IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ヴァレオジャパンの特許一覧

<>
  • 特開-インバータユニット 図1
  • 特開-インバータユニット 図2
  • 特開-インバータユニット 図3
  • 特開-インバータユニット 図4
  • 特開-インバータユニット 図5
  • 特開-インバータユニット 図6
  • 特開-インバータユニット 図7
  • 特開-インバータユニット 図8
  • 特開-インバータユニット 図9
  • 特開-インバータユニット 図10
  • 特開-インバータユニット 図11
  • 特開-インバータユニット 図12
  • 特開-インバータユニット 図13
  • 特開-インバータユニット 図14
  • 特開-インバータユニット 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080035
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】インバータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230601BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
F04B39/00 106
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187912
(22)【出願日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】202141054911
(32)【優先日】2021-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァリヨン マチュー
(72)【発明者】
【氏名】リボ エルベ
(72)【発明者】
【氏名】ベル オーギュスタン
(72)【発明者】
【氏名】マセサン プラビーン
(72)【発明者】
【氏名】ラジャ バスカラン
(72)【発明者】
【氏名】ガネサン プラカシュ
【テーマコード(参考)】
3H003
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AC03
3H003CF01
3H003CF04
5H770AA21
5H770BA05
5H770DA03
5H770PA11
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA28
5H770QA31
5H770QA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】沿面距離を増加させるための配置構成を備える車両用空調ユニットの圧縮機用インバータユニットを提供する。
【解決手段】車両空調システムの電動圧縮機1000において、インバータユニット100は、インバータ110、インバータハウジング120及び絶縁部材を有する。インバータ110は、電動機200を駆動するものであり、高電圧(HV)直流(DC)を、電動機200を駆動する三相交流(AC)に変換する少なくとも1つのパワーモジュールを含む。インバータハウジング120はインバータ110を受容し、パワーモジュール112は、インバータハウジング120の端壁120aに、ボルトによって取り付けられる。各ボルトに対応する絶縁部材は、対応するボルトの頭部とパワーモジュールとの間に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータユニット(100)であって、
電動機(200)を駆動するためのインバータ(110)であって、高電圧(HV)直流(DC)を、前記電動電動機(200)を駆動する三相交流(AC)に変換するための少なくとも1つのパワーモジュール(112)を備えた、インバータ(110)と、
前記インバータ(110)を受容するためのインバータハウジング(120)と、を備え、
前記パワーモジュール(112)が、前記インバータハウジング(120)の端壁(120a)に、ボルト(114)により取り付けられるように適合され、前記ボルト(114)の頭部(114a)と前記パワーモジュール(112)との間に絶縁部材(130、118b)が配置されていることを特徴とするインバータユニット(100)。
【請求項2】
前記端壁(120a)は、孔(122a)が形成された前記インバータハウジング(120)の閉端を画定して、前記対応するボルト(114)とのねじ係合を構成する、請求項1に記載のインバータユニット(100)。
【請求項3】
前記絶縁部材(130)は、ベース部分(130a)を備え、前記パワーモジュール(112)は、前記ボルト(114)によって前記ベース部分(130a)及び前記インバータハウジング(120)の前記端壁(120a)に確実に取り付けられ、前記ボルト(114)のねじ軸部(114b)が、前記ベース部分(130a)に形成された孔(132a)および前記パワーモジュール(112)に設けられた挿通部(112c)を軸方向に貫通して前記端壁(120a)に係合し、その一方で、前記ボルト(114)の前記頭部(114a)が前記ベース部分(130a)の上に留まり、前記ベース部分(130a)が、前記ボルト(114)の前記頭部(114a)と前記パワーモジュール(112)の間に配置されてそれらを分離するようになっている、請求項1又は2に記載のインバータユニット(100)。
【請求項4】
前記絶縁部材(130)の前記ベース部分(130a)は、前記ボルト(114)前記頭部(114a)の半径寸法よりも大きい半径寸法を有して、間に環状空間を画定する、請求項3に記載のインバータユニット(100)。
【請求項5】
前記孔(132a)は、前記ベース部分(130a)に対して中心に配置されている、請求項3に記載のインバータユニット(100)。
【請求項6】
前記絶縁部材(130)はさらに、前記ベース部分(130a)から軸方向に、且つ前記パワーモジュールから離れる方向に延びる側壁(130b)を備えている、請求項3に記載のインバータユニット(100)。
【請求項7】
前記絶縁部材(130)の前記側壁(130b)は、前記ボルト(114)の前記頭部(114a)の高さの少なくとも2倍の高さを有する、請求項6に記載のインバータユニット(100)。
