(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079932
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】船舶居住区の床構造の施工方法及び船舶居住区の床構造
(51)【国際特許分類】
B63B 3/68 20060101AFI20230601BHJP
B63B 29/02 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B63B3/68
B63B29/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193653
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】595027099
【氏名又は名称】株式会社ニッケンビルド
(71)【出願人】
【識別番号】521522825
【氏名又は名称】株式会社タフ興産
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰希
(57)【要約】
【課題】船舶居住区の床構造の仕上げモルタルのひび割れの発生を抑制し、かつ、施工性を向上させることが可能となる船舶居住区の床構造の施工方法を提供する。
【解決手段】実施形態における船舶居住区の床構造の施工方法は、甲板7の上面にモルタルを打設してレベル層1を形成するレベル層形成工程と、甲板7の上方のレベル層1の上面に鋼板パネル2を設置する鋼板パネル設置工程と、鋼板パネル2の上面にプライマー材3を塗布する塗布工程と、プライマー材3の上面にモルタルを打設して仕上げモルタル層4を形成する仕上げ工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶居住区の甲板に設けられる船舶居住区の床構造の施工方法であって、
甲板の上方に鋼板パネルを設置する鋼板パネル設置工程と、
前記鋼板パネルの上面にプライマー材を塗布する塗布工程と、
前記プライマー材の上面にモルタルを打設して仕上げモルタル層を形成する仕上げ工程と、を備えること
を特徴とする船舶居住区の床構造の施工方法。
【請求項2】
前記プライマー材は、液体状のエポキシ樹脂と、粉末状のアクリル樹脂と、細骨材と、を含むこと
を特徴とする請求項1記載の船舶居住区の床構造の施工方法。
【請求項3】
前記甲板の上面にモルタルを打設してレベル層を形成するレベル層形成工程を更に備え、
前記鋼板パネル設置工程では、前記レベル層の上面に前記鋼板パネルを設けること
を特徴とする請求項1又は2記載の船舶居住区の床構造の施工方法。
【請求項4】
船舶居住区の甲板に設けられる船舶居住区の床構造であって、
甲板の上方に設置される鋼板パネルと、
前記鋼板パネルの上面に塗布されるプライマー材と、
前記プライマー材の上面に形成される仕上げモルタル層と、を備えること
を特徴とする船舶居住区の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶居住区の床構造の施工方法及び船舶居住区の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶居住区の床構造に関する技術として、特許文献1が開示されている。特許文献1の開示技術は、多孔質気泡材にセメントを含浸してその表面に鋼板を一体的に被覆して遮音板を形成し、遮音板の表面に樹脂モルタルを均一状に被覆する船舶の甲板床材である。
【0003】
また、従来の船舶居住区の床構造900は、
図4に示すように、甲板90の上面に設けられるロックウール91と、ロックウール91の上面に設けられる鋼板パネル92と、鋼板パネル92に固定されるラス金網93と、ラス金網93を被覆するように設けられる例えば13mm程度の厚さの仕上げモルタル94とを備える。ラス金網93の敷設は、重なり部分を設けて配置される。各ラス金網93は、ビス95により鋼板パネル92に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の開示技術では、遮音板の表面に樹脂モルタルが直接被覆される。このため、樹脂モルタルの剥離が生じるおそれがある。この点、従来の船舶居住区の床構造900では、鋼板パネルと仕上げモルタルとの間にラス金網が設けられるため、仕上げモルタルの剥離を抑制できる。
【0006】
