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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080017
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】プラズマエッチングの方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230601BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101C
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171258
(22)【出願日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】2117193.9
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】512221197
【氏名又は名称】エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウッド アレックス ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】ケビン リデル
(72)【発明者】
【氏名】フマ アシュラフ
(72)【発明者】
【氏名】ジャネット ホプキンス
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB11
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD38
5F004AA02
5F004AA09
5F004BB13
5F004CA02
5F004CA03
5F004CA06
5F004CA08
5F004DA04
5F004DA11
5F004DA23
5F004DB00
5F004DB12
5F004DB19
5F004EA28
5F004EB04
(57)【要約】
【課題】スカンジウム、イットリウムまたはエルビウムから選択される添加元素を含有する添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法を提供する。
【解決手段】この方法は、プラズマチャンバ12内のプラテン上にワークピース11を配置することを含み、ワークピース11は、その上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜を有する基板と、添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置され、少なくとも1つのトレンチを画定するマスクとを備える。本方法は、第1のエッチングガスを第1の流量でチャンバ12内に導入し、第2のエッチングガスを第2の流量でチャンバ12内に導入し、チャンバ12内にプラズマを確立してトレンチ内に露出した添加物含有窒化アルミニウム膜をエッチングすることを含む。第1のエッチングガスは三塩化ホウ素を含み、第2のエッチングガスは塩素を含み、流量比は1:1以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法であって、前記添加物含有窒化アルミニウム膜は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)またはエルビウム(Er)から選択される添加元素を含む、方法であって、
プラズマチャンバ内のプラテン上にワークピースを配置するステップであって、前記ワークピースは、その上に堆積された前記添加物含有窒化アルミニウム膜を有する基板と、少なくとも1つのトレンチを画定する前記添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置されたマスクとを備える、ステップと、
第1の流量で前記チャンバ内に第1のエッチングガスを導入するステップと、
第2の流量で前記チャンバ内に第2のエッチングガスを導入するステップと、
前記チャンバ内にプラズマを確立して、前記トレンチ内に露出した前記添加物含有窒化アルミニウム膜をエッチングするステップと、
を有し、前記第1のエッチングガスは三塩化ホウ素を含み、前記第2のエッチングガスは塩素を含み、
前記第2の流量に対する前記第1の流量の比は1:1以上である、プラズマエッチング方法。
【請求項2】
第3のエッチングガスを前記チャンバ内に導入することをさらに含む、請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記第3のエッチングガスはアルゴンを含む、請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記第3のエッチングガスは、第3の流量で前記チャンバ内に導入され、前記第1の流量と前記第3の流量との比は2:1よりも大きい、請求項2または請求項3に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
一次エッチング段階および二次エッチング段階を含む、請求項1~4のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記二次エッチング段階は、前記一次エッチング段階の直後に行われる、請求項5に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項7】
前記チャンバ内への前記第1のエッチングガスの流量は、前記一次エッチング段階と前記二次エッチング段階とで実質的に同じである、請求項5又は6に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項8】
前記チャンバ内への前記第2のエッチングガスの流量は、前記一次エッチング段階と前記二次エッチング段階とで実質的に同じである、請求項5~7のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項9】
前記一次エッチング段階中の前記チャンバ内のガス圧力は、前記二次エッチング段階中のガス圧力の約50%である、請求項5~8のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項10】
