(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007997
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】防護服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/12 20060101AFI20230112BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20230112BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A41D13/12 109
B32B27/12
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111189
(22)【出願日】2021-07-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 電気通信回線を通じて発表 掲載年月日:令和3年6月10日 掲載アドレス:https://www.unitika.co.jp/news/fiber/unisofia_1.html?referrer=news&category=fiber&page=1
(71)【出願人】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518109697
【氏名又は名称】大和川ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永川 彰一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 健二
(72)【発明者】
【氏名】寺前 裕司
【テーマコード(参考)】
3B011
4F100
【Fターム(参考)】
3B011AB06
3B011AC18
4F100AA01A
4F100AA15A
4F100AK03A
4F100AK04B
4F100AK42B
4F100AK62A
4F100AK66A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DE00A
4F100DG15B
4F100GB66
4F100GB72
4F100JD04
4F100JD05
(57)【要約】
【課題】医療用の防護服において、透湿性の向上を図る。
【解決手段】フィルムと不織布とが積層された生地によって構成された防護服である。フィルムは、ポリオレフィン系樹脂層の中に微粒子を60質量%以上含み、微粒子の表面とポリオレフィン系樹脂との間に空隙を有する。防護服は、JIS L1099のA-1法による透湿度が8000g/m2・24h以上である
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムと不織布とが積層された生地によって構成された防護服であって、前記フィルムは、ポリオレフィン系樹脂層の中に微粒子を60質量%以上含み、前記微粒子の表面とポリオレフィン系樹脂との間に空隙を有し、JIS L1099のA-1法による透湿度が8000g/m2・24h以上であることを特徴とする防護服。
【請求項2】
不織布層は、芯部がポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに鞘部がポリエチレンで構成されている芯鞘複合繊維を構成繊維とし、構成繊維同士がスポット状の形態で部分的に熱接着されていることを特徴とする請求項1記載の防護服
【請求項3】
微粒子が無機微粒子であることを特徴とする請求項1または2記載の防護服。
【請求項4】
微粒子が炭酸カルシウム微粒子であることを特徴とする請求項3記載の防護服。
【請求項5】
フィルムと不織布とが積層された生地であって、前記フィルムは、ポリオレフィン系樹脂層の中に微粒子を60質量%以上含み、前記微粒子の表面とポリオレフィン系樹脂との間に空隙を有し、JIS L1099のA-1法による透湿度が8000g/m2・24h以上であることを特徴とする防護服用生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防護服に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場で用いられる感染防止用の防護服として、特許文献1には、芯部がポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに鞘部がポリエチレンで構成されている芯鞘複合繊維を構成繊維とし、構成繊維どうしが部分的に熱接着された不織布と、無孔透湿性ポリウレタンフィルムとが積層された複合シートを用いたものが記載されている。無孔透湿性ポリウレタンフィルムは、ポリウレタン樹脂の構造中に親水基が導入されていることで透湿機能が付与されたものである。
【0003】
