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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079981
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】乗物におけるカバー材の固定構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/58 20060101AFI20230601BHJP
   B62J 1/12 20060101ALI20230601BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20230601BHJP
   A47C 31/02 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B60N2/58
B62J1/12 A
B68G7/05 Z
A47C31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043468
(22)【出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】63/283,567
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 一泰
(72)【発明者】
【氏名】若尾 剣志郎
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】カバー材を、ベース部材に形成されたフック部に引っ掛けやすくする。
【解決手段】乗物に設けられるベース部材1にカバー材3を固定するため、カバー材3は、ベース部材1への固定に用いられる孔3bを備えており、ベース部材1は、当該ベース部材1の裏面1bに突出して形成され、カバー材3の孔3bに通されて引っ掛けられるフック部13を備え、フック部13は、第一フック片15と、ベース部材1の裏面1bからの高さが第一フック片15とは異なる第二フック片16と、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設けられるベース部材にカバー材を固定するための構造であって、
前記カバー材は、前記ベース部材への固定に用いられる孔を備えており、
前記ベース部材は、当該ベース部材の裏面に突出して形成され、前記カバー材の前記孔に通されて引っ掛けられるフック部を備え、
前記フック部は、第一フック片と、前記ベース部材の裏面からの高さが前記第一フック片とは異なる第二フック片と、を有していることを特徴とする乗物におけるカバー材の固定構造。
【請求項2】
前記フック部は、前記ベース部材の裏面から突出し、前記第一フック片及び前記第二フック片が設けられた軸部を更に有しており、
前記軸部から前記第一フック片の先端部までの長さと、前記軸部から前記第二フック片の先端部までの長さが異なることを特徴とする請求項1に記載の乗物におけるカバー材の固定構造。
【請求項3】
前記第一フック片と前記第二フック片のうち、前記ベース部材の裏面からの高さが低い一方のフック片は、前記軸部から前記先端部までの長さが、前記ベース部材の裏面からの高さが高い他方のフック片における前記軸部から前記先端部までの長さよりも短いことを特徴とする請求項2に記載の乗物におけるカバー材の固定構造。
【請求項4】
前記第一フック片と前記第二フック片のうち、前記ベース部材の裏面からの高さが低い一方のフック片は、前記ベース部材の裏面からの高さが高い他方のフック片よりも、前記ベース部材の中央側に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造。
【請求項5】
前記第一フック片及び前記第二フック片における前記ベース部材側の面と、前記ベース部材の裏面は平行であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造。
【請求項6】
前記第一フック片と前記第二フック片のうち一方のフック片は、前記ベース部材の中央側に配置され、他方のフック片は、前記一方のフック片よりも前記ベース部材の縁部側に配置されており、
前記一方のフック片及び前記他方のフック片における先端部のうち、前記ベース部材とは反対側の面は丸みを帯びて形成され、前記他方のフック片における前記先端部の前記面の曲率は、前記一方のフック片における前記先端部の前記面の曲率よりも大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造。
【請求項7】
前記第一フック片と前記第二フック片のうち一方のフック片は、前記ベース部材の中央側に配置され、他方のフック片は、前記一方のフック片よりも前記ベース部材の縁部側に配置されており、
前記他方のフック片は、前記一方のフック片よりも前記ベース部材の裏面からの高さが高く設定されており、
前記ベース部材の縁部には、前記ベース部材の裏面から突出する立ち上がり部が形成されており、
前記他方のフックにおける前記ベース部材の裏面からの高さは、前記立ち上がり部の突出高さよりも高いことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造。
【請求項8】
前記フック部は、前記ベース部材の周囲に複数形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造。
【請求項9】
前記ベース部材の裏面は、長手方向と短手方向を有した状態に形成されており、