前記一次エッチング段階中の前記チャンバ内のガス圧は、実質的に2~4mTorrに維持される、請求項5~9のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項11】
前記二次エッチング段階中の前記チャンバ内のガス圧は、実質的に5mTorrに維持される、請求項5~10に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項12】
プラズマ発生装置は、前記一次エッチング段階と比較して前記二次エッチング段階中に電力の約50%で電力が供給される、請求項5~11に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項13】
前記プラテンは、前記二次エッチング段階中に、前記一次エッチング段階中に使用される電力の50%未満で電力が供給される、請求項5~12に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項14】
前記チャンバ内への前記第1のエッチングガスの流量は、実質的に60sccmであり、前記チャンバ内への前記第2のエッチングガスの流量は、実質的に40sccmである、請求項1~13のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項15】
前記第3のエッチングガスは、20~25sccmの範囲内の第3の流量で前記チャンバ内に導入される、請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項16】
前記二次エッチング段階は、前記添加物含有窒化アルミニウム膜が堆積される側とは反対側の基板の側に向かって前記添加物含有窒化アルミニウム膜を通るトレンチをエッチングする際に使用される、請求項5~15に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項17】
前記二次エッチング段階は、前記トレンチが前記基板から延在する前に開始される、請求項16に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項18】
前記ワークピースは、前記添加物含有窒化アルミニウム膜が堆積される側の反対側の前記基板の側に配置された金属膜を含む、請求項16に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項19】
前記金属膜はモリブデンを含む、請求項17に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項20】
前記プラズマは、誘導結合プラズマ発生装置を用いて前記チャンバ内に確立される、請求項1~19のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【請求項21】
前記マスクはフォトレジストを含む、請求項1~20のいずれかに記載のプラズマエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマエッチングプロセスに関し、特に、添加元素がスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)またはエルビウム(Er)から選択される元素を含む添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム(AlN)および窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)圧電デバイスは、例えば、バルク音響波(BAW)デバイスおよび圧電マイクロマシン超音波トランスデューサ(PMUT)において広く使用されている。携帯電話は、典型的には、いくつかのAlNおよびAlScN BAWデバイスを組み込み、より高い動作周波数の生成は、より薄いBAWデバイスの使用を必要とする。より薄いデバイスのための圧電性能を改善することは、公差がより厳しくなり、回路基板上へのこれらのデバイスの統合がより複雑になるにつれて、主要な課題である。Scの添加は、BAWデバイスの圧電特性を改善することが知られているが、AlN格子へのScの組み込みは、堆積された圧電膜における欠陥性の増加をもたらす可能性があり、Scの不揮発性は、プラズマエッチングプロセス中に除去される必要がある残留物を生成する可能性がある。
【0003】
ドープされたAlN中のScの割合が増加するにつれて、エッチング速度は、典型的には、標準的な塩素(Cl2)/アルゴン(Ar)ベースの化学物質を使用するときに減少する。この減少は、マスク(フォトレジストまたはSiO2マスクなど)に対してより低いAlScN選択性をもたらし、これは、限界寸法(CD)を減少させ、その結果、AlScNトレンチ内のより浅い側壁角度をもたらす。側壁プロファイルを制御する一般的な方法は、プリエッチングマスクの傾斜を調整すること、プラテンバイアス、エッチングガス流またはプロセス圧力を変更することを含む。これらの方法は、通常、より低いSc含有量のAlScNに対して有効であるが、より高いScパーセンテージでは、エッチングはますます物理的になり、これらの方法の全体的な有効性を低下させる。同様の効果がAlYNおよびAlErN膜でも観察される。
【0004】
AlScNエッチング速度の減少はまた、金属下層に対する選択性を低下させ、BAWフィルタなどのいくつかのデバイスの性能を損なう可能性がある下層損失の増加をもたらす。BAWデバイスに対するより低い電気的接触は、典型的にはモリブデン(Mo)、タングステン(W)または白金(Pt)であり、過剰な量の金属が除去されると、AlScNのエッチング速度の低下により、接触の電気抵抗が増加し、デバイス性能の劣化をもたらす。プラテンバイアスの増加またはCl流量の増加などのAlScNエッチング速度を増加させるための典型的な変化は、最終的に側壁角度または下層選択性にほとんどまたは全く影響を及ぼさない可能性があり、場合によっては問題を悪化させることさえある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE Electron Device Letters, 42(9), September 2021, Shao et.al., “High Figure-of-Merit Lamb Wave Resonators Based on Al0.75Sc0.3N Thin Film”. 1378-1381.
