(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079931
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】コンクリート床面の自動施工システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/10 20060101AFI20230601BHJP
E04G 21/08 20060101ALI20230601BHJP
E01C 19/48 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
E04G21/10 Z ESW
E04G21/08
E01C19/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193650
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】520108338
【氏名又は名称】株式会社フロアエージェント
(71)【出願人】
【識別番号】521024248
【氏名又は名称】又吉 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】110002882
【氏名又は名称】弁理士法人白浜国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】又吉 雄二
【テーマコード(参考)】
2D052
2E172
【Fターム(参考)】
2D052AC01
2D052BD07
2D052BD12
2E172AA05
2E172DB07
2E172FA12
2E172GB05
(57)【要約】
【課題】各作業行程を自動化された装置によって作業効率を向上させるとともに、作業者が熟練の技術者でなくても、高精度、かつ、高品質なコンクリート床面の仕上りを実現できるコンクリート床面の自動施工システムの提供。
【解決手段】コンクリート床面の自動施工システム100は、制御装置101と、制御装置101と通信可能なコンクリート床面10の均し作業及び再振動締固め作業を行う第1自動操縦装置200と、制御装置101と通信可能な金鏝作業を行う第2自動操縦装置300とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、前記制御装置と通信可能なコンクリート床面の均し作業及び再振動締固め作業を行う第1自動操縦装置と、前記制御装置と通信可能な金鏝作業を行う第2自動操縦装置とを含むコンクリート床面の自動施工システム。
【請求項2】
前記制御装置は、自動指令手段を有し、前記自動指令手段によって前記第1及び第2自動操縦装置が自走及び自動で作業を行う請求項1に記載のコンクリート床面の自動施工システム。
【請求項3】
前記制御装置と通信可能なブリーディング計測装置をさらに含み、前記ブリーディング計測装置は、無線通信部と、前記無線通信部に接続された水面検知器と、計測部とから構成される請求項1又は2に記載のコンクリート床面の自動施工システム。
【請求項4】
前記第1自動操縦装置は、走行手段である搬送部と、前記搬送部に着脱可能に取り付けられた均し・再振動部とを含む請求項1-3のいずれかに記載のコンクリート床面の自動施工システム。
【請求項5】
前記第2自動操縦装置は、装置本体と、前記装置本体に着脱可能に取り付けられた回転鏝部とを含み、前記回転鏝部は回転式円盤と羽根形回転鏝とを有する請求項1-4のいずれかに記載のコンクリート床面の自動施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人化装置を用いて自動化を実現した、種々の土木建築工事で施工されるコンクリート床面の施工方法、特に、倉庫等の建物のコンクリート床面の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、倉庫等の建物のコンクリート床面の施工方法は公知である。コンクリート床面を施工する場合、セメント、骨材、水、及び各種の混和材料などが適当な割合で混合された、生コンクリートが、打込み、締固め、表面仕上げ、養生などの施工を経て固められる。コンクリート表面を平滑にするための床均し作業が行われた後に、トロウエル等の床面仕上げ装置を用いて床面を万遍なく加圧して平面化され、必要に応じて、熟練の左官工が鏝(左官鏝)による手作業で仕上げ均しを行い、コンクリートの表面が光沢のある表面となるように仕上げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンクリート打設後の床面仕上げ工法について開示しており、第一工程として、コンクリート床面にコンクリートを打設した後、荒均しを行い、次いで荒均し面をタンピングすること、第2工程として、タンピング後のコンクリート床面の完全硬化後、コンクリート床面を研磨機で直接研磨することで床仕上げを完了する工程が開示されている。
