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2023-80001バーリング加工用金型、バーリング加工方法及びバーリング加工品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080001
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】バーリング加工用金型、バーリング加工方法及びバーリング加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 19/08 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
B21D19/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126858
(22)【出願日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021192660
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】飛田 隼佑
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 栄治
(57)【要約】
【課題】金型形状を複雑にすることなく、伸びフランジ割れを十分に抑制することができるバーリング加工用金型、バーリング加工方法及びバーリング加工品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るバーリング加工用金型は、隅部が円弧状に形成された多角形の孔63を持つ金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記金属板の孔形状に対応する成形面部を有するパンチ1によりバーリング加工するバーリング加工用金型であって、パンチ1の成形面部は、多角形の天板部3と、天板部3に第1肩R部4を介して繋がると共にバーリング加工方向に平行な直立縦壁部5と、隣り合う直立縦壁部5を繋ぐ直立縦壁コーナーR部7と、隣り合う第1肩R部4から直立縦壁コーナーR部7に跨るように形成された平面状の第1傾斜面部9と、を備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチとダイとブランクホルダーとを備え、隅部が円弧状に形成された多角形の孔を持つ金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記金属板の孔形状に対応する成形面部を有するパンチによりバーリング加工し、前記孔の周囲に縦壁を形成するバーリング加工用金型であって、
前記パンチの成形面部は、バーリング加工方向に直交する多角形の天板部と、該天板部に第1肩R部を介して繋がると共にバーリング加工方向に平行な直立縦壁部と、隣り合う直立縦壁部を繋ぐ直立縦壁コーナーR部と、隣り合う前記第1肩R部から前記直立縦壁コーナーR部に跨るように形成された平面状の第1傾斜面部と、を有し、
該第1傾斜面部は、隣り合う前記第1肩R部を繋ぐ上辺R部を介して前記天板部と繋がり、該上辺R部の両端部から前記直立縦壁コーナーR部に繋がる一対の傾斜辺R部を介して前記直立縦壁部と繋がっていることを特徴とするバーリング加工用金型。
【請求項2】
パンチとダイとブランクホルダーとを備え、隅部が円弧状に形成された多角形の孔を持つ金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記金属板の孔に対応する成形面部を有するパンチによりバーリング加工し、前記孔の周囲に縦壁を形成するバーリング加工用金型であって、
前記パンチの成形面部は、バーリング加工方向に直交する多角形の天板部と、該天板部に第1肩R部を介して繋がると共に外方に向かって傾斜する傾斜縦壁部と、隣り合う傾斜縦壁部を繋ぐ傾斜縦壁コーナーR部と、前記傾斜縦壁部に第2肩R部を介して繋がると共にバーリング加工方向に平行な直立縦壁部と、隣り合う直立縦壁部を繋ぐ直立縦壁コーナーR部と、前記傾斜縦壁コーナーR部と隣り合う前記第2肩R部と前記直立縦壁コーナーR部とに跨るように形成された平面状の第2傾斜面部と、を有し、
該第2傾斜面部は、前記傾斜縦壁コーナーR部と隣り合う前記第2肩R部とを繋ぐ一対の上傾斜辺R部を介して前記傾斜縦壁部と繋がり、隣り合う前記第2肩R部と前記直立縦壁コーナーR部とを繋ぐ一対の下傾斜辺R部を介して前記直立縦壁部と繋がっていることを特徴とするバーリング加工用金型。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバーリング加工用金型を用いて、隅部が円弧状に形成された多角形の孔形状を持つ金属板をバーリング加工するバーリング加工方法であって、