【非特許文献2】IEEE Transaction on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, 66(1), January 2019, Lozzi et al., “Al0.83Sc0.17N Contour Mode Resonators With Electromechanical Coupling in Excess of 4.5%”, 146-153
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の問題の少なくともいくつかに対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)またはエルビウム(Er)から選択される添加元素を含有する添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法が提供される。方法は、
プラズマチャンバ内のプラテン上にワークピースを配置するステップであって、ワークピースは、その上に堆積された添加物含有窒化アルミニウム膜を有する基板と、添加物含有窒化アルミニウム膜上に配置され、少なくとも1つのトレンチを画定するマスクとを備える、ステップと、
第1の流量でチャンバ内に第1のエッチングガスを導入するステップと、
第2の流量でチャンバ内に第2のエッチングガスを導入するステップと、
チャンバ内にプラズマを確立して、トレンチ内に露出した添加物含有窒化アルミニウム膜をエッチングするステップと、
を含み、第1のエッチングガスは三塩化ホウ素を含み、第2のエッチングガスは塩素を含む。
【0008】
第2の流量に対する第1の流量の比は、1:1以上である。
【0009】
本発明は、添加物含有窒化アルミニウム膜をエッチングする際に三塩化ホウ素(BCl)と塩素(Cl)との流量比≧1:1を用い、より急峻な側壁プロファイルを生成することを可能にする。また、BClとClの流量比を1:1以上とすることで、下部電極に対する添加物含有窒化アルミニウム膜の選択性を高めることができ、これらの下地電極膜の1つをエッチングする際の下地損失を低減することができる。
【0010】
一つの実施形態では、方法は、アルゴンなどの第3のエッチングガスをチャンバに導入することをさらに含む。第3のエッチングガスは第3の流量でチャンバ内に導入され、第1の流量と第3の流量との比は2:1より大きい。
【0011】
一つの実施形態では、プラズマエッチングの方法は、一次エッチング段階および二次エッチング段階を含む。二次エッチング段階は、一次エッチング段階の直後に行うことができる。チャンバ内への第1のエッチングガスの第1の流量は、一次エッチング段階と二次エッチング段階とで実質的に同じであり、チャンバ内への第2のエッチングガスの第2の流量は、一次エッチング段階と二次エッチング段階とで実質的に同じである。
【0012】
一つの実施形態では、第1の流量は実質的に60sccmを含み、第2の流量は実質的に40sccmを含む。第3のエッチングガスは、20~25sccmの範囲内の第3の流量でチャンバ内に導入される。
【0013】
一つの実施形態では、一次エッチング段階中のチャンバ内のガス圧力は、二次エッチング段階中のガス圧力の約50%を含む。チャンバ内のガス圧力は、一次エッチング段階中は実質的に2~4mTorrに維持され、二次エッチング段階中は実質的に5mTorrに維持される。
【0014】
一つの実施形態では、プラズマは、誘導結合プラズマ生成デバイスを使用してチャンバ内で確立される。プラズマ発生装置は、一次エッチング段階と比較して二次エッチング段階中に電力の約50%で電力を供給される。
【0015】
一つの実施形態では、プラテンは、一次エッチング段階中に使用される電力の50%未満である電力で二次エッチング段階中に電力供給される。二次エッチング段階は、添加物含有窒化アルミニウム膜が堆積される側とは反対の基板の側に向かって添加物含有窒化アルミニウム膜を通るトレンチをエッチングするときに使用され、一つの実施形態では、二次エッチング段階は、トレンチが基板から延在する前に開始される。
【0016】
一つの実施形態では、ワークピースは、添加物含有窒化アルミニウム膜が堆積される側とは反対の基板の側に配置されたモリブデンなどの金属膜を含む。
【0017】
一つの実施形態では、マスクはフォトレジストマスクを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】添加物含有窒化アルミニウム膜をエッチングするためのプラズマエッチング装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態による添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングする方法に関連するステップの概要を示すフローチャートである。