前記フック部は、前記ベース部材の裏面のうち前記長手方向の一側端部及び他側端部に形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造。
【請求項10】
前記孔は、前記カバー材の端末部に沿って形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイクや自動車等を始めとする乗物に使用されるカバー材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1においては、例えば二輪車用シートのクッション材を被覆するカバー材の端末部を、シートのベースプレートにおけるフランジ部に固定する場合に、カバー材の端末部を、ベースプレートにおけるフランジ部の裏面に形成されたフック部に貫通させて引っ掛けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-290577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カバー材は、見栄えの良し悪しだけでなく、安全確保のためにも、撓んでズレが生じないようにクッション材を被覆する必要がある。
カバー材の端末部を、ベースプレートにおけるフランジ部の裏面に形成されたフック部に引っ掛けるに際し、最初のうちは容易に引っ掛けることができる。ところが、最後の方になると、カバー材を強く引っ張りながら引っ掛けるため、最後の方になるにつれてだんだんと引っ掛けにくくなっていくという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、カバー材を、ベース部材に形成されたフック部に引っ掛けやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、乗物に設けられるベース部材にカバー材を固定するための構造であって、
前記カバー材は、前記ベース部材への固定に用いられる孔を備えており、
前記ベース部材は、当該ベース部材の裏面に突出して形成され、前記カバー材の前記孔に通されて引っ掛けられるフック部を備え、
前記フック部は、第一フック片と、前記ベース部材の裏面からの高さが前記第一フック片とは異なる第二フック片と、を有していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗物におけるカバー材の固定構造において、
前記フック部は、前記ベース部材の裏面から突出し、前記第一フック片及び前記第二フック片が設けられた軸部を更に有しており、
前記軸部から前記第一フック片の先端部までの長さと、前記軸部から前記第二フック片の先端部までの長さが異なることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の乗物におけるカバー材の固定構造において、
前記第一フック片と前記第二フック片のうち、前記ベース部材の裏面からの高さが低い一方のフック片は、前記軸部から前記先端部までの長さが、前記ベース部材の裏面からの高さが高い他方のフック片における前記軸部から前記先端部までの長さよりも短いことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造において、
前記第一フック片と前記第二フック片のうち、前記ベース部材の裏面からの高さが低い一方のフック片は、前記ベース部材の裏面からの高さが高い他方のフック片よりも、前記ベース部材の中央側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造において、
前記第一フック片及び前記第二フック片における前記ベース部材側の面と、前記ベース部材の裏面は平行であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造において、
前記第一フック片と前記第二フック片のうち一方のフック片は、前記ベース部材の中央側に配置され、他方のフック片は、前記一方のフック片よりも前記ベース部材の縁部側に配置されており、
前記一方のフック片及び前記他方のフック片における前記先端部のうち、前記ベース部材とは反対側の面は丸みを帯びて形成され、前記他方のフック片における前記先端部の前記面の曲率は、前記一方のフック片における前記先端部の前記面の曲率よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造において、
前記第一フック片と前記第二フック片のうち一方のフック片は、前記ベース部材の中央側に配置され、他方のフック片は、前記一方のフック片よりも前記ベース部材の縁部側に配置されており、
前記他方のフック片は、前記一方のフック片よりも前記ベース部材の裏面からの高さが高く設定されており、
前記ベース部材の縁部には、前記ベース部材の裏面から突出する立ち上がり部が形成されており、
前記他方のフックにおける前記ベース部材の裏面からの高さは、前記立ち上がり部の突出高さよりも高いことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造において、
前記フック部は、前記ベース部材の周囲に複数形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造において、
前記ベース部材の裏面は、長手方向と短手方向を有した状態に形成されており、
前記フック部は、前記ベース部材の裏面のうち前記長手方向の一側端部及び他側端部に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか一項に記載の乗物におけるカバー材の固定構造において、
