(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080044
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】模擬レーダエコー信号を生成するための方法およびレーダターゲットシミュレータ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20230601BHJP
【FI】
G01S7/40 186
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022189070
(22)【出願日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】10 2021 131 263.9
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン ヘルヴェーク
(72)【発明者】
【氏名】クリス ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ティム フィッシュ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC06
5J070AD02
5J070AE01
5J070AF01
5J070AF03
5J070AH25
5J070AH40
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】レーダセンサ6から、既知の帯域幅を有するレーダ信号を送出するステップと、レーダ信号を受信するステップと、既知のフィルタ曲線を有するローパスフィルタ3を用いてレーダ信号をフィルタリングするステップと、フィルタリングされたレーダ信号の周波数スペクトルを特定するステップと、補正周波数スペクトルを計算するステップと、補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力を計算するステップと、フィルタリングされたレーダ信号から、スケーリングされたレーダ信号を計算するステップと、スケーリングされたレーダ信号の反射としてレーダエコー信号を計算するステップと、送信アンテナ5から、レーダセンサ6にレーダエコー信号を送出するステップと、を有する。
【効果】これにより、帯域幅が狭いレーダターゲットシミュレータ1であっても、可能な限りにエラーフリーで使用可能な、模擬レーダエコー信号を生成する方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬レーダエコー信号を生成する方法であって、前記方法は、次の方法ステップ、すなわち、
テスト対象のレーダセンサ(6)から、レーダターゲットシミュレータ(1)の受信アンテナ(2)に、既知の帯域幅を有するレーダ信号を送出するステップと、
前記レーダターゲットシミュレータ(1)において、前記受信アンテナ(2)によって前記レーダ信号を受信するステップと、
前記レーダターゲットシミュレータ(1)において、既知のフィルタ曲線を有するローパスフィルタ(3)を用いて前記レーダ信号をフィルタリングするステップと、
前記フィルタ曲線によって与えられる、前記ローパスフィルタ(3)の全帯域幅にわたって、フィルタリングされた前記レーダ信号の周波数スペクトルを特定するステップと、
前記フィルタ曲線を用い、前に特定した前記周波数スペクトルを補正することによって補正周波数スペクトルを計算して、送出されたフィルタリングされていない前記レーダ信号の前記周波数スペクトルに対応する周波数スペクトルが、前記補正周波数スペクトルとして得られるようにするステップと、
前記補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力を計算するステップと、
フィルタリングされた前記レーダ信号から、スケーリングされたレーダ信号を計算するステップであって、フィルタリングされた前記レーダ信号の振幅に、前記レーダ信号の周波数スペクトル全体にわたり、すべての周波数について同じくスケーリングされた乗算を行うことにより、スケーリングされた前記レーダ信号の前記出力と、補正された前記周波数スペクトルに対応するレーダ信号の前記出力と、が等しくなるようにするステップと、
スケーリングされた前記レーダ信号の反射としてレーダエコー信号を計算するステップと、
