(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079991
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】誘電体スラリーの製造方法及び積層型キャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/622 20060101AFI20230601BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
C04B35/622
H01G4/30 517
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076731
(22)【出願日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0166999
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス ミン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ホ サム
(72)【発明者】
【氏名】シム、キュ ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、ジェオン ハ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E082AA01
5E082AB03
5E082FF05
5E082FG26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ノンビーズ(Non-beads)工法で誘電体粒子を粉砕及び分散することができる誘電体スラリーの製造方法を提供すること。
【解決手段】スラリー供給101部内に誘電体粒子201と溶媒を含む誘電体スラリー200を供給する段階と、粒子分散モジュール102に上記誘電体スラリーを投入して上記誘電体スラリーを分散させる段階と、分級モジュール103に上記分散された誘電体スラリーを投入して上記誘電体粒子を粒度によって分級する段階と、上記誘電体粒子の少なくとも一部を上記スラリー供給部に回収する段階と、上記スラリー供給部に回収された上記誘電体粒子が含まれた誘電体スラリーを上記粒子分散モジュールに投入して再分散する段階とを含む誘電体スラリーの製造方法を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー供給部内に誘電体粒子と溶媒を含む誘電体スラリーを供給する段階と、
粒子分散モジュールに前記誘電体スラリーを投入して前記誘電体スラリーを分散させる段階と、
分級モジュールに前記分散された誘電体スラリーを投入して前記誘電体粒子を粒度によって分級する段階と、
前記誘電体粒子の少なくとも一部を前記スラリー供給部に回収する段階と、
前記スラリー供給部に回収された前記誘電体粒子が含まれた誘電体スラリーを前記粒子分散モジュールに投入して再分散する段階と、
を含む、誘電体スラリーの製造方法。
【請求項2】
前記粒子分散モジュールは前記誘電体粒子を噴射して互いに衝突させる、請求項1に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項3】
前記粒子分散モジュールはノンビーズ分散装置である、請求項2に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項4】
前記誘電体粒子を分級する段階において、前記誘電体粒子のうち基準粒子より大きいものは前記スラリー供給部に回収される、請求項1に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項5】
前記スラリー供給部に回収された前記誘電体粒子の少なくとも一部は、前記再分散する段階により粒子サイズが減る、請求項4に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項6】
前記分級モジュールは遠心分離装置である、請求項1に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項7】
前記分級モジュールは複数の分級装置を含む、請求項1から5の何れか1つに記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項8】
前記複数の分級装置は、互いに異なる構造を有する第1分級装置及び第2分級装置を含む、請求項7に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項9】
前記誘電体粒子の少なくとも一部は、前記第1分級装置及び前記第2分級装置の各々から前記スラリー供給部に回収される、請求項8に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項10】
前記第1分級装置はチューブ型遠心分離装置である、請求項8に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項11】