【0004】
特許文献2には、自動走行してコンクリート床面を自動走行しながら均し作業を行うことのできる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-173453号公報
【特許文献2】特開2020-60021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているコンクリート床面の施工方法においては、従来の左官工による手作業に変えて機械により左官作業を行わせることによって、左官工の熟練度による仕上げレベルの差が生じるのを防ぐとともに、作業時間の短縮及びコストの低減を図ることができる。
【0007】
また、特許文献2に開示された自動走行可能な均し作業用の装置によれば、制御用コンピュータによって設定ルートを自動走行することができるので、作業時間及び作業効率を向上させることができる。
【0008】
従来のコンクリート床面の施工方法は、専門的、かつ熟練した職人による複数の工程を含む構成となっている。ところが、工程を熟知した上級の職人は、若い職人を育成する前に工事現場から退いてしまうため、コンクリート床面の施工方法に関する詳細な技術を十分に伝承できないという課題が指摘されていた。
【0009】
このことは、同一のコンクリート床面の施工工程を実施した場合、仕上げの良し悪しに少なからず影響を与え、コンクリート床面の施工精度を均一化できず、上記ひび割れの発生頻度も高くなる。一方、各現場に熟練の職人を確保しようとすると、人的な施工単価も高くなり、一連のコンクリート床面の施工方法に対する完全なる自動化への要求が近々の課題として指摘されている。
【0010】
本発明は、従来のコンクリート床面の施工方法の改良であって、各作業行程を自動化された装置によって作業効率を向上させるとともに、作業者が熟練の技術者でなくても、高精度、かつ、高品質なコンクリート床面の仕上りを実現できるコンクリート床面の自動施工システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、制御装置と、前記制御装置と通信可能なコンクリート床面の均し作業及び再振動締固め作業を行う第1自動操縦装置と、前記制御装置と通信可能な金鏝作業を行う第2自動操縦装置とを含むコンクリート床面の自動施工システムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリート床面の自動施工システムによれば、各作業行程を自動化された装置によって作業効率を向上させるとともに、作業者が熟練の技術者でなくても、高精度、かつ、高品質なコンクリート床面の仕上りを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本発明に係るコンクリート床面の自動施工システム及びその施工方法の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【
図1】(a)本発明に係るコンクリート床面の自動施工システムを概略的に示す全体図。(b)制御装置の構成を概略的に示すブロック図。
【
図2】本発明に係るコンクリート床面の施工方法の手順を示すフローチャートの図。
【
図5】第1工程における、打設均し作業の様子を示す図。
【
図6】第2工程における、レーザースクリート均しの様子を示す図。
【
図7】第4工程における、再振動締固め作業の様子を示す図。
【
図8】(a)コンクリート床内部のブリーディング計測を説明するための図。(b)ブリーディング計測装置の外観構成図。
【
図9】(a)ブリーディング計測装置を用いた測定結果を示す図(周囲温度10°C)。(b)ブリーディング計測装置を用いた測定結果を示す図(周囲温度35°C)。
【
図10】第5工程における、第2自動操縦装置による円盤掛け作業の様子を示す図。
【
図11】第6工程における、第2自動操縦装置による羽根押え作業の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照し、本発明に係るコンクリート床面の自動施工システム及びその施工方法の詳細を説明すると、以下のとおりである。また、以下の実施形態は、本発明の欠くことのできない要件を含む他に、選択的に採用することのできる要件及び適宜に組み合わせることのできる要件を含んでいる。