前記レーダターゲットシミュレータ(1)の送信アンテナ(5)から、テスト対象の前記レーダセンサ(6)に、前記レーダエコー信号を送出するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記レーダターゲットシミュレータ(1)の前記送信アンテナ(5)と前記受信アンテナ(2)とは、別体の、互いに切り離された装置として構成されている、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
テスト対象の前記レーダセンサに対して、前記送信アンテナ(5)を移動する、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ローパスフィルタ(3)は、送出される前記レーダ信号の全帯域幅にわたって、送出される前記レーダ信号をサンプリングすることができないカットオフ周波数を有するアンチエリアシングフィルタである、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
模擬レーダエコー信号を生成するためのレーダターゲットシミュレータ(1)であって、前記レーダターゲットシミュレータ(1)は、
前記レーダターゲットシミュレータ(1)においてレーダ信号を受信するための受信アンテナ(2)と、
前記レーダ信号をフィルタリングするための、既知のフィルタ曲線を有するローパスフィルタ(3)と、
計算ユニット(4)と、
模擬レーダエコー信号を送出するための送信アンテナ(5)と、
を有しており、
前記計算ユニット(4)は、前記フィルタ曲線によって与えられる、前記ローパスフィルタ(3)の全帯域幅にわたって、フィルタリングされた前記レーダ信号の周波数スペクトルを特定し、前記フィルタ曲線を用い、前に特定した前記周波数スペクトルを補正することによって補正周波数スペクトルを計算して、送出されたフィルタリングされていない前記レーダ信号の前記周波数スペクトルに対応する周波数スペクトルが、前記補正周波数スペクトルとして得られるようにし、前記補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力を計算し、フィルタリングされた前記レーダ信号から、スケーリングされたレーダ信号を計算し、この際に、フィルタリングされた前記レーダ信号の振幅に、前記レーダ信号の周波数スペクトル全体にわたり、すべての周波数について同じくスケーリングされた乗算を行うことにより、スケーリングされた前記レーダ信号の出力と、前記補正周波数スペクトルに対応する前記レーダ信号の出力と、が等しくなるようにし、スケーリングされた前記レーダ信号の反射として、前記模擬レーダエコー信号を計算するように構成されている、
レーダターゲットシミュレータ(1)。
【請求項6】
前記レーダターゲットシミュレータ(1)の前記送信アンテナ(5)と前記受信アンテナ(2)とは、別体の、互いに切り離された装置として構成されている、
請求項5記載のレーダターゲットシミュレータ(1)。
【請求項7】
前記送信アンテナ(5)は、移動可能である、
請求項5記載のレーダターゲットシミュレータ(1)。
【請求項8】
前記ローパスフィルタ(3)は、送出される前記レーダ信号の全帯域幅にわたって、送出される前記レーダ信号をサンプリングすることができないカットオフ周波数を有するアンチエリアシングフィルタである、
請求項5から7までのいずれか1項記載のレーダターゲットシミュレータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次の方法ステップを有する、模擬レーダエコー信号を生成する方法に関する。すなわち、
テスト対象のレーダセンサから、レーダターゲットシミュレータの受信アンテナにレーダ信号を送出するステップと、
レーダターゲットシミュレータにおいてレーダ信号を受信するステップと、
レーダターゲットシミュレータにおいて、ローパスフィルタを用いてレーダ信号をフィルタリングするステップと、
レーダターゲットシミュレータの送信アンテナから、テスト対象のレーダセンサに、模擬レーダエコー信号を送出するステップと、を有する。
【0002】
本発明はさらに、模擬レーダエコー信号を生成するためのレーダターゲットシミュレータに関する。
【背景技術】
【0003】
走行シナリオを正確に検出するために自動化車両には、詳細な画像の他に広い視野ならびに高さ情報、距離情報および速度情報を供給する高解像度のレーダセンサが必要である。これらのセンサをテストするために、レーダターゲットシミュレータ、すなわち、被検体として取り付けられる車両レーダシステムのレーダ信号を検出するテストベンチが使用され、リアルタイムモデルに基づいて、信号のレーダエコーを計算し、計算したエコーに対応する遅延された応答信号を生成して、被検体に放射する。被検体は、これにより、物理的なターゲットを検出していると思わされる。被検体からのレーダ信号は、ターゲットシミュレータによる測定の際に、アンチエリアシングフィルタとして機能するローパスフィルタを通過する。これらのような信号フィルタにより、測定の帯域幅が狭くなる。というのは、これらは、限られたスペクトルだけにおいて、減衰させずに信号を通過させるからである。フィルタスペクトルの境界に隣接する遷移域では、信号フィルタにより、信号強度が減衰されてしまう。