前記チューブ型遠心分離装置において、前記誘電体粒子のうち基準粒子より小さいか同一のものは回転軸方向に放出される、請求項10に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項12】
前記チューブ型遠心分離装置において、前記誘電体粒子のうち基準粒子より大きいものは側方向に放出される、請求項11に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項13】
前記第2分級装置は円板型遠心分離装置である、請求項8に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項14】
前記円板型遠心分離装置において、前記誘電体粒子が側方向に放出される、請求項13に記載の誘電体スラリーの製造方法。
【請求項15】
請求項1の製造方法で形成された誘電体スラリーを塗布してセラミックグリーンシートを形成する段階と、
前記セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを塗布する段階と、
前記セラミックグリーンシートを複数個積層してセラミック積層体を形成する段階と、
前記セラミック積層体を焼成する段階と、
を含む、積層型キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体スラリーの製造方法及び積層型キャパシタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャパシタは、電気を貯蔵することができる素子であり、基本的に2個の電極を対向させて電圧をかけると各電極に電気が蓄積されるものである。直流電圧を印加した場合は電気が蓄積されながらキャパシタの内部に電流が流れるが、蓄積が完了すると電流が流れなくなる。一方、交流電圧を印加した場合、電極の極性が変わりながら交流電流が流れるようになる。
【0003】
かかるキャパシタは、電極間に具備される絶縁体の種類によって、アルミニウムで電極を構成し、上記アルミニウム電極間に薄い酸化膜を具備するアルミニウム電解キャパシタ、電極材料としてタンタルを用いるタンタルキャパシタ、電極間にチタンバリウムのような高誘電率の誘電体を用いるセラミックキャパシタ、電極間に具備される誘電体として高誘電率系セラミックを多層構造で用いる積層セラミックキャパシタ(Multi-Layer Ceramic Capacitor、MLCC)、電極間の誘電体としてポリスチレンフィルムを用いるフィルムキャパシタなどと様々な種類に区分されることができる。
【0004】
この中で積層セラミックキャパシタは、温度特性及び周波数特性に優れ、小型で具現可能であるという長所を有しており、最近、高周波回路などの多様な分野で多く応用されている。積層セラミックキャパシタに用いられる誘電体層は、誘電体スラリーでセラミックグリーンシートを製造してこれを積層した後、焼結する方式で製造されることができる。誘電体スラリーを形成するために誘電体粒子を粉砕して微粒化し、従来は酸化ジルコニウム(ZrO2)ビーズ(beads)を一般的に使用していた。しかし、酸化ジルコニウムビーズを使用して誘電体粒子を粉砕する場合、ビーズが摩耗されてZr成分が誘電体粒子に混入されるという問題が発生し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一つは、ノンビーズ(Non-beads)工法で誘電体粒子を粉砕及び分散することができる誘電体スラリーの製造方法を提供することである。本発明の目的の他の一つは、上述した製造方法で得られた誘電体スラリーを活用して積層型キャパシタを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための方法であって、本発明は、一例により新しい誘電体スラリーの製造方法を提案し、具体的に、スラリー供給部内に誘電体粒子と溶媒を含む誘電体スラリーを供給する段階と、粒子分散モジュールに上記誘電体スラリーを投入して上記誘電体スラリーを分散させる段階と、分級モジュールに上記分散された誘電体スラリーを投入して上記誘電体粒子を粒度によって分級する段階と、上記誘電体粒子の少なくとも一部を上記スラリー供給部に回収する段階と、上記スラリー供給部に回収された上記誘電体粒子が含まれた誘電体スラリーを上記粒子分散モジュールに投入して再分散する段階とを含む方法である。
【0007】
一実施形態において、上記粒子分散モジュールは、上記誘電体粒子を噴射して互いに衝突させることができる。
【0008】
一実施形態において、上記粒子分散モジュールは、ノンビーズ分散装置であることができる。
【0009】
一実施形態において、上記誘電体粒子を分級する段階において、上記誘電体粒子のうち基準粒子より大きいものは上記スラリー供給部に回収されることができる。
【0010】
一実施形態において、上記スラリー供給部に回収された上記誘電体粒子の少なくとも一部は、上記再分散段階により粒子サイズが減ることができる。
【0011】
一実施形態において、上記分級モジュールは、遠心分離装置であることができる。
【0012】
一実施形態において、上記分級モジュールは、複数の分級装置を含むことができる。
【0013】
一実施形態において、上記複数の分級装置は、互いに異なる構造を有する第1及び第2分級装置を含むことができる。
【0014】
