(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080031
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】廃偏光板の回収システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20230601BHJP
B01D 11/02 20060101ALI20230601BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20230601BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20230601BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
B29B17/00
B01D11/02 A ZAB
B01D61/02 500
B01D61/14 500
B01D61/58
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022187017
(22)【出願日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/283,962
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】111141882
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】黄 國棟
(72)【発明者】
【氏名】劉 怡君
(72)【発明者】
【氏名】彭 美枝
【テーマコード(参考)】
4D006
4D056
4F401
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006KA01
4D006KA71
4D006KB18
4D006KB30
4D006PA02
4D006PB13
4D006PB70
4D006PC01
4D056AB01
4D056AC06
4D056BA03
4D056CA13
4D056CA17
4D056CA18
4D056CA37
4D056CA40
4F401AA15
4F401AB10
4F401AC20
4F401AD07
4F401BA06
4F401CA14
4F401CA25
4F401CA52
4F401CB32
4F401EA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廃偏光板の回収システム及び方法を提供する。
【解決手段】廃偏光板回収システムは、第1及び第2抽出ユニット、第1及び第2分離ユニット、及び精製濃縮システムを含む。第1抽出ユニットはヨウ素を含有する廃偏光板の破片を第1分離ユニットでヨウ素含有抽出物および廃偏光板のプラスチック破片に分離し、第2抽出ユニットは廃偏光板のプラスチック破片を再抽出し、第2分離ユニットで再抽出液及び廃偏光板のプラスチック破片に分離する。精製濃縮システム120の濾過ユニットは、前記ヨウ素含有抽出物からゼリー状物質を濾過して取り除き、ヨウ素含有濾液を取得し、膜分離ユニットは、少なくとも1つの逆浸透膜を含みヨウ素含有濾液を受け取って、ヨウ素逆浸透液と浸透溶剤に分離し、蒸留濃縮ユニットは、前記ヨウ素逆浸透液を蒸留し、ヨウ素濃縮液及び蒸留液を取得する。第2抽出ユニット中の再抽出溶媒は、前記浸透溶剤および前記蒸留液を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素を含有する廃偏光板の破片を受け取って、抽出溶媒を使用して前記ヨウ素を含有する廃偏光板の破片を抽出し、抽出混合物を取得するための第1抽出ユニットと、
前記第1抽出ユニットから前記抽出混合物を受け取って分離を行い、ヨウ素含有抽出物および廃偏光板のプラスチック破片を取得するための第1分離ユニットと、
前記第1分離ユニットから前記廃偏光板のプラスチック破片を受け取って再抽出を行い、再抽出混合物を取得するための第2抽出ユニットと、
前記第2抽出ユニットから前記再抽出混合物を受け取って分離を行うため第2分離ユニットと、
直列接続された複数の濾過ユニット、膜分離ユニット、および蒸留濃縮ユニットを含む精製濃縮システムと、