【請求項8】
前記側壁(130b)は、前記ベース部分(130a)の周縁部に沿って均一な高さである、請求項6に記載のインバータユニット(100)。
【請求項9】
前記絶縁部材(130)の前記側壁(130b)の少なくとも一部は、中心軸「C」に対して傾斜している、請求項6に記載のインバータユニット(100)。
【請求項10】
前記側壁(130b)の内面および外面の少なくとも一方は凹凸面である、請求項6に記載のインバータユニット(100)。
【請求項11】
前記絶縁部材(130)は、断面が円形の中空構成である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインバータユニット(100)。
【請求項12】
前記絶縁部材(130)のうち少なくとも1つは、前記対応するボルト(114)とオーバーモールドされて一体に形成されている、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインバータユニット(100)。
【請求項13】
前記インバータ(100)がさらに、プリント回路基板(PCB)(116)と、前記パワーモジュール(112)と取り外し可能なカバー(120c)との間に配置されたセパレータ(118)とを備えている、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインバータユニット(100)。
【請求項14】
前記プリント基板(PCB)(116)及び前記セパレータ(118)は、それぞれ前記絶縁部材(130)を貫通させるための対応する第1の開口部(116b)及び第2の開口部(118a)を備えている、請求項13に記載のインバータユニット(100)。
【請求項15】
前記セパレータ(118)は、前記セパレータ(118)と一体に形成された前記絶縁部材(118b)を備えている、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインバータユニット(100)。
【請求項16】
前記ボルト(114)は、ドライバー、アレンキーからなる群から選択される展開工具を使用して展開されるように適合されている、請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインバータユニット(100)。
【請求項17】
電動圧縮機(1000)であって、
流体を圧縮するように適合された圧縮ユニット(300)と、
前記圧縮ユニット(300)を駆動する電動機(200)と、
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のインバータユニット(100)であって、
前記電動機(200)を駆動するように適合されたインバータユニット(100)と、
を備えた電動圧縮機(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータユニットに関するものであり、より具体的には、本発明は、車両用空調ユニットの圧縮機用インバータユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の空調システム用の電動圧縮機は、冷媒を圧縮するための圧縮ユニットと、圧縮ユニットを駆動する電動機と、インバータユニットとを含む。この電動圧縮機はさらに、圧縮ユニットと電動機を収容する、圧縮機ハウジングとも呼ばれるメインハウジングと、インバータユニットを収容する別個のインバータハウジングとを含んでいる。この圧縮機ハウジングはアルミニウムなどの金属製であり、一般に接地されている。
【0003】
インバータハウジングもアルミニウムなどの金属製であり、端壁と、端壁の外周から延びてプリント回路基板(PCB)収容空間を画定する周壁と、取り外し可能なカバーによって閉鎖可能なインバータハウジングの開端とを含んでいる。
インバータハウジングは圧縮機ハウジングに接続され、直接または圧縮機ハウジングを介して接地されている。インバータユニットは、以下PCBと呼ぶプリント回路基板で構成されたインバータと、インバータハウジングの内部に受容されたパワーモジュールとを含む。PCBとパワーモジュールは、メインハウジングに受容された電動機と機能的に結合して、電動機を制御式に駆動する。具体的には、PCB収容スペースは、インバータハウジングがメインハウジングに組み付けられたときにメインハウジングの電動機受容部に隣接して配置される。パワーモジュールは、その動作時に熱を発生する。この発熱は、パワーモジュールの重要な素子の溶断、パワーモジュールの重要な素子の機械的強度の低下によるパワーモジュールの破損又は故障を高温下で引き起こす可能性がある。このようなパワーモジュールの発熱に起因する問題を防止するために、パワーモジュールの破損や故障を防止し、パワーモジュールの効率的な性能を確保するために、パワーモジュールから熱を放散することが求められている。パワーモジュールは、インバータハウジングの端壁に圧接されて、メインハウジングの電動機収容空間に受容された冷媒が端壁に接触することにより、端壁から熱を奪ってパワーモジュールからの放熱が行われる。PCBは、電動機に制御式入力を与えることによって、インバータ動作と電動機制御を様々な態様で行うための複数の電子部品を含む。インバータハウジングのカバーも金属材料製である。
【0004】
添付図面の図1を参照すると、インバータハウジングの内部に保持され、インバータハウジングの端壁4に取り付けられたパワーモジュール2が図示されている。パワーモジュール2は、パワーモジュール2のケーシングにモールドされた複数のスイッチング素子を含む。スイッチング素子は、DC高圧電力、低圧信号およびAC出力がPCB内の対応する部分に供給され得るように、パワーモジュールのケーシングから突出してPCBと接続されるリードフレーム3を含む。したがって、リードフレーム3の一部は高電圧部分であり得る。パワーモジュール2は、金属製ボルト6と金属製ワッシャ8によって、インバータハウジングの端壁4に取り付けられると共に圧接されている。ボルト6は、ねじ軸部6aおよびボルト頭部6bを含むねじ付きボルトである。ボルト頭部6bは、ワッシャ8とともに、ねじ軸部6aが端壁4に係合することにより、パワーモジュール2をインバータハウジングの端壁4に圧接する。より具体的には、ワッシャ8は、ねじ軸部6aを内部に貫通させる孔8aを含み、一方、ボルト頭部6bは、ワッシャ8上に載っている。パワーモジュール2のケーシングは、ねじ軸部6aを内部に貫通させる貫通孔2bを含む。ボルト6のねじ軸部6aは、ワッシャ8及びパワーモジュール2にそれぞれ形成された孔8a及び2bを貫通して、端壁4に形成された非貫通孔に係合する。ねじ軸部6aが端壁4の非貫通孔に係合すると、ワッシャ8及びパワーモジュール2は、ボルト頭部6bと端壁4との間に配置される。その結果、パワーモジュール2は、ボルト6を締結することにより、インバータハウジングの端壁4に固定される。このような構成により、パワーモジュール2は、放熱性の向上のために、端壁4と十分に接触して維持される。特に、このような構成では、パワーモジュール2と端壁4との間の空隙に起因する絶縁の問題に対処することを意図して、パワーモジュール2は端壁4に押し付けられる。