前記孔は、前記カバー材の端末部に沿って形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、ベース部材の裏面からの高さが異なる第一フック片と第二フック片のうち、いずれか引っ掛けやすい方のフック片を先にカバー材の孔に通すようにすることができるので、カバー材を引っ張りながらフック部に引っ掛けるに際し、カバー材を、引っ張り過ぎずに、ベース部材に形成されたフック部に引っ掛けやすくなる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、軸部から先端部までの長さが異なる第一フック片と第二フック片のうち、いずれか引っ掛けやすい方のフック片を先にカバー材の孔に通すようにすることができるので、カバー材を引っ張りながらフック部に引っ掛けるに際し、カバー材を、引っ張り過ぎずに、ベース部材に形成されたフック部に引っ掛けやすくなる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、軸部から先端部までの長さが短い一方のフック片を、カバー材の孔に通しやすくなるので、カバー材を引っ張りながらフック部に引っ掛けるに際し、カバー材を、引っ張り過ぎずに、ベース部材に形成されたフック部に引っ掛けやすくなる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、ベース部材の裏面からの高さが高い他方のフック片が、ベース部材の中央側以外の側(例えば反対側)に配置されることとなる。そのため、カバー材の孔を、中央側に配置された高さが低い一方のフック片に一度引っ掛けてしまえば、カバー材が一方のフック片からは外れにくくなるとともに、高さが高い他方のフック片にもカバー材の孔を通しやすくなる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、第一フック片及び第二フック片におけるベース部材側の面と、ベース部材の裏面との間に、カバー材を引っ掛けるためのスペースを確保しやすくなる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、先端部の面の曲率が大きい他方のフック片を孔に通す際に、カバー材が滑り落ちやすくなるので、カバー材を、ベース部材に形成されたフック部に引っ掛けやすくなる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、立ち上がり部が他方のフック片よりもベース部材の裏面からの高さが低い分、カバー材を、他方のフック片に引っ掛けるためのスペースを確保しやすくなる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、ベース部材の周囲に複数形成されたフック部に引っ掛けられたカバー材は、ベース部材の外方向に向かって均等に引っ張られることとなるので、カバー材を安定して固定できる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、ベース部材の裏面は、長手方向と短手方向を有した状態に形成されているので、長手方向の一側端部及び他側端部は幅(短手方向の長さ)が狭くなる。このような部位にフック部が形成されているので、例えばトリムコードのような係止部材をカバー材に設けにくい場合でも、カバー材を、ベース部材に形成されたフック部に引っ掛けやすくなる。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、カバー材の面積を極力狭くすることができるので、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】フック部の基本構成を示す側面図である。
図2】自動二輪車の乗物用シートにおけるベース部材の表面及び裏面を示す斜視図である。
図3図2(b)に示すベース部材の裏面におけるA部に形成されたフック部を示す拡大斜視図である。
図4図2(b)に示すベース部材の裏面におけるB部に形成されたフック部を示す拡大斜視図である。
図5図2(b)に示すベース部材の裏面におけるC部に形成されたフック部を示す拡大斜視図である。
図6】フック部にカバー材を引っ掛ける態様を示す側面図である。
図7】自動車の乗物用シートにおけるカバー材の固定構造を説明する図である。
図8】自動車の内装におけるカバー材の固定構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0028】
以下に説明する乗物用シートは、船舶、飛行機、スノーモービル、水上バイク等の乗物用シートを含むが、主に車両用シートを指すものとし、車両は、跨座式又は非跨座式の自動二輪車や自動車(乗用車)だけでなく、自転車、原動機付自転車、建設車両、軍用車両、産業車両、鉄道車両、その他にも耕運機やトラクター等の農業用の車両等が挙げられる。そして、乗物用シートには乗員が着座する。
なお、本実施形態においては、跨座式の自動二輪車(いわゆるバイク、オートバイ、モーターサイクル)における乗物用シートを例に挙げて説明する。
【0029】
本実施形態の乗物用シートは、図1図6に示すように、車体に固定されるベースプレート1(すなわち、ベース部材)と、ベースプレート1の上面に設けられて支持されるクッション材2と、ベースプレート1及びクッション材2を被覆するカバー材3と、を備える。
すなわち、乗物用シートは、ベースプレート1上にクッション材2が支持されるとともにカバー材3で被覆されて構成されている。
【0030】