を含み、前記濾過ユニットが、前記ヨウ素含有抽出物を受け取って、ゼリー状物質を濾過して取り除き、ヨウ素含有濾液を取得するために使用され、
前記膜分離ユニットが、少なくとも1つの逆浸透膜を含み、前記ヨウ素含有濾液を受け取って、逆浸透してヨウ素逆浸透液と浸透溶剤に分離するために使用され、
前記蒸留濃縮ユニットが、前記ヨウ素逆浸透液を受け取って蒸留し、ヨウ素濃縮液および蒸留液を取得するために使用され、
前記第2抽出ユニット中の再抽出溶媒が、前記浸透溶剤および前記蒸留液を含み、
前記再抽出混合物が分離した再抽出液が、回収されて前記抽出溶媒を作成するために使用される廃偏光板回収システム。
【請求項2】
前記濾過ユニットが、限外濾過(UF)膜、ナノ濾過(NF)膜、または前記UF膜と前記NF膜を直列接続したものを含む請求項1に記載の廃偏光板回収システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの逆浸透膜の総溶解固形物(TDS)濾過率が、90%より大きい請求項1に記載の廃偏光板回収システム。
【請求項4】
前記抽出溶媒および前記再抽出溶媒が、それぞれ独立して、アルカリ類および溶剤を含み、前記アルカリ類が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアルカロイドを含み、前記溶剤が、エタノールを含む請求項1に記載の廃偏光板回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物回収システムに関するものであり、特に、廃偏光板の回収システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板(polarizer)は、液晶ディスプレイ(liquid crystal display, LCD)の主原料の1つであり、その構造は、偏光層、上下粘着層、上下保護/離型層、および反射膜を含むことができる。上述した偏光層は、基本的に、PVA(ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol))フィルムを染色して延伸することによって作られ、この層は、偏光板の主要部分であり、偏光板の偏光性能と透過率を決定すると同時に、偏光板の色調と光学耐久性の腫瘍部分にも影響を与える。他の上下保護/離型層および反射膜プラスチックは、洗浄後、回収して加工に利用することができる。上述した偏光層の染色材料は、通常、ヨウ素であるが、ヨウ素は、僅かな熱で昇華するため、廃偏光板の焼却処理時に紫煙が発生して、環境保護問題が生じることから、上記の方法で廃偏光板を処理することが既に禁じられている。したがって、いかにして廃偏光板を処理するかが、各界の研究の重点となっている。また、偏光板は、成分が複雑であるため、分類が難しく、且つふわふわした廃偏光板は、全体的に空間を占有するため、回収するが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、偏光板内のヨウ素を除去できるだけでなく、ヨウ素およびプラスチックを回収して再利用することもできる廃偏光板回収システムを提供する。
【0004】
本発明は、また、抽出後のヨウ素イオン溶液に対して精製濃縮および溶剤回収を行って再利用することにより、回収コストを下げることのできる廃偏光板回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の廃偏光板回収システムは、第1抽出ユニット、第1分離ユニット、第2抽出ユニット、第2分離ユニット、および精製濃縮システムを含む。第1抽出ユニットは、ヨウ素を含有する廃偏光板の破片を受け取って、抽出溶媒を使用してヨウ素を含有する廃偏光板の破片を抽出し、抽出混合物を取得するために使用される。第1分離ユニットは、前記第1抽出ユニットから前記抽出混合物を受け取って分離を行い、ヨウ素含有抽出物および廃偏光板のプラスチック破片を取得するために使用される。前記第2抽出ユニットは、第1分離ユニットから前記廃偏光板のプラスチック破片を受け取って再抽出を行い、再抽出混合物を取得するために使用される。前記第2分離ユニットは、前記第2抽出ユニットから再抽出混合物を受け取って分離を行い、再抽出液および廃偏光板のプラスチック破片を取得するために使用される。