前記金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記パンチを前記孔形状に挿入して、前記パンチの成形面部によって前記孔形状の孔縁回りに縦壁を形成することを特徴とするバーリング加工方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のバーリング加工用金型を用いて、隅部が円弧状に形成された多角形の孔形状を持つ金属板をバーリング加工するバーリング加工品の製造方法であって、
前記金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記パンチを前記孔形状に挿入して、前記パンチの成形面部によって前記孔形状の孔縁回りに縦壁を形成することを特徴とするバーリング加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隅部が円弧状に形成された多角形の孔を持つ金属板をバーリング加工し、前記孔の周囲に縦壁を形成するバーリング加工用金型、該バーリング加工用金型を用いたバーリング加工方法、及びバーリング加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車車体の衝突安全性向上と軽量化を両立させるために、車体構造部品への引張強度590MPa級以上の高強度鋼板(ハイテン材とも称する)の適用が進んでいる。ハイテン材を伸びフランジを有する部品にプレス成形する上で、伸びフランジ割れなどの成形不良の抑制が課題となっている。
【0003】
自動車部品に用いられるプレス成形品として、ロアアームのようにバーリング加工して縦壁を形成する部品がある。このような部品をバーリング加工した場合、バーリング加工した部位の材料縁部で伸びフランジ割れが発生する場合がある。特にハイテン材を用いて上記のような部品を成形した場合、伸びフランジ割れが発生しやすくなる。
【0004】
伸びフランジ割れを防止する従来技術としては、例えば特許文献1~3に開示がある。
特許文献1に記載のプレス成形方法は、内向きコーナー部の内端縁から起立するコーナーフランジ部に対する伸びフランジ割れを抑制するものである。具体的には、パンチコーナー部は、コーナー中心の両側に配置される2つの弧状凸部32aと32bの2つの弧状凸部の間に形成される凹部32cとからなる輪郭形状とすることで、伸びフランジ割れを抑制するとしている(特許文献1の図2参照)。
【0005】
また、特許文献2には、マグネシウム合金板材を角絞り加工する際、絞り加工用のダイプレートと絞りパンチとパッドの側面部と天面部を部分的にテーパ状とした角絞り金型を用いた絞り加工方法が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、上面部と上面部に連続する副斜壁部、副斜壁部に連続する直壁部を有し、上面部と直壁部の間に、直壁部側で交わる2本の稜線を有する主斜壁部を有する伸びフランジ成形工具が開示されている。なお、主斜壁部は、上面部と0°超90°未満及び直壁部と10°以上90°未満の角度をなして位置するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-148847号公報
【特許文献2】特開2002-239644号公報
【特許文献3】再公表2020-026356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のプレス成形方法では、パンチコーナー部のコーナー中心の両側に配置される2つの弧状凸部32a、32bにひずみが集中しやすくなるため、伸びフランジ割れが十分抑制できない。
【0009】
また、特許文献2に記載の絞り加工用金型を本発明で扱うバーリング加工に適用した場合、角部のテーパ頂点Cにおいてひずみが集中し、伸びフランジ割れが発生しやすい。
【0010】
さらに、特許文献3の伸びフランジ成形工具は、上面部(天板部)と直壁部(直立縦壁部)の他に、主斜壁部と第1副斜壁部と第2副斜壁部を有し、さらに、主斜壁部と上面部(天板部)との稜線に直線部位を有している。このため、成形開始当初から上面部と主斜壁部との直線部位の両端2ヶ所の角部、又は、主斜壁部と第1副斜壁部及び主斜壁部と第2副斜壁部との間で急激に張り出し加工することになる。その結果、加工されるブランクに張力が作用し、ひずみが加わる。その後に加工が進んで、ブランク端部を直壁部(縦壁部)に成形しようとすると、ブランク端部の加わったひずみに、さらに主斜壁部により張り出す加工が加わるため、ブランク端部から破断しやすいという問題があった。
さらに、前記の主斜壁部はその下部において直壁部同士の稜線(特許文献3の18)と交わるが、その境界線(特許文献3の20、21)が円弧状を呈して、その長さが短い。このため、成形が進んで、ブランク端部が該境界線に至って直壁部(縦壁部)に成形されようとすると、該境界線に沿って急激に直壁部(縦壁部)が成形されることとなる。その結果、それまでに蓄積されたひずみにより加工硬化したブランクに対し、さらに急激なひずみが加わって、ブランク端部から破断しやすいという問題があった。