一方、特許文献2には、複合シートからなる使い捨て防護服であって、この複合シートは、芯部がポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに鞘部がポリエチレンで構成されている芯鞘複合繊維を構成繊維とし、構成繊維どうしが部分的に熱接着された不織布と、微多孔性ポリエチレンフィルムとが積層されたものである。この微多孔性ポリエチレンフィルムとしては、無機充填剤、有機充填剤などを含有するポリエチレンフィルムよりこれらの充填剤を溶剤で溶出して製造する微多孔性フィルムや、粒子状の無機充填剤、有機充填剤を含有するポリエチレン樹脂からなるシートを少なくとも一軸方向に延伸することで、粒子表面と樹脂との間に空隙を生じさせることにより微多孔構造を形成させて得られる微多孔性フィルムなどが挙げられる(特許文献2の段落0021)。ポリエチレンフィルムは、微多孔性であることで、血液バリア性、ウィルスバリア性、通気性、柔軟性を併有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3190510号公報
【特許文献2】実用新案登録第3157107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている無孔透湿性ポリウレタンフィルムを用いた防護服や、特許文献2に記載されている粒子含有樹脂シートを延伸させた微多孔ポリエチレンフィルムを用いた防護服では、バリア性は良好であるが、通気性を有するといえども着用時に汗がこもることがあって、通気性すなわち透湿性にさらなる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、医療用の防護服において、透湿性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明の防護服は、フィルムと不織布とが積層された生地によって構成された防護服であって、前記フィルムは、ポリオレフィン系樹脂層の中に微粒子を60質量%以上含み、前記微粒子の表面とポリオレフィン系樹脂との間に空隙を有し、JIS L1099のA-1法による透湿度が8000g/m2・24h以上であることを特徴とする。
【0008】
本発明の防護服によれば、不織布層は、芯部がポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに鞘部がポリエチレンで構成されている芯鞘複合繊維を構成繊維とし、構成繊維同士がスポット状の形態で部分的に熱接着されていることが好適である。
【0009】
本発明の防護服によれば、微粒子が無機微粒子であること、特に炭酸カルシウム微粒子であることが好適である。
【0010】
本発明の防護服用生地は、フィルムと不織布とが積層された生地であって、前記フィルムは、ポリオレフィン系樹脂層の中に微粒子を60質量%以上含み、前記微粒子の表面とポリオレフィン系樹脂との間に空隙を有し、JIS L1099のA-1法による透湿度が8000g/m2・24h以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防護服によると、ポリオレフィン系樹脂層の中に微粒子を含み、この微粒子の表面とポリオレフィン系樹脂との間に空隙を有する構造であるために、バリア性と通気性すなわち透湿性とを両立させることができる。しかもポリオレフィン系樹脂層の中に微粒子を60質量%以上含み、JIS L1099のA-1法による透湿度が8000g/m2・24h以上であることで、多量の微粒子により形成されるきわめて多数の空隙により、良好な透湿度を達成することができ、このため着用時に汗がこもることを確実に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の防護服は、微多孔を有するポリオレフィン樹脂層すなわちフィルムと、不織布とが積層されたものである。フィルムは微粒子を含み、この微粒子の表面とポリオレフィン系樹脂との間に空隙を有することで、上記の微多孔が形成されている。
【0013】
この空隙は、上述の場合と同様に、微粒子を含有するポリオレフィン系樹脂からなるシートを少なくとも一軸方向に延伸することで、微粒子表面と樹脂との間、すなわち微粒子とポリオレフィン系樹脂との界面に隙間を生じさせることにより、形成することができる。そして、延伸の結果、空隙が形成されるとともに、各空隙同士が互いに連通されることによって、所要の空気透過性や水蒸気透過性を確保することができる。空気透過性や水蒸気透過性は「通気性」と称することもでき、また水蒸気透過性は「透湿性」と称することもできる。
【0014】
本発明の防護服を形成するための生地用のフィルムは、ポリオレフィン系樹脂層の中に微粒子を60質量%以上含むことが必要である。微粒子を60質量%以上含むことで、延伸工程を経て微多孔フィルムとしたときに、微粒子の含有量が60質量%未満の場合に比べて微多孔の数を増大させることができ、それによって所要の透湿性を達成することができるためである。すなわち、ポリオレフィン系樹脂層による所要のバリア性を発揮したうえで、きわめて良好な透湿性を確保することができるためである。本発明において、ポリオレフィン系樹脂層中の微粒子は65質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂層における微粒子の含有割合が60質量%を下回ると、きわめて良好な透湿性というものを確保できなくなる。微粒子の含有割合の上限は、特に設定するものではないが、あまりに含有割合が高すぎると、ポリオレフィン系樹脂をフィルム化することが困難になったり、空隙の形成のために延伸するときにフィルムが破断しやすくなったりするなどの弊害が生じるおそれがある。このような観点にたてば、微粒子の含有割合の上限は、75質量%とすることが好適である。
【0015】