前記精製濃縮システムは、直列接続された複数の濾過ユニット、膜分離ユニット、および蒸留濃縮ユニットを含む。前記濾過ユニットは、前記ヨウ素含有抽出物を受け取って、ゼリー状物質を濾過して取り除き、ヨウ素含有濾液を取得するために使用される。前記膜分離ユニットは、少なくとも1つの逆浸透膜を含み、前記ヨウ素含有濾液を受け取って、逆浸透してヨウ素逆浸透液と浸透溶剤に分離するために使用される。前記蒸留濃縮ユニットは、前記ヨウ素逆浸透液を受け取って蒸留し、ヨウ素濃縮液および蒸留液を取得するために使用される。前記第2抽出ユニット中の再抽出溶媒は、前記浸透溶剤および前記蒸留液を含む。
【0006】
本発明の廃偏光板回収方法は、ヨウ素を含有する廃偏光板のプラスチック破片と抽出溶媒を混合して撹拌し、抽出混合物を取得してから、前記抽出混合物を分離して、ヨウ素含有抽出物および廃偏光板のプラスチック破片に分離することを含む。そして、前記ヨウ素含有抽出物を濾過してゼリー状物質を取り除き、ヨウ素含有濾液を取得した後、少なくとも1つの逆浸透膜を含む膜分離ユニットを利用して前記ヨウ素含有濾液を処理することにより、ヨウ素逆浸透液および浸透溶剤に分離する。その後、前記膜分離ユニットから得られた前記ヨウ素逆浸透液を蒸留して、ヨウ素濃縮液および蒸留液を取得する。前記浸透溶剤および前記蒸留液を回収して再抽出溶媒または前記抽出溶媒を作成した後、前記廃偏光板のプラスチック破片を再抽出して前記再抽出混合物を再分離することにより、再抽出液および廃偏光板のプラスチック破片に分離する。得られた再抽出液は、回収して前記抽出溶媒を作成するために使用される。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明の廃偏光板の回収は、第1抽出ユニットおよび第1分離ユニットがヨウ素含有抽出物を抽出するだけでなく、精製濃縮システムをさらに設置して、抽出後のヨウ素含有抽出物に対して濾過、膜分離等の段階を行い、ヨウ素含有抽出物のヨウ素濃度を少しずつ増加させるため、それにより、回収効率を上げ、回収コストを下げることができる。また、第2抽出ユニットおよび第2分離ユニットは、第1分離ユニットが分離した廃偏光板のプラスチック破片を再抽出することにより、微量のヨウ素も全て回収することができるため、廃偏光板のプラスチック破片は、ヨウ素をほとんど含んでおらず、後続の回収に有利である。また、再抽出液は、微量のヨウ素しか含んでいないため、次の抽出溶媒の原料として直接回収することができ、且つ上述した膜分離および蒸留段階の浸透溶剤および蒸留液は、いずれも回収して再利用することができるため、材料のコストを節約して、二次汚染を防ぎ、省エネと二酸化炭素削減の目標を達成することができる。
【0008】
本発明の上記の特徴をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれ、且つその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る廃偏光板回収システムのブロック図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る廃偏光板回収フローのステップ図である。
【
図3】校正液を使用して製造したKI濃度対導電率の曲線図である。
【
図4】ヨウ素を除去する前後のプラスチック溶液に対してUV吸収測定を行った吸収スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態中の添付の図面は、本発明の実施形態を更に完全に説明するためのものであるが、本発明は、多くの異なる形式を使用して実施することができ、記載された実施形態に限定されるものではない。また、文中に使用する「含む」、「含有する」、「有する」等の用語は、いずれも開放性の用語である。つまり、含むが、これに限定されないことを指す。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る廃偏光板回収システムのブロック図である。
【0013】