なお、主斜壁部が直壁部同士の稜線と交わる下部の境界線が短くなる理由は、伸びフランジ成形工具に第1副斜壁部と第2副斜壁部を形成し、第1副斜壁部と第2副斜壁部と交わり直壁部側でも交わる2本の稜線を有する主斜壁部を形成したためである。それにより、主斜壁部の稜線の大部分が第1副斜壁部と第2副斜壁部との稜線を占有することとなって、幾何学的な制約から、主斜壁部が直壁部同士の稜線と交わる下部において境界線が必然的に短くならざるを得ないわけである。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を解消して、金型形状を複雑にすることなく、伸びフランジ割れを十分に抑制することができるバーリング加工用金型、バーリング加工方法及びバーリング加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係るバーリング加工用金型は、パンチとダイとブランクホルダーとを備え、隅部が円弧状に形成された多角形の孔を持つ金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記金属板の孔形状に対応する成形面部を有するパンチによりバーリング加工し、前記孔の周囲に縦壁を形成するものであって、
前記パンチの成形面部は、バーリング加工方向に直交する多角形の天板部と、該天板部に第1肩R部を介して繋がると共にバーリング加工方向に平行な直立縦壁部と、隣り合う直立縦壁部を繋ぐ直立縦壁コーナーR部と、隣り合う前記第1肩R部から前記直立縦壁コーナーR部に跨るように形成された平面状の第1傾斜面部と、を有し、
該第1傾斜面部は、隣り合う前記第1肩R部を繋ぐ上辺R部を介して前記天板部と繋がり、該上辺R部の両端部から前記直立縦壁コーナーR部に繋がる一対の傾斜辺R部を介して前記直立縦壁部と繋がっていることを特徴とするものである。
【0013】
(2)また、パンチとダイとブランクホルダーとを備え、隅部が円弧状に形成された多角形の孔を持つ金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記金属板の孔に対応する成形面部を有するパンチによりバーリング加工し、前記孔の周囲に縦壁を形成するバーリング加工用金型であって、
前記パンチの成形面部は、バーリング加工方向に直交する多角形の天板部と、該天板部に第1肩R部を介して繋がると共に外方に向かって傾斜する傾斜縦壁部と、隣り合う傾斜縦壁部を繋ぐ傾斜縦壁コーナーR部と、前記傾斜縦壁部に第2肩R部を介して繋がると共にバーリング加工方向に平行な直立縦壁部と、隣り合う直立縦壁部を繋ぐ直立縦壁コーナーR部と、前記傾斜縦壁コーナーR部と隣り合う前記第2肩R部と前記直立縦壁コーナーR部とに跨るように形成された平面状の第2傾斜面部と、を有し、
該第2傾斜面部は、前記傾斜縦壁コーナーR部と隣り合う前記第2肩R部とを繋ぐ一対の上傾斜辺R部を介して前記傾斜縦壁部と繋がり、隣り合う前記第2肩R部と前記直立縦壁コーナーR部とを繋ぐ一対の下傾斜辺R部を介して前記直立縦壁部と繋がっていることを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明に係るバーリング加工方法は、上記(1)又は(2)に記載のバーリング加工用金型を用いて、隅部が円弧状に形成された多角形の孔形状を持つ金属板をバーリング加工する方法であって、
前記金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記パンチを前記孔形状に挿入して、前記パンチの成形面部によって前記孔形状の孔縁回りに縦壁を形成することを特徴とするものである。
(4)本発明に係るバーリング加工品の製造方法は、上記(1)又は(2)に記載のバーリング加工用金型を用いて、隅部が円弧状に形成された多角形の孔形状を持つ金属板をバーリング加工するバーリング加工品の製造方法であって、
前記金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記パンチを前記孔形状に挿入して、前記パンチの成形面部によって前記孔形状の孔縁回りに縦壁を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るバーリング加工用金型においては、パンチの成形面部は、バーリング加工方向に直交する多角形の天板部と、該天板部に第1肩R部を介して繋がると共にバーリング加工方向に平行な直立縦壁部と、隣り合う直立縦壁部を繋ぐ直立縦壁コーナーR部と、隣り合う前記第1肩R部から前記直立縦壁コーナーR部に跨るように形成された平面状の第1傾斜面部と、を有し、