【0015】
図1(a),(b)を参照すると、本発明に係るコンクリート床面の自動施工システム100は、制御装置(コンピュータ、サーバ)101と、制御装置101と通信可能な第1自動操縦装置(均し機,再振動機)200と、制御装置101と通信可能な第2自動操縦装置(回転駆動機,表面仕上げ機)300と、制御装置101にデータを供給する作業データベース(ビッグデータ)400とを含む。第1及び第2自動操縦装置200,300は、作業者端末500を介してリモート操作可能である。
【0016】
制御装置101は、CPU、ROM、RAM等を含む制御基板からなり、通信ユニットを備え、データを送受信するための通信手段121、データを記憶するための記憶手段122、第1及び第2自動操縦装置200,300に自動走行及び自動作業を指令するための自動指令手段123及び記憶手段に記憶されたデータ及び/又は作業データベース400に蓄積されたデータを人工知能(AI)によって解析するためのAIデータ解析手段124を含む。
【0017】
制御装置101、第1自動操縦装置200及び第2自動操縦装置300が各識別信号を介して相互認識しながら通信することで、1つの自動施工システム100を構築している。なお、第1自動操縦装置200、第2自動操縦装置300が実行する制御プログラム(ファームウエア)は、書き換え可能なメモリに記憶され、随時アップグレード可能に構成されている。また、制御プログラム(ファームウエア)の言語に限定されるものではない。
【0018】
作業者端末500は、公知の無線通信方式で利用されるリモートコントローラのほかに、wifi方式等のインターネット回線を用いて制御装置101と情報通信可能であって、制御システム用プログラムに連動したアプリケーションをダウンロードして格納したスマートフォンやタブレット型情報端末であってもよい。
【0019】
また、作業データベース400は、外部メモリとして構築する場合を示すが、制御装置101は現場環境下において、図示しないwifiを介してクラウド上に設ける作業データベース400から作業情報を取得する構成としてもよい。
制御装置101及び作業データベース400は、人工知能(AI)を搭載しており、制御装置101の操作者は、現場において、設定するパラメータ(温度、湿度、コンクリート材料等)を作業データベース400に日時、現場名称、工事担当者とともに蓄積することで、コンクリート床面10の施工データのAI化を強力に推進して、後述するような各種のパラメータ設定を自動化できるように構成してもよい。
【0020】
これにより、作業者が施工経験の浅い職人であっても、熟練した職人によるパラメータを利用してコンクリート床面10の施工方法におけるほぼ全行程を全自動化された装置で高精度、かつ、高品質にコンクリート床面の仕上げを完了することが可能となる。
【0021】
第1自動操縦装置200は、
図3及び
図4に示すように、走行手段である搬送部20と、搬送部20に取り外し可能に連結された均し・再振動部30とを含む。搬送部20は、筐体21と、リチウムイオン(Li-ion)バッテリ22と、歯形ホイール(車輪)23と、オプションとして歯形ホールに着脱可能に取り付けられる脱着補助タイヤ24と、均し・再振動部30の上下リフトを行う昇降機構26と、均し・再振動部30を搬送部に係止するための牽引フック27と、搬送部20と均し・再振動部30とを取り外し可能に連結するための連結ジョイン28とを有する。
【0022】
筐体21は、搬送部用のモータ、コンバータ、モータドライバ、ギアボックス、コンプレッサーなどの駆動制御機構を収納する。リチウムイオンバッテリ22は、搬送部20に電力を供給する電力源であって、ソーラ発電システムや水素燃料バッテリに代替させることができる。
【0023】
均し・再振動部30は、振動伝達バー18と振動伝達棒19a、19b、19c、19dと、再振動用モータ12と、振動ブレード13と、振動ブレード13の前方に位置するタッパー16とを有する。ここで、振動ブレード13の振動周波数は、好ましくは、50-300Hz、加振加速度7G以上である。
【0024】
再振動用モータ12は、バッテリ22(例えば、リチュウムイオンバッテリ)から電力供給を受け、駆動する。再振動用モータ12は、振動ブレード13の再振動(タンピング)を発生させる役割を持つ。すなわち、再振動用モータ12は振動発生源であり、バイブレータ振動を振動伝達バー18から均等分散配置された4本の振動伝達棒19a、19b、19c、19dを介して振動ブレード13に縦振動のみを伝え、コンクリート施工の内部に溜まった水抜きや空気抜きを行って、コンクリート施工時のひび割れなどの防止対策を行っている。