【0005】
ボルト頭部6bとパワーモジュール2との間にワッシャ8が配置され、ねじ軸部6aが端壁4に係合した状態で、パワーモジュール2は、ボルト頭部6bによる引掻き/損傷を受けることなくボルト頭部6bによって端壁4に確実に圧接される。一般に、ワッシャ8は、端壁4へのボルト6のねじ込み中に、パワーモジュール2をボルト頭部6bによる損傷から保護するために使用される。さらに、例示したパワーモジュール2には、ケーシングに配設されて一部のリードフレームとスイッチング素子との導電接続を中継するダミーフレームが含まれる。ダミーフレームの端部の一部は、ケーシングの一側面から露出したままである。ダミーフレームの露出部2aは、いずれの電気部品にも接続されず、高電圧部分としても機能する。高電圧部分2a,3と他の導電素子/接地素子との沿面距離が不足すると、短絡の原因となる。沿面距離とは、電流が導電素子/接地素子に到達するまでに辿る最短経路の長さのことである。パワーモジュール2を端壁4に取り付ける従来の取り付け方法の場合、インバータハウジングの端壁4が接地され、ボルト6が端壁4とねじ係合し、金属製ワッシャ8は金属製ボルト6のボルト頭部6bと接触している。したがって、ワッシャ8は、ボルト6を介してグランドへの導電接続もされる。このようなシナリオでは、ワッシャ8は、ワッシャ8と高電圧部分2a,3との間の沿面距離が十分でないため、ワッシャ8と高電圧部分2a,3との間で短絡を起こす可能性のある導電素子として作用する。図1は、高電圧素子2a,3とワッシャ8との間の沿面距離「d」を描写している。沿面距離は、ワッシャ8の外周部と、最も近い高電圧部分2a,3とから測定される。沿面距離「d」の要件は、空間距離の要件よりもはるかに短い。パワーモジュール2の高電圧素子2a,3とワッシャ8との間の沿面距離「d」の不足による短絡の問題は、高電圧素子2a,3がパワーモジュール2の少なくとも片側から露出した状態である場合に悪化する。ワッシャ8がボルト頭部6bとパワーモジュール2との間に配置されていない場合、パワーモジュール2の高電圧(HV)素子2aとボルト頭部6bとの間で短絡が発生するおそれがある。
【0006】
従って、従来の配置では、パワーモジュール2の高電圧(HV)部分とワッシャ8および/またはボルト頭部6bとの間に十分な沿面距離「d」を設けることができず、それにより、問題が生じる。より具体的には、従来の構成の場合には、パワーモジュール2の高電圧(HV)素子2aとワッシャ8および/またはボルト頭部6bとの間の沿面距離「d」は、パワーモジュール2の効率的で安全な動作のための標準的な安全要件を下回っている。
【0007】
従って、パワーモジュールの高電圧素子と、パワーモジュールをインバータハウジングの端壁に取り付けるためのワッシャおよび/またはボルト頭部との間の沿面距離を増加させるための配置構成を備えて構成されるインバータユニットが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主要な目的は、従来のインバータユニットが抱えていた、インバータユニットの重要な素子間の不十分な沿面距離による問題を解消する配置構成で構成されたインバータユニットを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、パワーモジュールがインバータハウジングの端壁の上に取り付けられ、その端壁に圧接されるインバータユニットを提供して、パワーモジュールからの、端壁に接触しているメインハウジングの冷媒による効率的な放熱を達成することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、組み立てるのが便利なインバータユニットを提供することである。
【0011】
本明細書において、いくつかの素子またはパラメータは、例えば、第1の素子および第2の素子等、指数化されることがある。この場合、特に断らない限り、この指数化は、類似しているが同一ではない素子を区別して名付けることのみを意図している。これらの用語は、本発明に背くことなく転換され得るため、このような指数化から優先順位の想念を推測するべきではない。さらに、この指数化は、本発明の素子の取り付けや使用における如何なる順序をも意味するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態に係るインバータユニットを開示する。前記インバータユニットは、インバータと、インバータハウジングと、絶縁部材とを含む。前記インバータは電動機を駆動し、高電圧(HV)直流(DC)を、前記電動機を駆動する三相交流(AC)に変換する少なくとも1つのパワーモジュールを含む。前記インバータハウジングは前記インバータを受容する。前記パワーモジュールは、ボルトによって前記インバータハウジングの端壁に取り付けられている。各ボルトに対応する絶縁部材は、前記ボルトの頭部と前記パワーモジュールの間に配置される。
【0013】
一般に、前記端壁は、前記対応するボルトとのねじ係合を構成する孔が形成されたインバータハウジングの閉端を画定する。
【0014】
好ましくは、前記絶縁部材はベース部分を含む。前記パワーモジュールは、前記ボルトによって前記ベース部分と前記インバータハウジングの前記端壁に確実に取り付けられる。前記ボルトのねじ軸部は、前記ベース部分に形成された孔と、前記パワーモジュールに設けられた挿通部とを軸方向に貫通して前記端壁と係合する。前記ボルトの頭部は、前記ベース部分が前記ボルトの頭部と前記パワーモジュールの間に配置されて、前記ボルトの頭部と前記パワーモジュールを分離するように、前記ベース部分の上方に留まる。