しかしながら、従来の船舶居住区の床構造900では、ラス金網93が用いられるため、船舶の居住区の形状に沿ってラス金網93を切断する作業や、ラス金網93をビス95で固定する作業が発生する。加えて、従来の船舶居住区の床構造900では、仕上げモルタルの層厚が13mm程度と薄く、水分が蒸発し乾燥収縮することから、仕上げモルタル94にラス金網93の模様が浮き出ることもある。この場合、仕上げモルタル94の研磨や仕上げモルタル94を2回塗りする等のラス金網93の模様が浮き出しを防止する作業が別途発生してしまう。したがって、施工性が低くなるという問題点があった。
【0007】
更には、ラス金網93の敷設は重なり部分が生じてしまうことから、当該仕上げモルタル94の層厚が不均一になる箇所が発生する。不均一な層厚の仕上げモルタル94では、乾燥時間にムラが発生し、仕上げモルタルの乾燥収縮の差によるひび割れも発生するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、船舶居住区の床構造の仕上げモルタルのひび割れの発生を抑制し、かつ、施工性を向上させることが可能となる船舶居住区の床構造の施工方法及び船舶居住区の床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る船舶居住区の床構造の施工方法は、船舶居住区の甲板に設けられる船舶居住区の床構造の施工方法であって、甲板の上方に鋼板パネルを設置する鋼板パネル設置工程と、前記鋼板パネルの上面にプライマー材を塗布する塗布工程と、前記プライマー材の上面にモルタルを打設して仕上げモルタル層を形成する仕上げ工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る船舶居住区の床構造は、船舶居住区の甲板に設けられる船舶居住区の床構造であって、甲板の上方に設置される鋼板パネルと、前記鋼板パネルの上面に塗布されるプライマー材と、前記プライマー材の上面に形成される仕上げモルタル層と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、船舶居住区の床構造の仕上げモルタルのひび割れの発生を抑制し、かつ、施工性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係る船舶居住区の床構造の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る船舶居住区の床構造の施工方法を示す図であり、
図2(a)は、レベル層形成工程を示す図であり、
図2(b)は、鋼板パネル設置工程を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る船舶居住区の床構造の施工方法を示す図であり、
図3(a)は、塗布工程を示す図であり、
図3(b)は、仕上げ工程を示す図である。
【
図4】
図4は、従来の船舶居住区の床構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した船舶居住区の床構造の施工方法及び船舶居住区の床構造を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係る船舶居住区の床構造の一例を示す断面図である。
【0015】
船舶居住区の床構造100は、船舶居住区の甲板7に用いられる。船舶居住区の床構造100は、レベル層1と、鋼板パネル2と、プライマー材3と、仕上げモルタル層4と、を備える。船舶居住区の床構造100は、必要に応じて、レベル層1を省略してもよい。
【0016】
レベル層1は、甲板7の不陸を調整するために甲板7の上面に形成される。レベル層1は、セメント系材料等のモルタルが用いられる。レベル層1は、モルタルが用いられる場合、層厚が例えば9mm程度となる。なお、図示は省略するが、レベル層1は、モルタルに代わりロックウールが用いられてもよい。なお、耐久性、頑健性、及び、防火性の観点では、モルタルの方が好ましい。
【0017】
鋼板パネル2は、甲板7の上方に設けられる。鋼板パネル2は、レベル層1の上面に設けられる。鋼板パネル2は、鋼板21と、断熱材22と、を有する。鋼板パネル2は、内部に空間が形成されるように矩形状の鋼板21の4辺が折り曲げられ、内部の空間に断熱材22が嵌入され接着剤を介して鋼板21と一体化される。鋼板21は、厚みが例えば2.3mm程度である。断熱材22は、例えば密度200g/m3のロックウール等が用いられる。断熱材22は、厚みが例えば15mm程度である。