微粒子の粒径は、空隙の形成によって所要の透湿性を発揮するために、また所要の透湿性を発揮したうえでバリア性に悪影響を及ぼさないために、0.1~10μmの範囲であることが好ましく、0.1~4μmの範囲であることがより好ましい。また、透湿性やバリア性などの性能の安定化の観点から、粒度分布の幅は、できるだけ狭い方が好ましい。なお、粒径は、以下の方法により測定する。
すなわち、JIS Z 8825(粒子径解析-レーザ回折・散乱法やJIS Z 8823(液相遠心沈降法による粒子径分布の測定方法)が挙げられる。
【0016】
本発明の防護服を構成するための微多孔フィルムは、厚みが40μm以下であることが好ましい。厚みが40μm以下であることにより、後述のように不織布との積層によって防護服とするときに、薄く、したがって軽量であり、また柔軟なものとすることができ、また透湿性も良好となる。厚みが40μmを超えると、上記のように不織布との積層を行った場合に、厚くなってしまって、柔軟性を含めた防護服の着心地などが低下する。厚みの下限は、特に規定されるものではないが、この微多孔フィルムを用いて防護服を構成したときの所要強度の観点にたてば、10μmを下限とすることが好適である。
【0017】
樹脂層を形成するためのポリオレフィンとしては、任意のものを使用することができ、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂を代表例として挙げることができる。なかでも、ポリエチレン系樹脂を、加工性が良好で、柔軟で軽いという理由によって、好適に用いることができる。ポリエチレン系樹脂としては、エチレンのみの重合体であってもよく、また、エチレンを主たる繰り返し単位とし、これにα-オレフィンを共重合してなる共重合体でもよい。α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。なお、ポリオレフィンの数平均分子量も任意である。
【0018】
微粒子としては、有機微粒子や無機微粒子を挙げることができる。特に無機微粒子を好適に用いることができ、そのような無機微粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、タルク、シリカなどを挙げることができる。なかでも、自然界に多数存在する石灰石を原材料とし、汎用性があり、化粧品原料や食品添加物としても使用が認められ安全性が高いという理由から、炭酸カルシウムを好適に用いることができる。
【0019】
本発明の防護服は、微多孔のフィルムを用いた生地にて構成されているため、血液バリア性やウィルスバリア性などの所要のバリア性を有するものである。血液バリア性として、たとえば、ASTM F1670/F1670M-17aのB法により試験した場合において、5分間静置した後に13.8kPaにて1分間加圧したとき、およびその後に54分間静置したときの人工血液の浸透の有無を目視で確認したときに、いずれも浸透無しであることが挙げられる。ウィルスバリア性は、たとえば、同様に、ASTM F1671/F1671M-13のB法により試験することで、評価することができる。
【0020】
フィルムを構成する樹脂組成物には、用途に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、着色防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料などの添加剤を添加することもできる。
【0021】
本発明の防護服を構成する微多孔のフィルムの製造方法の一例について説明する。まず、ポリオレフィン系樹脂と炭酸カルシウムなどの微粒子とを準備する。そして、ポリオレフィン系樹脂に微粒子を60質量%以上配合して、2軸混錬押し出し機にて溶融混錬することで、コンパウンドペレットを作製する。このコンパウンドペレットを乾燥した後、インフレーション成膜法などによってフィルム化する。インフレーション成膜法としては、乾燥後のコンパウンドペレットを1軸混練押し出し機に投入し、溶融したポリマーを丸ダイからチューブ状に引き上げ、空冷しながら同時に風船状に膨らませて成膜する方法や、丸ダイより溶融ポリマーを冷却水とともに円筒状に下方へ押し出した後、いったん折り畳み、それを上方へ引き上げ、次いで加熱しながら風船状に膨らませて、成膜しフィルム化する方法などを、好ましく採用することができる。インフレーション成膜法を用いることによって、フィルム形成後の延伸処理を施すことなしに、延伸された状態のフィルムを直ちに得ることができる。2軸混錬押し出し機におけるポリマー溶融温度は、ポリオレフィン系樹脂の溶融温度である120~180℃の温度範囲で適宜に選択することができる。1軸混錬押し出し機におけるコンパウンドペレットのポリマーの溶融温度は、ポリオレフィン系樹脂の融点や配合量、および炭酸カルシウムなどの微粒子の配合量を考慮して、適宜選択することができるが、120~180℃の温度範囲が好適である。
【0022】
また、フィルム化する方法としては、ポリオレフィン系樹脂と炭酸カルシウムなどの微粒子とを所定量だけ配合した樹脂組成物を、ポリオレフィン系樹脂の融点以上、分解温度未満の温度条件下で溶融し、Tダイを用いて押出成形し、無孔の未延伸シートを得、その後、一軸延伸または二軸延伸することにより微多孔を発現させて微多孔フィルムを得る方法も好ましい。無孔の未延伸シートを延伸する方法としての一軸延伸は、縦一軸延伸であってもよいし、横一軸延伸であってもよい。また、二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。逐次二軸延伸は、各延伸工程で延伸条件を選択でき、微多孔構造を制御しやすい。