【0004】
しかしながらこのようなローパスフィルタは、信号処理においてアナログ信号のデジタル化の際に発生するエイリアス作用を回避もしくは低減するために必要である。原信号は、規則的な時間間隔でサンプリングされ、後に再現する際に、アナログのローパスフィルタを用いて再現される。この原信号を正しく再現できるようにするため、ナイキスト・シャノンサンプリング定理にしたがい、信号において発生する最も高い周波数の2倍よりも高いレートで原信号をサンプリングしなければならない。低すぎるサンプリングレートによってサンプリング定理に違反すると、半分のサンプリングレート(ナイキスト周波数)よりも元々は高かった周波数成分は、より低い周波数と解釈されてしまう。というのはこれらについてはアンダーサンプリングが発生するからである。この望ましくない現象は、エイリアス作用と称される。したがってデジタル信号処理では、エイリアス作用を回避するためにいわゆるプレフィルタリングが使用される。信号には、デジタル化される段階でアナログのローパスフィルタが適用される。これにより、ナイキスト周波数を上回る信号の周波数を減衰させる。このような電子式フィルタは好適には、可能な限りにエッジが急峻であり、これは、より高次の高価なフィルタによって実現可能である。それにもかかわらず、ナイキスト周波数を下回る信号の一部は、必然的に減衰されてしまい、ナイキスト周波数を上回る一部は、完全には消去されない。したがって、カットオフ周波数の正確な選択は実践的には、エイリアス作用の除去と有効信号の維持との間の妥協になる。しかしながら、このようなフィルタを使用する際には、有効信号を完全に維持することは不可能である。
【0005】
ターゲットシミュレータを用いてレーダセンサを検証しようとする場合、ターゲットシミュレータは、レーダのレーダ反射面を正しく特定するために、信号の全帯域幅を検出しなければならない。これに伴うエラーを回避するために、従来、レーダセンサは、必要な帯域幅を提供できたターゲットシミュレータだけを用いてテストされていた。レーダセンサにより、例えば、2GHzの帯域幅を有する信号が送出される場合、1GHzの帯域幅を有するターゲットシミュレータを使用するときには、出力の約半分(信号波形およびターゲットシミュレータのフィルタ曲線に依存して)が失われてしまい、これにより、レーダから見ると、模擬ターゲットは、ターゲットシミュレータにおいて元々設定されている反射面よりも約3dBだけ小さい反射面を有する。
【0006】
より広い帯域幅は、多くの場合に存在する望みではあるが、特定の程度から上では、実現することがより困難な望みである。サンプリングレートによって決定される所望される帯域幅についてそもそも提供可能であったとしても、これには、よりコストのかかるコンポーネント、特にコストのかかるプロセッサが必要であることが多い。高周波領域における広帯域のコンポーネントは、構成するのが困難であり、これにより、これらのコンポーネントは、入手が困難でありかつ極めて高価である。処理がデジタルに行われる場合、プロセッサはたいてい、サンプリングレートについて、ひいては最終的には、必要な帯域幅について重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のことから出発して本発明の課題は、帯域幅が狭いレーダターゲットシミュレータであっても、可能な限りにエラーフリーで使用可能な、模擬レーダエコー信号を生成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。好ましい発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
この限りにおいて、本発明によると、模擬レーダエコー信号を生成する方法が提供され、この方法は次の方法ステップを有する、すなわち、
テスト対象のレーダセンサから、レーダターゲットシミュレータの受信アンテナに、既知の帯域幅を有するレーダ信号を送出するステップと、
レーダターゲットシミュレータにおいてレーダ信号を受信するステップと、
レーダターゲットシミュレータにおいて、既知のフィルタ曲線を有するローパスフィルタを用いてレーダ信号をフィルタリングするステップと、
フィルタ曲線によって与えられる、ローパスフィルタの全帯域幅にわたって、フィルタリングされたレーダ信号の周波数スペクトルを特定するステップと、