図3】BCl対Clの流量比が増加するにつれて、5μmのCDトレンチにおけるAlScN対フォトレジスト選択性の増加を示すグラフである。
図4】BCl対Clの流量比が増加するにつれて、5μmトレンチの上部および底部CDの減少を示すグラフである。
図5】BCl対Clの流量比が増加するにつれて、5μmおよび100μmのCDトレンチにおける側壁角の増加を示すグラフである。
図6】シリコン基板上の厚さ500nmのAl0.7Sc0.3N膜上のリフローされたフォトレジストの走査型電子顕微鏡画像であり、(a)は、BClが存在しない5μmトレンチの側壁角を示し、(b)は、BClの使用を示す。
図7】Si基板上の厚さ500nmのAl0.7Sc0.3N膜上のリフローされたフォトレジストマスクの走査型電子顕微鏡画像であり、(a)は、BClを用いない100μmのCDトレンチにおける側壁角を示し、(b)は、BClを用いた場合の側壁角を示し、100μmのCDトレンチは、5μmのトレンチよりも浅いプリエッチングプロファイルを有する。
図8】Al0.7Sc0.3N対Mo(下部電極)選択性の増加を、BCl対Cl比の流量比が増加するにつれて示すグラフであり、Moエッチング速度は、Siウェハ上のフォトレジストパターン化ブランケットMoについて計算される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面の図1を参照すると、被加工物11をプラズマエッチングするための装置10の概略図が提供され、被加工物11のプラズマエッチングがその中で実行されるプロセスチャンバ12を備える。
【0020】
装置10は、チャンバ12内に配置されたアルミニウムなどの金属で形成されてもよいが、セラミックブレーク14などの従来の手段によってチャンバ壁12aから電気的に絶縁されたプラテンアセンブリ13をさらに備える。プラテンアセンブリ13は、ワークピース11を受容するための支持表面13bを有する本体13aを備え、無線周波数(RF)電圧発生器を使用して電気的にバイアスされる。プラテンアセンブリ13への負のバイアス電圧の提供は、例えば、プラズマからのワークピース11の表面の正に帯電したイオン衝撃を制御するのに役立つことができる。
【0021】
処理チャンバ12は、例えばアルミニウムなどの金属で形成することができ、典型的には電気的に接地されたチャンバ壁12aを備える。チャンバ12はさらに、第1、第2、および第3のガス入口15a、15b、15cを備え、それを介して、それぞれ、第1、第2、および第3のエッチングガスの供給源(図示せず)が、チャンバ12の中へガスを導入するために流体的に連結することができる。チャンバ12は、ガスおよびエッチングプロセスのあらゆる副生成物がチャンバ12から出ることができる出口16をさらに備える。
【0022】
一実施形態では、プラズマは、RF電圧発生器17からのRF電圧を、チャンバ12の周囲に配置され、チャンバ壁12aに形成されたそれぞれの誘電体窓セクション12bに隣接して配置された1つまたは複数のアンテナ18に印加することによって生成される。
【0023】
1つ以上のアンテナ18は、例えば、実質的に平面の螺旋構成、螺旋コイル構成、またはトロイダル構成を備えてもよく、標準的実践と同様に、発生器17からのRF信号のアンテナ18とのインピーダンス整合は、アンテナ18からの電力の反射を最小限にするように行われる。アンテナ18は、チャンバ12の周囲に配置され、電力は、誘電体窓セクション12bを通してチャンバ12内に誘導結合される。
【0024】
プラズマは、被加工物11がプラズマに曝されるように、被加工物11の上方に配置されたチャンバ12の領域19において生成される。ガスは、それぞれの入口15a、15b、15cに結合されたそれぞれの流量調整器20a、20b、20cを介してチャンバ12内に導入され、チャンバ12の入口15a、15b、15cおよび出口16は、エッチングガスがチャンバ12を通過し、領域19を通過し、ワークピース11を越える必要があるように、プラズマ領域19の両側に配置される。
【0025】
図面の図2を参照すると、本発明の一実施形態による添加物含有窒化アルミニウム膜をプラズマエッチングするための方法100に関連するステップを概説するフローチャートが示されている。本方法は、AlScN膜を参照して実証されるが、当業者は、本方法がAlYN膜およびAlErN膜に等しく適用可能であることを認識するであろう。
【0026】
この方法は、ステップ101において、プラズマチャンバ12内のプラテン13上にワークピース11を配置することを含む。ワークピース11は、シリコンウエハ基板などの基板11aを含み、その上に、例えばパルスDCスパッタリング技術を使用して圧電AlScN膜11bが堆積される。ある実施形態では、膜はAl0.7Sc0.3Nを含み、すなわち、アルミニウムの70%の成分およびスカンジウムの30%の成分を含む膜である。膜組成の決定は、典型的には、X線のエネルギー分散分析(EDAX)の使用によって達成される。ワークピース11は、リフロー前に、4~4.4μmのフォトレジストを用いて膜11a上に5μm~100μmのトレンチ11cが形成されたマスク11bをさらに備える。