該第1傾斜面部は、隣り合う前記第1肩R部を繋ぐ上辺R部を介して前記天板部と繋がり、該上辺R部の両端部から前記縦壁コーナーR部に繋がる一対の傾斜辺R部を介して前記直立縦壁部と繋がっている。このため、円弧状に形成されたブランクの隅部を、成形途中で急激なひずみを加えずに、時間差を設けて徐々に成形することができ、材料が広い範囲から流れることで、ひずみの集中を回避することができる。これにより、伸びフランジ割れを十分抑制することができ、その結果、割れのない良好な部品が得られ、歩留まり向上に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に係るバーリング加工用金型のパンチ形状の説明図であって、全体形状(a)と一部拡大(b)を示す図である。
図2】実施の形態1に係るバーリング加工用金型のパンチ形状の説明図であって、全体形状(a)と、(a)の矢視A-A断面の一部を示す図(b)である。
図3】実施の形態1に係るバーリング加工用金型によって加工した場合の効果を説明する図である。
図4】本発明が加工対象としている部品形状の一例の説明図である。
図5】実施の形態1に対応する従来例のパンチ形状の説明図であって、全体形状(a)と一部拡大(b)を示す図である。
図6】実施の形態1に対応する従来例のパンチ形状の説明図であって、全体形状(a)と、(a)の矢視B-B断面の一部を示す図(b)である。
図7】実施の形態1、2において効果確認に用いた部品の具体例の説明図である。
図8】実施の形態1において比較対象とした従来例のパンチによって加工した場合の板厚減少率を説明する図である。
図9】実施の形態1において発明例と従来例の板厚減少率を比較したグラフである。
図10】実施の形態2に係るバーリング加工用金型のパンチ形状の説明図であって、全体形状(a)と一部拡大(b)を示す図である。
図11】実施の形態2に係るバーリング加工用金型のパンチ形状の説明図であって、全体形状(a)と、(a)の矢視C-C断面の一部を示す図(b)である。
図12】実施の形態2に係るバーリング加工用金型によって加工した場合の効果を説明する図である。
図13】実施の形態2に対応する従来例のパンチ形状の説明図であって、全体形状(a)と一部拡大(b)を示す図である。
図14】実施の形態2に対応する従来例のパンチ形状の説明図であって、全体形状(a)と、(a)の矢視D-D断面の一部を示す図(b)である。
図15】実施の形態2において比較対象とした従来例のパンチによって加工した場合の板厚減少率を説明する図である。
図16】実施の形態2において発明例と従来例の板厚減少率を比較したグラフである。
図17】実施例1において発明例の金型形状における形状変更箇所の説明図である。
図18】実施例2における発明例の金型形状における形状変更箇所の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態1]
本実施の形態に係るバーリング加工用金型が加工の対象としているバーリング加工品61は、例えば図4に示すように、隅部が円弧状に形成された多角形の孔63の周囲に縦壁65が形成されたものである。
本実施の形態に係るバーリング加工用金型を説明するに先立って、一般的なバーリング加工金型とそれを用いた場合の問題点を説明する。
【0018】
図4に示すバーリング加工品61をバーリング加工する従来のパンチ21を図5図6に示す。図5図6に示す従来のパンチ21は、天板部3と直立縦壁部5をつなぐ第1肩部にR部(以下、「第1肩R部4」という)を設け、コーナーの第1肩部も第1肩R部4をコーナー部に向かってパンチ周囲方向に延長したR部(以下、「コーナー第1肩R部23」という)としたものである。
【0019】
図5図6に示すような形状のパンチ21でバーリング加工した場合、コーナー第1肩R部23も、天板部3と直立縦壁部5をつなぐ第1肩R部4と同じタイミングでブランクを成形することになる。このため、コーナー第1肩R部23の頂点近傍に接するブランクにひずみが集中し、大きな板厚減少が発生してブランクは伸びフランジ割れに至る。
【0020】
図7に示す形状のバーリング加工品61において、バーリング加工高さを7mmとして、図5図6に示す従来のパンチ21で加工した場合について、コーナー第1肩R部23に接するブランクの隅部の板厚減少率をFEM解析し、その結果を図8に示す。コーナー第1肩R部23に接する孔63の隅部の最大板厚減少率は29.2%であり、大きな板厚減少が生じて割れ易いことが分かる。
【0021】
上記の従来のパンチ21の問題点は、コーナー第1肩R部23の成形開始時期が第1肩R部4の成形開始時期と同時であるため、隅部に形成される縦壁65にひずみが急激に集中することにある。そこで、隅部における成形途中で急激なひずみを加えずに、その周囲の縦壁65の成形よりも徐々に成形することで、孔63の隅部へのひずみの集中を防止して伸びフランジ割れを防止できるようにしたのが、本実施の形態に係るバーリング加工用金型である。