フィルタ曲線を用い、前に特定した周波数スペクトルを補正することによって補正周波数スペクトルを計算して、送出されたフィルタリングされていないレーダ信号の周波数スペクトルに対応する周波数スペクトルが、補正周波数スペクトルとして得られるようにするステップと、
補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力を計算するステップと、
フィルタリングされたレーダ信号から、スケーリングされたレーダ信号を計算するステップであって、フィルタリングされたレーダ信号の振幅に、その周波数スペクトル全体にわたり、すべての周波数について同じくスケーリングされた乗算を行うことにより、スケーリングされたレーダ信号の出力と、補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力とが等しくなるようにするステップと、
スケーリングされたレーダ信号の反射としてレーダエコー信号を計算するステップと、
レーダターゲットシミュレータの送信アンテナから、テスト対象のレーダセンサにレーダエコー信号を送出するステップと、を有する。
【0010】
「レーダセンサ」という用語は、レーダ信号を送受信するためのユニットであって、そのために必要なアンテナと、自動車において運転支援システムを提供するためのセンサにおいて一般的であるようなその他の装置と、を備えたユニットのことをいう。フィルタのフィルタ曲線とは、フィルタを通過する信号に対する、信号の周波数についての減衰係数のプロットと理解され、したがって、特に振幅応答または強度応答(自乗の振幅応答)のことと理解される。一般にフィルタ曲線には、通過域に配置されている、信号の周波数成分が、減衰されることなくフィルタを通過するという特徴を有する通過域と、遷移域に配置される信号の周波数成分が、減衰された形態でフィルタを通過するという特徴を有する、通過域に隣接する少なくとも1つの遷移域と、が含まれている。フィルタ曲線によって与えられる、ローパスフィルタの帯域幅とは、ローパスフィルタの通過域および遷移域によって覆われる周波数の全体のことと理解され、したがって、ローパスフィルタのフィルタ曲線が、0よりも大きな減衰係数を示すすべての周波数のことと理解される。
【0011】
送出されたフィルタリングされていないレーダ信号の周波数スペクトルに対応する周波数スペクトルを得られるように、フィルタ曲線を用いて、前に特定した周波数スペクトルを補正することにより、補正周波数スペクトルを計算することは、フィルタ曲線によって既知となったフィルタの減衰を考慮することによって行われる。すなわち、フィルタ曲線により、それぞれの周波数について、フィルタによる減衰がどの程度大きいかが既知であるため、これにより、減衰された振幅から、送出されるレーダ信号の減衰されていない振幅を推定することができる。
【0012】
したがって本発明により、テストしているレーダセンサよりも帯域幅の狭いレーダターゲットシミュレータを使用する場合であっても、レーダセンサのレーダ反射面を正確に特定できるように信号を操作することができる。それゆえに本発明により、相応に方法的に強化されている従来のレーダターゲットシミュレータによって、帯域幅がより広いレーダセンサも、レーダ反射面の正確な特定についてテストすることができる。レーダターゲットシミュレータのローパスフィルタのフィルタ曲線は既知であるため、既知のレーダセンサ帯域幅により、失われる出力の割合がどの程度大きいかを特定することができる。失われる出力の割合を補償するために、この情報により、レーダターゲットシミュレータの側において、より多くの出力を放射することができる。結果として、レーダセンサの反射面を特定することにより、信号の帯域幅が限定されているにもかかわらず、所望の結果が得られる。したがって、本発明による方法の利点は、レーダターゲットシミュレータにおけるハードウェアを変更する必要がないことにある。特に、レーダターゲットシミュレータは、極めて広帯域の信号をリアルタイムで処理するために十分に高いサンプリングレートを提供する特に高性能のプロセッサがなくても動作可能である。したがって、本発明により、帯域幅についての迅速な発展および大きなコスト削減が可能になる。
【0013】
基本的に、レーダターゲットシミュレータの送信アンテナと受信アンテナとは同じであってよい。しかしながら、好適には、レーダターゲットシミュレータの送信アンテナと受信アンテナとは、別体の、互いに切り離された装置として形成されるように構成されている。この際に好適には付加的に、送信アンテナが、テスト対象のレーダセンサに対して移動することが有効である。これにより、テスト対象のレーダセンサの正確に前方に位置している仮想的な対象体だけでなく、レーダセンサの側方に位置している仮想的な対象体によっても反射されるレーダ信号をシミュレーションすることができる。