図1を参照すると、本実施形態の廃偏光板回収システム100は、基本的に、第1抽出ユニット110、第1分離ユニット112、第2抽出ユニット114、第2分離ユニット116、および精製濃縮システム120を含む。第1抽出ユニット110は、ヨウ素を含有する廃偏光板の破片WPおよび抽出溶媒を受け取るために使用され、前記抽出溶媒は、アルカリ類および溶剤を含むことができ、且つ抽出溶媒は、まず、溶媒作成ユニット(図示せず)で作成してから第1抽出ユニット110に入れてもよく、あるいは、それぞれ比率に基づいて準備した抽出溶媒原料を、それぞれ第1抽出ユニット110の中に追加して作成してもよい。第1抽出ユニット110において、上述した抽出溶媒およびヨウ素を含有する廃偏光板の破片WPを使用して抽出を行い、抽出混合物を取得する。前記第1抽出ユニット110は、撹拌素子および加熱素子を含むことができる。前記抽出溶媒中のアルカリ類は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアルカロイドから選択することができ、抽出溶媒中の溶剤は、アルコール類を含むことができる。1つの実施形態において、前記溶剤は、例えば、エタノール溶液であるが、本発明はこれに限定されない。上述した抽出溶媒は、既存の抽出溶媒を採用してもよい。1つの実施形態において、抽出溶媒が水酸化カリウムを含む場合、化学反応によってヨウ化カリウム(KI)溶液が得られる。前記第1分離ユニット112は、第1抽出ユニット110と精製濃縮システム120の間に設置され、第1抽出ユニット110から抽出混合物を受け取って分離を行い、ヨウ素含有抽出物および廃偏光板のプラスチック破片を取得するために使用される。ヨウ素含有抽出物は、精製濃縮システム120に搬送され、廃偏光板のプラスチック破片は、第2抽出ユニット114に搬送される。前記第1分離ユニット112は、フィルタまたは遠心分離設備を含むことができるが、本発明はこれに限定されない。第1分離ユニット112は、その他の固体液体分離設備を採用してもよい。上述した第2抽出ユニット114は、前記第1分離ユニット112に設置された後、廃偏光板のプラスチック破片を再抽出して、再抽出混合物を取得するために使用される。また、1つの実施形態において、第2抽出ユニット114が使用する再抽出溶媒は、上述した抽出溶媒と類似する濃度のエタノール溶液であってもよい。別の実施形態において、前記再抽出溶媒は、アルカリ類および溶剤を含むことができ、前記アルカリ類は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアルカロイドであり、前記溶剤は、エタノールを含むことができる。
【0014】
精製濃縮システム120と第1分離ユニット112を直接連結させることにより、抽出したヨウ素含有抽出物を直接精製濃縮システム120に入れることができるが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、第1分離ユニット112と精製濃縮システム120の間にヨウ素含有抽出物を一時的に貯蔵するための一時貯蔵タンク(図示せず)を設置してもよい。前記精製濃縮システム120は、直列接続された濾過ユニット122、膜分離ユニット124、および蒸留濃縮ユニット126を含む。
図1には1つの濾過ユニット122、1つの膜分離ユニット124、および1つの蒸留濃縮ユニット126しか図示していないが、これらのユニットの数量は、必要に応じて増やすことができ、例えば、濾過ユニット122の前に、先に粗濾過を行ってもよく、且つ濾過ユニット122は、異なる濾膜、例えば、限外濾過(ultra-filtration, UF)膜、ナノ濾過(nano-filtration, NF)膜、または前記UF膜と前記NF膜を直列接続したものを使用することができる。限外濾過(UF)膜を例に挙げると、孔径が0.02μm以下の濾膜を採用することができる。前記濾過ユニット122は、上述したヨウ素含有抽出物を受け取って、ゼリー状物質を濾過して取り除き、ヨウ素含有濾液を取得するために使用される。濾過した濾液は、膜分離ユニット124に搬送され、ゼリー状物質は、PVAおよび接着剤(例えば、ハイドロゲルまたはUV接着剤等)を含むことができ、一緒に排出された後、PVAおよび固体廃棄物を再び回収することができる。
【0015】
引き続き