【0022】
具体的には、本実施の形態に係るバーリング加工用金型は、パンチとダイとブランクホルダーとを備え、隅部が円弧状に形成された多角形の孔を持つ金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記金属板の孔形状に対応する成形面部を有する前記パンチによりバーリング加工し、前記孔の周囲に縦壁を形成するバーリング加工用金型である。
本実施の形態の特徴であるパンチの成形面部を図1図2に基づいて説明する。図1図2において、従来例を示した図5図6と同一及び対応する部分は同一の符号を付してある。
【0023】
本実施の形態のパンチ1の成形面部は、図1図2に示すように、バーリング加工方向に直交する多角形の天板部3と、天板部3に第1肩R部4を介して繋がると共にバーリング加工方向に平行な直立縦壁部5と、隣り合う直立縦壁部5を繋ぐ直立縦壁コーナーR部7と、隣り合う第1肩R部4から直立縦壁コーナーR部7に跨るように形成された平面状の第1傾斜面部9と、を有している。
そして、第1傾斜面部9は、隣り合う第1肩R部4を繋ぐ上辺R部11を介して天板部3と繋がり、上辺R部11の両端部から直立縦壁コーナーR部7に繋がる一対の傾斜辺R部13を介して直立縦壁部5と繋がっている。
【0024】
図2(b)は図2(a)における矢視A-A断面図であり、図2(b)の破線は図6(b)に示す従来形状を示している。なお、図6(b)の断面形状は従来のパンチ形状を示した図6(a)の矢視B-B断面図である。
本実施の形態に係るバーリング加工方法は、図1図2に示すバーリング加工用金型を用いて、金属板をブランクホルダーとダイで挟んで、パンチ1を孔63に挿入して、パンチ1の成形面部によって孔63の孔縁回りに縦壁を形成する。
図1図2に示すバーリング加工用金型を用いて、隅部が円弧状に形成された多角形の孔63を持つ金属板にバーリング加工を開始すると、孔63の隅部の両側にあるブランクの辺部が第1肩R部4によって加工され、加工が進むと、第1傾斜面部9の一対の傾斜辺R部13によってブランクの隅部に向かって徐々に縦壁65が形成される。加工が進み、傾斜辺R部13の下端が孔63の隅部に当接した状態において、隅部は最終形状となる。
【0025】
このように、本実施の形態のバーリング加工用金型によれば、第1傾斜面部9の両脇にある傾斜辺R部13によって、成形途中で急激なひずみが加わらずに、徐々に加工が進行するので、ブランクの隅部の加工が終了するまでひずみの集中が緩和される。その結果、ブランクの板厚減少が抑制されるわけである。
【0026】
図7に示すバーリング加工品61についてバーリング加工高さを7mmとし、図1図2に示したパンチ1成形面部を有するパンチ1で加工した場合のFEM解析による板厚減少率の結果を図3に示す。ブランクの隅部の最大板厚減少率は19.2%となった。従来例のパンチ21を用いた結果である29.2%(図8参照)と比較して、板厚減少が抑制され伸びフランジ割れが生じにくくなったことがわかる。
【0027】
また、図5図6に示した従来のパンチ21と、図1図2に示した本発明に係るパンチ1とを用いてバーリング加工を行った場合における、ブランクの隅部とその周囲の板厚減少分布を図9に示す。図9は、縦軸が板厚減少率(%)で横軸が周方向位置を示している。なお、横軸の原点を直立縦壁コーナーR部7の当接位置とした。
図9に示されるように、従来のパンチ21による加工に比べて本発明のパンチ1による加工では最大板厚減少率が低減している。
また、本発明のパンチ1による加工では板厚減少の生ずる周方向の範囲が広がっており、バーリング加工によるひずみがパンチ周方向に分散されたことから、このひずみ分散効果により最大板厚減少率が大幅に低減され、伸びフランジ割れが抑制されたことがわかる。
なお、上述のバーリング加工用金型を用いて、上述のバーリング加工方法を実行することで、バーリング加工品が製造できる。したがって、バーリング加工品の製造方法の工程はバーリング加工方法と同一であり、上記バーリング加工方法の説明はそのままバーリング加工品の製造方法の説明にも適合する。
【0028】
[実施の形態2]
実施の形態1のパンチ1は、天板部3に連続する縦壁部が直立のタイプのものであったが、本実施の形態2に係るパンチ31は、天板部3に連続する縦壁部が天板部3側に傾斜するように形成された傾斜縦壁部であり、傾斜縦壁部に連続して直立する縦壁部を有するものである。
実施の形態1と同様に、本実施の形態2に係るバーリング加工用金型を説明するに先立って、従来のバーリング加工金型とそれを用いた場合の問題点を説明する。
【0029】
従来のパンチ21を図13図14に示す。図13図14において図5図6に示した実施の形態1の従来例と対応する部分、同一名称部分には同一の符号を付してある。
