加熱ローラ
61b 加熱ローラ
62 フィルムロール
620 フィルム
62a 加熱ローラ
62b 加熱ローラ
65,66,67 搬送ワイヤ
7 温度制御部
8 成形部
91 端材回収部
92 分離機構
S1 堆積体
S2 シート
S21 シート(片面ラミネート)
S22 シート(両面ラミネート)
図1
図2
図3