(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079995
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】回転機器
(51)【国際特許分類】
F03C 2/08 20060101AFI20230601BHJP
F16D 63/00 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
F03C2/08 B
F16D63/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098959
(22)【出願日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021193136
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正隆
(72)【発明者】
【氏名】小森 悦朗
【テーマコード(参考)】
3H084
3J058
【Fターム(参考)】
3H084AA25
3H084BB09
3H084BB26
3H084CC03
3H084CC21
3H084CC48
3H084CC62
3J058AB21
3J058BA46
3J058BA67
3J058CC03
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC78
3J058FA50
(57)【要約】
【課題】コンパクトとで確実なブレーキ機能を有する。
【解決手段】回転機器1であって、軸線C1を有するハウジング部2と、ハウジング部の内周面に設けられた内歯90と、ハウジング部に軸線回りに回転自在に支持されたキャリア部6と、キャリア部に軸線と平行な他の軸線C2回りに回転自在に支持されたクランクシャフト4と、クランクシャフトによって揺動回転に規制され内歯に噛合わされる揺動歯車5と、ハウジング部の内周面と揺動歯車との間に作動流体を供給及びハウジング部の内周面と揺動歯車との間から作動流体を排出する複数の給排流路41,42と、揺動歯車とクランクシャフトとのいずれか一方に対して接触可能および離間可能に移動するストッパ102と、ストッパが、揺動歯車またはクランクシャフトに向かって接触可能および離間可能に移動するように、ストッパを揺動歯車に向かって押し付けまたは押し付けを解除するストッパ移動部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を有するハウジング部と、
前記ハウジング部の内周面に設けられた内歯と、
前記ハウジング部に前記軸線回りに回転自在に支持されたキャリア部と、
前記キャリア部に前記軸線と平行な他の軸線回りに回転自在に支持されたクランクシャフトと、
前記クランクシャフトによって揺動回転に規制され前記内歯に噛合わされる揺動歯車と、
前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に作動流体を供給及び前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間から作動流体を排出する複数の給排流路と、
前記揺動歯車と前記クランクシャフトとのいずれか一方に対して接触可能および離間可能に移動するストッパと、
前記ストッパが、前記揺動歯車または前記クランクシャフトに向かって接触可能および離間可能に移動するように、前記ストッパを前記揺動歯車に向かって押し付けまたは押し付けを解除するストッパ移動部と、
を備える、
回転機器。
【請求項2】
前記ストッパが前記揺動歯車を押さえて揺動回転を止める、
請求項1記載の回転機器。
【請求項3】
前記ストッパ移動部が、前記ストッパを前記揺動歯車の回転軸線方向に沿って移動する、
請求項1または2記載の回転機器。
【請求項4】
前記クランクシャフトが前記軸線回りの周方向に並んで、
前記ストッパが前記揺動歯車の中心付近に位置する、
請求項1または2記載の回転機器。
【請求項5】
前記ストッパが、前記キャリア部に支持されている
請求項1または2記載の回転機器。
【請求項6】
前記揺動歯車に偏心したストッパ係合部が形成され、前記ストッパ移動部により前記ストッパ係合部に前記ストッパを差し込んで揺動回転を止める、
請求項1または2記載の回転機器。
【請求項7】
前記ストッパ移動部が、
前記ストッパを押し付けて前記ストッパ係合部に差し込み前記揺動歯車の揺動回転を止める押し付け部と、
前記ストッパへの前記押し付け部の押し付け状態を作動流体によって解除して前記ストッパ係合部から前記ストッパを抜き出す押し付け解除部と、
を備える、
請求項6記載の回転機器。
【請求項8】
前記ハウジング部の前記軸線に沿って互いに離間して設けられて前記ハウジング部に対して前記キャリア部を支持する2つの軸受と、
前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に形成された作動室に作動流体を供給及び前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に形成された作動室から作動流体を排出する複数の給排流路を有し前記軸線方向に沿って前記揺動歯車に隣接して配置された給排プレートと、
前記キャリア部に形成され複数の前記給排流路をそれぞれ外部へと通じる流路と、 前記流路のうち前記作動室への作動流体の供給路から分岐されて前記押し付け解除部へと通じる分岐流路と、
を備え、
前記分岐流路を介して前記押し付け解除部に供給された作動流体により前記押し付け部の前記ストッパへの押し付け力を解除する
請求項7記載の回転機器。
【請求項9】
軸線を有するハウジング部と、
前記ハウジング部の内周面に設けられた内歯と、
前記ハウジング部の前記軸線に沿って互いに離間して設けられた2つの軸受を介し、前記ハウジング部に前記軸線回りに回転自在に支持されたキャリア部と、
前記キャリア部に前記軸線と平行な他の軸線回りに回転自在に支持されて前記軸線回りの周方向に並ぶクランクシャフトと、
前記クランクシャフトによって揺動回転に規制され前記内歯に噛合わされる揺動歯車と、
前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に形成された作動室に作動流体を供給及び前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に形成された作動室から作動流体を排出する複数の給排流路を有し前記軸線方向に沿って前記揺動歯車に隣接して配置された給排プレートと、
前記キャリア部に支持されて前記揺動歯車の中心付近に位置し前記揺動歯車に対して接触可能および離間可能に移動するストッパと、
前記揺動歯車に偏心して形成されるストッパ係合部と、
前記ストッパが、前記揺動歯車の前記ストッパ係合部に向かって接触可能および離間可能に移動するように、前記ストッパを前記ストッパ係合部に向かって押し付けまたは押し付けを解除するストッパ移動部と、
前記キャリア部に形成され複数の前記給排流路をそれぞれ外部へと通じる流路と、
前記流路のうち前記作動室への作動流体の供給路から分岐されて前記ストッパ移動部へと通じる分岐流路と、
を備え、
前記ストッパ移動部が、
前記ストッパを押し付けて前記ストッパ係合部に差し込み前記揺動歯車の揺動回転を止める押し付け部と、
前記ストッパへの前記押し付け部の押し付け状態を前記分岐流路を介して供給された作動流体によって解除して前記ストッパ係合部から前記ストッパを抜き出す押し付け解除部と、
を有する、
回転機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機器に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプ・モータとしては、特許文献1,2に記載されるものが知られている。ここでは、揺動部材の揺動を規制することで動作を停止するパーキングブレーキとしている。
パーキングブレーキとしては、例えば、スターギヤ30の揺動を抑止していたロック位置となるブレーキピン60を、ブレーキロッド72により非ロック位置に移動させてロックを解除する構成が、特許文献1に記載される。
【0003】
このように揺動ギアの中央穴に規制軸を入れる技術は以前から存在するが、規制軸を移動させる方法や油路について改善がなされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5822512号公報
【特許文献2】特許第5288184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献に記載の技術では、センタースプラインシャフトを中空とし、その中に規制軸に力を伝達するための軸を設けているため構造が複雑になっていた。これにより、製造工程が複雑化するという問題があった。