【0027】
ワークピース11がチャンバ12内のプラテン13上に位置決めされた状態で、第1、第2、および第3のエッチングガスは、ステップ102において、それぞれの流量調整器20a~cを使用してそれぞれの入口15a~cを介してチャンバ12内に導入され、チャンバ12内の圧力は、圧力調整器(図示せず)によって約2~5mTorrまたは実質的に3mTorrに維持される。チャンバ12がエッチングガスで適切に調整されると、ステップ103において、RF電位が発生器17を介してアンテナ18に印加され、電力をエッチングガスに誘導結合し、したがってプラズマを生成し、Al0.7Sc0.3N膜のエッチングを開始する。ステップ104において、典型的には13.56MHzで動作する電圧発生器21の使用を通して、バイアス電圧もプラテンアセンブリ13に印加され、ステップ105においてAlScN膜11bのエッチングを提供する。
【0028】
アンテナ18は約1000Wの電力で給電され、プラテン13は約1025Wの電力で給電される。第1のエッチングガスは三塩化ホウ素(BCl)を含み、流量調整器20aは、実質的に60sccmの流量でチャンバ12内にBClを供給するように構成される。第2のエッチングガスは塩素(Cl)を含み、このClガスは、流量調整器20bによって決定されるように、実質的に40sccmの速度でチャンバ12内に送達される。第3のエッチングガスは、アルゴン(Ar)を含み、このArガスは、流量調整器20cによって決定されるように、実質的に25sccmの速度でチャンバ12内に送達される。なお、チャンバ12内へのBClガスとClガスとの流量比は約3:2、すなわち1:1よりも大きく、チャンバ12内へのBClガスとArガスとの流量比は約3:1、すなわち2:1よりも大きい。
【0029】
BCl:Cl流量比の増加は、プラテン13とチャンバ12との間のピーク-ピーク電圧を増加させることが見出され、これはAlScNのエッチング速度を増加させることが知られている。この増加を相殺し、BClの化学成分およびスパッタ成分のより正確な値を得るために、発生器21を使用してプラテンバイアスを調整して、ピーク-ピーク電圧がすべてのデータ点にわたってほぼ整合することを確実にした。しかしながら、バイアスがこの効果を補償するように調整される場合、AlScNエッチング速度の増加が依然として観察され、BClの増加したスパッタ成分が原因であることを示唆している。
【0030】
ClベースのAlScNエッチング中にBClを添加すると、ホウ素-窒素ベースのポリマーの形成が促進されると考えられる。これらのポリマーは、マスク11b(フォトレジスト、SiO等)上で凝縮し、マスクエッチング速度を低下させ(図3参照)、一方、追加のホウ素の存在は、エッチングのスパッタ成分を増加させ、AlScNエッチング速度の増加をもたらし得る。加えて、BClは、Clと比較して、反応性Cl-イオンおよび中性物質にあまり容易に分別されないと考えられ、それによって、BCl:Cl比が増加するにつれて、エッチングの化学成分を低減する。典型的には、AlScN膜11aおよびフォトレジストの両方のエッチング速度は、Clの流れが減少するにつれて同様のパーセンテージだけ減少し、不変の選択性をもたらす。しかしながら、Clの存在がBCl:Cl流量比の増加から減少するにつれて、AlScNエッチング速度の低下は、BClのスパッタ成分の増加によって相殺され、マスク11bに対する選択性の増加をもたらす。
【0031】
B-NベースのポリマーとBClの異なる分別特性との複合効果は、マスク11bに対するAlScN選択性の増加をもたらす。減少したフォトレジストエッチング速度および増加したスパッタ成分はまた、示されたAl0.7Sc0.3Nデータよりも低いおよび高いスカンジウムパーセンテージにも適用可能であり、これは、スカンジウムパーセンテージの範囲において、より急峻な側壁トレンチプロファイルおよび増加した選択性が得られ得ることを意味する。同様の結果がAl1-xNおよびAl1-xErN膜についても予想される。塩化エルビウムおよび塩化イットリウムの沸点は約1500°Cであるが、塩化スカンジウムは約960°Cである。エッチングフロントは、スパッタ/物理的除去を必要とする残留物を含む。したがって、Al1-xNおよびAl1-xErN膜はまた、非常に高温のCl化合物も有するAlScNと同様の結果を達成するために、同様の物理的/化学的プロセス条件を必要とするであろうことが予想される。
【0032】