ベースプレート1は、ボトムプレート、クッション支持部材とも称し、ポリプロピレンやポリ塩化ビニル等の樹脂材料を成形してなる樹脂成型品であるため、ほとんどの部位が一体形成されている。また、車両における車体に対応した形状となるように成形され、車体に対して装着される。そのため、特に硬質とされている。ベースプレート1には、車体に固定するのに必要な金具等を始めとする付属品が適宜取り付けられてもよいし、製造段階で金属がインサートされてもよい。
また、このベースプレート1は、左右方向よりも前後方向に長く形成されている。
【0031】
クッション材2は、柔軟フォーム材、例えばウレタンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォームから形成されており、ベースプレート1よりも軟質である。
また、クッション材2は、ベースプレート1の上面に支持されるため、このクッション材2の下面は、ベースプレート1の上面の形状に合致しやすい形状となっている。これにより、クッション材2を、ベースプレート1の上面によって安定的に支持しやすくなる。
さらに、ベースプレート1とクッション材2とが互いに接する面、すなわち、ベースプレート1の上面(表面1a)とクッション材2の下面はそれぞれ基準面とされる。
【0032】
カバー材3は、表皮(表皮材)とも称し、乗物用シートの座面を構成し、乗員に接触する部分であり、樹脂材料や合成皮革、布、本革等によるものが適宜採用される。
カバー材3の端末部3aは、ベースプレート1の裏面1b(下面)側へと折り込まれ、このベースプレート1に固定される。なお、カバー材3の端末部3aとは、カバー材3の全周縁を指している。したがって、このカバー材3の端末部3aは、ベースプレート1の全周縁にわたって固定される。
そして、このカバー材3は、ベースプレート1への固定に用いられる孔3bを備える。
【0033】
続いて、カバー材3を、クッション材2を支持した状態のベースプレート1に固定するための構造について詳細に説明する。
【0034】
ベースプレート1は、乗員が座る部分が、側面視において他の部分よりも低くなるように形成されている。このように他の部分よりも低くなるように形成された部分の付近は、自動二輪車を運転する乗員の坐骨位置に対応する部分であり、シートのうちで最も乗員による荷重(乗員荷重)がかかる最大荷重部とされる。
【0035】
このようなベースプレート1は、概略的に、中央側の本体プレートと、この本体プレートの周縁に沿って一体に設けられるフランジ部10を有する。本体プレートとフランジ部10との明確な境目はないものの、フランジ部10は、外方に向かって鍔状に張り出す部位を指している。また、フランジ部10は、外方に張り出すだけでなく、本体プレートに対して角度を変えて延出するように形成されている。換言すれば、ベースプレート1の周縁部において中央部分とは角度の異なる部分がフランジ部10となっている。
また、このような形状のフランジ部10のうち、車体側の面が裏面(ベースプレート1の裏面1b)とされ、車体とは反対側の面が表面(ベースプレート1の表面1a)とされている。表面には、上記のようにクッション材2が設けられる。
【0036】
このようなフランジ部10は、ベースプレート1の前縁側に位置して当該前縁付近を補強する前部10aと、ベースプレート1の後縁側に位置して当該後縁付近を補強する後部10bと、ベースプレート1の左右側縁側に位置して当該側縁付近を補強する左右の側部10c,10dと、を有し、概略的にエリア分けされている。
【0037】
さらに、フランジ部10における最も外側に位置する縁部には、ベースプレート1の裏面1bから突出する立ち上がり部10eが一体形成されている。立ち上がり部10eは、ベースプレート1全体の最外周に沿って設けられている。
このような立ち上がり部10eは、所謂フランジリブ、あるいは縁部リブ等と呼称されるものであり、フランジ部10ひいてはベースプレート1全体の剛性を向上させるために形成されている。
【0038】
ベースプレート1は、本体プレート部分に形成された複数の補強部11と、本体プレートとフランジ部10との間及びフランジ部10に形成された複数の荷重受け部12と、を更に有している。
【0039】
複数の補強部11は、表面側から見て、それぞれが前後方向及び左右方向に伸びる畝状のものであり、互いに交差した状態に設けられている。本実施形態においては、前後方向に伸びる補強部11が3本、左右方向に伸びる補強部11が2本とされている。
また、ベースプレート1の表面側から見て各補強部11は、凹部が隣接して形成されている。各補強部11の裏面側は凹んだ状態に形成されているとともに、互いに交差する部分には、リブによって区切られている。また、表面側から見たときの凹部は、裏面側から見た場合に補強部11の裏面よりも突出しており、かつ、平坦に形成されている。
【0040】
複数の荷重受け部12は、ベースプレート1と車体との間に位置して乗員荷重を受ける部分であり、前後方向に伸びる補強部11よりも左右方向外側のそれぞれに配置されている。左右方向外側のそれぞれに配置された複数の荷重受け部12は、前側に位置する荷重受け部12と、中央部側に位置する荷重受け部12と、後側に位置する荷重受け部12と、を有する。
【0041】
ここで、荷重受け部12とは、車体に固定される部位そのものを指すと同時に、当該部位に取り付けられるゴム等の弾性部材及び当該弾性部材が取り付けられる部位を指すものとする。この弾性部材は、ベースプレート1よりも軟質であり、ベースプレート1の下面に対して、例えば溶着等により固定されている。もしくは、ベースプレート1に差込孔を形成し、荷重受け部12の弾性部材に、前記差込孔に差し込める差込部を形成し、当該差込部を前記差込孔に差し込んで嵌合させることによって荷重受け部12の弾性部材をベースプレート1に固定してもよい。