【0015】
具体的には、前記絶縁部材の前記ベース部分は、前記ボルトの前記頭部の半径寸法より大きい半径寸法を有して、間に環状空間を画定する。
【0016】
一般に、前記孔は、前記ベース部分に対して中央に配置されている。
【0017】
さらに、前記絶縁部材は、前記ベース部分から軸方向に、且つ前記パワーモジュールから離れる方向に延びて前記ボルトの頭部と前記パワーモジュールの高電圧素子との間の沿面距離を増加させる側壁を含む。
【0018】
さらに、前記絶縁部材の側壁は、前記ボルトの前記頭部の高さの少なくとも2倍の高さを有する。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、前記絶縁部材の少なくとも1つは、前記対応するボルトとオーバーモールドされて一体に形成される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、側壁は、前記ベース部分の周縁部に沿って均一な高さである。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、前記絶縁部材の側壁の少なくとも一部は、中心軸「C」に対して傾斜している。
【0022】
さらに、側壁の内面及び外面のうち少なくとも一方は凹凸面である。
【0023】
一般に、前記絶縁部材は、断面が円形の中空構成である。
【0024】
さらに、前記インバータユニットの前記インバータは、プリント回路基板(PCB)と、前記パワーモジュールと取り外し可能なカバーとの間に配置されたセパレータを含む。
【0025】
一般に、前記PCBには複数の電子部品が搭載され、前記セパレータはその電子部品を分離する。
【0026】
また、パワーモジュールは、前記PCBから突出するピンを介して前記PCBに接続される。
【0027】
一般に、前記PCB及び前記セパレータは、前記絶縁部材を内部に貫通させるための対応する第1の開口部及び第2の開口部を含む。
【0028】
本発明の別の実施形態によれば、前記セパレータは、前記セパレータと一体に形成された前記絶縁部材を含む。
【0029】
さらに、前記ボルトは、ドライバー、アレンキーを含む群から選択された展開ツールを使用して展開される。
【0030】
また、本発明の一実施形態による電動圧縮機も開示される。前記電動圧縮機は、圧縮ユニットと、電動機と、インバータユニットとを含む。前記圧縮ユニットは流体を圧縮する。前記電動機は圧縮ユニットを駆動する。上記で開示したインバータユニットは前記電動機を駆動する。
【0031】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の発明の説明から推測され得る。本発明と、その付随する利点のより完全な理解は、添付の図と関連して考慮した場合に、以下の詳細な説明を参照することによって、本発明がより良く理解されるようになるにつれて容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】パワーモジュールをインバータユニットのインバータハウジングの端壁に取り付けるためのボルト及びワッシャの従来の取付配置構成の概略図であり、また、ワッシャと、パワーモジュールの高電圧素子との間の沿面距離を示す拡大図である。
図2】本発明の空調システム用の電動圧縮機の概略図である。
図3】インバータユニットのパワーモジュール、PCB、セパレータ、絶縁部材及びボルトアセンブリを示す、図2の電動圧縮機のインバータユニットの分解図である。
図4】ボルトの1つを貫通する断面平面に沿ったインバータユニットの断面図であり、図3のパワーモジュール、絶縁部材及びボルトアセンブリの断面図である。
図5図3のパワーモジュールの、そこから突出するピンを伴う等角図である。
図6a図3の絶縁部材の等角図である。
図6b図3の絶縁部材の断面図である。
図7】絶縁部材が、対応するボルトとオーバーモールドされて一体に形成されている、本発明の別の実施形態による絶縁部材の等角図である。
図8図3の絶縁部材で構成された、本発明のインバータユニットの取付配置構成の概略図であり、ボルトの頭部とパワーモジュールの高電圧素子との間の沿面距離を示す拡大図である。
図9図3のパワーモジュール、絶縁部材およびボルトアセンブリとインバータハウジングの端壁との組み立てを描写する分解図であり、端壁上に形成された平坦なプラットフォームを描写する拡大図である。
図10】両ボルトを貫通する断面平面に沿った、図3のインバータユニットを描写する断面図である。
図11図3のインバータユニット用の、以下PCBと呼ぶプリント回路基板の等角図である。
図12図3のインバータユニット用のセパレータの等角図である。
図13】パワーモジュールから突出するするピンがPCBと係合している、図3のパワーモジュール、絶縁部材、およびボルトアセンブリの拡大図である。
図14】その側壁が凸凹の内面を有する絶縁部材の断面図である。
図15】セパレータが絶縁部材と一体に形成されており、沿面距離「P」も描写されている、図10のインバータユニットの他の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図では、本発明が、実施できるほど十分に詳細に開示されており、前記図は、必要に応じて本発明をより良く定義するのに役立つことに留意されたい。しかし、本発明は、本明細書に開示された実施形態に限定されるべきではない。
【0034】
本発明は、車両空調システム用電動圧縮機のインバータユニットを例として説明される。しかし、本発明は、車両および非車両アプリケーションに使用されるあらゆる電子システムにも適用可能である。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態による車両空調システムの電動圧縮機1000の概略図である。電動圧縮機1000は、インバータユニット100と、電動機200と、電動機200によって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮ユニット300とを含む。電動圧縮機1000はさらに、圧縮機ハウジング210とも呼ばれるメインハウジングと、別体のインバータハウジング120とを含む。メインハウジングまたは圧縮機ハウジング210は、電動機200と圧縮ユニット300とを収容する。インバータハウジング120はインバータ110を収容する。圧縮機ハウジング210は、アルミニウム等の金属製であり、一般に取付部(図示せず)を介して車両に接地される。