一実施形態において、上記誘電体粒子の少なくとも一部は、上記第1及び第2分級装置の各々から上記スラリー供給部に回収されることができる。
【0015】
一実施形態において、上記第1分級装置は、チューブ型遠心分離装置であることができる。
【0016】
一実施形態において、上記チューブ型遠心分離装置において、上記誘電体粒子のうち基準粒子より小さいか同一のものは回転軸方向に放出されることができる。
【0017】
一実施形態において、上記チューブ型遠心分離装置において、上記誘電体粒子のうち基準粒子より大きいものは側方向に放出されることができる。
【0018】
一実施形態において、上記第2分級装置は、円板型遠心分離装置であることができる。
【0019】
一実施形態において、上記円板型遠心分離装置において、上記誘電体粒子が側方向に放出されることができる。
【0020】
一方、本発明の他の側面は、上記製造方法で形成された誘電体スラリーを塗布してセラミックグリーンシートを形成する段階と、上記セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを塗布する段階と、上記セラミックグリーンシートを複数個積層してセラミック積層体を形成する段階と、上記セラミック積層体を焼成する段階とを含む積層型キャパシタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一例による誘電体スラリーの製造方法の場合、ノンビーズ工法で誘電体粒子を粉砕及び分散することができ、誘電体粒子をサイズ別に効果的に分類することができる。そして、かかる方法で得られた誘電体スラリーを用いて積層型キャパシタを製造する場合、電気的特性の散布が減ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による誘電体スラリーの製造方法の主要工程を示したフローチャートである。
【
図2】誘電体スラリーの製造装置と誘電体スラリーの製造方法を概略的に示したものである。
【
図3】本発明の一実施形態の誘電体スラリーの製造方法で使用されることができる粒子分散モジュールを概略的に示した断面図である。
【
図4】分級モジュールの一例を概略的に示した断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態による誘電体スラリーの製造装置と誘電体スラリーの製造方法を概略的に示したものである。
【
図6】円板型分級装置の一例を概略的に示した平面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態による誘電体スラリーの製造装置と誘電体スラリーの製造方法を概略的に示したものである。
【
図8】本発明の実施形態と比較例に対する実験結果を示したグラフである。
【
図9】本発明の実施形態と比較例に対する実験結果を示したグラフである。
【
図10】誘電体スラリーを活用して積層型キャパシタを製造する過程を示した工程図である。
【
図11】誘電体スラリーを活用して積層型キャパシタを製造する過程を示した工程図である。
【
図12】誘電体スラリーを活用して積層型キャパシタを製造する過程を示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、具体的な実施形態及び添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)されることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0024】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示すため、本発明が必ずしも図示に限定されるものではない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一の構成要素は、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による誘電体スラリーの製造方法の主要工程を示したフローチャートである。
図2は、誘電体スラリーの製造装置と誘電体スラリーの製造方法を概略的に示したものである。
図1を参照すると、誘電体スラリーの製造方法は、誘電体スラリーの供給段階、分散または再分散段階、分級段階及び回収段階を含み、
図1における矢印は誘電体スラリー200の流れを示す。この場合、別途図示してはいないが、各モジュール間で誘電体スラリー200の流れを発生させるためにポンプなどが追加されてもよい。
【0026】
図2を参照して
図1の各段階を具体的に説明する。先ず、誘電体スラリーの供給段階は、スラリー供給部101内に誘電体粒子201と溶媒202を含む誘電体スラリー200を形成(あるいは供給)する段階である。誘電体粒子201は、無機粒子を含み、例えば、MLCCなどに用いられるチタン酸バリウムなどのセラミック粒子であることができる。誘電体粒子201は、互いにサイズが異なる粒子を含み、本実施形態では後続工程を経て粒子のサイズによって分類されることができ、スラリー保管部104は大部分が基準粒子より小さいか同一のサイズの粒子で構成されることができる。一例として、誘電体粒子201は10~300nm範囲の直径を有する粒子を含むことができる。溶媒202は、誘電体粒子201に流動性を付与することができる液状物質であり、当技術分野で使用可能な無機、有機溶媒が用いられることができる。また、誘電体スラリー200には、追加で分散剤として機能することができる有機添加剤がさらに含まれることができる。