また、規制軸がセンタースプラインシャフトのすりこぎ運動にならって、すりこぎ動作をするため端面が摩耗する構造であった。これにより、耐久性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、構造が単純で耐久性が高く、小型化の可能なパーキングブレーキ機能を備えた回転機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る回転機器は、
軸線を有するハウジング部と、
前記ハウジング部の内周面に設けられた内歯と、
前記ハウジング部に前記軸線回りに回転自在に支持されたキャリア部と、
前記キャリア部に前記軸線と平行な他の軸線回りに回転自在に支持されたクランクシャフトと、
前記クランクシャフトによって揺動回転に規制され前記内歯に噛合わされる揺動歯車と、
前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に作動流体を供給及び前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間から作動流体を排出する複数の給排流路と、
前記揺動歯車と前記クランクシャフトとのいずれか一方に対して接触可能および離間可能に移動するストッパと、
前記ストッパが、前記揺動歯車または前記クランクシャフトに向かって接触可能および離間可能に移動するように、前記ストッパを前記揺動歯車に向かって押し付けまたは押し付けを解除するストッパ移動部と、
を備える、ことにより上記課題を解決した。
【0008】
このように構成することで、ストッパによって揺動歯車またはクランクシャフトのいずれか一方の回転を止めることで、回転機器の駆動を停止することができる。このように、ストッパをストッパ移動部によって駆動することで、ストッパを回転機器のブレーキとして用いることができる。したがって、単純な構造でコンパクトなブレーキ機構を有する回転機器を提供することができる。
【0009】
上記構成で、前記ストッパが前記揺動歯車を押さえて揺動回転を止める、
ことができる。
【0010】
上記構成で、前記ストッパ移動部が、前記ストッパを前記揺動歯車の回転軸線方向に沿って移動する、
ことができる。
【0011】
上記構成で、前記クランクシャフトが前記軸線回りの周方向に並んで、
前記ストッパが前記揺動歯車の中心付近に位置する、
ことができる。
【0012】
上記構成で、前記ストッパが、前記キャリア部に支持されている
ことができる。
【0013】
上記構成で、前記揺動歯車に偏心したストッパ係合部が形成され、前記ストッパ移動部により前記ストッパ係合部に前記ストッパを差し込んで揺動回転を止める、
ことができる。
【0014】
上記構成で、前記ストッパ移動部が、
前記ストッパを押し付けて前記ストッパ係合部に差し込み前記揺動歯車の揺動回転を止める押し付け部と、
前記ストッパへの前記押し付け部の押し付け状態を作動流体によって解除して前記ストッパ係合部から前記ストッパを抜き出す押し付け解除部と、
を備える、
ことができる。
【0015】
上記構成で、前記ハウジング部の前記軸線に沿って互いに離間して設けられて前記ハウジング部に対して前記キャリア部を支持する2つの軸受と、
前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に形成された作動室に作動流体を供給及び前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に形成された作動室から作動流体を排出する複数の給排流路を有し前記軸線方向に沿って前記揺動歯車に隣接して配置された給排プレートと、
前記キャリア部に形成され複数の前記給排流路をそれぞれ外部へと通じる流路と、 前記流路のうち前記作動室への作動流体の供給路から分岐されて前記押し付け解除部へと通じる分岐流路と、
を備え、
前記分岐流路を介して前記押し付け解除部に供給された作動流体により前記押し付け部の前記ストッパへの押し付け力を解除する、
ことができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る回転機器によれば、
軸線を有するハウジング部と、
前記ハウジング部の内周面に設けられた内歯と、
前記ハウジング部の前記軸線に沿って互いに離間して設けられた2つの軸受を介し、前記ハウジング部に前記軸線回りに回転自在に支持されたキャリア部と、
前記キャリア部に前記軸線と平行な他の軸線回りに回転自在に支持されて前記軸線回りの周方向に並ぶクランクシャフトと、
前記クランクシャフトによって揺動回転に規制され前記内歯に噛合わされる揺動歯車と、
前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に形成された作動室に作動流体を供給及び前記ハウジング部の内周面と前記揺動歯車との間に形成された作動室から作動流体を排出する複数の給排流路を有し前記軸線方向に沿って前記揺動歯車に隣接して配置された給排プレートと、
前記キャリア部に支持されて前記揺動歯車の中心付近に位置し前記揺動歯車に対して接触可能および離間可能に移動するストッパと、
前記揺動歯車に偏心して形成されるストッパ係合部と、
前記ストッパが、前記揺動歯車の前記ストッパ係合部に向かって接触可能および離間可能に移動するように、前記ストッパを前記ストッパ係合部に向かって押し付けまたは押し付けを解除するストッパ移動部と、
前記キャリア部に形成され複数の前記給排流路をそれぞれ外部へと通じる流路と、
前記流路のうち前記作動室への作動流体の供給路から分岐されて前記ストッパ移動部へと通じる分岐流路と、
を備え、
前記ストッパ移動手部が、
前記ストッパを押し付けて前記ストッパ係合部に差し込み前記揺動歯車の揺動回転を止める押し付け部と、
前記ストッパへの前記押し付け部の押し付け状態を前記分岐流路を介して供給された作動流体によって解除して前記ストッパ係合部から前記ストッパを抜き出す押し付け解除部と、
を有する、
ことができる。
【0017】
このように構成することで、ストッパを揺動歯車のストッパ係合部に差し込んで揺動歯車の揺動回転を止めることで、回転機器の駆動を停止することができる。このとき、作動室に作動流体を供給して回転機器を駆動する際に、供給路から分岐した分岐流路を介してストッパ移動部の押し付け解除部へと供給することで、押し付け部によるストッパ係合部へ差し込まれたストッパによる揺動歯車への規制を解除して、揺動歯車の位置規制を解除する。このように、ストッパをストッパ移動部によって駆動することで、ストッパを回転機器での駆動時に解除され非駆動時に制動するパーキングブレーキとして用いることができる。したがって、単純な構造でコンパクトなパーキングブレーキ機構を有する回転機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、構造が単純で耐久性が高く、小型化の可能なパーキングブレーキ機能を備えた回転機器を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る油圧モータの第1実施形態を示す一部断面視した側面図である。
【
図5】
図1における解除状態を示すV部拡大図である。
【
図7】本発明に係る油圧モータの第2実施形態における
図1のV部に対応する解除状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る回転機器の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における回転機器の一例として油圧モータを示す一部断面視した側面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、
図1のIII部拡大図である。
図4は、
図1のIV部拡大図である。図において、符号1は、油圧モータである。
【0021】
本実施形態に係る回転機器としては、まず、油圧モータとして説明する。
【0022】
<油圧モータ>
油圧モータ1は、
図1~
図4に示すように、円筒状のハウジング部2と、ハウジング部2の内周面に2つの軸受12,13(第1軸受12、第2軸受13)を介して回転自在に支持された回転部3と、ブレーキ機構100を主構成としている。
軸受12,13としては、アンギュラ玉軸受が用いられている。しかしながらこれに限られるものではなく、深溝玉軸受等の他の玉軸受や滑り軸受等、さまざまな軸受を用いることが可能である。
【0023】
ハウジング部2の中心軸線と回転部3の回転軸線とは、一致している。以下の説明では、これら中心軸線及び回転軸線を総称して第1軸線(請求項における軸線の一例)C1と称する。また、第1軸線C1と平行な方向を単に軸方向、回転部3の回転方向を周方向、回転部3の径方向を単に径方向と称して説明する場合がある。