【0018】
プライマー材3は、鋼板パネル2の上面に塗布される。プライマー材3は、層厚が例えば0.5mm程度である。プライマー材3は、例えば液状体と粉状体とを所定の時間混合して用いられる。
【0019】
プライマー材3の液状体は、例えばエポキシ樹脂主剤と、エポキシ樹脂硬化剤と、水と、SBR(styrene-butadiene rubber)樹脂と、を含む。エポキシ樹脂主剤の含有量は、プライマー材3の全重量に対して例えば5重量%以上15重量%以下である。エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、プライマー材3の全重量に対して例えば2重量%以上7重量%以下である。水は、プライマー材3の全重量に対して例えば10重量%以上20重量%以下である。SBR樹脂は、プライマー材3の全重量に対して例えば4重量%以上8重量%以下である。
【0020】
プライマー材3の粉状体は、例えば水硬性材料と、撥水材と、硅砂等の細骨材と、アクリル樹脂と、凝結材と、を含む。水硬性材料は、例えば高炉スラグ、フライアッシュ、セメント系材料等が用いられる。水硬性材料の含有量は、プライマー材3の全重量に対して例えば2重量%以上10重量%以下である。撥水剤の含有量は、プライマー材3の全重量に対して例えば1重量%以上5重量%以下である。細骨材は、プライマー材3の全重量に対して例えば30重量%以上50重量%以下である。アクリル樹脂は、プライマー材3の全重量に対して例えば5重量%以上15重量%以下である。凝結剤は、例えばアルミナセメントが用いられる。凝結材の含有量は、プライマー材3の全重量に対して例えば10重量%以上30重量%以下である。
【0021】
プライマー材3は、液体状のエポキシ樹脂と、粉末状のアクリル樹脂と、細骨材と、を含む。これにより、プライマー材3は、エポキシ樹脂により鋼板パネル2と仕上げモルタル層4との接着性を確保しつつ、粉末状のアクリル樹脂によりプライマー材3の柔軟性を確保することができる。また、粉末状のアクリル樹脂を含むことにより、被着体との塗布表面積が増加するため、密着性の向上につながる。その結果、仕上げモルタル層4のひび割れを抑制することができる。
【0022】
仕上げモルタル層4は、プライマー材3の上面に打設される。仕上げモルタル層4は、セメント系材料等のモルタルが用いられる。仕上げモルタル層4は、例えばレベル層1と同じ材料が用いられてもよい。
【0023】
次に、本実施形態における船舶居住区の床構造の施工方法の一例を説明する。船舶居住区の床構造の施工方法は、レベル層形成工程と、鋼板パネル設置工程と、塗布工程と、仕上げ工程と、を備える。船舶居住区の床構造の施工方法は、必要に応じて、レベル層形成工程を省略してもよい。
【0024】
船舶居住区の床構造の施工方法では、先ず、必要な資材を船舶に荷揚げし、施工箇所の清掃を行った上で、開始する。
【0025】
レベル層形成工程では、
図2(a)に示すように、甲板7の上面にモルタルを打設してレベル層1を形成する。レベル層1により甲板7の不陸を調整することができる。また、モルタル打設にて耐久性に寄与する頑健な下地層を形成することができる。レベル層形成工程では、打設したモルタルを硬化させる。
【0026】
次に、鋼板パネル設置工程では、
図2(b)に示すように、甲板7の上方に鋼板パネル2を設置する。鋼板パネル設置工程では、レベル層1の上面に鋼板パネル2を設置する。
【0027】
次に、塗布工程では、
図3(a)に示すように、鋼板パネル2の鋼板21の上面にプライマー材3を塗布する。プライマー材3は、液状のエポキシ樹脂と、粉末状のアクリル樹脂と、細骨材と、を混合し、鋼板21の上面に塗布される。
【0028】
次に、仕上げ工程では、
図3(b)に示すように、プライマー材3の上面にモルタルを打設し仕上げモルタル層4を形成する。
【0029】
以上により、本実施形態における船舶居住区の床構造の施工方法の一例が完了する。
【0030】