図1を参照すると、前記膜分離ユニット124は、少なくとも1つの逆浸透膜を含み、ヨウ素含有濾液を受け取って、逆浸透してヨウ素逆浸透液と浸透溶剤に分離するために使用される。前記膜分離ユニット124中の逆浸透膜の数量は、必要に応じて増やすことができ、例えば、2種類の逆浸透膜を使用して、濾液を濃縮してもよい。1つの実施形態において、逆浸透膜の総溶解固形物(total dissolved solid, TDS)濾過率は、90%より大きくてもよい。つまり、膜分離ユニット124を介してヨウ素含有濾液に含まれる大部分の溶剤を浸透して分離させることができるとともに、パイプを介して第1抽出ユニット110または第2抽出ユニット114に伝送し、抽出溶媒または再抽出溶媒を作成することができる。また、蒸留濃縮ユニット126が膜分離ユニット124からヨウ素逆浸透液を受け取った後、蒸留を行ってヨウ素濃縮液および蒸留液を取得する。蒸留濃縮ユニット126は、例えば、常温蒸留濃縮ユニットまたは減圧蒸留濃縮ユニットである。蒸留濃縮ユニット126が蒸留を行う前に、膜分離ユニット124によってヨウ素含有濾液中の大部分の浸透溶剤が既に除去されているため、蒸留濃縮過程に必要なエネルギー消費が大幅に減少し、回収コストを大幅に減らすことができることから、回収量の大きな工業処理に適用することができる。
【0016】
蒸留濃縮ユニット126が収集した蒸留液は、パイプを介して回収タンク(図示せず)に伝送され、抽出溶媒または再抽出溶媒を作成するために使用されるため、材料のコストを節約して、二次汚染を防ぎ、省エネと二酸化炭素削減の目標を達成することができる。上述したシステム設計に基づくと、溶剤の回収率は、90%以上を達成することができる。詳しく説明すると、膜分離ユニット124から排出された浸透溶剤および蒸留濃縮ユニット126から排出された蒸留液を第2抽出ユニット114の搬送経路内に回収し、回収タンク(図示せず)をさらに設置してもよく、且つ第2抽出ユニット114に必要な再抽出溶媒の濃度に基づいて先に濃度調整を行ってから、回収タンクから第2抽出ユニット114に送り込んでもよい。また、第2抽出ユニット114は、主に、濾過ユニット122によって分離された廃偏光版のプラスチック破片を再抽出するために使用され、これらの廃偏光版のプラスチック破片には、抽出されなかった微量のヨウ素が含まれている可能性があるため、第2抽出ユニット114から受け取った再抽出混合物を第2分離ユニット116に入れて、廃偏光版のプラスチック破片および溶剤と微量のヨウ素を含有する再抽出液に分離することができる。溶剤と微量のヨウ素を含有する再抽出液は、回収して抽出溶媒を作成し、再度第1抽出ユニット110に入れるために使用することができる。上述した廃偏光版のプラスチック破片は、TAC(トリアセチルセルロース)、PMMA(ポリメチルメタクリレート樹脂)、COP(シクロオレフィンポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の一般的な偏光板に存在するプラスチックを含むことができ、ヨウ素含有量は、<0.1%w/wであるため、直接焼却または分離した後に再利用することができる。前記第2分離ユニット116は、フィルタまたは遠心分離設備を含むことができる。第1抽出ユニット110中の抽出溶媒のアルカリ類濃度とヨウ素当量は、互いに関連するため、アルカリ類濃度を予め設定した範囲内に維持できるようにするために、第2分離ユニット116から排出された再抽出液を第1抽出ユニット110の搬送経路内に入れて、一時貯蔵タンク118をさらに設置してもよく、それにより、水の補充またはpH値の調整をすぐに行うことができる。
【0017】
図2は、発明の第2実施形態に係る廃偏光板回収フローのステップ図であり、且つ第1実施形態の回収システムを採用することができるため、以下、同じユニットについては、
図1の構成要素符号を使用して表示する。
【0018】
ステップ200において、ヨウ素を含有する廃偏光板の破片WPと抽出溶媒を混合して撹拌し、抽出混合物を取得する。抽出溶媒は、アルカリ類および溶剤を含むことができ、前記アルカリ類は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアルカロイドであり、前記溶剤は、アルコール類であってもよく、且つ環境に優しい観点から考慮すると、溶剤は、エタノール溶液を採用することができる。
【0019】