【0025】
第1自動操縦装置200内の制御部(コントローラ)は、通信ユニットを介して
図1に示したコンピュータ101と通信可能に構成され、コンピュータ101が実行するプログラムに基づいて現場図面で指定された指定区域内を自走して第1,第2及び第4工程を高精度に行う。第1自動操縦装置200は、制御装置101によって制御された、第1工程の作業を行う「打設均しモード(第1作業モード)」、第2工程を行う「レーザースクリードモード(第2作業モード)」、第4工程を行う「再振動モード(第3作業モード)」、制御装置101の自動指令手段123の指令によって全自動で自走して作業する「全自動モード」等を備える。なお、自走速度は、環境情報(現場の温度、湿度、天気、風量)を入力することで最適化された自走パラメータと、再振動パターンが選択されて設定されるものとする。
【0026】
これにより、従来、職人が手押し作業や、職人が乗車して行う打設均し作業工程を無人化し、かつ、プログラム化することが可能となる。この際、入力されたパラメータと、選択された各種作業モードなど等は、作業データベース400に蓄積されて制御装置101のAI解析手段124において機械学習及び解析することで、次の現場における全自動による各種作業に反映される。したがって、本施工方法における、第1工程から第8工程における諸所の情報は、次回のコンクリート床面仕上げに有効に活用される。
【0027】
なお、
図2に示す、第1~第8工程を含むコンクリート床面の施工方法は、本願人が考案した独自の工法(LCS工法)に基づくものであって、かかる独自の工法を第1及び第2自動操縦装置200,300によって全自動で効率的かつ高精度に行うことができる。
【0028】
<第1工程(打設均し作業)S1>
図5を参照すると、第1工程S1では、倉庫等の施工場所のコンクリート床面10を構築する箇所に鉄筋組付けを行い、次いで、コンクリートポンプ車によって生コンクリートを打設する。ポンプ車の配管内から圧送されたコンクリートは、かき棒等を使って大体のレベルに均す荒均しが行われる。なお、生コンクリートの打設前には、生コンクリートの性状を確認するために、スランプ試験、空気量試験、塩化物含有試験等の各種試験が行われる。
【0029】
本発明に係る第1工程では、第1自動操縦装置200を「打設均しモード(第1作業モード)」にセットして、リモート制御又は自動制御によって打設均しを行うことができる。従来、作業者が、経験に基づいて挿入間隔や挿入場所を考慮いしながら棒状バイブレータを生コンクリートの内部に挿入することによって、締固め作業を行っていたが、第1自動操縦装置200によって打設均しを行うことで作業コストの抑制及び作業効率のアップを図ることができる。
【0030】
<第2工程(レーザースクリード均し)S2>
図6に示すとおり、第2工程S2では、第1自動操縦装置200を「レーザースクリート均しモード(第2作業モード)」に切替えて、リモート制御又は自動制御によって打設面の自動床均しを行う。第1自動操縦装置200は、起振軸を高速回転させて振動ブレード13を平面振動させて、コンクリートの充填、締固めを行う。
【0031】
第1自動操縦装置200は、幅方向に対向する支持棒42,43を有し、支持棒42,43の先端にはそれぞれレーザー受光器42a,43aが位置している。第1自動操縦装置200の近くには、レーザー照射部を有するレーザー発光器45が配置されていて、レーザー発光器45とレーザー受光器42a,43aとからなる自動レベル調整手段によってコンクリート床面10のレベルを監視している。
【0032】
また、既述のとおり、第1自動操縦装置200は、コンクリート床面10を掻くタッパー16と、その後方に位置する、バイブレータによってコンクリート床面10に対して平面振動を与えて均すための振動ブレード13とを備える。バイブレータによる振動タンピングによってコンクリート中の気泡や空気を除去し、密度を高めることで、コンクリート床面10のひび割れを抑制することができる。
【0033】
自動レベル調整手段と連動して、タッパー16によるコンクリート床面10の掻きと、振動ブレード13の平面振動によるタンピングとが行われる。すなわち、第1自動操縦装置200は、自動レベル調整手段によるレーザーレベル測定機能、自動レベル調整手段に連動して駆動するタッパー16によるコンクリート掻き機能、自動レベル調整手段に連動して振動するタンピング機能とを備える。
【0034】