【0023】
なお、微多孔フィルムを製造する前段階でのコンパウンドペレットの製造時に、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、有機滑剤などを添加することもできる。加えて、フィルムの製造時にも、必要に応じて添加剤をフィルム物性に影響を与えない程度に加えてもよい。
【0024】
60質量%以上の大量の微粒子を配合した状態で問題なくフィルム化しかつ延伸を行うためには、製造工程において、加熱温度を通常の設定温度よりも10%程度高くするとともに、成膜速度をできるだけ遅くし、混錬押し出し機からの溶融したポリマーを徐冷するという工夫を行うことが好ましい。例えば、フィルムを構成する樹脂としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、通常は160℃程度の設定温度とするところを、170~180℃の設定温度とする。反対に、加熱温度が低い、または、冷却速度が速いという条件下では、成膜状態が不安定・不均一となるという理由によって、正常なフィルム化が困難となる。延伸も同様で加熱温度を高くするとともに、十分に受熱させ延伸することが必要となる。
【0025】
微多孔フィルムの両面または片面には、接着剤を用いた接着や熱接着などにより不織布が積層され、それによって本発明の防護服の生地としての積層体が得られる。不織布としては、適宜のものを利用できるが、芯部がポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに鞘部がポリエチレンで構成されている芯鞘複合繊維を構成繊維とし、構成繊維同士がスポット状の形態で部分的に熱接着されているものを、好適に用いることができる。
【0026】
このように不織布を積層することにより、微多孔フィルムを補強して、防護服としたときの所要強度を得ることができる。強度的な観点にたてば、上述のように芯部がポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに鞘部がポリエチレンで構成されている芯鞘複合繊維を構成繊維とした不織布が、特に好適である。また、このような芯鞘構造の不織布は、ヒートシール性に優れるので、積層体にて構成される生地を用いて防護服を得るときに、ヒートシールによって容易に仕立てることができるとともに、ヒートシールによって生地同士を隙間なく接合することができるために、生地同士の接合部における防護服の防水性、血液バリア性、ウィルスバリア性を確実に保つことができる。もちろん生地同士を縫製することによって、あるいは縫製とヒートシールとを併用することによって、防護服を仕立てることも可能である。
【0027】
本発明の防護服は、所要の透湿性を発揮することを目的として、JIS L1099のA-1法による透湿度が8000g/m2・24h以上であることが必要である。この透湿度は、9000g/m2・24h以上であることが好ましく、10000g/m2・24h以上であることがいっそう好ましい。このような大きな透湿度を有する防護服は、上述のようにフィルムがポリオレフィン系樹脂層の中に微粒子を60質量%以上含むものであることによって、初めて得ることができる。
【0028】
このように本発明の防護服は透湿度がきわめて高いため、長時間着用した場合であっても汗がこもりにくく、このため快適な着用状態を長時間にわたって持続することができる。
【実施例0029】
以下の実施例、比較例における各種物性値の測定は、下記の方法により実施した。
【0030】
(1)フィルムおよび防護服の透湿度(g/m2・24h)
JIS L1099のA-1法により求めた。3つのサンプルについて測定し、その平均値を透湿度とした。
【0031】
(2)フィルムの耐水度(mm)
JIS L1092のA法により求めた。
【0032】
(3)血液バリア性
【0033】
ASTM F1670/F1670M-17aのB法により試験した。そして、目視による人工血液の浸透の有無により血液バリア性を評価した。具体的には、浸透無しの場合を「〇」と評価し、浸透有りの場合を「×」と評価した。
【0034】
(4)ウィルスバリア性
ASTM F1671/F1671M-13のB法により試験した。そして、目視によるファージ縣濁液の浸透の有無によりウィルスバリア性を評価した。具体的には、浸透無しの場合を「〇」と評価し、浸透有りの場合を「×」と評価した。
【0035】
(5)フィルムの厚み
ピーコック測定器を用いて測定した。
【0036】
(製造例1)
低密度ポリエチレン30部と、粒径1.7μm(レーザ回折・散乱法によるD50)の炭酸カルシウム70部、酸化防止剤0.5部とを2軸混錬押し出し機に投入して混錬し、押し出し温度160℃にてコンパウンド原料を作製した。
【0037】
次いで、このコンパウンド原料を用いて、1軸押し出し機により設定温度180℃で溶融押し出しを行い、ダイより押し出されたシート状物を機械方向に延伸倍率2.5倍で延伸し、速度200m/分にて巻き取ることで、炭酸カルシウムを70質量%含有する、厚み20μmの微多孔フィルムを作製した。
【0038】
(製造例2)