【0036】
インバータハウジング120は、端壁120aと、端壁120aの周縁部から延びてPCB収容空間とインバータハウジング120の開端とを画定する周壁120bとを含む。インバータハウジング120は、メインハウジング210に接続されるとともに、圧縮機ハウジング210を介して接地されている。インバータハウジング120の開端は、着脱可能なカバー120cによって閉塞可能である。インバータ110は、メインハウジング210に受容された電動機200と機能的に結合されて、電動機200を制御式に駆動する。具体的には、インバータハウジング120がメインハウジング210に組み付けられ、インバータ110が端壁120aを貫通して提供される電気接続インターフェース220によって電動機200に機能的に接続されたときに、PCB収容空間が、メインハウジング210の電動機受容部に隣接して配置される。PCB収容空間とメインハウジング210の電動機受容部とを互いに隣接させて配置するこのような構成により、冷却流体、特に、電動機受容部に受容された冷媒も、端壁120aを冷却するが、それは、インバータハウジング120の端壁120aが、冷媒によって冷却されるメインハウジング210と接触しているためである。
【0037】
添付図面の図3は、一実施形態のインバータユニット100の分解図を示す。インバータユニット100は、インバータハウジング120と、インバータハウジング120に収容されたインバータ110とで構成される。インバータ110は、少なくとも1つのパワーモジュール112と、上に配置した複数の電子部品を含むPCB116とを含む。さらに、インバータユニット100は、高電圧(HV)コネクタ230及び低電圧(LV)コネクタ240を含み、両コネクタは、インバータハウジング120の端壁120aに設けられ、車両システムからの高電圧電源及び制御信号を受信する。インバータ110は、電動機200を駆動するものであり、高電圧(HV)直流(DC)を、電動機200を駆動する三相交流電流(AC)に変換するパワーモジュール112を含む。
【0038】
図4は、パワーモジュール112と絶縁部材130とボルト114の組立状態を描写した、ボルト114のうち1つを貫通する切断面に沿った断面図である。図4に描写するように、パワーモジュール112は、インバータハウジング120の端壁120aに取り付けられている。インバータハウジング120の端壁120aには、ボルト114の対応するねじ部114bを受容し、それとのねじ係合を構成するための孔122aが形成されている。一実施形態では、孔122aは、ねじが形成されていない非貫通孔であり、ボルト114は、ボルトが展開されるにつれ孔112aにねじ山を形成するセルフタッピングボルトである。あるいは、孔112aはねじ孔であり、ボルト114はねじ孔112aにねじ込まれて、パワーモジュール112をインバータハウジング120の端壁120aに圧接させることでパワーモジュール112と端壁120aとの間の面接触を向上させて、パワーモジュール112からの放熱を促進する。ボルト114は、ドライバー、アレンキー、またはボルト頭部周囲の限られたスペースで作動することができる他の装置からなる群から選択される展開工具を使用して展開される。さらに、本発明において、絶縁部材130は、パワーモジュール112とボルト114のボルト頭部114aとの間に配置されている。
【0039】
図5は、一実施形態のパワーモジュール112の等角図である。パワーモジュール112は、直方体の形状を有するケーシング112dを含む。ケーシング112dは、樹脂などの非導電性材料製である。複数のスイッチング素子は、パワーモジュール112のケーシング112dの内部に、覆われて配置される。具体的には、スイッチング素子は樹脂製のケーシング112dにモールドされている。スイッチング素子を導通接続する複数のリードフレームまたはピン112bが、その矩形のケーシング112dの対向する両長辺からケーシング112dの外に延びている。リードフレームまたはピン112bは、銅などの導電性材料製である。図5に描写された一実施形態によれば、6本のリードフレーム112bがケーシング112dの第1の長辺から延び、20本のリードフレームまたはピン112bがケーシング112dの第2の長辺から延び、第2の長辺は第1の長辺に対向している。リードフレームまたはピン112bは、PCB116に接続され得るように直角に曲げられている。車載バッテリからの高電圧電力は、リードフレーム又はピン112bの一部を介してスイッチ素子に供給される。さらなる制御信号が、リードフレームまたはピン112bの他方を介して、スイッチング素子に供給され、従って、パワーモジュール112は、直流(DC)を交流(AC)に変換することができる。バッテリから高電圧の電力が供給されるリードフレーム又はピン112bは、高電圧部分であり得る。
【0040】
再び図5を参照すると、パワーモジュール112のケーシング112dはさらに、その対向する両短辺に形成された、パワーモジュール112を端壁120aに取り付けるためのボルト114を貫通させるための挿通部としての切り欠き112cを含む。一般に、切り欠き112cは、ケーシング112dの短辺の中央に配置される。別の例においては、挿通部は、パワーモジュールを貫通する孔によって形成することも可能である。さらに、本実施例では、リードフレームまたはピン112bの一部とスイッチング素子との間の導電接続を中継するために、ケーシング112dにダミーフレームが設けられている。ダミーフレームの端部の一部は、パワーモジュール112のケーシング112dの短辺から露出したままであり、高電圧部分112aとして機能する。ダミーフレームの露出部分は、電気部品のいずれにも接続されていないが、それらも高電圧部分112aであり得る。また、リードフレームやピン112bも高電圧素子と見なされ得る。
【0041】