【0024】
<ハウジング部>
ハウジング部2は、軸方向で分割されて軸方向の第1方向側(
図1における左側)に配置された第1ハウジング7と、軸方向の第1方向とは反対側の第2方向側(
図1における右側)に配置された第2ハウジング8と、からなる。なお、ハウジング部2は、軸方向で分割されて以内構成とすることも可能である。
第1ハウジング7は、円筒状に形成されている。第1ハウジング7の外周面7aには、第1方向側の第1端部7b寄りに、径方向外側に張り出す外フランジ部9が形成されている。外フランジ部9は、油圧モータ1を図示しない外部機器に取り付けるためのものである。外フランジ部9には、図示しないボルトを通す貫通孔9aが外フランジ部9の厚さ方向(軸方向)に貫通形成されている。
【0025】
第1ハウジング7の周壁7eのうち、第2方向側の第2端部7dから軸方向中央に至る間は、他の部位よりも肉厚の厚い厚肉部10になっている。厚肉部10の第2方向側の第2端部10cは、第1ハウジング7の第2端部7dと同一平面上に位置している。すなわち、厚肉部10の第2端部10cは、第1ハウジング7の第2端部7dの一部を構成している。
【0026】
厚肉部10の内周面10dには、複数(例えば、本実施形態では13個)のピン溝10aが形成されている。各ピン溝10aは、軸方向に沿って厚肉部10の全体に形成されており、かつ周方向に等間隔で配置されている。ピン溝10aは、軸方向からみて半円状に形成されている。各ピン溝10aには、円柱状の内歯ピン(請求項の内歯の一例)90が回転可能に収納されている。ピン溝10aが軸方向からみて半円状に形成されているので、内歯ピン90は、厚肉部10の内周面10dから径方向内側に半円分突出した形になる。内歯ピン90は、後述する揺動歯車5に噛み合わされる内歯として機能する。
【0027】
厚肉部10の外周部には、各ピン溝10aの間に、軸方向に貫通する第1貫通孔19が形成されている。第1貫通孔19は、周方向に等間隔で配置されている。第1貫通孔19の個数は、例えば8個である。これら第1貫通孔19に、ボルト(固定部及びねじの一例)20の軸部20aが挿入される。各ボルト20によって、第1ハウジング7、第2ハウジング8及び後述の給排プレート46が共締めされて一体化される。
【0028】
また、第1ハウジング7の内周面7cには、厚肉部10よりも第1方向寄りに、段差部11aを介して内径が大きく形成された第1軸受収納部11が形成されている。この第1軸受収納部11に、第1軸受12のアウタレース12aが嵌め合わされている。第1軸受12と第1ハウジング7との位置決めは、段差部11aにアウタレース12aが突き当たることにより行われている。
【0029】
第1ハウジング7の内周面7cには、第1軸受収納部11よりも第1方向寄りに、段差部14aを介して内径が大きく形成されたシール収納部14が形成されている。このシール収納部14には、シール部15の一部が嵌め合わされている。シール部15は、第1ハウジング7と回転部3との間をシールする。シール部15としては、例えばフローティングシールが用いられる。しかしながらこれに限られるものではなく、パッキンやメカニカルシール等、さまざまなシールを用いることができる。
【0030】
第1ハウジング7の第1端部7bには、シール収納部14よりも内径が大きく形成された第1キャリア側第1ラビリンス部16が形成されている。第1キャリア側第1ラビリンス部16は、回転部3と協働して第1ラビリンス38を構成する。第1ラビリンス38によって、第1ハウジング7と回転部3との間に外部から塵埃等が侵入しにくくなる。
【0031】
第1ハウジング7の第2端部7dは、ハウジング部2の第1ハウジング7と第2ハウジング8との分割面に相当する。第1ハウジング7の第2端部7dは、外周部の全体が平坦に形成されている。第2端部7dの第1貫通孔19よりも外周部寄りには、軸方向からみて環状のOリング溝17が形成されている。Oリング溝17には、Oリング18が装着されている。Oリング18は、第1ハウジング7と第2ハウジング8との間のシール性を確保する。
【0032】
第2ハウジング8は、円環状に形成されている。第2ハウジング8の周壁8aには、第1ハウジング7の第1貫通孔19に対応する位置に、この第1貫通孔19に通じる第2貫通孔22が形成されている。第2貫通孔22は、第1貫通孔19と同じ径で形成され、第1貫通孔19と同軸上に位置されている。第2貫通孔22の第2方向側の大部分には、座繰り部23が形成されている。座繰り部23に、ボルト20の頭部20bが挿入される。
【0033】
第2ハウジング8の第1方向側の第1端部8bは、ハウジング部2の第1ハウジング7との分割面に相当する。第2ハウジング8の第1端部8bには、第2ハウジング8の内周面8cから径方向内側に張り出す押さえプレート21が一体成形されている。押さえプレート21は、軸方向からみて円環状に形成されている。押さえプレート21は、第1ハウジング7の内周面7cと後述する揺動歯車5の外周面との間に形成される作動室66a,66bを第2方向側から塞いでいる。
なお、押さえプレート21は、第1ハウジング7と第2ハウジング8とが一体とされた場合に、ハウジング部2とは分割して形成することができる。
【0034】
押さえプレート21の内周面21aには、第1方向側の端部を除く大部分に第2キャリア側第1ラビリンス部25が形成されている。第2キャリア側第1ラビリンス部25は、押さえプレート21の内周面21aの内径よりも段差部25aを介して内径を大きくすることで形成される。第2キャリア側第1ラビリンス部25は、回転部3と協働して第2ラビリンス40を構成する。第2ラビリンス40によって、第2ハウジング8と回転部3との間から作動油が漏れにくくなる(詳細は後述する)。
【0035】
第2ハウジング8の内周面8cには、押さえプレート21よりも第2方向寄りに、段差部24aを介して内径が大きく形成された第2軸受収納部24が形成されている。この第2軸受収納部24に、第2軸受13のアウタレース13aが嵌め合わされている。第2軸受13と第2ハウジング8との位置決めは、段差部24aにアウタレース13aが突き当たることにより行われている。
【0036】
第2ハウジング8の第2方向側の第2端部8dには、外周部に、軸方向からみて環状のOリング溝26が形成されている。Oリング溝26には、Oリング27が装着されている。Oリング27は、第2ハウジング8と後述するカバー29との間のシール性を確保する。
第2ハウジング8の第2端部8dには、Oリング溝26よりも径方向内側に、複数の雌ねじ部28が周方向に等間隔で形成されている。これら雌ねじ部28は、第2ハウジング8にカバー29を固定するためのものである。
【0037】
<カバー>
カバー29は、第2ハウジング8の開口部8eを第2方向側から塞いでいる。カバー29は、例えば金属板にプレス加工を施して中央の大部分が第2方向側に向かって膨出するように形成されている。カバー29の外周部は、外フランジ部29aが形成された形になる。この外フランジ部29aが、第2ハウジング8の第2端部8dに重なっている。
【0038】
外フランジ部29aには、第2ハウジング8の雌ねじ部28に対応する位置に厚さ方向に貫通する貫通孔29bが形成されている。この貫通孔29bに、第2方向側からボルト30を挿入し、第2ハウジング8の雌ねじ部28にボルト30を締め付けることにより、第2ハウジング8にカバー29が固定される。
【0039】
<給排プレート>
第2ハウジング8の第2貫通孔22及び第1ハウジング7の第1貫通孔19に挿入されるボルト20によって固定される給排プレート(ポートプレート)46は、厚肉部10の一方側の第1端部10bに配置されている。給排プレート46は、後述する作動室66a,66bに作動油を供給したり、作動室66a,66bから作動油を排出したりするためのプレートである。
【0040】
給排プレート46は、軸方向からみて円環状に形成されている。給排プレート46の外径は、第1ハウジング7の内周面7cの直径とほぼ同等か若干小さい程度である。このため、給排プレート46は、第1ハウジング7の内周面7cに嵌め合わさるようにして厚肉部10の第1端部10bに配置されている。
【0041】
給排プレート46の外周部には、第1ハウジング7の第1貫通孔19に対応する位置に、雌ねじ部47が形成されている。第2ハウジング8側からボルト20を第2貫通孔22、第1ハウジング7の第1貫通孔19の順に挿入し、ボルト20を給排プレート46の雌ねじ部47に締め付ける。これにより、各ボルト20によって、第1ハウジング7、第2ハウジング8及び給排プレート46が共締めされて一体化される。
【0042】