【0014】
本発明の好ましい発展形態によるとさらに、ローパスフィルタが、レーダ信号の全帯域幅にわたって、送出されるレーダ信号をサンプリングすることができないカットオフ周波数を有するアンチエリアシングフィルタであると有効である。このことが意味するのは、従来のハードウェアが使用されることである。
【0015】
本発明によるとさらに、模擬レーダエコー信号を生成するためのレーダターゲットシミュレータが提供され、レーダターゲットシミュレータは、
レーダターゲットシミュレータにおいてレーダ信号を受信するための受信アンテナと、
レーダ信号をフィルタリングするための、既知のフィルタ曲線を有するローパスフィルタと、
計算ユニットと、を有しており、計算ユニットは、フィルタ曲線によって与えられる、ローパスフィルタの全帯域幅にわたって、フィルタリングされたレーダ信号の周波数スペクトルを特定するために、フィルタ曲線を用い、前に特定した周波数スペクトルを補正することによって補正周波数スペクトルを計算して、送出されたフィルタリングされていないレーダ信号の周波数スペクトルに対応する周波数スペクトルが、補正周波数スペクトルとして得られるようにするために、補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力を計算するために、フィルタリングされたレーダ信号から、スケーリングされるレーダ信号を計算し、この際に、フィルタリングされたレーダ信号の振幅に、その周波数スペクトル全体にわたり、すべての周波数について同じくスケーリングされる乗算を行うことにより、スケーリングされたレーダ信号の出力と、補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力と、が等しくなるようにするために、スケーリングされたレーダ信号の反射として、模擬レーダエコー信号を計算するために構成されており、
レーダターゲットシミュレータはさらに、模擬レーダエコー信号を送出するための送信アンテナを有する。
【0016】
このレーダターゲットシミュレータの好ましい発展形態は、本発明による方法の、前に説明した好ましい発展形態の類推によって得られる。
【0017】
以下では、図面を参照し、好ましい実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】テスト対象のレーダセンサと共に、本発明の実施例によるレーダターゲットシミュレータを略示する図である。
【
図2】本発明の実施例にしたがい、方法の流れを略示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、レーダターゲットシミュレータ1においてレーダ信号を受信するための受信アンテナ2と、ローパスフィルタ3と、計算ユニット4と、送信アンテナ5と、を備えた、模擬レーダエコー信号を生成するためのレーダターゲットシミュレータ1が略示されている。テスト対象のレーダセンサ6は、レーダターゲットシミュレータ1の受信アンテナ2により、レーダセンサ6から送出されるレーダ信号を受信できるようにレーダターゲットシミュレータ1に対して配置されている。
図1からわかるように、レーダターゲットシミュレータ1の送信アンテナ5と受信アンテナ2とは、別体の、互いに切り離された装置として構成されている。レーダターゲットシミュレータ1の受信アンテナ2が固定されているのに対し、送信アンテナ5は、2つの矢印によって示されているように移動可能であり、しかもテスト対象のレーダセンサ6の周りで約180°、円形に移動可能である。これにより、テスト対象のレーダセンサ6の正確に前方に位置している仮想的な対象体だけなく、レーダセンサ6の側方に位置している仮想的な対象体によっても反射されるレーダ信号をシミュレーションすることができる。
【0020】
ローパスフィルタ3は、既知のフィルタ曲線を有するアンチエリアシングフィルタであるが、ローパスフィルタ3は、テスト対象のレーダセンサ6から送出されるレーダ信号のサンプリングを、その帯域幅全体にわたってサンプリングすることができないカットオフ周波数を有する。このことは、前に説明したレーダターゲットシミュレータ1では、従来の動作の際に、さらに上ですでに挙げた理由から基本的に、誤った模擬レーダエコー信号が生成されることになってしまう。したがって、本発明の1つの実施例によると、次の方法ステップを有しかつ