ステップ202において、上述した抽出混合物を分離して、ヨウ素含有抽出物および廃偏光板のプラスチック破片に分離する。混合物を分離する方法は、例えば、濾過または遠心分離である。
【0020】
ステップ204において、上述した廃偏光板のプラスチック破片を再抽出する。使用する再抽出溶媒は、抽出溶媒に近い濃度のアルコール類水溶液であってもよい。また、ステップ204で得られた再抽出混合物は、さらに再抽出液に分離する場合、波線方向に示すように、回収してステップ200の抽出溶媒を作成するために使用してもよい。例を挙げて説明すると、上述した再抽出混合物は、濾過または遠心分離の方法により、廃偏光板のプラスチック破片および溶剤と微量のヨウ素を含有する再抽出液を分離することができ、溶剤と微量のヨウ素を含有する再抽出液は、ステップ200の抽出溶媒の原料とすることができる。上述した廃偏光板のプラスチック破片は、TAC、PMMA、COP、PET等の一般的な偏光板に存在するプラスチックを含むことができる。
【0021】
ステップ206において、上述したヨウ素含有抽出物を濾過して、ゼリー状物質を取り除き、ヨウ素含有濾液を取得する。ヨウ素含有抽出物を濾過する方法は、例えば、限外濾過(UF)膜、ナノ濾過(NF)膜、または前記UF膜と前記NF膜を直列接続したものを使用する方法である。ヨウ素を含有する前記廃偏光板のプラスチック破片WPが分子量の多い接着剤または分子を含む場合は、UF膜を使用して濾過することができ、ヨウ素を含有する前記廃偏光板のプラスチック破片WPが分子量の少ない接着剤または分子を含む場合は、UF膜とNF膜を直列接続してもよく、あるいは、NF膜を使用して濾過してもよい。
【0022】
ステップ208において、膜分離ユニット124を利用して上述したヨウ素含有濾液を処理し、ヨウ素逆浸透液と浸透溶剤に分離する。膜分離ユニット124は、1つまたは複数の逆浸透膜を含み、且つ前記逆浸透膜の濾過率は、例えば、90%より大きい。膜分離ユニット124を利用して濾液を処理する過程において分離された浸透溶剤は、破線方向に示すように、回収してステップ204において廃偏光板のプラスチック破片を再抽出した再抽出溶媒を作成してもよい。別の実施形態において、上述した浸透溶剤は、回収してステップ200で使用した抽出溶媒を作成してもよい。
【0023】
ステップ210において、膜分離ユニット124から得られたヨウ素逆浸透液を蒸留して、ヨウ素濃縮液および蒸留液を取得する。前記ステップに基づいて回収して得られた固形分が約3~10%w/wのヨウ素濃縮液は、偏光板設備に既にあるヨウ素液回収システムに取り込んでもよく、あるいは精製して工業レベルの高純度ヨウ化カリウム固体にし、偏光板の原料として再利用してもよい。本実施形態において、ステップ210で蒸留した蒸留液は、破線方向に示すように、さらに回収してステップ204において廃偏光板のプラスチック破片を再抽出した再抽出溶媒を作成してもよい。別の実施形態において、上述した蒸留液は、回収してステップ200で使用した抽出溶媒を作成してもよい。
【0024】
以下、実験を列挙して本発明の効果を検証するが、本発明は以下の内容に限定されない。
【0025】
<分析>
【0026】
1、溶液中のヨウ化カリウム(KI)の濃度
試験機器:導電率計、型番HTC-202U
試験環境:室温
校正液:KI濃度0.01%w/w~8%w/w、pH=~9.5
【0027】
図3は、校正液を使用して製造したKI濃度対導電率の曲線図である。したがって、導電率計を利用することによって、溶液中のKI濃度をオンライン検出することができ、オフライン(off line)で溶液を抽出してさらに検出を行う必要がないため、工業生産に使用することができる。
【0028】
2、脱ヨウ素率定量測定法
【0029】
紫外光-可視光分光器を使用して、それぞれヨウ素を含有しないプラスチック溶液(脱ヨウ素率を99%に設定する)および脱ヨウ素をしていないプラスチック溶液(脱ヨウ素率を0%に設定する)に対してUV吸収測定を行い、225nmの吸収値でヨウ素の含有量を標定した。結果は、
図4に示すように、脱ヨウ素率が0%に対応するUV吸収度は、2.5であり、脱ヨウ素率が99%に対応するUV吸収度は、0.6であった。
【0030】
したがって、
図4の結果に基づき、以下の線形回帰公式が得られる。
【0031】
(数1)