このように、自動レベル調整手段が打設面の水平レベルをチェックしながらレ第1自動操縦装置200は進行方向へ進むので、操縦者は常にそのレベルを確認でき、安定したレベルを保ちながら作業を行うことができる。したがって、従来の左官工によって手作業で行われていた均し作業に代わって、第1自動操縦装置200による自動床均しを行うことで、不陸の軽減やレベルの均一化、作業性の向上、振動ブレード13の振動によるタンピング効果によって密実なコンクリートを実現することができる。
【0035】
第1自動操縦装置200は、荒均し、レベル出し、タンピング、スクリード作業を1台で行うことができ、レベル測定時の不要な光線の反射による不具合を防止する機能や、水勾配を正確に測定できる機能、レベル自動修正機能、リモコンによるレベル設定可能など極めて高性能レーザーレベルを備えている。
【0036】
第1自動操縦装置200を用いて第1及び第2工程を行う場合には、まず、新規作業フォルダーを作成して、作業現場の設計図に基づく施工面積や床面の形状等の基礎的な情報のほかに、仕上り後のコンクリート床面の厚さや硬度、施工当日の気温、湿度等の諸条件からなる基本データを予め制御装置101のシステムプログラムに入力して記憶手段122に記憶させる。次に、過去の作業データが蓄積された作業データベース400に基づいてAIデータ解析手段124でデータ解析を行い、自動指令手段123によって第1自動操縦措置200を自動走行させて自動制御で荒均し後の打設均し作業を行う。このとき、第1自動操縦装置200の自走速度、振動ブレード13の振動数や振動圧などは基本データ及び過去の作業データに基づいて算出された数値で行われる。
【0037】
このように、制御装置101を介して自動制御することで、複数台の第1自動操縦装置200を同時に制御して作業実行させることができ、複数の作業者が手作業で行う場合や1台の第1自動操縦装置200で作業を行う場合に比べて、作業効率を大幅にアップさせることができるとともに、床面積数千m2以上の大規模な立体駐車場施設であっても、均一な仕上がりのコンクリート床面を施工することができる。
【0038】
リモート制御と自動制御とは、並行して実行することができ、作業者は自動制御中であっても、作業現場の状況に応じて作業者端末によってリモート制御に切替えて作業全体又はその一部を実行することができる。
【0039】
<第3工程(床面のレベル確認)S3>
第3工程S3では、第1自動操縦装置200による自動床均し後、オートレベルを使用して、2000mmピッチでコンクリート床面10のレベルを確認する。また、コンクリート床面10の外周縁部や建物の柱が位置する部分の近傍では、正確にレベルを確認するために、500~1500mmピッチで確認作業を行う。
【0040】
図示していないが、かかる床面レベルの確認についても、第1自動操縦装置200にオートレベルに応じたレベル測定器を備え付け、リモート走行又は自動走行させながら床面の複数個所でレベル測定器を用いてコンクリート床面10のレベルを測定し、制御装置101に記録することができる。このように、制御装置101に自動測定されたレベル数値を記録させることで、作業データベースにデータとして蓄積させることができる。
【0041】
<第4工程(再振動締固め)S4>
図7を参照すると、第4工程S4では、コンクリート床面10のレベルを確認して所定時間経過した後、ブリーディングの発生時点で、第1自動操縦装置200によって、再振動による締固めを行って気泡や空隙を除去する。再振動締固めを行うことで、ブリーディングにより鉄筋や骨材の下に溜まった水を追い出して、コンクリートと鉄筋、骨材との付着を良好にして、コンクリートの強度を高めることができる。
【0042】
図7及び
図8(a),(b)を参照すると、本発明に係る自動施工システム100は、ブリーディングの発生時点を確認するためのブリーディング計測装置70を含む。
【0043】
従来、ブリーディング前又はそれからしばらくした後に、トンボ掛けや棒状バイブレータによる振動等を行う程度で済ませて、ブリーディング確認直後に再振動締固めを行うことはなかった。しかしながら、ブリーディングが起きているということはコンクリート内部に水ミチが形成されていることは明らかであり、その前又は途中で次の工程へ移行しても最終的にひび割れの生じない強固なコンクリート床面を形成することはできなかった。また、完全にブリーディングが起きた後に再振動を加えると、水和反応によるコンクリートの凝結の邪魔をして、強固なコンクリート床面を形成することができなかった。
【0044】