図4を参照すると、5μmのCDマスク11bに対する選択性の増加は、マスクの横方向エッチング速度を減少させ、それによって限界寸法(CD)の損失を減少させることが示されている。CD損失の低減により、図5および図6(a)、(b)、図7(a)、(b)に示すように、より急峻な側壁プロファイルが可能になる。100μmのCDトレンチは、5μmのトレンチのものよりも浅いプリエッチングマスクプロファイルを有し、Cl流量と比較して増加したBCl流量が、プロファイルの範囲および特徴のCDに影響を及ぼし得ることを実証する。
【0033】
ワークピース11の下層に対する選択性を制御する一般的な方法は、「ソフトランディング(soft-landing)」ステップの使用によるものであり、このステップは、典型的には、下層エッチング速度およびその後の損失を減少させるために、より低いプラテンバイアスを利用する。BClはAlScNエッチングの効率を高めるが、ホウ素のスパッタ成分の添加の結果として、その使用が下層のエッチング速度も低下させ、これらの膜に対する選択性を高めると仮定することは直感に反する。
【0034】
したがって、さらなる実施形態では、Siウエハ基板を用いて同様の被加工物を形成したが、この実施形態では、Al0.7Sc0.3N圧電膜11aを、同じマスク11bを含むスパッタMo膜11a’に置き換えて、Mo膜11a’のエッチング速度に対するBCl:Cl流量比の影響を実証した。次に、Mo膜付き基板11a’を処理室内に配置し、Mo膜をエッチングした。比較のために、Moエッチングのプロセス条件を圧電膜エッチングのプロセス条件と共に以下に示す。
【表1】
【0035】
上記の表から、プラズマ発生装置17は、二次(ソフトランディング)エッチングと比較して一次(主)エッチング中に約2倍の電力で電力供給されることが明らかである。同様に、プラテン13は、一次エッチングと比較して二次エッチング中に電力の約50%で給電される。しかしながら、二次エッチング中のチャンバ内の圧力は、一次エッチングと比較してほぼ2倍である。
【0036】
BCl:Cl流量比≧1:1は、Mo膜11a’のエッチング速度を低下させ、同様にMo膜11a’に対するAlScN選択比を高めるのに最適であることが分かった。Moなどの塩素系化学物質中で容易にエッチングされる、基板11の圧電膜11aの反対側に形成される電極、すなわち下層については、Clの存在を減少させると下層エッチング速度が低下する。AlScN:PR選択性と同様に、Cl流量が減少するにつれて、AlScNエッチング速度も減少し、下層選択性に対する最小限の変化をもたらす。しかしながら、AlScN:Mo選択性は、フォトレジストについて前述したのと同じメカニズムによって増加させることができる。増加したBCl:Cl流量比はClの存在を減少させ、Moエッチング速度を減少させるが、増加したスパッタ成分はAlScNエッチング速度を増加させ、電極に対する増加した選択性をもたらす。最終的に、これは、図8に示されるように、AlScNをこの金属膜までエッチングするときの電極の損失を低減する。1.5および2.125のBCl:Cl流量比試験(右2つのデータ点)においてプラテン出力を低下させて、結果に対するピーク-ピーク電圧の増加の影響を最小限に抑えた。
【0037】
片面にAlScN膜11aを有し、下面にMo膜11a’を有する被加工物11をエッチングするプロセスは、AlScN膜11aおよびSi基板11の大部分を貫通するトレンチをエッチングする一次エッチングステージ100と、一次エッチングステージ100の直後に行われる二次エッチングステージ200とを含む。これは、トレンチがSi基板から延在する前に開始される。二次エッチング段階200は、ステップ201においてチャンバ12内の圧力を増大させることと、ステップ202においてアンテナに供給される電力を低減することと、ステップ203においてプラテンへの電気バイアスを低減することとを含む。(表1に示されるような)二次エッチング段階のための特定のプロセス条件が達成されると、次いで、Mo膜11a’は、ステップ204においてエッチングされ、ワークピース11を通してトレンチを効果的に延在させる。
【0038】
BCl:Cl流量比が≧1:1である結果として、フォトレジストおよび下部電極金属に対する改善された選択性を有する高いAlScN(およびAlYNおよびAlErN)エッチング速度(100μmトレンチに対して>170nm/分、5μmトレンチに対して>250nm/分)が達成され得ることが実証されている。≧1:1の流量比は、すべてのAl:Sc比に適用可能であるが、エッチング速度が減少し、ドープされたスカンジウムの割合が高いAlNのエッチングが困難になるため、この方法はますます有益になる。
【符号の説明】
【0039】
10 装置、11 被加工物(ワークピース)、12 チャンバ、13 プラテンアセンブリ、15a、15b、15c ガス入口、16 ガス出口、17 RF電圧発生器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8