低密度ポリエチレン30部と、粒径1.7μm(レーザ回折・散乱法によるD50)の炭酸カルシウム70部、酸化防止剤0.5部とを2軸混錬押し出し機に投入して混錬し、押し出し温度160℃にてコンパウンド原料を作製した。
【0039】
次いで、このコンパウンド原料を用いて、1軸押し出し機により設定温度180℃で溶融押し出しを行い、ダイより押し出されたシート状物を機械方向に延伸倍率3.0倍で延伸し、速度200m/分にて巻き取ることで、炭酸カルシウムを70質量%含有する、厚み20μmの微多孔フィルムを作製した。
【0040】
(製造例3)
低密度ポリエチレン44部と、粒径1.7μm(レーザ回折・散乱法によるD50)の炭酸カルシウム56部、酸化防止剤0.5部とを2軸混錬押し出し機に投入して混錬し、押し出し温度160℃にてコンパウンド原料を作製した。
【0041】
次いで、このコンパウンド原料を用いて、1軸押し出し機により設定温度180℃で溶融押し出しを行い、ダイより押し出されたシート状物を機械方向に延伸倍率3.0倍で延伸し、速度200m/分にて巻き取ることで、炭酸カルシウムを56質量%含有する、厚み20μmの微多孔フィルムを作製した。
【0042】
(製造例4)
低密度ポリエチレン30部と、粒径1.7μm(レーザ回折・散乱法によるD50)の炭酸カルシウム70部、酸化防止剤0.5部とを2軸混錬押し出し機に投入して混錬し、押し出し温度160℃にてコンパウンド原料を作製した。
【0043】
次いで、このコンパウンド原料を用いて、1軸押し出し機により設定温度160℃で溶融押し出しを行い、ダイより押し出されたシート状物を機械方向に延伸倍率2.5倍で延伸したところ、均一に成膜ができなかったため、製造を中止した。
【0044】
製造例1、2、3の微多孔フィルムの性能を表1に示す。
【0045】
【0046】
(実施例1)
不織布として、芯部がポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに鞘部がポリエチレンで構成されている芯鞘複合繊維を構成繊維とし、構成繊維同士がスポット状の形態で部分的に熱接着されているものを準備した。この不織布は、繊維の単繊維繊度が3.5デシテックス、繊維の芯部と鞘部との質量比が(芯部)/(鞘部)=50/50、目付が26g/m2であった。
【0047】
この不織布の片面にホットメルト接着剤を4g/m2の量で溶融塗布し、この接着剤を塗布した面に、上記した製造例1の微多孔フィルムを、微多孔フィルムが接着剤に接するようにして貼り付けることで、不織布と上記の製造例1の微多孔フィルムとを積層し、120℃の加熱ローラーでプレスして一体化することで、実施例1の防護服を構成するための生地を得た。
【0048】
得られた生地すなわちこの生地によって製造することができる防護服の透湿性の測定結果を表2に示す。
【0049】
【0050】
(実施例2)
不織布として、実施例1と同様に芯部がポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに鞘部がポリエチレンで構成されている芯鞘複合繊維を構成繊維とし、構成繊維同士がスポット状の形態で部分的に熱接着されているものを準備した。しかし、実施例2においては、不織布を構成する繊維の単糸繊度は3.5デシテックス、繊維の芯部と鞘部との質量比は(芯部)/(鞘部)=50/50、目付は26g/m2であった。
【0051】
この不織布と製造例2の微多孔フィルムとを積層し、実施例1と同様の手法によって一体化することで、実施例2の防護服を構成するための生地を得た。
【0052】
得られた生地すなわちこの生地によって製造することができる防護服の透湿性の測定結果を表2に示す。
【0053】
(比較例1)
不織布として、実施例1と同様に芯部がポリエチレンテレフタレートで構成されているとともに鞘部がポリエチレンで構成されている芯鞘複合繊維を構成繊維とし、構成繊維同士がスポット状の形態で部分的に熱接着されているものを準備した。しかし、実施例2においては、不織布を構成する繊維の単糸繊度は3.5デシテックス、繊維の芯部と鞘部との質量比は(芯部)/(鞘部)=50/50、目付は26g/m2であった。
【0054】
この不織布と製造例3の微多孔フィルムとを積層し、実施例1と同様の手法によって一体化することで、比較例1の防護服を構成するための生地を得た。
【0055】
得られた生地すなわちこの生地によって製造することができる防護服の透湿性の測定結果を表2に示す。
【0056】
表2に示すように、実施例1、実施例2の防護服用の生地は、いずれも微多孔フィルムにおける炭酸カルシウムの含有量が70質量%であったため、微多孔フィルム自体のJIS L1099のA-1法による透湿度が10000g/m2・24h以上のものであった。そして、防護服すなわちこのフィルムを用いた生地の、JIS L1099のA-1法による透湿度も、8000g/m2・24hを超え得るものであった。このため、実施例1、実施例2に基づく防護服は、多量の微粒子により形成されるきわめて多数の空隙により、良好な透湿度を達成することができ、このため着用時に汗がこもることを確実に防止することができるものであった。
【0057】
これに対し、比較例1の防護服用の生地は、微多孔フィルムにおける炭酸カルシウムの含有量が56質量%であったため、微多孔フィルム自体のJIS L1099のA-1法による透湿度が7136g/m2・24hと低いものであり、この生地を用いた防護服は、本発明で規定する透湿度に達し得ないものであった。