脱ヨウ素率=-0.5211x+1.3026
【0032】
上記の式中、xは、UV吸収度を表す。
【0033】
<実例1>
【0034】
図1の廃偏光板回収システムを1つ準備した。第1抽出ユニット110は、100Lのダブルジャケットの撹拌槽であり、2%w/wの水酸化カリウム(KOH)水溶液を53.52kg追加し、50℃まで加熱した。その後、6.66kgのヨウ素を含有する廃偏光板を2~5mmの破片に粉砕して第1抽出ユニット110に搬送し、pHが9~10に達して変化しなくなるまで、つまり、反応終点になるまで抽出を行った。続いて、抽出後の混合物を(第1分離ユニット112として用いる)遠心機を利用して、廃偏光板のプラスチック破片およびヨウ素含有抽出物に分離した。
【0035】
その後、ヨウ素含有抽出物を、まず、濾過ユニット112中の一次フィルタ(1μm、PALL、圧力1kg/cm2)に通してから、下記の表1に記載したUF膜を使用して濾過し、ゼリー状物質を除去して、ヨウ素含有濾液を取得した。続いて、ヨウ素含有濾液を膜分離ユニット124に入れ、表1に記載した2段の逆浸透(reverse osmosis, RO)膜(RO1およびRO2)を使用してKIを濃縮した。1段目のRO1は、KI濃度を0.5%w/w~0.7%w/wに上げ、2段目のRO2は、KI濃度を2.0%w/w~3.0%w/wに上げた。ここでのKIの濃度は、上述した分析方法を利用して得ることができる。その後、逆浸透したKI溶液を再び蒸留濃縮ユニット126(30Lの回転濃縮機、40℃~50℃、真空度10mmHg)に入れて、固形分が6%w/wのKI水溶液になるまで蒸留した。膜分離ユニット124および蒸留濃縮ユニット126が除去したエタノール溶液約50kgは、回収タンクに保存され、溶剤比率を調整することによって再抽出溶媒になるため、第2抽出ユニット114に回収して使用することができる。
【0036】
遠心機が分離した廃偏光板のプラスチック破片については、第2抽出ユニット114(100Lの撹拌槽)に入れて、50kgの再抽出溶媒を追加し、室温で1時間撹拌した。再抽出した後の再抽出液は、第2分離ユニット116で洗浄後のプラスチック(KI<0.1%w/w)および溶剤と微量のヨウ素を含有する液体に分離した。洗浄後のプラスチックの脱ヨウ素率は、上述した脱ヨウ素率定量測定法を利用して推算することができる。UV吸収度は、0.70であり、脱ヨウ素率は、約93.8%であった。
【0037】
<実例2>
【0038】
実例1と同じ回収システムを採用するが、回収する廃偏光板は、単純な偏光子(粘着層、保護層等がない)を代わりに使用し、UF膜も異なる。詳しくは、下記の表1を参照されたい。
【0039】
実例1と同じ回収方法により、洗浄後のプラスチックに対してUV照射を行った。得られたUV吸収は、0.73であり、推算により得られた脱ヨウ素率は、約92.1%であった。
【0040】
【0041】
表1からわかるように、本発明の廃偏光板回収システムは、廃偏光板に含まれるヨウ素を効率的に除去することができる。
【0042】
以上のように、本発明の廃偏光板回収システムは、濾過ユニットおよび膜分離ユニットを設置した精製濃縮システムを有し、先に抽出後のヨウ素含有抽出物に対して濾過および濃縮を行うことができるため、濃縮プロセスのエネルギー消費を減らし、それにより、回収コストを下げることができる。また、浸透溶剤、蒸留液、および再抽出液を組み合わせた回収システムは、材料のコストをさらに節約して、二次汚染を防ぎ、省エネと二酸化炭素削減の目標を達成することができる。
【0043】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の廃偏光板回収システムは、液晶ディスプレイ(LCD)等の装置の中の偏光板(polarizer)の廃棄物処理産業に応用することができる。
【符号の説明】
【0045】
100 廃偏光板回収システム
110 第1抽出ユニット
112 第1分離ユニット
114 第2抽出ユニット
116 第2分離ユニット
118 一時貯蔵タンク
120 精製濃縮ユニット
122 濾過ユニット
124 膜分離ユニット
126 蒸留濃縮ユニット
200、202、204、206、208、210 ステップ
WP ヨウ素を含有する廃偏光板の破片
【外国語明細書】