本実施形態に係るコンクリート床面の施工方法においては、ブリーディングの発生時点に、しっかりと平面タンパー機によるタンピング振動を加えることで水ミチによる気泡や空隙を除去し、最終的にひび割れの生じない強固なコンクリート床面を形成することができる。ここで、「ブリーディングの発生時点」とは、水ミチが形成され始めたことを確認した時点を意味し、具体的には、
図8(a)において、孔52の深さ寸法D1に対して、溜まった水53の深さ寸法D2が40~60%、好ましくは、45~55%の大きさになった時点を意味する。かかるタイミングで第2自動操縦装置300による平面振動を加えることで、確実に水ミチによる気泡や空隙を除去することができる。
【0045】
また、出願人の知見したところによれば、「ブリーディング発生時点」は、コンクリートの凝結前と凝結後との間における再振動に最も適したゴールデンタイムといえる時機であり、施工後にひび割れを生じない強固なコンクリート床面10得るために最も重要なポイントの1つであるといえる。すなわち、かかるタイミングが、コンクリート床面の圧縮強度比、密度比において品質の均一性が得られる範囲であって、コンクリートの品質向上に対して最適な再振動締固め時間であるといえる。
【0046】
ブリーディング計測装置70は、電源内蔵(図示省略)の無線通信部71と、無線通信部71に接続された水面検知器(水面検知センサ)72と、計測部73とから構成される。無線通信部71の電源は、小型のリチウムボタン電池や、単4乾電池やアルカリ電池、単5乾電池やアルカリ電池など、小型の電源が好ましい。コンクリート床内部のブリーディングを測定するためには、計測装置は小型軽量のものが適しているからである。無線通信部71は、近距離無線通信可能なブルートゥース(登録商標)、wifiなどを利用することができる。
【0047】
計測部73は、計測容器74と、この計測容器の外皮に設けられたメッシュフィルタ75と、水面検知器72を挿入する挿入口76(円筒形)とから構成される。計測部73は、打設された生コンクリートへ直接差し込んで使用するため、計測容器74に生コンクリート内部から染み出した水が計測容器74にたまるようにスリットや穴(又は孔)が複数設けられている。さらに、計測容器74内に泥や砂利などが入り込まないようにメッシュフィルタ75で計測容器74全体が覆われている。
【0048】
計測容器74は透明アクリル製の材料などが使用できる。メッシュフィルタ75はナイロン製で袋状の形態をしている。計測容器74全体を覆って溶着されている。水面検知器72には、着脱自在のフランジが設けられ、挿入口76から計測容器74の管内に挿入し、管内の所定位置に位置決めされる。フランジ77は、一部に切り込み(開口)があるC型形状の樹脂製材料で、水面検知器72を挿入口に挿入すると、フランジ77が内部に曲げられ、管壁に押圧力を与え、位置決めされる。
【0049】
メッシュフィルタの選定実験を行った。#100~300のメッシュフィルタでは、セメントの濁りがあり、セメントが透過していると判断し、不適とした。また、#400、500のメッシュフィルタでは、セメントの濁りがなく、透過していないと判断し、適(使用可)とした。
【0050】
計測容器の管穴位置と管サイズ確認試実験を行った。側面への穴は生コンクリートへの挿入した深さにより水位が異なり、計測器としては難しい。底面への穴で検討を進める。最低穴径を検討した結果、穴径は小さい方が侵入抵抗(表面張力)が働き、コンクリートの乾燥状態に近い計測が出来ると判断した。
穴径 3mm → 透過
穴径 1mm → 透過
何れも透過しているので、穴径は、1mm~3mmの範囲であれば、適(使用可)と判断した。水位データの確認は、計測容器の穴径1mmで行った。
【0051】
これらの実験結果から、ブリーディング計測装置としては、フィルター#500を使用し、計測容器の穴径1mm、コンクリート水分→セメント1:砂3(体積比で水40%~45%)
計測容器の管100mm高さの物を90mm沈めて実験を行った。その実験結果を
図8に示す。
【0052】
ブリーディング計測装置70の使用タイミングは、コンクリート打ち込み後から再振動をするまでの時間となり、これまでの実績は、夏場20分前後、冬場40分前後が好ましい結果であった。
【0053】
図8(a)に示すように、打ち込みが終わってから、計測部73を生コン(生コンクリート)に90mm(D1)差し込み、内管の水位がXmm(D2)になったら再振動を行う。Xmmに関しては外気温度により目標値(X)は変更する。
図9(a)に周囲温度が10°Cの環境下(冬場環境を想定)でブリーディング計測装置を用いた測定結果を示す。また、