図6a及び図6bは、一実施形態の絶縁部材130を描写している。絶縁部材130は、均一な厚さ「t1」を有するベース130aを含む。ベース130aの中心に孔132aが形成されている。好ましくは、絶縁部材130は、1つの閉端と反対側の開端とを有する円筒形素子である。具体的には、絶縁部材130は、ベース130aと、ベース130aから延びる側壁130bとを含むカップの形態である。側壁130bは厚さ「t2」を有する。絶縁部材130は、樹脂などの非導電性材料製である。
【0042】
本発明の別の実施形態によれば、図7に示されるように、絶縁部材130の少なくとも1つは、対応するボルト114とオーバーモールドされて一体に形成されている。このような構成において、ボルト頭部114aは、絶縁部材130のベース130aの上方に留まり、それに対し、ボルト114のねじ軸部114bは絶縁部材130のベース130aから垂下している。このような構成で、絶縁部材130は、ボルト114が展開されると、ボルト114とともに回転して、端壁120aに形成された孔122aに係合する。
【0043】
上述したように、パワーモジュール112は、ボルト114によってインバータハウジング120の端壁120aに取り付けられている。さらに、絶縁部材130は、パワーモジュール112を端壁120aに取り付けてパワーモジュール112を端壁120aに圧接するために、ボルト114が端壁120aに係合する際にパワーモジュール112とボルト114のボルト頭部114aとの間に配置される。特に、パワーモジュール112は、ベース130aがパワーモジュール112の一側部にあり、インバータハウジング120の端壁120aがパワーモジュール112の他方の側部にあるように、ボルト114によって端壁120aに確実に取り付けられる。具体的には、ボルト114のねじ軸部114bが、ベース130aの孔132aと、パワーモジュール112に設けられた切り欠き112cとを軸方向に貫通して端壁120aに係合するが、ボルト114の頭部114aはベース130aの上方に留まっている。ベース130aがボルト114の頭部114aとパワーモジュール112との間に配置されているため、ボルト114の頭部114aとパワーモジュール112とは互いに接触しない。この例では、2本のボルト114は、パワーモジュール112の対向する両面をインバータハウジング120の端壁120aに取り付けている。しかし、各ボルト114のボルト頭部114aとパワーモジュール112との間に、対応する絶縁部材130が配置されている限り、本発明は、如何なる特定のボルトの個数や配置にも限定されない。
【0044】
背景技術で述べたように、ボルト114は、接地されている端壁120aに係合されている。仮に、ボルト頭部114aとパワーモジュール112との間に配置される部品が従来構成のように金属製ワッシャ8であった場合、考慮すべき沿面距離は、パワーモジュールの高電圧部分と、ボルト114の頭部114aに接触する金属製ワッシャの外周部との間の距離である。但し、絶縁素子で構成されたインバータユニット100の取付構成の場合、パワーモジュール112の高電圧部分112aとボルト頭部114aとの間の沿面距離「D」は、絶縁素子130の特異なカップ形状構成のため大きくなる。
【0045】
図8は、絶縁部材130を用いて構成されたインバータユニット100の取付構成の模式図を示す。また、ボルト頭部114aとパワーモジュール112の高電圧部分112aとの間の沿面距離「D」を描いた拡大図も描写されている。描写されているように、沿面距離Dは、高電圧部分112aとボルト頭部114aとの間のすべての距離の合計として計算される。特に、沿面距離は、高電圧部分112aからパワーモジュール112の外面に沿った絶縁部材130までの距離「x」と、電流が、外側からパワーモジュール112へと出る点から、絶縁部材130の内面・外面に沿ってボルト頭部114aまで辿る経路の長さとの和である。パワーモジュール112の外部からボルト頭部114aに到達するために電流が辿る経路の長さは、ベース130aとも称されるベース130aの第1の厚さ「t1」と、側壁130bの外面に沿った経路の部分の長さのうち、側壁130bの高さ「H」に等しい部分の長さと、側壁130bの第2の厚さ「t2」と、こちらも側壁130bの高さ「H」に等しい、側壁130bの内面に沿った経路の部分の長さと、側壁130bの内面とボルト頭部114aとの間の距離を含み、特に、沿面距離は、以下として測定される。
D=x+t1+H+t2+H+y
絶縁部材130を用いた本発明のインバータユニット100の取付構成の場合の沿面距離Dは、絶縁部材を用いない従来のインバータユニットの取付構成の場合の沿面距離dよりも大きく、D>>dである。ベース130aと側壁130bの界面にはフィレットが形成されている。
【0046】
本発明のインバータユニット100の場合で、ケーシング112dの短辺側の端部にダミーフレームが露出しているパワーモジュール112の場合、沿面距離「D」は、絶縁部材130の側壁130bに沿って高電圧部分112aからボルト頭部114aまでで計算される。図8に図示し、図8の説明で示した沿面距離「D」は、絶縁部材130の内面・外面に沿った電流流路の長さを含むものであり、図1に示した従来のインバータユニットの、パワーモジュールの高電圧部分とワッシャ8の外周部との沿面距離「d」よりも大きい。
【0047】
ボルト頭部と端壁との間にワッシャが配置された従来のインバータユニットの構成では、十分な沿面距離を確保することが困難であった。しかし、本発明では、ボルト114の頭部114aとパワーモジュール112との間に配置された部品は絶縁部材130である。絶縁部材130は非導電性部品であるため、沿面距離は、高電圧部分112a、112bとパワーモジュール112の自由表面からの距離と、ボルト頭部114aに到達するために絶縁部材130の表面に沿って電流が横断しなければならない距離である。
【0048】