【0027】
次に、分散(または再分散)段階は、粒子分散モジュール102に誘電体スラリー200を投入してこれを分散させる段階である。ここで粒子の分散工程は、粒子を粉砕して交ぜる段階を含む。そして、粒子の再分散工程は、後述するように、分級モジュール103を経て回収されてきた粒子を再び分散する工程に該当する。本実施形態の場合、誘電体粒子201の分散は、ノンビーズ(Non-beads)工程、即ち、従来のビーズを用いた粉砕工程ではなく高圧噴射などを利用した粉砕工程に該当する。
図3は、本発明の一実施形態の誘電体スラリーの製造方法で使用されることができる粒子分散モジュール102を概略的に示した断面図である。
図3を参照すると、粒子分散モジュール102はノンビーズ分散装置であることができる。一例として、粒子分散モジュール102は、チャンバ112内部に向かって誘電体スラリー200を噴射する複数のポンプ113、114を含むことができる。複数のポンプ113、114は誘電体スラリー200を噴射し、これにより誘電体粒子201が互いにぶつかって衝撃エネルギーが作用されるようにする。かかる過程で誘電体粒子201は粉砕して微粒化されることができる。そのため、複数のポンプ113、114は互いに向かい合うように配置されて高圧で誘電体スラリー200を噴射することができ、複数のポンプ113、114の圧力範囲は、約100~250MPaであることができる。本実施形態のようにビーズを用いずノンビーズ(Non-beads)工程で誘電体スラリー200を分散することで、ビーズの成分、例えば、Zr成分などが誘電体粒子に混入され、これにより誘電体粒子201の粒成長の妨害となる問題を無くすことができる。
【0028】
粒子分散モジュール102を経た誘電体スラリー200は、分級モジュール103に投入される。分級モジュール103は、誘電体スラリー200における誘電体粒子201を粒度によって分級する。さらに具体的に、誘電体粒子201を分級する段階において、分級モジュール103は、誘電体スラリー200における誘電体粒子201のうち基準粒子(あるいは目標粒子)より大きいものと基準粒子より小さいか同一のものに分類する。
図4は、分級モジュール103の一例を概略的に示した断面図である。図示の形態のように、分級モジュール103は、回転により誘電体粒子201の動きを作り出す遠心分離装置であることができる。具体的に、分級モジュール103は、チューブ型遠心分離(Tubular Centrifuge)装置130を含むことができ、チューブ型遠心分離装置130が回転軸に沿って回転することにより、誘電体粒子201のうち基準粒子より小さいか同一のものなど(第1粒子211)は回転軸方向(
図4を基準として上方向)に放出されることができる。そして、チューブ型遠心分離装置130は、誘電体粒子201のうち基準粒子より大きいものなど(第2粒子212)は、側方向(
図4を基準として左右方向)に放出されるようにすることができる。このように誘電体粒子201を粒子サイズによって分類可能に、チューブ型遠心分離装置130は第1粒子211と第2粒子212を分離するセパレーター(separator)131を内部に含むことができる。
【0029】
誘電体粒子201のうち基準粒子より小さいか同一の第1粒子211は、スラリー保管部104に投入され、完成されたスラリーの一部になることができる。スラリー保管部104に保管された誘電体スラリー300は、第1粒子211が均等かつ微粒化されているため、これを使用してキャパシタ用誘電体層を製造する場合、キャパシタの電気的特性散布が低減することができる。分級モジュール103を経た後、誘電体粒子201のうち少なくとも一部212をスラリー供給部101に回収し、このように回収された誘電体粒子212が含まれた誘電体スラリー200を粒子分散モジュール102に投入して再分散する。具体的に、誘電体粒子201のうち基準粒子より大きい第2粒子212は、スラリー保管部104に向かうことなくスラリー供給部101に回収され、粒子分散モジュール102に投入されて再分散されることで、そのサイズが減ることができる。換言すると、スラリー供給部101に回収された誘電体粒子212のうち少なくとも一部は上記再分散段階により粒子サイズが減ることができる。もちろん回収された誘電体粒子212はまだ分散段階を経ていない誘電体粒子201と混合されて誘電体スラリー200に含まれることができる。このように再分散段階を経た粒子212は、再び分級モジュール103を経て基準粒子より小さいか同一の場合はスラリー保管部104に、大きい場合は再びスラリー供給部101に回収されることができる。このように、本実施形態では、連続的な工程で誘電体粒子201をサイズ別に分類し、基準サイズより大きい粒子のみを再循環することで工程効率を向上させることができる。
【0030】
図5は、本発明の他の実施形態による誘電体スラリーの製造装置と誘電体スラリーの製造方法を概略的に示したものであり、上述した実施形態とは分級モジュールの形態に差異があるため、これについてのみ説明する。本実施形態において、分級モジュール131は円板型遠心分離装置141を含み、具体的な例を