図9(b)に周囲温度が35°Cの環境下(夏場環境を想定)でのブリーディング計測装置を用いた測定結果を示す。
【0054】
本測定では、生コンクリートの打ち込み後(実験環境下)の経過時間を0~60分の時間で5分おきに計測した。水分量は40%、45%で計測した。測定結果から、冬場では約45分以下の時間で水分量に合わせた水嵩に到達したら再振動をスタートすれば、良いと言える。また、夏場では約25分以下の時間で水分量に合わせた水嵩に到達したら再振動をスタートすれば、良いと言える。
【0055】
ブリーディング計測装置70がこのような構成を有することにより、作業者が指を挿し入れて確認作業を行っていた従来の方法に比べて、水面高さ調整が簡単化される。
【0056】
また、ブリーディング計測装置70の無線通信部71は、作業者端末及び制御装置101と通信可能であって、ブリーディング計測装置70の測定結果を制御装置101の記憶手段に記録させて、作業データベース400にデータ蓄積させることができる。例えば、コンクリート床面をエリア分割して複数台のブリーディング計測装置70を区画単位に設置し、制御装置101との無線通信によりブリーディングのタイミングを自動検知することもできる。これにより、コンクリート床面10の全体の再振動を適切に行うことができる。
【0057】
さらに、ブリーディング計測装置70を用いなくても、制御装置101の人工知能を利用して、施工に関する基本データ及び過去の作業データに基づいてブリーディング発生時点を予測することもできる。このように、ブリーディング計測装置70を用いることなくブリーディング発生時点を予測することで、より全体的な作業効率の向上を図ることができる。
【0058】
<第5工程(円盤掛け)S5及び第6工程(羽根押え)S6>
図10及び
図11を参照すると、再振動によってコンクリート床面10を均した後、さらに、第2自動操縦装置(回転駆動機,表面仕上げ機)300によって、コンクリート床面10を万遍なく加圧して平面化する。第2自動操縦装置300は、回転式円盤(又は羽根形回転鏝)をモータまたはエンジンで回転させて硬化前にコンクリート床面10の仕上げを行う床面仕上げ機である。回転式円盤及び羽根形回転鏝には、SK材や高張力鋼等の硬質鋼板が好適に用いられる。
【0059】
第2自動操縦装置300は、装置本体310と、装置本体310の上面に固定された、作業者端末及び制御装置101とネットワークを介して通信可能にするためのアンテナ部330と、装置本体310に取り付けられた回転鏝部320とを備える。回転鏝部320は、装置本体310に着脱可能であって、回転式円盤321と羽根形回転鏝322とを有する。回転式円盤321と羽根形回転鏝322とはプラスチック製又は金属製であって、作業の内容に合わせていずれかを選択して装置本体310に取り付けて使用することができる。
【0060】
第2自動操縦装置300は、「回転式円盤モード」と「羽根形回転鏝モード」との2種類の制御モードを有し、作業者端末又は制御装置101によって適宜必要な制御モードを選択して使用することができる。
【0061】
オプションとして、装置本体310の後方には刷毛板365が取り付けられている。刷毛板(不陸調整手段)365は、装置本体310に着脱可能に取り付けられており、円盤掛けの際に使用される。刷毛板365は、刷毛部分が櫛状や平板状であってもよいし、大小の大きさのものが前後方向に複数配置されたものであってもよいし、装置本体310の幅方向に複数並列して配置されていてもよい。また、装置本体310と機械的に連結されていて、前後動可能に制御されていてもよい。
【0062】
第5工程の手順としては、まず、第2自動操縦装置300の装置本体310の回転鏝部320として回転式円盤321を取り付けて、「回転式円盤モード」にセットした状態で起動させて、回転式円盤321の回転方向及び回転回数を調整しながらある程度までコンクリート床面10を平面化(円盤掛け)させる。次に、回転式円盤321を取り外して金属製の羽根形回転鏝322を装置本体310に装着し、「羽根形回転鏝モード」に切替えて、羽根形回転鏝322を縦軸及び横軸に運転して交互に回転させ、均しムラや不陸の調整をしながら一定のスピードでコンクリート床面10がうっすらと輝き出すまで丁寧に仕上げ作業(羽根押え)を行う。
【0063】