給排プレート46には、雌ねじ部47よりも径方向内側に、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔(給排ポート)46aが形成されている。これら貫通孔46aを介して作動室66a,66bに作動油を供給したり、作動室66a,66bから作動油を排出したりする(詳細は後述する)。貫通孔(給排ポート)46aの個数は、第1ハウジング7に形成されたピン溝10aの個数に対応している。例えば、本実施形態では、貫通孔46aの個数は13個である。各貫通孔(給排ポート)46aは、厚肉部10側の開口が周方向で隣り合う各ピン溝10aの間の中央で、かつ厚肉部10の内周面10dよりも径方向内側に位置するように形成されている。
【0043】
給排プレート46の内周面46bには、第2方向の端部を除く大部分にプレート側ラビリンス部48が形成されている。プレート側ラビリンス部48は、給排プレート46の内周面46bの内径よりも段差部48aを介して内径を大きくすることで形成される。プレート側ラビリンス部48は、回転部3と協働して第3ラビリンス49を構成する。第3ラビリンス49によって、給排プレート46と回転部3との間から作動油が漏れにくくなる(詳細は後述する)。
【0044】
<回転部>
ハウジング部2に回転自在に保持された回転部3は、軸方向両側が各軸受12,13を介して回転自在に支持されたキャリア部(回転部材)6と、キャリア部6に回転自在に支持された複数(例えば、本実施形態では3個)のクランクシャフト4と、クランクシャフト4に回転自在に支持された揺動歯車5と、を主構成としている。
キャリア部6は、軸方向で分割されて第1方向側に配置された第1キャリア31と、第2方向側に配置された第2キャリア32と、からなる。
【0045】
第1キャリア31は、円板状の基板部33と、基板部33の第2方向側の第2端部33bから第2方向に向かって突出する複数(例えば、本実施形態では3個)の支柱部34と、が一体成形されたものである。
基板部33の外周面33cは、第2端部33bから第1方向側の第1端部33aに向かうに従って段差部を介して漸次外径が大きく形成されている。
【0046】
すなわち、基板部33の外周面33cは、第2端部33b側から順に、第1外周面33dと、第1外周面33dの第1方向側端に大段差部33hを介して外径が大きく形成された第2外周面33eと、第2外周面33eの第1方向側端に小段差部33iを介して外径が大きく形成された第3外周面33fと、第3外周面33fの第1方向側端に中段差部33jを介して外径が大きく形成された第4外周面33gと、を有する。
【0047】
第1キャリア31の第1外周面33dに対応する箇所は、給排プレート46のプレート側ラビリンス部48に挿入されている。第1外周面33dの外径は、プレート側ラビリンス部48の内径よりも若干小さい程度である。第1キャリア31の第2端部33bは、給排プレート46の段差部48aよりもやや手前に位置している。このように、第1キャリア31の第1外周面33d、第2端部33b、及び給排プレート46のプレート側ラビリンス部48により、第3ラビリンス49が構成される。
【0048】
第3外周面33fには、第1軸受12のインナレース12bが嵌め合わされている。第1軸受12と第1キャリア31との位置決めは、中段差部33jにインナレース12bが突き当たることにより行われている。これにより、第1ハウジング7に対する第1キャリア31の位置決めが行われる。また、第1ハウジング7に対し、第1軸受12を介して第1キャリア31が回転自在に支持される。
【0049】
第1キャリア31の第4外周面33gは、第1ハウジング7のシール収納部14と径方向で対向している。すなわち、第1キャリア31の第4外周面33gと第1ハウジング7のシール収納部14との間に、シール部15が配置された形になる。
【0050】
第4外周面33gの第1方向側端には、軸方向からみて円形状の円板部35が一体成形されている。円板部35の第2方向側の第2端部35bは、軸方向で第1ハウジング7の第1端部7bと対向している。円板部35の外径は、第1ハウジング7の外周面7aの直径と同等である。円板部35の第2端部35bには、外周部に、軸方向からみて環状のシール収納凹部36が形成されている。シール収納凹部36は、第4外周面33gと滑らかに連なっている。シール収納凹部36にもシール部15の一部が収納される。これにより、第1ハウジング7の第1キャリア31(回転部3)との間がシールされる。
【0051】
円板部35の第2端部35bには、外周縁に、段差を介して外径が小さく形成された第1キャリア側第2ラビリンス部37が形成されている。この第1キャリア側第2ラビリンス部37と第1ハウジング7に形成された第1キャリア側第1ラビリンス部16とにより、第1ラビリンス38が構成される。シール部15の径方向外側に第1ラビリンス38が配置されるので、第1ハウジング7と第1キャリア31(回転部3)との間を介して外部からの塵埃等の侵入を確実に抑制できる。
【0052】
円板部35の外周面35cには、径方向外側に張り出す外フランジ部39が形成されている。外フランジ部39は、油圧モータ1を図示しない外部機器に取り付けるためのものである。外フランジ部39には、図示しないボルトを通す貫通孔39aが外フランジ部39の厚さ方向(軸方向)に貫通形成されている。
【0053】
基板部33の第2端部33bには、外周部寄り(第1外周面33dのやや径方向内側)に、複数(例えば、本実施形態では3個)の軸支持凹部44が周方向に等間隔で形成されている。軸支持凹部44は、クランクシャフト4を回転自在に支持する。軸支持凹部44には、クランクシャフト4を回転自在に支持するための第1軸受59aが嵌め合わされている。第1軸受59aは、例えば滑り軸受である。しかしながらこれに限られるものではなく、玉軸受等、さまざまな軸受を用いることができる。
【0054】
また、基板部33には、第2外周面33eよりも径方向内側に、複数の供給路41、複数の排出路42、及びドレン通路(タンク路)43が基板部33の軸方向全体に渡って形成されている。
供給路41は、図示しない油圧ポンプから作動油が供給される油路である。供給路41の第2方向側端は、大段差部33hを介して開口されている。すなわち、各供給路41は、大段差部33hに供給開口部41aを有している。
排出路42は、油圧モータ1内の作動油が排出される油路である。排出路42の第2方向側端も大段差部33hを介して開口されている。すなわち、各排出路42は、大段差部33hに排出開口部42aを有している。
【0055】
供給路41の個数及び排出路42の個数は、それぞれ第1ハウジング7に固定されている給排プレート46の貫通孔46aの個数と異なる。例えば、本実施形態では、供給路41の個数及び排出路42の個数は、給排プレート46の貫通孔(給排ポート)46aの個数よりも1個少なく、12個ずつである。
供給路41の供給開口部41aと排出路42の排出開口部42aは、同一ピッチ円上に周方向に交互に配置されている。各供給開口部41aと各排出開口部42aとは、各々1つずつで対となって周方向で等間隔に配置されている。
【0056】
ドレン通路(タンク路)43は、油圧モータ1内の漏れ出た作動油を図示しないタンクへと還流するための流路である。
供給路41、排出路42、及びドレン通路43の第1方向側端は、基板部33の第1方向側の第1端部33aに設けられた油分配部45に通じている。油分配部45は、図示しない複数の分配流路を有している。これら分配流路を介し、油圧ポンプからの作動油が供給路41に供給される。また、排出路42に排出された作動油が分配流路を介してタンクに還流されたり再び供給路41に還流されたりする。ドレン通路43に排出された作動油も分配流路を介してタンクに還流される。なお、作動油の作用についての詳細は後述する。
【0057】
第1キャリア31の大段差部33hと給排プレート(ポートプレート)46との間には、隙間が形成される。この隙間に、摺動プレート(ピストンプレート)50が配置される。摺動プレート50は、軸方向からみて環状に形成されている。摺動プレート50は、第1キャリア31の第1外周面33dに内周面が嵌め合わされ、第1キャリア31に対して回転不能、かつ軸方向にスライド移動可能に設けられている。摺動プレート50の厚さは、大段差部33hと給排プレート46との間の隙間よりも小さい。
【0058】
摺動プレート(ピストンプレート)50には、供給路41の供給開口部41aと排出路42の排出開口部42aとに対応するように複数の貫通孔(貫通ポート)50cが形成されている。供給開口部41aに対応する貫通孔50cは、供給開口部41aと同軸上に配置されている。排出開口部42aに対応する貫通孔50cは、排出開口部42aと同軸上に配置されている。
【0059】
各供給開口部41a及び各排出開口部42aには、円筒状のピストン51が設けられている。ピストン51は、供給路41及び排出路42にスライド移動自在に設けられている。ピストン51は、供給路41及び排出路42に設けられた図示しないスプリングによって摺動プレート50に向かって押し付けられている。したがって、ピストン51は、摺動プレート(ピストンプレート)50に押し付けられる。