【0042】
複数の荷重受け部12のうち、前後方向中央部側に位置する荷重受け部12は、ベースプレート1の最大荷重部の近傍に配置されている。換言すれば、ベースプレート1の左右にある中央部側の荷重受け部12間に、最大荷重部が位置している。そのため、中央部側の荷重受け部12には、前後の荷重受け部12よりも乗員荷重がかかりやすい。
前側の荷重受け部12は、フランジ部10の側部10c,10dのうち前側の部分と、前後方向に伸びる補強部11との間に位置している。
後側の荷重受け部12は、フランジ部10の後部10bの位置でベースプレート1と一体形成されている。
【0043】
また、ベースプレート1は、フランジ部10に一体形成される部位として、フランジ部10の裏面から突出して形成された複数のフック部13を更に備えている。
【0044】
複数のフック部13は、カバー材3の端末部3aに形成された複数の孔3bに通されて、カバー材3の端末部3aが引っ掛けられるものであり、ベースプレート1におけるフランジ部10に複数ずつ形成されている。つまり、フック部13は、ベースプレート1の周囲に複数形成されている。
その個数は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、前部10aに4個、後部10bに3個、左右の側部10c,10dに8個ずつ設けられている。
カバー材3の端末部3aに形成された孔3bの数及び位置は、フック部13の数に対応しており、孔3bにフック部13を通すようにしてカバー材3をベースプレート1に装着すれば、カバー材3によって、ベースプレート1のフランジ部10とクッション材2を被覆できるようになっている。
【0045】
図1は、フック部13の基本構成を示す側面図であり、フック部13は、軸部14と、第一フック片15と、第二フック片16と、を有する。なお、フック部13は、全体が一体形成されているとともに、ベースプレート1と一体形成されている。
【0046】
軸部14は、ベースプレート1の裏面1bから突出する部位であり、突出方向先端部には、第一フック片15及び第二フック片16が一体に設けられている。
なお、図1に示す軸部14の突出方向は、ベースプレート1の裏面1bに対して垂直方向とされているが、これに限られるものではなく、ベースプレート1の裏面1bに対して傾斜してもよい(図3図4参照)。
【0047】
第一フック片15は、軸部14の突出方向に対して交差する一方向に突出するフック片である。
第二フック片16は、軸部14の突出方向に対して交差する他方向に突出するフック片である。
なお、本実施形態において、第一フック片15と第二フック片16は、軸部14を境に正反対の方向に突出している。
【0048】
そして、第一フック片15と第二フック片16は、ベースプレート1の裏面1bからの高さが互いに異なる。
また、軸部14から第一フック片15の先端部15aまでの長さと、軸部14から第二フック片16の先端部16aまでの長さが互いに異なる。
より具体的に説明すると、第一フック片15の方が、第二フック片16よりも、ベースプレート1の裏面1bからの高さが高く、軸部14から先端部15aまでの長さが長い。
【0049】
第一フック片15及び第二フック片16におけるベースプレート1側の面15b,16bと、ベースプレート1の裏面1bは平行となっている。すなわち、第一フック片15におけるベースプレート1側の面15bと、第二フック片16におけるベースプレート1側の面16bも平行の位置関係となっている。
なお、本実施形態においては、ベースプレート1側の面15b,16bとベースプレート1の裏面1bは平行となっているが、これに限られるものではなく、ベースプレート1側の面15b,16bは、ベースプレート1の裏面1bから離間する方向に凹んで湾曲していてもよい。
【0050】
また、フック部13自体は、ベースプレート1の周縁に沿って一体に設けられたフランジ部10に配置されているが、第二フック片16は、ベースプレート1の中央側(本体プレート側)に配置され、第一フック片15は、第二フック片16よりもベースプレート1の縁部(立ち上がり部10e)側に配置されている。
すなわち、第一フック片15は、軸部14から外側に向かって伸びて形成され、第二フック片16は、軸部14からベースプレート1中央側に向かって伸びて形成されている。
【0051】
第一フック片15は、上記のように第二フック片16よりもベースプレート1の裏面1bからの高さが高いが、第二フック片16だけでなく、立ち上がり部10eよりもベースプレート1の裏面1bからの高さが高い。
なお、第二フック片16におけるベースプレート1の裏面1bからの高さ(面16bの高さ位置)は、立ち上がり部10eにおけるベースプレート1の裏面1bからの高さと略等しい。
【0052】
第一フック片15の先端部と第二フック片16の先端部のうち、ベースプレート1とは反対側の面は丸みを帯びて形成されている。上記のように、フック部13は、全体が一体形成されているので、軸部14、第一フック片15、第二フック片16は境目がない状態に形成される。そのため、第一フック片15及び第二フック片16の、ベースプレート1とは反対側の面は全体的に丸みを帯びて形成されている。すなわち、第一フック片15及び第二フック片16は、軸部14に対するフック頭部と呼称してもよく、フック頭部は、ベースプレート1とは反対側の面が丸みを帯びて形成されている。
【0053】