パワーモジュール112の高電圧部分112aとボルト頭部114aとの沿面距離「D」は、絶縁素子130を変更することによって増加させることができる。例えば、パワーモジュール112をインバータハウジング120の端壁120aに取り付けるための対応するボルト114は、ボルト頭部114aと、ねじ軸部114bを含む。ベース130aの直径または、絶縁素子130の側壁130bによって画定される中空円筒の内径は、ボルト頭部114aの直径よりも大きく、ボルト頭部114aの周囲を取り囲んで間に環状空間を画定する。ボルト頭部114aと、側壁130bによって画定される中空円筒の内径との間の環状空間は、沿面距離と直接に関係する。より具体的には、沿面距離は、ボルト頭部114aと、側壁130bを画定する中空円筒の内径との間の環状の間隔とともに増加する。絶縁部材130の側壁130bの高さは、ボルト頭部114aの高さの少なくとも2倍である。再び添付図面の図4を参照すると、仮に側壁130bの高さを「H」で表し、ボルト頭部114aの高さを「h」で表すと、H=4hである。絶縁部材130の側壁130bとボルト114のボルト頭部114aとの高さの差は、沿面距離と直接に関係する。より具体的には、沿面距離は、側壁130bとボルト頭部114aとの高さの差の増加とともに増加する。側壁は、沿面距離を長くするために、異なる構成を有し得る。一実施形態によれば、側壁30bは、ベース130aの周縁部に沿って均一な高さである。別の実施形態によれば、絶縁部材130の側壁130bの少なくとも一部は中心軸「C」に対して傾斜しており、パワーモジュール112の高電圧部分112aとボルト頭部114aの間の沿面距離を増大させる。一実施形態では、側壁130bの内面及び外面は共に平滑面である。
【0049】
図9及び図10を参照すると、ボルト114及び対応する絶縁部材130により、パワーモジュール112を端壁120aに取り付ける構成が描写されている。より具体的には、ボルト114のねじ軸部114bが、絶縁部材130のベース130aに形成された孔132aを軸方向に貫通して端壁120aに形成された孔122aに係合し、その一方でボルト頭部114aはベース130aの上方に留まる。ボルト114のねじ軸部114bは、パワーモジュール112に形成されたそれぞれの切り欠き112cを貫通して、端壁120aに形成された対応する孔122aに受容されて、パワーモジュール112を端壁120aに取り付ける。より具体的には、インバータハウジング120の端壁120aには、対応するボルト114を受容して、ねじ係合を構成するための孔122aが形成されている。さらに、ボルト114を使用してインバータハウジングの端壁120aの上にパワーモジュール112を取り付けるこのような構成は、パワーモジュール112を端壁120aに圧接し、パワーモジュール112からの放熱性を向上させる結果となる。このような構成は、パワーモジュール112と端壁120aとの間のあらゆる空隙に起因して生じる絶縁の問題に対処する。ベース130aは、さらに、ボルト頭部114aに対して十分な支持及び面接触を提供し、それによって、ボルト114の端壁120aとのねじ係合を向上させる。
【0050】
図9は、パワーモジュール112、絶縁部材130、およびボルト114の、インバータハウジング120の端壁120aに沿った組み立てを示す分解斜視図である。パワーモジュール112間の面接触をさらに向上させてパワーモジュールからの放熱性を改善するために、端壁120aは、その上に形成された平坦なプラットフォーム122bを含む。図9は、端壁120aに形成された平坦なプラットフォーム122bを描写する拡大図も示す。ボルト114を受容して係合する孔122aは、平坦なプラットフォーム122bの周縁に沿って、特に、その対向する両短辺に配置されている。平坦なプラットフォーム122bは、形状及びサイズがパワーモジュール112と相補的であって、端壁120aのパワーモジュール112との面接触を増強している。一般に、パワーモジュール112と平坦なプラットフォーム122bとの間にギャップフィラー124が配置されて、パワーモジュール112と端壁120aとの間の面接触をさらに改善するとともに、ボルト114を用いてパワーモジュール112が平坦なプラットフォーム122bの上に取り付けられたときのパワーモジュール112の放熱性を向上させる。特に、ギャップフィラー124は、例えば、パワーモジュール112および端壁120aの粗さ及び幾何形状上の欠陥に起因するギャップなどの小さなギャップを埋める。さらに、ギャップフィラー124は、空気よりも熱伝導率が良いので、ギャップフィラー124は、パワーモジュール112と端壁120aとの間の熱流を改善することを可能にする。図10は、パワーモジュール112、絶縁部材130及びボルト114の組み立てを、両方のボルト114を貫通する断面平面に沿って描いた断面図である。また、端壁120aに形成された平坦なプラットフォーム122bと、パワーモジュール112の下面との間に配置され、パワーモジュール112と端壁120aとの間の面接触を増加させるギャップフィラー124が描写されている。このような構成により、パワーモジュール112が、端壁120aに形成された平坦なプラットフォーム122bにボルト114によって圧接されるにつれ、パワーモジュール112からの放熱性の向上が達成される。このような構成により、パワーモジュール112と端壁120aの間の面接触が改善し、それにより放熱性が増強される。より具体的には、パワーモジュール112で発生した熱を、端壁120aの他方の側部にある冷媒に効率よく逃がすことができる。一実施形態によれば、孔122aと、平坦なプラットフォーム122bの対応する短辺との間に溝122dが設けられて、パワーモジュール112がボルト114によって平坦なプラットフォーム122bに圧接されたときに外側に押し出される余分なギャップフィラーを収容する。
【0051】
インバータ110はさらに、パワーモジュール112と取り外し可能なカバー120cとの間に配置されたセパレータ118を含む。図3は、絶縁部材130の、PCB116及びセパレータ118と互いに組み立てられるときの、PCB116及びセパレータ118に対する相対的な位置及び順序を示す。図11は、インバータ110用のPCB116の等角図である。PCB116は、取り付けられた複数の電子部品116a(図11には図示せず)も含む。図12に示すセパレータ118は、PCB116に取り付けられたこれらの電子部品116aを分離する。図12は、インバータ110用のセパレータの等角図である。セパレータ118は、プラスチック材料であり、PCB116に取り付けられた様々な電子部品116aの間の絶縁を提供し、それによって、電子部品が互いに偶発的に接触することによって、または電子部品116a間の不十分な間隔によって短絡することを防止する。セパレータ118は、さらに、PCB116をインバータハウジング120の内部に位置決めするための配置構成を含んでもよい。