【0060】
摺動プレート50の厚さは、大段差部33hと給排プレート46との間の隙間よりも小さい。このため、ピストン51は、スプリングによって大段差部33hから突出して摺動プレート50に突き当たっている。この結果、給排プレート46に、摺動プレート50が押し付けられる。これにより、ピストン51を介して各供給路41と摺動プレート50の貫通孔50cとが通じる。また、ピストン51を介して各排出路42と摺動プレート50の貫通孔50cとが通じる。さらに、摺動プレート50の各貫通孔50cと給排プレート46の貫通孔46aとが通じる。
【0061】
第1キャリア31の支柱部34は、軸方向からみて三角形状に形成された柱状である。各支柱部34は、周方向で基板部33の軸支持凹部44の間に位置するように配置されている。つまり、各支柱部34は、基板部33の第2端部33b上に周方向に等間隔で配置されている。各支柱部34のピッチ円直径と軸支持凹部44のピッチ円直径は、ほぼ同一である。
【0062】
支柱部34の先端部34aは、平坦に形成されている。支柱部34の先端部34aは、第1ハウジング7の第2端部7dと同一平面上に位置している。支柱部34の先端部34aには、リーマボルト用雌ねじ部52が形成されている。
【0063】
リーマボルト用雌ねじ部52は、支柱部34の先端部34aから支柱部34の軸方向中央に至る間に軸方向に沿って形成された嵌合凹部52aと、嵌合凹部52aの底部から第1方向に向かって延出する雌ねじ部本体52bと、からなる。リーマボルト用雌ねじ部52にリーマボルト(他の固定部の一例)53を締め付けることにより、第1キャリア31と第2キャリア32とが一体化される。
【0064】
第2キャリア32は、円板状に形成されている。第2キャリア32は、第1キャリア31を構成する支柱部34の先端部34aに第1方向側の第1端部32aが突き当たるように配置されて位置決めされる。このため、第1キャリア31の基板部33と第2キャリア32との間には、支柱部34の高さと同じ隙間が形成される。この隙間の周囲を第1ハウジング7の厚肉部10が取り囲むことにより、揺動歯車5を収納するための揺動歯車収納部60が形成される。
【0065】
第2キャリア32の第1端部32aは、全体に渡って平坦に形成されている。第2キャリア32には、リーマボルト用雌ねじ部52に対応する位置に、厚さ方向に貫通する嵌合孔54が形成されている。嵌合孔54に、第2キャリア32の第2方向側からリーマボルト53を挿入し、このリーマボルト53を、支柱部34の嵌合凹部52aを介して雌ねじ部本体52bに締め付けることにより、第1キャリア31と第2キャリア32とが一体化される。
【0066】
リーマボルト53は、軸部53aと、軸部53aの第1方向側端から突出され軸部53aと同軸上に形成された雄ねじ部53bと、軸部53aの第2方向側端に軸部53aと同軸上に形成された頭部53cと、からなる。リーマボルト用雌ねじ部52にリーマボルト53を締め付けた状態では、支柱部34の嵌合凹部52aと第2キャリア32の嵌合孔54とに、リーマボルト53の軸部53aが嵌め合わされる。すなわち、リーマボルト53の軸部53aは、第1キャリア31と第2キャリア32とに跨って配置される。
【0067】
第2キャリア32の第2方向側の第2端部32bには、嵌合孔54に座繰り部55が形成されている。座繰り部55に、リーマボルト53の頭部53cが挿入される。これにより、第2キャリア32の第2端部32bからのリーマボルト53の頭部53cの突出高さが抑えられている。
【0068】
第2キャリア32の外周面32cは、軸方向中央の大部分に段差部56aを介して外径が小さく形成された縮径部56を有している。この縮径部56に、第2軸受13のインナレース13bが嵌め合わされている。これにより、第2ハウジング8に対し、第2軸受13を介して第2キャリア32が回転自在に支持される。
【0069】
縮径部56の第2軸受13が嵌め合わされている箇所よりも第1方向側には、第2キャリア側第2ラビリンス部57が形成されている。第2キャリア側第2ラビリンス部57は、縮径部56の外径よりも段差部57aを介して外径を小さくすることで形成される。第2キャリア側第2ラビリンス部57の外径は、第2ハウジング8の第2キャリア側第1ラビリンス部25の内径よりも若干小さい。
【0070】
第2キャリア側第2ラビリンス部57の先端は、第2キャリア側第1ラビリンス部25の段差部25aのやや手前に位置している。このように、第2ハウジング8の第2キャリア側第1ラビリンス部25、及び第2キャリア32の第2キャリア側第2ラビリンス部57により、第2ラビリンス40が構成されている。
【0071】
第2キャリア32の第2キャリア側第2ラビリンス部57よりもやや径方向内側には、複数(例えば、本実施形態では3個)の軸支持孔58が周方向に等間隔で形成されている。軸支持孔58は、クランクシャフト(偏心回転体)4を回転自在に支持する。これら軸支持孔58と対応する第1キャリア31の軸支持凹部44とは、同軸上に位置している。軸支持孔58には、第2軸受59bが嵌め合わされている。第2軸受59bは、例えば滑り軸受である。しかしながらこれに限られるものではなく、玉軸受等、さまざまな軸受を用いることができる。
【0072】
<クランクシャフト>
各々のクランクシャフト4は、各軸受59a,59bを介して、各々軸支持凹部44と軸支持孔58とに回転自在に支持されている。クランクシャフト4は、軸受59a,59bを介して、軸支持凹部44と軸支持孔58とに摺動回転可能であるといえる。
本実施形態では、クランクシャフト4の個数は3個である。クランクシャフト4は、軸支持凹部44及び軸支持孔58に軸受59a,59bを介して回転自在に支持された軸受部4a,4b(第1軸受部4a、第2軸受部4b)と、各軸受部4a,4bの間に設けられた円柱状の偏心部4cと、が一体成形されたものである。
【0073】
クランクシャフト4の回転軸線(第2軸線C2)、つまり、各軸受部4a,4bの軸線は、第1軸線C1と平行である。クランクシャフト4の軸方向への移動は、各軸受部4a,4bの軸方向外側に設けられたスラスト軸受61a,61b(第1スラスト軸受61a、第2スラスト軸受61b)と、第1キャリア31の軸支持凹部44に設けられた第1カラー70a、第2キャリア32の軸支持孔58に設けられた第2カラー70bによって規制されている。2つのスラスト軸受61a,61bのうち、第2キャリア32の軸支持孔58に設けられた第2スラスト軸受61bは、軸支持孔58に設けられた止め輪62によって第2方向に向かう移動が規制されている。
【0074】
偏心部4cの軸方向の長さは、揺動歯車収納部60の軸方向の幅内に収まる長さに形成されている。具体的には、偏心部4cの軸方向の長さは、第1ハウジング7の厚肉部10の軸方向の長さよりも若干短い程度である。したがって、偏心部4cの第2方向の端部の位置と第2ハウジング8の第1端部8bの位置とは、ほぼ同一平面上となる。
偏心部4cの軸線(第3軸線C3)は、クランクシャフト4の第2軸線C2に対して偏心している。この偏心部4cに、第3軸受59cを介して揺動歯車5が回転自在に支持されている。第3軸受59cは、例えば滑り軸受である。しかしながらこれに限られるものではなく、玉軸受等、さまざまな軸受を用いることができる。
【0075】
揺動歯車5の外径は、揺動歯車収納部60に収納可能なように厚肉部10の内周面10dの直径よりも小さい。揺動歯車5の軸方向の厚さは、偏心部4cと同等である。したがって、揺動歯車5の第2方向の端部の位置と第2ハウジング8の第1端部8bの位置とは、ほぼ同一平面上となる。揺動歯車5には、クランクシャフト4に対応する位置に、クランクシャフト4の偏心部4cが貫通される支持孔63が形成されている。
【0076】
各支持孔63は、周方向に等間隔で配置されている。これら支持孔63に、第3軸受59cが設けられている。揺動歯車5のクランクシャフト4に対する軸方向の移動は、第3軸受59cの軸方向両端に設けられた止め輪67によって規制されている。このような構成のもと、クランクシャフト4によって揺動歯車5の回転が揺動回転に規制される。
【0077】
また、揺動歯車5には、第1キャリア31の支柱部34に対応する位置に、支柱部34が貫通される逃げ孔64が形成されている。逃げ孔64の軸方向からみた形状は、支柱部34の軸方向からみた形状に対応するように三角形状である。逃げ孔64の大きさは、各支柱部34が揺動歯車5の揺動回転動作を妨げないように、支柱部34の外面形状よりも十分に大きく形成されている。
【0078】