さらに、第一フック片15における先端部15aのうちベースプレート1とは反対側の面の曲率は、第二フック片16における先端部16aのうちベースプレート1とは反対側の面の曲率よりも大きく設定されている。すなわち、第二フック片16における先端部16aよりも、第一フック片15における先端部15aの方が、曲がり具合がきつい状態(急カーブ)になっている。
【0054】
以上のように構成されたフック部13は、上記のようにフランジ部10の裏面から突出して形成されるが、フランジ部10のうち軸部14における基端部の一方側と他方側(すなわち、第一フック片15と第二フック片16が突出する方向)には、貫通孔もしくは非貫通の溝が形成されている。このような貫通孔もしくは溝が形成されることにより、ベースプレート1の軽量化を図ることができるとともに、軸部14を撓みやすくしてカバー材3の端末部3aを引っ掛けやすくすることができる。
【0055】
また、フック部13の基本構成は以上のようになっているが、ベースプレート1におけるフランジ部10のうち、どの部分のフランジ部10に形成されるかによって、フック部13の形状が若干異なる。すなわち、ベースプレート1の位置に応じて最適な形態となるように製造されている。
【0056】
図3に示すフック部13は、ベースプレート1におけるフランジ部10のうち前部10aに形成されたフック部13である。基本構成と比較すると、軸部14は、ベースプレート1(フランジ部10)の裏面1bに対してやや後傾しているものの、それ以外の部位は基本構成と同様に形成されている。
【0057】
図4に示すフック部13は、ベースプレート1におけるフランジ部10のうち左側部10cに形成されたフック部13である。より具体的には、左側部10cのうち、前側の荷重受け部12の後方に位置する2つのフック部13である。基本構成と比較すると、軸部14は、ベースプレート1(フランジ部10)の裏面1bに対してやや前傾しているものの、それ以外の部位は基本構成と同様に形成されている。
なお、右側部10dに形成された複数のフック部13の個数や配置は、左側部10cに形成された複数のフック部13の個数や配置と同一であり、形状は対称となっている。
【0058】
図5に示すフック部13は、ベースプレート1におけるフランジ部10のうち左側部10cに形成されたフック部13である。より具体的には、左側部10cのうち、中央部側に位置する荷重受け部12の横に位置するフック部13である。この部位のフック部13は、ベースプレート1(フランジ部10)の裏面1bが直立しているため、それに合わせて、第一フック片15と第二フック片16の向きが上下方向に沿っている。
また、基本構成と比較すると、第二フック片16の先端部16aのうちベースプレート1とは反対側の面が丸みを帯びて形成されておらず、直角に形成されている。これは、フック部13が形成されるフランジ部10の部位が上記のように直立していて、他の箇所よりも第二フック片16の位置が深い(つまり、立ち上がり部10eからの距離が長い)ためである。このような箇所のフック部13にはカバー材3の端末部3aが引っ掛けにくいことから、カバー材3をベースプレート1に固定する際は、手順として最後の方にならないように考慮される。
【0059】
図6は、フック部13にカバー材3を引っ掛ける態様を示す側面図である。すなわち、カバー材3の端末部3aをベースプレート1に固定する方法を説明している。
カバー材3の端末部3aには、上記のように孔3bが形成されている。カバー材3は、樹脂材料や合成皮革、布、本革等によるものが適宜採用されるため引っ張ると伸び、それに応じて孔3bも細長く変形する。したがって、フック部13の頭部の長さ方向に沿うようにカバー材3の端末部3aを引っ張って伸ばせば、孔3bもフック部13の頭部の長さ方向に沿って細長く変形し、フック部13の頭部を通しやすくなる。つまり、カバー材3の端末部3aや孔3bは、引っ張って伸ばせば変形し、引っ張らなければ元に戻るといった、ある程度の変形性を有している。
【0060】
カバー材3の端末部3aをベースプレート1に固定するには、端末部3aに形成された孔3bにフック部13を通すようにする。
その際は、まず、図6に示すように端末部3aを引っ張って孔3bを細長く変形させ、第二フック片16側から孔3bに通す。続いて、第一フック片15における先端部15aの曲面に掛かっている端末部3aを、ベースプレート1側に押し込むことで端末部3aを引っ張って孔3bを細長く変形させ、第一フック片15を孔3bに通すようにする。
この時、第一フック片15の先端部15aにおける曲面の曲率は大きいため、カバー材3の端末部3aはベースプレート1側に滑り落ちやすい。また、第一フック片15におけるベースプレート1の裏面1bからの高さが、立ち上がり部10eの突出高さよりも高いので、カバー材3の端末部3aを押し込みやすくなっている。
【0061】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、フック部13は、第一フック片15と、ベースプレート1の裏面1bからの高さが第一フック片15とは異なる第二フック片16と、を有しているので、ベースプレート1の裏面1bからの高さが異なる第一フック片15と第二フック片16のうち、いずれか引っ掛けやすい方のフック片(本実施形態においては第二フック片16)を先にカバー材3の孔3bに通すようにすることができる。これにより、カバー材3を引っ張りながらフック部13に引っ掛けるに際し、カバー材3を、引っ張り過ぎずに、ベースプレート1に形成されたフック部13に引っ掛けやすくなる。
【0062】