図2に略示されている、模擬レーダエコー信号を生成する次の方法は、第1のステップS1において、テスト対象のレーダセンサ6から、レーダターゲットシミュレータ1の受信アンテナ2に、既知の帯域幅を有するレーダ信号を送出する。ステップS2では、レーダターゲットシミュレータ1において、受信アンテナ2によってレーダ信号を受信する。これに続くステップS3では、公知のように、エリアシング作用を回避もしくは低減するために、レーダターゲットシミュレータ1のローパスフィルタ3を用いて、レーダターゲットシミュレータ1のレーダ信号のフィルタリングを行う。ここまでは、本明細書で説明する方法は実質的に、レーダターゲットシミュレータを作動させる従来の方法に対応する。
【0021】
しかしながらステップS4では、フィルタ曲線によって与えられる、ローパスフィルタ3の全帯域幅にわたって、フィルタリングされたレーダ信号の周波数スペクトルを特定する。引き続いてステップS5では、フィルタ曲線を用い、前に特定した周波数スペクトルを補正することによって補正周波数スペクトルを計算して、送出されたフィルタリングされていないレーダ信号の周波数スペクトルに対応する周波数スペクトルが、補正周波数スペクトルとして得られるようにする。次いで、ステップS6では、補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力を計算する。その後、ステップS7では、フィルタリングされたレーダ信号から、スケーリングされたレーダ信号を計算し、ここでは、フィルタリングされたレーダ信号の振幅に、その周波数スペクトル全体にわたり、すべての周波数について同じくスケーリングされた乗算を行うことにより、スケーリングされたレーダ信号の出力と、補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力と、が等しくなるようにする。最後にステップS8では、このスケーリングされたレーダ信号に基づいてレーダエコー信号を計算して、レーダターゲットシミュレータ1の送信アンテナ5から、テスト対象のレーダセンサ6にレーダエコー信号を放射する。レーダエコー信号は、スケーリングされたレーダ信号の反射として計算される。したがって、放射されるレーダエコーは、スケーリングされたレーダ信号の人工的に模擬されたレーダエコーであり、受信アンテナ2によって受信されたレーダ信号ではない。
【0022】
フィルタ曲線を用い、前に特定した周波数スペクトルの補正によって補正周波数スペクトルを計算して、送出されたフィルタリングされていないレーダ信号の周波数スペクトルに対応する周波数スペクトルが得られるようにすることは、フィルタ曲線によって既知となったフィルタの減衰を考慮することによって行われる。すなわち、フィルタ曲線により、それぞれの周波数について、フィルタによる減衰がどの程度大きいかは既知であるため、これにより、減衰された振幅から、送出されるレーダ信号のそれぞれの周波数成分の減衰されていない振幅を推定することができる。したがってこのようにして、本発明のようにレーダセンサよりも帯域幅の狭いターゲットシミュレータを使用する場合であっても、レーダにおけるレーダ反射面が正確に特定されるように信号を操作することができる。これにより、前に説明した方法によって強化されているが、その他の点では従来通りのレーダターゲットシミュレータ1により、より帯域幅の広いレーダセンサであっても、レーダ反射面の特定についてテストすることができる。このための前提条件は単に、ターゲットシミュレータのフィルタ曲線が既知であり、かつフィルタの遷移域が、十分に広い周波数スペクトルをカバーすることである。これにより、既知のレーダセンサ帯域幅に基づいて、失われる出力の割合がどの程度大きいかを特定することができるため、これに対応して、失われる出力の割合を補償するために、送信アンテナ5を用いて、ターゲットシミュレータ1からより多くの出力を放射することができる。まとめると、レーダターゲットシミュレータ1における信号が、帯域幅において限定されているにもかかわらず、このようにして間接的に特定した、レーダセンサの反射面により、所望の(正しい)結果が得られる。
【符号の説明】
【0023】
1 レーダターゲットシミュレータ
2 受信アンテナ
3 ローパスフィルタ
4 計算ユニット
5 送信アンテナ
6 テスト対象のレーダセンサ
S1 レーダ信号の送出
S2 レーダ信号の受信
S3 レーダ信号のフィルタリング
S4 フィルタリングされたレーダ信号の周波数スペクトルの特定
S5 補正周波数スペクトルの計算
S6 補正周波数スペクトルに対応するレーダ信号の出力の計算
S7 スケーリングされたレーダ信号の計算
S8 スケーリングされたレーダ信号を模擬レーダエコー信号として送出
【外国語明細書】