揺動歯車5の外周面は、径方向で第1ハウジング7の内歯ピン90と対向している。揺動歯車5の外周面には、内歯ピン90に噛み合わされる外歯65が形成されている。外歯65の歯数は、内歯ピン90の歯数(個数)と異なる。例えば、本実施形態では、外歯65の歯数は、内歯ピン90の歯数よりも1個少ない12個である。この個数は、第1キャリア31に形成されている供給路41の個数及び排出路42の個数と一致している。
【0079】
揺動歯車5は、揺動回転動作の間、歯先65aから歯底65bに至る間のいずれかが常に内歯ピン90に接触する。これにより、第1ハウジング7に形成されている厚肉部10の内周面10dと揺動歯車5の外歯65との間に、大きく2つの作動室66a,66b(第1作動室66a、第2作動室66b)が形成される。2つ作動室66a,66bは、軸方向からみて線対称に形成される。
【0080】
これら作動室66a,66bに、給排プレート(ポートプレート)46の複数の貫通孔(給排ポート)46aが通じる。これら貫通孔46aを介し、作動室66a,66bに作動油が供給されたり、作動室66a,66bから作動油が排出されたりする。これにより、油圧モータ1が回転駆動される。
【0081】
<ブレーキ機構>
図5は、
図1のV部拡大図であり、ブレーキ機構100の解除状態を示している。
図6は、
図1のV部拡大図であり、ブレーキ機構100の係合状態を示している。
油圧モータ1は、そのパーキングブレーキとなるブレーキ機構100を備える。パーキングブレーキとは、油圧モータ1の駆動時には解除され、引く同時に制止するブレーキである。
ブレーキ機構100としては、ストッパ係合部101と、ストッパ102と、ピストン103と、シリンダ104と、バネ105と、分岐流路41gと、を有する。
【0082】
ストッパ係合部101は、揺動歯車5の中央位置に貫通して形成される。ストッパ係合部101は、第1軸線C1と平行な軸線C5を有する。なお、ストッパ係合部101は、揺動歯車5の揺動にしたがって第1軸線C1の回りに移動するが、
図5では軸線C5として示す。
【0083】
ストッパ係合部101の第1方向側で対向する基板部33には、第2端部33bに開口するシリンダ104が形成される。シリンダ104の内部にはピストン103が収納される。シリンダ104は第1軸線C1に平行な軸線C5を有する。ピストン103は、シリンダ104内部で、軸線C1に沿った方向である軸線C5に沿って往復動作可能である。
【0084】
シリンダ104内部には、ピストン103の第1方向側にバネ(押し付け部)105が配置される。バネ(押し付け部)105は、ピストン103を第2方向に向かって押し付ける。シリンダ104内部には、ピストン103の第2方向側となる位置に分岐流路41gが連結する。分岐流路41gは、ピストン103の第2方向側となるシリンダ104の圧力室104aに連結する。分岐流路41gは、供給路41から分岐している。
【0085】
分岐流路41gは、供給路41から分流した作動油(作動流体)を圧力室104aに供給可能である。作動油(作動流体)が供給された圧力室104aでは、ピストン103が第1方向に向かって押圧される。圧力室104aの作動油(作動流体)からピストン103にかかる圧力がバネ(押し付け部)105の押し付け力よりも大きくなると、ピストン103が第1方向に向かって移動する。
【0086】
圧力室104aの作動油(作動流体)からピストン103にかかる圧力がバネ(押し付け部)105の押し付け力よりも小さい場合、および、作動油(作動流体)が圧力室104aに供給され邸内場合には、バネ(押し付け部)105の押し付け力によりピストン103は第2方向に向かって移動可能である。
【0087】
ピストン103の第2方向端部はストッパ102として、ストッパ係合部101と同径に形成される。ストッパ102とストッパ係合部101とは、同じ断面形状を有する。ストッパ102とストッパ係合部101とは、円形断面とすることもでき、多角形状とすることもできる。
【0088】
ストッパ102は、ピストン103の往復動作にしたがって、軸線C5に沿って揺動歯車5に対して接触可能および離間可能に移動する。ストッパ102は、バネ(押し付け部)105の押し付け力により基板部33の第2端部33bから第2方向に向かって突出可能である。ストッパ102が第2方向に移動した場合には、ストッパ102がストッパ係合部101に差し込まれる。このとき、揺動歯車5の揺動回転位置によっては、ストッパ102とストッパ係合部101との位置が合わない場合もあるが、キャリア部6の出力回転が1回転する間には、ストッパ102とストッパ係合部101との位置が必ず一致する。ストッパ102とストッパ係合部101との位置が一致すると、ストッパ102がストッパ係合部101に差し込まれる。
ストッパ102はストッパ係合部101に差し込まれた際には、ストッパ102が揺動歯車5の揺動回転を止める。
【0089】
バネ(押し付け部)105の押し付け力によりストッパ係合部101に差し込まれたストッパ102は、分岐流路41gを介して圧力室104aに作動油(作動流体)が供給されると、バネ105の押し付け力に打ち勝ってピストン103を第1方向に押して圧する。ピストン103が第1方向に向かって移動すると、ストッパ102が、第1方向に向かって移動してストッパ係合部101から抜け出す。さらに、揺動歯車5から離間したストッパ102は、基板部33の第2端部33bよりも第1方向に位置して、シリンダ104の内部に収納される。
【0090】
バネ(押し付け部)105と、押し付け解除部であるピストン103およびシリンダ104と、分岐流路41gとは、ストッパ移動部100aを構成する。
【0091】
<油圧モータの動作>
以下、油圧モータ1の動作について詳述する。
【0092】
油圧モータ1には、図示しない油圧ポンプから供給された作動油が、油分配部45を介して各供給路41に供給される。各供給路41に供給された作動油は、各供給開口部41aのピストン51、摺動プレート(ピストンプレート)50の貫通孔(貫通ポート)50c及び給排プレート(ポートプレート)46の貫通孔(給排ポート)46aを介して作動室66a,66bに供給される。
【0093】
ここで、各供給開口部41aのピストン51は、スプリングによって摺動プレート50に向かって押し付けられた状態で、第1キャリア31と一体に回転する摺動プレート(ピストンプレート)50と摺動する。貫通孔(貫通ポート)50cが摺動プレート50の回転によってピストン51と一致した位置に来たときに、供給路41に供給された作動油が貫通孔(貫通ポート)50cへと流入する。
【0094】
第1キャリア31と一体に回転する摺動プレート(ピストンプレート)50は、ハウジング部2と一体とされた給排プレート(ポートプレート)46と摺動する。貫通孔(給排ポート)46aが、摺動プレート50および給排プレート46の回転によって貫通孔(貫通ポート)50cと一致した位置に来たときに、貫通孔(貫通ポート)50cに供給された作動油が貫通孔(給排ポート)46aへと流入する。
また、貫通孔(給排ポート)46aと貫通孔(貫通ポート)50cとが一致して連通していない場合には、摺動プレート(ピストンプレート)50によって貫通孔(給排ポート)46aが閉塞され、作動室66a,66bから貫通孔(給排ポート)46aを介して作動油が漏出あるいは逆流することを防止している。
【0095】
ここで、供給路41(供給開口部41a及び供給開口部41aに通じる摺動プレート50の貫通孔50c)の個数は、給排プレート46の貫通孔46aの個数よりも1個少ない。また、排出路42(排出開口部42a及び排出開口部42aに通じる摺動プレート50の貫通孔50c)の個数は、給排プレート46の貫通孔46aの個数よりも1個少ない。このため、2つの作動室66a,66bのうちのいずれか一方には、給排プレート46の貫通孔46aを介して供給路41のみが通じる。また、2つの作動室66a,66bのうちのいずれか他方には、給排プレート46の貫通孔46aを介して排出路42のみが通じる。
【0096】
すると、2つの作動室66a,66bのうちのいずれか一方の内部の圧力が、2つの作動室66a,66bのうちのいずれか他方の内部の圧力よりも高まる。以下、説明を分かりやすくするために、2つの作動室66a,66bのうち、作動室66a(
図2における左側)の圧力が、作動室66b(
図2における右側)の圧力よりも高くなる場合について説明する。また、以下の説明では、圧力の高い作動室66aを高圧作動室66aと称する。この高圧作動室66aと比較して圧力の低い作動室66bを低圧作動室66bと称する。高圧作動室66aが、供給路41に通じている。低圧作動室66bが、排出路42に通じている。
【0097】
高圧作動室66aに作動油が供給されることにより、揺動歯車5が低圧作動室66b側に向かって押し付けられる(
図2における矢印Y1参照)。低圧作動室66bの作動油は、排出路42を介して排出される。この結果、低圧作動室66b側で内歯ピン90と揺動歯車5の外歯65とが噛み合わされる。すると、内歯ピン90の歯数に対して外歯65の歯数が1個少ないので、揺動歯車5が僅かに回転方向にずれる。