また、軸部14から第一フック片15の先端部15aまでの長さと、軸部14から第二フック片16の先端部16aまでの長さが異なるので、軸部14から先端部15a,16aまでの長さが異なる第一フック片15と第二フック片16のうち、いずれか引っ掛けやすい方のフック片(本実施形態においては第二フック片16)を先にカバー材3の孔3bに通すようにすることができる。これにより、カバー材3を引っ張りながらフック部13に引っ掛けるに際し、カバー材3を、引っ張り過ぎずに、ベースプレート1に形成されたフック部13に引っ掛けやすくなる。
【0063】
また、第一フック片15と第二フック片16のうち、ベースプレート1の裏面1bからの高さが低い第二フック片16は、軸部14から先端部16aまでの長さが、ベースプレート1の裏面1bからの高さが高い第一フック片15における軸部14から先端部15aまでの長さよりも短いので、軸部14から先端部16aまでの長さが短い第二フック片16を、カバー材3の孔3bに通しやすくなる。これにより、カバー材3を引っ張りながらフック部13に引っ掛けるに際し、カバー材3を、引っ張り過ぎずに、ベースプレート1に形成されたフック部13に引っ掛けやすくなる。
【0064】
また、第一フック片15と第二フック片16のうち、ベースプレート1の裏面1bからの高さが低い第二フック片16は、ベースプレート1の裏面1bからの高さが高い第一フック片15よりも、ベースプレート1の中央側に配置されているので、ベースプレート1の裏面1bからの高さが高い第一フック片15が、ベースプレート1の中央側以外の側(本実施形態においては立ち上がり部10側)に配置されることとなる。そのため、カバー材3の孔3bを、中央側に配置された高さが低い第二フック片16に一度引っ掛けてしまえば、カバー材3が第二フック片16からは外れにくくなるとともに、高さが高い第一フック片15にもカバー材3の孔3bを通しやすくなる。
【0065】
また、第一フック片15及び第二フック片16におけるベースプレート1側の面15b,16bと、ベースプレート1の裏面1bは平行であることから、第一フック片15及び第二フック片16におけるベースプレート1側の面15a,16aと、ベースプレート1の裏面1bとの間に、カバー材3を引っ掛けるためのスペースを確保しやすくなる。
【0066】
また、第一フック片15及び第二フック片16における先端部15a,16aのうち、ベースプレート1とは反対側の面は丸みを帯びて形成され、第一フック片15における先端部15aの曲面の曲率は、第二フック片16における先端部16aの曲面の曲率よりも大きいので、先端部15aの曲面の曲率が大きい第一フック片15を孔3bに通す際に、カバー材3が滑り落ちやすくなるので、カバー材3を、ベースプレート1に形成されたフック部13に引っ掛けやすくなる。
【0067】
また、第一フック片15におけるベースプレート1の裏面1bからの高さは、立ち上がり部10eの突出高さよりも高いので、立ち上がり部10eが第一フック片15よりもベースプレート1の裏面1bからの高さが低い分、カバー材3を、第一フック片15に引っ掛けるためのスペースを確保しやすくなる。
【0068】
また、フック部13は、ベースプレート1の周囲に複数形成されているので、ベースプレート1の周囲に複数形成されたフック部13に引っ掛けられたカバー材3は、ベースプレート1の外方向に向かって均等に引っ張られることとなり、カバー材3を安定して固定できる。
【0069】
また、孔3bは、カバー材3の端末部3aに沿って形成されているので、カバー材3の面積を極力狭くすることができ、コストの低減を図ることができる。
【0070】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
また、以下の各変形例において、上記の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0071】
〔変形例1〕
上記の実施形態において、第一フック片15と第二フック片16は、軸部14を境に正反対の方向に突出しているが、これに限られるものではなく、カバー材3の孔3bに通しやすいように、いずれかのフック片が、実施形態の場合と角度が異なっていてもよい。つまり、例えば視線の方向を軸部14の軸線方向に沿わせてフック部13を見た場合に、フック部13の頭部が、への字型や、くの字型に形成されていてもよい。
【0072】
上記の実施形態において、フック部13は、第一フック片15及び第二フック片16を有するものとしたが、これに限られるものではなく、第三フック片を有していてもよい。つまり、フック部13は、例えば第一フック片15、第二フック片16、第三フック片を有し、例えば視線の方向を軸部14の軸線方向に沿わせてフック部13を見た場合に、フック部13の頭部が、Y字型に形成されていてもよい。
【0073】
上記の実施形態において、ベースプレート1の裏面1bからの高さが高い方のフック片は第一フック片15とされていたが、第二フック片16であってもよい。
【0074】
上記の実施形態において、軸部14から先端部までの長さが長い方のフック片は第一フック片15とされていたが、第二フック片16であってもよい。
【0075】
上記の実施形態において、先端部の曲面の曲率が大きい方のフック片は第一フック片15とされていたが、第二フック片16であってもよい。
【0076】
上記の実施形態において、第一フック片15は立ち上がり部10e側に配置され、第二フック片16は本体プレート側(ベースプレート1の中央側)に配置されていたが、第二フック片16が立ち上がり部10e側に配置され、第一フック片15が本体プレート側に配置されていてもよい。
【0077】
〔変形例2〕