本実施形態によれば、甲板7の上方に鋼板パネル2を設置する鋼板パネル設置工程と、鋼板パネル2の上面にプライマー材3を塗布する塗布工程と、プライマー材3の上面にモルタルを打設して仕上げモルタル層4を形成する仕上げ工程と、を備える。すなわち、ラス金網を用いることなく、プライマー材3により鋼板パネル2と仕上げモルタル層4とを接着することができる。これにより、従来必要であったラス金網の切断作業やラス金網のビス止め作業を省略できる。また、ラス金網の浮き出しを防止する作業も省略できる。このため、施工性を大幅に向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、プライマー材3により鋼板パネル2と仕上げモルタル層4とを接着することができる。これにより、仕上げモルタル層4の剥離を防止することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態によれば、鋼板パネル2の上面にプライマー材3を塗布する塗布工程を備える。これにより、プライマー材3の層厚を均一にでき、プライマー材3の上面に形成される仕上げモルタル層4の層厚も均一にすることができる。このため、仕上げモルタル層4の乾燥のムラを抑制し、仕上げモルタル層4のひび割れを抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、レベル層1に敷設された鋼板パネル2の上面にプライマー材3を塗布する塗布工程を備える。これにより、頑健で凹凸の少ないレベル層1に敷設された鋼板パネル2にプライマー材3の層厚をより均一にでき、プライマー材3の上面に形成される仕上げモルタル層4の層厚もより均一にすることができる。このため、仕上げモルタル層4の乾燥のムラを抑制し、仕上げモルタル層4のひび割れを抑制することができる。
【0034】
本実施形態によれば、プライマー材3は、液体状のエポキシ樹脂と、粉末状のアクリル樹脂と、細骨材と、を含む。これにより、プライマー材3は、エポキシ樹脂により鋼板パネル2と仕上げモルタル層4との接着性を確保しつつ、粉末状のアクリル樹脂によりプライマー材3の柔軟性を確保することができる。また、粉末状のアクリル樹脂を含むことにより、被着体との塗布表面積が増加するため、密着性の向上につながる。その結果、仕上げモルタル層4のひび割れを抑制することができる。
【0035】
本実施形態によれば、甲板7の上面にモルタルを打設してレベル層1を形成するレベル層形成工程を更に備え、鋼板パネル設置工程では、レベル層1の上面に鋼板パネル2を設置する。これにより、甲板7の不陸を調整することができる。また、レベル層1としてロックウールが用いられる場合と比較して、レベル層1としてモルタルが用いられる方が、長期の耐久性を向上させることが可能となる。
【0036】
以上、この発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、この発明は、上記の実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記の実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【実施例0037】
実施例では、船舶居住区の床構造の施工性を検討した。
【0038】
本発明例及び比較例では、資材を荷揚げする荷揚工程と、施工箇所を清掃する清掃工程と、甲板の上面にレベル層を形成するレベル層形成工程と、レベル層の上に鋼板パネルを設置する鋼板パネル設置工程と、鋼板パネルを固定するパネル固定工程と、鋼板パネルに下地材を設置する下地材設置工程と、下地材の上に仕上げモルタル層を形成する仕上げ工程と、を備え、作業時間を測定した。
【0039】
表1に本発明例及び比較例で用いた材料を示す。
【0040】
【0041】
本発明例のレベル層形成工程は、レベル層としてモルタルを用いて、甲板の上面にモルタルを打設して層厚9mmのレベル層を形成した。レベル層のモルタルは、普通ポルトランドセメントと細骨材とを所定量の水と練り混ぜた。比較例のレベル層を形成工程は、レベル層としてロックウールを用いて、甲板の上面にロックウールを設置して層厚15mmのレベル層を形成した。
【0042】
本発明例及び比較例で用いた鋼板パネルは、内部に空間が形成されるように、厚さ2.3mmの矩形状の鋼板の4辺を折り曲げて、内部に断熱材としてのロックウールを層厚が15mmとなるように収容した。鋼板パネルは、JISG333に規定される電気メッキ鋼板を用いた。鋼板パネルは、JISG3302に規定される溶融亜鉛めっき鋼板であってもよい。鋼板パネルは、幅450mm×長さ900mm×深さ17mmに曲げ加工したものを用いた。
【0043】