【0098】
このとき、クランクシャフト4を介してキャリア部6が揺動歯車5に連れられて回転方向にずれる。すなわち、ハウジング部2に対して回転部3が僅かに回転される。すると、給排プレート46に対して摺動プレート50が回転される。そして、摺動プレート50の貫通孔50cと給排プレート46の貫通孔46aとの通じている状態が切り替わる。揺動歯車5が揺動回転されることにより、高圧作動室66aも低圧作動室66b僅かに回転方向にずれる。
【0099】
摺動プレート50の貫通孔50cと給排プレート46の貫通孔46aとの通じている状態が切り替わったところで再び高圧作動室66aに作動油が供給される。また、低圧作動室66bから作動油が排出される。これを順次繰り返すことにより、ハウジング部2に対して回転部3が回転される。この回転により出力が得られる。
【0100】
ここで、貫通孔(給排ポート)46aが、摺動プレート50および給排プレート46の回転によって貫通孔(貫通ポート)50cと一致した位置に来たときに、低圧作動室66bから作動油が貫通孔(貫通ポート)50cへと排出される。
また、貫通孔(給排ポート)46aと貫通孔(貫通ポート)50cとが一致して連通していない場合には、摺動プレート(ピストンプレート)50によって貫通孔(給排ポート)46aが閉塞され、作動室66a,66bから貫通孔(給排ポート)46aを介して作動油が排出されることを防止している。
【0101】
排出路42の排出開口部42aのピストン51は、スプリングによって摺動プレート50に向かって押し付けられた状態で、第1キャリア31と一体に回転する摺動プレート(ピストンプレート)50と摺動する。貫通孔(貫通ポート)50cが摺動プレート50の回転によってピストン51と一致した位置に来たときに、貫通孔(給排ポート)46aから排出された作動油が排出開口部42aのピストン51を介して排出路42と排出される。排出路42に排出された作動油は、分配流路を介してタンクに還流される。
【0102】
このように、油圧モータ1は、供給路41(供給開口部41a及び供給開口部41aに通じる摺動プレート50の貫通孔50c)の個数と給排プレート46の貫通孔46aの個数との不一致、及び排出路42(排出開口部42a及び排出開口部42aに通じる摺動プレート50の貫通孔50c)の個数と給排プレート46の貫通孔46aの個数との不一致を利用することで、摺動プレート50の貫通孔50cと給排プレート46の貫通孔46aとの通じている状態が周方向に順次切り替わるようになっている。この結果、給排プレート46の各貫通孔46aから各作動室66a,66bに選択的に作動油が供給、排出され、回転部3が回転される。
【0103】
回転部3を構成するキャリア部6は、第1キャリア31と第2キャリア32とに分割構成されている。これら第1キャリア31と第2キャリア32とはリーマボルト53によって固定されているので、このリーマボルト53を介して第1キャリア31と第2キャリア32との間の動力伝達が行われることになる。リーマボルト53の軸部53aは、第1キャリア31と第2キャリア32とに跨って配置されている。このため、第1キャリア31と第2キャリア32との間に雄ねじ部53bが跨る場合と比較して、第1キャリア31と第2キャリア32との動力伝達が効率よく行われる。
【0104】
ここで、揺動歯車5の第1方向側には、第1キャリア31の第1外周面33d、第2端部33b、及び給排プレート46のプレート側ラビリンス部48により、第3ラビリンス49が構成されている。揺動歯車5の第2方向側には、第2ハウジング8の第2キャリア側第1ラビリンス部25と第2キャリア32の第2キャリア側第2ラビリンス部57とにより、第2ラビリンス40が構成されている。このため、作動室66a,66bからクランクシャフト4と揺動歯車5との間の微小隙間を介して漏れ出る作動油は、第1ハウジング7と第1キャリア31との間、及び第2ハウジング8と第2キャリア32との間から漏れ出にくい。
【0105】
なお、油圧モータ1では、ハウジング部2を固定することにより、回転部3から出力を得ることが可能である。この場合、回転部3(第1キャリア31)の外フランジ部39に固定された外部機器が被回転体となる。また、回転部3を固定することにより、ハウジング部2から出力を得ることも可能である。この場合、ハウジング部2(第1ハウジング7)の外フランジ部9に固定された外部機器が被回転体となる。
【0106】
油圧モータ1は、第1ハウジング7に設けられた内歯ピン90を有している。回転部3は、キャリア部6とキャリア部6に回転自在に支持されたクランクシャフト4と、クランクシャフト4によって揺動回転に記載され内歯ピン90に噛合わされる揺動歯車5と、を備える。このように構成することで、第1ハウジング7の内周面7cと揺動歯車5の外周面との間に形成される作動室66a,66bに作動油を供給したり排出したりすることで、油圧モータ1を回転駆動させることができる。この回転駆動により、高い回転トルクを得ることができる。このような油圧モータ1に、分割構成されたハウジング部2を好適に用いることができる。
【0107】
油圧モータ1は、各作動室66a,66bに作動油を選択的に供給、排出するための給排プレート46を有している。給排プレート46は、厚肉部10の第1端部10b(揺動歯車5の第1方向側端)に配置されている。このような給排プレート46を、ボルト20を利用して第1ハウジング7に固定している。第1ハウジング7と第2ハウジング8とを固定するためのボルト20を利用して給排プレート46も固定している。
【0108】
油圧モータ1では、作動室66a,66bに作動油を選択的に供給する際に、分岐流路41gから分岐させて圧力室104aへと供給する。
【0109】
油圧ポンプから作動油が供給されていない状態では、圧力室に104aは作動油が供給されない。したがって、ブレーキ機構100においては、(押し付け部)105の押し付け力によって、ピストンが第2方向へと押し付けられる。この状態では、
図6に示すように、ストッパ102がストッパ係合部101に差し込まれて、揺動歯車5が揺動しない。したがって、油圧モータ1は駆動しない。つまり、ブレーキが掛かった状態を維持する。この状態で、ブレーキ機構100はパーキングブレーキとなる。
【0110】
この状態で、作動油が圧力室104aへと供給されると、圧力室104aの作動油により、(押し付け部)105の押し付け力に打ち勝って、ピストン103が第1方向へと移動する。すると、
図5に示すように、ストッパ102がストッパ係合部101から抜けて、揺動歯車5への規制が解除される。これにより、揺動歯車5が揺動可能となり、油圧モータ1が駆動する。
【0111】
なお、作動油の圧力室104aへの供給は、作動室66a,66bに作動油を供給する油圧モータ1の駆動用である油圧ポンプからの供給としてもよいし、他のパイロット圧とすることもできる。
【0112】
このように、上述の実施形態では、バネ(押し付け部)105および油圧モータ1の駆動に用いる作動油を用いたストッパ移動部100aにより、ブレーキ機構100をパーキングブレーキとして動作させることができる。これにより、揺動歯車を用いたいわゆるオービットタイプの油圧モータ1において、クランクシャフト4とストッパ102とを別部材として構成し、一体に回転するなどの統合動作をさせないことができるため、油圧モータ1の駆動に対する抵抗を減らして、エネルギーロスを削減することが可能となる。しかも、この効果を、基板部33に設けたシリンダ104とピストン103とバネ105とによって往復動作するストッパ102を、揺動歯車5に設けたストッパ係合部101に進退させるだけという簡単な構造で安価に提供することが可能となる。
【0113】
さらに、基板部33に設けたシリンダ104とピストン103とバネ105とによって駆動するストッパ102を、揺動歯車5に設けたストッパ係合部101に進退させるという簡単な構造でコンパクトに実現することができる。揺動歯車5に設けたストッパ係合部101に進退させるという簡単な構造なため、加工が容易である。基板部33にシリンダ104とピストン103とを設けるため、ブレーキを解除するための作動油を供給する分岐流路104gを形成することが容易である。また、基板部33は回転しない部分であるため、容易に流路を形成することができる。さらに、分岐流路41gを1本だけ形成すればブレーキ駆動の作動油をシリンダ104に供給できるため、省スペース化を図ることができる。
【0114】
また、クランクシャフト4と、シリンダ104およびピストン103との配置を容易におこなうことができる。さらに、ストッパ102をストッパ係合部101に差し込むという動作だけでブレーキとすることで、ストッパ102とストッパ係合部101との傾きを気にすることなく動作させることができる。これにより、部品点数を削減した状態で、確実なブレーキ動作を実現することが可能となる。