図13図14に示す従来のパンチ51は、天板部3と傾斜縦壁部33を繋ぐ第1肩R部4を設け、コーナー部においても第1肩R部4をコーナー部に向かってパンチ周囲方向に延長したコーナー第1肩R部23とし、傾斜縦壁部33と直立縦壁部5をつなぐ第2肩R部37を設け、コーナー部においても第2肩R部37をコーナー部に向かってパンチ周方向に延長したコーナー第2肩R部53を設けたものである。
【0030】
図13図14に示すような形状のパンチ51でバーリング加工した場合、第1肩R部4は目標加工品の孔形状に比較して小さいので、コーナー第1肩R部23による隅部の伸びフランジ加工中に割れは生じない。
しかし、第2肩R部37では目標形状となる大きな孔形状に加工し、またコーナー第2肩R部53は傾斜縦壁部33と直立縦壁部5をつなぐ第2肩R部37と同じタイミングでブランクを成形することになる。このため、コーナー第2肩R部53の頂点(凸起)近傍に接するブランクに急激にひずみが集中し、大きな板厚減少が生じてブランクは伸びフランジ割れに至る。
【0031】
図7に示すバーリング加工品61についてバーリング加工高さを7mmとし、図13図14に示す従来のパンチ51で加工した場合について、コーナー第2肩R部53に接するブランクの隅部の板厚減少率についてFEM解析し、その結果を図15に示す。コーナー第2肩R部53に接する隅部の最大板厚減少率は27.2%であり、大きな板厚減少が生ずることが分かる。
【0032】
上記の従来のパンチ51の問題点は、コーナー第2肩R部53の成形開始時期が第2肩R部37の成形開始時期と同時であるため、ブランクの隅部に急激にひずみが集中することにある。そこで、ブランクにおける隅部の成形を、成形途中で急激なひずみを加えずに、その周囲の縦壁65の成形よりも徐々に成形することで、ブランクの隅部へのひずみの集中を防止して伸びフランジ割れを防止できるようにしたのが本実施の形態に係るバーリング加工用金型である。
【0033】
具体的には、本実施の形態に係るバーリング加工用金型は、パンチ31とダイとブランクホルダーとを備え、隅部が円弧状に形成された多角形の孔63を持つ金属板を前記ブランクホルダーと前記ダイで挟んで、前記金属板の孔63に対応する成形面部を有する前記パンチ31によりバーリング加工し、孔63の周囲に縦壁65を形成するバーリング加工用金型である。
本実施の形態の特徴であるパンチ31の成形面部を図10図11に基づいて説明する。図10図11において、従来例を示した図13図14と同一及び対応する部分は同一の符号を付してある。
【0034】
本実施の形態に係るパンチ31の成形面部は、図10図11に示すように、バーリング加工方向に直交する多角形の天板部3と、天板部3に第1肩R部4を介して繋がると共に外方に向かって傾斜する傾斜縦壁部33と、隣り合う傾斜縦壁部33を繋ぐ傾斜縦壁コーナーR部35と、傾斜縦壁部33に第2肩R部37を介して繋がると共にバーリング加工方向に平行な直立縦壁部5と、隣り合う直立縦壁部5を繋ぐ直立縦壁コーナーR部7と、傾斜縦壁コーナーR部35と隣り合う前記第2肩R部37と前記直立縦壁コーナーR部7とに跨るように形成された平面状の第2傾斜面部39と、を有している。
そして、第2傾斜面部39は、傾斜縦壁コーナーR部35と隣り合う第2肩R部37とを繋ぐ一対の上傾斜辺R部41を介して傾斜縦壁部33と繋がり、隣り合う第2肩R部37と直立縦壁コーナーR部7とを繋ぐ一対の下傾斜辺R部43を介して直立縦壁部5と繋がっている。
【0035】
図11(b)は図11(a)における矢視C-C断面図であり、図11(b)の破線は図14(b)に示す従来形状を示している。図14(b)の断面形状は、従来のパンチ形状を示した図14(a)の矢視D-D断面図である。
本実施の形態に係るバーリング加工方法は、図10図11に示すバーリング加工用金型を用いて、金属板をブランクホルダーとダイで挟んで、パンチ31を孔63に挿入して、パンチ31の成形面部によって孔63の孔縁回りに縦壁を形成する。
図10図11に示すバーリング加工用金型を用いて、隅部が円弧状に形成された多角形の孔63を持つ金属板にバーリング加工を開始すると、ブランクにおける孔63の縁部が第1肩R部4、傾斜縦壁部33によって加工され、孔63の隅部がコーナー第1肩R部23、傾斜縦壁コーナーR部35によって加工される。第1肩R部4やコーナー第1肩R部23は目標加工品の孔形状に比較して小さいので、コーナー第1肩R部23による隅部の伸びフランジ加工中に割れは生じない。
【0036】
加工が進み、孔63へパンチ31の挿入が進んで第2肩R部37の近くがブランクに接するようになると傾斜縦壁コーナーR部35が途切れ、第2傾斜面部39となる。このため、ブランクの隅部では上傾斜辺R部41が当接して隅部の周辺から徐々に加工される。そして、さらに加工が進行すると、ブランクの隅部の周囲では第2肩R部37が当接し、ブランクの隅部は下傾斜辺R部43による隅部の周囲から徐々に加工される。
その後、下傾斜辺R部43の下端がブランクの隅部に当接した状態において、隅部は最終形状となる。