上記の実施形態においては跨座式の自動二輪車の乗物用シートにおけるカバー材3の固定構造について説明したが、本変形例においては、自動車(乗用車)の乗物用シート100におけるカバー材103の固定構造について説明する。
【0078】
乗物用シート100は、図7(a)に示すように、ベースプレート101と、ベースプレート101の上面に設けられて支持されるクッション材102と、ベースプレート101及びクッション材102を被覆するカバー材103と、を備える。
すなわち、乗物用シート100は、ベースプレート101の表面101aにクッション材102が支持されるとともにカバー材103で被覆されて構成されている。
【0079】
図7(b)はベースプレート101を示す平面図であり、丸で囲んだ位置の裏面101b側にフック部13が一体形成されている。すなわち、フック部13は、ベースプレート101の周囲に複数形成されている。
【0080】
フック部13は、第一フック片15が縁部側に配置され、第二フック片16がベースプレート101の中央側に配置されるようにしてベースプレート101に一体形成されている。本変形例においても、第一フック片15の方が、第二フック片16よりも、ベースプレート1の裏面1bからの高さが高く、軸部14から先端部15aまでの長さが長い。また、第一フック片15における先端部15aの曲面の曲率は、第二フック片16における先端部16aの曲面の曲率よりも大きい。
したがって、本変形例においては、上記の実施形態の場合と同様にして、カバー材103を、ベースプレート101に固定することができる。
【0081】
本変形例によれば、フック部13は、ベースプレート101の周囲に複数形成されているので、ベースプレート101の周囲に複数形成されたフック部13に引っ掛けられたカバー材103は、ベースプレート101の外方向に向かって均等に引っ張られることとなり、カバー材103を安定して固定できる。
【0082】
〔変形例3〕
上記の実施形態においては跨座式の自動二輪車の乗物用シートにおけるカバー材3の固定構造について説明したが、本変形例においては、自動車(乗用車)のドアDrに取り付けられたアームレスト200におけるカバー材203の固定構造について説明する。
【0083】
アームレスト200は、図8(a)に示すように、ドアDrの内側面に取り付けられるものであり、ベース部材201と、ベースプレート201を被覆するカバー材203と、を備える。
なお、アームレスト200の場合は、乗物用シートようにクッション材を備えない場合が多いが、腕が載せられる面に、薄手のクッション材が設けられてもよい。その場合は、クッション材もカバー材203によって被覆される。
【0084】
ベース部材201は、少なくとも裏面201bが、長手方向と短手方向を有した状態に形成されている。すなわち、ベース部材201の裏面201bは、上下方向よりも前後方向に長く形成されている。
【0085】
カバー材203は、図8(b)に示すように、端末部203aのうち長手方向に沿う部位にトリムコード204が一体的に設けられており、トリムコード204が設けられない部位に比して端末部203aを補強している。これにより、トリムコード204が設けられた部位は、そうでない部位に比して可撓性が低く、伸縮しにくくなっている。したがって、トリムコード204が設けられた部位は、そうでない部位とは異なり、フック部13とは異なるフック片201cに係止させるだけで十分に固定することができる。
【0086】
一方、端末部203aのうち、アームレスト200の長手方向一側端部(前側端部)及び他側端部(後側端部)に位置する部位は、幅(短手方向:上下方向の長さ)が狭いため、トリムコード204が設けられない。このような部位をベースプレート201に固定するためには、ベース部材201側にフック部13が必要となる。すなわち、フック部13は、ベース部材201の裏面201bのうち長手方向の一側端部及び他側端部に形成されている。
また、カバー材203の端末部203aをより固定しやすくするため、カバー材203の前側端部には、端末部203aを袋状に縫製した袋状部205が形成されている。
【0087】
カバー材203の端末部203aをベース部材201に固定するには、まず、袋状部205を、ベース部材201の前側端部に被せる。
続いて、トリムコード204をフック片201cに係止させつつ、前側端部のフック部13を、カバー材203の端末部203aに形成された孔に通して、前側から後側に向かって端末部203aをベース部材201に固定していく。
そして最後に、後側端部のフック部13を、カバー材203の端末部203aに形成された孔に通すようにして端末部203aをフック部13に引っ掛けていく。これにより、カバー材203の端末部203aをベース部材201に固定することができる。
【0088】
本変形例によれば、ベース部材201の裏面201bは、長手方向と短手方向を有した状態に形成されているので、長手方向の一側端部及び他側端部は幅(短手方向の長さ)が狭くなる。このような部位にフック部13が形成されているので、例えばトリムコードのような係止部材をカバー材203に設けにくい場合でも、カバー材203を、ベース部材201に形成されたフック部13に引っ掛けやすくなる。
【符号の説明】
【0089】
1 ベースプレート
1a 表面
1b 裏面
2 クッション材
3 カバー材
3a 端末部
3b 孔
10 フランジ部
10a 前部
10b 後部
10c 左側部
10d 右側部
11 補強部
12 荷重受け部
13 フック部
14 軸部
15 第一フック片
15a 先端部
15b 面
16 第二フック片
16a 先端部
16b 面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8