本発明例の下地材設置工程は、下地材としてプライマー材を用いて、鋼板パネルにプライマー材を塗布する塗布工程である。プライマー材は、層厚を0.5mmとした。表2に本発明例で用いたプライマー材の組成材を示す。プライマー材は、液状体と粉状体とを所定の時間混合して、塗布した。
【0044】
【0045】
比較例の下地材設置工程は、下地材としてラス金網を用いて、鋼板パネルにラス金網をビスで固定するラス金網設置工程である。ラス金網は、JISA5505に規定されるメタルラスを用いた。ラス金網は、力骨付きラスである。ラス金網の材質は、溶融亜鉛めっき鋼板に準ずるものを用いた。なお、ラス金網の材質は、亜鉛めっき鉄線に準ずるものであってもよい。ラス金網の寸法は、955mm×1,829mmのものを用いた。ラス金網の重量は、0.7kg/m2のものを用いた。
【0046】
本発明例及び比較例で用いた仕上げモルタル層は、普通ポルトランドセメントと細骨材とを所定量の水と練り混ぜた。本発明例及び比較例で用いた仕上げモルタル層は、層厚を13mmとした。
【0047】
本発明例及び比較例では、それぞれ5箇所の施工案件にて、作業時間と、各工程の施工歩掛と、を測定した。
【0048】
表3に施工案件ごとの作業時間と、床面積と、全工程の施工歩掛を示す。表3の全工程の施工歩掛は、(作業時間)/(床面積)として算出した。表3の施工歩掛の増加率は、(本発明例の全工程の施工歩掛-比較例の全工程の施工歩掛)/(比較例の全工程の施工歩掛)として算出した。
【0049】
【0050】
表3に示すように、比較例の全工程の施工歩掛の平均値は、0.465(h/m2)であり、本発明例の全工程の施工歩掛の平均値は、0.404(h/m2)であった。また、全工程の施工歩掛の増加率は、-13.0%となり、本発明例の施工性が向上した。表3に示す全工程の施工歩掛について、有意水準を0.05と設定し、t検定を行った。その結果、t検定のp値は、1.321×10-4となり、有意水準として設定した0.05より小さくなった。したがって、比較例の全工程の施工歩掛と本発明例の全工程の施工歩掛との差異は、統計的に有意性があることが示された。
【0051】
次に、本発明例及び比較例について、各工程の施工歩掛を検討した。表4に施工案件ごとの各工程の施工歩掛を示す。
【0052】
【0053】
表5に、各工程ごとに施工歩掛の平均値と、t検定におけるp値を示す。有意性有無の判定は、有意水準を0.05と設定した。表5において、t検定のp値が0.05未満の場合、有意性有りとして「〇」と表記し、t検定のp値が0.05以上の場合、有意性無しとして「×」と表記する。なお、表5における各工程の施工歩掛は、表4の各工程の施工歩掛の平均値(平均値1~平均値7)を100m2当たりの施工歩掛として示す。表5の所定工程の「比率」は、(本発明例の所定工程の施工歩掛)/(比較例の所定工程の施工歩掛)である。
【0054】
【0055】
表5に示すように、鋼板パネル設置工程と、下地材設置工程と、仕上げモルタル層形成工程とにおいて、有意性が有りと判定された。特に、本発明例の下地材設置工程は、プライマー材を塗布する塗布工程であったのに対し、比較例の下地材設置工程は、ラス金網を設置するラス金網設置工程である。本発明例は、鋼板パネルの上面にプライマー材を塗布する塗布工程と、プライマー材の上面にモルタルを打設して仕上げモルタル層を形成する仕上げ工程と、を備える。このため、本発明例において施工性が向上したと考えられる。
【0056】
表6に施工案件1における各工程の施工歩掛と、施工歩掛の増加率と、各工程の寄与度と、各工程の寄与率を示す。表6の各工程の施工歩掛の増加率は、(所定工程の本発明例の施工歩掛-所定工程の比較例の施工歩掛)/(所定工程の比較例の施工歩掛)により算出した。表6の各工程の寄与度は、(所定工程の本発明例の施工歩掛-所定工程の比較例の施工歩掛)/(比較例の全体の施工歩掛(46.97))により算出した。表6の各工程の寄与率は、(所定工程の寄与度)/(合計の寄与度(-14.2))により算出した。
【0057】
【0058】
表6に示すように、施工案件1では、施工歩掛の増加率は、-14.2%となり、本発明例の施工性が向上した。特に、下地材設置工程の寄与度は、-19.5%となり、全工程の中でも下地材設置工程である塗布工程に寄与が大きいといえる。本発明例は、鋼板パネルの上面にプライマー材を塗布する塗布工程と、プライマー材の上面にモルタルを打設して仕上げモルタル層を形成する仕上げ工程と、を備える。このため、本発明例において施工性が向上したと考えられる。