【0037】
このように、ブランクの隅部はパンチ31の、上傾斜辺R部41及び下傾斜辺R部43によって徐々に加工が進行する。そのため、第2傾斜面部39による孔63の隅部の加工が終了するまで急激なひずみの集中が緩和され、その結果、ブランクの板厚減少が抑制されるわけである。
なお、特許文献3では、成形開始当初に主斜壁部の両側の稜線でブランクを左右に急激に開くため、大きな引張ひずみが蓄積して問題であったが、本発明では上傾斜辺R部41により徐々に開くため、割れ防止に有利である。
【0038】
バーリング加工高さを7mmとする図7の製品形状について、図10図11に示したパンチ成形面部を有するパンチ31で加工した場合のFEM解析による板厚減少率の結果を図12に示す。孔63のコーナーであるブランクの隅部の最大板厚減少率は20.1%となった。従来例のパンチ51を用いた結果である27.2%(図15参照)と比較して、板厚減少が抑制され伸びフランジ割れが生じにくくなったことがわかる。
【0039】
また、図13図14に示した従来のパンチ51と、図10図11に示したパンチ成形面部を有する本発明のパンチ31とを用いてバーリング加工を行った場合における、ブランクの隅部とその周囲の板厚減少分布を図16に示す。図16は、縦軸が板厚減少率(%)で横軸が周方向位置を示している。なお、横軸の原点を直立縦壁コーナR部7の当接位置とした。
【0040】
図16に示したように、従来のパンチ51による加工に比べて本発明のパンチ31による加工では最大板厚減少率が低減している。
また、本発明のパンチ31による加工では板厚減少の周方向の範囲が広がっており、バーリング加工によるひずみがパンチ周方向に分散されたことから、このひずみ分散効果により最大板厚減少率が大幅に低減され、伸びフランジ割れが抑制されたことがわかる。
なお、上述のバーリング加工用金型を用いて、上述のバーリング加工方法を実行することで、バーリング加工品が製造できる。したがって、バーリング加工品の製造方法の工程はバーリング加工方法と同一であり、上記バーリング加工方法の説明はそのままバーリング加工品の製造方法の説明にも適合する。
【実施例0041】
本発明に係るバーリング加工用金型による伸びフランジ成形性の向上効果を確認するため、FEM解析により従来及び本発明のパンチを用いて、バーリング加工高さを変更して加工し、最大板厚減少率を求めた。その結果を以下に説明する。
【0042】
本実施例では図7に示す目標加工品の形状に関して、従来及び本発明のパンチ形状を用いて、バーリング加工高さを変更した。
パンチは以下の4種類である。
(i)天板部3と加工方向に平行な直立縦壁部5と第1肩R部4からなる従来形状のパンチ21(図5図6
(ii)第1傾斜面部9を設けた本発明形状のパンチ1(図1図2
なお、パンチにおける第1傾斜面部9の幅W1、傾斜面部の高さH1、傾斜面部の傾斜角度θ1(図17参照)は、以下の通りである。
W1:6.2mm
H1:16.5mm
θ1:8°
(iii)天板部3と天板部3方向に先細りして傾斜する傾斜縦壁部33と第1肩R部4と加工方向に平行な縦壁部と第2肩R部37を有する従来形状のパンチ51(図13図14
(iv)第2傾斜面部39を設けた本発明形状のパンチ31(図10図11
なお、パンチにおける第2傾斜面部39の幅W2、傾斜面部の高さH2、傾斜面部の傾斜角度θ2(図18参照)は、以下の通りである。
W2:6.0mm
H2:14.0mm
θ2:8°
【0043】
また、ブランクの孔形状を変更して、それぞれバーリング加工高さを5mm,6mm,7mm,8mmとなるよう加工した。
本実施例で使用したブランク(金属板)は板厚t=1.2mm、引張強度が1180MPa級の鋼板とした。
【0044】
表1に、従来形状のパンチ21(図5図6)及び本発明形状のパンチ1(図1図2)を用いた結果を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
いずれのバーリング加工高さにおいても、従来のパンチ21を用いた場合と比較して、本発明のパンチ1を用いた場合は最大板厚減少率が低減しており、本発明のパンチ1を適用してバーリング加工することにより、伸びフランジ成形性が向上したことが分かる。
【0047】
表2に、従来形状のパンチ51(図13図14)及び本発明形状のパンチ31(図10図11)を用いた結果を示す。
【0048】
【表2】
【0049】
いずれのバーリング加工高さにおいても、従来形状のパンチ51を用いた場合と比較して、本発明形状のパンチ31を用いた場合は最大板厚減少率が低減しており、本発明のパンチ31を適用してバーリング加工することにより、伸びフランジ成形性が向上したことが分かる。
【実施例0050】