従来のコンクリート床面の施工方法の場合には、トロウエルの移動は、トロウエル本体に取り付けられたハンドルレバーを上下操作してトロウエル本体を傾けて、回転鏝の回転面における接地圧を変化させることで、接地抵抗の差によって生じる推力を利用して行うことができる。このように、トロウエルを移動する際には、トロウエル本体を傾けて回転鏝の回転面に不均等な接地圧がかかることから、コンクリート床面10に縞状の鏝跡が付いてしまい、最終的に左官工による綿密な金鏝仕上げが必要となる。第2自動操縦装置300では、装置本体310の後方には刷毛板365が取り付けられていることによって、円盤掛けの直後に刷毛板365によってコンクリート床面10のムラ取りを行って不陸調整することができる。
【0064】
本実施形態では、第2自動操縦装置300として、回転式円盤321と羽根形回転鏝322とを着脱式で取り付けることのできるものであるが、装置本体310にそれらを着脱不能に取り付けるものであってもよい。その場合には、回転式円盤321を装着した第2自動操縦装置300と羽根形回転鏝322を装着した第2自動操縦装置300とを交互に使用して作業を行う。
【0065】
第2自動操縦装置300を用いて第5及び第6工程を行う場合には、制御装置101に記録された第1自動操縦装置200による作業結果、ブリーディング計測装置70による測定結果等の作業現場における実際の作業データと作業データベース400に蓄積された過去の作業データとをAIデータ解析手段124によって解析させ、自動指令手段123によって第2自動操縦装置300の自走速度、回転鏝部320の回転方向、回転回数等を適宜調整して金鏝作業を実行させることができる。
【0066】
本願人の知見したところによれば、第2自動操縦装置300による表面加圧において、3.5N以上は振動や負荷を与えてはいけない領域に入ると推察される。したがって、第2自動操縦装置300の使用や仕上げ作業を行った場合、亀裂等が発生する可能性があることから、2.7Nでの作業終了が最適であると考える。
【0067】
<第7工程(金鏝仕上げ)S7>
第2自動操縦装置300による金鏝作業を行った後に、必要に応じて、左官工による金鏝仕上げを行う。左官工は、作業者端末又は制御装置101の液晶画面からコンクリート床面10の施工状況を確認したうえで、自らの経験と相俟って適切な金鏝仕上げを行うことができる。
【0068】
<第8工程(養生)S8>
第2自動操縦装置300による表面加圧後、十分な水和反応の促進と乾燥による表面のひび割れを防止するために、コンクリート床面10に水分を供給することが重要である。そのために、日中の平均気温に応じた必要日数、水養生や湿潤養生を行う。本施工方法では、最低、7日間の水養生、湿潤養生を行うことが好ましい。また、金鏝仕上げから3日程度で養生を行うことで、空気が乾燥した状態であっても、コンクリート床面10の表面にひび割れが生じるのを抑制することができる。
【0069】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えばASIC)によっても実現可能である。
【0070】
以上に記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
【0071】
制御装置と、前記制御装置と通信可能なコンクリート床面の均し作業及び再振動締固め作業を行う第1自動操縦装置と、前記制御装置と通信可能な金鏝作業を行う第2自動操縦装置とを含むコンクリート床面の自動施工システム。
【0072】
上記段落0071に開示した本発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。該実施の形態は、分離して又は互いに組み合わせて採択することができる。
(1)前記制御装置は、自動指令手段を有し、前記自動指令手段によって前記第1及び第2自動操縦装置が自走及び自動で作業を行う。
(2)前記制御装置と通信可能なブリーディング計測装置をさらに含み、前記ブリーディング計測装置は、無線通信部と、前記無線通信部に接続された水面検知器と、計測部とから構成される。
(3)前記第1自動操縦装置は、走行手段である搬送部と、前記搬送部に着脱可能に取り付けられた均し・再振動部とを含む。
(4)前記第2自動操縦装置は、装置本体と、前記装置本体に着脱可能に取り付けられた回転鏝部とを含み、前記回転鏝部は回転式円盤と羽根形回転鏝とを有する。
【0073】
この発明の明細書および特許請求の範囲において、用語「第1」および「第2」は、同称の要素、位置等を単に区別するために用いられている。
【符号の説明】
【0074】
10 コンクリート床面
20 搬送部
30 均し・再振動部
70 ブリーディング計測装置
71 無線通信部
72 水面検知器
73 計測部
101 制御装置
123 自動指令手段
200 第1自動操縦装置
300 第2自動操縦装置
310 装置本体
320 回転鏝部
321 回転式円盤
322 羽根形回転鏝