【0115】
以下、本発明に係る回転機器の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図7は、
図1のV部拡大図に対応しており、本実施形態におけるブレーキ機構100の解除状態を示している。
図8は、
図1のV部拡大図に対応しており、ブレーキ機構100の係合状態を示している。本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、ストッパ移動部に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0116】
本実施形態のストッパ移動部100aは、
図7に示すように、第2キャリア32にシリンダ106が形成されている。シリンダ106は、その第1方向が揺動歯車5に対向して開口している。シリンダ106は、第2方向がカバー29に対向する連通口を有する。シリンダ106の内部には、第1方向側にストッパ102が収納される。シリンダ106は、シリンダ104と同径とされてもよい。シリンダ104は、シリンダ104と同じ軸線C5を有し、シリンダ104と同軸に形成される。ストッパ102は、シリンダ106内部で、軸線C1に沿った方向である軸線C5に沿って往復動作可能である。
【0117】
シリンダ106内部には、ストッパ102の第2方向側にバネ(押し付け部)105が配置される。バネ(押し付け部)105は、ストッパ102を第1方向に向かって押し付ける。
ストッパ102には、第1方向側に軸線C5に沿った連結部材102aが接続される。連結部材102aは、ストッパ102の軸線C5に対して同軸に接続される。連結部材102aには、第1方向側の端部にピストン103が接続される。ストッパ102と連結部材102aとピストン103とは、軸線C5に沿った方向に一体に移動可能である。連結部材102aは、ストッパ係合部101の内部に配置される。連結部材102aは、ストッパ係合部101よりも小径とされ、揺動歯車5が揺動回転しても、ストッパ係合部101には接触しない。
【0118】
ピストン103は、シリンダ104に収納されている。シリンダ104とシリンダ106とは、揺動歯車5の厚さ方向両側に同軸に配置されている。揺動歯車5の第1方向側のシリンダ104と、揺動歯車5の第2方向側のシリンダ106とは、あたかも軸線C5方向に連続したシリンダのように形成される。つまり、シリンダ104とシリンダ106とは、キャリア部6に形成される。
シリンダ104内部には、ピストン103の第1方向側となる位置に分岐流路41gが連結する。分岐流路41gは、ピストン103の第1方向側となるシリンダ104の圧力室104bに連結する。分岐流路41gは、供給路41から分岐している。
【0119】
分岐流路41gは、供給路41から分流した作動油(作動流体)を圧力室104bに供給可能である。作動油(作動流体)が供給された圧力室104bでは、ピストン103が第2方向に向かって押圧される。圧力室104bの作動油(作動流体)からピストン103にかかる圧力が、シリンダ106のバネ(押し付け部)105がストッパ102を第1方向に押し付ける押し付け力よりも大きくなると、ピストン103およびストッパ102が第2方向に向かって移動する。
【0120】
ストッパ102は、連結部材102aとピストン103と一体に、軸線C5に沿って揺動歯車5に対して接触可能および離間可能に移動する。ストッパ102は、バネ(押し付け部)105の押し付け力により第2キャリア32の第1方向端部32dから第1方向に向かって突出可能である。ストッパ102が第1方向に移動した場合には、ストッパ102がストッパ係合部101に差し込まれる。このとき、揺動歯車5の揺動回転位置によっては、ストッパ102とストッパ係合部101との位置が合わない場合もあるが、キャリア部6の出力回転が1回転する間には、ストッパ102とストッパ係合部101との位置が必ず一致する。ストッパ102とストッパ係合部101との位置が一致すると、ストッパ102がストッパ係合部101に差し込まれる。
ストッパ102はストッパ係合部101に差し込まれた際には、ストッパ102が揺動歯車5の揺動回転を止める。
【0121】
バネ(押し付け部)105の押し付け力によりストッパ係合部101に差し込まれたストッパ102は、分岐流路41gを介して圧力室104bに作動油(作動流体)が供給されると、バネ105の押し付け力に打ち勝ってピストン103を第2方向に押して圧する。ピストン103が第2方向に向かって移動すると、連結部材102aを介して一体のストッパ102が、第2方向に向かって移動してストッパ係合部101から抜け出す。さらに、揺動歯車5から離間したストッパ102は、第2キャリア32の第1方向端部32dよりも第2方向に位置して、シリンダ106の内部に収納される。
【0122】
本実施形態においても、油圧モータ1には、図示しない油圧ポンプから作動油が供給路41を介して作動室66a,66bに供給される。これにより、作動室66a,66bに供給された作動油により、揺動歯車5が僅かに回転方向にずれて回転出力が得られる。同時に、作動油は、供給路41から分岐流路41gを介して圧力室104bに供給される。
【0123】
油圧ポンプから作動油が供給されていない状態では、圧力室に104bは作動油が供給されない。したがって、ブレーキ機構100においては、(押し付け部)105の押し付け力によって、ピストンが第1方向へと押し付けられる。この状態では、
図8に示すように、ストッパ102がストッパ係合部101に差し込まれて、揺動歯車5が揺動しない。したがって、油圧モータ1は駆動しない。つまり、ブレーキが掛かった状態を維持する。この状態で、ブレーキ機構100はパーキングブレーキとなる。
【0124】
この状態で、作動油が圧力室104bへと供給されると、圧力室104bの作動油の圧力が(押し付け部)105の押し付け力に打ち勝って、
図7に示すように、ピストン103が第2方向へと移動する。すると、連結部材102aを介して移動されたストッパ102がストッパ係合部101から抜けて、揺動歯車5への規制が解除される。これにより、揺動歯車5が揺動可能となり、油圧モータ1が駆動する。
【0125】
なお、作動油の圧力室104bへの供給は、作動室66a,66bに作動油を供給する油圧モータ1の駆動用である油圧ポンプからの供給としてもよいし、他のパイロット圧とすることもできる。
【0126】
本実施形態においても、バネ(押し付け部)105および油圧モータ1の駆動に用いる作動油を用いたストッパ移動部100aにより、ブレーキ機構100をパーキングブレーキとして動作させることができる。これにより、上述した実施買いたいと同等の効果を奏することができる。
さらに、シリンダ106を第2キャリア32に形成したため、基板部33のシリンダ104にはバネ105を収納するスペースを形成する必要がない。同時に、圧力室104aをピストン103よりも第2方向側に形成する必要がない。これらのため、基板部33における省スペース化を図ることができる。
【0127】
上記の各実施形態においては、ストッパ102により揺動歯車5の回転を止める構成としたが、ブレーキ機構100としては、ストッパで回転を止める対象をクランクシャフト4とすることもできる。この場合には、クランクシャフト4が、揺動歯車5の中心に位置していることが好ましい。
また、上記の各実施形態においては、ストッパ係合部101が揺動歯車5を貫通するように形成したが、ストッパ102が係合する凹部として形成し、貫通しないこともできる。
あるいは、ストッパ102が揺動歯車5またはクランクシャフト4に接触して、これらを押圧することで回転を止める構成とすることもできる。
【0128】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0129】
1…油圧モータ(回転機器)
2…ハウジング部
3…回転部
4…クランクシャフト(偏心回転体)
4c…偏心部
5…揺動歯車
6…キャリア部(回転部材)
7…第1ハウジング
8…第2ハウジング
12…第1軸受(軸受)
13…第2軸受(軸受)
31…第1キャリア
33b…第2端部
32…第2キャリア(キャリア)
32d…第1方向端部
41…供給路(油路)
41g…分岐流路
42…排出路(油路)
46…給排プレート(ポートプレート)
50…摺動プレート(ピストンプレート)
65…外歯
66a,66b…作動室
90…内歯ピン(内歯)
100…ブレーキ機構
100a…ストッパ移動部
101…ストッパ係合部
102…ストッパ
102a…連結部材
103…ピストン
104,106…シリンダ
104a,104b…圧力室
105…バネ(押し付け部)
C1…第1軸線(軸線)
C5…軸線