図6に示す。円板型遠心分離装置141は、流動慣性力と遠心力の差異を利用して粒子を分離し、誘電体粒子201が側方向に放出されることができる。ここで側方向とは
図5を基準とし、
図6では矢印で表示した粒子の放出方向に該当する。円板型遠心分離装置141において、点線矢印はスラリー供給部101に回収される粒子の経路を、実線矢印はスラリー保管部104に投入される粒子の経路を示す。円板型遠心分離装置141の場合、誘電体粒子201のサイズ差が100nm以下の水準で粒子の質量差を利用して分級するのに適切である。そして、上述したチューブ型遠心分離装置130の場合、誘電体粒子201のサイズ差が100nm以上の水準で粒子の質量差を利用して分級するのに適切である。この場合、
図7に示した形態のように、分級モジュール103、131は複数の分級装置、例えば、互いに異なる構造を有する第1分級装置131及び第2分級装置141を含むことができる。この場合、第1分級装置131はチューブ型遠心分離装置であることができ、第2分級装置141は円板型遠心分離装置であることができる。そして、図示の形態のように、誘電体粒子201のうち少なくとも一部は第1分級装置131及び第2分級装置141の各々からスラリー供給部101に回収されることができる。
図7の実施形態のように互いに異なる構造の分級装置131、141を連結して使用することで、分級精密度がさらに向上されることができるが、第1分級装置131及び第2分級装置141が連結された順序は変わってよい。即ち、第1分級装置131より先に第2分級装置141が配置されてもよい。
【0031】
本発明の発明者らは、上述した製造方法で誘電体スラリーを得た後、その特性を従来の製造方法で得られた誘電体スラリーと比較する実験をし、
図8及び
図9にその結果を示した。
図8及び
図9において円で表示したものは本発明の実施形態、△で表示したものはZrO
2ビーズで粉砕した比較例に該当する。先ず、
図8は、分散時間における誘電体粒子内のZrの濃度変化を測定した結果であるが、ここで分散時間は誘電体粒子が目標とした粒度条件を満たす時間に該当する。
図8に示した結果から分かるように、実施形態では分散時間が比較例より11%水準で減り、意図しないZrの混入も殆ど発見されなかった。また、
図9の粒子散布測定結果(D99/D50)をみると、実施形態で粒子散布が顕著に改善されたことが分かり、これは目標値より大きい粒子を濾し出して回収し再び分散する過程を経るためであると理解される。
【0032】
以下、上述した製造方法で得られた誘電体スラリーで積層型キャパシタを形成する過程を説明する。先ず、
図10を参照すると、誘電体スラリーを塗布してセラミックグリーンシート501を形成し、その上に導電性ペースト502を塗布する。セラミックグリーンシート501の塗布は、上述した製造方法で得られた誘電体スラリーを適切な印刷工程を経ることで実行されることができる。この場合、上記誘電体スラリーには必要に応じて金属酸化物添加剤、例えば、MnO
2、Dy
2O
3、BaO、MgO、Al
2O
3、SiO
2、Cr
2O
3及びCaCO
3のうち少なくとも一つの物質が添加されることができる。導電性ペースト502は、積層型キャパシタの内部電極として使用され、Ni、Ag、Cu、Ti、Pdなどを含む金属粒子とガラス成分などを含むことができる。
【0033】
そして、
図11に示した形態のように、導電性ペースト502が塗布されたセラミックグリーンシート501を複数個積層してセラミック積層体500を形成する。
図11の場合、セラミックグリーンシート501が積層された個別素子単位でダイシング(dicing)した状態を示している。かかるダイシング工程により導電性ペースト502で形成された内部電極パターン511、512は、セラミック積層体500の外部に露出することができ、内部電極パターン511、512間にはセラミックグリーンシートにより形成された誘電体層510が形成されることができる。以後、
図12に示した形態のように、セラミック積層体500に内部電極パターン511、512と接続するように外部電極521、522を形成する。以後セラミック積層体500を焼成するが、この過程で外部電極521、522も共に焼成されることができる。但し、外部電極521、522はセラミック積層体500を焼成した後に形成されることもできる。
【0034】
以上で本発明の実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付された図面により限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲により限定する。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当該技術分野の通常の知識を有する者により多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0035】
101:スラリー供給部
102:粒子分散モジュール
103:分級モジュール
104:スラリー保管部
112:チャンバ
113,114:ポンプ
130:チューブ型遠心分離装置
131:第1分級装置
141:第2分級装置
200、300:誘電体スラリー
201、212:誘電体粒子
500:セラミック積層体
501:セラミックグリーンシート