PCB116とセパレータ118は、絶縁部材130を貫通させる為の対応する第1の開口部116b及び第2の開口部118aを含む。PCB116上の第1の開口部116bの個数と配置は、ボルト114の個数とボルト114間の間隔に対応し、より具体的には、ボルト114に対応する絶縁部材130の個数と間隔に対応する。同様に、セパレータ118上の第2の開口部118aの個数と配置は、ボルト114の個数とボルト114間の間隔に対応し、より具体的には、ボルト114に対応する絶縁部材130の個数と間隔に対応する。PCB116上に形成された第1の開口部116bと、セパレータ118上に形成された第2の開口部118aは、絶縁部材130が第1の開口部116bと第2の開口部118aをそれぞれ貫通することができるように、互いに対して整列される。第1の開口部116b及び第2の開口部118aを貫通した後の絶縁部材130は、パワーモジュール112上に載り、ボルト114のねじ部114bが、絶縁部材130に形成された対応する孔132aを貫通して端壁120aに係合するにつれ、パワーモジュール112をインバータハウジング120の端壁120aに圧接する。プラスチックカップの形態の絶縁部材130は、さらに、パワーモジュール112、セパレータ118およびPCB116の、インバータハウジング120の端壁120aへの組み付けを容易にするためのポカヨケ機能として機能する。
【0052】
図13は、パワーモジュール112、絶縁部材130及びボルト114の、PCB116との組み立ての拡大図を示している。さらに、図12は、パワーモジュールとPCB116との間の、パワーモジュール112から突出するピン112bを介した接続を示している。図13を参照すると、ボルト114のねじ軸部114bと、パワーモジュール112のケーシング112d上に形成された対応する切り欠き112cの内壁との間に十分なクリアランスが設けられている。さらに、リードフレームの最端部は、PCB116に形成された対応する孔に挿入される。このようなピン112bとPCB116との接続により、ボルト114のねじ軸部114bと、パワーモジュール112上に形成された切り欠き112cの内壁との間にクリアランスがあっても、PCB116に対するパワーモジュール112の確実な位置決めと取り付けが達成される。このような構成は、ボルト114のねじ軸部114bが、パワーモジュール112の対応する切り欠き112cの内壁に接触することを防止し、それによって、接触部を介した沿面距離が短くなることを回避することができる。さらに、そのような構成により、パワーモジュール112が、ボルト114の展開の軸方向に移動して、パワーモジュール112をPCB116に対して軸方向の所望の位置に確実に取り付けることが可能になる。より具体的には、このような構成により、パワーモジュール112のPCB116に対する横方向への相対移動は阻止されるが、パワーモジュール112を端壁120aに圧接するためにボルトが展開されるとき、ボルト114の運動の軸方向に沿った相対移動は許容される。
【0053】
図14に示される別の実施形態によれば、側壁130bの内面及び外面の少なくとも一方は凹凸面であり、特に、パワーモジュール112の高電圧部分112aとボルト頭部114aの間の沿面距離を長くするために、セレーション132bが設けられている。ただし、図13ではセレーション132bは側壁130bの内面に描かれているが、セレーション132bは、側壁130bの外面にも構成され得る。
【0054】
しかしながら、本発明は、絶縁部材の特定の形状、構成、個数、配置、側壁130bの構成、ボルトの側壁間の環状空間、ボルト頭部に対する側壁の高さ、ボルトが貫通するベース部分の孔の位置に限定されるものではない。
【0055】
図15に図示されているさらに別の実施形態によれば、セパレータ118は、セパレータ118と一体に形成された絶縁部材118bを含む。そのような構成において、絶縁部材118bは、第1の開口部116bを貫通し、セパレータ118はパワーモジュール112の上に載って、ボルト114のねじ部114bが絶縁部材118に形成されていた孔118aを貫通して端壁120aと係合するにつれ、パワーモジュール112をインバータハウジング120の端壁120aに圧接する。より具体的には、セパレータ118は、パワーモジュール112と平行に延在するリップ部118cを含む。このような構成により、パワーモジュール112の高電圧部分112aとボルト頭部114aとの間の沿面距離がさらに長くなるが、それは、パワーモジュール112の高電圧部分112aから発せられる電流が、セパレータ118およびセパレータ118と一体に形成された絶縁部材118bと表面に沿った沿面経路「P」を辿ってボルト頭部114aに到達しなければならないからである。
【0056】
また、本発明の実施形態に係る電動圧縮機1000も開示する。再び図2を参照すると、電動圧縮機1000は、圧縮ユニット300と、電動機200と、インバータユニット100とを含む。圧縮ユニット300は、流体、特に冷媒を、冷媒が空調ループのコンデンサに供給される前に圧縮する。電動機200は圧縮ユニット300を駆動する。上記で開示したインバータユニット100は電動機200を駆動する。
【0057】
明らかに、本発明の多数の修正および変形が、上記の教示に照らして可能である。したがって、本発明は、本明細書に具体的に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【0058】
いずれにせよ、他の実施形態が存在する可能性があるため、本発明は、本明細書に具体的に記載された実施形態に限定され得ず、また、限定されるべきでもない。本発明は、任意の等価手段および技術的に動作する手段の組み合わせに拡張するものである。
【符号の説明】
【0059】
100 インバータユニット
110 インバータ
112 パワーモジュール
112d ケーシング
114 ボルト
114b ねじ部
116 PCB
116b 第1の開口部
118 セパレータ
118a 第2の開口部
118c リップ部
120 インバータハウジング
120a 端壁
122a、132a 孔
130 絶縁部材
130a ベース
130b 側壁
230 高電圧(HV)コネクタ
240 低電圧(LV)コネクタ
200 電動機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15