本実施例では、実施の形態1に係るパンチ1(図1図2)と、実施の形態2のパンチ31(図10図11)に対して、それぞれ図17図18に示す斜面部角度θ1、θ2(第1傾斜面部9、第2傾斜面部39の傾斜角度)と斜面部高さH1、H2(第1傾斜面部9、第2傾斜面部39の高さ)を変更した場合に、最大板厚減少率に与える影響を検討した。
なお、斜面部角度および斜面部高さを変更することで、斜面部幅W1、W2(第1傾斜面部9、第2傾斜面部39の幅)も変化する。
また、バーリング加工高さは7mmとし、また、本実施例で使用したブランク(金属板)は板厚t=1.2mm、引張強度が1180MPa級の鋼板とした。
実施の形態1に係るパンチ1(図1図2)のθ1、H1、W1、H1/W1及び最大板厚減少率を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
斜面部高さH1を16.5mmに固定し、斜面部角度θ1を5°~45°の間で変更した結果(No.1~6)と、表1のバーリング加工高さ7mmの従来パンチ21での最大板厚減少率29.2%と比較すると、表3のNo.1~6はいずれも最大板厚減少率が低減している。このことから、斜面部角度θ1は、θ1≦45°となるように設定することで最大板厚減少率の低減効果が得られることが分かる。
【0053】
また、表3のNo.2~5より、特に斜面部角度8°~30°で最大板厚減少が大きく低減したことから、8°≦θ1≦30°に設定することが好ましい。
また、斜面部角度θ1を8°に固定し、斜面部高さH1を変更した結果(No.7~10)より、斜面部高さH1が高くなるにつれて最大板厚減少率が低減したことが分かる。そして、表1のバーリング加工高さ7mmの従来パンチ21での最大板厚減少率29.2%と比較すると、表3のNo.7~10はいずれも最大板厚減少率が低減している。したがって、斜面部高さH1は高い方がよく、H1>5mmとなるように設定するとよいことが分かる
【0054】
実施の形態2に係るパンチ31(図10図11)のθ2、H2、W2、H2/W2及び最大板厚減少率を表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
斜面部高さH2(第2肩R部37と第2傾斜面部39の下端との直立縦壁部5方向の高さ)は14mmに固定し、斜面部角度θ2を変更した結果(No.1~6)より、バーリング加工高さ7mmの表2に示した従来パンチ51での最大板厚減少率27.2%と比較すると、本発明の表4のNo.1~6はいずれも最大板厚減少率が低減した。このことから、斜面部角度θ2はθ2≦45°となるように設定することで最大板厚減少率の低減効果が得られることが分かる。
また、表4のNo.2~4より、特に斜面部角度8°~20°で最大板厚減少が大きく低減したことから、8°≦θ2≦20°に設定することが好ましい。
なお、[発明が解決しようとする課題]において、特許文献3の主斜壁部下部における直壁部同士の稜線と交わる境界線(特許文献3の20、21)が短い場合、ブランクが破断しやすい問題点を指摘した。この点、上記実施例の表4におけるNo.5とNo.6は、(斜面部高さH2/斜面部の幅W2)がそれぞれ0.8と0.5であり、比率が小さいほど最大板厚減少率が大きくなって割れやすくなることを示している。特許文献3の図1図3図7図9から、主斜壁部下部の境界線で囲われる部位の(斜面部高さH2/斜面部の幅W2)に相当する比率は約0.4であり、上記実施例の表4のNo.6よりさらに小さい。従って、上記実施例からも、特許文献3に開示のものは主斜壁部下部の境界線が短いために割れやすいことを裏付けている。
【0057】
斜面部角度θ2を8°に固定し、斜面部高さH2を変更した結果(No.7~9)より、斜面部高さが高くなるにつれて最大板厚減少率が低減した。表2のバーリング加工高さ7mmの従来パンチ51での最大板厚減少率27.2%と比較すると、本発明の表4のNo.7~9はいずれも最大板厚減少率が低減したことから、斜面部高さH2はH2>10mmとなるように設定するとよいことが分かる。
なお、本発明は、上述のバーリング加工以外にも、伸びフランジ加工によるフランジを成形する部品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 パンチ(実施の形態1)
3 天板部
4 第1肩R部
5 直立縦壁部
7 直立縦壁コーナーR部
9 第1傾斜面部
11 上辺R部
13 傾斜辺R部
21 パンチ(実施の形態1の従来例)
23 コーナ第1肩R部
31 パンチ(実施の形態2)
33 傾斜縦壁部
35 傾斜縦壁コーナーR部
37 第2肩R部
39 第2傾斜面部
41 上傾斜辺R部
43 下傾斜辺R部
51 パンチ(実施の形態2の従来例)
53 コーナー第2肩R部
61 バーリング加工品
63 孔
65 縦壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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